平成十四年東京都議会会議録第三号

○議長(三田敏哉君) 五十二番樋口ゆうこさん。
   〔五十二番樋口ゆうこ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○五十二番(樋口ゆうこ君) 民主党の新人議員、樋口ゆうこでございます。
 まず冒頭に、都議会会議規則百六条及び東京都議員記章規程一条において議員バッジの佩用が義務づけられておりますが、本日は所持しての登壇とさせていただきます。
 と申しますのは、初めていただいたピン式の議員バッジ、ここに多くの方々の思いがこもっていると思って、決意も新たにふと裏返せば、そこにUSAの文字。早速問い合わせたところ、本体は日本製、ピンどめ部分のところはアメリカ製との答え。実のところ、これはUSAピンといって、アメリカのパテント上、USAを刻んだものといわれておりますが、そのことがわかりましたのは後日になってからです。
 このようなピンを福祉作業所だとかそういったところでつくっていただくとか、また、地場産業にお願いをし、日本の技術、英知をもって新たなるものを開発し、東京ピンなるものができないものでしょうか。日本を、そして東京を愛してやまない私が、小さなことかもわかりませんが、民間ではごく当たり前のことをお話しをさせていただきました。
 本日は、高齢者問題、そしてセルフメディケーションについてお話をさせていただきたいと思います。
 高齢者問題は、高齢者の方が要介護、要支援、あるいは自立であろうと、いつか自分が周りに迷惑をかけるのではないか、かけているのではないか、いつか自分が厄介者になるのではないか、なっているのではないかという不安が解消できない限り、解決しない問題だと思います。
 親が倒れたら、だれでも一生懸命看病いたします。しかし、倒れられて三カ月もたつと、家族の方は看病疲れから少し解放されたい、そう思うようになり、意識のしっかりとされていらっしゃる高齢者は、ごめんなさい、そう謝るんです。
 たとえ少しであっても、愛する親を、大切な家族を厄介者と思うせつなさや、病気になってまで、済まないとわびる悲しさ、私は、それは介護をする方、また介護を受ける方の大きな悲劇だと思います。
 東京都は、福祉改革を新たなステージに推し進めるとして、福祉改革STEP2を策定しました。高齢者の分野では、ケアが必要になったときにでも、できるだけ地域の中で安心して暮らし続けるようにとあり、地域重視の視点は大変よいと評価しております。
 十二月五日には、石原知事もグループホームを視察され、大いに関心を持たれたのではないかと推察いたしております。そこで、ケアが必要となった高齢者の地域居住の継続のために、具体的な取り組みをどのようにしていくのか、お尋ねいたします。
 例えば、ケアリビングとして九十二億六千万円の予算のうち、グループホームは八億九百万。少ない予算を有効に使うには、新たに施設をつくるよりも、民間の住宅やマンションなど既存の建物をリフォームすることによって活用し、より多くの方々に使っていただく、そのようなお考えはないのでしょうか。視察のご感想も含め、石原知事にお伺いさせていただきたいと思います。
 いつまでも元気でありたい、若々しく老いたい、だれもの願いです。石原知事は、いつも若々しく、大変お元気でいらっしゃいます。また、ビジュアル系知事ともいわれ、そして誤解を恐れずに申し上げますと、知事はとってもすてきでいらっしゃいます。しばしば過激なご発言があり、また女性にはかなりご理解が深いと感じておりましたのに、年末には余りにも大胆なご発言をされ、女性ファンは大変ショックを受け、減ってしまったようでございますが、はっとするほど知事は生き生きとされていらっしゃいます。
 ことしの九月のお誕生日には大きな節目のお祝いがあるということで、大変驚いてはおりますのですが、さっそうとされていらっしゃる知事。知事を拝見させていただきますと、生涯青春、生涯現役。知事は、生き生きとした人生を送るのに、どのようなことが大切でいらっしゃいましょうか。初めの質問とともに、知事ご自身のお言葉でいただけたらと願います。
 高齢者問題というと、要介護高齢者が話題の中心になりやすいのですが、元気な高齢者は多数いらっしゃいます。高齢者のうち、八割弱は元気高齢者といわれています。今後、高齢化が進む中で、元気高齢者の社会参加を促進し、地域の活性化を図ることが重要であるという視点で質問をさせていただきます。
 平成十二年度東京都社会福祉基礎調査の高齢者の生活実態によれば、働いていらっしゃる高齢者は約三割であり、そのうち九割弱は、このまま働きたいと思っていらっしゃいます。働いていらっしゃらない高齢者も、就業を希望されていらっしゃる方は一五%にも上ります。
 今後、高齢者の就業支援を充実すべきだと考えておりますが、その充実策についてお伺いをさせていただきます。
 高齢者が生き生きと生活されるためには、私は三つの場所が必要だと思います。一つ目が、経験や技術や技能が生かせるような場所、二つ目は、週三日、一日四時間など、高齢者の意欲や体力に見合った働く場所、そして三つ目が、楽しみながら健康づくりをする場所。
 就業を希望される高齢者の方々は、必ずしも収入を得たいから希望されているわけではありません。生きがいを得たいから働きたい、そう考えている方も約半数に上るのです。
 この東京には、サラリーマンOBを初め、現役時代にさまざまな知識や経験を身につけられた数多くの優秀な方々がいらっしゃいます。このような方々が活躍できる場づくりを含めて、元気な高齢者の社会参加を促進するために、東京ならではの取り組みは考えられないものでしょうか、お伺いさせていただきます。
 いつまでも元気であるように、健康管理、健康づくりというものは、いかに大切かと思います。指導員の指導や助言のもと、無理なく体を動かし、そして健康を保つことも大きな重要な要素だと思います。
 衛生局を健康局に名称変更するのは、二十一世紀は健康の時代だという認識のあらわれだと思います。健康づくりは、少子高齢化社会、我々を取り巻く環境の悪化、例えば空気、水、そしてシックハウスなどの有害化学物質、また食品の安全性の問題など、社会状況の変化をトータルで考えていかなくてはなりません。
 医療制度の改革についてはさまざまな議論がされていますが、本来は健康の維持こそが重要なのです。セルフメディケーションが二十一世紀の医療の大きな柱となるべきだと考えておりますが、いかが思われますか。お答えください。
 セルフメディケーションというのは、みずからの健康をみずからが増進するという意味で、少子高齢化社会の健康づくりと、また医療費軽減を両立するシステムだと思います。だからといって、医者はもう要らぬというわけではございません。重度の病気は医者に診ていただかなくてはなりませんし、また高度医療については、どんどん研究をしていただかなくてはなりません。新しい医療システムを打ち立てるときの根底に、セルフメディケーションを置くべきだということを申し上げているのです。
 健康維持は、健やかな人生を送るためにも重要だと思いますが、具体的な施策を含め、健康づくりについて都の取り組み方をお教えください。
 次に、セルフメディケーションの支援拠点についてお伺いします。
 セルフメディケーションの主役は、もちろん都民一人一人、地域生活者です。そうした一人一人の健康の維持増進への主体的な取り組みなしではセルフメディケーションは実現しませんが、しかし、それにはサポートが重要です。
 先日、薬事審議会というところで、かかりつけ薬局のあり方というものが討議されました。薬歴や服薬を管理し、患者の相談に応じられるかかりつけ薬局の育成を目指し、指導していくという趣旨の審議会でした。しかし、セルフメディケーションの観点から見ますと、薬局の今の現状は大変お寒い状況だといわざるを得ないと思います。
 もし、都民のセルフメディケーションをサポートするために、かかりつけ薬局が担い手になるとしたら、調剤、服薬に関する知識はもちろんのこと、一般大衆薬、健康食品、また病気に対する意識、あるいは睡眠、食事、そして運動など、生活習慣全般にわたってアドバイスできなければなりません。
 また、医療関係とも緊密に連携して、どのような治療がなされたのかという情報を開示していただかなくてはなりません。そして、都民にとって必要な情報を、適時適切に提供できる能力が必要になってくるのです。
 セルフメディケーションには、創薬学、つまり工業薬学のことなんですが、それを中心に学んだ薬剤師を中核として頼るのではなく、総合的な判断がゆだねられる、薬剤師も含めての人づくり、そしてグループづくりが大切だと思っております。
 そこでお伺いをさせていただきますが、セルフメディケーションをサポートする場所は、かかりつけ薬局以外にどのような場所があるのでしょうか。もし仮に、薬局を都民の健康づくり、セルフメディケーションのサポーターとして機能する真のかかりつけ薬局としていくとしたら、都では、今後どのような方策を講じていくお考えなのか、お聞かせください。
 セルフメディケーションは、狭義では、一般用医薬品でみずから治療することですが、広義では、みずからの健康を管理することです。いいかえれば、一般大衆薬や健康食品、食事、睡眠、運動、そして休息のとり方、一般的なアレルギーの知識、マッサージ、指圧、アロマ、ホメオパシーまで、私たちがそれらといかにかかわり合って、そして健康を保っていくかということなんです。
 生活習慣病に費やされる医療費は、一般診療医療費のほぼ三分の一、八兆円にも当たります。もし生活習慣病を発症させないで済むとしたらば、この八兆円を大きくダウンすることができるのです。
 昨年の委員会質問で、私は、激減する小児科医に歯どめを打ちたいという思いで引用させていただいた数字なのですが、一般診療医療費は、七十五歳以上が一人当たり七十六万二千九百円に対して、十四歳以下は八万四千円という金額が、厚生労働省の十一年度調査にありました。
 セルフメディケーションを定着させるために、何でも行政がやってくれる、行政が認めた医療専門家がやってくれるという、だれか任せの形から、自分の責任で、自分の判断で、自分のコストで、そして自分の健康を維持増進していくというような意識の改革を、行政は促していかなければなりません。と同時に、医療関係者や業界の方にも、生活者の健康づくりという観点を重視していただき、よりよいサポーターになっていただきたいと思います。
 二十一世紀を力強く生きていくためにも、私は、セルフメディケーションを早期に定着、浸透させていくべきだと主張させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 持ち上げられたんだか落とされたんだかわかりませんが、非常に印象的な質問でございました。
 樋口ゆうこ議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、グループホームについてでありますけれども、昨年の暮れ近くに、高齢者のための施設でありますグループホームを二カ所視察をいたしまして、非常に強い印象を受けました。
 それは、ほかの老人のための施設と総体的に印象が違いまして、みんな痴呆の方ばかりなんですけれども、ぼけるという言葉はよくないかいいかわかりませんが、さわやかにぼけていらっしゃるという印象が、非常に強かったのです。
 これは大事なことでして、痴呆の人は家族からも敬遠されて、結局、離れた形で施設に入っていらっしゃる方が多いのですが、グループホームは、そういう点で非常にインティマシーがあって、表情も、痴呆ながら生き生きしている感じがいたしました。
 私のすぐ横におられたおばあちゃん、年も、私もぼけてそうなりたいなと思うのですが、十五くらい勘違いして、いつもいっていらっしゃいました。その人が神田の出身だそうで、私も本屋によく行ったのですが、どうも覚えがないのですけれども、向こうにいわれまして、いや、たしかお目にかかりましたなといったら、そうでしょうという。それで、三分後にまた同じことをいわれる。五回くらい聞いて、これはやっぱり家族の人は大変だなと思いましたが、それでも、通じて、入っていらっしゃる方の印象がその人に似ていて、とてもさわやかな感じがしました。
 やはり規格多量生産ではありませんけれども、形で扱う施設よりも、グループホームというのは、人間が疎外されがちのこの都会にあっては、ますます必要な方法だと思いました。
 今後も大幅な増設を図っていくつもりでございますが、国は、民間企業への整備費補助を行わないなど、実質的な参入障壁を設けております。このために、東京都は独自の規制緩和を行いまして、平成十四年度からは民間企業に対して、お尋ねの既存の建物の改修も含む、新たな整備費補助を実施するつもりでございます。
 ああいう施設を、担当の大臣というか、福祉というのは効果的な問題でありますから、私は、一度総理大臣がじかに施設を眺めることで、最高の権限者として多くの問題を得られると思いますので、現総理にもそういう建言をしたいと思っております。
 次いで、どうやったら生き生きした人生を送れるかということですが、生き生きしたという印象には、肉体の印象もあるでしょうけれども、私は、やはりその人がその人の個性というものを発揮して自由に生きているということが、生き生きしたといいましょうか、その人間にとっての、他にかえがたい魅力ではないかと思います。
 亡くなりましたけれども、小林秀雄さんという近代批評をつくった批評の神様といわれた方、私は間近に住んでいて、何度もお目にかかりましたが、この人は非常にぶっきらぼうで、口が悪くて、人を泣かせるぐらい辛らつなことを批評でいいながら、実に自分の感性のままに自由に発言され、本当に自分の感性というものを率直に表に出した生き方をしておられました。
 私は、やはり人間はだれでも老いて、肉体的にも衰弱していきますが、大事なことは、自分の感性、情念というものを率直に相手に伝えるということが、存在感というものを際立たせる、一つの不可欠な原理じゃないかと思います。
 そういう意味で、私たちいろいろ束縛はありますけれども、互いに相手を許容し合って、年輩者は年輩者の経験もあり、また研ぎ澄まされた感性もあるわけでありますから、そういう人生の場というものを、行政もまた、横からはぐくんでいきたいなと思っております。
 なお、他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長浪越勝海君登壇〕

○産業労働局長(浪越勝海君) 高齢者の就業支援についてですが、お話のように、都民の高齢化が急速に進展する中、元気で働く意欲に満ちた高齢者の就業を支援していくことは、重要な課題であると認識をしております。
 このため、都としては、これまでも高齢者の職業訓練やシルバー人材センター事業などを推進してきたところでございます。さらに来年度は、はつらつ高齢者就業機会創出支援事業を創設し、各区市町村や国との密接な連携のもとで、身近な地域で、高齢者にきめ細かい就業相談や就業先の紹介を行う、新たな拠点づくりを進めることとしているところでございます。
 今後とも、こうした事業を通じて、高齢者が生き生きと働くことができる社会づくりに努めてまいります。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) 高齢者の社会参加についてでございますが、高齢者が生き生きと暮らし続けるためには、その知識や経験が生かせる働く場や、社会参加の場が重要でございます。
 とりわけ東京では、お話にありましたように、すぐれた専門知識や豊かな経験を有する高齢者の方々が、多数生活しておられます。このため、都はこうした高齢者の方々を登録し、NPO等に派遣し、活躍していただくナレッジバンクを今年度独自に設置をするとともに、高齢者いきいき事業により、区市町村の社会参加を促進するための補助をいたしております。
 今後とも、区市町村と協力をしながら、東京の特性を生かしたさまざまな取り組みを積極的に支援してまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 健康づくりに関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、健康の維持とセルフメディケーションについてでありますが、平均寿命が延び、社会の高齢化が進展する中で、都民が生涯を通じて心豊かに、生き生きとした生活を送るためには、健康は最も重要な基盤であります。
 そのためには、都民一人一人が健康の大切さを理解し、みずから健康づくりに取り組むことを基本としつつ、これを社会全体で支援することも必要であると認識しております。
 次に、健康づくりへの取り組みについてでありますが、都では、都民の健康な長寿の実現に向けて、健康づくり運動を総合的に推進するための指針として、昨年十月に、東京都健康推進プラン21を策定いたしました。
 このプランでは、重点的に取り組む分野として、生活習慣病と寝たきりの予防を掲げ、病気の発症や進行の予防を中心とした取り組みを進めることとしております。
 都では、区市町村が行う健康教育等の老人保健事業を支援するとともに、都民に身近なかかりつけ医が指導を行う生活習慣改善指導推進事業を実施するなど、健康づくり対策に積極的に取り組んでおります。
 次に、セルフメディケーションに対するサポートについてでございますが、お話の、いわゆる健康づくりとしてのセルフメディケーションをサポートする機能は、都民のライフステージに応じて、社会のさまざまな分野の個人や機関等が担うものと考えております。
 薬局については、今後とも臨床薬学の研修や、医療機関とのさらなる連携強化策について検討するとともに、栄養や休養など生活習慣全般についての情報発信や、相談機能の充実に向けた指導を強化するなど、かかりつけ薬局としての能力向上を図ってまいります。

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