平成十四年東京都議会会議録第三号

○副議長(橋本辰二郎君) 六十二番石川芳昭君。
   〔六十二番石川芳昭君登壇〕

○六十二番(石川芳昭君) 初めに、都立病院改革マスタープランと今後の地域医療に対する都の支援について伺います。
 マスタープランでは、今後の都立病院の基本的な役割は全都的な行政的医療を担うこととされ、地域医療は民間と区市町村が中心となって担っていく方向性が示されました。
 区部においては、公立病院の運営は東京都が担ってきた経緯があります。このため、地域医療水準という視点で見たときに、各区の医療施設の設置状況には大きな格差が存在しており、保健医療計画で定める二次保健医療圏内においても、各区の区民からすれば、生活実態として大きな自治体間格差が存在しています。
 また、今後、公社化や民営化が計画された都立病院は、これまで実態として地域医療を提供してきていますが、医療資源が不足する地域では、本当に地域医療を民間だけに任せて大丈夫なのかという心配の声があります。例えば、地域医療の中にも、災害時の医療や小児救急医療など、行政的な対応を必要とする分野が現に存在していると考えます。こうした医療について今後どのように対応していくのか、伺います。
 さらに、再編後の都立病院の配置から見ても、特に、近くに都立病院がなくなってしまう周辺区では、行政的医療の確保が大きな課題になるものと想定されます。
 そこで、新たに病院を整備するなど、地域医療の確保にみずから取り組む、例えば練馬区のような自治体に対しては、都として多様な支援の枠組みを検討していく必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、都の総合防災訓練に関連して伺います。
 知事は、就任以来、二年間にわたり、九月の防災訓練でビッグレスキュー東京を実施され、広く都民に安心感を与えることができたのではないかと高く評価するところでありますが、今後の防災訓練の基本的な方向につきまして、以下数点伺います。
 第一点目は、国等との連携についてであります。
 発災直後、被害を最小限に抑えるためには、国と近隣自治体と被害情報を共有化する必要があり、このことがいち早く適切な対処方針を決定できることにもなると考えます。
 そこで、このための訓練を首都圏全体で取り組み、具体的に検証していくべきではないかと考えます。知事の所見をお聞かせください。
 第二点目は、区市町村との連携についてであります。
 私が住んでいます練馬区を例に申しますと、学校を避難所に指定しており、最低一日分の食料備蓄を行うとともに、学校に備蓄した炊き出し資器材などを住民自身が扱う訓練を地元住民が協力し合って行っております。
 では、二日目以降の食料はどうかと申しますと、都区の地域防災計画によりますと、これは都の役割となっているわけであります。これは一例にすぎませんが、こうしたことを考えますと、震災対策条例の趣旨を踏まえ、基礎的自治体、そして自助、共助を担う住民自身との連携をより積極的に都の総合防災訓練に取り入れていくべきと考えます。見解を伺います。
 第三点目に、災害時の広域的支援の立場から行う被災者の救援、救護活動や緊急物資輸送のための道路の確保についてであります。
 地域防災計画では、あらかじめ必要な役割分担と体制を定めていますが、この計画が本当にうまく機能するか実証するために、都道自体を道路障害物除去の訓練場として実際に使用してみるなど、災害時を想定したより実践的な訓練を取り入れてみてはいかがでしょうか。
 一時的にせよ、迂回路の設定や交通規制等の困難が伴うことは十分承知していますが、地元の区市町村や住民の理解のもとにより実践的な訓練を行うことは極めて有意義であり、こうしたことにより、都の地域防災計画は実効性のあるものになるのではないかと考えます。所見を伺います。
 次に、消費者対策に関連して、まず電子商取引について伺います。
 この数年急増している電子商取引は、我々の都民生活に大きな利便性をもたらすことは間違いないのですが、その一方で、電子商取引の陰の部分ともいうべき新たな消費生活面のトラブルが社会問題化しています。
 知事が本定例会に提出している消費生活条例の改正案では、国や全国の自治体に先駆けて、電子商取引のトラブル防止を盛り込まれたということに対して、高く評価するものであります。
 しかしながら、電子商取引は、いわば発展途上の取引形態であり、今後、取引量の急増とともに日々進化することが確実であり、どのように法律や条例を整備しても、このことで対処できないケースの発生が今後十分予想できるわけです。
 そこで、こうした認識に立ち、さらなる対策の検討を始めることが重要です。所見を伺います。
 さらに、食品の表示制度について伺います。
 今回の事件で傷つけられた表示制度の信頼を早急に立て直していかなければなりません。そのために、まず、表示内容の真偽に関する検証を強化することが必要であると考えます。
 都は、二月二十日から食肉業者の緊急調査を開始しましたが、その結果について、できるだけ早く都民に公表すべきであります。また、引き続き、他の食品についても実態調査を行うべきと考えます。所見を伺います。
 また、今回の事件は、雪印食品などのコンプライアンス、つまり、法律を守ろうとする精神の欠如が最大の原因であります。しかし、JAS法の表示制度では、表示内容は事業者のモラルに任されているとともに、違反行為への罰則は行政指導を事前に行うことになっているなど、表示を遵守させるための仕組みとしては不十分であったことも、事件の一因であったと考えられます。
 二度とこのような不当表示が繰り返されないため、早急に表示制度を強化すべきです。見解を伺います。
 次に、交通渋滞解消のための違法駐車対策について伺います。
 都では、新たに今年度から渋滞解消のための違法駐車対策として、スムーズ東京21に取り組んでいます。従来、違法駐車対策といえば、警視庁の取り締まりが中心でありましたが、私は、駐車違反をさせない受け皿づくりなども含めて、総合的な取り組みを実施してこそ、大きな効果が発揮されると考えます。
 さらに、今回の取り組みが地域限定で三カ年ということでありますが、その効果を考えると、一部の地域にしか及びません。せっかく始めた対策を三年間で終わらせるのは、残念であります。地域を拡大して継続していくことは、財政、人手の問題など課題があると思いますが、私は、全都的に実施してこそ大きな効果を生むものと考えます。あわせて知事の見解を伺います。
 次に、良好なまちづくりに関連して伺います。
 第一に、西武池袋線の連続立体交差事業についてであります。
 この事業で未着手となっている石神井公園駅付近は、これまで外環道路都市計画との整合を図る必要があることを理由に事業が進まないという状況が続いてきましたが、外環を地下式とする方針を明らかにした現在、今後の取り組みを明確にすべきであります。
 一方、国においては、この事業を早期に進めるための鉄道事業者による立てかえ制度や、鉄道事業者に対する融資制度など新たな制度を創設しています。
 地元においても、石神井公園駅北口の再開発事業も完成間近となり、南口地区についても、まちづくり協議会で検討が進むなど、連立の事業化に必要な取り組みが行われております。こうした状況や地元の動きを受け、国、都、区、鉄道事業者等が連携して、石神井公園駅付近から大泉学園駅までの事業化を早期に取り組むべきであります。
 第二に、大江戸線大泉学園方面への延伸についてであります。
 導入空間となる都道補助二三〇号線の土支田地区において、練馬区が沿線地域のまちづくりにおいて積極的かつ主体的な取り組みを始めております。これまでの経緯を考え合わせたとき、地元区のこうした取り組みに対し、都としても積極的な支援が必要と考えます。
 第三に、外環道路整備についてであります。
 PI外環協議会(仮称)準備会、東京環状道路有識者委員会を設置するなど、従来にない取り組みを国や都が始めていることについては、外環の建設促進のために大変重要なことであります。今後のPIの中心をなすと考えられる協議会の準備状況と、有識者委員会の動向について明らかにしていただきたい。
 さらに、練馬区では、地元の建設促進への熱意を受けとめ、外環道路整備関連事業経費を予算化し、外環地上部のまちづくりの調査を実施することになっています。都として必要な支援を行うべきであります。
 また、こうしたことにこたえるためにも、外環の早期整備を図るべきと考えます。
 第四に、都道整備に伴う用地取得についてであります。
 現在、事業化されている環八や調布保谷線などにかかる地権者で、残地で生活再建を図る関係者は、用地交渉の段階で用途地域を変更することを主張し、そのことが用地買収のネックとなり、道路整備のおくれの大きな要因にもなっています。
 都市計画道路の早期整備を図り、さらに沿道の高度利用を促進することは、東京の都市再生を促進することになり、道路建設の費用対効果からも都民の支持が得られることになると考えます。用途地域変更は、以前は東京都全体の一斉見直しの時期に行われてきましたが、現在では、都の都市構造再編プログラムに組み込まれた路線については、道路の完成や地区計画の導入とあわせて、沿道の用途地域の見直しを行うとの方針になっています。今後、地権者の生活再建を図る視点からも、都市計画道路の整備に合わせ、用途地域の変更を推進していくべきと考えます。
 以上の点について、知事並びに関係局長の所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 石川芳昭議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、首都圏全体での訓練の取り組みについてでありますが、大規模な災害が発生した場合、当然国を含めた総合的な支援体制が、当然また近隣の自治体とも連絡をとり合いながら取り組まなくてはならないと思います。
 そのためにも、災害発生直後の国や自治体間の適切な情報共有が重要であります。国とも連携した合同図上訓練の実施を、さきの七都県市首脳会議にも提案して、何とか実現しようと思っております。
 この訓練を通じまして、国及び七都県市の情報ネットワークを構築していきたいと思っております。また、その前段としても、先般申しましたが、アメリカのFEMAのような、あれほど強力な拘束力は持ち得ないと思いますけれども、いずれにしろ、国を含めて、異なった地方自治体間の連絡網というものをきちっと整備しませんと、一たん緩急のときにどこに電話をかけていいかわからない状態では、しようがないと思います。
 先般、昨年の九月の大災害訓練の前に、七月でしたか、図上訓練として、本当に観念的といえば観念的でありましたが、実験をやってみまして、非常に効果が逆にあったということを痛感しました。そういった経験を踏まえて、これから万全の体制をとっていきたいと思っております。
 次いで、違法駐車対策でありますが、違法駐車は、交通渋滞や事故の原因ともなりまして、都民の快適な生活を妨げております。このため、従来の枠組みを超えて、都と警視庁が連携した総合的な対策として、スムーズ東京21を進めたいと思っております。
 今回の対策は、全国で初めて路線に交通指導員を配備しまして、規制指導から駐停車の受け皿づくりまで、ソフトとハードの組み合わせで、四路線、三エリアで総合的に実施していきたいと思っております。
 今後、施策の検証を行い、渋滞の著しい他の地域や路線についても、その成果を生かしていきたいと思っております。しかし、何しろ広大な地域でありまして、またそこに膨大な数の車があるわけでありまして、ちょっとやそっとで、らちの明かない問題でありますが、少しずつ積み重ねをすることで、そういう知見を踏まえて、また新しい方法も編み出していきたいと思っております。
 次いで、外環についての取り組みでありますが、外環は、首都圏の渋滞解消や環状メガロポリスの実現に必要不可欠なものであります。首都圏の再生に大きく役立つものでありまして、これはもう何よりも優先して整備すべき路線であると思います。
 都としても、今後、地元との対話をより一層進めるため、新しい協議会を設置しまして、国、区市とともに、早期整備に向けて積極的に取り組んでいきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 地域医療についてのご質問にお答え申し上げます。
 まず、地域医療の確保についてでありますが、これまで都立病院が実態として提供してきた地域医療の中には、災害時における救護活動や小児初期救急医療等、本来区市町村が担うべき行政的な医療が含まれていることは、ご指摘のとおりでございます。
 都立病院の公社化等に当たりまして、地域にとって必要な医療の確保については、地元自治体等との役割分担を踏まえ、関係機関と協議するなど都として適切に対応してまいりたいと考えております。
 次に、地域医療に取り組む自治体への支援についてでありますが、東京都保健医療計画では、住民に身近な地域医療の確保については、基礎的自治体である区市町村が主体的に取り組むことを基本としております。
 このため、みずから用地を提供したり、建物整備に対する補助を予定するなどして、大学病院を誘致することとした練馬区のように、区市町村が地域の実情に応じたさまざまな取り組みを進めることは、大いに望ましいことであり、また、地域住民にとって歓迎すべきものであろうと考えております。
 都としては、こうした病院整備などの取り組みを行う区市町村から支援要請があった場合、病院の運営形態や機能等も勘案しながら、真摯に検討してまいりたいと考えております。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、基礎的自治体である区市町村や住民との連携を取り入れた総合防災訓練を実施すべきではないかと、こういうお尋ねでございました。
 お話のように、災害に対しましては、みずからの命はみずから守るという自助の活動に加え、地域での共助及び住民に身近な区市町村の役割が極めて重要でございます。
 このことから、ことし九月の総合防災訓練は、練馬区との合同開催といたしまして、区の役割を重視し、住民と一体となった実践的な訓練を行う予定でございます。
 次に、より実践的な防災訓練の実施についてでございます。地域防災計画に基づく災害時活動態勢が本当に機能するか検証するためには、現実に近い状況下での訓練が有効でございます。このため、都は、二年間にわたるビッグレスキュー東京におきましても、銀座中央通りとJR八王子駅前を一定時間交通規制するなど、実践的な訓練を行ってまいりました。
 お話の、実際の道路を利用して道路障害物を除去する訓練につきましては、さまざまな問題もございますが、実現に向けて関係機関と協議してまいりたいと思います。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 消費者政策についての三点についてお答えをいたします。
 まず最初に、電子商取引における法律や条例では対処できない新たなケースへの対応についてでありますが、電子商取引にかかわる消費者被害に対応するため、都は、消費生活条例改正案に迷惑メール等電子商取引対策を盛り込み、こうしたことも一つの契機となり、国においても法整備が進んでおります。
 しかし、急激な技術革新が進む電子商取引において、トラブルを防止、解決するためには、法律や条例による規制に加えて、事業者の自主的な取り組みを促進することも有効であると考えております。
 今後、都といたしましては、プロバイダーなどの電気通信事業者やインターネット取引事業者等の参加を得た検討会を設置し、電子商取引市場の健全な発展と、消費者保護のための業界自主ルール、仮称東京eルールづくりを促進してまいりたいと思います。
 次に、食肉の緊急調査結果の公表についてでありますが、このたびの緊急調査は、二月二十日から三月末までを調査期間として、関係局が連携し実施しております。調査終了後、できる限り速やかに調査結果を公表したいと考えております。
 また、他の食品につきましては、生鮮食品や加工品など食品の性質に合わせ表示事項が定められているとともに、流通形態も多様であります。そのため、今後、調査の実施に向けて、それぞれの食品の特性に合わせた調査手法や体制などについて検討してまいります。
 最後に、食品の表示制度の強化についてでありますが、現行のJAS法では、ご指摘のとおり不当表示に対し、指示、公表、改善命令という行政手続を経て、初めて罰金を科すことができます。しかし、このような是正措置に重きを置いた仕組みだけでは、不当表示の抑止効果は期待できません。今後、虚偽表示など悪質な行為には、より重い罰則を直ちに科せられるようにするとともに、食肉の原産地名は国別表示を改め都道府県名などの地名とするなど、JAS法の表示制度を充実強化するよう、国に提案要求してまいります。
   〔建設局長山下保博君登壇〕

○建設局長(山下保博君) 二つのご質問にお答えいたします。
 まず、西武池袋線石神井公園駅付近から大泉学園までの連続立体交差化についてでございますが、本区間には、富士街道など十カ所の踏切がありまして、このうち一時間に四十分以上遮断しているなど、いわゆるボトルネック踏切は九カ所ございます。このため、交通渋滞や地域分断が生じておりまして、これらを早期に解消する必要がございます。
 現在、事業化に当たっての課題でございます石神井公園駅周辺のまちづくりや外環など関連する道路との整合、財源確保の見通しなどについて、国、地元区、鉄道事業者と調整を図っておりまして、引き続き早期事業化に向けて努力をしてまいります。
 次に、大江戸線延伸に関連した土支田地区のまちづくりについてでございますが、都は、厳しい財政状況の中で、地元機運の高まりを踏まえまして、早期にまちづくりを進めるため、練馬区が主体となって取り組むことを提案し、区の合意を得たところでございます。二月初めには、区とともにまちづくり懇談会を開催いたしまして、地元住民に対し今後の区施行区画整理事業の進め方などについて、説明を行ったところでございます。
 都といたしましては、今後、区の区画整理事業が円滑に進みますよう、関係機関と連携を図りながら、技術的支援等を積極的に行ってまいりたいと思います。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 三点のご質問にお答えします。
 まず、外郭環状道路のPI協議会などについてでございます。外環の具体化に当たりましては、幅広い方々の意見を聞き、計画づくりに反映していくことが重要でございます。このため、地元団体代表者と国及び都で構成する準備会に、PI外環協議会の構成、規約、運営方法について提案し、その内容を詰めているところでございます。
 また、有識者委員会は、合意形成のプロセスや計画の必要性、計画策定に当たって配慮すべき事項等について、審議、評価、助言をすることとなっております。
 同委員会は、昨年十二月の設置以降、これまでに三回、時間管理をも念頭に置きつつ活発な議論を行っております。
 次に、外環に伴う地元区市のまちづくりへの支援でございます。外環の整備に当たりましては、住環境との調和やまちづくりなどに十分配慮していく必要があり、練馬区が外環周辺での課題や将来のまちづくりとの関係などをみずから検討することは、重要であると認識しております。
 今後のまちづくりに当たっては、地元区市と連携を図りながら、適切な役割分担のもと、必要な支援を行ってまいります。
 次に、道路整備に伴う用途地域の変更についてです。東京都は、平成十年に都市構造再編プログラムを策定し、都市計画道路の整備事業の見通しと進捗状況にあわせ、適切に沿道の用途地域を見直してまいりました。また、誘導容積型の地区計画を導入し、道路完成前の用途地域変更にも対応してまいりました。
 今後、道路整備にあわせて、地区計画を積極的に活用することにより、道路事業者や区市町村と連携し、適切な用途地域の見直しを行ってまいります。

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