平成十四年東京都議会会議録第三号

○議長(三田敏哉君) 五十五番大塚隆朗君。
   〔五十五番大塚隆朗君登壇〕

○五十五番(大塚隆朗君) 私が都政に参画して半年余り、石原都政の格調高い歩みに大きな感動を覚えつつ、今、その歩みにどのような期待と希望を持って行動するか、過去の都政に対比しながら述べてみたいと思います。
 戦後の都政は、敗戦のすさんだ都民の心をいかに回復するかに始まりました。疲弊した日本経済の時代から豊かさを取り戻すまで、多くの時間と多くの努力を要したことはいうまでもありません。
 先人たちの誤りなき努力の結果が、今日の繁栄を築くことになりました。その都政は極めて地味で、極めて苦渋に満ちた時代、安井、東知事が、戦後の繁栄を取り戻すまで努力は続けられました。豊かさが戻ったところで、革新都政の誕生になりました。見事に都民の心をとらえた美濃部都政の十二年間は、労組優先の都政になり、知らぬ間に財政の破綻を招き、美濃部都政はみずから退陣に追い込まれました。
 自民党は鈴木知事を誕生させ、破綻した美濃部都政を立て直すことから都民の信頼を取り戻しました。しかし、残念ながら自民党都政は、都庁舎の移転を軸に、移転の議決のための箱物都政のツケが財政を圧迫し、形を変えて財政の破綻を来すこととなりました。美濃部都政も鈴木都政も、質は違うが、財政に行き詰まって退陣という不幸を甘受せねばなりませんでした。
 その後、青島都政が、目標も定まらない都政の四年間になり、かなりむだも浪費も重ねましたが、いよいよ都民にとっては閉塞状況の都政を転換してほしいということであったと思います。
 石原都政の誕生は、多くの都民の期待であったと思います。圧倒的な都民の支持を受けて誕生した石原知事の不思議は、一方の意思決定機関である議会において、表向き与野党が判然としていないということであります。
 我が党を含め、押しなべて各会派ともに、石原都政は是々非々で臨むことが公式な態度表明です。保革対決の時代は遠く昔のことであり、社会主義、共産主義が消えた今日では、今の都政のあり方が新しい時代の政治路線ということだと信じます。
 既に、石原都政誕生以来三年が過ぎようとしていますが、こうした議会各会派とのありようを石原知事はどのように考えておられるのか、忌憚のないところをお聞かせください。
 さて、バブル経済は、この十年、都政にも壊滅的なダメージを及ぼしました。ありもしないビル需要を過大に設定して始まった土地政策のツケは、不良資産の処理が経済再建のかぎであるように、今日的課題であり、いまだ解決できないばかりか、地価や株の下落はさらに新しい不良資産となり、壊滅的状況にあります。
 まちを歩けば、物納された国有地が散在するばかりでなく、どこのまちにも空きビルのテナント募集のビラがぶら下がり、バブルの傷跡が見受けられます。このことは日本経済の実態を物語るものであり、経済の閉塞状況を露呈しているのであります。
 また、既に土地の評価額は下がりに下がって、バブル期の二割、三割という状況で、不良資産の処理もままならぬまま、じり貧に追い込まれているのであります。もちろんこのことは、残念ながら国の土地政策の無策が生んだ結果であり、この失われた十年の金融政策を初めとする国の責任の処理がなされなかったことに、大きな原因があるのであります。
 結果的に不良資産の整理がつくまでは、景気などよくなるわけもなく、新税導入や歳出の削減といった石原知事の思い切った施策に期待するしかないと思うと、過去の知事の責任も問われかねないのであります。
 特に、地価の動向は歳入に大きな影響があり、固定資産税など、戦後五十年余り、いつも右肩上がりで推移してきた今では、不安定な財源ということですが、バブルが生んだ財政に及ぼす影響ははかり知れないものがあります。未来の都政を構築していくには、思い切った歳入の見直しや歳出の削減など、不退転の決意で取り組まなければなりません。
 さきの所信表明で、中小企業に対する固定資産税の配慮が示されましたが、知事の英断に敬意を表します。しかし、地価の動向が都政に与える影響が極めて大きいことから、都としては、地価の動向について下げどまりと見ているのか、あるいは、まだ下落状況が続くと見ているのか、率直にお答えをいただきたいと思います。
 地価の都市政策に及ぼす影響は大変大きいと思いますが、例えば区画整理法の事業は、地価が右肩上がりのときはかなり有効な手法だと思いますが、地価の下落の激しいときは、役立たずのところも多いと思うのです。
 さて、都市再生のための法律と予算の充実が計画されております。確かに、この十年の都市政策の流れの中で都心居住が推進され、千代田区、港区、中央区の人口に政策効果があらわれ、定住人口の増加現象があらわれてまいりました。
 都市再開発の手法は多種多様でありますが、今回、国会に上程される都市再生特別措置法案は、都心部に少しでも安い住宅の供給が促進される制度として、大いに期待できると思います。容積で土地の有効利用を進める一方、地価の下落がさらにコストを下げますから、時宜に適したことと思うのであります。
 さらに、かつては日照権の問題が再開発を進める上で大きな制約になっておりましたが、木造中心の時代と今では、建築材や技術も大きな進歩をしており、間接日照で十分対応できる時代になり、再開発こそ土地を有効に使う最大の決め手となり、期待されます。
 そこで、今回の都市再生特別措置法を東京都はどのように受けとめているのか、港区を中心とした都心部に対する考え方についてお尋ねをいたします。
 この法律に基づく都市再生特別地区は、従来の枠組みを一たん外して、民間の創意工夫を生かした提案に対応する都市計画を新たに定めるものです。当然のことながら、個々のプロジェクトのことだけではなく、周辺の市街地も含めた総合的な観点からの対応が求められます。
 わかりやすくいえば、仮に一つのプロジェクトが新法の適用により都市再生特別地区に指定された場合、その隣接地区のことを考えると、すべてに特例を適用することは不可能です。特別地区と隣接地区との調和をどのように図ることになるのか、お答えをいただきたいと思います。
 もう一つの問題は、仮に、ある特例地区において民間事業者が意欲的に整備に取りかかったとしても、事業アセスの制度が現状の運用のままでは、新法で手続の期限を定め、事業リスクの軽減を図ろうとしても、事業の迅速化は困難になってしまいます。今回の新法の都市再生の趣旨からいって、事業アセスについても、従来以上にスピーディーに実施されることが望まれます。
 また、都心部では高層建築物が当たり前になっている今日、これを対象とした事業アセスについても、手続の見直しを考えるべきだと思いますが、知事のご見解をお伺いいたします。
 さらに、新法施行後、都市計画諸法、そして行政姿勢についてお尋ねいたします。
 これからの推進については、当然のことながら容積の緩和による道路、地下鉄を含む鉄道など交通施設、ガス、上下水道、電気、廃棄物処理施設等ライフラインなどに対する影響を十分検討することが求められます。容積拡大と都市施設の整合性はどうなるのか、極めて重要な課題ですが、こうした問題について見解をお伺いいたします。
 次に、道路整備の問題についてお尋ねをいたします。
 東京の未来の都市計画施設のうち、道路整備については、最近の国の道路財源についての議論は余りにも身勝手で、憤りすら感ずるのであります。東京の都市計画道路の整備は、かなり財源を投じても、いまだに整備率は五三%、そして、さらに地方の道路と違って消耗の度合いも高く、更新の予算もあることから、年間の道路予算は、実質財源としてはいつも限度があったといえます。道路財源を一般財源化しようという話は、大都市の道路整備の状況を考えると、余りにも乱暴です。
 都市の道路整備はスクラップ・アンド・ビルドでありますから、景気浮揚の効果も大きいことから、都市計画道路の整備は、この際、特別措置により、拡大拡充に努力をするべきであります。特に三多摩地区の整備のおくれは、経済活動の向上のためにも力を入れるべきと存じます。
 そこで、多摩の南北道路や区部の環状二号線など環状道路の整備を初め、まだまだ多くの道路整備を進めなければならないとの立場から、今後の都市計画道路、とりわけ幹線道路の整備に対する見解をお伺いいたします。
 最後に、首都移転問題についてお尋ねいたします。
 今、総理官邸は新しく建設中です。外務省もリニューアル中ですが、どんなに財源が豊かであっても、もし首都移転を考えているなら、こんなむだはできないはずです。もちろん首都移転がそんなに簡単に決まることはないという前提で事が進んでいるとしても、賢者の発想にはないはずです。
 このことに関する議論はいろいろとあると思いますが、都としての方針は反対で統一されていると思います。しかし、今日まで国のやり方を見ると、決して看過するわけにはいかないと思います。もちろん理論武装も大事でありますが、具体的にどのようなことをしたらよいか、グローバルな反対運動が必要であります。
 実は、卑近な例として中央区の努力があります。音を立てて夜間人口が減少の一途をたどってきたことはご承知のとおりです。矢田中央区長は、何としても夜間人口の回復を、すべての政策の中でも第一の目標に掲げ、日ごろ使う名刺に、定住人口の回復をと刷り込むとともに、全職員一丸となって、区のすべての発行物にこの言葉を刷り込み、たゆまず努力をしてきました。最近、あれほど絶望視されていた定住人口が増加に転じたのであります。
 首都移転反対も同様で、これほど明々白々な目標を全都的な反対運動に盛り上げていくことが必要ではないかと思うのです。理論的にも、また実情からも、この反対運動はいつ壊されないとも限りません。反対運動は、全市区町村を交えて、さらには近隣自治体にも理解を求め、石原知事が先頭に立って強力な体制をつくり上げたらと思いますが、ご見解をお伺いいたします。
 東京を中心に築き上げた多くの遺産を将来ともに守り、さらには、国際的にも東京の行政的な重みや文化的資産をこの上とも高めていく上からも、多くの力と多くの知恵が、石原知事とともにすることを願い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 大塚隆朗議員の一般質問にお答えいたします。
 今、質問をお聞きしながら、私、あることを思い出しました。それは、私の僚友でもありましたお父上の大塚雄司議員が、中曽根政権のころ、敢然と批判をしまして、この都内におけるオフィスの需要面積の想定は違う、これは非常に危険な数値であって、正当性がないと。
 これに非常に中曽根さんも反発し、大塚さんの親分でありました安倍さんも、自分の先のことを気兼ねして余り強いことをいうなというブレーキをかけたんですけれども、結果として、私は大塚さんのいい分が当たっていたと思います。たしか「中央公論」誌上で、もう一人、中曽根派の、同じような年代の代議士と激しい議論がありました。私は両方比べて眺めながら、大塚さんの論に正当性があるという気がいたしました。
 次の竹下内閣のときに、実は国土庁の長官の奥野誠亮さんに、この論文をお読みになって、こういう数値の予測は非常に危険だから、修正させたらいいんじゃないですかと。奥野さん、非常に強い人でして、普通ですね、官僚にそういうことを上司は命令しないものですが、強くいいまして、珍しいことに国土庁が中曽根時代の数値の修正をしたのを覚えております。私は、やはりそれは、ちょっと遅きに失した感がありますが、必要な議論であったと思うんです。
 都政に関しても、よりよい手段というものは、ある場合には激しい議論からしか導き出されてこないと思います。そういう意味で、私と議会を構成している各党派とのかかわりというのは、どの問題についても、そのたびたびに是々非々であるべきだと思います。そういう点で、一部何でも反対の政党もあるようでありますが、おおむね非常に健全なかかわりの中で都政が運営されていると、私は満足しております。
 政党に限らず、今日のような時代には、変化に敏感に対応できなければ、その存在理由が問われることになります。非常に情報がはんらんし、価値観が多様しているこの社会にありましては、従来の与党、野党といった枠に縛られずに、最初から結論というものを設けずに、やはり真摯な議論の積み重ねの中から、よき方法、よき手段を収れんしていくのが、都民が望む最も好ましい姿であると思っております。
 したがって、現在のようなかかわりというものは、ごく自然な状況であると私は思っておりますし、いずれにしろ、時代、党派を超えて行政に求められるべきものは、あくまでも合理性、つまりいいかえれば、時間も含めた費用対効果というものをいかに追求していくかということが肝要だと思っております。
 次いで、環境アセスメントの手続の見直しについてでありますが、これはとにかく、毎回申してきたように、日本は何をやるにも、規制が多いせいか、とにかく遅いんです。東京の活力、ひいては日本の活力を再生するために、この都市再生のスピードを上げる、時間の価値というものを認識して、そういうロスを少なくすることに努めるということは、非常に重要な課題だと思います。同時に、当然、良好な環境を確保していくことも、都の責務でもあります。
 この問題に関しては、東京の独自の工夫を重ねながら、環境アセスメントなどの手続の期間の思い切った短縮に努め、民間が手がける事業の促進を支援していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔財務局長安樂進君登壇〕

○財務局長(安樂進君) 今後の地価の動向についてのお尋ねでありますが、昨年九月に東京都地価調査を発表いたしましたが、都内の平均地価は十一年連続で下落しております。しかし、下落幅は、この二年間縮小してきております。
 個別に見ますと、交通基盤の整備や再開発が進んだ地域では、地価が上昇したり横ばいとなったところがふえております。これは、投機目的ではない土地に対する実際の需要が拡大した結果、利便性や収益性が地価に反映するようになったためと考えられております。さまざまな要因が影響するために、地価の動向を正確に推測するのは大変難しい面があります。
 これは一つの予測にすぎませんが、一般的には、土地の価格は景気や地域の経済状況を反映して推移するため、当面、都内の地価は、総体としては引き続き小幅な下落傾向の中にあると思われます。その一方で、利便性や収益性に基づく地域的な格差は拡大していくものと思われます。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 都市再生に関する三点のご質問にお答えします。
 まず、都市再生特別措置法についてでございます。
 今回の法案には、都市再生に向けた民間への金融支援や、民間の提案を受けとめる自由度の高い都市計画制度の創設が盛り込まれております。これらの制度を積極的に活用することにより、国際競争力のある、魅力と活力にあふれた都心部などの再生に寄与できるものと考えております。
 次に、特別地区と隣接地区との調和についてでございます。
 都市再生特別地区は、都市の再生を促し、土地の合理的かつ健全な高度利用を図るため、都市計画として定めるものでございます。このため、事業者が提案を行う場合には、都市機能の維持増進や都市環境の保持などの都市計画の適正な基準に適合し、隣接地区等も含めた一体的かつ総合的な計画とすることが求められております。このようなことから、特別地区と隣接地区とは十分な調和が図られるものと考えております。
 次に、容積拡大と都市施設との整合性についてでございます。
 これまでも、都市計画諸制度を活用して容積緩和を行う場合には、道路など交通基盤とのバランスを確保することを初め、各種のライフラインなど、都市施設との整合を図るよう配慮を求めてきました。
 都市再生特別地区の適用に当たりましても、計画の提案を行う事業者に対して、周辺道路を初めとした交通基盤に対する影響などについて予測を行い、必要な措置を講ずるなど、都市機能の保持に十分配慮した事業計画を立案することを求めてまいります。
   〔建設局長山下保博君登壇〕

○建設局長(山下保博君) 都市計画道路の整備についてでございますが、東京の都市計画道路の整備は、ご指摘のとおり、いまだ五割程度でございまして、慢性的な交通渋滞は都市活動や都民生活に大きな支障となっております。
 そのため、かねてより財源の確保について、都議会のご支援を得ながら、国に対して東京への配分拡大を強く要求してきたところでございます。
 今後とも、なお一層、道路財源の確保への取り組みを強化し、環状二号線などの区部環状道路や調布保谷線など多摩南北道路を中心といたしまして、都市づくりの根幹となる都市計画道路の整備を積極的に進めてまいります。
   〔知事本部長田原和道君登壇〕

○知事本部長(田原和道君) 首都移転反対についてのご質問でございます。
 これまでも、都におきましては、一貫して首都移転に反対を主張してきたところでございますけれども、七都県市首脳会議におきましても、平成十二年から二年続けて首都移転に強く反対する声明を発表するなど、七都県市が一丸となって首都移転に反対をしております。
 また、区長会、市長会、町村会を初め、都内の区や市の議会におきましても反対の決議が次々と行われ、首都移転反対は全都的な高まりを見せてまいりました。
 このような中で、五月には移転先候補地の絞り込みが予定をされております。都といたしましては、テレビやラジオなど、あらゆる広報手段を動員いたしまして反対運動を強化するとともに、他の自治体、特に都内区市町村と緊密に連携をとりながら、首都移転の白紙撤回を目指してまいります。

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