平成十四年東京都議会会議録第八号

   午後五時三十五分開議

○副議長(橋本辰二郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二番林知二君。
   〔百二番林知二君登壇〕

○百二番(林知二君) 図らずも休憩中にサッカーワールドカップ決勝トーナメント、日本対トルコ戦をテレビ観戦できた天恵に、私個人としては心から感謝をするものであります。この興奮がさめやらないわけでありますけれども、都議会民主党を代表して、当面する都政の主要課題について、知事並びに関係局長に伺います。
 まず、現在国会において審議されている有事関連三法案に関して伺います。
 民主党は、シビリアンコントロールや基本的人権を侵害しないことを原則としながら、有事危機に際して政府が超法規的措置をとることのないよう、関連法制の整備を進めるとの立場でありますが、政府案は、表現の自由など基本的人権の尊重、民主的統制のあり方、地方自治体との関係など、検討すべき課題が山積しております。また、これらの法案には自治体の対処措置や責務などを盛り込んでいますが、自治体との間で事前に協議があったとは聞いておりません。国と地方自治体は対等、平等の関係にあるとしながら、緊急事態において重要な役割を担うこととなる地方自治体に何の相談もなく起案された法案が、仮に可決されたとしても、真に機能し得るといえるでしょうか。しかも、民間避難や地方自治体の役割を定める国民保護法制は、二年以内ということで先送りされております。知事はこれらの法案に賛成ということですが、起案に際しての地方自治体との協議についてはどのようにお考えか、所見を伺います。
 また、都議会は去る五月二十二日、三田議長を団長とする視察団をニューヨーク市等に派遣いたしました。昨年九月に起きた同時多発テロの際の危機対応の実際についてつぶさに見聞し、今後の東京における危機管理体制の構築を考える上で大いに参考となる調査結果を持ち帰りました。中でも、ニューヨーク市では、非常事態時にはすべての指揮命令権が市長に集約される制度が確立されており、同時多発テロの発生直後から直ちにその体制がとられ、三日間にわたり、市長命令で戒厳令並みの厳戒態勢で事態収拾に当たったことが、その後の混乱を最小限に抑えることができたとのことであります。
 住民にとっては、地方自治体は最も身近な政府であります。現在、国会における有事法制の議論を見ていましても、国と地方自治体の役割分担、自治体の長の責任、権限の範囲については不明確のまま推移しようとしております。石原知事はこの点についてどのような所見をお持ちか、忌憚のないところをお聞かせください。
 この有事法制の議論が続けられている中で、福田官房長官が、何か起きたり、国際情勢の変化があれば、国民の中に核兵器を持つべきだという意見が出てくるかもしれないと述べたことに関連して、きょうの新聞にも、アメリカ、アジア諸国での反響が報道されておりますが、核兵器の保有と非核三原則の問題が改めて論議されております。そうした中で、知事が電話で核は持てると激励したとの報道が行われ、知事は七日の記者会見でこれを否定されました。非核三原則は我が国の国是とされ、小泉首相も、非核三原則は核を廃絶したいという国民の願いと、日本として核兵器をつくる能力があるにもかかわらず、持たないという決意を表明した大事な原則だ、堅持していくことに変わりはないと言明しております。この間の報道に関する知事の真意と、非核三原則についての知事のお考えを伺います。
 また、情報公開を請求した個人に関して、防衛庁が各種リストを作成し、あまつさえ受験生の母や反戦自衛官など、個人のプライバシーを明記するなどの違法行為を行っていたことが明らかにされました。防衛庁の個人情報保護に対する意識の低さをまざまざと見せつけました。加えて、調査結果の公表に際して、政治主導の隠ぺい工作がなされたとあっては、何をかいわんやであります。
 一方で、住民基本台帳法改正案が審議された当時、小渕首相が住民基本台帳ネットワーク稼働の前提としていた、民間を対象とした個人情報保護法の制定は先送りされ、かつ、これまで十一省庁九十三事務に限定されるとしていた国の機関や事務を、十五省庁二百六十四事務に拡大する改正案が今国会に提出されております。さらには、八月五日よりこのネットワークが稼働することになるということです。都民の個人情報が保護されていないことが明らかになった今、唯々諾々とこのネットワークに協力してしまっては、都民に説明がつかないのではないでしょうか。また、自治体としての責任も問われてしまいます。個人情報保護法案が施行されるまで、このネットワークの稼働を凍結するよう国に求めるべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、都市再生について伺います。
 この三月に可決、成立した都市再生特別措置法は、近年における急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に、我が国の都市が十分対応できていないとの認識を示し、都市再生のための手法として、容積率制限などを一たんすべて白紙に戻した上で、自由度の高い計画を定めることや、都市計画手続の簡素化などを盛り込んでおります。しかし、私は、都市再生というのは、超高層ビルを林立させるといった都市計画的なものだけではなく、さまざまな分野で取り組まなければ果たせない課題であると考えています。
 いうまでもなく、東京の抱える都市問題は、職住の隔絶や交通渋滞、自動車公害やヒートアイランド現象などの環境問題、緑やオープンスペースの不足などであり、こうした問題の解決なくしては都市再生はあり得ません。また、東京が二十一世紀も引き続き国際都市としての地位を保ち続けるためには、文化や産業、環境、福祉などといった分野においても世界をリードできる都市像を示していく必要があります。私は、東京の都市再生を図っていくためには、都市計画だけではなく、文化や産業、環境、福祉などが総合的に連携しながら、東京都が引き続き魅力のある都市となるよう取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 都市計画といった面から見ても、都市再生特別措置法に基づく都市再生は、短期的には景気浮揚効果があると思われるものの、長期的に見た場合、本当に東京が魅力ある都市として再生し得るかは疑問であります。都市計画百年といわれるように、個別プロジェクトだけを先行させるのではなく、長期的なビジョンに基づいたまちづくりこそが真の都市再生の姿であるといえます。東京都が発表している東京の新しい都市づくりビジョンでも、業務機能の分散に重点を置いた従来の考え方は限界であると指摘しています。その上で、居住や産業、物流、文化、交流、防災など、多様な機能のあり方を示すとともに、情報化や環境意識の高まりにも対応できる都市構造のあり方を提案しております。
 現在、東京都では都市計画マスタープランの策定と、これに基づく用途地域等の見直し作業に取り組んでいるところですが、私はこれらの中で新しい視点に基づいた都市構造の実現に向けて政策的なねらいを明確にした戦略的な都市づくりを展開していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、東京都は、都市計画マスタープランの策定とともに、街区再編プログラムといった新しい制度や、NPOの登録制度などを含む都市づくり基本条例について、準備が整った段階で速やかに条例化すると答弁してきました。条例化に当たっては、あらかじめ都民の意見を広く聞くために、早期にその内容を示すべきと考えますが、現時点での取り組みについて伺います。
 都市再生は個別の民間プロジェクトだけが注目を集めがちですが、地域のまちづくりを進めるという視点からは、地域に住む人たちやNPOなどによるまちづくり活動を支援していくことも重要な要素であります。都市計画法の改正により、まちづくり組織による都市計画の提案制度の導入といった草の根まちづくり活動に対する支援が創設されました。また、国においては、まちづくり活動に対する統合補助金による支援などの制度もあります。私は、東京都としても、都民やNPOなどのまちづくり活動に対して積極的に支援していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、環境影響評価条例の改正について伺います。
 東京は依然として深刻な大気汚染に直面するだけでなく、地球温暖化やヒートアイランドなど、新たな環境の危機に直面しています。これらの環境の危機を克服するためには、都市づくりの中でも一層の環境配慮を貫くことが必要です。今回、石原知事提案の環境影響評価条例の改正は、計画段階アセスメント制度の創設と、事業段階アセスメントの緩和が主な柱となっております。計画アセスについては我が国初めての意欲的な制度として評価するものですが、一方、事業アセスについては、対象事業規模の緩和によって地域への環境に大きな影響を与えることが懸念されます。今回の条例改正の目的は、計画アセス、事業アセスを一連一体の制度として再構築することとしていますが、そこでまず、今回の提案が東京都の環境に配慮した都市づくりを進める上でどのような効果があると考えるのか、その基本的な考え方を伺います。
 計画アセスの創設については、これまで私たちが求めてきた制度でありますが、なお幾つかの点について確認したいと思います。
 日本の環境アセスメントの制度とよく比較されるものに、アメリカの国家環境政策法、いわゆるNEPAに基づくアセスがあります。この制度は、連邦政府の関与するあらゆる政策、計画、事業、法案までをアセスの対象とするとともに、代替案の取り扱いについても、何もしないという、いわゆるゼロオプションを含む複数の代替案を比較検討することが義務づけられております。こうした制度に比べれば、東京都の計画アセスもまだまだ検討すべき課題があると思います。今回条例化する計画アセスの運用実績を重ねることとあわせ、次の研究課題として、政策アセスメントの導入やゼロオプションの導入など、さらに進んだアセスメント制度の導入についても検討していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、私たちは、これからの環境アセスメントのあり方は、より計画の早い段階で複数案を示し、都民とのコンセンサスを図りながら進めていくことが、東京都あるいは民間の事業を問わず、一般化されるべきだと考えております。しかし、今回の条例改正案は、経過措置の中で、計画アセスの規定は事業者が民間などの場合は適用しないと、東京都の計画だけに限定しております。少なくとも東京都が実施する計画アセスによって一定の実績が蓄積された後は、できるだけ早期に民間の事業に対しても計画アセスの対象とすべきと考えますが、見解を伺います。
 今回の条例改正案には現行アセス手続の合理化として、期間の短縮を目的とした手続の変更などが提案されております。行政手続の簡素合理化は時代の要請でもあり、環境アセスの制度発足以来二十年の蓄積を活用することや、ITの進展による効率化などによって手続期間を短縮することは確かに必要です。しかし、手続期間の短縮を求める余り、住民への周知や意見の反映がおろそかにされてはなりません。改正案では、特に環境評価書案の提出後のプロセスに関し、説明会の開催や都民意見提出の手続が簡略化されているように思われますが、東京都はインターネットの活用など、運用上の工夫も含め、住民への周知、住民意見反映について、より充実を図っていくべきと考えますが、見解を伺います。
 さて、東京都は、今回の条例改正に合わせ、施行規則を改正し、都心、副都心、都市再生緊急整備地域などの特定地域において、高層建築物におけるアセスの対象規模を、高さ百メートル以上かつ十万平方メートル以上から、百八十メートルを超え、かつ十五万平方メートルを超えるに緩和すると説明しています。しかし、来月中にも指定がされる都市再生緊急整備地域について、東京都の申し出どおり、七地域二千四百ヘクタールがそのまま指定されるとすれば、例えば月島などの下町地域で、京王プラザホテル百六十九メートルということですが、そうした超高層ビルが何本も林立しようと、アセスの対象にならないわけであります。
 これまでにも予測以上の複合的な現象が生じ、環境悪化につながってしまった事例は数多くあります。そもそもそのような都民生活に大変大きな影響を与える制度の緩和が、議会の議決ではなく、知事の裁量にゆだねられてしまうということにも疑問を感じます。私が例に挙げたような事例が本当に環境アセスの手続を経ずに実行されてもよいものかどうか、知事の率直な感想を伺います。
 私は、三月の予算特別委員会でも取り上げましたように、例えば秋葉原のITセンタービルのように、高さ九十九・九メートルで、十センチ低いから対象外だというようなアセス逃れについては疑義を申し上げました。条例を改正するのであれば、むしろ規模に満たない事業であっても、スクリーニング手続などによりアセスの対象にするような見直しがなされるべきであったと考えます。対象とならない建築物については、この六月からスタートした環境確保条例の建築物環境配慮計画書制度を活用して、環境に優しい建物づくりを促すことになると思います。私は、建築物に求められる環境性能を事前に明らかにし、その採用を義務化していくことなど、都市づくりにおける環境配慮を一層明確にルール化すべきと考えますが、ご所見を伺います。
 次に、文化振興について伺います。
 東京を千客万来の魅力ある都市に再生するには、ハード面での都市機能整備の促進もさることながら、芸術、文化といったソフト面の活性化を図ることも欠かせない要件であることは、改めて指摘するまでもない共通の認識であると思います。二十世紀初頭のパリに多くの芸術家を志望する若者が集まり、その中から後に世紀を代表するアーチストが輩出したことにより、芸術の都パリのイメージが形成されました。また、現代絵画やミュージカルを初めとする舞台芸術のメッカとして、それぞれの分野での成功を目指す世界じゅうの若者の関心を引きつけてやまないニューヨークも、そこには単に学べる環境があるだけではなく、自立へのチャンスをつかむことのできる環境があったからだと思います。その意味からすると、若手アーチストの発掘に期待の持てる先進的な取り組みといえるワンダーウオールでの入選作家などについても、それだけで終わらせるのではなく、自立への機会の拡大につながるよう、個展開催の機会を得られやすくするような仕組みづくりを考えるべきではないでしょうか。こうしたことが長い目で見れば、必ず東京の文化振興につながってくると思うのであります。知事の所見を伺います。
 さて、八月十八日から開催される「アジア舞台芸術祭二〇〇二東京」の成功を期待するものでありますが、これを単発のイベントで終わらせることのないよう、東京都として十分意を払っていくよう、あえて申し上げておきます。
 加えて、直ちに実現するのは難しいとは思いますが、東京あるいは首都圏にある公立、私立を問わず、さまざまな美術館、博物館の収蔵品を一堂に集めれば、ルーブル、大英博物館、メトロポリタンにも引けをとらない個性ある展示会となり、諸外国からも多くの人々を呼ぶことができる事業となるのではないかと考えております。将来的な検討課題として提案しておきたいと思います。
 次に、いわゆる迷惑防止条例の改正についてお伺いします。
 今回の条例改正案に盛られた、つきまとい行為等の規制に関しては、原案のままですと、その運用によっては憲法の保障する基本的人権を侵害する危険を含んでいると指摘せざるを得ません。
 一昨年制定されたストーカー行為規制法でさえ、恋愛感情が満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的と、その対象範囲を限定しているだけでなく、人権尊重のための乱用禁止規定が定められております。
 ところが、このたび提案された改正案では、職場や学校、地域社会での関係に起因する悪意の感情を充足する目的となっており、あらゆる社会活動に及ぶものといえるほど、その対象範囲を拡大しているばかりか、身の危険を感じなくても、不安、迷惑を覚えさえすれば規制できるようになっております。それも、警告、禁止の措置もなく、直罰型で、警察裁量での規制ができる中身であります。
 したがって、仮にこのままこの改正案を定めるならば、現在、日常的に行われている正当なる労働運動、抗議行動、マスコミ等の報道、取材活動などを恣意的に規制することも可能となってしまう危険性があります。この点についてはどのようにとらえているのかお伺いをいたします。
 現下の社会情勢を真摯に分析した上で、迷惑防止条例の改定が避けられないならば、規制する対象から正当なる場合を除くとの文言を加え、構成要件を明確かつ限定的に定めること、そして、直罰型の警察規制構造で最も起こりやすい冤罪を発生させないためにも、乱用禁止規定を設けることが欠かせない要件と考えますが、所見を伺います。
 次に、ピンクビラの規制についてですが、警視庁では、従来から繁華街等におけるピンクチラシ等の掲出に対し、地域住民やボランティアの人たちと連携して環境浄化運動を展開していますが、私はむしろ、表現されたものの内容の是非について警察が判断するのではなく、このような地域住民やボランティアの人たちとの連携をさらに深めることで、環境浄化を進めていくことが望ましいものと考えます。見解を伺いたいと思います。
 次に、被害者への援助について伺います。
 今回の改正案では、被害者への援助を盛り込んでおりますが、ストーカー行為規制法が、ストーカー行為の被害をみずから防止するための援助を受けたいとの申し出があったときは援助を行うものとすると定めているのに対して、条例案では、被害を受けた者からの申し出があったときは援助を行うことができるとの、できる規定であり、援助の対象となる人の範囲も、援助に対する警察当局の姿勢も消極的な規定となっております。
 私は、援助の対象者を、被害を受けた者だけに限定するのではなく、みずから防止をするための援助を受けたいとの申し出があった場合にあっても、未然防止の観点から積極的に援助をすべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、エイズ対策について伺います。
 平成十三年における全世界での新規HIV感染者数は五百万人、そのほとんどが途上国とのことですが、先進国においては、我が日本だけが増加傾向で推移をしております。日本における患者、感染者数は六千七百七十四人、東京都における新規患者、感染者報告数は三百七十六人。今から十年ほど前、エイズパニックともいえる状況だった平成四年には、東京都の新規患者、感染者数は百二十八人でした。それが十年たった現在は、約三倍にもなっております。
 他方、エイズに対する都民の関心は、急激に低下しております。ピークであった平成四年には、三万四千五百八十八人が都立病院、保健所等で抗体検査を受けました。しかし、平成五年以降は減少し続け、感染者数の激増とは対照的に、現在では半減してしまっております。
 十年たった現在、マスメディアでエイズ関連の報道を見ることもほとんどなくなりました。感染者をふやさない、感染者への偏見をなくすといったことを目的とするHIV・エイズ対策に実効性を持たせていくためには、まず、都民がこの危機的状況について認識を持つことが欠かせないと考えます。答弁を求めます。
 また、東京都内六カ所の赤十字血液センターで初めて献血をする人のHIV抗体陽性者率は、平成十二年には十万人対二十六・二と驚異的な高さを示しております。この数字は、感染に不安を持つ人が、検査目的で献血を行うケースが多いことをうかがわせるものではないでしょうか。
 抗体検査には、感染から抗体ができるまでにウインドピリオドと呼ばれる期間があり、最新の検査法を用いても、検出不可能な期間が残ります。赤十字血液センターでは、現在も検査目的の献血を防ぐため、受け付け時に問診を行い、不安のある人は献血をやめるよう呼びかけており、さらにIDカードの導入も検討しているとのことですが、問題の根本的解決にはなりません。
 東京都は、検査窓口をふやす、夜間・土日も実施するなど、敷居を低くし、間口を広げる対策を講じる必要があると考えます。また、検査とあわせて行っているサポート体制、相談機能を一層強化すべきと考えますが、いかがお考えか伺います。
 HIV・エイズに対する正しい認識が不足しているために、感染者がふえ続け、また感染者に対する強い偏見も解消されません。感染すれば、今のところ根治療法のない病気ではありますが、きちんと管理をすれば長期間発症を抑えることができるなど、HIV・エイズの正しい認識を促す教育が必要であります。
 エイズ治療拠点病院、協力病院、その他のサポート体制は充実しているものの、残念なことに、感染の事実が周囲に知られると、健全な社会生活が著しく困難になります。感染者、患者を社会が受け入れ、また患者自身は、自分は受け入れられる、住めるという意識を持つことができるような風土づくりが必要です。
 NPOを含め、啓発活動にかかわる方々は、砂漠に水をまくような感を持たれているそうですが、都民の意識を変える、偏見をなくすために、着実な施策を積み上げていくことが大切です。
 都においては、四十名程度のピア・エデュケーターを養成しています。多くの人にHIV・エイズに正しい認識を持ってもらうため、地域を拠点としてこの事業を行っていく必要があると考えますが、所見をお伺いいたします。
 静かな爆弾ともいわれるHIV・エイズに対しては、特効薬のような施策は難しく、その危険性、危機的状況は忘れられがちです。これまで都として講じてきた対策が一定の成果を上げていることは否定しませんが、感染者、患者ともに増加し続けている現状を認識しなければなりません。着実な取り組みを続けるとともに、この現状を打開するための新たな対策を検討する時期に来ていると考えますが、いかがお考えか所見を伺います。
 次に、食品の安全確保について伺います。
 BSEや偽装表示、無認可添加物、そして最近は、食品衛生法で禁じられた原料を含む香料が多くの食品や飲料に使われたことが次々に発覚し、もはや食に対する消費者の不信は爆発寸前の状態であります。
 こうした中で、今、何よりも消費者が求めているのは、正確な情報を得ることです。現在は、企業がほとんどの情報を持っており、消費者、行政との情報ギャップは少なくありません。内部告発などで問題が顕在化すると、後追いで続々と新聞に謝罪広告が載るといった状況で、企業のモラルの低下、隠ぺい体質が問題となっております。
 食の安全を確保するためには、企業が情報を公開し、消費者の信頼を得ることが、結果として企業の利益となるような構図を誘導し、モラルの向上を図るといった戦略が必要であり、行政には、こうした挑戦をすることで都民の期待にこたえることが求められております。食に対する安全、安心を確保することは、都民、国民の生活にとって最も基本的な問題ですが、食の安全確保に関する知事の所見を伺います。
 政府のBSE問題調査検討委員会報告は、食品安全行政に消費者保護と消費者参加を導入するとともに、リスク分析という考え方に基づいた行政システムを提案するものとなっております。中でもリスクコミュニケーションについては、消費者に身近な地方自治体が果たす役割も極めて重要と考えます。消費者保護のため、行政、消費者、専門家、企業の参加によるリスクコミュニケーションに積極的に取り組み、その過程、結果をすべての都民にわかりやすい形で情報提供できるようにすべきと考えますが、いかがお考えかお伺いをいたします。
 一連の食品関連の事件は、これまでの行政や法の問題点を露見させ、都民の食品に対する不信、不安は高まる一方であります。これに対処するためには、全く新たな考え方や強力な行政の取り組みが必要と考えます。国も、やっと重い腰を上げ、食品安全法制定など法改正の動きを見せていますが、消費者により身近な東京都が、食の安全、安心確保対策を早急に実施すべきと考えますが、所見をお伺いします。
 さて、私たち都議会民主党は、五月十四日、小笠原諸島に視察団を派遣しました。この小笠原諸島は、誕生以来、大陸と陸続きになったことのない海洋島であるため、生物進化の過程を示す世界的に貴重な動植物が生育する島であります。
 しかし、今、入島者の持ち込む外来植物等が島固有の植生を侵食し、固有動植物に絶滅の危機をもたらしております。とりわけ南島では、地表を覆う植物が衰退し、裸地化が進行しております。このため、現在、南島で採取した種子や苗などを用いて植生の回復に努めるとともに、ボランティアの協力を得て、南島全島にわたって移入植物の除去作業を実施しております。
 平成十七年四月には、世界初の超高速船テクノスーパーライナー、TSLの就航が予定され、来島者も、現在の年間二万五千人から五万人にふえることが期待されております。島の生活の自立のためには大きな前進でありますが、そのことは同時に、島の貴重な自然が今まで以上の脅威にさらされることにもなります。島の生活の自立と、世界的にも貴重な島の自然保護との両立を図るための新しい仕組みづくりが重要な課題になっております。小笠原の人々とともに、この新たな仕組みづくりに積極的に取り組む必要があると考えますが、所見をお伺いいたします。
 かつては七千人を超える島民を数えた小笠原諸島は、昭和十九年四月に強制疎開が開始され、我が国で最初の地上戦となった硫黄島では、日米合わせて二万七千人もの戦死者を出しました。そして、昭和二十年三月の旧日本軍玉砕を経て、米軍の占領下に置かれました。我が国に返還されたのは昭和四十三年。以後の復興事業を経て、現在は二千五百人の人々が暮らしております。この小笠原諸島が存在することによって、日本の排他的経済水域の約三〇%が確保され、東京都は、沖縄県と並ぶ海洋県となっています。人口が少なくとも、小笠原諸島は、我が国に、そして我が国の経済に非常に重要な貢献をしているということができます。
 基幹産業である農業、漁業、観光などの分野において、自然と共生しつつ、この島々に住み暮らす人々の生活の自立を促すことは、私たちにとっても重要な課題であると考えますが、いかがお考えか伺います。
 さきに述べましたが、小笠原諸島は、美しい自然の陰に悲劇の歴史をも刻んでいます。昭和二十年に旧日本軍が玉砕した硫黄島には、いまだ一万二千余柱の旧日本軍将兵の遺骨が未収集のまま残され、放置されております。戦没者遺族は、戦後五十七年たった今でも、肉親の遺骨収集もなし得ぬままに放置されております。
 硫黄島旧島民や戦没者遺族のせめてもの願いであった墓参団の宿泊施設が、ようやく本年六月二十二日に硫黄島に開所されることになりました。ささやかな一歩であります。しかし、今も地熱五十度を超す酸欠の地底に眠る一万二千余柱の遺骨を早急に収集することなくして、我が国の戦後は終わりません。本来、遺骨収集は国の役割ではありますが、今も遅々として進んでおりません。遺族の方々の心情を思えば、東京都としても、早期に遺骨を収集するよう国に強く求めていくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 また、小笠原の近海には、今なお戦争の傷跡ともいえる数多くの軍艦や、旧日本軍が徴収した民間船の残骸が沈んでおります。そして、父島、母島には、何キロにも及ぶ壕がめぐらされ、本土決戦に備えて整備された高射砲、トーチカ、銃眼、通信司令部、野戦病院などや当時の人たちが使っていた品々が、風化が進んでいるとはいえ、ほぼそのままの形で残されております。父島や母島では地上戦は行われませんでしたが、配備された旧日本軍は、食糧の補給を絶たれ、その多くが餓死したとのことです。そうした事実を物語る貴重な戦跡が、今、何ら保全策も講じられることなく、野ざらしの状態にあります。
 戦跡は、近代の遺跡として、学術的にも貴重な価値を持つことから、国においては、平成七年に文化財指定基準が改正され、第二次世界大戦終了までの戦跡について史跡指定が可能となっております。この小笠原に残る戦跡を、ジャングルに埋もれて荒れるままに放置しておくのではなく、東京都においても、史跡として、経費をかけてもきちんとした形で保存し、残していくことが大切ではないかと考えます。また、そのことは、これらが観光資源となって小笠原の振興にも寄与するものと期待されます。小笠原の戦跡指定について、ぜひ、いかがお考えか伺います。
 近年、自然、歴史、文化など地域固有の資源を生かした観光を成立させよう、適切な管理をして自然の保護、保全を図ろうとの考えから、エコツーリズムが盛んになってきております。私は、このエコツーリズムの考えのもと、小笠原諸島がいつまでも魅力的な自然を保ち、私たちとの触れ合いの機会が永続的に提供され、地域の暮らしが安定することを心から願うものであります。
 最後に、内部努力について申し上げます。
 今、社会経済情勢は、依然として極めて厳しいものがあり、平成十四年度予算においては都税収入が大幅に落ち込むなど、都財政の深刻な事態が今後とも続くことは確実な状況にあります。東京都は、これまで財政再建推進プランに基づく施策の見直しや宿泊税の新設など、さまざまな財源確保策に取り組んでまいりましたが、何よりも力を入れなければならないことは、都みずからの内部努力であります。
 職員給与の四%削減を初め、職員定数の削減や監理団体改革など、これまでの東京都の取り組みには一定の評価を惜しみませんが、内部努力を継続する姿勢は常に必要であり、今後とも、あらゆる取り組みを果敢に実践していくことが求められます。
 そうした中、先ごろ、職員の通勤手当制度の改革についての提言をいただきました。現在、東京都を初め国や多くの地方自治体では、職員の通勤手当について、一カ月定期券の価額を毎月支給する方式を採用していますが、これを、割安な六カ月定期券の価額で年二回支給する方式に改めるというものであります。このような措置によって、JRでは約二〇%、私鉄では約一〇%の差額が生じます。もちろん、約十七万余という都職員の通勤手当の改革ですから、実現するまでには、さまざまに難しい課題があるとは思います。しかし、職員に大きな負担をかけるわけではなく、支給方式を工夫するだけで、年間三十億円から四十億円もの節約になるとの試算もあります。
 本件については、既に常任委員会で審議されたとのことですから、ここでは意見にとどめますが、一部の自治体では既に実施しているとのことでもあり、東京都においても、十分検討に値する提案であると考えます。新しい視点からの内部努力策として、ぜひ実現に向けて取り組んでいただきたいと思います。
 以上で、都議会民主党を代表しての質問を終わります。知事並びに関係局長の誠意ある答弁をお願いいたします。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 林知二議員の代表質問にお答えいたします。
 最初に、有事関連法案起案に際しての自治体との協議についてでありますが、先ほどの質問の中に、国と地方自治体は対等の立場であるといわれましたけれども、ある意味ではそうでありますが、ある場合には、私は違うと思います。それは、おのずと国家の主権というものの中に地方自治体の主権も含まれるわけでありまして、先ほどの古賀議員の質問にも申しました。私は、国家の安危にかかわる、ひいては、地方自治体はそれに巻き込まれるわけでありますけれども、そういう事態の中で、それに対処するために、国家の行動に地方自治体が条件をつけるということはあり得ないと思いますし、私は、そういう際には無条件で国に協力するということを、かねてから申してまいりました。
 ただ、警察予備隊から出発して、今では自衛というものをあくまでも目的とするということに限られておりますが、しかし、かなりな兵力というものを抱えているわけでありますけれども、それが自衛に限っても、ともかく行動を起こすときに、それを有効に行動せしめる法律というものが整備されていないということは、これは不思議な話でありまして、今回の有事法制というものは、もう遅きに失したと私は思っておりますが、そういう意味でも、私は、この段階でもなお、これが国会で論議の対象になり出したということは結構なことだと思っております。
 ただ、先般も全国の知事が集まりましての意見交換会がありましたが、有事が到来する、つまりこの国の主権が侵される可能性があるという、その事態についての予測と、それから、おそれがあるという二つのカテゴリーがいわれておりまして、予測の方は、周囲の条件というものを分析して、これはどうも間違いなく厄介な問題が起こる、国家が安危を問われる事態にさらされ得るというのが予測だそうで、おそれがあるというのは、その一歩手前云々ということでありましたが、そのカテゴリーが非常にはっきりしませんで、政府の答弁もあいまいなものでありましたが、いずれにしろ、その二つのカテゴリー、つまり予測と、そのおそれがあるという段階に応じて政府の行動もあるでありましょう。その段階では、少なくともおそれがある段階では、いろんな形で地方自治体と政府が話し合うという時間的な余裕もあると思いますが、いずれにしろ、先ほど申しましたように、単に外国が軍隊を構えて正面からこの国を侵犯してくるということだけではなくて、時間的、空間的に世界が狭くなり、いろんな技術が発展したために、既にこの国は、かなり深い部分で侵犯を受けているという事実も、私たちは忘れてはならないと思います。
 それから、非核三原則についてでありますけれども、ここで長いお説教をするつもりはありませんが、かつては、これは非核二原則だったんです。岸内閣のときまでは非核二原則だったんです。岸さんは体を張って、日本の安保条約というものを改定いたしました。日本の日米安保におけるステータスというものを、あれによって事前よりは幾分向上されたわけでありますけれども、そのときも、この問題が国会で論議されました。私はまだ国会におりませんでしたが、しかし、観察者として詳しく覚えておりますけれども、あのとき、論議の中には、日本は核は保有しないと。しかし、つくらない、持たないがゆえに、場合によっては、安保というものを通じてこの国に核を持ち込まさせ、それを顕在化させることによって抑止力を発揮させるという論がありましたが、佐藤内閣の時代になって沖縄返還が大問題になりまして、そのときに、あそこには膨大なアメリカの核兵器がありますが、これを抜いてとにかく返還してもらいたいということで、核抜き沖縄返還ということの中で、つくらぬ、持たぬ、持ち込まぬという三原則がいつの間にかでき上がりまして、これがまあ、国会の議決があったんでしょうか、私、鮮明に覚えていませんが、いつの間にか国是ということになったわけであります。
 ただ、そのさなかに、私が昔書いた論文にも書いてありますが、日米繊維交渉がもつれまして、アメリカが非常に不当な要求を日本に突きつけ、日本を抑圧しようとしたときに非常に反米感情が高まりまして、そのときに、それを踏まえて、日本国民の核保有論がにわかに高まったことがあります。ですから、先ほど、福田官房長官が、場合によっては国民の核保有論が高まる、国民が核の保有等も欲することもあり得るといったのはまさにそのとおりでありまして、あのときの、毎日新聞だったと思いますけれども、そういう繊維交渉がもつれた中での世論調査で、日本は核を持つべきであるという論が三五%、持つべきでないという論が三六%まで拮抗したことがあります。
 それを踏まえて私は、ある論文を書きました。例によって雑誌社が勝手に題を変えまして、私は、非核の神話は崩れたのかという題にしましたら、非核の神話は崩れたという断定的なキャプションがつきましたので、いつの間にか核保有論者にされましたが、読んでいただくとわかりますけど、私はいろんな問題を提起しただけでありまして、そこで日本は核を持つべきだといったことは一回もございません。
 繰り返して申しますけれども、私、福田内閣のとき、閣僚をしました。そのときに、ある野党の議員がその論文を持ち出して、あなたは核保有論者じゃないか、いつの間にか意見が変わったというから、あなた、読みもしないで人のこといわない方がいいと。結局、その人は恥をかいて黙りましたけれども、もしこの問題に疑義をお持ちなら、どうかいつでも差し上げますから、私の論文を読んでいただきたい。
 ただ、福田さんも非常に今回迷惑したと思うし、私も迷惑でありますが、官邸に詰めている新聞記者というのはかなりレベルが低いですな。これは東京都庁詰めの記者よりも、比べるとはるかにレベルが低くて、その例は枚挙にいとまがないけど、私、ある会合で、森君が総理大臣のときに、森総理がそこから退席して一時間ほどして外へ出てきましたら、森番の記者がおりました。それで、私、つかまって、石原さん、森総理と話しましたかと。ああ、話したよ。ちょっと話したといったら、どんな話ですか。大した話じゃない、面倒くさいから密談といったら、どんな内容の密談ですか。これ、まともに新聞社が聞くんですよ。
 そのたぐいがいまして、核という問題について、持つとか持たない以前に、核の存在そのものをポジティブに前提として話をすると、これは原子力発電にしてもなお、何かタブーにさわった人間としてその足を引っ張る。今度の福田発言も、恐らくつまみ食いでしょうが、しかも私のあれに対する電話、激励したわけじゃない。参考の資料を送りますといっただけでありまして、それを、ああいうベタ記事でありますけれども、流した通信社、恐らく共同か時事かどっちかでしょう、二つしか入ってないんだから。これはやっぱり自分の名前を名乗って、責任を持って、自分はこういう記事を書いたというべきですな。
 でありまして、私は核を保有すべきであるとはいったこともありませんし、今も考えておりません。ただ、小沢一郎君がいったように、日本は一朝にして持とうと思ったら核兵器が持てるんだぞというポテンシャリティー、つまり原子力の開発をすることによって、要するにそういう潜在度というものを持っていくことはちっともおかしくないと思うし、それは国際関係の中でこれから大きな大きな日本のカードになると思います。これを否定できる人はだれもいないと思います。
 次いで、東京の再生に向けた取り組みについてでありますが、林さんのお言葉のように、確かに今後とも、単に地域の開発、再開発だけではなくて、産業や、観光もまた産業の一部でありまして、文化、環境、福祉など、さまざまな分野で東京は先駆的な施策を実施して、首都として再生を遂げていくべきだと思います。
 ただ、今回の都市再生特別措置法は、政府の意向で、とにかく東京を含めて大都市で、価値がありながら手つかずで遊んでいる土地というものを流動化したいということが主眼でありまして、それにこたえて東京は、先ほど申しましたように七つの候補地を挙げ、大阪が四つ、名古屋が二つという形で、この三大都市の中で、この土地の流動化というものをねらった再生の開発が行えるわけでありますが、おっしゃるとおり、決してこれだけで都市が再生するわけではありません。
 一方では、大気汚染に見られるように、生活環境というのは非常に悪化しておりますし、福祉の問題も、いろいろ問題がありますが、いずれにしろ、東京都は、国は反対しましたけれども、認証保育所を設置し、共産党は反対でありましたが、最初二カ所設けました認証保育所は、今では八十八カ所展開して、大変都民の評価を得ております。そういうものを総合的、複合的に展開することで、都市の再生は図られていくものだと思っております。
 次いで、環境影響評価条例の改正の効果についてでありますけれども、先ほど申しましたが、ともかく日本のプロジェクトの展開は遅い。外国に比べると非常に遅い。いろんな原因がありますけれども、その一因は、やはり環境アセスメントに余計な時間がかかり過ぎる。これ、もっと合理的に有効に効果的に行えないかということで、今回の改正を図ったわけであります。国際競争力の強化や魅力の向上などをスピード感を持って大きく展開していくためにも、それによって新しい時代にふさわしい良好な都市環境を形成していくためにも、こういった措置が必要だと思っております。
 計画段階の環境影響評価制度の導入によりまして、都の大規模な公共事業について、それが着手される以前の早い段階から計画が公表され、また、その複数の事業計画が示されることによりまして、環境により配慮された実質の事業展開が行えるようになると思っております。さらに、都の広域複合開発計画をアセスメントの対象にすることで、複数の事業についての環境影響を事前に把握することが可能となり、計画が地域環境により配慮されたものとなると思っております。
 次いで、計画段階環境影響評価制度についてでありますが、いずれの制度であれ、時代の変化に合わせた不断の見直しを行いませんと、非常に硬直した陳腐なものになっていきます。そういうことで、今回、都は全国に先駆けて、新たに計画段階環境影響評価制度の条例化を提案いたしました。
 今後、都の大規模な公共事業に対して、この計画段階環境影響評価制度の着実な運用を図り、制度運用により知見を重ねていくつもりでございます。
 それから、今回の条例改正の中で、大きなビルというものを対象として外す云々の問題でありますが、ビルに関しては、これは環境にいろんな影響を与えるということは自明のことでありまして、これに重ねて、環境確保条例や中高層建築物の紛争予防条例などがありまして、これによって適切に対応を図っていけると思いますし、例えばその大きなビルが建つことで環境に与える変化というものは、日照権とか電波障害ありますが、日照権というのは、これはまた一つの考え方でありまして、外国などは日の当たらない北側の部屋の方が家具が狂わずに評価が高いという事例もありますし、電波障害は、これはもうどうしようもないことでありまして、現に六本木の森ビルがあそこへ建ったことで、八王子の方まで電波障害の影響が出ている。これは、しかし、防げようとしたら防げることでありますから、そういったものは技術的な問題でありますから、いかなる立場の人間がこの保障というものをどういう形で行うかということをきちんと規制していけば、私は対象から外せ得る一つの環境案件であるとは思います。
 いずれにしろ、繰り返して申しますけれども、既存の環境確保条例や中高層建築物の紛争予防条例などによって適切に対応を図るつもりでございます。
 次いで、若手芸術家の活動を積極的に援助しろということでありますが、いわれるまでもなく、とっくにやっておりまして、一度ぜひ林さんにもおいでいただきたいんですが、順天堂病院の裏に何かわけのわからない建物が遊んでいましたんで、それを改良しまして、ワンダーサイトというささやかなミュージアムをつくりました。就任してくれました今村君という若い建築家でありますけど、非常に鋭意な運営をしてくれておりまして、どうかここに、ファインアートの芸術家だけでなくて、ジャンルをまたいで意欲のある芸術家が集まるような、かつてのモンパルナスのように、出世する前のピカソであるとか、あるいはモジリアーニ、パスキン、フジタといった人が集まり、写真家のマン・レイや詩人のポレリアールがいたと。そういう東京の鋭意な若い芸術家のたまりにしてほしいということで、着々進んでおります。そこで、ワンダーウオールに当選した若い作家の個展も随時やっておりますし、また、多くの画商をそこのメンバーとして迎えることで、都の手を離れた、もっと広い範囲での市場でそういった若い芸術家が育っていくように、いろいろ力添えを依頼もしております。
 先般、これは画期的なミーティングでありましたが、作曲家の細川俊夫さんのアレンジメントで、細川君とかラッヘンマンといった現代音楽の有名な作曲家の演奏を主にしている、アルディッティというんですか、有名な弦楽四重奏団が、意気に感じて、東京に来たついでに演奏してもらいました。非常に幅の広い芸術マニアが集まりまして、活況を呈しましたが、そういった形で、着々進行しつつありますので、どうかひとつ、民主党もいろんな方を紹介していただいて、民主党の控室にでも、一点、二点、若い絵かきの絵を買っていただきたいと思っております。お安くいたしますから。
 それから、迷惑防止条例の改正でありますが、社会の進展に伴って、以前には予測されなかったいろんな迷惑行為が出現しております。このような迷惑行為を防止し、都民の安寧な生活を確保することは極めて重要なことと考えております。
 他方、正当な権利に基づく活動は、改めて申すまでもなく、不当に阻害されることがあってはならないものでありまして、正当な労働運動、抗議行動、マスコミ等の報道、取材活動等を恣意的に規制するようなことは全くないものと考えております。
 構成要件の明確化や乱用防止規定についてでありますが、つきまとい行為等については、明確に、専らねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で行われるものに限って規制することとしておりまして、正当なる場合は既に除かれているので、そのような規定は必要ないものと考えております。
 この条例の運用に当たり、乱用しないことは当然のことでありまして、また、警察官職務執行法などにおいて、その旨、既に規定されているところでもございます。そういうことでありまして、乱用禁止規定を設ける必要はないと考えております。
 次いで、食の安全確保についてでありますが、これは本当に悪質な事件が頻発いたしまして、企業はそのたびに重役なり社長が出てきて、深々頭を下げて、その後、自主的な改良が一向に行われていない。特に東京は日本最大の消費地でありまして、ということは、東京にこそ、そういった被害者というものがあふれているという現況だと私は思います。
 いずれにしろ、国の動きが鈍いならば、都議会の皆様のご意見を賜って、東京は国に先んじて、消費者を本質的に守るというふうないろんな措置を講じていかなくてはならないと思っております。例えば、中国産の野菜など、専門家に調べさせますと、驚くほど危険な農薬が残留していると。こういったものも、外交関係あるかもしれませんけれども、はっきり明示することで、せっかくWTOに加入した中国に、参加した者としての責任をきちんととらせる必要も、これはまた一つの友情の発露ではないかと思っております。
 次いで、小笠原の自然の保護と利用についてでありますが、遅まきながら、民主党の方々がみずから出向いて南島を見学していただいた。大変ありがたいことでございます。私は、あそこは選挙区でもありましたし、大変好きな土地でもありますんで、政治を離れてからもしげしげ行ってまいりましたが、とにかく知事になって行きまして、あの荒廃には本当に驚きました。ということで、新しい規制を構えて、しばらくあそこを冬眠させて、あれを何とか蘇生させたいなと思っておりますが、おいでになってごらんになったと思いますけれども、観光客が勝手に入って踏みしだいてしまった、あそこにしかない、あとクレタ島にあるそうですが、刃物のような鋭利な岩というものは、もう戻りませんね、摩滅してしまって。あの間に咲いている美しい花はよみがえるでしょうけど、あの岩はもう戻らない。
 こういった無残な荒廃があっという間に進んだわけでありまして、都がいい出して、国立公園を地方自治体の責任でやるといったら、環境省がぐじゃぐじゃいって、そのうちに林野庁が出てきて、何か要するに余計なことするなという話でしたが、じゃ、おまえたち、今まで何をしてきたんだという話をしましたら、一歩下がりまして、東京に預けて協力をするということでありますが、実は同じことが、私も環境省におりましたんで大きなこといえませんけれども、あのころはもっとほかの問題がありました。この平時になって考えますと、観光というものは非常に貴重な産業と認識されるときに、観光のための大きな素材であります日本の国立公園というのは、全く管理がずさんで、荒廃している。
 この間、関東知事会があったときに、山梨県の昔から知っている天野さんに、あなた、富士山へ上がったことがあるのかねと。スバルラインを上がっていって、あの五合目のすばらしい展望の横に、一つ山梨県の県会議員が持っている会社がつくっている、わけのわからぬお茶屋がある。これがどんどんどんどん不法に拡張されて、今度またそれが問題になったそうですけども、あんた、自分のところの県会で遠慮せずやったらどうだといったら、本当に今度は私も腹立って、何とかしますということでしたが、これだって本当は、国立公園を管轄している環境省がもうちょっと緻密な調査をして調べなきゃならないけれども、全く人がそこに及んでいない。だから、地方自治体が引き受けざるを得ない。それをやろうとすると、お上に任せろ、地方は生意気だと。それではますます荒廃が進むわけでありまして、この問題について、民主党が強い意識を持っていただきました。大変心強い思いがいたします。
 次いで、硫黄島の戦没者の遺骨収集でありますが、私は、これはいうに易しくて、これ以上行うのは難しいと思いますよ。ますます高くなっている地熱、それから迷路のごとく張りめぐらされた地下道、しかも、それが崩れつつあって危険ですし、私はいっそ、あの島全体を一つの慰霊塔にして、墓参の方々の泊まる施設ももちろんのことでありますけど、ああいう小さなものじゃなくて、きちんとした慰霊碑というのを建てて、あの島そのものをモニュメントにする。
 ただ、あそこを預かっている自衛隊というのは、軍隊の通弊で、余計な人間が来ることを非常に嫌がりまして、これは要するに、あそこは大事な史跡でもありますし、大事な自然もあるわけで、国がその意向を持てば、東京も協力いたしますけれども、もう遺骨も劣化しているでしょう。それから、遺品も劣化して個人の識別が難しくなっているときに、私は、もう安寧に英霊に眠っていただくためには、あそこをきちんと大規模な慰霊碑として整備し直すことの方が、限られた人、遺族のためだけじゃなしに、多くの国民にとっても大きな意味のあるモニュメントになると思っております。
 その他の質問については、警視総監、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監野田健君登壇〕

○警視総監(野田健君) 初めに、ピンクビラに関する環境浄化活動についてお答えいたします。
 ピンクビラについては、地域住民やボランティアの方々の多大なご努力にもかかわらず、依然として公衆電話ボックス内に張りつけたり、住居等に投函したりするなどの迷惑行為が後を絶たない現状にあります。
 このため、本定例会で迷惑防止条例の改正をお願いし、多くの都民が迷惑に感じているいわゆるピンクビラを、性的好奇心をそそる、衣服を脱いだ人の姿態の写真もしくは絵または人の性的好奇心に応じて人に接する役務をあらわす卑わいな文言を掲載し、かつ、電話番号等の連絡先を記載したビラと規定し、これについて必要な規制を行おうとするものであります。
 環境浄化活動につきましては、今後も地域住民やボランティアの方々との連携をさらに深めて、積極的に推進してまいりたいと考えております。
 次に、被害者への援助の措置についてであります。
 ストーカー規制法第七条の警察本部長等の援助等の規定は、相手方から被害をみずから防止するための援助を受けたい旨の申し出があり、その申し出を相当と認めるときに限り必要な援助を行うものとするとされております。
 一方、本条例第九条に規定する援助の措置については、警察を利用して自己の立場を有利に導こうとする意図のもとにされる不適切なケースを排除するため、再発の防止または被害の回復を図るため援助を受けたい旨の申し出があったときは、必要な援助を行うことができるとし、その申し出をできる者を、被害者またはその保護者としております。
 なお、被害者として必ずしも断定できない場合でも、その事案の態様、重大性、危険性などを総合的に判断した上で、必要があれば、警察として適正に対応することは当然のことと考えております。
 したがいまして、ストーカー規制法の援助の措置と比較しても、援助の対象となる人の範囲も援助に対する姿勢も、決して消極的な規定となっているものではないと考えております。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 小笠原に残る戦争遺跡の保存についてでございますが、東京には、歴史上あるいは学術上重要な数多くの近代遺跡が残されておりまして、その保存、整備は大切なことであり、語り継ぐべき貴重な財産であると認識いたしております。
 そのため、都教育委員会は先般、史跡等整備検討委員会を設けたところでございます。ご指摘の小笠原の戦争遺跡も、この近代遺跡に分類されますことから、この委員会の現任期中に近代遺跡の基準づくりを進めていただきたいと考えております。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、住民基本台帳ネットワークについてでございます。
 お話の個人情報保護法の必要性につきましては認識しておりますけれども、住民基本台帳ネットワーク自体には、法令面、システム面及び運用面におきまして、十分な個人情報保護措置が講じられておりまして、改正住民基本台帳法が施行される八月五日に向けて準備を進めてまいりたいと考えております。
 しかし、東京都といたしましては、万が一、都民の個人情報が漏れるおそれがある場合には、システムの停止も含めた緊急対応措置を行う考えでございます。
 次に、小笠原諸島の振興と島民生活の自立についてでございます。
 小笠原諸島につきましては、昭和四十三年の返還以来、その歴史的、地理的状況にかんがみ、特別措置法のもとで、道路、港湾等の整備や農業、漁業の振興のための事業などを実施してまいりました。都といたしましても、島民生活の自立が重要な課題であると考えております。
 このため、引き続き事業の充実に努めるとともに、平成十七年のテクノスーパーライナーの就航も視野に入れて、豊かな自然を生かした観光の振興を図るなど、国や村と連携し、必要な取り組みを行ってまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 都市づくりに関する三点のご質問にお答えします。
 まず、戦略的な都市づくりの展開についてでございます。
 都市計画マスタープランの策定に当たりましては、都市づくりビジョンで示した、例えば三環状道路の整備、センター・コアにおける国際ビジネスセンター機能の強化や都心居住の推進など、環状メガロポリス構造の構築に向けた方針を明らかにしてまいります。
 また、用途地域等の見直しに当たりましても、ビジョンの方向性に沿った地域の将来像の実現に向けて、土地利用の誘導が可能となるよう、時代状況の変化に応じて、現行の指定方針、指定基準を見直し、政策誘導型の都市づくりを推進してまいります。
 次に、都市づくりの条例についてでございます。
 東京の市街地を質の高い都市空間へと再編整備するためには、土地所有者や民間事業者などの意欲や発想を生かすことが重要でございます。
 このため、街区再編プログラムや民間まちづくり団体の登録制度など、都市づくりの新たな仕組みについて、現在、関係区などとも調整を図っているところであり、今後、具体化に当たりましては、都民等の意見も聞く予定でございます。
 次に、民間団体によるまちづくり活動についてでございます。
 都市再生を進める上には、民間事業者による優良なプロジェクトの推進を図ることが必要であり、それとあわせて、地権者やNPOなど多様な主体の参加と連携による地域のまちづくりが必要でございます。
 このため、民間事業者など民間団体のノウハウを生かした地区や街区単位のまちづくりの推進を図る仕組みについて、現在検討を進めております。
   〔環境局長赤星經昭君登壇〕

○環境局長(赤星經昭君) 環境問題に関します三点の質問にお答えいたします。
 まず、計画段階環境影響評価制度の民間事業への適用についてでございますが、計画段階環境影響評価制度は、計画の早い段階から複数の案に環境の観点から比較検討を加えるもので、我が国においては初めての制度でございます。
 まず、東京都の事業計画において制度運用の実績を積み重ね、どのような事業や計画に、どのようなアセスメント制度がふさわしいか、研究してまいります。
 次に、都民への周知、都民意見の反映についてでございますが、ご提案のように、インターネット等の電子媒体を、評価書案の閲覧、あるいは都民意見募集に効果的に活用し、一層の充実を図っていきたいと考えております。
 また、新たに環境影響評価審議会委員の参加いたします都民の意見を聞く会の制度化を提案しておりまして、都民意見の反映についても可能な限りの充実を図っております。
 最後に、都市づくりにおけます環境配慮についてでございますが、都は環境確保条例に基づきます建築物環境計画書制度につきまして、緑化や省エネルギーなど具体的な配慮事項を三月に定め、今月から施行いたしましたが、今後、この制度の着実な運用に努めてまいります。
 また、本年一月に策定いたしました東京都環境基本計画では、都市づくりにかかわる配慮の指針を定めまして、事業の実施に際しまして、環境面から配慮すべき基本的事項を明らかにいたしました。今後、この指針を活用するなどして、環境に配慮した都市づくりを推進してまいります。
   〔健康局長今村皓一君登壇〕

○健康局長(今村皓一君) エイズ対策について、四点のご質問にお答えします。
 まず、エイズ患者と感染者の増加に対する都民の認識についてでございますが、ご指摘のとおり、都におけるHIV感染急拡大という現状について、広く都民に認識していただくことが、感染拡大の防止には不可欠であると考えております。
 次に、検査体制の充実及びサポート体制、相談機能の強化についてでありますが、患者、感染者を潜在化させないためにも、利用しやすい検査、相談体制の整備は重要であります。
 このため、都では、夜間常設検査機関である南新宿検査・相談室や保健所において、相談、検査を無料、匿名で実施しております。また、エイズ予防月間中は、南新宿検査・相談室を土曜及び日曜日も開設しており、これらの情報についても広く都民に広報しております。
 今後とも、これらの利用状況を踏まえ、より効果的な検査、相談体制となるよう努めてまいります。
 次に、ピア・エデュケーション事業を地域でも行っていく必要についてでございますが、都は、これまでもHIV感染拡大防止に係る啓発を含め、保健所において健康教育を実施してきております。
 今後は、ピア・エデュケーションなどの手法も取り入れ、ボランティア団体などと連携した地域での取り組みを進めていく必要があると考えております。
 次に、新たなエイズ対策の検討でありますが、都は、これまで全国に先駆けて総合的なエイズ対策に取り組み、各種事業を実施してまいりました。
 昨年の患者、感染者の急増という事態を踏まえ、今後、外部有識者などで構成するエイズ専門家会議等の意見も承りながら、その対応についての検討を進めてまいろうと考えております。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 食品安全にかかわる二点についてお答えをいたします。
 最初に、リスクコミュニケーションへの取り組みと情報提供についてでありますが、食の安全、安心確保のためには、消費者、事業者、専門家、行政の間で、互いにリスク情報を共有するリスクコミュニケーションを進めることが重要であります。
 都では、消費生活対策審議会や食品衛生調査会などの場において、各分野の専門家や消費者の参加のもと、参加者の有する情報や都民意見を施策に反映するよう努めてきたところであります。
 また、都は、消費生活条例に基づく都民の申し出など都民の意向を受け、国に先駆けて実施した調査や都の実施した事業の結果についても、報道機関への公表や都のホームページ等を通じて、広く都民に情報提供してまいりました。
 今後とも、都民の関心の高い食の安全にかかわる情報について、すべての都民にわかりやすい形で積極的に情報提供してまいります。
 次に、食品の安全、安心確保の今後の対策についてでありますが、食品の表示偽装事件や指定外添加物の違反事例などを通じて、都民が食品の表示や安全について不安を感じていることは、大きな問題であると認識しております。食の安全確保体制につきましては、現在、国において法制度や組織体制の抜本的見直しが進められております。
 都といたしましては、国の動向を見据えながらも、独自にリスク情報の収集、調査に努め、リスクコミュニケーションの充実、監視体制の強化などの課題にこたえるため、東京都における食品安全確保対策にかかる基本方針の見直しも含め、関係各局が連携し、総合的な食の安全、安心確保対策に積極的に取り組んでまいります。