平成十四年東京都議会会議録第四号

○副議長(橋本辰二郎君) 十六番長橋桂一君。
   〔十六番長橋桂一君登壇〕

○十六番(長橋桂一君) 初めに、さきに今国会に提案されている都市再生特別措置法案に関連して伺います。
 国は、この法案で、従来の都市計画をすべて適用除外とした上で、その地域の状況に柔軟かつ的確に対応できる、いわばゼロベースの都市計画とでも呼ぶべき都市再生特別地区の創設を目指しています。この特別地区構想は、これまでの計画はありながら、なかなか着手されなかったプロジェクトの事業化に弾みをつけるものであり、都としても積極的に活用していくべきであります。さきの施政方針表明でも、知事は、この特別措置法に触れておられますが、改めて今後の事業展開の見通しを明らかにすべきであります。見解をお尋ねいたします。
 一方、この制度の適用に当たっては、例えば、東京駅周辺など既に事業着手に向け動き始めている地域では、プロジェクトの推進を妨げることのないように、現行の計画を尊重して、早期の事業化を図り、都市開発投資を促進することが重要であります。このように、特別地区については、それぞれの地域の状況に応じた柔軟な対応が必要ですが、都の見解を伺います。
 さらに、今回の法案では、民間の都市再生事業に対して、国による出資や債務保証などの金融支援策が盛り込まれ、数千億規模の民間事業に対する支援が可能になるといわれています。この制度を活用して幅広く民間のプロジェクトを支援すべきですが、今後の都の方針を明らかにしていただきたいと思います。
 また、この都市再生特別地区は、地権者等の提案を受けて民間主導の都市づくりを促進するという点で、都が提案している街区再編プログラムと考え方が共通しています。知事は先日の施政方針で、この特別措置法の活用に触れ、幾つかの地区を先行的に整備することができれば、今後の本格的な再生の引き金になると思うと述べておられます。
 そこで、私は、豊島区の東池袋のような恵まれた立地条件にありながら、敷地の細分化が進み、地権者が多いことなどにより更新が進まない市街地の再編整備のためにも、活用することができるのではないかと考えます。都の見解を伺います。
 次に、薬物乱用防止対策について伺います。
 国連決議によって、六・二六国際麻薬乱用撲滅デーが設けられ、我が国でも昨年六月から七月にかけて、薬物乱用防止を目指す「ダメ。ゼッタイ。普及運動」が行われました。
 しかし、現実は、平成十年一月に警察庁が第三次覚せい剤乱用期へ突入と発表して以来、覚せい剤事犯の検挙者数は年々増加しており、極めて憂うべき状況にあります。平成十二年三月に公表された文部科学省統計数理研究所の報告によると、薬物乱用者は、潜在者を含めると約百四十五万人と推定され、日本人の九十人に一人が薬物に侵されている可能性があるといわれています。しかも、中高校生を初めとする少年の乱用が目立ち、あわせて初犯の割合が高く、覚せい剤乱用のすそ野が広がっていることを示しています。
 そこで、質問の第一は、取り締まりの強化であります。最近は、外国人の密売組織の台頭や大量の密輸、あるいは携帯電話やインターネットなどを利用した販売など、手口が巧妙かつ大がかりになってきています。したがって、こうした薬物犯罪の多様化、組織化という状況変化への新たな対応策の確立が不可欠であります。所見を伺います。
 第二に、学校での薬物乱用防止教育のための教職員の資質の向上と対応の問題について質問をいたします。薬物乱用防止教育の徹底には、薬物に関する知識の向上など、教職員の資質の向上が何よりも重要であります。さらに、学校薬剤師などと協力し、生徒の問題意識を啓発して、乱用の芽を摘み取っていくことが重要であり、教育長の見解を求めます。
 第三に、薬物乱用防止指導員への支援について伺います。地域における薬物問題の普及啓発に当たる薬物乱用防止指導員は、都では約五百名の方が任命をされ、ボランティアで地域の薬物乱用防止対策に取り組んでいます。薬物汚染のない社会づくりは、地域の人々の理解と協力が不可欠であります。したがって、指導員と地域自治体が連携強化を図るとともに、指導員に対しては、指導技術の向上を図るための具体的な支援策を強化すべきであります。今後の取り組みについて伺います。
 第四に、司法機関などとの連絡会の設置についてであります。現在、都には薬物依存症対策委員会が衛生局内に置かれ、相談から治療、社会復帰までの総合的な対策について検討しております。しかし、乱用者、依存症者への効果的な対応を図るには、司法機関等との連携、協力が不可欠であります。実際に乱用が進むと、自力で薬物を断つことは非常に困難であります。その意味で、施設退所後や保護観察処分が下された人への対策も含め、乱用者へのケア体制確立の一環として、保護観察所や警視庁などとの連絡会を設置すべきと考えます。所見を伺います。
 次に、都電荒川線について伺います。
 東京で唯一残っている都電が荒川線であります。都電は、昭和三十年代から自動車の普及に押され、交通の妨げになるとの理由により昭和四十二年から次々と廃止されてきました。しかし、荒川線は、住民の強い要望や大部分が専用軌道だったため昭和四十九年に存続が決定をいたしました。
 今日では、排気ガス、渋滞などの自動車公害のない環境に優しい優良な交通機関として都民に好評を博しています。また、都が策定した新東京百景にも、サンシャインシティや飛鳥山公園などを背景として走る都電荒川線が選定をされております。私は、この荒川線については、地域住民の貴重な交通手段として、さらに整備を進めるとともに、千客万来の都市を目指す東京の主要な観光資源として積極的にアピールしていくべきと考えます。
 そこで伺います。第一に、案内表示についてであります。
 公共交通機関は、だれもが利用するものであり、初めて使う人にとっても利用しやすいものにしていかなければなりません。しかし、荒川線は、その大部分が路地裏を走る専用軌道であるため、荒川線の停留所の位置が大変にわかりにくくなっています。そこで、荒川線の利便性を増すため、停留所の位置を示す表示板などを人々の目にとまりやすい場所に設置すべきであります。
 第二に、都電荒川線を活用した観光振興についてであります。
 荒川線の存続が決定した際に、車体に色とりどりの装飾を施した花電車を運行し、多くの人々の喝采を浴びました。沿線のにぎわいを創出し、観光振興に役立てるには、こうしたイベントが必要であります。毎年、都民の日を初め記念日を設定して、花電車を運行するイベントを計画したらどうかと提案いたしますが、見解はいかがでございましょうか。
 第三に、都電荒川線のPRについてであります。
 インターネットのホームページは、情報提供媒体として非常に有効であります。荒川線に関しても、これを有効活用し、観光資源のPRを行うべきであります。現在でも、路線図や運賃などの情報は提供していますが、荒川線のさらなる活性化のために、ホームページをさらに充実させるとともに、停留場の施設案内やイベント案内などを充実させていくべきと考えます。所見を伺います。
 最後に、区部霊園の公園化について伺います。
 私の地元豊島区には、都営の雑司ヶ谷及び染井霊園があります。将来の公園化に向けて、昭和三十七年以降、返還墓所の再貸し付けは行っておりませんが、四十年たった今でも、いまだに公園化は進んでいない状況であります。現在、ポケットパークといわれる緑地は散在するものの、公園化にはほど遠い状況であります。
 そこで伺います。第一に、区部霊園のこれまでのあきぐあいと公園化への取り組み状況についてお尋ねをいたします。
 第二に、公園と霊園の共存についてであります。霊園案内図によりますと、雑司ヶ谷霊園には夏目漱石や竹久夢二など、染井霊園には二葉亭四迷や岡倉天心など、我が国を代表する数多くの著名人の墓があります。この由緒あるところを整備すれば、東京の名所となる可能性もあり、いやしの空間の創出あるいは観光振興のためにも、一日も早く計画を具体的に進めるべきであります。その際、私は、霊園と公園の共存を大前提に、新しい霊園のビジョンを都民に提示していくべきと考えますが、いかがでございましょうか。
 また、雑司ヶ谷霊園につきましては、地元のまちづくり協議会が、昭和五十八年の発足以来今日まで、霊園と共存のまちづくりを目指し、精力的に活動してきた経緯があります。これまでも、万年塀を生け垣化し周囲の道路との一体化を図るなど、防災機能の充実を提案し、実現してきました。その成果も積極的に生かしていくべきと考えますが、見解を伺います。
 以上をもちまして私の一般質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 長橋桂一議員の一般質問にお答えいたします。
 都市再生特別措置法についてでありますが、東京は、高度な中枢機能が集積する日本の活力の源でありながら、国の無策が続いたために、東京が危機に陥るだけではなく、国家も長い長い低迷が続いております。
 今回の特別措置法案には、都市再生に向けた、民間の提案を受けとめる自由度の高い都市計画や、民間への金融支援など思い切った制度も盛り込まれております。この制度を、首都機能を中核的に担う都心部や臨海部などを中心として、その周辺部を含む地域に活用することにより、民間の都市開発を積極的に支援して、国際競争力のある、魅力と活力にあふれた東京の再生を図りたいと思っております。
 他の質問については、警視総監、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監野田健君登壇〕

○警視総監(野田健君) 薬物事犯の取り締まりについては、道府県警察はもとより、税関等の関係機関との連携を図りつつ、密輸入事犯の水際検挙を初め、麻薬特例法や組織犯罪対策三法等あらゆる法令を駆使して、密売グループの一斉検挙、末端乱用者の検挙とその突き上げ捜査を強力に推進し、首領幹部の検挙、資金源の封圧、薬物の大量押収に鋭意取り組んでおります。
 特に最近は、来日外国人を中心とする国際犯罪組織、旧来の暴力団、さらに密輸・密売グループが、系統的あるいは複雑に結びついて犯罪を敢行する傾向を強めている状況にあります。
 警視庁では、このような情勢に的確に対処するため、昨年九月、従来の部の枠組みを超え、三部にまたがる関係七所属及び組織犯罪対策室から成る組織犯罪対策本部を新設し、総合的な対策を推進しつつあります。
 さらに、この組織犯罪対策本部を基本にした組織整備の検討を進めているところであり、今後も薬物事犯の取り締まりを一層強力に展開してまいる所存であります。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 薬物乱用防止教育への取り組みについてでございますが、青少年の薬物問題につきましては、私どもとしましても深刻な問題として受けとめております。
 学校におきます薬物乱用防止に関します指導につきましては、学校長を含めまして、そのすべての教職員がその重要性を認識した上で、児童生徒が関心や意欲を持って授業に取り組めるような指導方法をまず身につけ、学校全体としまして組織的、計画的に取り組む必要がございます。
 このため、教員を対象としまして、カウンセリング技法を習得する研修会を開催しますとともに、薬物乱用防止に関する指導資料を作成、配布しまして、薬物防止教育へ向けた一層の資質向上を図っているところでございますが、さらに教員の資質向上のために、お話のように学校医や学校薬剤師の専門的な知識や情報を活用しまして、薬物乱用防止に関する指導が充実するよう、今後とも努めてまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 都市再生に関する三点のご質問にお答えします。
 まず、特別地区の制度運用についてでございます。
 東京の都市再生を推進する上では、都市再生特別措置法案に基づく特別地区の積極的な活用を図る必要がございます。
 一方、地権者等の協議を積み重ねたことにより、整備手法などが定められた地区では、事業の手戻りを生じることなく、早期事業化を図ることが強く求められております。
 都といたしましては、事業の進捗状況等を考慮し、民間都市開発事業の立ち上げを促進する視点に立って、制度の適切な運用を図ってまいります。
 次に、金融支援についてでございます。
 金融支援は、都市再生に資する民間プロジェクトを国が認定し、それに対して適用されるものでございます。このことにより、事業の早期立ち上げを促し、事業リスクの軽減を図ることができ、民間投資を拡大させる契機になるものでございます。
 都といたしましては、この支援措置が東京の再生を進める上で大きな効果をもたらす制度となるよう、国に働きかけてまいります。
 次に、特別地区の活用についてでございます。
 都は、ご指摘のような敷地の細分化などの課題を抱えている市街地の更新を促進するため、街区再編プログラムの創設を国に提案してきました。国は、こうした都の提案をも参考にし、都市再生特別地区を創設することとしたと聞いております。
 今後、敷地の細分化などの問題を抱える市街地の再編を進め、良好な町並みの形成を図る手法の具体化につき、検討を重ねてまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 薬物乱用防止対策についてお答えいたします。
 まず、薬物乱用防止指導員の支援についてでございますが、指導員に対しては、従来、地域での普及啓発活動への支援を行ってまいりましたが、今後、区市町村との共同事業の拡大等を図り、指導員としての機能発揮を促進してまいります。
 あわせて、これまで行っていた知識付与型の研修に加え、指導者としての実践的な能力の向上を目的とした研修の実施や活動マニュアルの提供などを行い、指導員の活動への支援を強化してまいります。
 次に、関係機関との連絡会の設置についてでありますが、薬物乱用問題について、都では、警察、学校、社会復帰施設などの関係機関と連携し、その対応に当たってきております。
 とりわけ違法薬物の乱用は触法行為であるため、司法処遇を受けた乱用者等への継続的な対応を図るためには、司法関係部署との緊密な協力体制の構築が重要であります。
 今後、連絡会の設置など、関係機関とのなお一層の連携強化について検討してまいります。
   〔交通局長寺内廣壽君登壇〕

○交通局長(寺内廣壽君) 都電荒川線についての三点のご質問にお答え申し上げます。
 一点目の、荒川線の停留場への案内表示についてでございますけれども、荒川線は、その区間の九割近くが専用軌道となっており、一般の道路から見える形で併走する区間は短く、停留場の中には、道路の近くにありながらわかりにくいものもあるため、道路上に停留場への方向や距離を示す案内表示を設けることは、有効と考えております。今後とも、地元区や道路管理者等の協力を得ながら、その設置を進めてまいります。
 次に、荒川線を使った観光振興についてでございますけれども、荒川線では、これまでも六月の路面電車の日や十月の荒川電車の日などに、地域の方々のご協力を得ながら、各種イベントを実施してまいりました。今後とも、荒川線の存在を広くアピールし、新たな需要を喚起するとともに、ご指摘の東京の観光振興にも寄与できるよう、関係者の協力を得ながら、イベントに合わせて装飾電車を運行することも検討してまいります。
 三点目でございますけれども、荒川線のPRについてでございます。
 荒川線を東京の観光資源の一つとして、広くPRしていくことが、沿線地域の活性化にもつながると考えております。そのため、荒川線のホームページに沿線の観光情報やイベント情報を盛り込むなど、さらに魅力あるものになるよう取り組んでまいります。
 また、荒川線を利用されるお客様に、停留場の周辺施設をわかりやすく紹介する案内板につきましても、地元区と連携しながら整備を進めてまいります。
   〔建設局長山下保博君登壇〕

○建設局長(山下保博君) 霊園に関する二つのご質問にお答えいたします。
 まず、区部霊園の空き状況などについてでございますが、昭和三十七年以来、区部四霊園につきましては、公園化を目指して、返還などにより空き墓所を確保してまいりましたが、平成十三年末で、その面積は約一万五千平方メートル、全体の墓所数の約九%にとどまっております。このため、現在、無縁墳墓整理事業にも取り組んでおりまして、雑司ヶ谷霊園の六百平方メートルを初め、全体で約三千平方メートルを整理することといたしております。
 なお、これらの空き墓所につきましては、可能なところから公園化に向けて、園路や広場あるいは植え込みなどとして活用しているところでございます。
 次に、新しい霊園のビジョンなどについてでございますが、区部霊園の全面的な公園化は、これまでの空き墓所の発生状況などを勘案いたしますと、極めて長期間を要する困難な事業でございます。このため、これまでの空き墓所も活用しつつ、新たな整備方策を検討する必要があるというふうに考えております。
 今後、霊園と公園との共存の可能性なども含め、公園審議会を活用して、将来の霊園のあり方について検討していきたいと考えております。
 なお、お話の雑司ヶ谷霊園につきましても、地域とともに進めてこられたまちづくりの成果を、十分活用していきたいというふうに考えております。

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