平成十四年東京都議会会議録第三号

   午後三時五十一分開議

○議長(三田敏哉君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 八十七番新藤義彦君。
   〔八十七番新藤義彦君登壇〕

○八十七番(新藤義彦君) 初めに、都営住宅制度の改革についてお伺いいたします。
 先般、二十一世紀を見据えた住宅政策の長期計画として、新たな東京都住宅マスタープランが策定されました。このプランは、これまでの都の住宅政策を徹底的に見直し、本格的な成熟社会を迎えるこれからの時代に対応した都民の住居を総合的に支援していくとの姿勢は、高く評価するものであります。
 そこで、このプランの新たな住宅政策の方向の中で掲げられている都営住宅制度の抜本的改革について、まず、知事のご所見をお伺いいたします。
 このプランは、都営住宅の管理戸数の抑制が打ち出されております。将来の人口、世帯動向を踏まえれば、現在ある住宅の維持更新に重点を移し、ストックの有効活用を図っていくという方向性は、妥当なものであろうと私も考えております。
 しかしながら、平成十三年十月の空き家募集を見てみますと、平均倍率が二十一倍とまだまだ高い応募倍率になっている一方で、本来の公営住宅の趣旨から見て、都民から批判されてもやむを得ないような方が入居しているという実態はないでしょうか。
 また、現在、家族四人の標準世帯で五百十万円という入居基準、そして七百八十九万円という高額所得による明け渡しの基準になっております。
 公営住宅法の第一条、この法律の目的では、この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足る住宅を建設し、これを住宅に困窮する低所得者に対して低廉な家賃で賃貸しすることにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とするとなっております。が、しかし、今述べた基準は、現在の都民感覚からすると、低所得者の基準に対しては高過ぎるのではないかというのが、一般的な都民感情ではないかと思います。
 その点は、国の基準であるから、とりあえずおくとしても、収入が基準を超えていても入居し続ける。しかも、一度入居すれば、二十年、三十年、場合によっては五十年、何代でも住み続けられます。持ち家に住む都民は、家の維持管理費はもとより、固定資産税、都市計画税を払うのは当然。世代交代の折には、極めて高い相続税を払っています。こういった点に、都民はさらに根深い不公平感を抱いているのであります。
 こうした中で、マスタープランで示された戸数抑制の方針を都民に納得してもらうためには、都営住宅ストックが、公平性の観点から、真に住宅に困窮する低所得の都民に低廉な形で供給されるよう、管理体制の改善に取り組むことが必要不可欠です。
 既に期限つき入居制度の一部導入など、マスタープランの前倒しで管理制度に取り組んでいることは評価いたしますが、都営住宅が真に都民共有の住宅セーフティーネットとしての機能を高めることがますます必要になってくると思います。これまでの取り組みを含めたご所見をお伺いいたします。
 一方、マスタープランでは、特別区に加えて、新たに市町村に対しても移管を推進していくと述べられています。地域の実情に応じて、きめ細かい住宅政策と福祉政策が連携した住民サービスのため、区市町村が積極的に住宅政策に取り組むことは必要です。
 しかし、市は、区と違って、以前から基礎的な自治体として公営住宅建設にみずから取り組んできた実績もありますが、その一方で、新たに多くの住宅を移管するということになれば、組織体制を含め、移管に対して大きな不安を抱いているのが実情です。
 こうした市町村の不安を解消し、移管を円滑に進めるために、どのように取り組みを行っていくのかお伺いいたします。
 次に、立川基地跡地昭島地区の土地利用構想の実現についてお伺いいたします。
 昭和五十二年に全面返還された立川基地跡地は、多摩地域の中央部に位置し、核都市立川として位置づけられ、五つの核都市の一つとして、整備促進が期待されているところであります。
 その中にあって、東京都は、立川基地跡地昭島地区の整備について、平成十年四月に策定した多摩の心しん整備計画に基づき、多摩の心しんの一翼を担う地区として、同年十一月に、東京都、そして地元立川市と昭島市の合意のもとに、土地利用構想を決定し、発表しました。
 私は、この間、構想実現に向けた東京都の基本的な方針、取り組みについて質問してきましたが、改めて次の点についてお伺いいたします。
 立川基地跡地昭島地区の土地利用構想実現に向けて、平成十一年一月より、都と地元昭島市は、関係住民に対し説明会、懇談会等を開催してきましたが、市は、今年度、東中神駅周辺に限っては住民意向を集約したと伺っております。
 市は、今後、これらを踏まえてまちづくりを進めていくこととしておりますが、東京都としての土地利用構想実現へ取り組む姿勢をお聞かせください。
 次に、立川基地跡地昭島地区に関する都市計画道路の整備についてお伺いいたします。
 平成十七年度に都市計画道路昭三・四・九号の整備が完了する予定であると伺っておりますが、利便性や投資効率を高めるためにも、第二次事業化計画にも定められている跡地関連の都市計画道路昭三・二・三号及び昭三・二・一一号の整備促進する必要があると思いますが、いかがお考えか、ご所見をお伺いいたします。
 次に、多摩地域中小企業振興センターの本格整備についてお伺いいたします。
 立川基地跡地昭島地区の商業・業務地に平成十八年度に多摩地域中小企業振興センターが整備されるまでの間、立川市に暫定施設が整備されていますが、今日の厳しい経済環境下に置かれている中小企業に対して、機能的で十分な経営、技術を行うためには、本格的な整備を急ぐ必要があると思いますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、東京都大学改革大綱についてお伺いいたします。
 東京都は、高度で専門的知識を備え、社会をリードする人材育成のために、都立大学、都立科学技術大学、都立保健科学大学、都立短期大学の四大学を設置し、これまでに多くの人材を輩出し、大きな成果を上げてきました。
 しかし、東京都は、平成十三年十一月にこの都立四大学を統廃合し、平成十七年に総合大学として開設を目指す、東京都大学改革大綱を発表しました。
 この大学改革大綱は、未来を切り開くための人材育成や学術、研究の両面において、高度な教育、研究を展開し、アジアを初めとした国際社会の中で存在感がある大学とする。また、学術、教育、文化等の交流拠点として、常に社会に向かって開かれたものとし、広く都民が必要に応じて教育、研究資源を活用できる総合大学とするというものです。
 しかし、このたびの東京都の大学改革構想は、現都立大学、科学技術大学、保健科学大学を中心として新大学を設立することとなっておりますが、これまで地域の教育、文化に大きな役割を果たしてきた都立短期大学は廃止するということであります。
 今回の都立の大学の見直し構想は、現在ある都立四大学の単なる統廃合だけであってはならないと考えます。これらの四大学は、貴重な都民の知的教育施設として共有財産であり、今後も広く教育、文化的に有効活用されていくことが必要であり、地域住民からもそうした方向が求められています。
 各大学の統廃合に伴う敷地の活用については、それぞれ一定の考えが示されていますが、都立短期大学については、晴海校舎の活用は示されているものの、昭島校舎については何ら構想が示されておりません。
 都においては、この校舎及び敷地の活用について、どういう方向性を持って活用を考えているのか、お伺いいたします。
 都立短期大学昭島校舎は、緑に囲まれた閑静な場所にあり、交通の便もよく、環境に恵まれた地域であります。
 私は、今後利用構想を検討するに当たっては、国際的な教育研究施設や企業の研究開発機能を誘致するなど、地元の意向を十分に踏まえた教育、研究、文化の拠点施設などとして活用をする考えはないか、あわせてお伺いいたします。
 以上で質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 新藤義彦議員の一般質問にお答えいたします。
 都営住宅制度の抜本的改革についてでありますが、大きな時代の変化の中で、都営の住宅制度についても、これまでの殻を破る発想と果敢な取り組みが必要だと認識しております。
 特別会計の導入など経営的視点を強化するとともに、期限つき入居制度の導入や使用承継制度の見直しなど、管理の適正化を図っていきたいと思っております。
 また、都営住宅の再編整備を進める中で、南青山一丁目のプロジェクトなど都心の再生や、あるいは木造住宅密集地域の整備を図るとともに、分譲マンションの建てかえの際の仮住居として都営住宅を提供するなど、都営住宅を今後のまちづくりに大いに活用していきたいと思っております。
 また、区市町村への移管を進めまして、地域に根差した住宅政策を推進したいと思っております。
 このような取り組みを通じ、都民の共有の財産であります都営住宅について、今後、あくまで公平、効率、活力、分権の視点から、抜本的な改革を推進していきたいと思っております。
 なお、他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔住宅局長橋本勲君登壇〕

○住宅局長(橋本勲君) 都営住宅制度の改革に関します二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営住宅管理制度の改革についてでございますが、既に高額所得者に対する明け渡し指導や滞納者に対する法的措置などを強化いたしまして、実績を上げてきたところでございます。また、利用機会の公平を確保するため、先般、期限つき入居制度を一部の都営住宅に導入するとともに、このたび、使用承継制度を見直したところでございます。
 今後とも、真に住宅に困窮する都民に的確に提供できるよう、募集制度の改善など、改革を進めてまいります。
 なお、資産を含めた新たな入居基準の設定や、一般都営住宅への期限つき入居制度の導入など、必要な法改正を引き続き国に求めてまいります。
 次に、都営住宅の市町村移管を円滑に進めるための取り組みについてでございますが、特別区においては、土地建物等の無償譲渡、移管住宅に係る債務を引き継がないなどの財政支援を行い、昭和六十一年度からこれまで、約七千戸の都営住宅を移管してきたところでございます。さらに、平成十二年度には、建てかえ時移管制度を創設して、支援の充実を図りました。こうした支援策によって、移管住宅の修繕費、職員の人件費などは使用料収入で賄えるものとなっております。
 市町村におきましても同様の支援を行ってまいりますが、経験の少ない自治体には、都がこれまで培った経験や技術を積極的に提供するなど、不安を解消してまいります。
 今後は、市町村と十分協議しながら、移管制度の内容について理解を得、また、建てかえ時移管制度などの支援策も積極的に活用して、移管を進めてまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 立川基地跡地昭島地区に関する二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、土地利用構想についてでございますが、構想は、平成十年十一月に策定したものでございます。しかし、その後の社会経済環境の変化により、構想実現のためには解決すべきさまざまな課題があり、現時点において、改めて事業内容や手法の検討も必要と考えております。
 次に、跡地関連の都市計画道路の整備についてでございます。
 昭島三・二・三号及び昭島三・二・一一号の両路線は、昭島地域における骨格をなす重要な道路でございます。その整備については、基地跡地の土地利用との関連も深いことから、その検討とあわせ、整備手法について今後議論する必要があります。
   〔産業労働局長浪越勝海君登壇〕

○産業労働局長(浪越勝海君) 多摩地域中小企業振興センターの設置についてでございますが、都は、これまでも立川基地跡地での開設に向けて検討を進めてきましたが、厳しい都の財政状況などから、当初計画を変更せざるを得ない状況となりました。
 しかしながら、今日の厳しい経済環境のもとで、経営と技術が一体となって中小企業を支援することが喫緊の課題と考え、平成十四年度に多摩中小企業振興センターを暫定的に設置することとしたところです。
 今後、この暫定施設の運営状況や民間有識者の意見を取り入れ、新たな施設の機能や建設方法などを検討して、早期の実現に努めてまいります。
   〔大学管理本部長鎌形満征君登壇〕

○大学管理本部長(鎌形満征君) 短期大学廃止後の昭島校舎の活用についてでありますが、都立短期大学は、地域に密着した高等教育機関として実績を積んできておりますが、先般発表いたしました東京都大学改革大綱では、教育需要の変化に伴い、四大学を統合する新たな大学には短期大学課程を置かないことといたしております。
 しかし、平成十七年度に統合した後も、現短期大学に在学する学生は、都として最後まで責任を持って教育していくことから、当分の間、昭島校舎は教育、研究の場として活用することになります。
 また、現時点におきましては、短期大学としての活動が終わる時期も確定できておりません。
 したがいまして、その後の昭島校舎の施設、敷地の活用につきましては、ご提言の教育・文化施設などを含め、地域の意見も聞きながら、あらゆる角度から有効な活用策を検討していくことになるものと考えております。

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