平成十四年東京都議会会議録第四号

○議長(三田敏哉君) 二十四番山田忠昭君。
   〔二十四番山田忠昭君登壇〕

○二十四番(山田忠昭君) まず最初に、市町村合併についてお伺いをいたします。
 我が西東京市は、昨年の一月二十一日に、都市型対等合併として保谷市、田無市が合併して誕生した市であります。私は、十数年前からこの合併問題に直接携わった地元の市議会議員として、合併が実現できたことを大変誇りに思っております。私たちは、到来する高齢化社会に向かって、これまでの厳しい財政状況の中では、行政水準、サービスを維持していくことが困難であり、新しい行政課題に対応していくには、行政力、財政力を強化しなければ、これからの自治体競争に負けてしまうのではないかという共通認識の危機感を持って、究極の行財政改革であります合併を実現させ、西東京市が誕生したのであります。
 今回の合併は、満十八歳以上の全市民が参加する投票方式による市民意識調査を実施し、合併の是非、新市の名称等について賛否を問い、市民の合意を得て合併が実現したのであります。
 西東京市は本年一月二十一日で一年を経過したのでありますが、そこで、まず知事にお尋ねいたしたいと思います。石原知事は、田無、保谷市の合併をどう評価しておられるのか、知事の所見をお聞かせいただきたいと思います。
 今日、行財政改革を推し進める中で、区市町村は責任あるまちづくりを行うためにも、区市町村の自主性、自立性をさらに高めていく必要があると考えます。新たな行政需要や広域的な行政需要への対応など、住民に最も身近な行政体として市町村の果たす役割は大きく、そのための方策として、重要かつ有効な選択肢の一つが合併であります。
 国は、市町村合併支援本部を設置、東京都においても昨年十二月に石原知事を本部長とする東京都合併支援本部を設置するなど、合併に対しての政策を講ずる取り組みがなされております。
 先日、政府は、市町村合併の促進策として、都道府県に対し、合併支援プランを策定することや、合併重点地域を二カ所以上指定することを求める方針を固めたとの新聞報道がありました。合併特例法の期限は平成十七年三月までとなっており、残された期間は三年余りであります。
 そこでお伺いいたしますが、第一に、都は、合併支援プランの策定や、合併重点支援地域をどのように指定していくのか。第二に、西東京市に続いて、その後合併しようとする具体的な取り組みをしているところがあるのか。また、各市町村が協力して将来的なシミュレーションを行う研究会等を設置することについてどう思うか。第三に、都は市町村合併について今後どのように取り組むのか。以上三点について当局の答弁を求めます。
 次に、道州制を踏まえた広域的自治体のあり方についてお伺いいたします。
 さて、市町村が合併等によって力をつけていけば、次は、市町村を包括する広域的な自治体として、東京都が将来に向けてどのような役割を果たしていくべきかについて真摯に検討していくことが必要であると考えます。都道府県のあり方そのものを見直すこと、つまり、自治制度の根本に沿った改革を目指すことは、都としての究極の行財政改革であると思います。
 これまで石原知事が先頭に立って進めてきておられます七都県市の取り組みは、新しい広域行政の形を探る壮大な実験であり、首都圏自治体の将来像を描く議論に結びつくものであると思います。将来の首都圏自治体が広域行政などを効果的、効率的に展開するためには、どのような自治制度とするのが望ましいのか、多角的に検討していくべきと考えます。その際には、都道府県の区域を解消して道州制を導入するという考え方、いわゆる道州制を視野に入れた検討が不可欠であると考えるものでありますが、市町村合併が進んだ後の広域的自治体のあり方や道州制について、知事のご所見をお聞かせいただきたいと思います。
 次に、地方分権に伴う権限の移譲についてお伺いいたします。
 都は、平成十二年八月、第二次東京都地方分権推進計画を策定し、都から区市町村への事務の権限移譲を進めております。区市町村へ事務権限を移譲するに当たっては、財源はもとより、個別の行政分野に関する専門知識の提供や人的支援措置なども重要であると考えるものであります。第二次東京都地方分権推進計画に基づく都から区市町村への事務権限の移譲については、現在どのような状況になっているのかをお伺いいたします。
 また、岩手県が今年から試行しようとしております、市町村に事務移譲する際に、権限と財源と職員をセットにして移すという一括移譲方式について当局はどうお考えであるのか、所見をお伺いいたしたいと思います。
 次に、多摩の南北道路、調布保谷線の西東京市内の整備と道路ネットワークについてお伺いをいたします。
 昨年発表された多摩の将来像二〇〇一では、多摩地域を自立と連携を基本理念とし、活力と魅力あふれた多摩の創造を目指すという多摩の将来像が明らかにされております。そして、地域の活性化に大きく寄与するのは、道路整備を初めとして、河川や公園などの都市基盤整備が必要不可欠であるとしております。
 しかし、多摩地域の都市計画道路の整備率は、平成十二年度末現在、四八・六%と、半分にも満たない状況であり、とりわけ西東京市では二五・七%と、さらに半分の整備率になっており、その整備促進が強く求められているのであります。
 現在、都では、南北道路の整備、とりわけ調布保谷線の整備を重点的に推進しており、西東京市区間内では、残っていた区間が本年一月に事業認可を取得、全線が着手できたのであります。このことは、西東京市において長い間おくれていた都市基盤整備が、南北道路、調布保谷線の事業によって、将来に向かって発展するまちづくりの基盤ができたことでもあり、地元として大変喜んでいるところであります。
 そして、西暦二〇一三年には、三多摩において国民体育大会、多摩国体が開催されます。本大会を成功させ、三多摩のさらなる活力ある発展のためには、より一層道路整備を推進し、道路ネットワークを形成していくことがより重要であると考えるものであります。
 特に調布保谷線と東西に接続する放射七号線及び保谷三・三・一一号線は、外環の大泉インターへのアクセス道路として、練馬から清瀬方面に続く多摩北部地域の重要な幹線道路であり、新しい東京の構築と多摩北部地域の交通ネットワークの促進のためにも、早期に関係市区に対し取り組んでいただきたく願う次第であります。
 また、調布保谷線では、車道の両側に十メートルの環境施設帯を設置することになっておりますが、三鷹―調布間では、環境施設帯整備に当たっては、市民、地元市、東京都で構成する検討協議会で整備モデル案を検討したと聞いております。
 そこでお伺いいたしますが、第一に、保谷三・三・一一号線及び放射七号線の今後の取り組みはどうなっているのか。第二に、現在整備中の東西方向の道路であります保谷三・四・一〇号線の今後の整備予定はどうなっているのか。第三に、環境施設帯の整備検討協議会の設置など、地元住民との協議をどのように進めていくのか。以上三点について答弁を求めます。
 次に、学校、家庭、地域の連携によります、地域の教育力の向上策と人材育成についてお伺いいたします。
 今、日本の経済社会は大きな岐路に立っております。現在、小泉政権のもとで、経済、財政など各分野において構造改革が進められておりますが、今後日本が果敢に新しい時代に立ち向かい、国際社会の中でさらなる発展を遂げていくためには、人間社会の存立基盤ともいえます教育を改革し、新しい時代を担っていく人材の育成が急務となっております。
 国においては、昨年一月に、二十一世紀教育新生プランを策定し、家庭や地域の教育力の再生、基礎学力の向上、教えるプロとしての教師の育成など、さまざまな取り組みが進められております。
 一方、地方においても、例えば新潟県長岡市では、二十一世紀を担う創造性豊かな子どもたちを育てることを目的に、長岡の人材教育というプロジェクトに取り組んでいます。これは、国が苦しいときこそ将来のために人材を育てるという、長岡の伝統である米百俵の精神を新たに問い直し、現代に生かしたものであるといえます。この取り組みは、近接する学校をグループ化し、学校の垣根を越えてクラブ活動や部活動などを生徒が選択し、子どもたちの才能を伸ばしていこうとするものであります。
 そこでお伺いいたしますが、このような長岡の人材教育について教育長はどのように考えるか、所見をお伺いいたしたいと思います。
 また、都においてはどのように人材教育に取り組んでいるのか、あわせてお伺いをいたします。
 現在進められている教育改革をさらに推進し、日本の将来を担う子どもたちが個性と創造性にあふれる人間に育つためには、家庭、地域、学校がそれぞれの教育に関しての責任を持つとともに、地域全体で一体となって取り組んでいく必要があると考えます。
 先ごろ都の生涯学習審議会が出されました中間のまとめでは、地域の教育力を向上させるために、学校、家庭、地域が連携し、地域全体で子どもたちを育てていこうとする、地域教育サポートネットの取り組みが提言されておりました。このように、地域の人々が主体となって学校を支援したり、子どもたちの多種多様な活動を支えていこうとする地域教育サポートネットについては、全国に先駆けたモデルとなるよう早急に進めるべきと考えるものであります。今後、どう取り組んでいかれるのかをお伺いいたします。
 以上で一般質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 山田忠昭議員の一般質問にお答えいたします。
 田無市と保谷市の合併への評価でありますが、私は、これは非常に高く評価しております。いうに易しく、非常に行うのがかたいのは自治体の合併でありまして、今回の両市の合併は、全国的に見ても数少ない新設合併によるものでありまして、多くの関係者の努力により西東京市が誕生したことの意義は非常に大きいと思います。
 現在は、合併に当たり策定した新市建設計画の実効に向けた取り組みを着実に進めておられると聞いておりますが、今後合併のメリットを生かし、行財政基盤を強化することによりまして西東京市の発展が大いに期待できるものと考えております。
 次いで、市町村合併が進んだ後の広域的自治体のあり方についてでありますが、これは私が提案して、今合議しております七都県市の種々の広域行政について付言されましたが、こういった種類の広域行政と合併が、どちらが先かというのは卵と鶏の関係で、なかなかいいがたいんですが、私はやっぱり、こういう、先ほど申しましたが、時間的、空間的に国家そのものが狭くなってきているときにこそ、思い切った広域行政を各自治体が協力して行うことでそれが堆積し、そして、その向こうに道州制なり大規模の合併というものが見えてくるのではないかと思います。
 現在、繰り返して申しますが、大気汚染対策や産業廃棄物対策、あるいは七都県市の中でも賛同するもの、外れるものあるでしょうけれども、新しい税の措置とか、そういったことを行っていくことで、その堆積の向こうに合理的な統廃合というものが自治体についても行われてくるんじゃないかと思います。
 こうした取り組みを通じまして、対象が広がっていけばいくほど、例えば常設の事務局を持つ広域連合など、新たな広域的自治体が必要となってくると思います。
 一方、また、そういったものが進んでいくにつれて、当然、明治以来続いている都道府県のあり方も問い直されてくると思っております。
 なお、他の質問については関係局長が答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、長岡の人材教育についてでございますが、今は疲弊しているといわれておりますこの社会状況を打開して、活力ある社会を築いていくためには、豊かな個性や創造性に満ちた、人間性に富んだ人材を育てていくことが極めて重要でございます。
 お話のように、学校を取り巻きます地域には有為な人材というのが大勢おられるわけでございまして、そうした意味で、学校が積極的に地域の人材の活用を図るなど、地域と連携して子どもたちの個性や才能を伸ばしていく、こういう教育システムは、地域の実情に応じた人材教育という観点から、大変有意義なことであると考えております。
 次に、都における人材教育への取り組みについてでございますが、都教育委員会では、一人一人の個性や創造性を伸ばすことを目指しまして、まずそのベースとなります児童生徒の基礎的、基本的な学力の向上や、習熟度に応じた少人数指導の充実を図っております。
 また、総合的な学習の時間等におきまして、専門的な知識及び経験を持った地域の人材を活用しまして、みずから学び、みずから考える力など、新しい学習指導要領が目指しております生きる力を身につける教育活動を行っております。
 さらに、子どもたちが自然体験や社会体験等の体験活動を通して、思いやりの心や社会の基本的なルールを体得するような場の一つとして、アドベンチャースクール事業やとうきょう親子ふれあいキャンペーン事業などを実施しているところでございます。
 次に、地域教育サポートネットの取り組みについてでございますが、いじめや不登校などさまざまな教育課題を解決していくには、まず、子どもたちの育成に関して、学校、家庭、地域がそれぞれの役割を果たしていくとともに、互いが連携しまして地域の教育力の向上に取り組んでいくことが重要であると考えております。
 このために、都教育委員会としましても、地域住民が主体となり、地域全体で子どもたちの学校内外での活動を支援します地域教育サポートネットを、来年度から新たに四地区でモデル事業として実施していくことといたしております。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、市町村合併支援プランの策定等についてでございます。
 今後、国は、合併推進についての新しい指針を通知する、こうしておりますけれども、基本的には、市町村合併は住民意思の尊重と市町村の自主的、主体的取り組みが必要であると考えております。こうした考え方のもとにさまざまな支援策を検討し、合併支援プランを作成してまいります。
 また現在、合併につきましては、普及啓発活動や市町村への合併アドバイザーの派遣などの支援を行っており、これらによって住民や市町村の合併機運が高まった段階で、当該市町村の意向を踏まえた上で合併重点支援地域を指定してまいります。
 次に、西東京市に続く市町村合併の具体的な取り組みでございます。
 現在のところ、都内市町村におきましては、合併の必要性の議論が出ておりますけれども、合併に向けた具体的な取り組みを行うまでには至っておりません。しかし、少子高齢化の進展、厳しい財政状況など、市町村を取り巻く社会経済状況が大きく変化する中で、市町村が合併を自主的に検討することが求められており、ご指摘のとおり、市町村が他市町村と協力して具体的に研究する時期に来ていると認識しております。
 次に、市町村合併についての都の今後の取り組みについてでございます。
 都といたしましては、昨年一月に市町村合併に関する検討指針を発表して以来、各種の普及啓発活動に取り組む一方、全庁的な立場から支援の体制を整えるため、昨年末に知事を本部長とする東京都市町村合併支援本部を設置しました。
 お話のように、合併特例法の期限まで三年余りとなっており、残された期間で市町村や住民の間で合併についての議論が活発に交わされるよう、今後とも普及啓発に取り組むとともに、市町村における自主的な合併を積極的に支援してまいります。
 次に、第二次東京都地方分権推進計画に基づく都から区市町村への事務権限の移譲についてでございます。
 この計画で示した事務のうち、地域保険に関する事務など、市町村との協議、調整を進めているものもございますが、既に建築基準法における建築確認事務や都営住宅等の地元割り当て住宅の使用に関する事務などは移譲してございます。また、都は、これまでも建築基準行政など専門性の高い分野における権限移譲に際しましては、人的支援を含めた総合的な支援措置も講じてきております。
 今後も区市町村と十分な協議、調整を行うとともに、こうした支援策を必要に応じて活用し、残された事務権限の移譲を着実に進めてまいります。
 最後に、市町村への権限移譲に際して、権限、財源、職員をセットにして移譲するという、岩手県のいわゆる一括移譲方式についてでございます。
 この方式は、市町村への事務権限の移譲に合わせて専門知識に通じた県職員を派遣する制度でありまして、地域の実情に応じた支援策として、市町村への円滑な権限移譲のための有効な手段の一つと考えております。
   〔建設局長山下保博君登壇〕

○建設局長(山下保博君) 道路に関します三つのご質問にお答えいたします。
 保谷三・三・一一号線、区部では放射第七号線と呼ばれていますが、この道路の今後の取り組みについてでございますけれども、この路線は、都心部から西東京市を経て、埼玉県所沢市に至る放射方向の重要な幹線道路でございまして、多摩北東部及び練馬区内の道路交通の円滑化や地域の活性化に寄与することから、地元区市などと調整を図りながら、事業化について検討しているところでございます。
 このうち、保谷三・三・一一号線は、現在事業中である調布保谷線と一体的な整備が求められておりまして、練馬区境から調布保谷線までの約〇・六キロメートルにつきまして、国費等財源の確保に努め、早期事業化を図ってまいります。
 次に、保谷三・四・一〇号線の今後の整備予定についてでございますが、本路線は主要地方道保谷志木線と調布保谷線をつなぎ、さらに西武池袋線保谷駅へのアクセス道路として、西東京市内の道路ネットワークを形成する上で重要な路線でございます。
 現在、事業中区間でございます保谷志木線から東側五百メートルにつきましては、残物件が三棟と残りわずかとなっていることから、平成十四年度より、重要施策である効果満点道路事業に位置づけまして整備を進め、平成十六年度までに完成させる予定でございます。
 最後に、調布保谷線の西東京市区間における環境施設帯整備の進め方についてでございますが、環境施設帯の整備は、沿道のまちづくりと密接に関連していることから、地元住民や地元市などと協働して進めていくことが大切だと考えております。
 調布―三鷹区間では市と連携して、広く公募された住民と地元市及び都で、環境施設帯整備検討協議会を発足させ、三タイプの整備案をまとめるなど、活発な意見交換を行い、協議を進めているところでございます。
 西東京市区間におきましても、地元市の協力を得て、このような取り組みを行っていきたいと考えております。

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