平成十四年東京都議会会議録第二号

○副議長(橋本辰二郎君) 百七番石井義修君。
   〔百七番石井義修君登壇〕

○百七番(石井義修君) 都議会公明党を代表し、今日のデフレ状況から脱却し、明るい都民生活を実現するために、都政運営はいかにあるべきかという視点から質問をいたします。
 私は、この代表質問を書くに当たり、大田区、葛飾区、そして地元墨田区の中小企業の経営者の方々にお会いしてまいりました。新しい分野に果敢にチャレンジし、健闘している中小企業経営者もいらっしゃいました。
 一方、新しい仕事があるのに、銀行は金を貸してくれない。保証協会はそれに輪をかけて保証を渋る。売掛金担保の融資制度ができたのに、何だかんだと理屈をつけて融資をしてくれない。税金は高いと訴える中小企業経営者も多くおられました。
 中小企業が四面楚歌にある中、石原知事は、都議会の施政方針で、固定資産税と都市計画税の減免を発表いたしました。くだんの中小企業の経営者は、本当に感動した、知事にこの思いをぜひとも伝えてほしいと話しておりました。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。まさに税収が三千億円落ち込む中、あえて二百六十億円の減収を覚悟で、不況に苦しむ中小企業経営者のために決断した知事の対応を高く評価するものであります。
 さらに、「地球温暖化阻止 東京作戦」も評価されるべきものであります。世界をリードすべきアメリカが地球温暖化防止京都議定書から抜け出す中、大規模事業所に対する二酸化炭素削減義務の導入など先駆的な政策を提言しており、私は、環境問題に取り組み、リンゴの木を植えてきた一人として、高く評価したいと思います。
 今、世界経済は、本年後半に向け、回復予想が増してきており、IT不況も底打ちを示し、緩やかな回復への期待が高まっております。しかし、日本経済はデフレに苦しみ、先行き不透明な中にありますが、一つ一つの具体的な布石を気迫を込めて打っていけば、明るい展望が開けてくるものと信じます。
 正直申し上げて、最近の知事の記者会見の様子や、職員給与問題への対応を見聞きするにつけて、知事はお疲れなのかな、そのうちに知事の座をほうり出すのではないかなどと危惧しておりましたが、どっこい、私のひとり合点でありました。知事の施政方針は周囲をうならすできばえで、知事のやる気を再確認した次第であります。施政方針に込めた知事の思いを率直に伺います。
 税財政問題について伺います。
 十四年度予算案はまさに超緊縮予算でありますが、都政の緊急課題である景気、雇用、中小企業対策、都市再生などの重要施策には財源を優先的に配分し、福祉と保健の分野ではその構成比が過去最高の一二%になっており、高く評価するものであります。
 しかし、歳入面を見ると、税収減に加え、減債基金積み立ての一部見送りや財政調整基金などの取り崩し、さらに一兆円に及ぶ隠れ借金など、都財政を圧迫する要因が重なり、財政運営はこの先も厳しい局面に立たされております。そこで伺います。
 財政の基本原則は、入るをはかって出るを制すであります。平成十三年度補正予算とあわせて新年度予算では、国の都市再生関連事業と連携し、さまざまな首都再生への事業が予算化されております。これら都市再生事業は、東京の緊急課題解決とあわせて、中小企業への景気や雇用波及効果の大きい事業であるとともに、都財政の税収増に大きく貢献する重要な事業であります。
 平成十四年度は、国庫補助事業と都単独事業、合わせて六千二百億円の投資的経費が投入されることになりますが、このことによる税収や雇用に及ぼす経済波及効果の総額を示してください。
 また、十三年度は六千五百億円の投資的経費が投入されましたが、同様の経済波及効果の総額は幾らと見ているのか、それによって都民サービスはどう前進するのか、伺います。
 特に十四年度予算編成に当たっては、従来の一律マイナスシーリング方式を改め、都政の重要施策に重点配分するやり方に変えたところであります。予算の重点配分、中小企業への減税、秋葉原のIT産業拠点への投資、CO2削減による新しい環境産業分野への支援など、知事が次々と打った手が、都政全体でいかなる経済波及効果を生むのか、またデフレ対策となっているのか、しっかり評価することが真の行政評価であると思います。所見を伺います。
 次に、ペイオフ対策について伺います。
 本年四月のペイオフ解禁は、公金管理のあり方に大きな影響を与え、都は、これまで以上に公金の安全を守る責務を負わなければなりません。都の対応いかんでは、都民の信用不安を助長したり、地域金融機関の破綻に向けた引き金を引く結果も想定されます。
 また、都は、税金などの公金の収納についても、町の中小金融機関など収納代理金融機関を通じて行っており、これら収納金についても、十五年四月以降、金融機関が破綻した場合にはカットされるおそれがあります。
 そこで伺います。
 第一に、都の公金管理の対応によっては、金融機関の経営の健全性に対し厳しいプレッシャーを与えることになると考えますが、見解を伺います。
 第二に、都が破綻懸念のある金融機関から預金を中途解約することで、他の預金者に不安を与え、逆に破綻への引き金を都みずからが引く結果となりかねません。こうした事態を防ぐための具体的な対応策について伺います。
 さらに、税金など収納金の安全を確保する対策についても伺います。
 次に、産業空洞化対策について伺います。
 私たち公明党は、このたび、首都圏、中部圏、関西圏の都議会、府議会、県議会議員三十三人が一堂に会し、我が党の冬柴幹事長、経済産業省の松あきら大臣政務官の出席を得て、産業空洞化対策を検討するサミットを都議会で開催いたしました。
 当日は、都立大学の古川教授、東京商工会議所調査役、経済産業省参事官など、産・学・公を代表する専門家から産業空洞化対策の報告があり、続いて各地域の空洞化の現状と対策の報告、そして全体討議を行いました。
 夕刻には首相官邸に福田官房長官を訪ね、小泉総理大臣あての産業空洞化国家プロジェクトの立ち上げの申し入れを行ったところであります。
 そこで伺います。
 第一に、産業空洞化に対する国の対応についてであります。
 一九八〇年代、アメリカでは、自国の自動車産業、電機産業が日本などアジア諸国に移転する産業空洞化に対処するために、産・学・公が一体となって情報通信産業を立ち上げ、同時に、情報スーパーハイウエー構想など、アメリカ政府による明確な産業育成ビジョンの提示と戦略的な民間企業支援策の実行によって、アメリカ産業はよみがえったのであります。
 我が国の産業空洞化は、一九八五年、アメリカに誘導されたプラザ合意による円高政策に始まり、続くバブルの招来、そして崩壊、さらに長期不況など、国のミスリードによるところ大であります。したがって、第一義的には、国の責任で産業の空洞化戦略を構築すべきであります。福田官房長官は私たちの申し入れに対し、新産業の支援など、全力で取り組む決意を披瀝しておりましたが、知事としても、国に対し強く要求することを含め、所見を伺います。
 第二に、東京都産業再生戦略の構築についてであります。
 産業政策は国に大きく左右されますが、都の取り組みもまた重要であります。短期的な対策としての廃業、倒産、失業などに関する有効な対策に加え、中長期的な対策が必要であります。その意味で私は、東京の産業のあり方について十年のスパンで考える戦略として、東京産業再生プロジェクトの立ち上げを提案するものであります。
 その場合、アメリカのIT戦略をそのまま日本に移しかえるようなものではなく、東京独自の産業育成の観点から、観光都市東京のファッション産業と中小企業というテーマ、また、進化を続ける先端産業であるナノテクノロジーやバイオテクノロジー、エレクトロニクスと中小企業というテーマなど、製造業の活性化を可能とする基本戦略と具体的な戦術レベルまでデザインを進めるべきであります。
 なお、現在、知事は、東京の物づくりについて中小企業対策審議会に諮問しており、六月に答申が予定されております。その労を多としつつも、答申をさらに超える本格的な骨太の産業戦略が急務であります。知事の所見を伺います。
 第三に、産業の空洞化を埋める産・学・公連携による新産業の育成についてであります。
 都は、意欲ある中小企業を組織化し、産・学・公の連携による支援を進め、今後の成長が期待される情報、医療、介護、環境などの各分野から生まれる新規事業を強力に支援すべきであります。また、そのための産・学・公連携の成果は、産学に精通したコーディネーターの力量で決まるといわれております。コーディネート機能の充実と産・学・公の連携事業を拡大し、中小企業の技術開発を支援すべきであります。所見を伺います。
 第四に、空洞化を是正するための高コスト構造の是正についてであります。
 電力やガスなどのエネルギーコスト、また、空港や港湾の着陸料、利用料などの軽減、さらに運輸事業の規制緩和、渋滞箇所の優先整備などによる物流コストの削減、加えて特許取得の手続の簡素化など、あらゆる分野の高コスト構造の是正が急務であります。国に実行を強く求めるとともに、都としても、東京港の施設利用料軽減など、知事の決断で可能な是正策は直ちに実行すべきであります。所見を伺います。
 第五に、知事が「文藝春秋」三月号に発表した「日本再生の活路」の論文に関して伺います。
 論文の中で、知事は、今日の我が国の製造業、中小企業の置かれた立場を概括し、日本経済再生について先見性のある提言を行っており、その中に東京港経済特区について触れている部分があります。知事は、東京港全体をポートオーソリティーとして、従来ばらばらに管理されている陸運、海運、空港を統合し、経済特区として税金を無税にすべきである、また、官が既得権益として手放さない規制を撤廃して、民の活力を最大限に引き出す新しい仕組みづくりを提言しております。私は大賛成であります。
 既に兵庫県及び神戸市では、阪神大震災後の産業空洞化対策として、ポートアイランドなどにおいて、外国からの投資を促すために、自治体独自に対内投資重点地域、すなわちエンタープライズゾーンとして、固定資産税や不動産取得税などの投資減税を実施する、自治体版の経済特区を設けております。
 国に対しても法人税の減税を実現するよう求めるため、先ほど申し上げました公明党産業空洞化サミットの結論として、経済特区の新設を小泉総理大臣あて福田官房長官に申し入れたのであります。こうした公明党の申し入れがあった直後、経済産業省が、産業空洞化対策として特定の地域を指定し、優遇税制などで企業を誘致する経済特区設立の検討に入ったとする新聞報道がなされたのであります。経済産業省の検討は、企業立地の魅力を高める必要があると判断した地域の法人税減税、補助金、規制緩和などを行い、あわせて企業、大学、研究施設も戦略的に集積させ、日本の産業競争力を強化するというものであります。ことしの夏までに構想を固め、二〇〇三年度の予算と税制改正要求にも盛り込む方針であると報道されております。
 東京の臨海部を経済特区としていくことは、東京再生の重要なポイントであると考えます。知事の所見を伺います。
 第六に、空洞化対策と中国とのかかわりについて伺います。
 知事は「文藝春秋」の論文で、冒頭に、「゛前門の虎"米国と゛後門の狼"中国にどう勝つか」と掲げております。その中国とどう向き合うかということであります。確かに、安い輸入品が日本に入り込んでくる。企業は次々と中国に移転する。このままでは日本経済はどうなってしまうのかと、黒船襲来のような議論が起こることは必然の結果だと思います。しかし、このことは、多国籍企業の歴史が長く、明確な世界戦略を持っている欧米諸国など多くの国々が、グローバル化に適合した国づくりを進めつつある中にあって、我が国が国家戦略としていかにその備えを怠っていたかを如実に示すものであります。こうした点を読み違えるならば、アジアにおける日本の存在感は一層貧しいものになってしまいます。
 今大事なことは、日本を、そして東京を魅力ある国、都市に変えるための戦略だと思います。そして、アジア各国の近代工業化、経済発展に積極的に協力することを通じ、アジア各国との濃密なネットワークを構築し、そのリーダー的存在になるのが、我が国、そして東京に求められているものと思います。知事も、日本はアジアの司令塔を目指せと述べておりますが、この点について知事の所見を伺います。
 空洞化対策の最後に、東京の製造業の方向性を象徴する明るい事例を挙げ、伺います。
 中国などアジアからの集中豪雨的な繊維製品の輸入によって、東京のニット産業は仕事が奪われ、大打撃を受けております。こうした中にあって、東京ニットファッション工業組合のメンバーは、二十一世紀型の創造的産業を目指し、懸命な努力を続けております。すなわち、従来の製造から販売に至る多段階の流通経路を思い切って簡素化し、製造即販売の協業グループを立ち上げ、感性豊かなニット製品をより安く消費者に販売し、好評を博しております。
 また、アレルギーなど、人体への影響のない素材を使った地球環境配慮のニット製品を製造し、イタリアのミラノ、フランスのパリ、アメリカのニューヨークに負けないメイドイン東京の感性豊かなニット製品を世界に発信しようと懸命に頑張っているのであります。経済産業省もバックアップの姿勢を鮮明にしておりますが、都としても全面的な支援策を講ずべきであります。所見を伺います。
 次に、産業空洞化対策と環境問題に関連して伺います。
 日本の物づくりを代表する業種であるメッキ工業界は、長期不況と環境問題の双方から厳しい状況に置かれております。平成十三年に国のPRTR法が施行され、さらに規制が厳しい都の環境確保条例が施行されました。都の条例は法律に比べ、適正管理化学物質の届け出義務などが厳格になっております。ただでさえ経営環境が厳しい上に、環境への配慮のためのコストがかかり、廃業を検討している企業が少なくないのであります。平成十一年に廃業を決めたある事業所は、九千八百万円を超える処理費用が調達できず、いまだ跡地は放置されたままであります。これでは土壌処理も進まず、土地の有効活用も不可能であり、事業者は何一つ展望を開けません。時代状況や人々の問題意識の変化に伴い、業界を取り巻く環境が激変するのはやむを得ないものの、すべての責任を事業者に押しつけ、放置したままでは問題は解決しません。条例の実効性は上がらず、汚染処理も進みません。条例は尊重すべきものでありますが、中小企業への配慮が強く求められております。
 質問の第一は、土壌処理に関するコストの負担に関して、国、都、区市町村、事業者にわたるルールを構築すべきであります。
 第二に、環境確保条例の化学物質の適正管理にかかわる問題であります。条例制定時、都は業界団体に対して、条例の運用に当たっては関係する業界の実情に十分配慮した指導を行っていくと説明したと聞いております。内容が厳しい条例だけに、こうした配慮は妥当であります。特に国の法律に比べて規制が厳しい都の条例を、何の配慮もなく厳格に適用した場合、角を矯めて牛を殺す結果になりかねません。条例の実効性を高めるために、弾力的な運用を考えるべきであります。
 第三に、汚染土壌処理に限らず、環境確保条例に従って民間が対応策を講ずる場合、特別な融資制度などを設けてコスト負担に配慮すべきであります。
 以上、三点について見解を伺います。
 次に、商店街の振興について伺います。
 約三千に上る都内の商店街が、社会環境や流通構造の変化で危機的な状況にあります。商業集積間の競争、後継者不足、廃業による空き店舗の増加等にその傾向が顕著にあらわれております。
 都はさきに二十一世紀商店街づくり振興プランを策定し、商店街の自主的、自立的な事業活動を側面から支援する施策展開を発表いたしました。振興プランでは、地域ブランドの創出を初め八つの戦略が掲げられており、先進的意識を持った商店街では、これらを新たな事業活性化への突破口とすべく真剣な模索を進めております。
 そこでお尋ねをいたします。
 まず、商店街の振興組合化の推進についてであります。
 往々にして見受けられるのが、一定の地域に、時には十カ所程度にも細分化された商店街の実態です。歴史的経緯があることは理解できるものの、現実には個々の商店街による単独の企画、イベントや長期的展望の策定には限界があります。こうした閉塞状況を打破するには、複数の商店街の連携による振興組合化の推進が不可欠であります。補助金対象団体となり、効率的事業運営等を可能にする振興組合化は、商店街活性化の切り札の一つであります。今こそ振興組合の結成を促進するために効果のある誘導策の策定を急ぐべきであります。
 また、事務所機能の整備された商店街は、概して、よく意思の疎通と組合員相互の連携がスムーズになり、事業展開が活発化するといわれております。このために新たな振興組合を結成しようとする商店街の事務局整備については、その立ち上げ時に、助成金を創設するなど積極的な支援を行うべきであります。所見を伺います。
 第二に、斬新な発想と専門的知識を持った商店街アドバイザーチームの創設についてであります。
 商店街活性化に強い意欲を持ちながら、その具体的事業展開の方途に窮している例が数多く見られます。活性化を目指す商店街と文字どおり一体となり、アドバイス、サポートを行う、中小企業診断士、商工会議所のベテラン指導員、経営コンサルタントなどによるチームを立ち上げるべきであります。このチームと商店街が力を合わせ、地域的特性や立地条件を初め、商店街の特質を勘案した新たな活性化計画の立案や事業展開を促進すべきであります。所見を伺います。
 次に、福祉改革について伺います。
 先ほども述べましたように、十四年度の超緊縮予算の中で、子育て、障害者、高齢者施策を進めるため、構成比率を過去最高としたことを評価するものであります。
 また、真に支援を必要とする人への福祉を進めるために、東京福祉改革プランをさらに発展させ、TOKYO福祉改革STEP2を策定したことは、私たち公明党の主張に沿う、時宜を得たものと評価をいたします。このSTEP2は、従来行政一辺倒であった福祉サービスの供給主体の多様化を図り、また、福祉サービスの受け手である子ども、障害者、高齢者の人たちが、地域と遮断された施設で生活するのではなく、住みなれた土地で生き生きと輝いて生活できることを基本としております。今後の福祉改革の方向性について、知事の所見を伺います。
 また、多様な福祉ニーズに的確かつ柔軟にこたえていくためには、民間活力が不可欠であります。この改革によって、都民サービスが後退することのないよう配慮することはもとより、行政が責任を持って東京の福祉全体の水準を向上させていくことが重要であります。福祉局長の所見を伺います。
 次に、都立病院改革について伺います。
 都は、昨年十二月の都立病院のあるべき姿を明らかにした都立病院改革マスタープランを発表いたしました。都立病院改革会議報告が出されて以来、八王子、清瀬小児病院、梅ケ丘病院、母子保健院の統廃合について、さまざまな意見や不安の声が数多く寄せられてきたところであります。都立病院改革に当たっては、東京都の目指す方向性は理解いたしますが、効率性や採算性だけで判断するのではなく、これまで都立病院が地域医療を担ってきた経過、蓄積、そして衛生局の地元に説明してきた、当初の計画なども考慮に入れて結論を出すべきであります。詳しくは予算特別委員会の議論にゆだねますが、まず、見解を伺います。
 病院改革に関連して、小児医療の充実強化について伺います。
 小児医療を取り巻く環境は、その不採算性、小児救急患者の増加など、小児科医の減少と相まって大変に厳しい状況にあります。都は小児総合医療センターを設置するとしていますが、小児総合医療センターの基本的コンセプトをこの際明らかにしていただきたいのであります。
 また、全都を対象とした小児医療の拠点を一つ整備しただけで、小児医療は万全であるとは到底思えないのであります。都立小児病院の再編整備を進めるに当たっては、同時に、地域の小児医療体制の充実策と小児科医の協力が不可欠と考えます。所見を伺います。
 さらに、区市町村が実施する初期救急医療は、輪番制度のため固定施設が整っていないことから、救急対応が不可欠であります。地域に貢献している地域の中核病院を活用するなど、固定施設で初期救急ができるよう区市町村を支援すべきであります。所見を伺います。
 次に、東京ERについて伺います。
 東京ER墨東が開設され、三カ月が経過をいたしました。地域の住民から大変に好評を博しており、ERの開設に感謝をしつつも、病院運営上の幾つかの問題点についてお伺いをいたします。
 それは墨東ERの救急患者が、ER開設前の昨年十二月に比べ一・七倍の、一日当たり百七十二人が病院に殺到し、病院はてんてこ舞いの状況であります。月曜から金曜まで一日平均百五十人。土曜、日曜、祭日は二百人以上、年末年始は三百名以上の患者が殺到し、最高四時間待ちの看板を出す状況であります。
 私は先日、夜間九時に墨東病院を訪れ、救急患者の状況、待ち時間、医師やスタッフの勤務状況をつぶさに視察をしてまいりましたが、聞けば聞くほど気の毒になってしまいました。かなり無理してERをスタートさせたこともあり、医師や看護職員、技術職員が長時間の過重労働でくたくたになっており、医療事故が起きないのが不思議なくらいだと、応対した医師から報告がありました。
 また、ERは患者を断れないために、患者の一極集中となっております。救急患者の内訳は外科系四割、内科系三割、小児科系三割となっておりますが、特に、本来ならば地域の医療機関で対応可能な、ちょっと風邪を引いたとか、座薬を差し上げれば済むとか、そういう小児の初期患者も殺到するために、ER本来の高度な専門医療ができず、重症患者を断らなければならないこともあると嘆いていたことであります。
 東京ERの役割を円滑に進めるための医療スタッフの充実を行うべきであります。機械的な定数削減をすべきでないと思います。
 また、ERと周辺医療機関との連携により、ERが本来目指す役割に特化すべきであります。特に、先ほどの小児医療の項でも申し上げましたが、地域の医師会や小児科医師の協力を得て、地域でできる初期救急は地域で担ってもらう効果的な小児救急医療の充実を図るべきであります。衛生局長の明快な所見を伺います。
 次に、住宅問題について伺います。
 このほど発表された住宅マスタープランのもととなっている答申では、住宅政策の必要性について、人々が、生命、身体及び財産の安全を確保し、子供をはぐくみ、社会経済の諸活動に参加していく上で、住宅及び居住の安定は基礎となるものとしており、さらに、東京都住宅基本条例の第一条には、住宅政策の目標として、すべての都民がその世帯の構成に応じて、良好な住環境のもとで、ゆとりある住生活を享受するに足りる住宅を確保すると明確に定めております。いい方をかえれば、すべての行政サービスの基盤は居住の安定を確保できるようにすることであり、まさに住宅政策は行政政策の基本であります。特に公営住宅は、日本の賃貸住宅の質が問題視されている中で、賃貸住宅の水準を高めるモデル的な役割を果たしてきたといっても過言ではありません。良質で、しかも家賃の低廉な住宅を供給することは、大都市における賃貸住宅全体のレベルを引き上げる意味でも重要であります。
 さらに、東京の住宅は供給過剰と一部でいわれておりますが、問題は、経済不況を反映して、むしろ住宅困窮者が増大していることであります。したがって、公営住宅の果たす使命はより一層重大であります。その意味から、都における公営住宅を含めた住宅政策の安易な後退はあってはならないのであります。明快な答弁を求めます。
 次に、防災対策について伺います。
 第一に、NBC災害についてであります。
 災害には、地震、台風、火山噴火などの自然災害と、交通事故、工場の爆発事故、テロなど人為的災害、さらに、特殊災害であるNBC災害があります。N災害すなわちニュークリア、核、原子力による災害であり、B災害すなわちバイオテクノロジカル、生物による災害であり、また、C災害、ケミカル、化学に基づく災害のことで、これらの特殊災害については、従来の災害拠点病院や後方支援病院の対応では全く不可能な状況であり、もしこれらの災害が巨大地震と複合して起これば、被害はまさに甚大であります。その対策が今後の重要課題となっております。
 近年、我が国で発生したN災害としては、茨城県東海村のJOCウラン加工工場での二人の作業員が亡くなった臨界事故、また、北海道泊原子力発電所での事故は記憶に新しいところであります。C災害としては、松本サリン事件、東京地下鉄サリン事件が悲劇的事故として、災害として挙げられます。そしてB災害としては、幸いにして我が国では重大な事故は起きていないといわれておりますが、今日までO157食中毒事件がありました。また、米国における炭疽菌事件が代表的事例として挙げられているのであります。
 現在アメリカでは、野球場、多目的スタジアム、劇場、ショッピングモール等、多数の人々が集まる場所でのNBC災害対策として、簡易劇毒物検査装置、防護マスク、防護服、防護手袋など各種の汚染物質除去装置を常備しているのであります。東京においても一部の災害拠点病院等では整備されているところもありますが、十分とはいえません。アメリカでの炭疽菌事件はいまだ未解決の事件であり、加えて、天然痘、ボツリヌス菌など、新しい形のB災害事件が、我が国でもテロ事件などの形でいつ発生するとも限らないのであります。ことしはワールドカップサッカー大会が開催されることでもあります。都内の災害拠点病院を初めとする医療施設、また、人々が数多く出入りする公共施設での、B災害を含めたNBC災害事故の防止対策を強化すべきと考えますが、所見を伺います。
 第二に、密集市街地の緊急整備についてであります。
 国の都市再生プロジェクトは、地震時に大きな被害が想定される密集市街地の中で、特に火災危険度が高い市街地を対象に重点的に整備し、今後十年間で最低限の安全性を確保する方針を立てております。東京においては、密集市街地全体を大きく貫く緑のオープンスペース機能を持つ、連続した骨格軸の形成を目指しております。そのために、環状六号線と七号線の間の木造密集市街地の整備を目的として、沿道建築物の不燃化や未整備都市計画道路を集中的に整備することとしております。都としても、国の都市再生プロジェクトの要請にこたえ、市街地大火の抑制を図る延焼遮断帯づくりを強力に進めるべきと考えますが、所見を伺います。
 第三に、木造密集地域住民の耐震改修支援策について伺います。
 国土交通省は、来年度、密集住宅地において、住宅の倒壊による道路閉鎖を防ぎ、避難救助活動を円滑に行うため、耐震性に問題のある住宅の耐震改修支援事業を発表したのであります。対象は、密集住宅市街地整備促進事業地区で、耐震診断の結果、倒壊の危険性があると判断された住宅であります。補助は補助対象工事費の限度額、単価平米当たり三万二千六百円、耐震改修工事費の七・七%以内で、地方自治体が二分の一を負担することになっております。個人の資産である住宅に税金を投入する画期的な制度であり、不燃化が促進されない地域における緊急避難対策として評価されるべきであります。
 しかしながら、実は、この方式は既に横浜市で実施しておりますが、補助率が低いためになかなか住民に理解されず、利用されていない面があります。
 私は、この際、新たなる提案をいたします。この対策は、町の工務店や建設会社など住宅産業への景気波及効果が大きく、かつ雇用対策としても有効であり、また、防災対策、一石三鳥の効果を持つものであります。したがって、国に対してさらなる補助の上乗せを求めるとか、また、都独自の上乗せを検討するなど、思い切った対策を実施すべきであります。財政的に制約があるならば、対象を高齢者、子育てファミリー世帯、母子家庭、障害者世帯など社会的に弱い人々を中心にしてもよいと思います。
 先ほど私が兵庫県のホームページを読んだところ、兵庫県では民間住宅の耐震改修促進、兵庫県がことしから実施、このように出ているところであります。景気対策としても有効な民間住宅の耐震改修について明快な答弁を求めます。
 第四に、未整備都市計画道路の集中的整備の具体例として、墨田区の鐘ケ淵地区の計画道路一二〇号線にかかる東武伊勢崎線鐘ケ淵踏切の立体化について伺います。
 鐘ケ淵地区は東京の中でも最も危険度の高い木造密集市街地であるところから、東京都は昭和四十年代、東京東部の防災六拠点構想と位置づけ、白鬚東地区、西地区、亀戸・大島・小松川地区同様、中央に十万人規模の広域避難場所を備えた高層住宅群として整備する方針を発表いたしました。しかし、受け皿となるオープンスペースが十分にないことから、当初の計画を百八十度変更し、住宅の不燃化促進による整備と計画変更したのであります。白鬚東、そして西地区と亀戸・大島・小松川地区を結ぶ重要な避難道路であり、そして延焼遮断帯としての役割を担う都道一二〇号線、鐘ケ淵通り拡幅整備について、都の方針が二転三転する中、今日に至っております。
 近年、緊急整備を要する重点地域として、都が本腰を入れて区画整理事業、街路事業として取り組み始め、それにこたえる形で地元の町会、自治会有志が立ち上がり、都、区、地元住民による協議会が設置され、防災まちづくりが軌道に乗り出したのであります。このたび、地元十一カ町の町会、自治会が防災まちづくりに関連し、都道一二〇号線と接する東武伊勢崎線鐘ケ淵踏切の高架促進を求める一万六千二百三十三人の住民署名を石原知事あてに提出したところであります。
 この踏切は、都道が一本しかないために、連続立体交差化の対象には該当しないのでありますが、一日の遮断時間が九時間三十分、さらに間もなく相互乗り入れが始まる営団地下鉄十一号線、半蔵門線の電車本数が増加すれば、さらにあかずの踏切になることは明らかであり、都道一二〇号線が白鬚東地区、西地区、亀戸・大島・小松川地区の防災拠点をつなぐ避難道路であること等を考慮すれば、踏切立体化は喫緊の課題であります。
 都市再生本部は、ボトルネック踏切の解消、そして未整備計画道路の集中整備に全力で取り組む不退転の決意を打ち出しているのでありますから、ぜひとも具体化を願う地元住民の要請にこたえるべきであります。知事あてに署名簿を提出した際、応対に出た青山副知事からは、さまざまな方策を検討したいとのコメントがあったところであります。明快な所見を都市計画局長に伺います。
 次に、アフガニスタンの復興支援について伺います。
 去る一月、東京でアフガニスタン復興支援会議が開催されました。日本は復興会議の開催国でもあり、政府としても二年間で最大五億ドルの支援を行うとともに、難民、避難民の再定住、教育、保健医療、女性の地位の向上の各分野で貢献していくことを確約しました。とりわけ、暫定行政機構のカイザル議長が小泉総理に要請したように、道路などのインフラ整備、文化財保護などの文化復興、教育やメディアなど各分野での重点的な支援が期待されています。これらの具体的な支援は、政府のみでできるものではなく、自治体やNGOが持つノウハウや人材の活用が欠かせません。
 東京都はこれまで、政府や関係国からの要請に基づき、さまざまな国際協力を行ってきた実績があります。例えば、タイ、ミャンマー、ボスニア・ヘルツェゴビナなどに対しては、上下水道の専門家を派遣して、直接現地で指導したり、ベトナム、フィリピンなどへは公衆衛生の専門家を派遣し、地域の公衆衛生水準の向上に寄与するなどの活躍をしております。今後のアフガニスタン復興支援のため、都として具体的なプログラムを検討すべき段階に来ていると思います。
 すべてが不足しているアフガニスタンでは、あらゆる部門での専門人材の育成が重要な課題であります。専門家の派遣はもとより、アフガニスタンの人々を東京に呼び、専門人材に育成するという支援も考えられます。知事の所信を伺います。
 最後に、職員の四%給与問題について伺います。
 誤解を恐れず率直に申し上げますが、今日の職員給与削減問題が混迷している原因は、石原知事自身の判断の誤りにあると思います。すなわち、知事は都労連と労使合意を交わした一方の当事者であるにもかかわらず、労使合意は自分の本意でないような発言を繰り返していることであります。もう一方の合意の当事者である、都労連委員長である矢澤委員長のプライドを傷つけ、次の労使協議を遠ざける結果になったと思います。東京の最高責任者として、経営者としていかがなものかと率直に思うものであります。
 都労連の矢澤委員長に申し上げます。十八万人の――どこかで聞いていると思う――十八万人の都職員のトップリーダーとして、これまでさまざまな難局にあっても、その都度その都度巧みな手腕を発揮して、乗り越えてきた矢澤委員長であります。石原知事の目くらまし作戦に遭って、立ち上がるきっかけを熟慮中と思います。
 しかしながら、思い出してください三年前、平成十一年十一月の労使合意文書の確認事項の中に、なお、十四年度の給与削減措置の取り扱いについては、今後の社会経済情勢を踏まえながら協議について検討する、とあるのであります。また、昨年十一月二十日の合意文書の中でも、現在、実施中の給与削減措置は今年度で終了するが、都財政の状況いかんによっては、再度協議することで合意する、とあるのであります。
 平成十四年度予算は、あらゆる手練手管を弄し編成しましたが、このデフレの中で肝心の税収は確実に確保できるのか、外形標準課税訴訟の行方はどうなるのか、先行き不安の要素ばかりであります。転ばぬ先のつえ、早く労使協議を改めてスタートさせ、知事とさしで話し合いすべきであります。
 さて、私たち公明党も、議会の立場で、労使合意事項についていろいろと協力してきた歴史があります。例えば、労使合意に基づく職員給与条例について、昭和四十五年以降を見ても、平成十二年まで三十年間三十件、すべての条例案に賛成しております。特に、美濃部都政の末期、定期昇給、そして一時金問題で紛糾した際、一貫して労使合意を守れと主張したのは私たち公明党であります。
 再び知事に申し上げます。私はこの原稿を書くに当たり、都民の生活を身命を賭して守っている警察官、消防官、ER墨東病院の看護職員の皆さんなど、第一線で働く都職員の方々に現在の心境を取材してまいりました。
 四%カットがなくなるぞ、安心しなさいと家族に伝えた途端に、もとの振り出しに戻っちゃった。また、我々は世間の厳しさはわかっている、覚悟している。しかし、二年前は四%カットを受け入れることは、都財政再建に協力しているという誇りがあった。しかし、今回はぐちゃぐちゃだ。協力のしようがないと話をしておりました。
 今日の都政は、知事が「文藝春秋」論文で慨嘆しているように、国の政策のミスリードも重なり、デフレスパイラルに陥り、まさに危機存亡のときを迎えております。
 知事が、十四年度の予算編成で、限られた制約条件の中にあっても、その危機を乗り越える気迫を込めた予算に仕上げ、そしてまた、知事の施政方針でさらに次なる手を打ち、危機突破を試みております。私たちは全面的に協力します。ならば、なおさら十八万職員の協力は必須の条件であります。いつまでも労使協議を長引かせてはなりません。電光石火、手を打ち、次の目標である国へ攻め上るべきではないでしょうか。
 重ねて申し上げます。戦後最大の中小企業の倒産、リストラ、不況に苦しむ納税者である都民の心情に思いをいたしつつも、一方で、組合員に対して都職員であることに誇りを持って協力できる条件を速やかに提示して、直ちにトップ会談を開き、早期に決着をつけるべきであります。
 知事の心境、決意を率直にお伺いし、代表質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 石井義修議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、施政方針についてでありますが、我が国は本来高い能力を保有していながら、その力を束ねて十分に発揮できないままに国全体が衰弱し、衰微しつつあります。国がこのまま弱り果てて消えてしまえば、東京も消えるということでありますから、この不本意で歯がゆいばかりの状況を前に、就任以来の所信のままに、東京ができることは何なのか、東京がすべきことは何かと考えて、その思いを施政方針で訴えたつもりでございます。
 東京には国内総生産の二割が集積しておりますし、日本再生のてことなるだけの大きな力を備えていることから、今後の具体的な行動についても、施政方針の中にできるだけ盛り込んだつもりでございます。この先重要となるのは、施政方針の内容を実行すること、そのためには議会の皆様のご協力は不可欠でありまして、引き続きよろしくお願いいたします。
 次いで、都の公金管理の対応についてでありますが、公金の安全性を確保するために、自己責任のもとに安全な金融機関を選択することは、都の責務であると思います。公金が都民の税金であることから、預金を行うに当たり、金融機関の経営の健全性については、厳しく判断せざるを得ないと思います。
 ペイオフ解禁を目前にして、いまだ経営の健全性に疑問のある金融機関もいろいろありますが、都の対応が金融機関の経営改善に向けての一つの大きな契機となることも期待しております。
 次いで、産業空洞化への対応についてでありますが、先ほど申しましたけれども、先進国の経済というものが、性格を変質しまして、従来の規格多量生産型の経済社会が先進国ではもう終えんし、非常に知識集約型の製品というものを評価する、集中する経済形態をとりつつありますが、どうもそういう認識が日本にはいささかおくれておりまして、何か、講じる措置が後手後手になっているといわざるを得ないと思います。
 この産業空洞化を食いとめるためには、単に従来の生産業を再生させるだけでなくて、これからこの時代にいかなる業種が成長産業であるか、新しいあるべき産業がどんなものであるかということも見きわめて、構造転換を促すことが必要であると思います。
 そのためのグランドデザインは、本来は国が描くべきものでありますけれども、余り国が積極的に新しい産業を育成しようという意思も感じられませんし、東京にはいろんな集積、集中がございますから、そういう条件を踏まえて、都も――これは本当に、国が従来何で観光というものを産業としてとらえないか、不思議で仕方なかったんですが、今回改めて観光を産業ととらえ、これを充実する。またはIT産業あるいはアニメ産業、並びにバイオ産業を戦略的な産業として位置づけて、積極的な振興を都としては図っていきたいと思っております。こういう範を示すことで、国が動くことにもなるのではないかと期待しております。
 次いで、高コスト構造の是正についてでありますが、ご指摘のように、日本の経済社会の特質の一つは、公共料金が非常に何もかも高い、異常に高い。これは国家としての競争力を非常に削減しているという気がいたします。いずれにしろ、道路渋滞や割高な空港あるいは港湾の使用料に起因する非常に高い流通コスト、あるいは非常に過度な規制、あるいは公益事業における非常に硬直的なコスト構造などが、経済全体の空洞化の一因にもなっていると思います。
 日本経済を再生するためには、経済活動全般にわたる高コスト構造、この体質を改善して、国際競争力を回復することが急務であると思います。
 国全体の高コスト構造の是正は、本来国の責任で行われるべきものでありますが、東京都は三環状道路の整備や港湾設備を含む都の施設利用の適正化などを進めるとともに、国に対して、緩和規制を強く求めていくつもりでございます。
 次いで、東京臨海部を経済特区にすることについてでありますが、我が国の経済の閉塞感を打破し、民間活力を引き出していくためには、税制も含めて既存の枠組みにとらわれない大胆な社会経済システムの改革が必要だと思います。
 昨年十一月に東京都が中心になりまして、東京湾と大阪湾に臨む九都府県市で、国内外の企業の投資を促進することによって、産業の空洞化、衰弱を食いとめ、この臨海地域を再生することを目的に、投資重点地域の創設などを国に提案いたしました。
 この東京に関して申しますと、決して東京の、都内ではありませんが、隣接した川崎のコンビナート地域などは、非常に空疎化が目立っておりまして、川崎市なども、あの上空を飛行機が飛来することを何か考えるような状況にもなってまいりました。私はやっぱり、ああいう産業の変質とともに大きなスペースを講じつつあるような地域は、東京都も相まって、ご指摘のような重点地域に組み立てて、東京を中心にした首都圏の経済の再生というものをやっぱり図るべきではないかと思っております。
 東京臨海地域は、こうした特別な地域として位置づけて、戦略的に産業を集積すれば、必ず我が国を牽引する経済拠点にもなり得ると考えておりますし、推進体制を整えて、今後とも積極的に働きかけてまいります。
 先般、神戸の震災の復興状況を参考に眺めに行きましたときに、やはり港湾を視察いたしました。あの災害の後、あそこに非常に思い切った投資開発が行われているのが非常に印象的でありました。東京の間近にもそういうスペースがたくさんございますから、そういう問題について積極的に考えていきたいと思っております。
 次いで、アジア各国との関係についてでありますが、さっきも申しましたように、アメリカという日本にとって非常に重大なかかわりの国の新政権が、中国とのかかわりの中で日本に対する認識を民主党政権とはかなり違ったものに構えているということは、日本にとって非常に有利であるし、私たちそれを踏まえて、この国の再生というものを考えるべきでありますし、また、アジアに対するいい意味での日本の戦略というものを講じていかなくてはならないと思います。
 いずれにしろ、今後の日本の産業振興に向けて必要なことは、地域的、経済的なつながりが深く、価値観も共通性の見られるアジア全体とネットワークを構築し、機能の役割を分担しながら、連携を深めることだと思います。我が国の果たすべき役割は、事業協力、事業支援などを行うほか、知的な部分での司令塔、アジアのハブとなることだと私は思います。そのような形で、日本がアジアの代表となり、欧米と対等に伍していくことが、アジアの発展にもつながると思います。
 アジア全域の発展を考えることができるならば、ビジネス環境、対外的な発信力などの点から見て、やはりこの日本がその核となるべきだ。そのためにはそういう自覚を持って、早急に情報通信などの基盤を整備する必要もあると思います。引用していただきました私の論文の中では、アジア円ファンドによる円圏の創設も提唱いたしましたが、これは千四百兆円ともいわれる日本の個人金融資産の一部を、基金、ファンドの原資としてアジアの企業への投資を行う、そういう構想のもとでの経済の再生ということを目的と示唆しております。
 いずれにしろ、世界経済にとっても、ドルだけの通貨マーケットよりも、ドル、ユーロ、円の三極による通貨体制が世界の金融経済の安定にもつながると思っております。そういう意味でも、東京はアジアを代表する大都市との間で強固なネットワークを構築しつつありますし、アジアの発展に大きく貢献できるものと思っております。
 今後とも、アジアの中での役割を念頭に置きながら、さまざまな施策に取り組んでまいりたいと思います。地勢学的な条件もありまして、インドはこのごろ非常に中国を強く意識するようになりましたが、それと相まって、インドの日本に対するいろんな期待というものは、非常に変質し、大きくなっております。先般も、インド大使と、これは日本語の非常にうまい人で、慶応大学を卒業した人ですが、いろんな話をいたしました。ああいう知的な水準の非常に高い国と日本の連携なども、非常に大きな結実をアジアのためにもたらすのではないかと思います。
 次いで、福祉改革の方向性についてでありますが、都が目指す福祉改革は、都民が高齢や障害などで、ケアを要する状況となっても、地域の中でいろいろなサービスを利用しながら自立していける、ごく当たり前の世界をこの東京の中で実現したいということであります。しかも、大都市東京にはそれを可能とするような、さまざまな民間企業やNPO法人など社会資源が集積しております。しかし、国は、大都市も地方も一緒くたにした非常に全国一律の画一的なサービスのあり方にこだわりまして、さまざまな規制を設けて民間企業などの参入を抑制しているのが実態であります。
 こうした状況を打開するために、今回新たに福祉改革STEP2を策定いたします。今後これに基づきまして、改革に向けた都独自の取り組みを福祉の各分野において展開し、東京から全国に向けて、今日の社会における新しい福祉のあり方を発信していきたいと思っております。
 次いで、アフガニスタンの復興支援についてでありますが、私は日本の誇るべき外交官の一人である緒方貞子さん、前の難民担当の高等弁務官、この人がアフガニスタンの今回の事態を眺めて、要するにアフガニスタンを、大国のエゴが見捨てたと。アメリカも、要するにロシアもそうであります。そのために要らざる犠牲を強いられて、アフガニスタンの人たちがああやって呻吟している。これは非常に意味深い言葉でありまして、日本は大国でありますけれども、幸か不幸か、アメリカのような、ロシアのような、非常に露骨な世界戦略、政略というものを講じておりません。その日本がこういう状況になったアフガニスタンに、先ほど事例を挙げて指摘されましたが、従来の他の地域に対したと同じような、東京都ならではのできる支援というものを行うということは、やはりこれからの世界の交流、世界の中での日本の立場を示す上でも非常に有意義なことだと思います。
 今までも国の要請によりまして、サラエボとか他の発展途上国において、インフラの整備や公衆衛生といった分野で協力をしてまいりましたが、今後、日本からアフガニスタンへの具体的な支援プログラム作成など、国の取り組み状況を見据えて、条件が整えば、都がこれまでの都市経営で培ってきた多様な技術やノウハウの提供に積極的に取り組んでいきたいと思います。いくべきだと思っております。
 最後に、職員給与の削減措置の問題についてでありますが、繰り返して申しますけれども、日本の経済はますます悪化をたどりつつありますが、この中で、私たち同じ都民として、同じ国民として、東京という日本の主要部分の財政というものを立て直していくための内部努力というものを積極的に話していきたいと思います。いろいろ議会にもご心配をかけてまいりましたが、必ず、とにかく最後はトップ会談もいたしまして、この問題、この会期中に解決したいと思っておりますし、また、そのためのご理解とご協力も折節にお願いする次第でございます。
 他の質問については、出納長及び関係局長から答弁いたします。
   〔出納長大塚俊郎君登壇〕

○出納長(大塚俊郎君) 公金管理についての二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、都の中途解約による影響などについてでありますが、金融機関の経営状況が悪化して中途解約を行う場合には、当該金融機関に対して十分なヒアリングを行い、三月中に設置をする公金管理委員会において金融分野の専門家からの提言も受けた上で、対応をいたします。
 また、具体の対応に当たりましては、社会的影響力の大きさを考慮し、委員会の運営等を含め、都民の不安をいたずらに助長することのないよう、十分留意をしてまいります。
 次に、収納金の安全性確保のための方策についてでありますが、収納代理金融機関での滞留期間の短縮や、金融機関から担保の提供を求めるなどの債権保全策の検討が必要と考えておりますけれども、いずれも実現にはいろいろと課題がございます。一時的に滞留しているにすぎない公金、収納金の保全につきましては、地方自治体の自己責任の範囲外ととらえるべきものとして、国に対し、金融機関の破綻時に少なくとも当面は保護扱いとする、制度的な手当てを求めてまいります。
   〔財務局長安樂進君登壇〕

○財務局長(安樂進君) 予算に計上いたしました投資的経費の経済波及効果などについてのお尋ねでございますが、東京都は十三年度最終補正予算で、国の補正予算に対応した公共投資の追加を行うとともに、十四年度予算では、緊急課題である首都圏再生への取り組みに重点的に財源を投入いたしました。これらの事業はいずれも投資効果の高いものであり、着実に実施していくことが、今後の景気回復や雇用促進につながるものと考えております。
 これらの投資的経費の内容には、公共交通網の整備、交通渋滞の解消など、広域的に効果の及ぶ都市基盤整備事業を初めといたしまして、公営住宅へのエレベーターの設置や保育所整備など、地域に密着した事業もきめ細かく盛り込まれておりまして、都民サービスの向上に大きく寄与するものと考えております。
 投資的経費の投入による効果について、現時点では具体的に算定して数値で示すことはできませんが、予算に計上した経費が都民生活にどのような効果をもたらすのかを具体的な数値でとらえることができれば、今後の施策推進に寄与するところが非常に大きいと思っております。
 ご指摘は貴重なものと受けとめ、今後できるだけ早い時期に具体的な数値をお示しできるように、関係する局間で分担、連携を図り、検討を進めてまいりたいと思います。
   〔知事本部長田原和道君登壇〕

○知事本部長(田原和道君) 都の施策に対する評価についてのお尋ねでございますが、施策や事業を評価いたしまして、都民生活にどのような効果を上げているか、これを検証して公表することは重要なことであると考えております。
 都におきましては、今年度から行政評価制度を本格実施をいたしまして、政策や事務事業の達成度などを評価しているところであります。
 また、その評価結果を広く都民に知らせるとともに、事務事業の改善、それから見直しの状況につきまして、進行管理を行うこととしております。
 さらに、十四年度からは、大規模な公共事業や施設整備事業につきまして、事業着手前にその事業効果等を検証する、事前評価制度を本格的に実施する予定であります。
 今後、これらの仕組みを適切に運用していくとともに、ご指摘の点にも十分留意をしまして、制度の改善を図ってまいります。
   〔産業労働局長浪越勝海君登壇〕

○産業労働局長(浪越勝海君) 産業の空洞化及び商店街振興に関する五点の質問にお答えをいたします。
 まず、物づくり振興の戦略についてでありますが、物づくり産業は、エネルギー、流通、販売などの関連産業のほか、人材育成、教育など、さまざまな社会システムに支えられております。このため、物づくりの振興に当たっては、製造業のみにとどまらず、幅広く検討する必要があると認識しており、中小企業対策審議会においても、広い視野に立った議論を精力的にいただいているところでございます。
 今後、ご指摘の点も踏まえ、東京の産業の活性化に向け、戦略的に取り組んでまいります。
 次に、産・学・公連携におけるコーディネート機能の充実についてでございますが、産・学・公連携におけるコーディネーターの役割は重要であり、都では現在、大学での研究や中小企業の技術に造詣の深い民間専門家をコーディネーターとして配置をし、産・学・公による共同開発の実現に取り組んでいるところでございます。
 今後、産・学・公連携を活発にするためには、さらに大学、TLOなど、多くの機関のコーディネート機能が整備され、すぐれた人材が配置されることが重要であります。このため、大学、産業界等とも協議し、人材の発掘と情報の交換を進め、より実効性のあるコーディネート機能の整備、充実に努めてまいります。
 次に、ニット産業への支援についてでありますが、ニット産業を初めとする繊維産業は、都における重要な地場産業の一つでありますが、とりわけニット製品は輸入比率が約九割に達するなど、急激な輸入製品の増加などにより、極めて厳しい状況にあります。
 このため、平成十三年度においては、ニット業界の十グループの自主的な取り組みを支援する繊維地場産業等活性化補助事業や繊維産地活性化基金事業に加え、中小企業経営革新支援法による支援策を活用するなど、国とも機動的に連携を図ってきたところでございます。
 今後とも、知的で高度な技術力を持ち、国際競争力を有する企業となるよう、ご指摘も踏まえ、さまざまな角度から支援を図ってまいります。
 次に、商店街の振興組合化と事務局整備についてでございますが、都内に商店街は約二千九百ありますが、一商店街当たりの商店数は平均で五十七に過ぎず、専従の事務局職員を有するものは二百二十七にとどまっております。
 商店街の統合や法人化と事務局の整備は、こうした商店街の脆弱な経営基盤を強化することによって、計画的かつ効果的な振興事業の展開に貢献するとともに、各種の助成が受けやすくなることも期待できます。
 そこで、このメリットを生かすため、商店街の統合等について、商店街振興組合連合会や商工会、商工会議所などの活動を促進し、区市とも連携をとりながら、支援策について検討してまいります。
 最後に、商店街アドバイザーチームの創設についてでありますが、都では、商店街の自主的、自立的な事業活動を側面から支援することとしておりますが、意欲はあっても、みずからの力による課題の抽出や新たな振興策を見出せない商店街は少なくない状況にございます。
 お話の経営指導員や経営コンサルタントなどの専門家がチームを組んで、商店街ごとの活性化を指導することは、幅広い見地から多角的な振興策を構築する契機となり、商店街振興に大きな効果が期待できます。
 現在、中小企業診断士を派遣する商店街自己マネジメント支援事業を実施しているところですが、今後ご指摘の点も踏まえ、支援体制を検討してまいります。
   〔環境局長赤星經昭君登壇〕

○環境局長(赤星經昭君) 環境に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、土壌汚染に関しますコスト負担についてでございますが、土壌汚染の処理には多大な費用がかかることから、東京都は、国に対しまして、その処理の実施主体と費用負担に関します法制度の確立を提案要求してまいりました。
 国は、先般、土壌汚染対策法案を通常国会に提出いたしました。この法案では、土地所有者が第一義的に汚染の除去を行いますが、汚染原因者が明らかで、土地所有者に異議がないときは、汚染原因者が除去を行うとしております。さらに、汚染原因者が不明な場合等で負担能力の低い土地所有者に対しましては、基金を設置し助成を行うこととしております。
 ご指摘のように、土壌汚染の処理が中小企業に大きな経済的負担を与えることは承知しております。
 都といたしましては、汚染原因者の負担能力が低い場合においても、適切な土壌処理ができるような仕組みづくりを国に求めてまいります。
 次に、化学物質の適正管理に対します環境確保条例の運用についてでございますが、条例では、化学物質の適正な管理が行われますよう、事業者に対してその使用量等の報告を求めることといたしております。
 東京都は、事業者が報告を円滑に行えますよう、条例の趣旨や内容について事前に周知いたしますとともに、各種業界団体の意見等も聞きながら、業種ごとに「化学物質適正管理の届出の手引き」を作成し、この手引をもとに、業種ごとに説明会を実施してまいりました。
 今後とも事業者からの相談に対しましては、区市と連携しながら、きめ細やかな対応に努めてまいります。
 最後に、融資制度などについてでございますが、東京都は、中小企業事業者が必要といたします資金を長期かつ低利で融資いたします中小企業制度融資を設けております。この中に、技術・事業革新等支援資金の一つといたしまして、環境関連の設備導入等のための環境対応資金がございます。
 工場等を設置する事業者が、環境確保条例に基づきまして、例えば有害物質を処理するための設備の設置や、地下への浸透を防止するための施設整備を行う場合等には、この融資制度を活用することが可能でございます。
 今後とも、この融資制度の活用や技術的支援を通じまして、中小企業事業者の負担の軽減に努めてまいります。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) 福祉改革についてのご質問にお答えをいたします。
 高齢者や障害者など、だれもが地域の中で自立した普通の暮らしを送ることができる利用者本位の福祉を実現することが、都の福祉改革が目指すものであります。
 そのためには、これまでの行政指導の画一的なサービスシステムを転換し、東京に集積している民間企業、NPOなど多様な事業主体が創意工夫を凝らし、質の高いサービスを提供する開かれた体制を築く必要があります。
 とは申しましても、民間活力の導入は、あくまでも手段であり、民間と協力しながら、福祉サービスのインフラ整備や利用者保護の仕組みづくりなどを進め、東京の福祉全体の水準の向上を図ることが、行政としての都の責任を果たしていくことであろうと考えております。
 こうした立場に立ちまして、今回策定した福祉改革STEP2に基づき、都独自の取り組みをさらに展開してまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 都立病院改革等に関連して、五点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立病院改革についてでありますが、改革の推進に当たっては、都立病院がこれまで身近な医療を実態として提供してきた経緯等を踏まえるべきことはご指摘のとおりであります。
 今後とも、地元自治体や地域の医療機関との明確な役割分担に基づき、関係機関と十分協議を重ねることなどによりまして、都民が安心して、身近な地域で適切な医療が受けられる医療提供体制を確保しながら、都立病院改革を進めてまいります。
 次に、小児総合医療センターの基本的コンセプトについてでありますが、小児医療の資源を最大限に活用し、その充実を図るため、清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ケ丘病院の三病院を統合し、小児の心から体に至る総合的で高度専門的な医療を提供する、都における拠点施設として整備するものであります。
 本センターは、府中病院等と隣接するメリットを十分生かして、成人医療と連携することにより、小児救急医療、周産期医療、小児精神医療等の充実を図るとともに、不足している小児科医の人材育成などにも力を注いでまいります。
 次に、小児医療についてでありますが、小児医療全体のレベルを向上させるためには、都と区市町村とがそれぞれの役割に応じて、医療機能の充実と連携を図る必要があります。
 このため、今年度から、都は入院を主体とした小児科の休日・全夜間診療事業を開始するとともに、区市町村が実施主体である初期救急医療を強化するため、小児初期救急医療体制整備支援事業を開始するなど、地域における小児救急医療のネットワークの構築を推進しております。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、地域の小児医療の充実に努めてまいります。
 次に、区市町村が行う小児初期救急医療についてでありますが、在宅当番医制は、日によって診療場所等が変わり、都民にとって利用しにくいなどの問題点があるため、今後は、原則として固定施設による体制の整備を図ることが望ましいと考えております。
 このため、ご指摘の地域の中核病院を利用して小児科開業医師等が協力する方式など、区市町村が地域の実情に即して小児初期救急医療事業を展開できるよう、来年度から新たに運営費補助を追加する予定であります。
 今後とも、都と区市町村とが十分に連携を図りながら、それぞれの役割分担に応じて小児救急医療体制の充実に努めてまいりたいと考えております。
 終わりに、東京ER墨東についてでございますが、墨東病院における救急患者数は、東京ER墨東開設以前に比べて激増しておりますが、この中には、地域の医療機関で対応可能な患者が含まれ、現場に負担となっている事実があることはご指摘のとおりでございます。
 今後、地域の医療機関との連携を強化することはもとより、救急患者を対象とする東京ERの本来の趣旨を、都民の皆様に十分周知することに加えて、開設後の実績を踏まえ、現在の運用体制を十分に精査した上で、必要な人材を確保するなど万全を期してまいります。
   〔住宅局長橋本勲君登壇〕

○住宅局長(橋本勲君) 住宅政策に関します二点のご質問にお答えいたします。
 まず、住宅政策のあり方についてでございますが、東京が活力を維持し、持続的な発展を図る上で、住宅政策は重要なものと認識しております。新たな住宅マスタープランにおきましても、成熟社会の到来を踏まえ、都民が真の豊かさを実感できるよう、民間住宅施策を含め、総合的な取り組みを行っていくことといたしました。
 また、現在の都営住宅には、都民共有の財産として見た場合、供給や管理についての不公平感や、団地全体が高齢化することに伴う周辺地域を含めた活力の低下、区市町村営住宅との間における供給戸数のアンバランス等の問題が存在しております。
 このため、公平、効率、活力、分権の視点に立って、都営住宅が真に住宅に困窮する人々に供給され、都民の理解のもと、都民共通の居住面におけるセーフティーネットとして、より一層有効に機能するよう図っていくこととしております。
 こうした取り組みは、都における住宅政策を決して後退させるものではなく、今後とも公営住宅を含めた住宅政策に積極的に取り組んでまいります。
 次に、耐震改修支援事業についてでございますが、震災時に倒壊のおそれのある住宅を改修することは、倒壊建物による道路閉塞を防止し、消火、救援活動を円滑にするなど、都市防災の観点から重要なことと認識しております。耐震改修に対する助成は、既に区市において独自に実施しているところでございますが、国の新たな支援事業の創設により、耐震改修事業が一層推進されるものと期待しており、都としても、区市が事業を円滑に実施するよう積極的に働きかけてまいります。
 今後、事業主体となる区市の耐震改修事業の実施状況を踏まえまして、区市と連携し、補助対象地区の拡大などを国に強く要望してまいります。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) いわゆるNBC災害の防止対策についてお答えいたします。
 核の災害、あるいは生物化学の災害等の防止に対しましては、その緊急事態に迅速かつ一貫して対処する総合的な危機管理体制の確立が必要でございます。このため、かねてより国に対し、総合的な危機管理体制の強化充実を強く要求しております。
 都におきましても、警視庁に化学防護部隊及びNBCテロ捜査隊の発足、それから東京消防庁に化学機動中隊の配備、また衛生局には医療設備を計画的に整備してきております。
 今後とも、国を初め関係機関との情報連絡を密にし、また、ご指摘の点も踏まえ、全庁的な連絡体制を検討するなど、NBC災害の防止対策の強化に努めてまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 防災対策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、延焼遮断帯の形成についてでございます。
 延焼遮断帯は、震災時の市街地火災の延焼防止に大きな効果がございまして、そのことから道路の整備と沿道建築物の不燃化により、早期にその形成を図る必要があります。
 このため、現在、密集市街地内の都市計画道路二十七キロメートルについて事業中であり、未着手の路線についても、今後、防災上の緊急性、必要性の高いものを次期事業化計画に反映してまいります。
 また、沿道建築物に対する不燃化の助成を引き続き実施するとともに、新たな道路整備にあわせて適切に用途地域などを見直し、沿道建築物の不燃化を誘導することにより、延焼遮断帯の形成を促進してまいります。
 次に、東武伊勢崎線鐘ケ淵駅付近の立体化についてでございます。
 鐘ケ淵駅付近を高架化する場合、交差する幹線道路が一本しかなく、現行の連続立体交差事業としての採択要件を満たしておりません。また、駅前後の線路が急カーブとなっていることから、線路の位置を民地側に変更する必要があり、高架化には多くの課題がございます。
 一方、都市計画道路補助一二○号線を立体化する場合にも、鉄道との交差部付近の道路の拡幅が必要でございます。
 いずれにしても、道路と鉄道の立体化は、地域の防災まちづくりと一体的に考えていく必要があり、今後、まちづくりの主体である地元区や鉄道事業者などで構成する検討組織の設置など、具体的な対応策について協議してまいります。

○副議長(橋本辰二郎君) この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時四十三分休憩

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