平成十四年東京都議会会議録第四号

○議長(三田敏哉君) 七番柿沢未途君。
   〔議長退席、副議長着席〕
   〔七番柿沢未途君登壇〕

○七番(柿沢未途君) まず、区市町村の再編について伺います。
 いろいろ前置きをしようと思ったんですけれども、合併についての質問はきょうだけでもう三人目ですので、私の場合は少し目先を変えようというふうに思っております。これ自体が、目下の都政の最重要課題に合併が位置づけられているあかしのようなものでありますけれども、いずれにしても目先を変えようと思っております。
 このパネルを見てください。1/2の会が掲げている東京十二区構想です。
 都内の区市町村を十二の政令指定都市並みの規模を持つ区、あくまで仮称としての区ですけれども、十二の区に統合、再編することによって、行政のむだを徹底的に省き、広域的視点に立ったまちづくりや住民サービスを実現しようというものです。
 私は、このような区市町村の思い切った広域再編を推進していこうという立場から質問いたします。
 合併は、市町村の自主的判断を尊重することがもちろん基本ですが、それだけでは進まないのもまた事実です。やはり都道府県のバックアップやリーダーシップが必要なのではないでしょうか。
 都では昨年一月、多摩の三十一市町村について、市町村合併に関する検討指針を策定し、支援策なども打ち出しているようですけれども、その後、合併に向けた具体的な動きが見られないのは問題です。今の細分化した市町村の区域のままで、合併特例法の期限切れの平成十七年を迎えてしまっていいものなんでしょうか。
 そこで、伺います。
 昨年十二月、都は、知事を本部長とした市町村合併支援本部を設置しましたけれども、今後、強力に市町村合併を後押しするものと思いますが、今後の具体的な活動はどうなるのでしょうか、伺います。
 次に、特別区の再編について伺います。
 特別区は、昭和二十二年に板橋区から練馬区が分かれて以来、既に半世紀以上、区域の変更を行っていません。その間に都市の広域化も進み、人々の行動半径も大きく広がっています。今や、都心区と周辺の区では、人口の面でも税収の面でも、極めて大きな格差が広がっております。各特別区が基礎的自治体として自立し、地域のニーズにこたえた行政を行っていく上で、このような格差を放置しておくのは適当ではないと考えます。
 そこで、この東京十二区構想では、特別区の再編の一つの案として、都心区と周辺区を放射状に統合して、六つの区に再編するという案を採用しています。この案ですと、税収はあるけれども人口は少ない都心の区と、人口は多いが財政基盤は弱い周辺の区を合併することになりますので、人口や財政力のアンバランスを是正し、均衡を図ることができます。
 ただ一方で、千代田、港、中央という都心三区が分割されることによって、都心部のまとまりが弱くなってしまうというデメリットもございます。
 いずれにしても、これはあくまで問題提起としてつくったものです。このほかにもさまざまな再編案があり得るというふうに思っております。
 特別区の再編については、石原知事も昨年の予算特別委員会で、都がたたき台として素案を示すことが重要であるという発言を行っています。
 区部は、東京という我が国の政治経済の中心としての特別な地域であり、一般の市町村合併とは異なり、慎重な検討を必要とするのはわかりますけれども、できるだけ早く都としての案が出されることを期待しています。
 そこで伺いますけれども、特別区の合併指針ともいうべきたたき台の策定状況は現在どうなっているんでしょうか。答弁を求めます。
 中央集権の時代は完全に終わりました。今や、地方分権、いや地方主権の時代です。何もかもお上がコントロールするのではなく、それぞれの地域がみずからの判断と責任で個性ある地域づくりを進めていくことが求められています。
 しかし、それにはそれにふさわしい受け皿が必要です。今の細分化している区市町村を広域再編することで、より大きな権限を担うことのできる強い自治体をつくっていかなければなりません。そのために思い切った広域合併が必要なんです。
 こうした区市町村の再編が実現した場合、都の役割は広域行政に特化していくことになるでしょう。七都県市などとの連携も今以上にやりやすくなるでしょう。もしかしたら都という自治体がなくなっていくのかもしれません。その先に、道州制を含めた地方自治制度の根本的な見直しがあるのはいうまでもないことです。
 明治以来続いたこの国の形を根幹から見直し、新しい姿を東京から提起をする、このことこそ今求められていることなんです。
 以上を踏まえて、最後に知事にお伺いいたしますが、東京の区市町村再編に対する基本的な考え、そして明治以来の歴史を踏まえた地方分権、地方自治制度についての知事のご所見をお伺いいたしたいと思います。
 次に、都市再生について伺います。
 政府は今国会に都市再生特別措置法案を提出しました。一定のエリアを都市再生緊急整備地域に指定して、用途地域や容積率といった都市計画上の規制をすべて撤廃するとともに、開発事業者への金融支援もしていくことで、民間によるプロジェクトを強力に後押しする体制を整えています。
 日本経済を救う切り札は都市の再生にあると、私自身も主張してきましたから、今回の都市再生特別措置法案には、ようやく国もわかってくれたかという感慨を禁じ得ません。
 さて今後は、都がこの措置を、法律をどのように活用するかということになります。都市再生緊急整備地域の候補としては、晴海、豊洲、大崎の周辺などが候補地として報道されていますけれども、私はそういう候補地の中で、とりわけ臨海副都心を絶対に指定すべきだと考えます。
 臨海副都心について、石原知事は、今後は民間への土地売却を積極的に進めていくと繰り返し語っています。先日も有明南のP街区を、高級リゾートホテルに売却することが決まったばかりです。もちろん、それはそれでいいんですけれども、一たん売却した土地はもはや返ってこないわけですから、売却の前提として、そこにどういうまちをつくるのかというグランドデザインがなければいけないと思います。
 前回私は、カジノの質問をいたしました。その趣旨は、臨海副都心のまちづくりのグランドデザインを抜本的に見直して、観光やエンターテインメントを中心としたアーバンリゾートとして再定義すべきだという意味でした。その起爆剤として、今回の法律は十分に活用できることだと思います。
 例えば臨海副都心の未処分地を何区画かまとめて一体的な街区として公募して、都市計画デザイナーがコンペで競うような仕掛けで民間の投資を引き出すことなども考えられると思います。
 そこで伺います。
 臨海副都心を世界じゅうから観光客の呼べるアーバンリゾートとして育てていくためには、ここを国家戦略上の拠点として都市再生緊急整備地域に位置づけさせ、このまちの魅力を引き出せる民間資本の誘致を積極的に行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。港湾局長のご見解をお伺いいたします。
 次に、LRTについて質問いたします。
 車社会から脱皮する新たな都市交通のあり方として、LRT、ライトレール・トランジットが注目を集めています。ヨーロッパでは、ストラスブールなど各都市で導入が進んでいますし、都でも平成十一年に、LRTの導入に関する調査報告書をまとめております。
 さて、江東区では、区内を南北に走るJR小名木川・越中島貨物線を、LRTによって客車化しようという計画が提案をされています。区では、去年十月、専門家等から成る亀戸―新木場間のLRTに関する調査委員会を立ち上げて、LRT実現に向けた技術的可能性を調査していて、この三月にも報告書がまとめられる予定です。
 検討対象となっているのは、亀戸から新木場までのおよそ六キロ、この周辺にはバス以外の交通手段がない上に、並行して走る明治通りはトラックなどで慢性的な渋滞を来しており、LRTへの期待は大きいものがあります。
 貨物線である小名木川・越中島貨物線の軌道がそのまま活用できることもあり、実現に向けた障害が比較的少ないのも利点です。
 LRTについて具体的な検討を進めているのは、都内では江東区だけであり、事業の採算性などクリアすべき点も多いものの、実現すれば東京の都市交通のあり方に新たな地平を切り開くものとなるでしょう。リーディングケースとして、都としても積極的な支援を行うべきだと考えます。
 そこで、二点お伺いいたします。
 既に都として報告書もまとめているわけですけれども、都内の交通問題を解決する手段としてLRTをどのように評価しているのか。そして、江東区で調査を進めているLRTの計画について、都として実現に向けた後押しをどのようにしていくのか。
 以上の二点をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 柿沢未途議員の一般質問にお答えいたします。
 新人議員で、それも無所属の人がああいう提言をすると、さぞ場内騒然になるだろうと思ったら、まさにそのとおりでありましたが、やっぱりこういう提案はむげに退けずに、一つのたたき台として、私たちやっぱり、東京に限らず……(「おやじは……」と呼ぶ者あり)まあまあ、おやじはおやじ、子どもは子どもだから。余計なこと、いわない。
 いずれにしろ、とにかく廃藩置県以来、それから分派した日本の行政区分というのは、やや支離滅裂で、その間、社会は大きな変動で、あちこち本質的な変化が到来しているのに、行政区分だけが依然として旧態依然たるというのは、本当に大きな矛盾だと思いますし、行政も非常にそこでむだをしていると思うんです。
 繰り返して申したことでありますけれども、区市町村再編成、地方分権、自治制度についてでありますけれども、これは国の主導の地方分権というのは非常に内容が乏しいものでありまして、それを踏まえて私たち地方なりに努力をして、地方の主権というものを確立するためには、こういった区分の再考というものを含めまして、一層の権限、財源の移譲というものを受ける努力をするとともに、それに見合う合理的な自治体の再編というものを考えていかなくちゃいけないと思っております。
 今後も、都は都なりに、区市町村再編を含めた首都圏自治体の将来像を提案していきたいと思っております。
 繰り返して申しますけれども、七都県市で、東京都が主唱しまして今検討しておる一種の広域行政も、こういったものが堆積がないと、私は大きな改造、改編というものは、地方自治体の区分に関しても不可能だと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京都市町村合併支援本部設置後の合併への都の取り組みについてでございます。
 都といたしましては、全庁的な立場から支援の体制を整えるために、市町村合併支援本部を設置いたしました。今後とも市町村における自主的な合併を積極的に支援していきますが、都内市町村において合併への動きが具体的になった時点で、市町村合併支援本部において必要な支援を行ってまいります。
 次に、特別区の合併のたたき台の策定状況についてでございます。
 特別区の合併に当たっては、今後、特別区がどのような規模や権限などを有したらよいかを考慮するとともに、大都市行政の一体性、統一性の確保などにも留意する必要がございます。
 特別区の合併は、こうした点を踏まえながら、基本的には、特別区みずからが、住民の意思を尊重し、自主的、主体的に考え、取り組むべき課題であると考えております。
 都といたしましても、特別区が検討を進めていく際の情報を提供するため、現在、特別区の合併のあり方などについて、必要な調査を行っております。
   〔港湾局長川崎裕康君登壇〕

○港湾局長(川崎裕康君) 臨海副都心への企業誘致についてお答えいたします。
 企業誘致を進めるためには、この地域の特徴を生かし、都心では行うことのできない大規模かつ一体的な開発、エンターテインメント施設の集積、水辺を生かしたまちづくりなどを進めていくことが重要であると認識しております。
 都市再生緊急整備地域は、緊急かつ重点的に民間活動を誘導すべき地域に指定するものであり、都心部などとともに臨海部においても活用を図ることが効果的であると考えております。
 今後とも、民間活力を十二分に引き出し、首都再生の拠点である臨海副都心の開発を推進するため、あらゆる策を講じ、企業誘致に努めてまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) LRTについての二点の質問にお答えします。
 まず、その評価についてでございます。
 LRTは、超低床車両の導入により、高齢者などにも利用しやすいこと、建設費が地下鉄に比べて低廉であること等の特徴がございます。
 都としては、LRTは基本的には地域交通を担う公共交通機関として有効であることから、その導入については、地元自治体が主体となって取り組むべき課題であると認識しております。
 次に、江東区のLRT計画についてでございます。
 区では、区内を南北に縦断するLRT構想について検討を進めており、関係者間による調査検討委員会に都も参加し、さまざまな論議をしているところでございます。
 今後とも区の調査に協力するとともに、その動向を踏まえて必要な技術的な支援を行ってまいります。

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