平成十四年東京都議会会議録第四号

○副議長(橋本辰二郎君) 九番福士敬子さん。
   〔九番福士敬子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○九番(福士敬子君) まず、財政危機と公共事業について伺います。
 国の財政も、GDP比一四〇%と、イタリアを抜いた赤字財政に転落し、昨年十二月、ムーディーズによる日本の国債の格付はAa3とされました。
 都財政も国と同様、危機的な状況にあるのに、知事は都市再生に向けた道路交通網の整備などを掲げておられますが、かつて経済追求の余り、道路行政、開発行政で走ってきた結果が、環境を破壊し、都債の償還に追われる結果を生んだことはご存じないのでしょうか。
 十四年度では、都税収入は三千五百六十二億円もの大幅な減となり、歳出も抑制したとされています。しかし、都営住宅等への事業会計への移行がある上、公債費会計の実情を考えれば、歳出は減っているとはいえません。
 十四年度予算案の中で目立つのは、重要施策への財源優遇です。施策にめり張りをつけることは賛成ですが、首都圏再生予算は他に図抜けて大きく、また起債を伴います。
 今、世界は経済至上主義による環境破壊の結果、再度の投資で保護対策を強いられています。このようなむだな投資を防ぐためにも、今後数年続くであろう財政危機のもと、相も変わらぬ公共事業による景気回復論は見直しが必要だと思います。
 今後は人口減も予想されています。今回、重要施策にも含まれる小さな生活密着型事業を積み重ねることが、地域振興に役立ち、経済の立て直しにもつながって、知事の常のお考えである、出るを制すことになると思います。
 また、公共事業により、みずから環境を破壊したツケを払うため、一方で環境保護策を実施するという、いわば二重投資による保護対策の形をどこかで転換すべきと思います。
 重要施策には大型事業も含まれています。施策を選択する際に、どのようなデータに基づき、どのような議論がされたのでしょうか。
 都が直接行う事業ではありませんが、環境破壊を伴うと考えられるものの一つに、高額な費用のかかる外環が挙げられます。地域の説明会では、地下化により、一キロメートル当たり一千億円かかるとの試算報告がありました。
 一方、現在、地下化の排気対策となる脱硝装置は、研究も緒についたばかりで、多量の交通に対応可能なものはまだないにもかかわらず、正直な説明はされておりませんでした。
 知事は、外国と東京の環状線の進捗状況をよく比較されますが、都心の環状線も中途半端なまま、あちこち手を広げれば、いつまでも進捗率が上がらないのは当然です。まず、都心の環状線整備に力を注ぎ、その後の状況の変化を再チェックすべきだと思います。
 現在、自家用車の台数増が見込まれていますが、今後、高齢者のドライバー減少も想定されます。むしろ、公共交通のバリアフリー化や交通弱者の安全が確保された道路こそ重要です。
 外環は、国や道路公団による事業ですが、その費用負担はやはり都民です。負担と効果のバランスも含めた都民の意見がきちんと反映できるまで、外環の整備を凍結すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 さらに、むだとも思える都民負担の一つに、水資源対策があります。
 現在、都の水道は、一日当たり六百九十六万立方メートルの施設能力を持ち、水源量も六百二十三万立方メートルで、最大配水量の五百二十万立方メートルは十分確保されています。
 今後の人口減を考慮すると、三年後の最大配水量を六百三十万立方メートルと見込み、ダム開発を進めようとしていることに疑問を感じます。ここ数年、最大配水量は一貫して減っており、景気の低迷など経済要因のみならず、都民が環境保護の視点を重視するようになったことのあらわれとも考えられます。
 渇水対策にのみ目を向けて、さらなる需要を追うのではなく、節水や雨水利用を含め、総合的な水政策を進めることこそ、新たな行政の努めと考えます。第五次フルプランの見直しのときでもあり、国の施策に安易に乗ったダム開発は、都として再考すべきと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、計画アセスメント条例について、まだ審議中ですが、質問が年一回に制限されてますので、意見を踏まえ伺います。できる限りのご答弁をお願いします。
 都が国に先駆けて条例化した、いわゆる事業アセスをさらに進めるものとして、計画段階アセスの条例化を検討しています。この前段に放射五号線への試行が行われ、都民が意見を述べた審査会も開かれました。
 その答申では、開発を前提として、できる範囲の環境に配慮するという考え方は転換すべき、経済より環境重視という意見を述べ、さらに玉川上水の歴史的価値ある土木遺跡について、適切に予測、評価されているとはいえないとまで書かれています。
 しかし、試行で出された計画案には、事業を行わない案はなく、住民や建築関係者は玉川上水の史跡への影響も心配しています。
 住民側が独自に行った調査なども生かした議論ができるシステムを組み込むなどによって、単に従来の事業アセスを前倒ししただけとならないよう、価値ある制度にすべきと考えますが、どうでしょうか。
 また、調査範囲については、単に広さだけでなく、道路開発の場合、従来道路との接合部分に大きな負担がかかることも考慮した、事業ごとの柔軟な対応も検討すべきと思いますが、お答えください。
 首都高速台場線では、合流地点で渋滞が発生、大気汚染や騒音が予測値を上回っています。事業アセスにある事後調査は、単に測定するだけでなく、その労力を次なるアセス評価にぜひ生かすべきこともつけ加えておきます。
 また、今回の試行での計画案は、事業執行を当然の前提として、単に影響の大小比較になっている感がありました。国の事業では、経済効果が見込めないものに関して、開発中止や規模縮小も行われるようになりました。環境省も住民と事業者の対立を避けることが重要と、参加型アセスの手引を最近出しました。
 開発によって失われる環境を正当に評価すれば、一方で税金をつぎ込み自然を破壊し、一方で緑地造成を進めるという矛盾は少なくなるはずです。その意味で、計画案のあり方として、なぜ中止案を含め得ないのか伺います。
 交通量の確保が経済効果につながるとは限りません。ヨーロッパでは、旧市街地には意図的に車が入り込まないような都市計画さえあります。これで旧市街地の価値が低下するわけではありません。
 際限ない道路建設による誘発交通の影響をどのように評価されるのか。交通による経済効果から環境破壊による損失を引き、残った額が事業費を上回って初めて事業推進の条件が整うと思います。失われる環境を正当に評価する基準をアセス側でつくらない限り、事業者が直接比較を行うことができないものとなり、アセスそのものが事業推進のためのお墨つき形式に逆戻りとなる可能性があることも申し上げ、次の質問に移ります。
 都が行う公共事業は多岐にわたり、その目的や規模もさまざまですが、今後は真に都民のためになるものはどれか、つまり進めるべき事業と見合わせた方がよい事業の選別を、都民参加のもとで厳しくチェックしていくことが求められます。
 そうした際に問題なのは、議会や都民が判断しようにも、そのための情報提供が極めて不十分であるということです。
 一般に、予算書や決算書、またその説明資料が示されていますが、これを見て的確な判断を下せる人はまずいないでしょう。法令で様式が定められているものはともかく、各局が任意に作成している、いわゆる説明書ならば、踏み込んだ改善が可能なのではないでしょうか。
 現在の説明書の記述は非常に形式的で、間違ったことは書いていませんが、説明すべきことも書いていない場合があります。余計なことを書いて、議論を生むのは嫌だという思いが透けて見えるようです。
 基本的に欠けているのは、全体像です。公共事業は、そのほとんどが一年では終わりません。しかし、予算も決算も特定の一年のことしか説明していません。
 今後は、本格実施が始まった行政評価制度によるプラン・ドゥー・チェック・アクションの考え方に基づき、主な事業について、第一に、その事業を行うことで都民にとってどういうメリットがあるのか具体的に示す、第二に、事業の全体計画と総事業費を示す、そして、第三に、その総事業費との対比で予算や決算を説明し、進捗状況を明らかにするという姿勢が必要であると考えます。
 こうした資料をつくることで、一つの事業をその計画段階から完了まで、常に議会、そして都民の監視のもとに置くことができ、責任も明確になるのではないでしょうか。こうした取り組みは、ハード、ソフトを問わず、都のすべての局で実行してほしいと思いますが、本日は代表して知事本部長に見解をお伺いして、質問を終わります。
   〔知事本部長田原和道君登壇〕

○知事本部長(田原和道君) 福士敬子議員の一般質問にお答えを申し上げます。
 最初に、重要施策の選定についてでございます。
 重要施策の選定は、厳しい財政状況下にありましても、緊急に取り組むべき事業、切実な要望にこたえられる事業を峻別いたしまして、実施するために導入いたしました。
 各局から提案されました事業の規模、内容、必要性、事業実施上の課題など、さまざまなデータをもとに提案内容を議論いたしまして、局間の連携、事業の先駆性、少ない費用で大きな効果を上げるなどの基準に照らしまして、新規事業を含む重要施策を選定いたしました。
 なお、公共事業につきましては、大型、生活密着型を問わず、それぞれの事業が持つ効果をよく見きわめながら、必要な事業を実施していくべきものと考えております。
 今回の重要施策におきましても、緊急課題であります首都圏再生に必要な事業を積極的に推進するとともに、地球温暖化等の環境対策に都が率先して取り組むことといたしております。
 次に、事業についての都民への説明についてでございます。
 都民への説明責任の徹底は、重要なことであると考えております。都では、今年度より本格実施しております行政評価制度において、公共事業を含めて事業の評価を実施しており、その中で、事業の効果を初め全体計画、それから総事業費、進捗状況などを公表しているところでございます。
 また、お話にもありました、来年度から本格実施いたします大規模公共事業等事前評価制度におきましても、今申し上げたような情報をお示しすることにしております。
 今後とも、都民への効果的な説明につきまして、さらに工夫するとともに、事業の見直しなどに一層反映できる制度となるよう改善してまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、外環についてでございます。
 外環は、首都圏の慢性的な渋滞解消、環境問題の解決、さらには環状メガロポリスの実現に必要不可欠なものであり、首都圏の再生にも大きく寄与するものでございます。
 都としては、早期整備に向け、地元区市の協力を得て、国とともにさらに積極的に取り組んでまいります。
 次に、ダム開発についてございます。
 水源の確保は、首都東京の都市生活や都市活動に欠かすことのできない重要な課題でございます。しかしながら、都の水源は、その八割を利根川水系に頼り、しかも近年の少雨傾向により、過去十年間で五回もの取水制限を余儀なくされております。
 このような水源事情や治水上の必要性も勘案し、今後とも国や関係機関とも協議調整の上、必要なダム開発を進めてまいります。
   〔環境局長赤星經昭君登壇〕

○環境局長(赤星經昭君) 環境アセスメント制度に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、計画段階アセスメントについてでございますが、これは計画の早い段階から、複数の案につきまして環境影響を比較評価し、計画に反映させることを目的としたものでございます。
 都は、放射五号線等における試行を踏まえ、現在、環境影響評価審議会に制度の条例化に向けた検討をお願いしております。
 今後、審議会の答申を踏まえ、現行条例との関係を整理した上で提案してまいります。
 次に、環境影響評価の範囲についてでございますが、現行の環境影響評価条例におきましては、環境影響調査地域を、対象事業を実施しようとする地域及びその周辺地域で当該対象事業の実施が環境に影響を及ぼすおそれのある地域としております。
 計画段階アセスメントにおけます環境影響調査地域のあり方については、現在、審議会に検討をお願いしております。
 最後になりますが、計画案のあり方についてでございますが、複数案は、環境面に加えまして社会経済的な側面も含めて、実施主体が採用可能な案として作成するものと想定しております。いわゆる中止案が複数案に入っていることは、都としては考えておりません。
   〔九番福士敬子君登壇〕

○九番(福士敬子君) 済みません。今のご答弁を伺いましたので、ちょっとだけ伺います。
 少ない費用といいつつ、首都圏再生で環境破壊を引き起こした場合、財政の二重投資になっても財源には考慮しないという重要施策になってしまいますが、その辺はいかがお考えでしょうか。
 以上で終わります。
   〔知事本部長田原和道君登壇〕

○知事本部長(田原和道君) 事業が二重投資になるのではないかと、こういうご質問かと思いますけれども、現在、首都再生等々に必要としております事業につきましては、やはりある程度環境破壊を伴うかもしれませんけれども、それについてはできる限り少なくする工夫をいたしまして、実施すべきものは実施すべきであろうと考えております。

○議長(三田敏哉君) 以上をもって質問は終わりました。

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