平成十四年東京都議会会議録第二号

   午後三時四十二分開議

○副議長(橋本辰二郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十三番田中良君。
   〔百二十三番田中良君登壇〕

○百二十三番(田中良君) 私は、都議会民主党を代表し、平成十四年における都政の重要課題について、知事並びに関係局長にお尋ねいたします。
 私たちは、第四回定例会において、我が国経済が迎えているデフレスパイラルの危機について、強い危惧の念を示してまいりました。この危機感は、さきの七カ国(G7)財務大臣・中央銀行総裁会議において、そして先日の日米首脳会議においても共有され、小泉首相、塩川財務大臣も、規制緩和、金融面での措置、不良債権処理を含む総合的なデフレ対策の実施を表明しています。
 日本経済の破局は、好転し始めた世界経済に大きな影響を及ぼすため、欧米のみならず、世界各国の日本を見詰める目には極めて厳しいものがあります。
 今、我が国は、日本経済を今度こそ長期低迷から脱却させるのか、それとも日本には自己解決能力がないということを全世界にさらすことになるのか、重大な岐路に立っており、我が民主党も含めて、その実行力が問われているといえます。
 知事は、さきの施政方針において、東京に限らず、日本全土が大きな危機に包まれていながら、国の動きは相変わらず鈍く、改革の軸足が定まっているとは到底思えない状況にあるとされましたが、デフレスパイラルの危機に臨む小泉内閣の対応についてはどのようにお考えか、まず伺います。
 知事は、日本における依存型社会の行き詰まり、国家衰弱の危機を指摘されました。そして、その淵源を社会システムそのものにあるとされました。知事の指摘には共感できる点が少なくありませんが、国家衰弱はまた、経済のグローバル化によってもたらされた国家の役割の変化にもあるのではないでしょうか。
 経済のグローバル化によって、地球環境や国益をめぐる交渉は、国と国との間の調整から、気候変動枠組条約、COPや、世界貿易機関、WTOを初めとした国際機関の場での多国間調整に移されつつあります。環境や国益を一国では守り切れなくなる一方で、国民意識は従来の枠組みにとらわれ、さまざまな規制が国内経済を閉塞状況に追い込んでいます。政治が国内に引っ張られ、経済は国境を越える、この相反するベクトルが国家のありようを揺さぶっています。
 知事は、個々の木を鋭く観察する目を持ちながら、同時に、一段高いところから森全体を俯瞰する目を持つとも述べられましたが、常に動き続ける世界全体を俯瞰する目を持ち、世界の中の日本、アジアの中の日本を見詰め、その中での日本の役割を定め、日本のアイデンティティーを求めていくという姿勢が必要であると考えますが、いかがお考えでしょうか。
 このような状況に置かれている我が国の政府は、二国間、多国間調整や国際機関への貢献、世界平和実現に向けた取り組みや国際テロへの対処など、今まで以上に多様かつ高度な能力が求められており、私たちもまた、このことを強く政府に要求していかなければなりません。
 同時に、私たち自身が内政に責任を持ち、着実に執行していく能力と体制を獲得していかなければなりません。そのための次の一歩が七都県市の連携であり、市区町村合併の推進であります。
 私たちも、去る一月に、一都三県の民主党都県議員団と、労働組合のローカルセンターである各都県の連合との間で首都圏研究会を立ち上げ、今後、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市の議員団をも加え、首都圏における新たな広域行政の形を探っていきたいと考えています。
 知事は、今回の施設方針の中で、首都圏は同一の経済圏、生活圏の中で、共通する多くの課題を抱えており、七都県市の連携は重要な意義があると述べられており、首都圏における広域行政のあり方について、知事と私たちとの認識は極めて近いものがあると考えております。
 しかし、本当の問題は、七都県市による連携を将来に向けてどのように発展させていくのかということであります。
 知事は、七都県市の取り組みは、新しい広域行政の形を探る、いわば壮大な実験であり、広域的に連携する範囲や対象が広がっていけば、新しい受け皿が必要になるとしています。そうした新しい受け皿として、現時点でどのようなものを想定しているのか伺います。
 こうした受け皿の論議とともに、国と自治体が真に対等な立場に立ち、自治権を拡充していく取り組みも重要であると考えます。
 私が昨年訪れた韓国では、ソウル市長が政府の閣議に出席し、意見を述べているとお聞きしました。国情の違いもあり、一概にはいえませんが、自治体の代表が内閣に籍を持ち、直接意見を国政に反映させることも考えられてよいのではないでしょうか。
 内閣の過半数は国会議員でなくてはなりませんが、それ以外は民間人であっても知事であっても構いません。副大臣には国会議員という制約もありません。そこで、我が国人口の四分の一以上が集中している七都県市の代表を首都圏担当大臣として、あるいは副知事を大臣もしくは副大臣として内閣に送り込み、直接、自治権拡充に取り組むことも考えられてよいと思いますが、所見を伺います。
 首都圏に新たな広域行政の仕組みを導入するということは、国、広域的自治体、そして基礎的自治体それぞれの関係を根本的に見直し、まさしくこの国の形を根本にさかのぼって再構築する試みにほかなりません。
 一方、基礎的自治体については、都議会民主党はこれまでも、最も基本的な主体である市町村に対して、必要な権限を積極的に移譲して、強力なものに育て上げていくことの必要性を重視して、合併等により行財政基盤や行政能力の向上を図るべきだと主張してまいりました。
 しかし、東京都においては、一年以上前に市町村合併に関する検討指針こそ発表したものの、その後、合併協議会や研究会は全く設立されることがなく、市町村合併に向けた動きは皆無といっていい状態が続いているのであります。
 全国で市町村合併に向けた動きが今以上の太い大きな流れとなって始まった場合、東京都の市町村だけが例外として、いつまでも現状を維持し続けるとしたら問題です。そうした点も踏まえ、東京都としては市町村合併についてどのように取り組んでいく考えでいるのか、所見を伺います。
 基礎的自治体の問題は、市町村に限られるものではありません。東京都には、特別区という基礎的自治体が、東京都とともに大都市行政を担っており、こうした特別区のあり方についても議論を深めることが不可欠であります。特別区も、現状に満足することなく、合併も含めて、そのあり方について真摯な議論が展開されてしかるべきであります。
 特別区について、かつて知事は、我が党の質問に対する答弁の中で、現在の区分は不自然である、統廃合の素案のようなものを都として示していくという決意を示したところであります。
 特別区の合併等については、その後どのような状況にあるのか、また、東京都としてはどのような取り組みを進める考えでいるのか伺います。
 さて、知事は就任以来、首都移転を歴史への冒涜とし、強い反対の意志を示してこられました。我が民主党東京都連も、本部の方針とは異なり、移転反対を決議しているところであります。
 国会においては、移転先地の審議が続く一方で、知事も述べられたように、首相官邸の新築や各庁舎の改修、建てかえ準備が進むという、相反する動きが進んでおります。
 このような状況において、首都移転を断念させるためには、流れを変える強烈なインパクトが必要であろうかと思います。知事にはこれまでにも、自民党総裁である小泉首相、あるいはその他の自民党首脳と会談する機会もあったでありましょうが、その際に、移転反対をどうアピールしてこられたのでしょうか。
 私は、改めて舞台を整え、知事が先頭に立って、自民党総裁である小泉総理に移転断念を直訴することが、首都移転の流れを変える重要なインパクトとなると考えますが、所見を伺います。
 次に、今後の都政運営について伺います。
 十四年度予算案の発表後に、都財政の収支見通しが発表されましたが、これまでにも、平成八年の東京都財政健全化計画、平成十一年の財政再建推進プラン、これらの前後にも幾つかの収支見通しが発表されてまいりました。毎年毎年、幾ら不足する。オオカミを何匹も呼び出しては、都政全体が緊張感を失ってくるのではないでしょうか。
 既にこれまでの経験で、バブル崩壊後の都財政運営の基本的な姿は明らかになってきています。だからこそ、今回発表された都財政の収支見通しの中で、毎年度の歳出予算に上限を設けるCAP制の導入や、歳出の削減を義務づける条例の制定など、さらに踏み込んだ取り組みにも触れているのではないでしょうか。
 これまでにも、財政調整基金条例や減債基金条例など、財政運営に係る条例を制定してきましたが、これらはいずれも右肩上がりの情勢のもとでの条例制定でありました。今は右肩下がり、あるいは乱高下の情勢にあります。ここで、これまでの経験を総括し、都政の安定的運営を確保するために、さきの基金条例をも含めて、財政運営の基本原則を定める条例の制定を検討すべきときであります。
 同時に、事務事業レベルでの徹底した見直し、再構築も欠かすことはできません。十三年度から本格実施となった行政評価制度の充実を図り、不要不急の事業を的確にスクラップできるようなシステムを早急に構築すべきと考えます。
 行政評価制度では、評価結果を事務事業の見直しに活用していくとしていますが、事業所管局の評価と第二次評価者である知事本部の評価が食い違うものが多々見られるなど、その評価の方法、基準に、まだまだ改善しなければならない点が多く残されております。
 また、事業評価に際しては、例えばバランスシートの活用がされていないなど、議論が役所内の物差しによるものにとどまっているのではないかとも思われます。
 評価結果を事業の見直し、再構築に的確に反映できるシステムを、都民への適切な情報公開、意見の反映を含めて早急に確立するためには、何が課題であり、どう克服していくつもりなのか、これまでの取り組みの成果を踏まえた上で、明らかにされるよう求めます。
 また、使用料、手数料については、利用者が特定されるため、サービスを受ける本人に、そのためのコストを適正に負担していただくことが原則とされています。したがって、使用料、手数料の改定は、サービスに要したコストに利用者以外の一般都民の税金をもって充てることのないようにするという、受益者負担の適正化の考え方に基づき行っていることは理解しています。
 今回もこの考え方に基づき、住民間の負担の公平を図る観点から、三十四条例等について料額の見直しを行うということですが、都民にこの点を理解してもらう努力が欠けているのではないでしょうか。
 改定に当たっては、サービスの提供にかかるコストを明確にすることも含め、必要な情報提供を行い、受益者負担の適正化の必要性についてきちんと説明責任を果たし、都民の理解を得ることが必要と考えますが、いかがでしょうか。
 さて、ピーター・ドラッカーの古典的な名著「マネジメント」では、マネジメントの正統性の唯一の根拠に、人の強みを生産的なものにすることを挙げています。これが組織の目的であり、マネジメントの権限の基盤となる正統性であるとしています。
 人の強みを生産的なものにする、すなわち、東京都にあっては、都庁職員一人一人に対して、何らかの貢献を行わせ、自己実現させること、そのような意欲を持たせることが、東京都のトップマネジメントである知事の権限の基盤とならなければなりません。これに逆行することは、知事自身の権限の基盤を突き崩すことになります。
 昨年来、都職員の賃金カットについて論議が闘わされ、本定例会には自民党より、都職員の賃金を四%カットする条例案が提案されています。
 自民党の提案は、都民感情を率直に表現するものではありますが、地方自治法や地方公務員法に基づく公務員の給与決定ルールを無視するものでもあります。同時に、知事のトップマネジメントとしての当事者能力を剥奪するものでもあります。
 知事は、このような自民党の提案についてどのようにお考えか、そして、トップマネジメントとしての権限を行使するに当たり、この問題にどのように対処されるお考えか、所見を伺います。
 次に、生活の安全について伺います。
 雪印乳業の食中毒事件、三菱自動車のリコール情報隠し、昨年のBSE、いわゆる狂牛病に端を発した雪印食品の牛肉の産地表示偽装事件というぐあいに、この間、消費者の信頼を裏切り、生活の安全を脅かす事件が立て続けに発生しました。事業者の不正行為を許さず、消費者の立場に立った施策の推進が今ほど求められているときはありません。
 特に、雪印食品の牛肉表示偽装事件は、現在の表示制度において、ラベルを張りかえることや、産地や賞味期限を偽って販売することが容易にできることを明らかにしたのであります。
 石原知事は、施政方針で、アメリカの食品医薬品局であるFDAを参考に、東京FDAと位置づけた食品医薬品安全部を設けることを述べられました。しかし、安全対策だけでなく、今回のような偽装事件に対応できるような対策の構築も必要だと思います。
 国においては、行政組織の見直し論議が本格化しようとしていますが、大消費地である東京都においては、国に率先して、生産から流通、消費といった食品行政に一体となって取り組んでいく必要があると考えますが、見解を伺います。
 また、生産段階から流通、消費に至る経路において、商品情報が確実に消費者に届くよう、トレーサビリティー、追跡可能性を早急に構築すべきと考えます。
 トレーサビリティーは、現在、農水省が実験的に行っているところですが、それも市場までの安全対策であり、消費者の立場から安心できるものとはなっていません。東京都としても、消費者の立場を代表して、産地や農場、流通から消費までの流れをたどるトレーサビリティーに積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 「健康で安全かつ豊かな生活は、都民のすべてが希求するところである。」、これは東京都消費生活条例の前文の一節です。雪印食品だけでなく、高齢者や若者を標的とするような不正行為を許さず、条例の精神に基づき、消費者行政を強力に推進していく必要があります。
 そこで、まず第一に伺います。
 東京都の消費者行政は、既に四十年を超える歴史を刻んでおりますが、大消費地である東京における消費者行政の意義をどのように認識しているのか、知事の見解を伺います。
 今回の雪印食品の問題では、企業倫理が問われたことはいうまでもありません。現在、国が進めている市場メカニズムを重視する社会においては、事業者も消費者も、双方ともに自己責任に基づいた行動が求められるわけですが、事業者と消費者の間には、情報力や交渉力の上で大きな格差があるのは厳然とした事実であります。
 このような情報格差がある中で、事業者が意図的に不適正な行為を行おうとする場合、消費者が適切に商品を選択していくことなど、まことに困難なことであります。
 今、行政に求められのは、不適正な事業行為に対して、厳格な行政措置を発動していくことであります。
 今定例会において、消費者行政の基本である消費生活条例の改正案が提出されておりますが、消費者が安心して取引でき、また、被害から救済されるセーフティーネットの構築などが図られるべきと考えております。今回の条例の主要な改正点と、条例改正により期待される効果について伺いたいと思います。
 次に、福祉施策について伺います。
 先般、福祉改革STEP2が発表されました。
 福祉分野については、平成二年の福祉八法改正以降、社会福祉の基礎構造改革が一気に進められ、介護保険の導入に続き、精神を含む障害者分野での、措置から契約への制度の抜本的な大改革が、平成十五年度に実施されようとしております。
 都においても、こうした国の構造改革と東京特有の問題に的確に対応するため、平成十二年の福祉改革以降に、都の福祉施策の抜本的改革に着手し、利用者本位の福祉に向けてさまざまな改革が進められており、我が党としても、基本的にこうした福祉分野での構造改革を評価するとともに、利用者にとって必要なサービスが適宜適切に提供される社会となるよう努力をしていきたいと考えています。
 そこで、福祉改革STEP2について何点か伺います。
 この報告書では、都立の養護施設、障害者施設、高齢者施設の抜本的改革を進めるとされております。確かに、過去福祉局が発表した、いわゆるグリーンペーパーを見ると、都立福祉施設は、民間と比較して利用者一人当たりの税金の使われ方に格段の差があります。
 私たちは、常々、簡素で効率的な行政運営を目指しており、税金の使われ方もそうした視点に立つべきと考えておりますので、公営、民営を問わず、福祉を聖域化する立場はとっておりません。社会総体として福祉水準の充実を図るべきと考えているわけであります。
 しかしながら、福祉の仕事というものは労働集約型業務であり、都立施設は、人員配置を確保することにより、知的障害者分野での重度者の受け入れなど、重要な役割を担ってきたのも事実であります。
 今後行われる都立福祉施設の抜本的な改革に当たっては、こうした福祉分野で都立施設が果たしてきた役割を十分に踏まえて、都全体の福祉水準の向上に役立てるというような観点も入れて行うべきと思いますが、見解を伺います。
 次に、大きな社会問題となっている虐待問題に対する児童相談所の役割について伺います。
 いうまでもなく、虐待は、予防、早期発見、早期治療の各段階での適切な対応が何よりも大切であります。
 予防についていえば親が加害者とならないための教育、環境づくりが、早期発見については地域の見守りネットワークが、早期治療については虐待を受けた子どもの早期保護と親へのカウンセリングが必要であります。
 都は、児童虐待防止法の施行に先行して、平成十二年に虐待対策課を創設したのに加え、昨年は全国でも例のない虐待白書を発表するなど先駆的な取り組みを行っておりますが、現実社会では、虐待事件は増加する一方であります。
 行政がすべてを解決することが不可能としても、児童相談所が持つ相談、一時保護、措置、治療指導などの機能をさらに強化し、虐待問題に関する専門的、法律的対応ができる機関として、地域のネットワークの中心的役割をさらに強化していく方向で児童相談所の改革を進めるべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、医療行政について伺います。
 日本では、かつてない高齢者人口の増加に伴い、医療費の増大が予想されています。その抑制策を中心とした医療制度の抜本的改革は緊急の課題であります。
 健康保険の患者負担引き上げは、来年四月から実施の見通しとなりました。医者にかかったときの患者負担は、今まで千円払っていたところ千五百円になり、五割増しとなります。負担増により、患者の側のコスト意識は一層高まり、医療への参加意識もより一層強まることが予想され、患者不在といわれがちな現在の医療から、患者中心の医療への移行が求められております。
 都立病院改革が、単に都の財政的負担の軽減のみを目的としたものとなり、都民にとってよりよい医療が受けられる改革とはならないことが危惧されます。この点についてどのようにお考えか、見解を伺います。
 次に、東京ERについて伺います。
 都民のみならず、全国民が注目するERが墨東病院に開設して、はや三カ月が過ぎました。開設したばかりですので、拙速な評価は差し控えますが、現行制度上いろいろな問題があり、広尾病院、府中病院の開設に向けて若干の危惧を持っておりますので、質問をさせていただきます。
 現在の医療制度は、こうしたER型の医療体制を想定しておらず、こうした制度の下では、見方によっては、不採算医療として都立病院改革の足かせにもなりかねません。また、アメリカのテレビドラマのようなバックアップ体制も十分とはいえず、ERに勤務する医師、看護士などのスタッフも、専門的な訓練や養成を受けて従事しているわけではなく、まさに個人の力量と意欲に依存した緊急的な対応が現実であると思います。
 ERの開設に伴い、ほかの都立病院の医療体制にも混乱を生じているという現場の声も聞こえてきております。ERの充実を図るために克服しなければならない点をどうとらえているのか、忌憚のないところをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、地球環境問題について伺います。
 地球温暖化の進行と、その及ぼす影響が一層明らかになる中で、今、世界各国では、本年八月末からヨハネスブルクで開催される地球環境サミットまでに京都議定書を発効させることを目指した取り組みが進められています。
 我が国においても、政府は、議定書批准の前提として、地球温暖化対策の法案を今国会に上程しようとしております。政府がようやく議定書批准の態度を決めたのは、一歩前進ではありますが、法案に盛り込まれる内容は、全く実効性の疑わしい対策ばかりのようであります。
 知事が本会議の施政方針で打ち出した「地球温暖化阻止 東京作戦」の実施は、まさしく国に地球温暖化対策の抜本的な強化を求めるものであり、時宜にかなったものと評価をいたします。私たちは、知事がこの作戦を強力に展開し、温暖化対策の強化に弱腰な国を追い詰めるとともに、東京都自身においても、一層先駆的な施策を実施していくよう期待するものであります。
 まず最初に、作戦の開始に当たっての知事の決意を伺います。
 さて、温暖化対策を進めるには、二酸化炭素の排出量が特に多い業務部門と自動車部門、そして家庭部門での対策を重点的に進めていく必要があります。
 業務部門における二酸化炭素の抑制は、環境確保条例に基づき新たに制度化した建築物環境計画書と地球温暖化対策計画書の取り組みを、二〇〇二年度から本格実施することになっております。しかし、二酸化炭素削減目標を達成するには、業務部門への取り組みをさらに大胆に行っていかねばなりません。
 私は、省エネルギー基準の義務化や対象規模の拡大はもとより、業務部門に起因する二酸化炭素の排出量を一層効果的に抑制する新たな仕組みづくりについても、積極的に取り組んでいくべきと考えます。
 東京作戦の政策提案の最初にも、オフィスなど大規模事業所への二酸化炭素排出削減義務の導入が挙げられているところであり、業務部門の割合が高い都においては、国に対策強化を求めるだけでなく、特に踏み込んだ取り組みが必要と考えますが、見解を伺います。
 運輸部門においては、単体規制や交通需要マネジメント、TDMなどの自動車公害対策を進めることは当然でありますが、加えて私は、都市づくりの中で自動車の使用を抑制させていくべきだと考えます。
 例えば、総合設計や特定街区で建築されたり、環境アセスメントの対象となるような一定規模以上の建築物は、自動車交通に与える影響を把握していますが、それ以外の都市開発などについては、多くの交通需要を発生させるにもかかわらず、それを抑制させるような取り組みはなされておりません。
 こうした開発によって自動車交通量が大幅に増加するおそれのある場合には、公共交通機関の利用促進など交通量の抑制を促すことが必要であり、その仕組みを検討すべきと考えます。
 東京都はこれまで、交通需要マネジメント対策の中心課題として、ロードプライシングの検討を進めてまいりましたが、欧米各国で進められている交通量抑制政策は、ロードプライシングだけでなく、自動車使用を抑制する土地利用のあり方のコントロールにまで及んでいます。都においては、こうした欧米の施策も視野に入れつつ、長期的、総合的なTDM施策の検討を進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、業務部門や自動車部門に次いで二酸化炭素排出量が多いのは、家庭部門であります。家庭部門での取り組みを進めていくには、私たち個人個人のライフスタイルを見直していくことももちろんですが、私たちの住まいにおいて、壁や窓などの断熱性を向上させたり、太陽光発電などを利用したり、設備の省エネ化を進めたりすることも必要なのではないでしょうか。
 既に住宅局では、環境共生住宅推進協議会を設置し、地球環境に配慮した住宅の普及を進めているところですが、どちらかというと戸建て住宅向けへの普及、支援にとどまり、集合住宅への取り組みや、家電メーカーを巻き込んだ省エネ型住宅の創造などというところまでは至っておりません。
 先日、住宅マスタープランの策定がされましたが、省エネルギーの観点からも、住宅について、東京都が大胆に音頭をとって、地球環境の配慮に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、東京におけるヒートアイランド対策を積極的に進めることは、真夏日における冷房器具の消費電力の削減などに大きく寄与するものと考えます。
 ヒートアイランド対策については、我が会派の和田宗春政調会長が欧州まで視察に行ってきたところであり、詳しくは予算特別委員会の議論にゆだねますが、もはや環境問題は、政策の転換を大胆に図らなければ、今後も改善される見込みがないのではないかということであります。
 私たちは、都市再生プロジェクトに見られるような都市開発を進めるのであれば、それ以上に、都市計画の諸制度の中で、風の道の確保や保水性舗装、緑のネットワークなどについて明確に位置づけるべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、温室効果ガスの一つであるフロン対策に関して伺います。
 「地球温暖化阻止 東京作戦」の五つの政策提案が対象にしているのは、二酸化炭素の排出量抑制でありますが、地球温暖化の原因となる温室効果ガスには、ほかにもフロンなど五物質があります。
 省エネルギーの推進などにより二酸化炭素の排出抑制を進めるとともに、ほかの温室効果ガスについても、その排出実態を明らかにし、フロンなどに関する対策の方向を示していくべきだと思いますが、見解を伺います。
 次に、下水道事業におけるエネルギー施策について伺います。
 下水道事業が、都市の基盤施設として、良好な生活環境を確保する上からも不可欠なものであることは十分承知しております。しかしながら、毎日発生する下水を処理するため、年間百億円を上回る大量の電力を消費しているとあっては、そのコスト削減を問題にせざるを得ないのであります。
 先日、ある大手スーパーが、光熱費の削減をねらい、ナトリウム硫黄電池を本格導入するとの新聞報道がありました。このナトリウム硫黄電池は、割安な夜間電力を使って昼間に放電するというもので、一店当たり一三%の電気代の節約になると報じられておりました。
 昨年、下水道局が初めて実用導入し、それが引き金となって、新聞報道にあったスーパーや工場などに拡大していることは承知しておりますが、下水道局の場合、実際にどのくらい電気料金が節約できるのか、また、今後の導入計画はどうなっているのか、お示しをいただきたいと思います。
 さて、下水道は、膨大なエネルギーを消費する一方で、未利用エネルギーとしての可能性を持っていると聞きますが、その利用についてどのように取り組んでいるのか、また、いかなる効果を期待しているのかを伺います。
 下水道事業は、水環境を守る一方で、東京都の事務事業活動に伴う地球温暖化ガスの四六%を排出しているとの報告を受けていますが、その排出量削減に向けてどのように取り組んでいるのか、また、率先して地球温暖化対策に取り組むべきと考えますが、決意のほどをお聞かせください。
 次に、水道事業について伺います。
 生命の存続という広義な立場からすると、人類にとっての二十一世紀の最大のテーマの一つに水問題があることは、知事もご案内のことと思います。
 地球温暖化により、世界の水不足が進行し、二十年後には約五十億人が水飢饉に陥り、また、水があったとしても飲料にたえられない水しかないという状況にさらされ、水戦争の勃発を指摘する研究者さえいると聞いております。
 そこでまず、世界と東京の水事情についてどのように認識しているか、知事の率直な見解をお聞きいたします。
 さて、この四月から施行されることになっている改正された水道法についてでありますが、今回の法改正では、これまで法規制の及ばなかった小規模の受水タンク、すなわち貯水槽水道の管理を充実させるため、水道事業者としての積極的関与を初めて求めていると思います。
 そこで伺うのですが、今後、水道水の安全確保に向けての総合的な取り組みをどのように進めていくのか、基本的な方針をお示しいただきたいと思います。
 さらに、今回の改正で創設された、水道業務の第三者委託制度についてであります。
 これは、管理体制が十分でない中小規模の事業体を念頭に置いてのものと理解しておりますが、大規模事業者である東京都においても、法改正の趣旨からすれば、より積極的に民間活力を活用しろということだと思うのであります。その先には当然、水道事業のさまざまな民営化の議論があります。そのことを踏まえて、今後、企業体としてどのような方針で経営していくつもりなのか、基本的な考え方を伺います。
 次に、雇用の確保と産業振興について伺います。
 十二月の全国の完全失業率は五・六%を記録し、昨年十月から十二月の東京都の失業率も四・九%となっています。小泉政権のもとでの構造改革が遅々として進まず、景気対策や雇用対策を講じていながらも、未来に光明が見出せない中で、政労使においては、雇用の確保に向けてワークシェアリングの議論が始まっています。
 地方自治体においても、ことしに入って、北海道や青森県、静岡県などがワークシェアリング導入に向けた取り組みを始めており、阪神・淡路大震災のあった兵庫県では、一九九九年に連合兵庫と兵庫県経営者協会とによる兵庫型ワークシェアリングを導入し、既に県内の二五%の企業がワークシェアリングを実施しているとの調査もあります。
 東京都においても、これ以上の失業者をふやさないための取り組みとして、緊急避難型のワークシェアリングの導入に向けて検討すべきと考えますが、見解を伺います。
 ワークシェアリングは、現在、政労使において、失業者をふやさないための緊急避難的なものと、将来の多様な働き方を模索する中長期型のものとに分かれて議論がなされているところでありますが、導入に向けての大きな障壁となっているのが、日本とヨーロッパ各国とにおける労働慣行の違いであります。
 ワークシェアリングの導入のためには、実労働時間の短縮と均等待遇原則の確立を進めることが何よりも重要なのですが、それ以前に、日本の労働の実態を見たときに、サービス残業の解消や有給休暇の完全取得など、当然のことがなされておりません。また、特にパートタイム労働者や派遣労働者においては、正規職員との待遇の格差が指摘されていると同時に、厚生労働省が定めているパート労働指針さえも無視した労働慣行がいまだ多くの企業で見られているのであります。
 労働時間を五%短縮し、パート賃金を一%アップすれば、雇用者数は百五十万人ふえると試算されている中で、東京都としても、少なくとも法令や指針で定めたとおりの雇用・就業環境が実現するよう積極的に取り組むべきと思いますが、見解を伺います。
 私たちは、雇用対策の一つとしてNPOの活性化を主張してまいりました。二〇〇〇年度におけるNPOの経済効果は、国内生産額で六千九百四十一億円、雇用面では、NPO事務局の常勤・非常勤職員で十七万六千人に達しているという分析もあり、私たちもその有用性を改めて認識したところであります。
 NPO活動の活性化により、東京の経済活動にも雇用面でもよい結果をもたらすとともに、行政にない機動的できめの細かな活動によって、私たちの暮らしがより一層豊かになるものと期待をされます。
 私たちの主張により、東京都はNPOに対する法人都民税を免除しているところですが、他県では、これに加えて、不動産取得税や自動車取得税を免除しているところであります。
 また、私の地元杉並区では、この二月の区議会で、区でつくる基金に一度寄附をして、そこから寄附者が指定するNPOへ助成の形でお金を送ることで、寄附者が優遇税制を受けられる制度を提案しています。
 国におけるNPOへの税制支援が進まないという中にあって、東京都としても、人材的な支援はもちろんですが、独自のNPO支援策に取り組むべきではないかと思いますが、見解を伺います。
 次に、知事が施政方針で力説をされていた観光産業の振興についてでありますが、私も全く同感であります。
 東京の魅力を世界の人々に知ってもらうための各種セールスの積極的な展開、さらなる観光資源の開発は当然のことですが、何よりも急がなければならないのが受け入れ体制の整備であると思います。私は、観光都市東京の弱点は、この受け入れ体制にあると思うのであります。特に都内交通の煩雑さはネックになると思われます。
 確かに、都内の交通ネットワークは、JR、営団地下鉄、都営地下鉄、私鉄が高度な鉄道ネットワークを形成し、さらに、バスが鉄道を補完すべく網の目状に走っており、非常に便利になっている一方で、切符の買いかえなど余りにも細か過ぎ、複雑で、東京に住んでいる我々でも戸惑うことがあります。少なくとも外国からの旅行者をこの煩雑さから解放しなければ、観光都市は標榜できないと思います。東京都が東京構想二〇〇〇で掲げている都内交通ネットワークのシームレス化の促進は、その意味で早急に具現化を図るべきと思いますが、一朝一夕にはいかない問題のあることも承知しています。
 一方で、ことしのワールドカップサッカー大会の開催地の一つである日本にも、多くの外国人の来訪が予想され、東京にも多くの外国人が立ち寄る想定がされていることを知事も述べられました。
 そこで提案なのですが、とりあえずこのワールドカップサッカーの期間だけでも、外国からの旅行者を対象にした、一枚のカードで都内の鉄道やバスが利用できる、いわば東京交通シームレスカードを発行してはどうかと提案するものですが、いかがでしょうか、所見を伺います。
 東京の観光振興の面では期待の持てるワールドカップサッカー大会ですが、治安の面ではよほどの準備が必要と思われます。いうまでもなく、大会のたびに暴動まがいの騒動を起こしているフーリガンの大挙しての来日が予想されるからであります。
 聞くところによりますと、フーリガンの本拠といわれている英国マンチェスターでは、二百人から三百人いるといわれているフーリガンの出国許可を発行しない方向で検討を進めていましたが、法制度的に出国をとめられるのは少数で、あとは現地での対応に期待するしかないとの結論になった模様であります。
 東京では試合がないからと安心はできないと思うのであります。ワールドカップサッカー大会を目的に来日するほとんどの人が東京に立ち寄ると想定し、また、最悪の事態を視野に入れての対策が必要と思われます。フーリガン対策を含め、どのような準備を進めているのか、忌憚のないところをお聞かせください。
 次に、治安対策についてお伺いします。
 今月一日に発表された都政モニターアンケートで、最近の東京の防犯や治安に対して、アンケートに回答した人の九六%が不安を感じると答えていることを知事はどう受けとめているのか、まずお聞かせください。
 なぜこのような質問をするかとお思いでしょうが、さきの施政方針では、一番肝心な都民の日常生活に密着した危機管理について、知事は基本姿勢を述べていますが、それを踏まえた対策がぜひ必要ではないかと考えているからであります。
 ここ数年、都内の犯罪が増加の一途をたどっており、留置場問題を含め、警視庁を中心に東京都がその対策に苦慮していることは十分承知をしております。その上であえて申し上げますが、発生した犯罪に対処していくことは当然のこと、それ以上に、犯罪発生の抑止に力を注ぐべきと思うのであります。
 かつて日本にあった安全神話は、世界に類を見ない、地域社会に密着した交番制度によるところが大きかったと思います。しかし、現状を招いた大きな要因の一つは、この交番の機能の低下にあるのではないかとも思います。都市における地域社会の変質を考えるならば、警視総監が交番勤務をしていた当時に戻すすべはないのかもしれませんが、それでも努力を求めるものであります。
 発表されたアンケート結果では、治安に対する不安から、都民の八五%が留置場の拡充を求めていると結びつけていますが、設問が誘導的にあり過ぎるという点をさておいても、余りにも恣意的であります。このアンケート結果で最も刮目すべきは、防犯・治安対策について、交番の充実、パトロールの強化を求めるものが五十九件と最も多かったという点であります。都民が求めているのは、犯罪者への対策以前に、犯罪発生を抑止する対策の強化にあることは明らかです。このことを再度申し上げ、警視総監の所見と決意のほどをお聞かせ願います。
 以上で、都議会民主党を代表しての質問を終わります。知事並びに関係局長の誠意あるご答弁をお願いいたします。
 どうもありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田中良議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、小泉内閣の経済対策についてでありますが、先般の内閣支持・不支持のアンケートにも、多くの国民が、どうも具体性がないという不満をそろそろ漏らし出したのはむべなるかなという感じがいたします。
 かといって、小泉内閣を批判する野党、あるいは自民党の中の抵抗勢力というんですか、これにも具体案があるようでない。つまり代案のないののしり合いほど意味のないものはなくて、今日の国会の議論を見ていますと、せいぜい都議会を見習ったらいいんじゃないかという気がいたしますが、私は、基本的に今、国政レベルの議論に足りないものは、一つの正確な時代認識じゃないかと思うんです。
 特に経済というものに関して申しますと、やっぱり時代が明らかに本質的に変わりまして、規格多量生産型の経済社会というのは、もうとっくに過ぎ去ったもので、先進国に求められているのは、堺屋太一さんの表現でいえば、知価といいましょうか、知識の価値、知識集約型、つまり手にとれない、目に見えないものに実は大きな価値があるというような、そういう認識が経済の基本政策の中に欠けているという気がいたします。
 いずれしろ、我が国は、金融資本なり技術力なり、まだまだ総体的に世界の国々に比べてすぐれた力というものがありながら、それが活用され得ない、そういう恨みが随所にありまして、必要なことは、従来の公共事業を通じて景気を持ち上げるというような非常に陳腐な方法でもなく、また、ただ抽象的な議論ではなくて、やはり具体性を加味した議論といいましょうか、政策というものに関しての論争が、初めて国民に期待を育てていくのではないかという気がいたしてなりません。
 いろいろ調べてみますと、今の総理の周りのブレーンというのは、どうも依然として大蔵省出身の人が多いようでありまして、大蔵官僚が多いようでありまして、ここら辺は、今の政府から出てくる政策の限界というものを暗示しているんじゃないかなという気がいたしてなりません。
 次いで、アジアにおける日本の役割や姿勢についてでありますが、私は、アメリカという、世界全体に非常に影響力を持つ、日本とも重要な関係を持つ世界一の経済大国の新しい政府が、アジアに対する認識を明らかに中国を中心にしてクリントン時代とは変えたということは、非常に大事だと思います。
 それは、クリントンは橋本内閣時代にも、中国の軍事国家としての危険性というものを十分認識して、日本に新しい安保の路線の変更を強要しました。それはそれで是とすべきでありましょうが、同時に、ダブルスタンダードで、市場としての中国というものを非常に意識して、日本無視をあえてしたような挙動がありましたが、共和党政権の明らかな違いは、このアジアにおいて、現況の姿勢を示す中国がアジアのハブとなることを決して好んでいないと。これは、日本にとっての強力な競争相手として台頭してきている中国というものを意識した上で、日本にとっては友好国の、日本にとって非常に好ましい一つのスタンスではないかと思います。そういうものも十分意識して、踏まえながら、私たちは、やはりアジアとの積極的な関係というものを開拓していく必要がある。
 私は、議員時代からかねがねいってきたことでありますけども、日本の持っている金融資産というものを活用して、アジアに対する基金を設け、それによってアジアとの関係を実質的に構築していく、そういったことが、アメリカの妨害で随分阻害されましたし、それらしきものはできておりますが、その金を使うのにアメリカの許可が要るみたいなおかしな構造になっておりますけれども、もっともっとポジティブな、日本が姿勢として、明らかにアジアに向かって、いい意味で踏み出すという、そういう関係を、アジアのために、日本は、またみずからのためにも構築していくべきではないかと思っております。
 いずれにしろ、アメリカと日本のかかわりというのは非常に不可欠なものでありましょうが、しかし、アジアに関する戦略というものについても、日本の主張があり得なかったということは残念でありまして、例えば、日本の経済の衰退の一つの要因であります金融政策のそご、このさらに一つの要因であります金利というものを、一体、従来だれが決めてきたかというと、これは日本のイニシアチブではなしに、明らかにアメリカが戦略的に決めてきた。こういう屈辱的関係というのは、私はやはり、政府が意識を持って淘汰すべきものだと思います。
 次いで、広域行政の新しい受け皿についてでありますが、既に報告もいたしましたけども、この七都県市で共同作業を行おうということで、大気汚染対策や産業廃棄物対策などを東京が主唱しまして、今、そういった説明と連絡をとり合っておりますけど、同時にまた、法定外目的税の一斉導入、その一つは、大型ディーゼル車高速道路利用税の共同実施とか、産業廃棄物税の共同実施とか、その他こういった具体的な試みを、私は、七都県市が一種の広域行政のはしりとして行っていくことで、云々されてから久しい、しかし実現にはほど遠い道州制などというものも、やがては現実性を帯びてくるのではないかという気がいたします。
 いずれにしろ、国はずうたいが大き過ぎるのか、この首都圏という、国家にとって致命的な頭脳部分、心臓部分に対する配慮が及びませんで、私たちは、やはりそういう国家の致命的な機能を担う地方自治体の集合体として、この首都圏の七都県市が積極的、具体的に政策を試み、実を上げることで、私は、日本における広域行政というものが確立され、さらにその行政区分というものが歴史的に見直されて、いささか百年河清を待つ話になるかもしれませんが、しかし、何かそのきっかけになることをやらなければ、明治時代から続いている今日の非常に能率の悪い、いたずらに細分化された日本の行政区分というものは淘汰されてこないのではないかと思います。
 次いで、七都県市代表の内閣への登用でありますけれども、地方自治体の代表が内閣という国の機関の一部に入るということは、なかなか困難だと思いますし、また、ソウルの市長というものは、たしか一種の勅任官でありまして、選挙で選ばれた市長ではないんじゃないでしょうか。そこはつまびらかにいたしませんが、いずれにしろ、向こうの国と事情も違いますけども、私は、小渕内閣のときに強く建言しまして、内閣にも都市の再生に関する組織もできました。森内閣に至って、こういった内閣府の中に都市再生本部が設けられまして、現にそこに東京から局長クラスの成田君が事務局次長として出向しております。
 ついでに申しますと、出ていくときに、ミイラとりがミイラにならないように訓令いたしましたら、今のところ大丈夫ですといっていましたが、この間の報告では、聞きしにまさるライン化で、東京など物じゃないと、国のライン化というのは、本当に徹底して能率が悪いですなと。そういう認識を持って帰ってくることも、東京都の幹部として大事な大事な認識になっていくのではないかと思います。
 次いで、首都移転に関する問題でありますが、実は先般も、二度目に特別委員会に呼ばれて所信を述べました。こちらの認識違いで、どうも調べる限り、私以外の参考人にも、一人か二人反対派がいたようですが、ほとんどが賛成派で、私がこういう特別委員会の運営そのものが非常に好ましくないといったら、余計なことをいうなとしかられました。そのとき、自民党の委員の松本さんという人が、官邸が四月にでき上がり、数千億かけて防衛庁が市ヶ谷に移り、外務省も耐震構造のために、今、移転して仮社屋で、大修復をする、聞けば、議員会館も狭くなったので建て直し云々というときに、首都移転というものを論ずることの整合性というのはどういうことなんでしょうかといったら、寂として声がありませんでしたが、いずれにしろ、五月には一点に絞って、それも非常におかしな運営で、面倒くさいから、今残っている三候補地と東京を比べると。これは東京にとって非常に好ましくない方法論でありますから、それは私、抗議して取り消させました。
 五月に、選び出された一つの候補地と東京と、要するに比較考量するということですが、そこら辺でやっぱり、この経済状況を眺めて、総理大臣が見識で、廃止といわないまでも凍結というぐらいの宣言をすべきではないかと私は思いますし、近々また総理と会う機会がありますので、これは強く建言をいたします。
 次いで、職員給与の削減措置の問題でありますが、都民の一方の代表であります都議会の決議や都議会議員からの条例提案については、その重みは真摯に受けとめております。
 労使関係の最高責任者は私でありまして、この問題について、先ほど申しました今定例会の期間中には、何らかの方策を都議会に示したいと考えております。どうかそれまでちょっとお待ちいただきたいんですが、いずれにしろ、都政を混乱なく運営していくことも私の責務でありまして、そのためにも労使の信頼関係は重要であると考えておりまして、先ほど申しましたが、私も自分で、局所局所で、今度は交渉の場に出るべきときは出て、決めるべきときは速やかに決断をする覚悟で事の解決に当たっていくつもりでございます。
 次いで、東京における消費者行政の意義についてでありますが、近年、消費者を取り巻く環境は、規制緩和の進展、経済社会のIT化、グローバル化などを反映して、大きく変化しております。
 特に、大消費地である東京においては、さまざまな悪質商法等による消費者被害や、全国流通している商品の問題が顕在化しております。この観点から、悪質事業者名の公表や、遺伝子組みかえ商品のマーク表示などに積極的に取り組んでまいりましたし、今定例会にも消費生活条例の改正などを提出しております。
 都における消費者行政は、消費者の不安に迅速に、また、かつ的確に対応し、安全で安心できる消費者生活の基盤の確保を図るためにも、消費者の立場に立った施策を、全国に先駆けて展開していく責務もあると思っております。国に対しても必要な法整備などについて提案し、要求してまいります。
 先般の狂牛病問題のときなども、副知事が即座に現場に行きまして、都独自の対処をいたしましたことは、目立たぬことかもしれませんけど、私は評価されるべきものだと思っておりますし、今後もその姿勢を変えずに行っていきたいと思います。
 次いで、「地球温暖化阻止 東京作戦」についてでありますが、我が国の温暖化対策の立ちおくれは非常に甚だしくて、もはや座視できる状況ではございません。今回、都が提案しました五つの政策は、京都議定書の目標達成を真剣に考えるならば、本来は国が自分で立案して、いい出して実施すべき当然の施策だと思います。
 しかし、残念ながらその挙動がないために、都は活発な議論を広げ、国民的なレベルで機運を盛り上げ、国に提案の実施を迫るとともに、東京においても、二酸化炭素排出量の抑制に向けた独自の強い行動を展開していきたいと思っております。
 先般、ある仲間が、石原さんの気持ちはわかるけども、いささかドンキホーテじゃないかといわれましたが、ある人から見ればそう見られるかもしれませんが、先般、私の同世代のすぐれた作家でもありました開高健の言葉を引きましたけど、東京もまた開高の言葉に倣って、その志を受け継ぎながら、あす地球が滅びるとも、東京はきょうリンゴの木を植えていきたいと思っております。
 次いで、世界と東京の水事情についてでありますが、絶対的な水資源不足、不衛生な水等、世界的な水飢饉は憂慮すべき事態と考えております。
 東京では、平常時は一定の量が確保されておりますが、渇水時には、世界の首都圏に比べれば、利水安全度は脆弱であると思います。このため、引き続き多様な水源の確保が必要であると思います。
 しかし、世界の主要都市に比べて、日本の水は、一応、蛇口から直接飲むことができます。パリなどはこれは不可能でありますが、それはそれで東京が自負していいことだとも思っております。
 次いで、治安に関する都政モニターアンケートの結果についてでありますが、これはまさに安全神話が過去のものとなったということを突きつけたデータであると思いますし、知事であり、同時に都民の一人としても非常に強い衝撃を受けました。私が日々感じてきたことを、都民もまた同じ考えでとらえているということが確認されたわけで、これを真摯に受けとめて、積極的な対処をしなくてはならぬと思っております。
 国にとってはもちろん、地方自治体にとっても、住民の生命、財産を守ることは最優先で取り組むべき課題でありまして、東京の治安の維持には、就任以来、強い問題意識を持って取り組んできたつもりでもございます。ぼったくり条例の制定であるとか、ピッキング対策とか、留置場の整備であるとか、警察官のわずかでありますけど増員とか、これからもできる限りのことをやっていきたいと思っております。
 さらに、田中さんが先ほど犯罪の抑止ということをいわれましたが、これはきめ細かく、しかも大きなこともやらなくてはなりませんけども、私は都知事としても、仲間の国会議員を通じて政府にも再三申し込んでいることでありますが、ひとつ有力な地方自治体である東京の都民の代表である皆さんにも声をそろえていただきたいんですけども、非常にずさんな、日本の犯罪に非常に余計な計数をかけてそれを増大し、悪質化している不法入国の外国人の管理というものは、やっぱり強く行わなきゃならないと思います。本来はこれは、かつての内務省、警察がやっていたことでありますが、今、法務省がそれを担当していて、余りすぐれた人材が積極的な意思を持ってこれに当たっていると思えない。
 これは、やはり、日本が法治国家であり、こういう状況というものが到来している今、私は、入国管理は警察が担当して、犯罪の抑止に直接つなげるということが国家的に必要だと思います。都議会の方もその認識を持っていただいて、ひとつ東京都の主張をバックアップしていただきたいと思うわけであります。
 その他の質問については、警視総監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監野田健君登壇〕

○警視総監(野田健君) ワールドカップサッカー大会の対策についてでありますが、昨二十五日、全国警察本部長会議が開催され、私自身出席して、種々協議、打ち合わせをしてまいりました。
 過去の大会において、フーリガンによる各種不法事案が多数発生しており、今回は、特に国際テロの発生が懸念される、極めて厳重な警戒が必要であるという認識に立っております。
 警視庁としては、都内で試合はないものの、大会本部の設置、外国要人や選手、サポーター等のキャンプ、宿泊や立ち寄りが予想され、また、数道県に応援派遣を求められることが予想されるというような状況にあります。
 警視庁では、こうした情勢を受けまして、昨年十二月に警備対策室を設置して、事前情報の収集や実態把握に努めるとともに、防圧、検挙に必要な透明防護盾等の新装備資器材の配備や各種訓練の強化を図るなど、諸施策を推進しつつあります。
 今後も、警察庁等の関係省庁を初め、大会関係者、外国の治安機関等と緊密な連携を図りつつ、不法事案の未然防止と徹底した取り締まりができる体制を確立して、警戒警備の万全を期す所存であります。
 次に、治安対策についてでありますが、交番の充実やパトロールの強化が都民の切実な要望であるということを十分承知しております。
 警視庁では、緊急通報としては、交番への駆け込み泣訴よりも、一一〇番電話の方が有効な場合が多いということについても周知を図りながら、一方、地域の方々の要望を的確に把握、分析して、必要に応じた交番の開所や機動隊の多角的運用によるパトロールの強化、さらには、一層地域に密着した活動ができる都市型駐在所の増設などを図っております。
 また、交番に警察官が不在であっても適切な対応ができるように、ハイテク交番の整備を推進するとともに、元警察官を主要な交番に交番相談員として配置しているほか、元警察職員のボランティア活動として、警察官の目が行き届かないところを見て歩くシルバーポリス制度を導入するなど、各種対策を推進しております。
 加えて、犯罪防止に配意した共同住宅、道路、公園等の設計の促進、さらに、街頭防犯カメラシステムや緊急通報装置付防犯灯などの防犯設備の整備に努めるなど、犯罪被害に遭いにくい安全・安心まちづくりに積極的に取り組んでいるところであります。
 昨年、ピッキングという用具を使用した侵入窃盗を一昨年の六割減に抑え込むことに成功したように、今後も都民の視点に立って、犯罪発生を抑止するさまざまな対策を講じ、都民生活の安全確保に努めてまいります。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 市町村合併についての都の取り組みの考え方についてでございます。
 地方分権が進展する中で、市町村が行財政運営の効率化を図りつつ、広域的な行政需要に対応していく上で、合併は大きな効果があると考えております。
 このため、都といたしましては、昨年末に知事を本部長とする東京都市町村合併支援本部を設置いたしまして、全庁的な立場から支援の体制を整えました。
 今後とも、住民や市町村の間で合併に対する機運が高まるよう、普及啓発に努めるとともに、市町村における自主的な合併を積極的に支援してまいります。
 次に、特別区の合併でございます。
 特別区の合併に当たりましては、今後、特別区がどのような規模や権限などを有したらよいかを考慮するとともに、大都市行政の一体性、統一性の確保などにも留意する必要があると考えております。基本的には、特別区の合併は、こうした点を踏まえながら、特別区みずからが住民の意思を尊重し、自主的、主体的に考え、取り組むべき課題であります。
 現在、都といたしましては、特別区が検討を進めていく際に必要な情報を提供するため、特別区の合併のあり方などについて調査を行っております。今後、これらの調査結果を検討し、具体的な提案を行ってまいります。
   〔知事本部長田原和道君登壇〕

○知事本部長(田原和道君) 行政評価制度の確立についてのご質問でございます。
 都の評価制度におきましては、まず評価結果を広く公表するとともに、その後も、事業所管局がどのように見直し、それから改善を行ったかにつきまして進行管理を行います。その内容を公表することとしております。
 また、評価方法につきましては、これまでの試行の結果を踏まえまして、今年度からの本格実施の際に、評価基準をより明確にするなど改善をしてきたところでございますが、ご指摘のバランスシートの活用などによりまして、さらに充実をしてまいります。
 今後も改善を図りながら、事業の見直しと再構築に的確に反映できる制度としてまいります。
   〔財務局長安樂進君登壇〕

○財務局長(安樂進君) 使用料、手数料の改定についてでございますが、使用料、手数料の改定に当たりましては、お話にありましたように、その必要性などについて都民の十分な理解を得ることが大変大事なことと考えております。
 このため、十四年度予算案の発表に当たりましては、受益者負担の基本的な考え方や、使用料、手数料の改定の理由などとあわせて、今回新たに、行政サービスを提供するためにかかっている費用などを明らかにし、実際の使用料、手数料の額との間に大きな開きが生じていることなども明らかにいたしました。
 こうした情報は、今後ともインターネットや広報紙などを通じて広く都民に提供し、理解を得ていきたいと思っております。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 保健医療関連で三点のご質問にお答えいたします。
 まず、食品行政の一体的取り組みについてでありますが、都民の食生活の安全のためには、食品の生産、流通、消費の各段階で、適正な表示や安全確保のための対策をとる必要があります。
 今回の雪印食品事件においても、都は、いち早く営業者への立入調査を行うとともに、関係部局が連携して、食肉の適正表示についての全都調査を実施しております。
 今後、食品医薬品安全部を設置し、危機管理能力を一層強化するとともに、食品安全行政連絡会を通じて、庁内関係部局間の連携を深めるなど、総合的な食品の安全確保に努めてまいります。
 次に、都立病院改革についてでありますが、都立病院改革は、単に都の財政負担の軽減を目的としたものではなく、再編整備を実現し、医療機能を集約することにより、専門性が高く、より質の高い医療を効果的、効率的に提供するとともに、他の医療機関とのネットワークの強化により、患者のさまざまな疾患に対して、最も適切な医療が提供できる体制を整備することを目的としております。
 この改革により、患者中心の医療の実現に向けて、都民に対するより一層の医療サービスの向上が可能になると確信しております。
 次に、東京ERについてでありますが、東京ER墨東の開設以来、これまでをはるかに上回る救急患者が来院しております。このため、本来、地域の医療機関で対応すべき患者に対する医療連携や、ERの役割について都民への周知の徹底など、さらに改善していかなければならない課題があると考えております。
 今後、東京ER墨東のこれまでの運用実績を十分に精査した上で、体制の整備も含め、都民サービスの向上に向けて適切に対応してまいります。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 消費者行政に関連して二点、NPOに関連して一点お答えいたします。
 まず、牛肉のトレーサビリティーについてでありますが、消費者が感じている牛肉の安全や表示への不安を解消するためには、小売段階でも、その原産地や生産履歴について正確な情報を知ることができる全国的な仕組みができることが不可欠であります。
 しかし、現在、国が牛肉などの安全性を確保する観点から実施に向けて準備を進めているトレーサビリティーは、牛の生産からと畜までの仕組みにとどまっております。そのため、消費者が店頭で牛肉の履歴などを確認できるシステムを確立するよう、国に提案、要求してまいります。
 次に、消費生活条例の主要な改正点及び期待される効果についてでありますが、条例改正の主な点は、第一に、消費者はみずからの消費行動が市場に与える影響を自覚し、主体的に行動することが求められているとして、前文に消費者の役割を明示したこと。第二に、インターネット取引などの新たな取引形態や消費者契約法などの法整備に対応して、不適正取引行為の禁止規定の追加、改正を行ったこと。第三に、不適正な取引行為などを迅速に是正するため、悪質事業者などを勧告、公表する手続規定を簡素化したこと。第四に、被害を受けた消費者を救済する機能をより充実するため、消費生活相談、被害救済委員会の役割を明確化したことなどであります。
 これにより、市場メカニズムが重視される社会において、ルールを逸脱して不適正な事業行為を行う事業者に対しては、従来より、一層厳正かつ迅速、的確な行政措置をとることが可能となり、消費者が安心して取引ができる環境の整備が進展すると考えております。
 次に、NPOへの支援策についてでありますが、都は、昨年八月、NPO等との協働の推進指針を策定し、協働の視点から事業の見直しを進めてまいりましたが、平成十三年度では、協働事業が前年度より三十事業増加し、百三十五事業となりました。今後も事業の増加が見込まれ、協働の面からも、NPOの活動の場が着実に拡大しております。
 また、都は、これまでも各種情報提供、相談、交流の場の提供など幅広い支援を行ってまいりましたが、今後さらに、経営管理能力向上のためのセミナーの開催や、会計、税務などの専門知識を持った人材の紹介など、活動基盤の強化を図るための支援を進めてまいります。
 さらに、NPOの組織や活動の安定性、透明性などを客観的に評価する仕組みを構築して、その活動を都民にわかりやすいものにし、寄附や融資が受けられやすくするなど、多様な支援に取り組んでまいります。
 あわせまして、今後も引き続き、公益性の高いNPO法人に対する税制優遇措置の拡大など、必要な働きかけを国に行ってまいります。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立福祉施設の改革についてでありますが、都が進める福祉改革におきましては、サービスの供給主体について、公立と社会福祉法人中心の閉鎖的な現状を改め、多様な事業主体に門戸を開き、相互の競い合いにより、質と量の両面でサービスの向上を図っていく方針であります。
 これまで都は、福祉施設の整備が不十分な時代を通じて、みずから施設を設置、運営してまいりましたが、現在では民間施設の整備が進み、都立施設のシェアは低くなっております。今後、都は、これまでのサービス提供者としての役割を見直し、福祉サービスのインフラ整備など福祉水準全体の向上を図ることに重点を移すこととし、民間の力を積極的に活用しながら都立福祉施設の抜本的な改革を進めてまいります。
 また、この改革の過程におきましては、民間施設のモデルとなるよう、引き続き運営内容の向上を図るとともに、その技術やノウハウを民間施設に適切に移転し、東京の福祉水準の向上につなげていくことが重要と考えております。
 次に、児童相談所の充実についてでありますが、児童虐待につきましては、児童相談所と地域の関係機関が一体となって、迅速かつ総合的に取り組んでいくことが必要であります。
 このためには、まず、児童相談所の専門的機能の強化が重要であり、十四年度におきまして、長年の課題であった抜本的な見直しに着手する方針であります。児童福祉司の大幅な増員に加えて、任用制度の改善、チーム制の導入、特別研修の実施など、総合的に組織体制の充実、強化を図ってまいります。
 また、ご指摘のとおり、児童相談所と密接に連携した地域のネットワークによる総合的な対応が重要であり、子ども家庭支援センターの全区市町村への設置を図るとともに、来年度、新たに区市町村を中心とした虐待防止のネットワーク事業を創設し、積極的に対応してまいります。
   〔環境局長赤星經昭君登壇〕

○環境局長(赤星經昭君) 地球環境問題に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、業務部門を対象といたしました温暖化対策についてでございますが、東京の二酸化炭素排出量は、平成二年度から十年度までに六%の増加をいたしておりますが、業務部門では、これを上回る一〇%の増加となっております。中でも事務所ビルでは、三〇%という高い伸びを示しております。業務部門に対する強力な排出抑制対策が必要でございます。
 東京都は、環境確保条例において創設いたしました地球温暖化対策計画書制度の効果的な運用を行うため、対策指針の策定を現在進めており、近々に公表する予定でございます。この制度の実施によりまして、業務部門からの排出量の抑制を進めますとともに、さらに効果的な施策のあり方についても検討を行ってまいります。
 次に、総合的なTDM施策についてでございますが、自動車によります環境負荷を小さくするためには、自動車交通に過度に依存しない都市づくりが重要でございます。
 東京都では、TDM東京行動プランに基づきまして、自動車交通の円滑化や自動車使用の抑制などを推進しておりますが、本年一月に策定いたしました環境基本計画において、都や民間事業者が取り組むべき環境配慮指針を示し、その中に、施設計画や事業実施に関して、自動車への依存を減らす都市づくりの推進を掲げたところでございます。
 今後、指針が徹底されるよう努めますとともに、その取り組みの状況を踏まえ、都市づくりと関連する長期的かつ総合的なTDM施策についても検討を進めてまいります。
 最後に、二酸化炭素以外の温室効果ガスについてでございますが、都は、来年度、東京におきます温室効果ガスの排出実態を総合的に明らかにするため、温室効果ガス排出量総合調査の実施を予定しております。
 この調査の中では、二酸化炭素に加えまして、温暖化効果の著しい代替フロン、メタン、一酸化二窒素など、京都議定書において対象とされました六物質すべての排出量を把握することとしておりまして、その結果を踏まえ、対策の方向についても検討してまいります。
   〔住宅局長橋本勲君登壇〕

○住宅局長(橋本勲君) 住宅の省エネルギー化についてでございますが、その推進は地球環境の保全にとって重要であると認識しており、新たな住宅マスタープランにおきましても、環境に配慮した住まいづくりを重点施策に位置づけております。
 都はこれまでも、住宅性能表示制度や都心共同住宅供給事業等の活用により省エネルギー化を促進するとともに、環境に配慮した住宅ガイドブックの作成や環境共生住宅推進協議会の活動等を通じて、環境に配慮した住まいづくりの普及啓発に努めてまいりました。
 今後とも、国や関係団体と連携いたしまして、住宅の断熱気密化によるエネルギー消費の削減や自然エネルギーの導入など、省エネルギー化の一層の推進に努めてまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 都市再生における環境配慮についてのご質問にお答えします。
 都市再生は、民間開発を誘導することにより都市機能の高度化などを進め、それをてことして、我が国の経済の再生や国際競争力の回復を図ることを目的としております。
 開発に当たりましては、今後とも、水と緑のネットワークの形成、省資源、省エネルギー対策など環境にも配慮してまいります。
   〔下水道局長鈴木宏君登壇〕

○下水道局長(鈴木宏君) 下水道事業におけるエネルギー施策についての三点の質問にお答えいたします。
 まず、ナトリウム硫黄電池の導入による電力料金の節約効果と今後の導入計画についてでございますが、下水道局では、従来から、運転管理の工夫などにより電力料金の縮減に努めてきております。
 お話の昨年導入いたしました千キロワットのナトリウム硫黄電池では、建設費などの費用を差し引きましても、年間二千五百万円程度の電力料金の縮減効果がございます。この電池を下水道施設全体に拡大していき、五万キロワットに達した段階では、年間十二億円程度の縮減効果が見込まれております。
 今後の導入計画につきましては、十四年度に葛西処理場で増設するほか、他の処理場等でも、非常用発電設備の更新時期などに合わせて計画的に導入してまいります。
 次に、下水道の持つ未利用エネルギーの利用と効果についてでございますが、汚泥を処理する過程で発生する消化ガスによる発電や、下水の持つ熱を地域冷暖房事業に利用するなど、未利用エネルギーの活用に積極的に取り組んでいるところでございます。
 その効果の一例について申し上げますと、文京区後楽地区で実施しております、下水の持つ熱を利用した地域冷暖房事業では、ビルごとに冷暖房する場合と比較いたしまして、年間約二千七百トンの二酸化炭素などを削減する効果がございます。これは、自動車千百台が一年間に排出する二酸化炭素の量に匹敵するものでございます。
 最後に、地球温暖化ガスの排出量削減に向けた取り組みについてでございますが、汚泥を高温で焼却できる設備や、ナトリウム硫黄電池などを計画的に導入いたしますとともに、下水の持つ熱利用の拡大や、PFI手法を活用した汚泥消化ガス発電の導入など、未利用エネルギーの活用にも取り組んでまいります。
 また、さらなる未利用エネルギーの活用に向けて、下水が流下する際の落差から生じる水力エネルギーを低コストで回収する新技術の開発などにも努めてまいります。
 今後とも、これら施策を推進することで、二酸化炭素など温室効果ガスの排出削減に努め、地球温暖化対策に積極的に取り組んでまいります。
   〔水道局長飯嶋宣雄君登壇〕

○水道局長(飯嶋宣雄君) 水道事業についての二点の質問にお答えいたします。
 まず、水道水の安全確保に向けた取り組みについてでございますが、今回の水道法改正により、新たに規定された貯水槽水道につきましては、管理の向上に資するため、水道事業者として積極的に関与していくこととし、現在、具体的な取り組み内容について検討を行っております。
 近年、水質を取り巻く状況は複雑化、多様化しておりますが、安全でおいしい水を供給していくため、あらゆる努力を払っていく必要があります。このため、都民の期待にこたえ、水質管理体制の強化、高度浄水の順次導入、増圧直結給水の普及拡大なども含め、総合的な取り組みを推進してまいります。
 次に、今後の水道事業経営の基本的な考え方についてでございますが、これまでも、地方公営企業として都民サービスの向上と効率的な経営を確保するため、民間委託化を進めるとともに、PFIなどの新しい経営手法を導入し、民間の活力を積極的に活用してまいりました。
 今後とも、公共性と経済性との調和を図りながら、一層効率的な事業経営に邁進いたしますとともに、民営化も含め、より弾力的で効率性を重視した経営手法について、長期的な視点に立って幅広い角度から検討してまいります。
   〔産業労働局長浪越勝海君登壇〕

○産業労働局長(浪越勝海君) 雇用及び観光に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、ワークシェアリングについてでございますが、雇用失業情勢が厳しさを増している中、雇用の維持や創出のために、労働者が仕事を分かち合う方策として、民間企業などにおいて導入や検討がされていることは承知をしております。
 しかし、導入に際しては、労働時間や賃金に関する労使の合意形成が必要であること、労働生産性の低下を招かないようにすることなど、多くの課題がございます。
 都としては、今後の雇用失業情勢や国レベルでの政労使三者の検討会の動向を見守るとともに、都内企業におけるワークシェアリングに関する意向や実態を把握し、これらの課題を検討してまいります。
 次に、雇用、就業環境の適正化についてでございますが、サービス残業の解消や有給休暇の取得促進、パートタイム労働指針の遵守等によって雇用管理の適正化を図ることは、重要な課題であると認識をしております。
 これらの適正化についての指導、監督は、労働基準法等に基づき、直接国が行っておりますが、都としては、東京労働局との連携のもとで、労働相談での助言はもとより、使用者に対するセミナーや職場改善訪問事業、パートアドバイザー制度などによる普及啓発事業を行っております。
 今後とも、雇用、就業環境の一層の適正化に努めてまいります。
 最後に、ワールドカップ時における東京交通シームレスカードについてでございますが、ワールドカップサッカー大会の期間中は、海外から多くの観戦客が訪れることが予想され、シティーセールスの絶好の機会でもあります。東京を訪れる外国人旅行者が交通機関を気軽に利用できるようにするためには、共通乗車券の導入は効果的であります。
 このため、既に都は、宿泊業界や交通事業者等で構成している観光情報連絡会において、外国人旅行者が利用しやすい共通乗車券の発行を、JR東日本、営団地下鉄、都営地下鉄など、鉄道事業者に働きかけているところでございます。

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