平成十四年東京都議会会議録第三号

○議長(三田敏哉君) 四十一番田代ひろし君。
   〔四十一番田代ひろし君登壇〕

○四十一番(田代ひろし君) 教科書採択について質問いたします。
 ことしの新学期より、小学校、そして中学校で使われる教科書の採択、ご承知のように、昨年の八月十五日に採択が終わったわけでございますが、都が全国に先駆けて出しました教科書採択事務の改善についての通知は、文部科学省の採択改善指導を踏まえた画期的な内容であり、いわゆる絞り込みや学校票の問題も、ある程度改善されたのではないかと私は見ております。
 しかしながら、議会や委員会でも取り上げられましたように、特定の教科書を採択させまいとする、一部団体による組織的な採択妨害活動があったことは、都教委も認めるところであります。一部の採択地区では、教育委員の自宅に脅迫電話や無言電話、あるいはかみそりの刃が入った手紙が送りつけられたり、また、荒川区、杉並区、国立市などでは、区役所や市役所を活動家が包囲して審議に圧力をかけたこともありました。各地域の教育委員会事務局に対しても、誹謗または罵倒するような文書、電話やファクスが大量に送られ、都教委に寄せられたものだけでも九千七百七十四件あったことは、横山教育長のご答弁のとおりです。これでは、教育委員の判断で採択すべき教科書を決定することができたのか、大変疑わしいといわざるを得ません。
 したがいまして、採択制度を改善することは、喫緊の課題ではないかと考えられます。東京都の各採択地区の採択日は、七月中旬から八月十五日の最終日にかけ、ばらばらに行われたことが、組織的な圧力や不法、不当な妨害や干渉を可能にした要因の一つであります。
 そこで、採択決定日を、統一地方選挙のように、あるいは総会屋対策のように、全採択区で同一日とすることを提案し、採択実務の改善について都の見解をお伺いいたします。
 次に、都市交通のあるべき姿、特に人と自転車が安全に暮らせるまちづくりについて質問いたします。
 京都議定書の批准が政治日程に上り、国は国内対策の具体化を急いでいます。都は、ディーゼル自動車による大気汚染問題では先駆的な役割を果たしており、高く評価いたしますが、総合的なCO2削減施策にも積極的に取り組むべきではないではないでしょうか。
 国土交通省における乗用車の利用状況の調査によりますと、実に五〇%、過半数の人が五キロメートル未満の利用であります。徒歩、バス、鉄道、自動車、自転車の各交通手段の五キロメートル未満の所要時間を比べると、自転車が最も機動性が高く、環境や生活習慣病予防、さらには資源エネルギーの観点からも、都市交通手段としてすぐれていることがわかっていますが、利用環境が整っておらず、問題も多くなっております。
 交通事故による死者件数の推移を見ますと、全国の交通事故死者数は減少傾向にあるのに対し、自転車乗車中の事故死者数は、この二十年間、約千人程度で、ほぼ横ばいとなっており、交通事故件数はこの十五年で一・五倍ですが、自転車が歩行者と関係した事故件数は約二倍になりました。
 現在、道路交通法においては、多くの歩道が自転車通行可とされておりますが、歩道を自転車が通行してよいと定めている先進国は皆無です。自転車は車両でありながら、交通量の多い車道を走るように義務づけますと、非常に危険な状況にあり、自転車専用道路や専用レーンが整備されるまでの過渡期にはやむを得ない措置かもしれませんが、歩行者の危険は増しております。昨年七月には国の道路構造令の改正が行われ、歩行者や自転車を優先した道路づくりが進められることになりましたが、自転車の利用促進について、都の考えを伺います。
 多くの公立の小中学校が自転車の通学を認めておりませんが、帰宅後に自転車で遊びに行って事故に遭う危険を少なくするためには、学校において実地訓練や交通法規を教えるべきと考えます。
 また、ヨーロッパなどで盛んに行われている自転車競技の普及は、自転車の楽しさ、おもしろさを子どもたちが知る上において大切と思いますが、これらの自転車対策の原資を獲得し、正しい利用を啓蒙するため、例えば、現在はギャンブルとしての側面が強い競輪を、親子で参加しながら楽しめる、健康的なスポーツとしても位置づける努力を行うべきと考えます。
 先ほど、我が党の松原議員の質問にもありましたように、後楽園ドームには国際的なレースもできる施設が整備されていますが、子どもや高齢者に自転車の安全な活用を身につけてもらうイベントを企画し、さらに、その開催費用や放置自転車対策、自転車道路や専用レーンの整備や災害復興対策などの費用を賄うため、現在閉鎖され、宝の持ちぐされになっている後楽園競輪を復活させることも視野に置くべきと考えます。
 知事は東京湾カジノ構想をお持ちと伺っておりますが、文化的な裏づけのある適正な運用のもとでは、競輪やカジノも健全なスポーツ、娯楽としてとらえることができます。競輪については、都心に、すぐにでもできる施設と環境があることにも着目していただきたいと思います。知事の所見を伺います。
 次に、中央自動車道高井戸インターチェンジは、高井戸―調布間が開通した後の十年後の昭和六十一年三月に出口が開設されましたが、入り口は、計画が実行されないまま、現在に至っております。中央道下り線利用の利便性向上、甲州街道渋滞の緩和、周辺住宅地の生活道路の環境改善、甲信越、多摩方面の災害時救援活動の迅速化を考えて、一刻も早く入り口の開設が必要と考えております。
 続いて、多摩ニュータウンについて質問いたします。
 昨日、我が党の松本幹事長の代表質問に対して、知事から、多摩ニュータウンを首都圏メガロポリスにおける核都市の一つとして育成していく旨のご答弁をいただき、都市基盤が整備されつつあることがわかりましたが、具体的な課題についてお尋ねしたいと思います。
 多摩ニュータウンでは、これまで、住む、働く、学ぶ、憩うという機能を備えたまちづくりを進めてきており、医療、福祉、雇用、教育、文化などの施設の整備を促進しているとのことですが、こうした施設がこれまでどのように配置され、また、今後どのように立地を誘導していこうと考えているのでしょうか。
 また、バブル経済崩壊を見た現在、地元市とも連携して早急に販売していくべき約百四十ヘクタールの土地があり、今後の大きな課題となっております。
 そこで、都は宅地販売の促進に向けて、今後どのような取り組みを進めていくのか、お伺いいたします。
 最後に、心の東京革命の推進について伺います。
 去る一月二十五日に東村山市で起きた少年たちによる傷害致死事件は、ショッキングな出来事でありました。文部科学省は全国の教育委員会に対して、どこの地域でも起こり得ることとして、生活指導の徹底や命を大切にする教育の充実を促しました。法律的に対応することも必要だとは思いますが、事の本質はもっと違うところにあると考えております。
 戦後、日本人が個人主義や平等に対する認識を履き違え、自己中心主義を容認し、人とのかかわりの大切さを次の時代にしっかりと伝えてこなかった結果ではないかと思います。物質的な豊かさの中で、子どもが望むものを何でも与え、自由に育てると称して、人に迷惑をかけてもしからない、人に迷惑をかけていることにすら気づかない親や大人がふえてきております。子どもたちに、社会で最低限守らなければならない人間としての基本的なルールや物事の道理を教えることは、私たち大人に課せられた責任であります。
 石原知事が就任以来訴え続けてきた心の東京革命の推進は、先見の明をもってその取り組みの緊急性を社会に呼びかけてきたものであります。子どもの危機的状況を素直に受けとめ、親として、また、大人の問題として、人が社会の中で生きていく当然の心得を、みずからの行動を省みながら、子どもたちに伝えていかなくてはなりません。
 過去、我が国には、子どもたちだけではなく、未熟な親も隣近所の温かい目に見守られ、周りの人に助けられながら、自然に最低限の社会のルールなどのしつけを会得する伝統と文化がございました。心の東京革命は、地域社会の中で失われてしまった、こうしたしつけをもう一度復活させる運動であるはずです。
 心の東京ルールで訴えている七つの呼びかけは、ごくごく当たり前のことですが、しかり方や我慢のさせ方がわからない親や大人が多くなり、生活の中で実行できない人が大変ふえました。ともするとタブー視されるしつけの充実こそ、東京、ひいては我が国の未来を切り開いていく原点であり、心の東京革命の根幹と考えますが、知事の見解を伺います。
 また、この運動を推進し、失われた社会規範を取り戻すための具体的な仕組みづくりと早急な展開こそ重要と思いますが、見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田代ひろし議員の一般質問にお答えいたします。
 自転車の普及、それから演繹して後楽園競輪の再開についてでありますが、私は、決して思いつきではなしに、ご指摘のように、五キロ未満の自動車の利用者が非常に多いということは非常にむだだと思いますし、その限りで、あちこちに、無償で使って、どこかに置き捨てのできるような自転車をたくさん配備したらどうかということをいったことがありますが、今なお研究をしておりますけれども、それに絡めて、自転車が普及していった、その上での後楽園競輪の再開についてであります。
 先ほども質問がありましたが、これはやっぱり文京区のイニシアチブで決まることだと思いまして、私は挙げて協力をするし、現にそのもくろみで、二度ほど後楽園の施設も視察いたしました。歳入確保ということだけではなくて、建物はすっかり昔と印象が変わりましたし、新しいお客があそこで芽生えると思います。ただ、相対的に、都民の趣味としては、競輪というもののポテンシャルが大分落ちてきているのではないか、そういうことも勘案しながら、再開するならするで、いろいろ趣向も凝らさなくちゃいかぬなという気もし出しております。
 次いで、心の東京革命についてでありますけれども、先般の東村山市の事件だけではなくて、あちこちで、いわゆるおやじ狩りというものが行われておりますが、こういう非常に嗜虐的な子どもの危機的状況に対して、人が生きていく上で当然の心得というものを伝えるすべとして、東京革命というものも考えてまいりました。
 いずれにしろ、昔は横町に口のうるさいおじいさん、おばあさんがいまして、遊んでいると説教されたり、注文つけたりされたものでありますが、私は、やはり乳幼児のころから、他人の子どもでも、大人が社会の先輩としてしつける、しかるということの習慣があれば、大人になった子どもを改めてしかるよりも、そういう習慣が社会的に普遍していけば、社会全体で子どもの正当なしつけというものをはぐくんでいくことができるんじゃないかと思います。
 いずれにしろ、子どものしつけの最高責任者は学校の先生ではなしに、親でありますが、それに加えて、周囲の社会人として、人間としての先輩である大人が他人の子どもでもしつけてしかるという習慣をもう一回、この東京でも取り戻したいなと思っております。すべての都民が、こういう問題について我がことと考えて行動できるように、東京もさまざまな機会をとらえて呼びかけていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教科書採択事務の改善提案についてでございますが、昨年の教科書の採択につきましては、各区市町村教育委員会は、その責任と権限を行使し、法令及び都の指導等に基づき、教科書採択がなされたものと認識はいたしております。しかしながら、一部の採択地区で見られましたさまざまな働きかけや組織的な行動につきましては、教育委員会等への圧力となったり、公正かつ適正な教科書の採択に支障を与えかねない事態が生じたと受けとめております。
 なお、文部科学省では、採択を含む教科書制度を不断に見直す、こういう観点から、教科書制度の改善について、教科用図書検定調査審議会に検討を依頼したと伺っております。
 都教育委員会といたしましても、教科書の採択が公正かつ適正に行われるよう、今後とも区市町村教育委員会等を指導し、一層の改善に努めてまいります。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 一点目は、自転車の安全利用の促進についてでありますが、自転車は、だれもが利用しやすく便利な乗り物である反面、安易な走行が事故を招くことも多くなっています。
 東京都では、自転車道などの走行環境の整備を進めておりますが、当面、自転車と歩行者との接触事故をなくすには、何よりもマナーの向上にまつところが大きいものと考えます。そのため、意外に知られていない道路交通法の基礎知識、例えば、自転車は歩道の中央から車道寄りの部分を通行しなければならないというような道路交通法の基礎知識がございますが、こうした意外に知られていない道路交通法の基礎知識や自転車の正しい乗り方について、メディアやリーフレットを活用し、都民へ周知しております。
 また、学校や地域での安全教育を充実するため、マニュアルやテキストを作成し、区市町村の安全教育の拡大を図ってまいりたいと考えております。
 今後も、警視庁などとも連携しながら、自転車の安全利用促進に努めてまいります。
 次に、心の東京革命を推進し、失われた社会規範を取り戻す仕組みづくりについてでありますが、ご指摘のとおり、親が子育てに対する自信を失っている昨今、周囲の大人の協力により、子どもをしつける力を身につけていくことも必要であります。
 そのため、都内全域で心の東京革命の普及活動を行うチーフアドバイザーを養成するとともに、これを全区市町村へ展開していくため、地域アドバイザーの養成にも着手したところであります。
 地域アドバイザーは、今年度に四つの区市で養成し、来年度以降、三カ年で都内全域に拡大する計画であります。
 また、昨年十二月には、心の東京革命推進協議会で、しかり方や我慢のさせ方など、親がしつけの方法を考える手引書「あいうえいくじ」を作成しました。
 来年度から、このアドバイザーや手引書などを活用し、子どもの年代に応じて、親になる心構えや子育てのコツなどを伝授する心の東京塾を、母親学級や幼稚園、保育園など百を超える場所で開催し、しつけの充実が図れる仕組みづくりに取り組んでまいります。
   〔多摩都市整備本部長石河信一君登壇〕

○多摩都市整備本部長(石河信一君) 多摩ニュータウンへの施設の立地でございますが、多摩ニュータウンには、既に、教育施設といたしまして、都立大学を初めとする六つの大学や専門学校が立地をしております。また、永山地区や多摩センター地区には、病院や福祉施設が整備され、地元に定着いたしております。
 最近では、業務地区として計画しております多摩センター北側に企業の研修所の立地が決まっております。また、南大沢地区では、商業施設の集約でありますアウトレットモールや複合映画館が営業を開始いたしまして、周辺から来訪者も多く、大変なにぎわいを見せております。
 さらに、町田市内の相原・小山地区におきましては、ベンチャー企業団地や配送センターが立地いたしまして、雇用の場が創出されております。
 今後、雇用の場を拡大していくための企業の立地が重要課題でありますが、地元市においては、進出企業に対する優遇策を条例で決めているところもあります。このような地元市の企業誘致策と一体となって、企業の立地を進めてまいります。
 次に、多摩ニュータウンの宅地販売についてでありますが、既に約三百五十ヘクタールを販売いたしましたが、今後、百四十ヘクタールを販売することになっております。
 多摩ニュータウンも事業を開始してから三十五年が経過しておりまして、その間の社会経済の変化に伴いまして、宅地需要は量的にも質的にも大きく変化をしております。
 このため、当初策定いたしました土地利用計画につきましても、地元市の意向も尊重いたしまして、多摩ニュータウンの特質であります良好な環境を損なわない範囲で見直しを行っております。
 例えば、子どもの数の減少を背景に、学校用地から住宅地に、あるいは高層住宅地を戸建て住宅地に変えたりしております。
 また、土地利用目的に合わせまして、立地しようとする施設別に、例えば学校用地、商業用地、工場用地など、それぞれに適した土地の選定を行っております。これをもとにしまして、施設別にパンフレットを作成いたしまして、個別の企業や業界団体を精力的に訪問しております。
 これとあわせまして、民間への委託販売の拡充や情報収集によりまして、民間のノウハウを活用して、一層強力に販売活動を進めてまいります。

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