平成十四年東京都議会会議録第三号

○議長(三田敏哉君) 三十八番東野秀平君。
   〔三十八番東野秀平君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十八番(東野秀平君) 初めに、観光産業について伺います。
 石原知事は、さきの施政方針で、東京が特に力を入れていく産業として観光を真っ先に取り上げ、その意義を強調されておりました。こうした観光産業に着目した知事の積極的姿勢は、かねてからこの問題を東京経済の活性化の起爆剤となり得るとの視点で、さまざまな提案や推進をしてきた我が党の方針と軌を一にするもので、評価するものであります。
 そこで、これまでの提案を踏まえて、何点か伺います。
 第一は、観光産業の振興にとって、訪れる外国人に感動を与える見るべき資源があるかどうかであります。世界的な観光都市には、必ずといってよいほど、世界遺産的な目をみはる観光資源があることは論をまちません。
 例えば、東京と友好都市であるニューサウスウェールズ州には、シドニー市の郊外にブルーマウンテンという世界遺産が外国人観光客への大きな目玉となっており、世界の観光都市にはそうした集客力のある資源が存在しております。
 その点、東京にはそうした観光資源が目の前にあるとはいいがたいわけで、目を転じて東京周辺の地域には、世界遺産としての日光東照宮を初め、外国人観光客にとって魅力ある観光資源は数多く存在しております。したがって、都内に限らず、広域的な視点で、観光ルートの開発を考えるべきであります。
 また、そのためには、関係する自治体との連携が不可欠でありますが、従来の七都県市の連携に観光ルートの開発を加え、相互の発展に寄与する方向を考えるべきでありますが、知事の所見を伺います。
 第二は、広域連携はもちろんのこと、都内の観光資源の開発は、宿泊税の導入を機に一層進展させる必要があります。そのためには、都内の地域特性を生かした観光資源の創出や開発を具体的に進めるべきであります。
 今後の取り組みを伺うとともに、例えば、臨海副都心は、先日の発表によれば、昨年の来訪者が過去最高の三千七百五十万人を記録しております。まことに喜ばしいことでありますが、これを機に外国人観光客にとっても魅力ある場所にすべきであります。
 我が党は、臨海部へのウエルカムカードやガイドブックの発行を提案してまいりましたが、その進捗状況と、外国人観光客にとっても魅力ある臨海副都心のまちづくりをどのように進めていくのか、あわせて所見を伺います。この際、外国人観光客にとっても魅力ある大型イベントの開催を考えてはどうでしょうか。
 第三は、いよいよワールドカップサッカーが目前に控えてまいりました。この成否は、今後の東京への外国人観光客誘致に大きなかぎを握ることはいうまでもありませんが、そのためにも万全の体制で臨まなければなりません。
 警備体制等さまざまな課題がありますが、観光の視点から最も心配されることは、東京が外国人にとってわかりやすいかどうかであります。それは、地理的な不安や言葉の壁などが考えられますが、この際、将来にわたって東京を観光都市にするため、仮称、わかりやすい東京プロジェクトを立ち上げ、こうした課題に抜本的に取り組むべきと考えます。所見を伺います。
 次に、難病治療について伺います。
 国の定める多くの特定疾患の中に膠原病があります。膠原病の中でも、今なお原因不明で有効な治療法のない慢性関節リューマチは、一部の悪性関節リューマチ以外は特定疾患に入っておりません。
 さらに、現在国内で用いられている有効性の比較的高い抗リューマチ薬は、四、五種類と数が限られている上、特定疾患に認定されていない慢性関節リューマチの方の中にも、これらの標準薬が効かない患者は、治療に難渋し、病状が進行して社会生活が困難な状況に追い込まれるケースが数多く見られます。
 抗リューマチ薬によく反応して治癒する人は医療費負担がそれほど多くありませんが、反応しない人は、検査や薬剤や理学療法などのため、高額の医療費負担を強いられます。また、こうした患者さんの就業能力は著しく損なわれるため、経済的には二重のダメージを受けることとなります。
 WHOは、二〇〇〇年から二〇一〇年をボーン・アンド・ジョイント・ディケイド、骨と関節の十年と称して、骨、関節疾患への対策の強化を図っています。
 こうした中で、原因不明の難病である慢性関節リューマチ等は、社会的生活困難者を増加させるという点から見ても、その多くが特定疾患として認定されている神経難病と同様に、重点的な対策を立てていくべきと考えますが、所見を伺います。
 続いて、家庭的養護の推進について伺います。
 知事は日ごろから、子どものしつけや教育は親の責任といわれ、家庭の役割の重要性を主張されています。価値が多様化する今日、子どもが行動規範を身につけ、自立していくために家庭の役割はますます大切になっていると考えます。
 一方、親としての責任を果たせない未熟な親がふえ、地域の養育力も低下しています。育児放棄や虐待などの悲惨なニュースがあふれており、このままでは未来を託す次代の子どもたちを健やかに育てていくことはできないのではないかと危惧しています。
 知事は先日、養育家庭の熱心な取り組みを視察し、このような取り組みをもっと世間に知らせるべきであり、養子縁組を目的としない里親である養育家庭をふやす必要があると述べられていました。
 さきに発表したTOKYO福祉改革STEP2においても、現在の施設中心の社会養護システムを転換し、ケアが必要な子どもたちを家庭的な雰囲気の中で養育する体制を整備するため、養育家庭制度の充実に取り組むことを明らかにしています。
 我が党は、かねてより、地域の中での家庭的な養護を推進すべきことを主張してきたところであり、高く評価するものであります。改めて、養育家庭制度の充実に向けた知事の所見を伺います。
 さて、現行の養育家庭制度は、制度発足から既に三十年近くが経過していますが、登録数、委託数とも低迷状態が続いております。その大きな原因の一つに、都のモニターアンケートの結果にもあるとおり、都の養育家庭里親について、「内容について知っていた」はわずかに一割という実態にあります。
 そこで、パブリシティーの活用などを含めた制度の周知徹底を図ることが極めて大切であると考えます。所見を伺います。
 また、自分の子どもであっても子育てに苦労している今日の社会環境の中で、心に傷を負った子どもたちの養育をして温かく受けとめている養育家庭の方々の労苦ははかり知れないものがあります。アンケート結果からも、相談体制の整備、養育費として十分な額の支給、さらに、トラブル時の手助けが都民の声として上位を占めています。
 これまで、ともすれば、養育家庭の愛情やボランティア精神に依存し、支援が不十分であったことは否めないのであります。さらに、養育家庭に対する支援は、児童養護施設九カ所に併設していた養育家庭センターに委託し進められてきましたが、必ずしも十分に機能していなかったのではないでしょうか。
 都は、養育家庭のバックアップ体制の充実など、社会的養護システムの再構築に向けて支援体制の見直しを進め、養育家庭支援のレベルアップを図るべきであります。所見を伺います。
 次に、渋谷区代官山地区と目黒区中目黒地区を一体としたまちづくりについて伺います。
 現在、東京における都市再生は緊急の課題であり、国においても都市再生特別措置法が提案されるなど、さまざまな制度改革が推進されております。
 都市再生の中でも、職住の近接と、多様な都市機能がバランスよく図られた都心型の住宅市街地形成は、東京都民にとって大きな願いでもあります。
 現在、地元では、代官山地区の再開発と中目黒駅前の再開発が進行中で、中目黒駅前は本年四月に完成予定であります。
 そのような状況下、両開発地区を結ぶ地点に八千平米の旧国鉄跡地があり、現在、都と目黒区で二分の一ずつの所有地となっています。そのうち東京都は、隣接する昭和二十年代に建設された上目黒アパートの建てかえ用地として四千平米を確保しております。
 そこで何点か伺います。
 まず第一に、旧国鉄跡地に隣接の都営住宅建てかえ計画の進捗状況を伺います。
 次に、跡地の二分の一を確保した目黒区としては、地域に寄与するまちづくりの一環として、住宅を主体とした代官山と中目黒両地区の回遊を誘導するまちづくりを検討していると聞いています。
 そこで、これまでの都と区の話し合いの経緯はあるとしても、あくまでも住民の立場に立って地域の発展を考えた場合、一日も早く跡地利用整備計画具体化に向けての話し合いをスタートすべきと考えます。所見を伺います。
 ところで、このたびの住宅マスタープランでは、活力が生まれる居住の実現のため、都心居住を推進するとし、さらに、都営住宅団地を活用し、都営住宅と民間の住宅や施設を一体的に整備する民間事業者によるプロジェクトを推進するとしております。
 そこで提案ですが、この際、都と区が取得している旧国鉄跡地八千平米と、建てかえ計画にある既存上目黒アパート四千五百六十平米とを一体的にとらえた上で、南青山一丁目のように、民間活力を導入し、中堅ファミリー層向けも含めた公営住宅を初め、民間住宅や福祉施設、商業施設を備えた複合開発を推進することにより、周辺のまちづくりと一体化させた事業とすべきと考えますが、所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 東野秀平議員の一般質問にお答えいたします。
 東京発信、東京をハブにした広域的な観光ルートの開発についてでありますが、おっしゃるとおり、海外からの旅行者を集客するためにも、多様な観光ルートを開発して発信していくことが重要だと思います。
 先般も、都バスの観光ルートをちょっと変えてみましたところ、非常に好評でありまして、そういう試みがちょっと従来足りなかったような気がいたします。
 東京プロパーの観光の対象は、地方からやってくる日本の方々にはいろいろありますが、相手が外国人ということになりますと、なかなか難しい問題がありますけれども、一つ、私、盲点としてみんなが気づかずいるのは、わずか電車で一時間足らずの三浦半島に、日本の三大古都の一つである鎌倉があるわけです。これは本当にしっとりしたすばらしい町でありまして、ああいったものを観光資源として、何で東京が――どうせ東京に泊まっている方々がいらっしゃるわけでありますから、京都や奈良に行くよりもはるかに便宜な観光資源であると私は思うんです。
 こういったものを私たちこれから活用し、遠くは伊豆であるとか箱根であるとか日光、尾瀬というところもございますけれども、そういうルートを東京のイニシアチブで、地方の自治体とも協力しながら活用していくことは必要だと思っております。
 次いで、養育家庭制度についてでありますが、これは、先般、坂本さんとおっしゃる八王子の養育家庭を視察させていただきました。非常に感銘を受けましたし、いろいろなことを考えさせられました。
 やはり、普通の施設と違って、ああいう形の、親が起居をともにして、起きたときから寝るまで子どもをしつけるということは、本当に子どもにとってもありがたいことだと思います。
 残念ながら、育って、交通事故で十七歳で亡くなったお子さんの話をしておられましたが、自分の親以上に慕って、町でその坂本さんと同じ名前のお葬式の表示を見ると、自分の親かと思って、はっとした。それから、あるとき何か非常に心配になって、離れたところから、お金がないので三日歩いて親のところまで来て、安否を確かめて喜んで帰ったというような話は、非常に感動的でございました。
 そういう大人と子どもの関係が親子という形で、産みの親より育ての親という言葉がありますが、これは本当にありがたい施設で、案外、世間は知りませんし、また、非常に誤解をして、金目当てでそういう試みをしているんじゃないかという非常に悪い評判が立ったりするけれども、我慢してやっているんだというお言葉がありましたが、私、案外、世間もこういうことは知らないものですから、ある有力な出版社を紹介しまして、あの家庭をモニターにして、そういう一つのドキュメントを本にして、テレビなどにも紹介しながら、東京からこういう制度というものを日本に普及させていきたいと思っております。
 他の質問については関係局長が答弁いたします。
   〔産業労働局長浪越勝海君登壇〕

○産業労働局長(浪越勝海君) 観光産業に関する二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、観光資源開発の具体的な取り組みについてでございますが、東京には、産業の集積、江戸東京の歴史と文化、多摩、島しょの自然など、地域それぞれに特色のある魅力的な観光資源がございます。
 このため、既に物づくりやファッションなど、産業集積の地域特性を生かした観光資源開発の調査を実施しているところでございます。
 今後さらに、ショッピングルートの開発、都市基盤施設の観光資源化、東京駅周辺の再生整備などの都市づくりによる観光資源の創設など、それぞれの地域特性を生かした観光資源の開発に取り組んでまいります。
 次に、わかりやすい東京にするための取り組みについてでございますが、外国人旅行者の地理的な不安や言葉の壁をできるだけ解消し、再び訪れたくなる東京を実現することは、大切なことと認識をしております。
 このため、まず、当面の対策として、ワールドカップサッカー大会の開催に向け、臨時観光情報センターを設置をし、観光ボランティアを活用することとしているところでございます。
 今後とも、観光産業振興プランに掲げる外国語による対応や標識の整備などの施策を展開するために、全庁的な観光行政推進協議会や、区市町村観光行政連絡会議、さらには宿泊業界等との観光情報連絡会を活用し、ご指摘の趣旨を生かして、わかりやすい東京の実現を目指してまいります。
   〔港湾局長川崎裕康君登壇〕

○港湾局長(川崎裕康君) 外国人にとっても魅力ある臨海副都心のまちづくりについてでございますが、現在、ガイドブックと一体となりましたウエルカムカードを、民間事業者等により設立させました臨海地域観光プロモート協議会が中心となって作成している最中でございます。四月には、空港、ホテル等での配布やインターネット配信を開始いたします。
 臨海副都心は、人々を魅了する美しい水辺やシンボルプロムナード公園など、ほかにはない都市景観を備えております。これらを利用し、地域事業者の協力を得ながら、例えば、トップアーチストの野外コンサートなど、外国人観光客も楽しめます大型イベントを誘致し、より一層魅力ある町にしてまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 慢性関節リューマチについてお尋ねがございました。
 慢性関節リューマチは、難治性疾患の一つとして認識しており、都は、同疾患などを対象に、区市町村が実施する難病患者等居宅生活支援事業に対し補助を行っております。
 この事業は、現在、二十の区市町村で実施しておりますが、都といたしましては、患者の方々の生活支援のため、引き続き、実施区市町村の拡大に努めてまいります。
 なお、都立大塚病院では、現在、重点医療としてリューマチ膠原病系の専門医療を提供しており、都立病院改革マスタープランにおいては、今後、同病院を全都を対象としたリューマチ膠原病の医療センターとして位置づけ、これらの病に苦しむ方々のお役に立つよう整備してまいります。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) 養育家庭制度につきまして、二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、都は、社会的養護を必要とする子どもを家庭的環境のもとで育てる養育家庭制度を大幅に拡充していく方針でございます。
 しかしながら、この制度の存在自体が知られていないことに加え、養子縁組を目的としないこと、また、最短一カ月からの養育が可能といった制度内容についても広く認識されてはいないのが現状でございます。
 したがって、ご指摘のとおり、何よりも都民に養育家庭制度を理解してもらうことが肝要であり、十四年度は、新聞広告や駅ポスター、インターネットを利用したPRなど、さまざまなメディアを活用しながら大規模な広報活動を行い、積極的に制度の周知を図ってまいります。
 次に、養育家庭に対するバックアップ体制の充実についてでございますが、養育家庭が安心して子どもを養育できるようにするためには、お話しのとおり、育て方の悩みやトラブルへの対処など、その負担を軽減するための支援策を充実することが極めて重要であると認識をいたしております。
 このため、十四年度から、児童相談所が養育家庭に対する指導、支援の中心となる体制を整え、訪問指導や心理面でのケアなどを積極的に行ってまいります。
 また、児童相談所と協力しながら、子どもの養育の援助や養育家庭相互の交流を行う拠点を新たに設置するとともに、養育家庭が悩みごとなどを気軽に相談できる仕組みを整備してまいります。
   〔住宅局長橋本勲君登壇〕

○住宅局長(橋本勲君) 目黒区上目黒にございます旧国鉄施設跡地に関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、当該跡地に隣接する都営上目黒アパートの建てかえ計画の進捗状況でございますが、当アパートの建てかえは、目黒区と共同で取得いたしました旧国鉄跡地を活用して進める計画でいたところ、財政事情等の理由から、区が施設計画の見直しを行うこととしたため、建てかえを進めることが困難な状況に至っております。
 このため、現在、区に対して、事業推進に向けた対策の検討を申し入れております。
 次に、利用整備計画の具体化に向けた話し合いについてでございますが、このアパートの建てかえや地域のまちづくりを推進する上で、旧国鉄跡地の整備を進めることが重要であると考えております。
 都といたしましては、この跡地の整備につきまして、目黒区と具体的協議を進めるため、区が早期に施設計画を明確にするよう、積極的に働きかけてまいります。
 最後に、都営上目黒アパートとの複合開発についてでございますが、都は、都心部の都営住宅建てかえに際しまして、民間活用による土地の有効利用を進めており、今後も、地域特性に応じた手法を展開していく考えでございます。
 旧国鉄跡地は、売買契約の中で用途制限を付されておりますが、目黒区のまちづくり計画や周辺の開発動向等を踏まえ、当該跡地や都営上目黒アパート敷地の活用につきまして、民間活力の活用の可能性も含めて、区とともに幅広く検討してまいります。

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