平成十四年東京都議会会議録第一号

平成十四年二月二十日(水曜日)
 出席議員(百二十五名)
一番谷村 孝彦君
二番東村 邦浩君
三番中屋 文孝君
四番矢島 千秋君
五番高橋かずみ君
六番山加 朱美君
七番柿沢 未途君
八番後藤 雄一君
九番福士 敬子君
十番伊沢けい子君
十一番大西由紀子君
十二番青木 英二君
十三番初鹿 明博君
十四番山下 太郎君
十五番河野百合恵君
十六番長橋 桂一君
十七番小磯 善彦君
十八番野上じゅん子君
十九番ともとし春久君
二十番萩生田光一君
二十一番串田 克巳君
二十二番小美濃安弘君
二十三番吉原  修君
二十四番山田 忠昭君
二十五番林田  武君
二十六番野島 善司君
二十七番真鍋よしゆき君
二十八番中西 一善君
二十九番山口 文江君
三十番真木  茂君
三十一番花輪ともふみ君
三十二番酒井 大史君
三十三番清水ひで子君
三十四番かち佳代子君
三十五番小松 恭子君
三十六番織田 拓郎君
三十七番藤井  一君
三十八番東野 秀平君
三十九番中嶋 義雄君
四十番松原 忠義君
四十一番田代ひろし君
四十二番三宅 茂樹君
四十三番川井しげお君
四十四番いなば真一君
四十五番近藤やよい君
四十六番高島なおき君
四十七番鈴木 一光君
四十八番吉野 利明君
四十九番小礒  明君
五十番新井美沙子君
五十一番相川  博君
五十二番樋口ゆうこ君
五十三番富田 俊正君
五十四番福島 寿一君
五十五番大塚 隆朗君
五十六番古館 和憲君
五十七番松村 友昭君
五十八番丸茂 勇夫君
五十九番鈴木貫太郎君
六十番森田 安孝君
六十一番曽雌 久義君
六十二番石川 芳昭君
六十三番土持 正豊君
六十四番倉林 辰雄君
六十五番遠藤  衛君
六十六番秋田 一郎君
六十七番服部ゆくお君
六十八番臼井  孝君
六十九番北城 貞治君
七十番野田 和男君
七十一番三原 將嗣君
七十二番大西 英男君
七十三番宮崎  章君
七十四番執印真智子君
七十五番馬場 裕子君
七十六番西条 庄治君
七十七番土屋たかゆき君
七十八番河西のぶみ君
七十九番中村 明彦君
八十番大山とも子君
八十一番吉田 信夫君
八十二番曽根はじめ君
八十三番橋本辰二郎君
八十四番大木田 守君
八十五番前島信次郎君
八十六番桜井良之助君
八十七番新藤 義彦君
八十八番星野 篤功君
八十九番田島 和明君
九十番樺山 卓司君
九十一番古賀 俊昭君
九十二番山崎 孝明君
九十三番山本賢太郎君
九十四番花川与惣太君
九十五番立石 晴康君
九十七番小山 敏雄君
九十八番大河原雅子君
九十九番名取 憲彦君
百番藤川 隆則君
百一番小林 正則君
百二番林  知二君
百三番東ひろたか君
百四番池田 梅夫君
百五番渡辺 康信君
百六番木内 良明君
百七番石井 義修君
百八番中山 秀雄君
百九番藤井 富雄君
百十一番野村 有信君
百十二番比留間敏夫君
百十三番松本 文明君
百十四番桜井  武君
百十五番佐藤 裕彦君
百十六番川島 忠一君
百十七番矢部  一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番田中 晃三君
百二十一番藤田 愛子君
百二十二番尾崎 正一君
百二十三番田中  良君
百二十四番和田 宗春君
百二十五番坂口こうじ君
百二十六番木村 陽治君
百二十七番秋田かくお君

 欠席議員(二名)
九十六番 清原錬太郎君
百十番  大山  均君

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事青山 やすし君
副知事濱渦 武生君
出納長大塚 俊郎君
教育長横山 洋吉君
知事本部長田原 和道君
総務局長大関東支夫君
財務局長安樂  進君
警視総監野田  健君
主税局長安間 謙臣君
生活文化局長高橋 信行君
都市計画局長木内 征司君
環境局長赤星 經昭君
福祉局長前川 燿男君
衛生局長今村 皓一君
産業労働局長浪越 勝海君
住宅局長橋本  勲君
建設局長山下 保博君
消防総監杉村 哲也君
港湾局長川崎 裕康君
交通局長寺内 廣壽君
水道局長飯嶋 宣雄君
下水道局長鈴木  宏君
大学管理本部長鎌形 満征君
多摩都市整備本部長石河 信一君
中央卸売市場長碇山 幸夫君
選挙管理委員会事務局長南  靖武君
人事委員会事務局長高橋  功君
地方労働委員会事務局長大久保 隆君
監査事務局長中山 弘子君
収用委員会事務局長有手  勉君
東京都包括外部監査人筆谷  勇君

二月二十日議事日程第一号
第一 第一号議案
  平成十四年度東京都一般会計予算
第二 第二号議案
  平成十四年度東京都特別区財政調整会計予算
第三 第三号議案
  平成十四年度東京都地方消費税清算会計予算
第四 第四号議案
  平成十四年度東京都小笠原諸島生活再建資金会計予算
第五 第五号議案
  平成十四年度東京都母子福祉貸付資金会計予算
第六 第六号議案
  平成十四年度東京都心身障害者扶養年金会計予算
第七 第七号議案
  平成十四年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八 第八号議案
  平成十四年度東京都農業改良資金助成会計予算
第九 第九号議案
  平成十四年度東京都林業改善資金助成会計予算
第十 第十号議案
  平成十四年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十一 第十一号議案
  平成十四年度東京都と場会計予算
第十二 第十二号議案
  平成十四年度東京都都営住宅等事業会計予算
第十三 第十三号議案
  平成十四年度東京都都営住宅等保証金会計予算
第十四 第十四号議案
  平成十四年度東京都都市開発資金会計予算
第十五 第十五号議案
  平成十四年度東京都用地会計予算
第十六 第十六号議案
  平成十四年度東京都公債費会計予算
第十七 第十七号議案
  平成十四年度東京都新住宅市街地開発事業会計予算
第十八 第十八号議案
  平成十四年度東京都多摩ニュータウン事業会計予算
第十九 第十九号議案
  平成十四年度東京都市街地再開発事業会計予算
第二十 第二十号議案
  平成十四年度東京都臨海都市基盤整備事業会計予算
第二十一 第二十一号議案
  平成十四年度東京都病院会計予算
第二十二 第二十二号議案
  平成十四年度東京都中央卸売市場会計予算
第二十三 第二十三号議案
  平成十四年度東京都都市再開発事業会計予算
第二十四 第二十四号議案
  平成十四年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十五 第二十五号議案
  平成十四年度東京都港湾事業会計予算
第二十六 第二十六号議案
  平成十四年度東京都交通事業会計予算
第二十七 第二十七号議案
  平成十四年度東京都高速電車事業会計予算
第二十八 第二十八号議案
  平成十四年度東京都電気事業会計予算
第二十九 第二十九号議案
  平成十四年度東京都水道事業会計予算
第三十 第三十号議案
  平成十四年度東京都工業用水道事業会計予算
第三十一 第三十一号議案
  平成十四年度東京都下水道事業会計予算
第三十二 第三十二号議案
  東京都組織条例の一部を改正する条例
第三十三 第三十三号議案
  東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第三十四 第三十四号議案
  職員の再任用に関する条例の一部を改正する条例
第三十五 第三十五号議案
  職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第三十六 第三十六号議案
  職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第三十七 第三十七号議案
  職員の育児休業等に関する条例の一部を改正する条例
第三十八 第三十八号議案
  職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第三十九 第三十九号議案
  東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十 第四十号議案
  都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第四十一 第四十一号議案
  特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四十二 第四十二号議案
  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四十三 第四十三号議案
  東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
第四十四 第四十四号議案
  東京都石油コンビナート等防災本部条例を廃止する条例
第四十五 第四十五号議案
  東京都監査委員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四十六 第四十六号議案
  東京都地方公営企業の設置等に関する条例の一部を改正する条例
第四十七 第四十七号議案
  東京都都営住宅等事業会計条例
第四十八 第四十八号議案
  東京都土地収用事業認定審議会条例
第四十九 第四十九号議案
  東京都都税条例の一部を改正する条例
第五十 第五十号議案
  東京都収入証紙条例の一部を改正する条例
第五十一 第五十一号議案
  東京都情報公開条例の一部を改正する条例
第五十二 第五十二号議案
  東京都個人情報の保護に関する条例の一部を改正する条例
第五十三 第五十三号議案
  東京都江戸東京博物館条例の一部を改正する条例
第五十四 第五十四号議案
  東京都写真美術館条例の一部を改正する条例
第五十五 第五十五号議案
  東京都駐留軍関係離職者等対策協議会条例を廃止する条例
第五十六 第五十六号議案
  東京都駐留軍関係離職者開業資金貸付条例を廃止する条例
第五十七 第五十七号議案
  東京都育英資金貸付条例の一部を改正する条例
第五十八 第五十八号議案
  東京都消費生活条例の一部を改正する条例
第五十九 第五十九号議案
  東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第六十 第六十号議案
  学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
第六十一 第六十一号議案
  学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第六十二 第六十二号議案
  学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第六十三 第六十三号議案
  義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例の一部を改正する条例
第六十四 第六十四号議案
  学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第六十五 第六十五号議案
  東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第六十六 第六十六号議案
  東京都立学校の授業料等徴収条例の一部を改正する条例
第六十七 第六十七号議案
  東京都立学校校外教育施設設置条例の一部を改正する条例
第六十八 第六十八号議案
  東京都近代文学博物館条例を廃止する条例
第六十九 第六十九号議案
  東京都美術館条例の一部を改正する条例
第七十 第七十号議案
  東京都現代美術館条例の一部を改正する条例
第七十一 第七十一号議案
  東京都現代美術館及び東京都美術館運営審議会条例を廃止する条例
第七十二 第七十二号議案
  東京文化会館及び東京芸術劇場条例の一部を改正する条例
第七十三 第七十三号議案
  東京都生涯学習センター条例を廃止する条例
第七十四 第七十四号議案
  東京都体育施設条例の一部を改正する条例
第七十五 第七十五号議案
  東京都立大学条例の一部を改正する条例
第七十六 第七十六号議案
  東京都立科学技術大学条例の一部を改正する条例
第七十七 第七十七号議案
  東京都立保健科学大学条例の一部を改正する条例
第七十八 第七十八号議案
  東京都立短期大学条例の一部を改正する条例
第七十九 第七十九号議案
  東京都建築指導事務所設置条例の一部を改正する条例
第八十 第八十号議案
  東京都都市計画局関係手数料条例の一部を改正する条例
第八十一 第八十一号議案
  東京都駐車場条例の一部を改正する条例
第八十二 第八十二号議案
  東京における自然の保護と回復に関する条例の一部を改正する条例
第八十三 第八十三号議案
  東京都介護福祉士等修学資金貸与条例の一部を改正する条例
第八十四 第八十四号議案
  老人総合研究所の助成等に関する条例の一部を改正する条例
第八十五 第八十五号議案
  東京都立ナーシングホーム条例の一部を改正する条例
第八十六 第八十六号議案
  東京都養護老人ホーム条例の一部を改正する条例
第八十七 第八十七号議案
  東京都立老人医療センター条例の一部を改正する条例
第八十八 第八十八号議案
  東京都女性福祉資金貸付条例の一部を改正する条例
第八十九 第八十九号議案
  社会福祉事業振興資金貸付条例を廃止する条例
第九十 第九十号議案
  東京都医療保護施設条例を廃止する条例
第九十一 第九十一号議案
  東京都立板橋看護専門学校条例を廃止する条例
第九十二 第九十二号議案
  東京都衛生局関係手数料条例の一部を改正する条例
第九十三 第九十三号議案
  理容師法施行条例の一部を改正する条例
第九十四 第九十四号議案
  美容師法施行条例の一部を改正する条例
第九十五 第九十五号議案
  東京都准看護婦試験委員条例の一部を改正する条例
第九十六 第九十六号議案
  東京都看護婦等修学資金貸与条例の一部を改正する条例
第九十七 第九十七号議案
  東京都立看護専門学校条例の一部を改正する条例
第九十八 第九十八号議案
  東京都動物の保護及び管理に関する条例の一部を改正する条例
第九十九 第九十九号議案
  東京都経済事務所設置条例を廃止する条例
第百 第百号議案
  東京都産業労働局関係手数料条例の一部を改正する条例
第百一 第百一号議案
  東京都立産業技術研究所条例の一部を改正する条例
第百二 第百二号議案
  東京都輸出手形買取損失てん補条例を廃止する条例
第百三 第百三号議案
  東京都地域中小企業振興センター条例の一部を改正する条例
第百四 第百四号議案
  東京都ユース・ホステル条例の一部を改正する条例
第百五 第百五号議案
  東京都農業事務所設置条例
第百六 第百六号議案
  東京都林業事務所設置条例
第百七 第百七号議案
  東京都家畜保健衛生所条例の一部を改正する条例
第百八 第百八号議案
  鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律関係手数料条例
第百九 第百九号議案
  東京都労政事務所設置条例の一部を改正する条例
第百十 第百十号議案
  東京都労政会館設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例
第百十一 第百十一号議案
  東京都雇用・就業対策審議会条例
第百十二 第百十二号議案
  東京都緊急地域雇用創出特別基金条例
第百十三 第百十三号議案
  東京都港湾設備条例の一部を改正する条例
第百十四 第百十四号議案
  東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第百十五 第百十五号議案
  東京都漁港管理条例の一部を改正する条例
第百十六 第百十六号議案
  東京都地方労働委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第百十七 第百十七号議案
  東京都営住宅条例の一部を改正する条例
第百十八 第百十八号議案
  東京都福祉住宅条例の一部を改正する条例
第百十九 第百十九号議案
  多摩都市計画多摩土地区画整理事業施行規程の一部を改正する条例
第百二十 第百二十号議案
  八王子都市計画事業由木土地区画整理事業施行規程の一部を改正する条例
第百二十一 第百二十一号議案
  町田都市計画事業相原・小山土地区画整理事業施行規程の一部を改正する条例
第百二十二 第百二十二号議案
  国分寺都市計画事業西国分寺土地区画整理事業施行規程の一部を改正する条例
第百二十三 第百二十三号議案
  東京都駐車場条例の一部を改正する条例
第百二十四 第百二十四号議案
  東京都道路占用料等徴収条例の一部を改正する条例
第百二十五 第百二十五号議案
  東京都立公園条例の一部を改正する条例
第百二十六 第百二十六号議案
  東京都自然公園条例
第百二十七 第百二十七号議案
  東京都葬儀所条例の一部を改正する条例
第百二十八 第百二十八号議案
  東京都霊園条例の一部を改正する条例
第百二十九 第百二十九号議案
  東京都船舶の係留保管の適正化に関する条例
第百三十 第百三十号議案
  東京都河川流水占用料等徴収条例の一部を改正する条例
第百三十一 第百三十一号議案
  東京都公営企業職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部を改正する条例
第百三十二 第百三十二号議案
  警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第百三十三 第百三十三号議案
  警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
第百三十四 第百三十四号議案
  東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第百三十五 第百三十五号議案
  火災予防条例の一部を改正する条例
第百三十六 第百三十六号議案
  都立立川養護学校(十三)改築工事請負契約
第百三十七 第百三十七号議案
  都営住宅十三H―一〇三東(新宿六丁目)工事請負契約
第百三十八 第百三十八号議案
  都営住宅十三H―一〇四東(千住桜木一丁目)工事請負契約
第百三十九 第百三十九号議案
  平成十三年度新海面処分場Gブロック西側護岸建設工事請負契約
第百四十 第百四十号議案
  東雲二号橋(仮称)鋼けた及び鋼支柱製作・架設工事請負契約
第百四十一 第百四十一号議案
  包括外部監査契約の締結について
第百四十二 第百四十二号議案
  平成十四年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担について
第百四十三 第百四十三号議案
  平成十三年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区の負担の変更について
第百四十四 第百四十四号議案
  一級河川の指定の変更に関する意見について
第百四十五 第百四十五号議案
  多摩川流域下水道南多摩処理区の維持管理に要する費用の関係市の負担について
第百四十六 第百四十六号議案
  平成十三年度東京都一般会計補正予算(第一号)
第百四十七 第百四十七号議案
  平成十三年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第百四十八 第百四十八号議案
  平成十三年度東京都地方消費税清算会計補正予算(第一号)
第百四十九 第百四十九号議案
  平成十三年度東京都中小企業設備導入等資金会計補正予算(第一号)
第百五十 第百五十号議案
  平成十三年度東京都都市開発資金会計補正予算(第一号)
第百五十一 第百五十一号議案
  平成十三年度東京都新住宅市街地開発事業会計補正予算(第一号)
第百五十二 第百五十二号議案
  平成十三年度東京都市街地再開発事業会計補正予算(第一号)
第百五十三 第百五十三号議案
  土地の売払いについて
第百五十四 諮問第一号
  地方自治法第二百六条の規定に基づく審査請求に関する諮問について
第百五十五 議員提出議案第一号
  職員の給与の特例に関する条例
第百五十六 議員提出議案第二号
  学校職員の給与の特例に関する条例

  午後一時一分開会・開議

○議長(三田敏哉君)  ただいまから平成十四年第一回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(三田敏哉君) まず、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   四番   矢島 千秋君 及び
   六十七番 服部ゆくお君
を指名いたします。

○議長(三田敏哉君) この際、謹んでご報告申し上げます。
 名誉都民加藤シヅエ氏には、去る平成十三年十二月二十二日逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 ここに生前のご功績をたたえるとともに、故人のご冥福をお祈りし、議会として深甚なる弔意を表します。

○議長(三田敏哉君) 次に、議長部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(川島英男君) 平成十四年二月十三日付東京都告示第百五十号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、平成十四年二月十三日及び二十日付で、本定例会に提出するため、議案百五十四件の送付がありました。
 次に、知事及び各行政委員会より、平成十四年中における東京都議会説明員及び説明員の委任について、地方自治法第百二十一条及び東京都議会会議規則第四十二条の規定に基づき、それぞれ通知がありました。
 次に、東京都選挙管理委員会委員長より、平成十四年一月二十四日付で、東京都選挙管理委員の就退任について通知がありました。
 次に、東京都包括外部監査人より、平成十四年二月二十日付で、平成十三年度包括外部監査報告書の提出がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について、報告が二件ありました。
 内容は、訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告について、並びに東京都高等学校・大学等進学奨励事業に係る貸付金の償還免除に関する報告についてであります。
 最後に、監査委員より、平成十三年度各会計定例監査、平成十二年度執行分及び例月出納検査の結果について、それぞれ報告がありました。
(別冊参照)

○議長(三田敏哉君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 平成十三年第四回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
   〔文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾に掲載〕

○議長(三田敏哉君) 次に、東京都議会海外調査団について申し上げます。
 本議会において、去る二月四日から十一日までシンガポール及びホーチミンシティーへ、去る一月二十七日から二月五日までアムステルダム、ハーグ及びロンドンへ、それぞれ海外調査団を派遣いたしました。
 海外調査団を代表いたしまして、それぞれ報告のため発言の申し出がありますので、これを許します。
 シンガポール及びホーチミンシティー海外調査団、矢部一君。
   〔百十七番矢部一君登壇〕

○百十七番(矢部一君) 平成十四年第一回定例会の開会に当たりまして、議会運営委員会の協議結果に基づきまして口頭報告をさせていただきます。
 前期の第十五期におきます議会運営委員会におきまして、海外調査団のあり方につきましての検討がなされてまいりました。その方針に従いまして、東京都議会自由民主党といたしまして調査団の派遣が決定をされました。田中晃三議員、立石晴康議員、吉野利明議員、北城貞治議員、山加朱美議員、矢部一の六名にて調査団が結成をされ、不肖、私が団長を仰せつかりました。
 かねてより、我が会派の中で課題として取り組みを行っておりました交通渋滞問題、TDM、電子政府、羽田空港の国際化、環境問題、産業の海外進出等についての調査を行うこととし、協議の結果、面積的に二十三区とほぼ同じ面積の中に、近代都市国家としての機能をすべて盛り込み、国際的なハブの地位を確保し続けているシンガポールとベトナムのホーチミン市を視察調査することとした次第であります。
 視察調査の期間は、平成十四年二月四日から二月十一日の八日間であり、前半の四日間はシンガポールを、後半の二日間はホーチミン市の調査を行いました。
 まず初めに、シンガポールについてご報告を申し上げます。
 今回の視察調査では、自治体国際化協会のシンガポール事務所の協力のもと、シンガポールの陸上交通省、民間航空庁、環境省、情報通信開発庁等の視察調査を行いました。面積が六百四十八平方キロ、拡大し続けるシンガポールの人口は三百万人であり、外国人が百万人という構成であります。資源はなく、飲料水もマレーシアからのもらい水という中で、一九六五年独立以来、急速な経済成長を遂げ、一九九七年のアジア通貨危機のときも、一時的な鈍化はあったものの、年率五%を超える高い経済成長を続けています。
 九十九年あるいは九百九十九年契約で国から土地を賃貸し、公団が八〇%以上の住宅を団地式で供給をいたしております。住宅にも道路にも、国土のちょうど一三%ずつが使われ、限られた国土の中で自然とうまく共存いたしております。
 リー・クアンユー氏の提唱する、シンガポールの資源は人という考えに基づき、教育に力を注ぎ、そして、給料の二〇%を強制的に預金し、企業もほぼ同額拠出とあわせて、結婚と同時に住居を確保できる制度が基本にあります。
 車の所有に対しては、購入権の確保費用や税金等を合わせると、日本の三倍以上の負担が必要となります。さらに、ディーゼル車につきましては、半年に一度排気ガス検査が義務づけられております。
 これらを管理しております陸上交通省には、交通警察も配下にあり、ERP、エレクトリック・ロード・プライシングといいますが、による交通量コントロールとともに、違反車両はコンピューターが直ちに車両ナンバーを解析し、自動的に違反切符の発送まで行ってしまうという徹底ぶりであります。管理社会が進む中で、多少の息苦しさも感じられたところでございます。
 車も物も圧倒的にメード・イン・ジャパンというシンガポールの子どもの夢は、何と、生まれ変わったら日本人になりたいということであります。複雑な気持ちになったところでございました。
 引き続き訪れましたホーチミン市におきましては、日本総領事館、ホーチミン市教育養成局、民間と共同の職業訓練校、タン・トゥアン輸出加工区の日本企業、日本のNGOが運営支援をしているストリートチルドレンの保護施設等の視察を行いました。
 手先が器用で、大変に目のいいベトナム人のドイモイ政策の中での日本の町工場がそっくり移動してきたような感じの輸出加工区、生活のために技術を身につけようと職業訓練校に学ぶ子ども、それとは対照的に、ストリートチルドレンの施設の中で明るい笑顔を振りまいている様子、日本製のバイクがそれこそ縦横無尽に走り回る町の活気、かつての日本にもこんな景色があったなという感じがいたした次第であります。
 今回の全調査を終えて感じたことでございますが、携帯電話が普及をし、デジカメ、パソコン等のIT機器の普及のありがたさを改めて感じました。シンガポールでは、ほとんどの役所において、パソコンとパワーポイントによる説明であり、会議室には、液晶プロジェクターとコンピューターがすべて配備をされておりました。
 ベトナムではそうはいきませんけれども、ガイドもすべて携帯電話を持ちまして、予定の変化にも的確に対応してくれました。その結果、極めて限られた時間の中の調査ではありましたが、時間を有効に使うことができた次第であります。
 今回の視察調査につきましての詳細につきましては、後日、六名の団員で協議の上、海外調査報告書として取りまとめを行い、皆様にご配布申し上げさせていただきたいと思います。
 以上、概要の報告とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 続きまして、アムステルダム、ハーグ及びロンドン海外調査団、小林正則君。
   〔百一番小林正則君登壇〕

○百一番(小林正則君) 平成十三年度都議会海外調査団の報告をさせていただきます。
 平成十四年の一月二十七日、日曜日から二月五日、火曜日までの十日間、オランダのアムステルダム、ハーグ、そしてイギリスのロンドンを訪問いたしました。メンバーは、和田宗春、馬場裕子、そして私、小林正則の三名でございます。
 以下、調査の内容についてご報告申し上げます。
 まず最初に、アムステルダム市の多自然型川づくりの課題についてでございます。
 海抜マイナス五メートルの低湿地帯のため、町の周囲が運河に囲まれています。このため、運河の管理は重要な課題であり、中でも水量に関する管理意識がとても強く、そのために護岸をコンクリートに固めてしまったのであります。その結果、逆に運河の保水能力は低下をしてしまい、景観は悪化し、加えて、従来からすみ続けてまいりました動植物が激減をしたのであります。
 そこで、排水設備の徹底により、運河のはんらんを防止することに成功いたしました。従来の多機能、多自然に近い河川、運河に復元する事業に取り組んでまいりました。
 感心したのは、その成果を指定動植物――五種類ございますが――の生殖数などで計量し、事業効果を確認していたことであります。東京都のヒートアイランド対策の風の道プランに通じるものがあると考えます。
 続きまして、同じオランダのハーグ市に伺いました。
 ワークシェアリングの調査であります。日本でも相次ぐリストラや人員削減などで、にわかに今脚光を浴びておりますけれども、我が国では、このワークシェアリングというと、雇用を確保し、その代償として賃金を削減するものというふうに理解をされておりますけれども、しかし、具体的な話になると、かなり労使双方の考え方の違いが浮き彫りになっております。
 そこで、ワッセナー合意で大変有名なオランダのハーグに、具体的な事例として学ぶことといたしました。
 政労使の合意でスタートしたオランダ方式というのは、パート労働法といわれ、賃金抑制だけでなくて、むしろ男女分業論が色濃い社会体質を、労働形態を柔軟にし、多様な雇用を生み出すところに主眼が置かれていました。訪ねた市の職員もパート労働者であり、市の管理職でありました。日本では、パート労働者は家計や職場の補完的なものですが、オランダでは、フルタイム労働者と差別なく働いておりました。産業労働局も、均等待遇を推進していくべきと考えました。
 続きまして、イギリス・ロンドンでございます。
 ロンドン市では、いろいろ項目がございますが、各種視察を行いました。
 まず最初に、公的医療制度でございます。
 イギリスは、医療のすべてを国家が一元的に管理しております。加えて、すべての国民は医療費が無料でありまして、かかりつけ医の診断書がないと治療が受けられないシステムであります。しかし、国家管理のため、コスト意識がなく、医師間の競争や医療施設間の競争がないために、年々政府予算を圧迫しているとのことであります。加えて、医療費が無料のため、医療に対する依存心が非常に強く、さらに医師不足も重なり、希望の日時になかなか治療してもらえないということであります。
 その解決策として当面取り組んでおりましたのが、疾病別に待ち時間あるいは日数に差をつける、地域特性による病気の優先治療、あるいは、福祉と医療の区別がなかなかつきにくいということもありますので、それらの整理でございます。衝撃的だったのは、医療機関が不足しているため、患者を移送して治療してもらっているということです。フランスに移送して、治療してもらっているということでありました。これは、患者の輸出ということになるかもしれませんが、非常に感銘を受けると同時に、驚きを受けました。
 次に、イギリスの地方自治でありますが、歴史のある国でありますから、イギリスは地方自治の成熟したところというふうに思っておりましたら、予想に反して、国家権限がかなり強くて、その施策は細部にわたりコントロールされておりました。興味を引いたのは、行政機関と議会の区別が非常にわかりにくい。加えて、議会の権限が非常に強くて、予算編成と執行に責任を持っているということであります。予算についても独自財源は少なく、国の出先機関の色合いが強いシステムでありました。
 参考になったのは、住民投票制度がしっかり根をおろしているということでありました。外から見ると、英国は地方自治の発生の地という印象を持っておりましたが、現地で調べると、その実現に大きな困難があったということがわかりました。
 次に、三点目であります。ドックランドの再開発です。
 一九八〇年代にサッチャー政権によって計画された古い荷受け港を、ロンドンの副都心としてよみがえらせようという事業でございます。開発前の倉庫群は、時代に取り残されてスラム化しておりました。それを開発しようということです。
 開発当初は、行政機関で事業をスタートしたのですが、失敗してしまいました。それを見事にビジネス街によみがえらせたのであります。それは、行政当局から切り離した第三者機関に開発にかかわる権限をゆだね、徹底して受け入れ業界、企業の意向を取り入れたことであります。東京都の臨海副都心の開発も学ぶべき点が多かったことを申し上げておきます。
 次に、第四点目であります。民間の環境保護活動、BTCVでございます。
 この環境保護団体は、十三万人のボランティア人員を抱え、年間収入が三百九十億円、そして八百人の有償スタッフを抱えている立派な組織であります。行政と対峙するのではなく、政府に提言をし、それを実行させていくことの重要性を説いておりました。
 驚いたのは、NGOもビジネスですとはっきりといい切るその組織運営には、民間会社の役員を積極的に登用しているということであります。私たちも、現実的なNGO、NPOの取り組みに着目するときだと考えました。
 次に、五点目であります。BSE、牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病の対策の検証でありました。
 食品衛生と疫学的な立場から、二つの政府機関を訪ねました。イギリスも、BSEの発症原因の研究――イギリスは、世界で初めてこの発見をし、その発見で国内は混乱いたしました。それゆえに、政府に対する信用は地に落ちて、大変なものだったようであります。
 対策として、政府機関を避け、各省庁にまたがる第三者機関を設置して、そこに権限を与えたことであります。私たちは、国家としての対応が大胆、それから迅速であったことに感銘をいたしました。それは、疫学的に判明した発症時期といわれている三十カ月以上の牛を市場に出さないために、対象になる牛が五百四十万頭おりますが、この五百四十万頭の牛を全部政府が買い上げたことであります。
 加えて、政府の情報を機関紙やインターネットで徹底的に公開したことであります。そして、政府の責任と範囲を明確にした上で、商品については、公開された情報をもとに、消費者が購入において責任を持ってほしいといったことであります。国民性の違いを痛感いたしました。情報公開という点で、英国の問題発生時の対応と同じ失敗を重ねた農水省の責任は重いと思わざるを得ません。東京都の各局間の協力体制を説明したところ、大きな評価を得ました。
 続きまして、六点目でございます。観光都市オクスフォードのまちづくりの努力についてでございます。
 オクスフォード大学が有名なこの地は、町そのものが大学であるかのようなたたずまいを見せております。かつては、学生の授業料は無料だったようでありますが、ブレア政権になって、年間約二十万円程度になったそうであります。ヘンリー八世の五百年前の町並みがそのまま残されており、ヨーロッパ全体にいえることですが、町並みや景観、高さの規制、色、看板の規制は厳しいのです。
 当日は、日曜日ということもあり、観光客も多く、日本の古い町並みや建物の取り扱いの違い、土地及び建物に対する所有意識の違いを感じました。オクスフォード大学というイメージを巧みに活用し、今日話題のハリー・ポッターの映画にも撮影協力をして、観光行政に協力をしておりました。東京都も、千客万来都市となるために、安全で楽しい町にする必要があると考えました。
 さて、最後になりますが、このたびの調査団での七番目になりますが、市民の政治意識調査をこのロンドンでやらせていただきました。
 過去にアンケートをやった団体がありましたが、警察に逮捕されたとか、イギリスでは町でアンケートをする習慣がないとか、不安の中で勇気を持って実施をいたしました。ハイドパークという王立公園で、三百名近い人から協力を得ることができました。
 アンケートの項目は、ロンドン市の調査項目のナショナルトラスト、税制、BSE、公的医療制度の四項目でした。
 その結果については、税に対しての不満が皆無でございました。むしろ、この税額、イギリスでは付加価値税が一七・五%でありますけれども、これをもうちょっと上げたらいいじゃないかといったような意見すらありました。逆に、医療に対する不満はほぼ全員で、英国における医療制度改革の緊急性を感じました。
 最後になりますが、この間の活動報告は、その日のうちに私たちのホームページに載せ、情報公開をし、都民の反響がありました。さらに、帰国後記者会見を行い、来る三月一日には、この議会棟で報告会を持ちたいと思っております。
 以上の調査の詳細につきましては、後日、海外調査報告書としてまとめ、配布をいたす予定でございます。
 なお、ホームページに載っておりますのは、私が持っておりますこれが全部そうですが、どうぞお帰りになりましたら読んでいただければと思います。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって東京都議会海外調査団の報告は終わりました。

○議長(三田敏哉君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から三月二十八日までの三十七日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、会期は三十七日間と決定いたしました。

○六十七番(服部ゆくお君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 平成十三年度包括外部監査結果の報告について、地方自治法第二百五十二条の三十四第一項の規定に基づき、包括外部監査人の説明を求めることを望みます。

○議長(三田敏哉君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、平成十三年度包括外部監査結果の報告について、包括外部監査人の説明を求めることに決定いたしました。
 ここで、筆谷勇包括外部監査人の出席を求めます。
   〔包括外部監査人筆谷勇君入場、着席〕

○議長(三田敏哉君) ただいまご出席いただきました包括外部監査人をご紹介いたします。
 筆谷勇さんでございます。
   〔包括外部監査人あいさつ〕

○議長(三田敏哉君) 本日は、ご多忙のところ、監査結果報告の説明のためご出席いただき、まことにありがとうございます。

○議長(三田敏哉君) この際、知事より、平成十四年度施政方針について発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) ことし最初の都議会となる平成十四年第一回都議会定例会の開会に当たり、一年間の施政方針を申し述べ、都議会の皆様、都民の皆様のご理解とご協力を得たいと思います。
 平成十三年十二月二十二日、名誉都民である加藤シヅエさんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
 さて、新しい世紀の幕あけから一年余りが経過いたしました。新世紀の到来を転機として、日本が再生に向かうことをだれもが願っていたと思います。しかし、事態は好転する兆しが全くないままに悪化を続け、人々の不安、不満、いら立ちは募るばかりであります。
 その直接の原因は、十数年にわたる政策の失敗が引き起こした経済の低迷にありますが、淵源をたどると、社会システムそのものに行き着くことを、我々は正しく認識する必要があると思います。
 これまでの日本を支えてきたのは、規制に守られた経済活動や終身雇用、官僚主導による中央集権体制、公共事業中心の財政政策などであり、憲法を頂点とした膨大な数の法令が、それを手厚く保護いたしました。こうした独特の構造は、我が国を経済大国に押し上げる原動力ともなり、皮肉な見方をすれば、最も成功した社会主義と呼べるほど、統制のとれた社会を築き上げたと思います。
 しかし、一方で、戦後の日本は、過去に対する反省の念が行き過ぎた呪縛を生み、国家のありようや社会の枠組みについて議論することさえ許そうとしない風潮をもたらしました。そして、いつしか国全体が、本質的な問題について考えることを停止し、実は虚構でしかない権威や肩書に頼るだけの依存型社会となっております。
 その上、他力本願の姿勢が自主的な変化を妨げたため、時間経過の必然として、多くの弊害が発生いたしました。温室の中で過ごした半世紀は、成功や繁栄だけでなく、その場限りの状況主義や事なかれ、先送りの風土をつくり、その報いが、今、日本の国家の土台を揺るがす危機となって出現しております。
 とりわけ東京には、社会資本整備のおくれ、産業の空洞化、失業者の増大、治安の悪化など、我が国の構造的に抱える危機の本質が、殊さら致命的な形であらわれております。国民の多くは、焦燥感に駆られながらも、自分が何をなすべきかわからないままに、ただただ萎縮しているだけであります。我が国は、多くの危機にさらされながら、国家としての意思を持つことができず、同時に、国民として当然持つべき誇りや気概や紐帯、あるいは共通の目標が消えようとしております。
 このままでは、日本は近い将来、外見上の体裁だけは残しながらも、実質的な機能を失った、とても国家とは呼べないような存在にもなりかねません。国際社会の中で、だれ一人関心を寄せようとしない、寂しい国家になってしまうとも思います。我が国は今、衰弱に向かう流れを断ち切り、新しい発展に転じることができるかどうか、最後の分岐点に立たされております。
 これだけ深刻化した危機から立ち直るには、社会の構造を一新する以外道はなく、その過程では、並大抵でない苦労や苦痛を伴うことにもなると思います。しかし、改革を実行することで初めて、自由で公平、公正な競争の成り立つ社会が実現いたします。それこそが独立心旺盛な人材を育て、将来の発展を可能にする社会であり、目指すべき社会であると考えます。
 これまでの歴史が証明しているように、本来、我々はみずから活路を切り開く能力を保有しております。今でも、教育水準、技術力、金融資産などは世界に誇り得る貴重な財産であります。ところが、国は個々の力を総体として束ねることができずに、国民の間には主体的に困難を乗り越えようとする意欲が働かないため、国は危機の中に沈もうとしております。
 我が国が持てる力を十全に発揮すれば、再生は決して不可能ではありません。そのためには、今後とるべき戦略、戦術を描き、それを国際社会の中で正当に主張し、実行することが必要であります。国民一人一人には、現在の状況とみずからの能力を冷静に認識し、危機感を持って行動することが求められます。
 停滞している局面も、一つのきっかけがあれば、大きく動き出します。東京には、日本の人口の一割、総生産額の二割が集中、集積しており、非常に大きな影響力があります。東京は、我が国を再生の軌道に乗せ、国民の目を覚ます、てことなるだけの十分な力を備えております。
 東京が先陣を切って変わること、動くことで、国を変え、国民を動かし、国家としての尊厳、人間としての自立が確立された社会を導き出したいと思います。
 そのためには、次の三つの視点を基本的に持つことが必要となります。
 第一は、従来の垣根にとらわれることなく、積極果敢に行動することであります。
 東京に限らず、日本全土が大きな危機に包まれていながら、国の動きは相変わらず鈍く、改革の軸足が定まっているとは到底思えない状況にあります。
 例えば、雇用の拡大にもつながる産業の振興は、本来、成長産業への構造転換を促す取り組みが必要であります。しかし、国の政策は、当面の痛みを抑える補助金行政が中心で、積極的に新しい産業を育成しようとする意思が一向に感じられません。せめて東京は、個性を生かした産業が育つよう、独自の振興策を実施したいと考えております。
 特に、力を入れて育てるべき産業の一つは、観光であると思います。国の取り組みが進まない中、東京は、観光が持つ波及効果の大きさ、成長の可能性などを考え、これまでの受け身の姿勢を百八十度転換し、積極的に観光産業を支援いたします。宿泊税の導入は、その決意と責任をあらわしたものであり、エコツアーやカジノなど新しい観光資源の開発にも間断なく取り組んでいきたいと思っております。
 ことしは、アジアで初めてワールドカップのサッカー大会が開催される年であり、東京にも多くの外国人が立ち寄ると想定されております。この機会に東京を楽しみ、東京の魅力を持ち帰ってもらうため、観光情報の提供など、十分な受け入れ態勢を講じたいと思います。
 ITやアニメ、バイオなども今後発展を見込むことのできる分野であり、積極的に育成を図ってまいりたいと思います。特に、区画整理が進む秋葉原は、地区全体がIT産業の拠点となるように開発を誘導しております。駅前の都有地については、最先端の機能を備えたビルが建設されるよう、三回の事業審査を経て、先週、売却先を決定いたしました。
 首都圏の情報戦略全般については、現在、有識者による懇談会を設置して検討を進めております。ITの高速サービスを進めるホテル、旅館への支援は、懇談会の意見をもとに、ワールドカップ対策として緊急に実施を決めたものであります。
 国が迅速な対応を怠っているため、土地税制にも見逃すことのできない矛盾があらわれております。バブルの発生、崩壊に伴う急激な地価の上昇、そしてまた下落は、大きな環境の変化をもたらしながら、国は固定資産税のあり方について、ほとんど有効な策を講じることができませんでした。その結果、本来連動するはずの地価と税負担が、大都市の商業地においては大きく乖離しており、特に東京の二十三区では、全国で最も過大な負担を強いられております。
 こうした事態は、不況に苦しむ商店街や民間企業の経営を一段と圧迫しており、経営基盤の脆弱な中小企業等に対しては、緊急、特別の支援が必要なことから、固定資産税、都市計画税を今回減免することを決断いたしました。(拍手)当面、平成十四年度については、個人、中小企業が所有する小規模の非住宅用地を対象に税額の二割を減免いたします。この措置により、二十三区の税負担を全国の平均的な水準にまで戻すことができるようになります。
 何といっても、公平、公正であることが税制の基本であり、今回の取り組みは、土地税制に対する都民の信頼の回復につながるものと考えております。政治、行政の不作為により損失をこうむるのは都民であり、国民であります。国家の非常事態の中で独自の対応が可能なものについては、時に都政の守備範囲を超えることがあっても、速やかに行動することを絶えず心がけておきたいと思います。
 第二は、都市問題の連携、連帯を一層強めることであります。
 住民意識の変化や需要の多様化に伴い、地域特有の課題は、複雑化、広域化しながら増加を続けております。国の主導による地方分権が極めて乏しい内容しかない中で、自治体間での連携は、行政の効率化やライン化した垣根の解消につながる新しい政治の流れであると思います。自治体の結束が強ければ、国に対する発言力、影響力も格段に高まることになります。
 一都三県から成る首都圏は、同一の経済圏、生活圏の中で共通する多くの課題を抱えており、七都県市の連携は重要な意義があります。これまでの七都県市の会合は、国に対する要望活動や情報交換を主とする、半ば社交的なものでしかありませんでしたが、ここ二、三年で実践的、具体的なつながりを持つ場へと変わってまいりました。
 昨年は、環境対策などの共同事業と税財源について検討することで合意でき、現在、東京都の提案をたたき台として、分野ごとに検討を進めております。ことしの秋までに課題を整理し、事業の実施に道筋をつけたいと思っております。
 こうした共同事業は、現行の地方自治制度のもと、緩やかに連合することで当面は対応できますが、七都県市の取り組みは、新しい広域行政の形を探る大きな実験とも思います。今後、連携する範囲、対象が広がり、関係が複雑化するにつれ、新しい受け皿が求められます。
 そのためには、現在の取り組みだけでなく、次の段階を予測し、将来の首都圏自治体のあり方について、理論的、体系的な裏づけを持つ必要があります。現実の問題を素材に使いながら、首都圏自治体の将来像を描き、議論のたたき台として、年内を目途に公表したいと思っております。
 検討に当たっては、基礎的自治体や国、民間との役割分担、自治体の統合、さらには明治以来続く都道府県と市町村の二層制の是非など、自治制度や大都市制度のあり方にまで踏み込みたいと考えております。
 国内だけでなく、海外の大都市と連携を深めることも、都市が抱える問題の解決に大きな力を発揮いたします。昨年発足した、アジア大都市ネットワーク21は、十一月、デリーで第二回の総会を開催する予定であります。中小型ジェット旅客機やIT技術の共同開発の促進など共同事業について、他の都市と協力しながら、総会の場で具体的な成果を報告し、さらなる発展につなげていきたいと考えております。
 これからの時代は、行政機関だけでなく、NPO、民間事業者との連携も必要になります。都内にも千八百の法人が存在するNPOは、社会貢献活動の担い手として不可欠な存在であり、東京都は、啓発事業や交流事業など多くの分野でNPOとの協働を進めております。今後、NPOの活動基盤の強化に向け、経営能力の向上、人材の確保などの面で支援を行いたいと思います。
 第三は、都民、国民に対し、明快で力強いメッセージを発信することであります。
 地方自治体である東京都は、その基本的性格、法令による規定、財政面での制約などから、直接の力の及ばない分野が数多くあります。しかし、国が頼りにならない状況では、東京が世論を喚起し、動かざるを得ないような状況に国を追い込むことも大切な役割であると思います。
 首都移転の反対は、東京からの発信が最も重要な問題であります。
 今、国会周辺では、首都移転には全く相反する動きとして、この四月に完成いたしますが、首相官邸の新築や、合同庁舎の改築、外務省の庁舎の全面改修などが大々的に進められております。このほかにも、一昨年には五千億円近い経費をかけて防衛庁が移転を完了し、議員会館については建てかえに向けて準備が進んでおります。
 昼間都民を含む千五百万都民は、この支離滅裂とした矛盾を最も敏感に察知しており、さきの世論調査でも、移転に反対する意見が圧倒的でありました。首都移転に疑問の声が高まっている今こそ反対運動を拡充し、国のかたくなな姿勢にくさびを打ち込む必要があります。
 昨年十二月、都議会の皆様が行った国会への反対要請には、改めて感謝を申し上げます。また最近では、区市町村単位の取り組みに加え、住民団体の間でも自主的な活動が活発化しております。国会の中にも、党派を超えて移転を見直す取り組みが始まりました。こうした動きはまことに心強い限りであり、皆様方とともに力を合わせて、反対運動を盛り上げてまいりたいと思います。
 首都移転がいかに愚かな行為であるかは、火を見るよりも明らかであります。都民のため、国民のため、首都移転には、あくまでも徹底して闘うことをここで改めて宣言いたします。都議会の皆様の一層のご協力をよろしくお願いします。
 また、国は空港についての認識も非常に不十分であるといわざるを得ません。
 国が東京都の提案をやっと受けとめ、これまでの計画になかった羽田空港の再拡張を決めたことは、評価はいたします。国の拡張案は、東京都の原案と比べ滑走路の位置が大きく違いますが、障害を極力抑制しながら便数の増加が見込める案を示したことから、国の案に合意いたしました。これより先は、国家プロジェクトとして責任を持って財源を投入し、一日も早く完成させることを強く求めてまいります。あわせて、再拡張の完成を待つこともなく、本格的な国際化を羽田で進めることも要求いたします。
 横田基地の問題では、民間利用のあり方について、四回にわたり有識者と会議を持ち、多くの有意義な意見をいただきました。今後は、地元を含め、意見を集約しながら、日米の政府へ働きかけを強めていきたいと考えております。
 ことしは、以上三つの視点を複合的に重ねながら改革を進め、牽引車としての東京の役割を果たしていきたいと思っております。
 東京を変えるためには、都政を支える財政構造もまた抜本的な改革が必要となります。
 平成十四年度は、財政再建推進プランの取り組みを開始して以降、三年目を迎えますが、財政を取り巻く環境は格段に厳しさを増しております。東京には、都市基盤の整備、中小企業対策など多くの緊急課題がある中で、景気の悪化により、歳入の根幹をなす都税収入は、十三年度とは一転して三千六百億円もの大幅な減少となる見込みであります。
 そのため、平成十四年度は、東京が直面するこうした危機に積極的に対応する予算として、次の二点を基本に編成に臨みました。
 第一は、徹底した内部努力や施策の見直しなど、これまで以上に厳しく歳出額の抑制を図り、財政再建の取り組みを一層進めることであります。
 来年度、千四百十七人を削減する職員定数については、プランで掲げた四年間の削減目標を実質的には三年間で達成することができました。また、施策の根本的な見直しにより、八十八の事業を廃止、休止いたします。
 住民間の負担の公平を図る観点からは、使用料、手数料を見直し、合計三十四の条例、規則を改定いたします。今回は、道路占用料などを改定するほか、高齢者を取り巻く環境の変化なども踏まえて、六十五歳以上の方を無料としている都民利用施設の料金を見直したいと考えております。一方、原価に基づく算定を徹底し、霊園使用料などは引き下げることにいたしました。都議会の皆様、都民の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
 第二は、首都圏の再生と都民生活の不安を解消するための優先課題に重点的に財源を振り向けることであります。
 道路交通網の整備、中小企業制度融資、雇用対策などは、厳しい財政状況にあっても先送りすることのできない課題であり、最優先で財源を措置しております。また、福祉と医療については、障害者施設の緊急整備やウイルス肝炎総合対策を推進するなど、できる限りの配慮を行った結果、過去最大の構成比となりました。治安の悪化と環境の悪化から都民を守るため、警察と消防、環境対策には大きく予算を増額しております。
 さらに、予算査定に先立ち選定した重要施策には、全体を厳しく抑制する中で、前年度を大きく上回る財源を投入いたしました。厳しい時代であるからこそ、庁内の英知を結集し、効果の高い事業を峻別する必要があります。来年度以降も引き続き重要施策の選定を通じて活発に議論し、都政の課題を見きわめていきたいと考えております。
 このようにして編成した平成十四年度予算は、一般会計で六兆円を下回り、前年度に比べて五%に近いマイナスとなっております。今回は都税収入が大幅に減少したため、二千五百億円を超える財源対策が必要となり、非常に苦しい算段を強いられた編成作業になりました。
 こうした状況にあって、銀行業等に対する外形標準課税は、憲法、法律で認められた課税自主権を行使し、条例を新設した上で今年度から徴収を開始いたしました。国からの税源移譲がない中、安定的な財源の確保は、独立した地方自治体として都民に対する最低限の責務であり、外形標準課税は重要な役割を担っております。来年度も、貴重な財源として一千億円の収入を見込んでおります。
 しかしながら、東京都の財政は、もともと法人二税を中心とした都税収入に大きく依存しており、景気に左右されやすい構造となっております。国が混乱し、景気の速やかな回復がはかばかしくない中、懸念していたとおり、都税収はさらに減少することを覚悟しなければならず、財政は一層の厳しさを増します。このまま事態を放置すれば、毎年度、三千億から四千億円の財源不足が避けられない状況であります。
 財政再建団体への転落をこの先も回避していくには、これからが本当の正念場となります。都議会の皆様のご協力を得ながら、一段と強力に財政構造の改革に取り組んでまいります。よろしくお願いいたします。
 バブルの時期に過大な見積もりを行った臨海副都心開発もまた、事業の全面的な見直しが必要であります。土地の売却や有効活用を加速し、あわせて特別会計の支出を千三百億円程度削減して、事業の収支が均衡する時期を少しでも早めたいと考えております。来月の上旬には、新しい収支見通しを盛り込んだ見直し案を公表する予定であります。
 今後、民間事業者を呼び込むことで、地域のにぎわいと財政基盤の安定化を図り、東京の活力を支える有力な拠点として、臨海副都心を育てていきたいと思います。
 ペイオフの解禁が一月後に迫る中で、財政の破綻を防ぐには、公金の適正な管理が重要な課題となります。東京都では、取引先金融機関の経営状況を把握する手段として、先般、独自の基準を定め、四月からの解禁に備えることにいたしました。
 今後は、取引先の金融機関を六段階に格付し、破綻する懸念のある金融機関に対しては、中途解約することも含め、厳格に対応し、都民からお預かりしている公金の安全を確保したいと思います。
 東京は、高度な中枢機能が集積する日本の活力の源でありながら、最近まで国にその認識がなく、無策が続いたため、東京は危機に陥るばかりか、そこから悪循環が起こり、国家も長く低迷が続いております。
 極めて厳しい財政状況の中で、東京の再生に向け充実すべき取り組みの一つは、規制緩和による民間事業者の活用であります。さまざまな分野に広がる規制の多くは、秩序を維持する効果以上に創意工夫の余地を狭め、活力を奪っております。この先必要なことは、細やかな規定を設け、目を光らせることではなく、大きな枠組み以外は極力規制を緩和し、民間の知恵と努力を引き出すことであります。
 先般、国会に提案された都市再生特別措置法は、自由度の高い計画が可能となる特別地区を創設するなど、投資意欲を誘発し、民間事業者の手で都市の再生を促進しようとするものであります。都内には、あとわずかの条件が整うことで事業化に弾みのつく地区が随所に存在しております。この法律をうまく活用し、幾つかの地区を先行的に整備することができれば、今後の本格的な再生の引き金にもなると思います。
 国に対しては、法律の一日も早い成立を強く要求いたします。東京も、独自の工夫を重ねながら、手続期間の短縮にも努め、民間が手がける事業の促進を支援したいと考えております。
 ただし、この制度だけで都市の再生が実現するものではなく、東京の再生の全体像を考えることが大きな課題として残っております。例えば、都市の骨格を形成する交通網の整備は、再生に向け、欠かすことのできない取り組みであります。
 重要施策として選定した効果満点道路事業は、短期間で高い投資効果のあらわれる箇所を優先して整備するもので、国もその意義を認め、重点的な財政支援を決めております。ようやく庁内にも、また国の一部にも、時間やコストに対する感覚が芽生えてきたような感じもいたします。来年度は四十一カ所で右折レーンの設置などに着手し、三年以内にすべてを完成する予定であります。
 従来から力を入れている三環状道路の整備や連続立体交差事業も、早期完成に向け、取り組みを強化しております。外環道については、住民との新しい協議会をぜひとも設置したいと考えております。現在七路線で事業を進めている連続立体交差は、来年度新しい路線として、京王線調布駅付近の事業にも着手いたします。
 都市の間でも国際的な競争が激化する中で、二十一世紀を勝ち抜くためには、世界から人、物、資本、情報を引きつけ、それを土台に新しい価値を創造し、世界に発信できる都市となる必要があります。これから先、首都圏、日本、世界の中での役割や地位を明確にしながら、東京再生の取り組みを強化していきたいと考えております。
 都民の台所として、東京の一つの顔でもある築地市場は、豊洲地区への移転を正式に決定いたしました。関係者と十分協議しながら、二十一世紀にふさわしい市場として、環境への配慮、地域への貢献といった視点を盛り込んだ基本構想を、来年度策定したいと考えております。
 安全は文明の礎であり、政府や地方自治体にとって、国民の生命と財産の確保が最優先の課題であることは、近代の政治体制が確立して以降、変わることのない命題であります。
 三千三百万人が一体となって生活圏を形成している首都圏では、大規模災害や広域テロなどが発生した場合、被害の規模は、一つの自治体では到底対応できる範囲を上回っていると予測されます。しかし、国を含めた現在の危機管理は、総合的な支援体制や相互の連携体制が確立しておらず、日常の訓練や準備もまだまだ不十分であります。
 こうした弱点を共同で補い、機能的な体制を構築するため、昨年の七都県市首脳会議では、首都圏FEMAの設置を提案いたしました。現在、七都県市において定期的に意見交換を行っております。ことしの秋には一定の成果を取りまとめ、その後の行動につなげていきたいと思っております。
 自然災害への対応ばかりでなく、アメリカの同時多発テロや歌舞伎町のビル火災など、予期せぬ事件や出来事を未然に防止することも重要な課題であり、地域での安全、予防対策を今後も充実いたします。
 特に、ワールドカップ期間中は、東京でもフーリガン、テロなどの不測事態が懸念されますが、だれもが安心してサッカーの祭典を楽しめるよう、万全の体制で安全を確保したいと考えております。
 現況、東京の治安は致命的に悪化しております。外国人犯罪者のグループによるピッキングや薬物の密輸入、青少年による殺人や強盗などの凶悪犯罪などが頻発し、刑法犯の認知件数は過去最高を記録しながら、検挙率、検挙件数は、昭和四十一年以降、最低の水準にあります。
 この背景には、他人に対する無関心や自己中心的な考え方をする人が著しくふえていること、また、不法入国する外国人がこれまた著しくふえていることがあります。不法入国した人たちは、正式に就労することができませんから、日本の犯罪組織とつながり、犯罪要因となっております。
 また、先日の都政モニターアンケートの結果を見ても、モニターの実に九六%、ほぼ全員が東京の防犯や治安に対して不安を感じております。しかも八五%の方々が、収容数の不足している留置場について拡充する必要があると考えております。
 治安に対する都民の不安が急速に高まっている現在、国には不法入国を水際で取り締まることなどを要請してまいりましたが、東京都としてもできる限りの犯罪対策を行ってまいります。
 平成十四年度は、日本社会事業大学の跡地を活用した原宿警察署の改築と、それに伴う留置場の拡充に向け、具体的な調査を進めたいと考えております。地元の関係者にも誠意を持って対応しながら、土地の利用計画を策定し、東京の治安の向上に全力を傾けてまいります。
 東京は、現代文明が集約された都市として便利な機能を装備する一方、その代償は、大気汚染の悪化、温暖化の進行、緑の減少など、極めて深刻な環境の危機となってあらわれております。
 先月策定した新しい環境基本計画は、健康で安全な環境を確保し、持続可能な社会を実現していくため、これからの環境行政の基軸を定めたものであります。今後は、分野ごとに掲げた目標を達成するため、都政の総合力を発揮して強力に施策を推進いたします。
 多岐にわたる取り組みの中でも、一刻の猶予もならない課題は自動車公害対策であります。大気汚染は生命に直結する問題でありながら、環境省は、一部の業界団体の反対意見についに押し切られ、ようやく成立させたNOX・PM法の適用を最大で二年半もおくらせようとしております。
 これは、大気汚染に苦しむ国民への重大な背信行為としかいいようがありません。こうした姿勢は環境問題に大きな禍根を残し、低公害車の開発などに水を差すことになります。座視にたえない状況を前に、国には強く抗議を申し入れ、自動車メーカーに対しては、先週、低公害車の普及促進など自動車公害対策の徹底を独自に要請いたしました。
 地球温暖化を防ぐ取り組みにも、早速行動を開始いたします。
 温暖化対策は、地球規模で実行段階に入っていながら、我が国は効果の高い施策の導入を先送りし、欧州各国と比べて極めて立ちおくれた状況にあります。地球温暖化対策は国が責任を負うべき分野ではありますが、国がみずからの役割を果たさない中、東京には行動する責任があると考え、本日、「地球温暖化阻止 東京作戦」の実施を指令いたしました。
 この作戦では、大規模事業所に対する二酸化炭素の削減義務の導入、二酸化炭素削減量の証書化など、また、その取引市場の創設、太陽光発電のような自然エネルギーの利用の義務づけなど、先駆的な政策を提案しております。本日の提案をもとに活発な議論を広げ、国民的なレベルで機運を高めることで国に実現を迫り、同時に、東京でも独自に行動することで、地球温暖化の阻止に向けた取り組みを強化したいと考えております。
 行政の透明性や費用に見合った効果が厳しく求められる時代を迎え、これまで聖域となりがちだった福祉や医療においても、不断の改革を怠ることができません。
 福祉の改革は、一昨年、推進プランを策定して基本理念を示し、認証保育所などさまざまな施策を独自に実施しております。しかし、この間の取り組みの中で、新たな対応を要する課題が明確になったため、先般、福祉改革STEP2を策定いたしました。
 柱の一つは、サービスの内容について、施設への措置に偏った画一的な対応を改め、きめ細かな福祉を実現することであります。今後は、一人一人が自分に合ったサービスを選択できるよう、グループホームや生活寮、養育家庭など地域に密着した事業を充実してまいります。
 もう一つの柱は、サービスの供給主体について、公立と社会福祉法人中心の閉鎖的な体制を改め、NPOや民間事業者などにも積極的に門戸を開くことであります。国の規制緩和は一向に進みませんが、東京都が実施する改革により、事業者の間で競争が促され、質と量の両面においてサービスを改善できると思います。今後、社会福祉法人や都立福祉施設のあり方について、具体的な対応策を考えてまいります。
 医療の分野においても、スクラップ・アンド・ビルドは避けることのできない流れであり、ことしの課題は、昨年十二月に策定した都立病院改革マスタープランを実行に移すことであります。都立病院を再編整備し、むだのない体制をつくるとともに、広尾病院、府中病院への東京ERの拡充、ITを活用したネットワークの整備などに取り組み、患者中心の医療の実現に努めてまいります。
 東京の住宅は、量的な面では既に必要な戸数を確保しておりますが、質の上では、職住の遠隔化や木造密集住宅など、前世紀の負の遺産が数多く残されております。
 本日発表する住宅マスタープランは、都営住宅の建設が中心だったこれまでの取り組みから、市場を活用した総合的な政策へと転換を図るため、新しく策定するものであります。プランでは、東京における居住の将来像と基本的な取り組みの方向を示しており、今後は、プランに基づき具体的な住宅政策を実行したいと考えております。
 公平で効率的な使用が求められる都営住宅については、特別会計の設置や管理業務の一元化、使用承継制度の見直しなど、引き続き抜本的な改革に取り組んでまいります。
 直ちに着手する必要がある問題は、老朽化が進む分譲マンションの建てかえ支援であります。都内には、建築後三十年以上が経過した分譲マンションが四万戸以上あり、この先、建てかえの時期を迎えることになりますが、現況では、都市計画上の制約、仮住居の不足など多数の障害が存在しております。
 国は、東京都の強い提案を受け、先週、マンション建替円滑化法の制定をようやく閣議決定し、権利の保全などの点で一定の整備が図られる見込みとなりました。しかし、新しい法律だけでは、自主的な建てかえを促進するにはまだまだ不十分であります。この問題を住宅政策における緊急課題ととらえ、独自に、容積率の緩和、都営住宅を活用した仮住居の提供など、効果の高い支援を積極的に進めてまいりたいと思っております。
 昨今蔓延する無責任な風潮は、これまで我々が自明の原理として共有してきた社会の規範を急速に希薄化させております。立場や世代を超えた協力関係は、社会に不可欠な生活のかなめであり、こうした規範の回復に向けた行動が東京都に強く期待されております。
 心の東京革命は、その中核となる取り組みであり、都民集会などさまざまな機会を通じて啓発を行うとともに、子育て相談のアドバイザーを養成するなど、地域と一体となった事業を推進しております。一層の充実を図るため、来年度は、親になる心構えや子育てのコツを伝授する講座を開催いたします。加えて、教育面でも、学校や家庭、地域間での連携を強化してまいります。
 公共の水域では、責任感の欠如からプレジャーボートなどが不法に放置されており、その数は係留船全体の四割を超えております。通行の障害や環境の悪化などさまざまな問題がありながら、法律に基づき撤去するには四カ月以上が必要でありまして、しかも、手続の途中で船舶が移動してしまうなど、十全の措置をとることは事実上不可能であります。
 このような状況を打開し、都民全体の財産である河川や港湾の秩序を確立するため、今回、船舶の係留保管の適正化に関する条例を提案いたしました。この条例が施行されれば、二週間で放置船舶の撤去が可能になります。条例には、全国でも初めてとなる罰則規定を盛り込んでおりまして、広域公共水域の適正な利用を厳しく求めてまいりたいと思います。
 東京がさらなる発展を遂げる上で、多摩、島しょの振興は不可欠な要素であります。多摩、島しょ地域が活性化することは、すなわち東京が多彩な顔を持つことであり、東京の魅力の向上につながります。
 多摩の振興に欠かすことのできない道路交通網は、重点的に取り組んできた成果がようやく実り、大きく生まれ変わりつつあります。首都圏三環状道路の一つである圏央道は、ことし三月、青梅から日の出までの区間が開通し、平成十六年度には、外環道よりも先に、中央高速から関越自動車道までを結ぶ予定であります。圏央道の開通は、交通渋滞の緩和や環状方向のネットワークの形成に高い効果をもたらすものと思います。
 また、産業支援の拠点として、四月に、多摩中小企業振興センターを開設する予定であります。意欲のある経営者が、多摩に集積する大学や研究機関とともに連携しながら、ここを大いに活用し、新しい事業の開拓に積極的に挑戦することを期待しております。
 島しょ地域については、地震、噴火災害の復興を加速するとともに、交通アクセスの整備などを進めてまいりたいと思います。
 三宅島では、相変わらず有毒な火山ガスが多量に発生しておりますが、砂防ダムの建設など、現地での作業は着実に進んでおります。復興計画の策定を開始した三宅村とともに、緊密に協力しながら災害復興に取り組んでまいります。島民の方々には、退避先での生活支援を継続し、日常の不便を少しでも緩和したいと思います。
 二十一世紀は、これまでの時代に比べ、変化のスピードが格段に速くなり、その内容もますます激しくなると思います。そのような中にあって、東京都は社会から遊離した組織とならないよう、この四月、組織の改正と職の新設を行います。
 保健衛生や医療の分野では、小児医療、精神医療など今日的な課題が増加していることから、都民の健康を守る組織として、衛生局を健康局に改編いたします。最近は、特に食品や医療品の安全対策が重要になっていることから、アメリカで評価の高い食品医薬品局、FDAを参考に、東京FDAと位置づけた食品医薬品安全部を設け、危機管理機能の強化を図ります。加えて、都立病院の経営責任を明確化し、患者サービスの向上を図るため、新しい組織、病院経営本部を設置いたします。
 現在、二つの部署が担当している文化行政についても、施策の充実強化を図るため、機能的に集約することを基本に再編いたします。これを契機として、若手芸術家の活動や伝統文化を重点的に支援するなど、芸術文化の創造環境を整えたいと考えております。
 また、硬直的な組織、機能が問題となっている学校の運営を改善するため、教頭を補佐し、教員を指導監督する職として、我が国で初めて都内の公立学校に主幹を配置いたします。
 時代の流れを敏感につかむには、組織や体制を見直すだけでなく、生きた情報に接し、社会の空気を肌で感じることが重要になります。国が持ち得ない東京の強みは、国家の十分の一の規模を持ちながら、多くの現場を抱えていることであります。住民の声が凝縮されている現場こそが、行政の原点であります。三万七千羽が生息し、都民への被害が急増しているカラス対策や、環境の視点を重視した東京の森林再生などは、現場を抱えているからこそ実施にこぎつけることができた事業であります。ことしも積極的に現場に赴き、職員とともに汗をかきながら、現場からの発想を施策に反映していきたいと思います。
 個々の木を鋭く観察する目も持ちながら、同時に、一段高いところから森全体を俯瞰する目を持つことが政策の立案には必要だと思います。さまざまな意見、情報を酌み取り、全体を束ねた上で、より大きな視点に立って都政の方向を決めていきたいと考えております。
 EUは、最初に結成した共同体組織から半世紀をかけて国家に準ずる統合体を形成し、独自のアイデンティティー、独自の歴史をつくり出そうとしております。変化の激しい時代にあって、これだけの成果を達成できたのは、変わることのない大きな目標として、アメリカと対等な力を持つことを目指してきたためだと思います。
 一方、我が国にとっても、欧米と並ぶ世界の三極の構成員として、揺るぎない地位を確立し保持することが、これまでの蓄積を生かす道となり、新世紀の大きな目標になると思います。
 そのためには、まず、戦後半世紀が経過する間に堆積したさまざまな危機を清算し、誤った固定観念を打ち破ることが不可欠であります。そしてその後、本格的な改革に向けた活動を開始することが必要になります。改革の過程では、欧米と同軸上に立って競い合うのではなく、日本固有の文化、慣習を育てながら、独自の座標軸を持って個性を発揮することが重要であり、それが日本の存在感を高めることにもつながってまいります。
 この取り組みは、新しい一つの歴史を造形する作業にほかなりません。国家体質を変え、それを新しい発展につなげるには、相当な時間を要すると思います。東京が最初の一矢を放つことは、大きな意義があると思います。また、東京でしかなし得ない仕事でもあると思います。今、東京が行動することが国全体を動かし、この先、新しい日本を生み出す源流となるとの信念のもとに、東京の改革に取り組んでまいりたいと思います。
 最後に、給与削減措置について申し上げます。この問題は、昨年の第四回定例会における決議を受け、職員団体と鋭意交渉を重ねてまいりましたが、現時点では、残念ながら合意に至っておりません。
 円滑な都政運営を行うには、職員団体の協力が不可欠であり、困難な状況ではありますが、職員団体との合意が得られるよう、今後とも精力的に交渉を進めてまいりますので、なおしばらくの時間をいただきたいと思います。
 改めて申し上げるまでもなく、都民の代表である都議会の決議や都議会議員からの条例の提案については、その重みを真摯に受けとめております。決断すべきときには、速やかに決断する覚悟を持って事の解決に当たり、今定例会の期間中には何らかの方策を示したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 都議会の皆様、都民の皆様の一層のご理解とご協力を心からお願いいたします。
 なお、本定例会には、予算案三十八件、条例案百四件、契約案五件など、合わせて百五十四件の議案を提案しております。よろしくご審議のほどお願いいたします。
 以上をもちまして施政方針表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○議長(三田敏哉君) 次に、警視総監より、都内の治安状況について発言の申し出がありますので、これを許します。
 警視総監野田健君。
   〔警視総監野田健君登壇〕

○警視総監(野田健君) 都内の治安状況についてご報告いたします。
 まず初めに、東京都議会の皆様には、平素から警視庁の運営の各般にわたって格別のご高配を賜っているところであり、心から御礼を申し上げます。
 顧みますと、昨年は、愛子内親王殿下のご誕生という慶事があり、祝意をもって警衛に当たりました。
 最新の機器や設備を完備した警視庁警察学校の新庁舎が落成し、二十一世紀の東京の治安を担う警察官、警察職員の教養施設が整備されました。
 また、重要特異事件の特別捜査や米国での同時多発テロ事件に伴う警戒警備を初め、多発する犯罪の捜査、悪質、巧妙化する組織犯罪への対応、質の高い交通安全対策や積極果敢な地域安全活動の推進など、都民の皆様のご理解とご協力のもと、総力を挙げて首都東京の治安維持と都民生活の安全確保に努めてまいりました。
 以下、その状況についてご説明申し上げます。
 第一は、犯罪捜査活動についてであります。
 昨年の都内における刑法犯の認知件数は、前年を千二百八件、〇・四%上回る二十九万二千五百七十九件で、過去最多を記録いたしました。その内容を見ますと、殺人や強盗、侵入窃盗が減少した一方で、自転車盗や器物損壊が激増、万引きや置き引きが増加しております。
 重要特異な事件としては、歌舞伎町一丁目の雑居ビル火災に伴う多数焼死事件を初め、日本航空機同士のニアミスによる多数傷害事故事件、動物の縫いぐるみのような帽子をかぶった男に通行中の女子大学生が刃物で刺されて殺害された事件、小学生が登校途中に誘拐された事件等が発生いたしました。
 当庁では、これらの事件について、二十三件の特別捜査本部を開設し、懸命の捜査活動を展開して、前年以前に開設した事件を含め十七件、さらに本年に入り五件を検挙したほか、前年から所在不明になっておりましたイギリス人女性に係る事件についても、検挙いたしました。
 しかしながら、上祖師谷一家四人強盗殺人事件については、まことに残念なことにいまだ検挙に至っておりませんが、一日も早い全面解決に向けて粘り強い捜査を今後も推進してまいります。
 また、凶悪犯や重要窃盗犯等についても、重点的な捜査活動を推進した結果、殺人事件全体では八七・六%を検挙し、強盗、強姦、侵入窃盗、自動車盗についても、それぞれ前年を上回る検挙率を確保いたしました。
 前年、発生が急増したピッキング用具を使用する侵入窃盗については、地域警察を挙げての取り組みや機動隊の多角的運用を図るなど、防犯、検挙の両面から諸施策を推進した結果、ピッキングに強い錠の普及もあって、認知件数は前年の一万一千八十九件が四千七百二十七件と、約六割の減少となりました。このことが、侵入窃盗全体における認知件数の減少の要因となっております。
 重要知能犯及び金融、不良債権関連事犯については、元外務省幹部による多額詐欺事件を初め、大手デパート元会長による強制執行妨害事件、信用組合元理事長らによる検査忌避及び業務上横領事件等、社会的反響の大きな事件を検挙いたしました。
 このほか、東京都との合同捜査により、輸入した軽油を取引先に販売したにもかかわらず、納付すべき軽油引取税約十一億円を逃れていた、軽油ブローカーらによる多額地方税法違反事件を検挙いたしました。
 また、急増するハイテク犯罪では、全国で初めて電気通信事業法を適用した不正アクセス事件、インターネットカフェやオークション利用の詐欺事件等、前年を一五・一%上回る百二十二件を検挙いたしました。
 こうした捜査の積み重ねにより、刑法犯の検挙件数は七万五千二百八十八件で、前年に比べて一・七%減少したものの、検挙人員は四万七千二十六人で、一%の増加となっております。当庁では、今後も第一線の警察力の充実強化を図りながら、攻めの捜査活動を展開し、都民生活の安全確保に全力を尽くしてまいる決意であります。
 第二は、組織犯罪対策についてであります。
 近年、来日外国人を中心とする国際犯罪組織、旧来の暴力団、さらに、銃器や薬物の密輸、密売グループが、系統的あるいは複雑に結びついて犯罪を敢行する傾向を強めております。このような状況から、昨年九月に、悪質、巧妙化する組織犯罪に的確に対処するため、三部にまたがる関係七所属及び組織犯罪対策室による組織犯罪対策本部を設置して、総合的な対策を推進しているところであります。
 初めに、国際組織犯罪でありますが、当庁では、水際での検挙や組織の上部に迫る突き上げ捜査を徹底するとともに、六カ所の国際組織犯罪重点地区を指定するなど、取り締まりの一層の強化を図りました。その結果、昨年の来日外国人の刑法犯及び特別法犯を合わせた検挙件数は九千三百十一件、検挙人員は五千百四十六人で、前年に比べて件数で一四%、人員で一一・五%の増加となっております。
 検挙状況から見ますと、殺人、強盗、強姦等の凶悪事件については七十九件、九十一人を検挙しており、前年比で十四件の増加、七人の減少でありました。これは、エステティックサロン等を対象とする集団による緊縛強盗事件などの検挙を通じて、余罪を追及した結果でありまして、これら凶悪事件の検挙人員の六三・七%が中国人でありました。
 外国人の被留置者の延べ人員については、前年との比較で三一・五%と大幅に増加しております。こうしたことに伴って、昨年一年間の留置延べ人員は十年前の二・六倍、過去最高の九十万八千七百八人、一日平均で二千四百九十人となり、その三一・六%、約三人に一人が外国人でありました。
 また、当庁の全留置場定員を超えて留置した日数は、前年の五十八日から九十四日となり、最高時の留置人員は、留置定員二千六百三十九人を百六十三人上回る二千八百二人でありました。
 当庁では、被留置者の増加傾向を受けて、平成十一年から各方面の留置場の拡張、整備を図っておりますが、今後も継続する必要があると考えております。
 次に、暴力団対策でありますが、都内の暴力団は約六百五十の組織、約一万六千人の構成員等を有しており、山口組の東京進出が進む中で、各種の資金源をめぐって依然として緊張した状況が続いております。
 昨年は、松葉会と極東会との対立抗争事件、國粹会の内部抗争事件等により、けん銃発砲事件が過去五年間で最も多い四十八件発生し、七人の暴力団員が殺害されており、前年に比べて、件数で三十九件、死者数で二人増加したのであります。特に、銀座、新橋地区における國粹会の内部抗争事件は、都民を巻き添えにしかねない深刻な事態にまで発展いたしました。
 当庁では、暴力団の壊滅を期して、山口組を最重点とした取り締まりの徹底を図った結果、六千五百五十四人の暴力団員を検挙したほか、暴力団保有の七十八丁を含む百四十丁のけん銃を押収いたしました。
 薬物事犯では、暴力団の関与が目立つとともに、これと結託するイラン人等、来日外国人が著しく増加しております。また、中国・台湾ルートによる巧妙な手口による大量覚せい剤密輸入事件が依然として後を絶たない状況にあります。
 このような情勢のもと、末端乱用者の検挙とその突き上げ捜査の徹底を図るなど、強力な取り締まりを展開した結果、薬物約二百九キログラムを押収するとともに、三千四百三十二人を検挙いたしました。
 暴力団対策法の運用については、住吉会、極東会、稲川会、松葉会及び國粹会の指定暴力団五団体約五千三百人を中心に動向把握を徹底し、中止命令三百三十四件、再発防止命令四件を発出いたしました。
 さらに、暴力団員によるけん銃発砲事件が増加したことから、七件に及ぶ事務所使用制限を発出するなど、組事務所の封鎖や撤去を進めました。
 また、暴力団追放運動推進都民センターを中心に、地域、職域における暴力団追放運動を強力に推進し、資金源の封圧、事件の掘り起こしと積極的な事件化を図るなど、暴力団の排除に努めたのであります。
 当庁では、こうした組織犯罪の現状にかんがみ、本対策を一層強力に推進するため、現在、現行の組織犯罪対策本部を基本にした組織整備の検討を進めているところであります。
 第三は、警備活動についてであります。
 昨年九月に発生した米国の同時多発テロ事件以降、当庁では、国際テロ対策本部を設置するなどして重要施設の警戒強化を初め、ハイジャック対策、NBCテロやサイバーテロ対策など各種対策を講じて、テロ、ゲリラの防圧検挙に努めてまいりました。
 また、米国で発生した炭疽菌事件を模倣する事案が、都内においても五百四十五件発生いたしましたが、NBCテロ捜査隊が出動して、不審物件の検査等、採証活動を徹底するなど、その処理に当たりました。
 さらに、この種事案の拡大防止と撲滅を図るため、捜査本部を設置するなど懸命な捜査活動を展開し、十月には、炭疽菌事件を模倣した郵便局に対する威力業務妨害事件を検挙いたしました。
 サイバーテロについては、いまだ国内での発生はないものの、中央省庁のホームページ改ざん事件等、その前兆と認められるような事案が発生しましたことから、十月にインフラ関連企業との連携強化を目的として、関連企業等三十事業所から成るサイバーテロ対策協議会を設立し、諸対策を強力に推進しているところであります。
 こうした中、極左暴力集団各派は、米国等によるアフガニスタン地域に対する軍事行動に対して活発な反戦闘争に取り組む一方で、全国で七件、うち都内では、明治大学の警備会社会長宅及び新しい歴史教科書をつくる会事務所をターゲットとした二件のゲリラ事件を引き起こしております。
 当庁では、テロ、ゲリラ事件等の防圧検挙を図るため、取り締まりを徹底し、革マル派の非公然アジトを摘発したほか、指名手配被疑者や「よど号」事件犯人の妻の検挙など、極左暴力集団活動家三十五人を検挙いたしました。
 一方、右翼は、歴史認識や米国で発生した同時多発テロ事件に伴う我が国の対応等、内外の諸情勢に敏感に反応して、関係機関に対する抗議、要請行動を活発に展開し、十一月には、米国大使館に対する火炎瓶投てき事件を敢行するなど、四件のゲリラ事件を引き起こしております。当庁では、これらの事件に加えて、暴騒音条例違反等により百五十七人を検挙いたしました。
 本年も、昨日までのブッシュ米国大統領の来日に伴う警護警備を完遂したところでありますが、五月末からの日本と韓国の共同によるワールドカップサッカー大会の開催に伴う諸対策を推進しつつあります。
 今後も、厳しい警備情勢が続きますことから、引き続き的確な警戒警備を実施するなど、テロ、ゲリラ事件の防圧検挙に万全を期してまいる所存であります。
 次に、オウム真理教が改称したアレフでありますが、全国に二十八カ所の主要施設と約千六百五十人の信者を擁しており、このうち、都内には九カ所の主要活動拠点と八社の関連企業があり、約六百三十人の信者が居住しているものと見ております。
 当庁では、昨年、虚偽の住民登録を行った電磁的公正証書原本不実記録・同供用事件や雇用保険の不正受給を目的とした詐欺事件、さらには大企業からのコンピューターデータを持ち出した背任事件等で五人の信者を検挙いたしましたが、これらの事件捜査で判明した事実から、教団が依然として危険性を内包し、その反社会的な体質に変化がないことは明らかであります。
 今後とも、関係機関等と緊密な連携を図りつつ、教団施設に対する警戒警備の強化、厳正な事件捜査等、総合的な対策に取り組み、平穏で安全な都民生活の確保に努めてまいります。
 第四は、交通対策についてであります。
 交通情勢は、ここ数年、四百名前後の方が亡くなるなど、非常に厳しい状況にありますほか、随所で発生する慢性的な交通渋滞や交通騒音、自動車の排気ガス等による公害は、都民生活に悪影響を及ぼしております。
 こうしたことから、昨年は、道路交通法の交通の安全、交通の円滑、そして交通公害等の防止という目的を達成するため、従来以上に円滑、公害防止に配意し、質の高い交通安全を実現しようとする交通三正面作戦を基本方針として、諸施策を強力に推進いたしました。
 安全対策については、悪質、危険、迷惑性の高い違反に重点を置いた指導取り締まりを強化する一方で、地域実態に応じた参加、体験、実践型の交通安全教育の推進を初め、夕暮れ時に自動車の前照灯を早目に点灯するトワイライト・オン運動、目立つ服装の着用促進や反射材を活用するリフレクター運動の普及を図るなど、各種施策を推進いたしました。
 円滑化対策については、ドライバーや歩行者の方々に納得され、わかりやすく、かつ見やすい交通規制を実施するため、規制そのものの広範囲の見直しを行い、さらには、道路標識の整理や改良、信号機の現示時間の調整を行うなど、きめ細かな各種施策を推進いたしました。
 加えて、七月には、交通機動隊を四個隊増設し、方面単位の十個隊編成とするなど執行力の強化を図り、機動力をフルに活用した渋滞解消活動、悪質、迷惑性の高い駐車違反や快適な交通流を阻害する乱暴な走行の徹底した取り締まりを実施したほか、公害抑止対策についても、公害取り締まり検問車を活用した交通公害の取り締まり等を推進いたしました。
 こうした対策の結果、昨年の都内における交通事故は、発生件数、死者数及び負傷者数とも前年を下回り、特に死者数については、それまで二年連続して増加しておりましたが、前年に比べて五十四人減少の三百五十九人で、過去二十年間で最も少ないものとなっております。
 しかしながら、高齢者の死者数は百一人と、過去五年平均の九七・八人を上回っており、本年は、高齢者事故の防止に一層努めてまいります。
 当庁では、今後も関係機関、団体や都民の幅広いご支援、ご協力を得て、社会情勢や都民のニーズに対応した諸対策を展開するとともに、道路交通のIT化を推進するなど、二十一世紀にふさわしい安全で快適な交通環境の確立に努めてまいります。
 第五は、少年非行総合対策についてであります。
 昨年の都内における非行少年の検挙、補導人員は、一万五千五百六十九人で、前年に比べて二%増加しております。そのうち、刑法犯で検挙した少年は一万四千四百四十七人で、三年ぶりに増加に転じており、その内容も、凶悪犯、粗暴犯及び窃盗犯が五六%を占めております。
 とりわけ、暴走族はみずからの勢力を誇示するため、対立抗争等を繰り返しており、その犯行手段も、刃物や鉄パイプ等の凶器を用いたり、火炎瓶を製造、使用したりするなど、一段と凶悪化しております。
 当庁では、少年の特性に配意しつつ、これらの暴走族に対する徹底した取り締まりを行うとともに、実態把握及び補導活動を強化した結果、暴走族三十五グループを解体し、四百六十三人を補導いたしました。
 こうした取り締まりの一方で、少年に対するひと声運動や非行防止教室、少年の社会参加活動等を通じて、少年の規範意識の醸成や有害環境浄化活動に取り組むとともに、出会い系サイト利用等の児童買春事犯など、悪質な福祉事犯について七百五件、五百八十六人を検挙いたしました。
 また、児童虐待事案の取扱件数は六十六件で、被害児童は八十三人でありましたが、そのうち十三件を検挙し、五十三件を児童相談所に通告いたしました。
 本年も、既に東村山で路上生活者に対する傷害致死事件の発生、検挙がありましたが、少年補導活動と非行防止対策を積極的に推進するとともに、少年の福祉を害する悪質事犯の検挙に努めるなど、総合的な非行防止対策に鋭意取り組んでまいります。
 第六は、都民の視点に立った各種活動についてであります。
 初めに、地域に密着した警察活動でありますが、当庁では、交番、駐在所の重要性にかんがみ、その機能の充実強化を図るため、一層地域に密着した活動ができる都市型駐在所の導入やハイテク交番の拡充整備などを図っております。
 また、各種取り扱い等による警察官の不在時を補うため、元警察官の交番相談員を主要交番に配置したり、元警察職員によるボランティア活動として、地域警察官の目の行き届かないところを見て歩くシルバーポリス制度を導入したりするなど、各種対策を講じております。
 このほかにも、必要な場所、時間帯に警察力を集中するシフト制を導入するとともに、ハイテクシステムを駆使した通信指令センターの運用により、一一〇番事案の合理的、効率的な指揮命令と早期処理に努めております。
 風俗環境の浄化については、盛り場を中心に風俗店の立ち入りを強化し、管轄署を中心に、数署にまたがる共同分担捜査体制を構築するなどして、違反の取り締まりを徹底するとともに、ぼったくり条例の指定区域として、新宿歌舞伎町地区など従来の四地区に加え、新たに麻布地区など三地区を指定いたしました。指定区域におけるぼったくり行為は、ほとんど認められない状況にあります。
 さらには、地域の方々や関係機関等の協力をいただきながら、各種活動を通じて、ピッキングに強い錠などの各種防犯器具の普及や、犯罪に遭いにくい共同住宅、道路、公園等を実現する安心・安全まちづくりも積極的に推進しております。
 今月には、新宿歌舞伎町地区に設置した街頭防犯カメラ五十台の運用を開始し、三月には、都内四地区の道路や公園に約七十台の緊急通報装置つき防犯灯を設置する予定でありますが、今後も、犯罪の未然防止と拡大防止に尽くしてまいります。
 次は、相談業務でありますが、当庁に寄せられる生活安全相談は、昨年三万五千四百七十四件で、前年に比べて二・一%減少しておりますが、その内容は依然として多岐にわたっております。
 当庁では、六月に国や都の行政機関、民間団体等の二十六機関から成る相談業務関係機関ネットワークを構築したほか、各警察署においても同様のネットワークの構築を図り、適切な相談業務の推進に取り組んでおります。
 このような中、十月に、配偶者からの暴力を防止するための、いわゆるDV防止法が施行となりましたが、当庁では、法律が成立した時点から相談に直接携わる警察職員に対して必要な教育や研修を行うとともに、関係機関との連携を図り、広報啓発活動を推進いたしました。
 法施行後、相談件数は三百八件で、裁判所から保護命令が発せられた旨の通知があった事案は十件となっております。
 ストーカー相談については六百二十八件で、そのうち五十七件について、違反行為の警告を行うとともに、ストーカー被疑者十人を検挙いたしました。
 今後も、迅速かつ適切な対応により、被害者保護の万全はもとより、重大犯罪の未然防止と悪質事犯の取り締まりに努めてまいります。
 次は、被害者支援でありますが、改正された犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律が七月に施行され、犯罪被害給付制度が拡充されましたことから、被害者やその遺族からの給付金の申請に迅速、的確な対応ができるよう体制の整備を行いました。
 また、九月に発生した歌舞伎町の雑居ビル火災事件では、多数の被害者や遺族への支援活動に当たりましたが、十二月には、大規模事件が発生した際に、捜査本部とは別に被害者支援本部を開設し、各署から招集した被害者特別支援員によるきめ細かな支援活動を総合的に行う体制を構築いたしました。
 以上、都内の治安状況について申し上げましたが、四月に東京都公安委員会の補佐体制の確立、六月には苦情申し出制度の整備、三宅島警察署を除く管下全部警察署への警察署協議会の設置、十月に情報公開センターの新設を図るなど、警察法の改正等を受けた改革を着実に推進しております。
 現下の治安情勢は、犯罪の凶悪化、国際化、巧妙化や組織化、スピード化、さらにハイテク化が一段と進展するなど、厳しさを増しておりますが、これらに的確に対処していくためには、人的基盤の強化が極めて重要でありますことから、当庁は今定例会で警察官の増員をお願いしております。
 警視庁では、今後も、第一線の執行力を充実強化するため、可能な限りの内部努力を重ねて、警察力の効果的な運用を図り、首都東京の治安維持と都民生活の安全確保に全力を尽くす決意であります。
 東京都議会の皆様には、どうか警察活動を取り巻く諸般の状況についてご理解をいただきますよう、そして、警視庁に対するなお一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、私の治安状況報告を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって警視総監の発言は終わりました。

○議長(三田敏哉君) 次に、監査委員より、監査結果の報告について発言の申し出がありますので、これを許します。
 監査委員山本賢太郎君。
   〔九十三番山本賢太郎君登壇〕

○九十三番(山本賢太郎君) 監査委員を代表いたしまして、過去一年間に実施した監査結果についてご報告を申し上げます。
 都は、依然として厳しい財政状況の中、財政再建推進プランに基づき、引き続き内部努力や施策の見直しなどに取り組むとともに、都の事業を対象として行政評価を実施するなど行財政改革を着実に推進しております。
 また、首都東京を再生させ、都市の活力を大きく高めていくことが都政の喫緊の課題であるとし、都政の基本となる東京構想二〇〇〇に基づき、各種施策の推進を図っていくこととしています。
 私たち監査委員は、このような状況を十分に認識し、都政の効率的、効果的な執行を図る上で、平成十三年度の監査に当たっては、一昨年七月にまとめた監査委員監査のあり方検討会報告に示された各種の改善策の着実な実現のもとに、監査委員監査のチェック機能をより一層強化し、予算執行の適正性はもとより、各種事務事業について、投下した経費に見合うだけの効果を上げているかどうか、所期の目的は達成しているかなどについて積極的に評価、検証を実施してまいりました。
 この一年間に実施いたしました各種監査の結果、予算及び各種事務事業は、全体としては適正に執行されているものの、なお、一部に是正、改善すべき事項が見受けられましたので、指摘及び意見を表明いたしました。
 以下、各種の監査の実施状況についてご報告を申し上げます。
 まず、第一に、定例監査でございます。
 都の事務の執行及び経営にかかわる事業の管理が、最少の経費で最大の効果を上げているかどうかに特に留意し、予算科目別に、広く財政全般にわたり、予算の計上、執行等が法令等の趣旨に沿って適正に行われているか、有効かつ効率的に執行されているかを主眼として、実施するものでございます。
 平成十三年度の定例監査の実施に当たりましては、重点的に監査する事項として廃棄物の処理を取り上げ、廃棄物の発生を抑制し、リサイクルの促進を図り、循環型社会の実現に向けて、都は排出事業者としての責任を着実に果たすため、みずからの責任において適正に処理しているかどうか検証いたしました。
 この定例監査の主な指摘事項についてご紹介いたしますと、まず、重点監査事項につきましては、産業廃棄物の収集、運搬または処分を他人に委託する場合には、収集、運搬については運搬許可業者に、また、処分については処分許可業者にそれぞれ委託しなければならないとする廃棄物の処理及び清掃に関する法律第十二条第三項の規定に反した契約が行われているものなど、二十九局中十四局において不適切な事例が見受けられました。
 そこで、環境行政を積極的に推進する都の立場から見ると、廃棄物排出事業者としての責任を十分に果たしていないことから、指摘を受けた各局においては、このような都の立場をよく認識し、廃棄物の処理に適切な対応を行うよう強く求めたところでございます。
 次に、都市計画局外八局における積算基準の作成方法について見たところ、建設局が決定した積算基準をそのまま採用しており、表紙を自局名に差しかえた印刷請負契約を、建設局が契約した同一の業者と別途締結しております。
 平成十二年度積算基準の印刷請負契約において、例えば共通編では、建設局の単価が二千九百五十円であるのに対し、局によっては三千四百八十円から八千六百六十円と割高な金額となっております。
 そこで、積算基準の印刷に当たっては、関係局分を含め、建設局で一括して印刷する方法をとることなどにより、経費の節減及び事務の効率化が図れることから、改善意見を付したところでございます。
 そのほか、固定資産税、都市計画税にかかわる同一画地の認定を誤り、課税不足となっているもの、施設使用料の滞納がありながら適切に処理されていないもの、介護支援専門員実務研修にかかわる研修費用の受益者負担を図るべきものなど、収入支出に関する事務処理に適切を欠くもの、経済性や効率性の面で問題があると思われるものなど、合計八十件を指摘いたしました。
 次に、事業評価手法による行政監査についてでございます。
 この監査は、平成十三年度に初めて取り組んだもので、従来の監査とは異なり、都の主要事業について事業評価手法を取り入れ、個別に事業を評価することを試みたものでございます。
 監査の実施に当たりましては、事業が所期の目的を達成しているか、所期の成果を上げているか、事業の見直しが適切に行われているかなどを主眼として、十の事業を選定し、個々の対象事業それぞれに着眼点を定め検証したものでございます。
 この監査における評価結果を幾つかご紹介いたします。
 まず、応急給水槽の建設、維持管理事業についてですが、新たな応急給水槽は既に数多く建設されており、建設効率が大変悪くなっております。そこで、費用対効果の面から、建設計画の廃止を含めた見直しを行うべきであるといたしました。
 次に、低公害車の普及促進事業についてでありますが、平成十一年度末の電気自動車等の四大低公害車の普及状況を見ると、自動車公害防止計画に定める平成十七年度の目標台数を達成することが難しいものとなっております。そこで、窒素酸化物等の削減目標の達成に向けて、実現可能な計画設定を行うなど、その見直しについて検討する必要があるといたしました。
 さらに、青海コンテナふ頭整備事業において、青海コンテナふ頭の新たなバース等の整備に伴い、取り扱うコンテナ貨物が増加することが見込まれますが、コンテナヤードの拡張が限界に達しております。そこで、ターミナルゲートの二十四時間三百六十五日フルオープン化を行い、荷役作業時間を拡大するなど、港湾設備の効率的な運営を行う必要があるといたしました。
 次に、平成十二年度の決算審査について申し上げます。
 決算審査は、知事から依頼を受け、歳入歳出決算書等の決算諸表につきまして、決算計数に誤りはないか、予算執行について、法令に従って適正に行われているかなどを主眼に審査を行い、意見を付したところであります。
 出納長所属各会計については、提出された決算諸表が適正に表示されていることを確認いたしましたが、財産に関する調書の計数の一部について、出資による権利七億五千万円の登載漏れが判明したことなど、十三局三十二件の誤りが認められ、是正を求めたところであります。
 また、都の財政状況等を踏まえ、総括的な意見として、この先見込まれる財源不足を解消し、強固で弾力的な財政体質を確立していくことが急務であり、スクラップ・アンド・ビルドによる新たな施策の展開、内部努力のさらなる徹底、新規財源の確保など、財政構造改革を不断に推進し、自主的な財政再建をなし遂げるよう、今後とも一層の努力が望まれると付しますとともに、各局事業に意見を付したところでございます。
 局別の主な意見について申し上げますと、看護婦等修学資金貸与金等の債権管理においては、毎年度、年度末残高が誤ったものとなっております。そこで、債権管理の正しい事務処理マニュアルを作成するなど事務改善に努めるとともに、電算システムを有効に活用し、債権残高の的確な把握を求めました。
 また、青山霊園などの区部四霊園においては、都市公園化の計画があるため、空き墓所の再貸し付けが行われておらず、その数は平成十二年度末現在、三千二百八十七カ所、これは墓地面積の約九%に及ぶ状況となっております。そこで、霊園に公園を設けることの必要性について再検証を行い、公園化を図ろうとする規模、区域等の具体的計画を策定するとともに、空き墓所の再貸し付けの適否を含め、霊園の適切な管理について検討を求めたことなど、計五件に意見を付したところであります。
 公営企業各会計につきましては、審査に付された財務諸表が、当該会計の経営成績及び財政状況を適正に表示していることを確認いたしましたが、五千二百九十億円余の未処理欠損金を計上している臨海副都心開発事業会計、同じく未処理欠損金が五千六百十二億円余となっている高速電車事業会計の二会計について、経営改善に向け一層努力するよう具体的な意見を付したところでございます。
 続いて、財政援助団体監査について申し上げます。
 財政援助団体監査は、都が補助金、交付金等の財政援助を行っている団体や資本金を四分の一以上出資している団体などが、財政援助等の目的に沿って事業を適正かつ効率的に執行しているかどうか、また、団体の所管各局が、団体への指導監督を適切に行っているかどうかを主眼として実施しているものであります。
 主な指摘事項ですが、私立学校等に対する補助金について、過大に交付された約千六百七十一万円の返還を求めたもの、交通局が出資している東京トラフィック開発株式会社に貸し付けている土地について、会社が他の会社に転貸し、多額の転貸差益を経常利益としていることの見直し検討を求めたもの、写真美術館において、インターネットを活用した情報収集手段を検討し、経費削減を図ることを求めたものなど、計七十三件の指摘をするとともに、新都市建設公社の経営の観点から、今後の用地取得のあり方について見直しを検討すべきであるとしたものなど、計十一件の意見を付しております。
 次に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は、都の施工している工事について、計画、設計、積算、施工等の各段階において不経済な支出や施工不良がないかなど、技術面から当該工事が適正に行われているかを主眼として実施するものであります。
 中央防波堤内側の既設構造物撤去作業工事において、土どめ工事が必要であるにもかかわらず、土どめ工を施すことなく掘削しており、安全管理に適切さを欠いているものや、電気設備工事に関し、誤って積算が過大となっているものなど、合計十一件の指摘をいたしました。
 なお、定例監査、工事監査において指摘した収入不足や不経済支出の金額を合計いたしますと、約四千四百八十二万円となります。
 これら指摘事項については、各局において、工事期間中のものを含め、早急に是正改善するよう求めたところであります。
 最後に、住民監査請求について申し上げます。
 住民監査請求は、住民が執行機関や職員による財務会計上の行為に違法または不当な行為があると認めるとき、監査委員に監査を求め、必要な措置を講ずることを請求するものであります。この一年間に、公金支出に関するもの十六件、その他九件の合計二十五件の請求がございました。
 その結果は、地方自治法に定められている住民監査請求の要件を欠いていることから、監査を実施せず、いわゆる却下したものが十二件、監査を実施したもののうち、措置すべき事項を執行機関に勧告したものが三件、違法、不当とする請求人の主張には理由がないことから、いわゆる棄却したものが十件であります。
 本報告で述べた監査において監査対象としたものは、定例監査では本庁、事業所あわせて五百十二カ所、行政監査では総務局外十一局、財政援助団体等監査では二百四十八団体及び所管局、工事監査では財務局外十六局及び島しょ関係部局でございます。また、決算審査の対象は、出納長所属の一般会計及び十八の特別会計ほか、病院会計など十二の公営企業会計でございます。
 この一年間の監査の実施状況について述べてまいりましたが、執行部局においては、これらの監査結果に十分留意し、今後の事務の適正かつ効率的な執行に一層の努力を望むものであります。
 なお、平成十一年度及び平成十二年度に実施した監査の結果、執行機関に是正改善を求めていた百七十件のうち、百六十五件について措置を講じた旨、通知がありましたことをあわせてご報告申し上げます。
 以上、監査結果について報告してまいりましたが、私たち監査委員は、監査の専門性のさらなる向上に努め、都における行財政運営の適正性を確保するという監査委員監査の基本的な使命を改めて認識し、都民の信頼にこたえていきたいと考えております。
 今後とも、都民の期待にこたえるべく監査業務の遂行に万全を期してまいります。
 以上をもちまして監査結果のご報告を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって監査委員の発言は終わりました。

○議長(三田敏哉君) 次に、包括外部監査人より、平成十三年度包括外部監査結果の報告について説明を求めます。
 包括外部監査人筆谷勇さん。
   〔包括外部監査人筆谷勇君登壇〕

○包括外部監査人(筆谷勇君) 平成十三年度包括外部監査人の筆谷勇でございます。
 本日は、貴重なお時間を割いてこのような機会を設けていただきましたことに深く感謝を申し上げたいと思います。
 それでは、早速包括外部監査の結果について、ご説明に入らせていただきたいと思います。
 まず最初に、私が今回の監査の実施に当たりまして常に念頭に置いていたことについてご説明させていただきたいと思います。
 まず、それは第一に、一般都民の目から見て、都民の役に立った行政が行われているのか。それから第二番目には、やはり効率性、経済性を考慮しない、いわゆるお役所仕事的なものになっていないかどうか。あるいは、第三番目に、事業の成果や、あるいは運営の実態を外部の目で見直すことによりまして、これまで気づかれなかったような改善点を私たちの目で発見いたしまして、是正の方策についてご提言を申し上げたいという三点でございました。
 次に、今回監査の対象としたテーマですが、次の三点でございます。
 まず第一は、試験研究機関の管理運営についてでございます。監査の結果は、指摘事項が三十七件、意見が五十二件、提言が三件というふうになっております。
 第二番目といたしましては、中央卸売市場の経営管理についてでありまして、指摘事項は四件、意見は八件でございました。
 それから、第三番目といたしましては、監理団体の経営管理についてでありまして、その指摘事項につきましては五件、意見は二十一件、提言は二件でありました。
 以下、テーマごとに内容についてご説明いたしたいと思います。
 まず、第一のテーマの試験研究機関の管理運営について申し上げたいと思います。
 監査の対象といたしました試験研究機関は、環境科学研究所など十五機関でございます。監査に当たりまして、行政施策に役立つ試験研究を行っていらっしゃいますかどうか、あるいは費用対効果の分析が的確に行われているかどうか、それから、研究成果に対する評価が適切に行われているかどうか、そういう点について着眼点として監査を実施いたしました。
 その結果、主な事項についてご説明申し上げたいと思います。
 まず、試験研究事業の費用対効果分析についてでございます。ご存じのように、地方自治体に適用されている現在の会計方式というのは、地方自治法の定めにもよりますが、現金主義会計というふうになっております。しかしながら、この費用対効果分析で求めているのは、より的確な、いわゆる行政コストというものを把握して、それを成果と対比するという、いわゆる収益、費用の期間帰属を現金収支のタイミングではなくて、経済的価値の変動に基づき――つまり、その取引だとか、取引事象、そういう変動に基づいて認識するということが有効であるというふうにいわれておりますが、これは会計の専門用語でいいますと、発生主義会計というんですけれども、今後、この費用対効果分析をするに当たっては、ぜひこの発生主義的な考え方を取り入れていただきたいというようにお願いを申し上げた次第でございます。
 次に、個別の試験研究機関に関する事項といたしまして、十五機関のうち、七機関について申し上げさせていただきたいと思います。
 まず、産業技術研究所の放射線利用施設についてでございますが、中小企業に役立つ応用性あるいは実用性のある、試験を主眼とした試験研究をやろうということでやっていらっしゃるわけですが、なかなか成果という点では若干、やはり今後もっと努力をお願いしたいという点を種々申し上げてございます。
 それから、同じく農業試験場につきましては、採算性の向上の観点という点が若干欠けているのではないかということでありまして、東京という地域の農業の特色をもっとより強く生かした戦略的で積極的な経営態度というものが望まれるんではないかという運営方法について、若干いろいろご意見を申し上げさせていただいたわけです。
 それから、同じく畜産試験場につきましては、ご存じのように、「TOKYO X」豚という種豚供給事業が行われておりますが、これの特に広域的な生産販売体制の整備ということがやはり重要だろう。現状でありますと、やはり最大限やっても赤字になっちゃうというような状況でございますので、収支を均衡させて改善させるというような観点から、もう少し経営的な視点を取り入れて経営をやっていただけたらどうかというような点について申し上げてあります。
 次いで、水産試験場についてでございますが、これは活魚の輸送技術の開発とか、あるいは産地直送、あるいはインターネット通販などの漁獲から販売までの一貫した流通技術開発体制、そういうものに取り組んで、もう少し機動性のある、あるいは先ほど知事の説明にもございましたが、いわゆる首都圏の連携のとれた経営の手法があるのではないかというような点について申し上げてあります。
 それから、土木技術研究所につきましては、緊急または重要な研究テーマをプロジェクト研究というふうに位置づけをいたしまして、重点的な予算配分をやるように心がけていただきたい。現在はどちらかというと経常研究ということで、頭割りで行われているという弊害がありますので、もう少し重点的に効果のある研究を進めていただきたいというようなことでございます。
 さらに、この試験研究機関には二つの財団法人がございまして、東京都医学研究機構と東京都老人総合研究所というのがございますが、この両財団につきましては、所管局がそれぞれ衛生局、福祉局と異なっておりまして、法人形態は一応別になっておりますが、やはり研究内容を見てみますと、同じような研究が行われておりまして、管理経費の節減とか、あるいは研究体制の充実、人的あるいは研究設備等々の研究体制の充実のために、一つの医療福祉統合研究機構というものに統合したらどうかというような意見も申し上げております。
 以上を総合しまして、試験研究機関の今後のあり方といたしまして、やや広い視点から将来的な課題として、三点ほどの提言をさせていただいております。
 提言の第一点は、試験研究機関の設置形態の問題でございます。
 本監査での指摘、意見につきましては、現行の設置形態、つまり、東京都の直営とか財団とか、そういうようなもので行われておるわけですけれども、いろいろ予算上の制約とか、いろいろの人的、あるいは資源の共通とかそういうようなものがございまして、もう少し改善の余地があるということで、やはり財務会計あるいは人事制度を抜本的に改めるためには、地方版の独立行政法人的な制度導入について検討されてみたらどうか。ご存じのように、国の独立行政法人制度は去年の四月一日から行われておりますが、やはり地方版についても、そろそろこういうものについて考えたらどうか。もう少し弾力的な試験研究の運用を図れるのではないかというような提言でございます。
 それから、提言の第二といたしましては、都立の大学との連携についてでございます。
 都立大学につきましては、昨年度の監査でいろいろご指摘申し上げたわけでございますが、都立大学にも試験研究機関がございまして、そことの人的な資源とか設備などの共用について、十分今後検討する余地があるだろうということで、やはり大学との連携で、教員と研究員の交流とか、あるいは共同研究を積極的に推進して、双方の活性化を図るということが重要な課題になるのだろうと思いますので、提言の第二とさせていただきました。
 提言の第三は、首都圏連携についてでございます。
 これは、先ほどやはり知事さんの方から話がございましたけれども、この試験研究機関につきましても、全く同じような問題がございまして、首都圏に共通する課題については、農業分野とか、あるいは中小企業の支援分野とか、いろいろ共通した課題を抱えておりまして、それぞれが共同してやったら、今後ますます研究の効率性、経済性とか、首都圏産業の活性化というような点に貢献するというようなことから、試験研究機関が連携して共同研究、あるいは共同研究テーマの調整というようなものを図るとともに、また、中小企業の指導、支援というような立場からも、やはり首都圏全体の問題として取り組むという姿勢が必要だろうというようなことを申し上げております。
 このほか、研究テーマの全庁的な調整とか、あるいは国からの受託研究費などの外部資金の積極的導入、あるいは任期つき研究員の活用、あるいは研究用機器の再リース料の精査、――この再リース料につきましてはいろいろ問題もございまして、やはり再リース料につきましても、もっと合理的な計算根拠を示すように再検討すべきだろうというようなことで、精査をされたらどうかというようなことについて、ご意見を申し上げてあります。
 次に、本監査の第二のテーマでございますが、中央卸売市場の経営管理について申し上げさせていただきます。
 監査の実施に当たりましては、観点といたしましては、卸売市場の運営が効率的、経済的に行われているか。それから市場の施設利用料ですね。この市場はご存じのように十一市場ございますが、利用料が適正なものになっているかどうか、場所を貸しているということですから、使用料はやはり適正なものが回収されているか、あるいは会計処理、財務諸表の表示は適正になされているかというようなことを今回の着眼点といたしました。
 まず一つは、主な事項について申し上げますと、中央卸売市場の面積割使用料というのは、築地市場の十一市場のすべてが同一単価を利用されているんですね。やはり場所的な有利性とかいろいろあって、場所を勘案した使用料の単価というものについてお考えになったらどうかということを申し上げております。
 それから、非常に不思議に感じたのは、中央卸売市場にはいろんな会計がございますが、その中で特にと場会計、と畜場ですね。と場会計については単式簿記によっておりまして、花きだとか、肉だとか、そのほかのものにつきましては、発生主義複式簿記会計をやっているんですね。と場会計につきましても、やはり同じようなディスクロージャー方法をとるべきで、発生主義会計によりまして、貸借対照の科目表示とか、あるいは特に、どうやらと場会計に伴って発生しております長期滞納金の処理というような問題について解決が必要だ。
 それから、これは一般的な問題ですけれども、固定資産の減価償却方法などについて若干改善を要するというようなことについて意見を申し述べてあります。
 それから、最後に、本監査の第三のテーマであります監理団体の経営管理という点でございます。
 監査の対象といたしました監理団体といたしましては、東京都道路公社と財団法人東京港埠頭公社でございます。
 同じように、着眼点といたしましては、それぞれの監理団体が設立目的に合致した事業を効率的、経済的に実施しているか、あるいは会計処理とか財務諸表が適正に作成されているか、経営成績あるいは財政状態はどうなっているのだというようなことを着眼点といたしまして、見させてもらいました。
 まず、東京都道路公社についてでございますが、まず公営企業金融公庫からの金利が相変わらず非常に高い。六%を超える非常に高い財投金利といいますか、高い金利で借り入れが行われているということで、低利借り入れへの借りかえについて、もう少し努力をする必要はないかというようなことですね。
 それから、もう一つは債務償還、つまり、道路公社の場合は特にひよどり山のトンネルとか橋等を持っておるわけですけれども、それは借入金によって保持しているということで、借入金を、三十年で借金を返すということで、一方、あのトンネル等は六十年とかそういうところで、トンネルとか橋の使用期間と債務の償還期間とは必ずしも一致していない。特に問題に感じたのは債務の償還期間ですね。債務の償還について、ただ単に債務償還の情報だけは流しているということで、あるべき債務償還の金額との対比がなされていないというようなことについて、やはり情報を都民の皆様に流すべきだろうというようなアドバイスをさせてもらっています。
 これに関連いたしまして、二点の提言をさせていただいております。
 まず一つは、事業計画の定期的な見直しについてでございます。
 今申し上げましたように、特に道路公社につきましては、橋だとかあるいはトンネルですね、通行量によりまして当初の償還計画に非常に大きな狂いが生じておるわけでございまして、債務償還について非常に難儀しているというところでございまして、再度、やはり交通量の実態とかそういうものに合った債務償還計画の見直しというものについて考え直す必要があるだろうというようなことを申し上げております。
 特に、これは非常に難しい問題なんですけれども、トンネルだとか道路というか、土地部分を減価償却の対象にして、これを有料道路料金として徴収しているんですけれども、こういうことは本当に正しいのかどうかというようなことについて、ちょっと疑問を投げかけております。
 もう一つは、非常に重要なことは、今の道路公社につきまして、橋とトンネルにつきましては、減価償却が実施されていません。それにかわるものとして、債務償還費が減価償却費にかわるものとして費用に計上されておりますが、こういう考え方は、実は今、世界の会計の流れからして、こういう考え方をとっている国は一つもないのですね。やはり橋は橋というか、要するに、インフラ資産の評価の問題と債務償還の問題と別に切り離して考えるという考え方が主流をなしておりますので、この辺の考え方をやはり整理しておく必要はあるだろう。この問題は、単に東京都さんの道路公社だけではなくて、道路公社は四十三社あるそうですけれども、これの全体を通じて、この会計のあり方について見直す必要があるだろうというような提言を申し上げております。
 それから、その評価のやり方につきましては、いろいろ理論がありまして、償却後再調達価額だとか、あるいは維持補修引当金の計上とか、これはちょっと専門的な言葉になりますので控えますけれども、やはり会計方針につきましては、皆様がわかりやすいような方法で開示する。今現在は、道路事業、例えば損益が出ますね。収益と費用の差額を損益というんですけれども、その損益がゼロ表示になっている。ゼロというのはなぜかというと、道路事業損失補てん引当金、準備金というようなものが計上されておりまして、そういう会計としては非常に好ましくない方法が行われておりまして、こういうものについては直すように申し上げておきました。
 続きまして、財団法人東京港埠頭公社について申し上げます。
 まず、東京港埠頭公社につきましては、外貿ふ頭事業などの六つの会計が行われておりますが、この会計につきまして、やはり全体がわかるような形の合計を出した資料をつくってくださいというようなことを申し上げております。特に、その中で、フェリーふ頭事業につきましては、特に今現在、なかなか経営が難しい状況になっているということで、このあり方について、今後十分検討をされたらどうかというようなことですね。
 一方、建設発生土の残土事業の運用方法につきましても、当該残土事業を請け負っておる会社との関係で、もう少し収益性のあり方というものについて話し合いをしております。
 こんなことで、主にこの二つについていえるんです。この道路公社あるいは埠頭公社の両方についていえるんですけれども、やはり完全な貸借対照表の管理というものが十分に行われていないということから、債権の管理という点、あるいは滞納資産の管理という点で、もう少し考え方を改める必要はあるだろうということで、その滞納している債権を回収する方法等について検討するというような方法論について考えてください。これは民間は、そういう年齢調べ表とか、別な方法でいろいろやっているんですけれども、そういう民間の考え方をいろいろご紹介申し上げておきました。
 そんなようなことで、いろいろ会計を中心に、かなりいろいろな改善点について申し上げてきましたが、今後ともこの東京都の経営につきまして、この外部監査がいかにかかわっていくべきかという問題について、非常に難しい問題がございますが、やはりこの外部監査の結果を十分に留意されまして、民間の経営管理の考え方、あるいは手法、そういうものを十分留意された上で経営管理に役立てていただきたいというような趣旨で、この外部監査が行われておりますので、十分都議会におかれましても、そういう点が大体我々の監査報告書の中心になっているということをぜひご理解願いたいと思います。
 そんなことで、今後とも、この外部監査のあり方についてぜひご理解を賜りたいと思います。
 以上で終わります。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって包括外部監査人の説明は終わりました。

○六十七番(服部ゆくお君) 議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明二十一日から二十五日までの五日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(三田敏哉君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明二十一日から二十五日までの五日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、二月二十六日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後三時十六分散会


文書質問趣意書及び答弁書

一三財主議第六一〇号
平成十四年二月十二日
         東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 三田 敏哉殿
   文書質問に対する答弁書の送付について
 平成十三年第四回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
   後藤雄一議員
   小松恭子議員
   松村友昭議員
   丸茂勇夫議員
   大山とも子議員
   曽根はじめ議員

平成十三年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 後藤雄一

質問事項
 一 都が支払う会費の実態について
 二 東京国際フォーラムの長期修繕予定表について
 三 庁有乗用車の運行管理業務委託について
 四 都立病院の情報の管理について
 五 給食会について
 六 都民の情報を管理する職員の体制について
一 都が支払う会費の実態について
  行革一一〇番が「都が公益法人に支払った金額が解る文書」を情報公開請求し調査したところ、会費と言う名の補助金、また、会費とは言えないような高額な公金が支出されているものを数多く発見した。
  水道局を例にとり説明する。
  会費の支払い先は石原都知事が会長をつとめる「社団法人日本水道協会(以下「日水協」という)」である。平成十三年度、都は「日水協」に対し、五百七十六万五千八百十円の会費を支払っている。
  会費の計算方法は、均等負担額(四万三千円)に「前々年度の年間有収水量」を基準にするという都民の水道使用量によるスライド方式をとっている。
  この会費の徴収方式は昭和五十八年度から始まり、五十九年、六十年に改正があり、その後十七年間も改正されていない。
  「日水協」を調べてみると、明治三十七年の「上水協議会」が原点であり、昭和七年「社団法人水道協会」、昭和三十一年「社団法人日本水道協会」と歴史的な活動がなされてきた。
  精査してみると、平成十三年十一月一日現在の職員数は二百五十九名。内訳はプロパーが百四十七名、都OBが二十一名、国およびその他事業体が九十一名。約五〇%が天下りである。
  平成十二年度の決算書によると、収入が三十七億円(会費・入会金収入が四億六千万円)、また、剰余金計算書によると、剰余金が二十億円以上もある団体である。
  都は「日水協」同様のスライド制の会費として、都下水道局が社団法人「日本下水道協会」に六百五十万円、「日本下水道協会関東支部」に百万二千円、「日本下水道協会東京支部」に二十一万円、合計七百七十一万二千円。都交通局は同様に、社団法人「公営交通事業協会」に六百二十三万円、社団法人「日本地下鉄協会」に七百八十万円を支払っている。
  また、港湾局が所管している港湾振興協会に対し、港湾局から三百万円、港湾局の外郭団体の埠頭公社から二百五十万円の会費を支払っている。
  右のような会費の支払いがある以上、会費についても社団法人等の実態を把握した上で支払うべきだと考える。
  現在、「日水協」の会長は石原知事、そして、専務理事は都庁OBである。
  そこで、知事にお伺いする。
  都は会員として、会費の金額、また、会費の計算方法を見直すべき時期だと思うがご見解をお伺いする。
  また、「日水協」の会長との立場で見解をお尋ねする。
二 東京国際フォーラムの長期修繕予定表について
  石原都知事も記者会見で「シーガイヤ」に引けを取らない酷さ!と酷評しているのが、敷地面積―三万平方メートル、土地の推定時価六百億円、建築費が一千六百五十億円の東京国際フォーラムだ。
  都が依頼した外部監査委員は、国際フォーラムを分析して「平成十一年度末の事業損失を三十五億円、金利を含めれば事業損失は八十九億円。開業以来損失が累積し採算の見通しが付かない。このような巨額な投資プロジェクトが赤字のまま、採算の見通しが付かないとすれば、民間企業であれば大赤字プロジェクトの部類に入り、投資の失敗が重大な経営問題とされていることであろう。実際、この規模のプロジェクトが失敗すると相当な企業でも、倒産の危機に追い込まれる可能性がある。」と、東京国際フォーラムの経営と課題と題しボロクソに言っている。
  右外部監査報告を読んで、行革一一〇番が情報公開で修繕にかかる経費に関する文書を請求したところ、当初、そのようなものは存在しないのでは!と言っていたが、現場担当者からの証言により存在することが判明し、「東京国際フォーラム長期修繕計画表(以下「修繕計画表」と言う)」が公開された。
  「修繕計画表」によれば、平成三十年度までに予定されている修繕費の総額は何と「四百十二億八千九百十八万九千円」と書かれている。
  一方、フォーラムの収支を見てみると、平成十三年度から本部スペースの家賃として五千万円を都に支払うことになった。しかし、これはあくまで本部スペースであり、フォーラムが営業に使用している劇場・会議室スペースは含まれていない。
  フォーラム側は、劇場・会議室部分の賃料を支払う考えはない。っまり、事業形態は独立採算の形態を取りながら、国際フォーラムが収益事業であることを認めず、家賃も払わなくて良い!と思っているらしい。
  行革一一〇番は、国際フォーラムは劇場・会議室・催し物場であり、都立図書館・都立病院・都立体育施設等の一般的な公共施設ではなく、採算性を考慮すべきであると考える。
  今後、国際フォーラムが年間修繕費を自前で捻出するためには、今までに修繕した一億三千万円を引いても、平成三十年度までの十七年間で約四百十億円、一年間二十四億円の利益を生み出さなければならない。これは不可能な金額である。
  そこで、知事にお伺いする。
  都は、どうやって国際フォーラムの修繕費「十七年間で約四百十億円」を捻出するお考えか?
  また、現在想定されている今後十年の国際フォーラムの収支予想の数字を教えていただきたい。
  国際フォーラム事業の廃止を含めた抜本的な解決策を見つけるためにも、検討委員会等を早急に立ち上げることを提案するが、知事のお考えをお伺いする。
三 「庁有乗用車の運行管理業務委託」について
  前回の第三回定例会の一般質問でも取り上げたが、都は行財政再建の名のもとに、都民に負担を強いているにもかかわらず、公用車で局長の朝晩の送迎をしている。
  その公用車の運行は「庁有乗用車の運行管理業務委託」として、「丸の内運輸株式会社に十五台。大新東株式会社に十五台」と二社と単価契約を結び、推定総額一億六千百二十八万二千二百五円を支払っている。
  来年度は四千億円以上の財源不足が生じるとの見方もあり、一億六千万円を超える税金を使っての公用車による局長の朝晩の送迎は即刻廃止すべきだと思う。
  深夜に及ぶ仕事があるときは、タクシーを利用すればいいではないか!
  知事の見解をお伺いする。
四 都立病院の情報の管理について
  都立荏原病院で入院していた老人がなくなられた。遺族は死因に疑問を持ち、裁判所に証拠保全を申し立て、患者のカルテ・レントゲン写真、レセプト等を入手した。
  荏原病院から提出された資料を精査したところ、
  (1) 提出された患者の資料の中から、他人の心電図が発見された。
  (2) IDカードのカードリーダーの日付と、診察日等の日付が違う文書が多く発見された。
  (3) 輸血をした数字と輸血の本数が違う。
  (4) カルテ等に医師のサインがないものが多数あることが判明した。
  (5) レセプトの点数と、会計伝票の点数が違う。
 と、常識では考えられない事実が多数判明した。
  病院側は、右事実を認め文書で謝罪した。
  行革一一〇番が関係者に聞いたところ、これでも最近は良くなったとのことである。
  また、レントゲン写真の管理についても、保存されているレントゲン写真の患者の氏名およびIDカードの誤記を正すために、訂正が頻繁に行われており、訂正したことを証する記載もないばかりか、訂正前→訂正後を記載も大学のノートに書かれており、しかも、そのノートはメモとして扱われ、一年で廃棄されていた。
  都立病院の管理体制についてお伺いする。
  都立病院が都民から信頼を得るためにも、都立病院が所持する文書・情報を洗い直し、管理を徹底することを求める。そして、病院の文書の流れのフローチャートを作成し、都民に公開すべきだと思う。
  お考えをお伺いする。
五 給食会について
  教育庁は、都立高校等の民間委託されている給食業務の安全管理を目的として、財団法人東京都学校給食会(以下「学校給食会」という)に「管理業務・普及業務・保存食保存業務・講習会・研修会」を事業委託している。
  平成十三年度は三千四百九十五万二百二十円である。
  民間委託された業者には、調理師がおり、そのうえ、学校には栄養士がいるのに、なぜ、管理業務を学校給食会に委託しなければならないのか疑問である。
  また、調理したものを保存しておかなければならないが、保存するのは当該学校であり、なぜ、学校給食会に保存食保存事業として委託するのか疑問である。
  講習会・研修会も民間委託した以上、委託先の業者の資質向上につながることであり、業者の負担で行わせるべきで、都の経費で学校給食会に委託するか疑問である。
  給食業務の安全管理を目的とした現在の方法による学校給食会に対する事業委託は必要ないものと思う。お考えをお伺いする。
六 都民の情報を管理する職員の体制について
  私は、十月の終わりに、世田谷都税事務所を訪れた。都税事務所の職員が扱う情報は、都民のプライバシーに属するものばかりだ。
  しかし、世田谷都税事務所を見るかぎり、赤いジーパン姿の女性職員がさっそうと仕事をしているのを筆頭に、ネームプレートを大部分の職員が付けていないことから見て、どうみても「仲良しクラブ」、喫茶店で楽しく歓談をしているかのようだ。ネームプレートを付けていない理由を調べて見ると、都が作成した「職員のネームプレートの着用に関する要綱」。そして、都と組合との「一般職員のネームプレート着用に関する覚書」なるものがでてきた。要項には、
  第1、(目的)この要綱は、職員のネームプレートの着用に関し必要な事項を定めることにより、都民サービスの向上及び職員相互の連帯意識の高揚を図り、もって円滑な都政の推進に寄与することを目的とする。
  第3、(着用職員)ネームプレートを着用する職員は、局の長の意見を聴取の上、総務局長が定める。
  第4、第3によって総務局長が定めた職員は、職務の執行中、原則として左胸の見やすい箇所にネームプレートを着用するものとする。
     ただし、次の各号に掲げる場合は着用しないことができる。
     (1) 出張して職務を行うとき。
     (2) 着用することが職務の遂行の妨げになるとき。
  また、覚書には「一般職員のネームプレート着用の実施にあたっては、強制しない。」と書かれている。
  世田谷都税事務所は組織上「主税局」に属する。
  右、要項第3の文章に当てはめると、「世田谷都税事務所のネームプレートを付けていない職員は、主税局長がつけなくてもよいと認めている。」と言うことになる。この考えには、当然、人事担当者は否定する。と言うことは、世田谷都税事務所では都民へのサービスを無視し、労働組合との覚書を優先している。
  しかし、これで都民の理解が得られるだろうか、都税事務所と同様に税金の取り立てを行っている世田谷税務署は首からぶら下げる写真入りのIDカードを使用している。すでに都庁では、都立病院では写真入りIDカードが導入されている。また、都庁へ仕事で来る民間業者用の入庁許可書として総務局総務部長名で写真入りのIDカードが民間業者に配布されている。
  そこで知事にお伺いする。
  都民のプライバシーを扱っている職員には写真入りIDカードを着用を義務づけるべきだと思うが如何か?
  また、組合と取り交わした、「職員のネームプレートは強制するものではない」との覚書を廃止し、職員に写真入りIDカードの着用を義務づけてはどうか?

平成十三年第四回都議会定例会
後藤雄一議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 都が支払う会費の実態について
  1 都は、加入団体の会費の金額、また、会費の計算方法を見直す時期だと思うが、見解を伺う。

回答
  お尋ねの公益法人の会費については、当該法人の活動状況や各会員の事業規模等に照らして妥当な水準にあるものと考えています。

質問事項
 一の2 社団法人日本水道協会の会長との立場での、知事の会費についての見解を伺う。

回答
  先にもお答えしたとおり、日本水道協会の会費は妥当な水準にあるものと考えています。

質問事項
 二 東京国際フォーラムについて
  1 どうやって、十七年間で四百十億円の修繕費を捻出するのか、伺う。

回答
  長期修繕計画は、構造物・設備機器等の一般的な耐用年数などを基に作成した、事務上の参考資料であります。
  なお、具体的な修繕の実施に当たっては、現地調査を行うなどしてその必要性の有無を判断し、毎年度予算措置いたします。
  また、平成十五年度からは、東京国際フォーラムの管理・運営を株式会社に任せ、基本的な維持経費はもとより今後予想される修繕費をできるだけ負担させ、都費の投入を抑えてまいります。

質問事項
 二の2 今後十年の収支予想について、伺う。

回答
  平成十五年度からは、東京国際フォーラムの管理・運営を株式会社に任せることとしました。このことにより、今後、一層経営の効率性・収益性の向上に努めてまいります。
  なお、平成十五年度の株式会社移行後の収支予想については、設立準備を進める中で必要に応じ、具体的な検討をしてまいります。

質問事項
 二の3 国際フォーラム事業の廃止を含めた抜本的な解決策を見つけるため、検討委員会を早急に立ち上げることを提案するが、所見を伺う。

回答
  東京国際フォーラムの経営を大きく改善するために、平成十五年度からは、東京国際フォーラムの管理・運営を株式会社に任せることとし、設立に向け都及び財団で準備を進めてまいります。
  なお、将来的な、東京国際フォーラムを含む近隣地区の利用のあり方については、大手町・丸の内・有楽町地区の再開発計画やJR等の動きも含め、今後、関係機関と調整しながら検討してまいります。

質問事項
 三 公用車による局長の送迎は即刻廃止すべきだが見解を伺う。

回答
  局長は、都政の各事業分野のリーダーとして、その職務遂行のために、いついかなる時でも必要な情報収集、判断、指示が行えるよう常に連絡体制を確保し、適切な行動がとれるようにしておくことが必要です。
  このため、日常の都の各行政機関や事業現場、国の機関など各所への移動時及び通勤時にあっても、職責を果たすために必要な機動性及び機密性を確保するため、特別職に準ずる形で公務遂行上の必要性から送迎を行っています。

質問事項
 四 都立病院の文書管理について
   都立病院が所持する文書・情報を洗い直し、管理を徹底することを求める。そして、病院の文書の流れのフローチャートを作成し、都民に公表すべきだが、所見を伺う。

回答
  御指摘のとおり、都立病院が都民との信頼関係を深めるためには、患者さんと医療従事者が診療情報等を共有することが重要です。このため、診療録等の記載については、平成十三年二月に「診療録等記載マニュアル」を作成し、職員に周知を図るとともに、都民にもこれを公開しているところです。今後とも引き続き、その遵守について徹底を図ってまいります。

質問事項
 五 都立高校の学校給食会における安全管理を目的とした、現在の方法による学校給食会に対する事業委託は必要ないものと考えるが、所見を伺う。

回答
  都教育委員会は、昭和六十年度から都立学校の給食調理業務を民間委託してきました。
  調理業務委託にあたっては、学校給食が教育活動の一環として実施されることから、この円滑な運営と水準の確保に十分配慮しています。
  (財)東京都学校給食会への事務事業委託は、調理業務受託者に対する研修や巡回指導などであり、調理業務従事者が安全衛生管理の徹底などに配慮しつつ、学校給食の調理業務を円滑に実施するために行っているものです。
  都教育委員会は、これまで(財)東京都学校給食会への委託事業内容について必要な改善を図ってきたところでありますが、今後とも改善に努めてまいります。

質問事項
 六 都民のプライバシーを扱っている職員には、写真入りIDカードの着用を義務付けるべきだと思うが如何か。また、組合との「職員のネームプレートは、強制するものではない。」との覚書を廃止し、職員に写真入りIDカードの着用を義務づけてはどうか、所見を伺う。

回答
  職員のネームプレートの着用については、「都民サービスの向上及び職員相互の連帯意識の高揚を図り、もって円滑な都政の推進に寄与することを目的」として、行っているところです。このため、都民のプライバシーにかかわる業務に携わっているか否かにかかわらず、職員個々人がネームプレートを着用するよう指導してきているところであり、平成十三年十二月六日にも各局に対してネームプレートの着用について通知し、その徹底を図っているところです。
  今後とも、ネームプレート着用の一層の徹底を図るとともに、ネームプレート自体の型式の見直しなどについても検討していくこととしており、ご指摘の点についても、その中で調査、検討していきたいと思います。

平成十三年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 小松恭子

質問事項
 一 都の社会教育施設について
一 都の社会教育施設について
  都は、都立近代文学博物館をはじめとするさまざまな社会教育施設の廃止や縮小、移管などを、財政難という理由のもとに次々と打ち出しており、特に多摩地域に施設の見なおしが集中していることは重大です。
  個々人が、育ち、地域を育てる生涯学習や社会教育施設は、一つ一つが都民にとって大切な宝でもあり、地域住民の文化を育てる場として重視すべきであり、統廃合などではなく、拡充こそが求められています。今回は社会教育施設のなかで、都立図書館の再編整備計画について、何点かにわたって質問致します。
  東京の都立図書館は、一九〇八年の日比谷図書館開館以来、中央、多摩と三館が協力し合い、また自治体とも連携を密にしながら、先進的なサービス提供を継続してきました。全国的にも公共図書館としての高い評価を得ています。
  ところで、今年四月に「東京都立図書館のあり方検討会」が設置され、七月「中間まとめ」が発表され今月末にも最終報告が出されようとしています。その内容は、図書館統廃合を一方的にすすめるもので、多くの都民から批判の声があがっています。
  社団法人日本図書館協会は、「中間まとめ」に対して、「都立三図書館の機能分担を図るとしながらも、『収集・収蔵方針の一元化、重複資料の精査』をかかげ、都立図書館として収集・保存・提供する図書等は一冊のみを原則としている」ことをあげ、「これにより、日比谷図書館と多摩図書館が都民のニーズに応えてきたすぐれたサービスが大幅に縮小・廃止されることが懸念されます」と批判しています。また、市町村立図書館長協議会や市教育長会など、図書館行政や教育にかかわる多くの団体が、「中間のまとめ」に疑問をなげかけ、都立図書館の存続、拡充をこころからもとめていることは、重要です。この問題はマスコミでもとりあげられ、疑問と批判の声が多く紹介されています。
  そこで伺いますが、今回の「中間のまとめ」は、地域分担から機能分担へ、そして三都立図書館の蔵書を一タイトル一冊にして、多摩の十四万冊を処分することなど、どれをとっても、図書館行政のあるべき姿から大きく後退するものと言わざるをえません。
  また、都の図書館は、東京都に要望書を提出している図書館協会などの団体や多くの都民によって支えられ、育てられてきたではありませんか。にもかかわらず、どうして、こうした方々の声を無視するのか。それぞれ、答弁を求めます。
  「中間まとめ」によれば、中央、日比谷、多摩の各図書館がそれぞれ機能分担し、児童サービスは多摩に集中するとのことです。教育庁社会教育課は「限られた予算での措置、官庁、ビジネス街よりも、子どもの多い多摩に児童書はあるべきだ」(十二月十一日付毎日新聞)と話していますが、実際の児童の数は、二十三区が三十五万人に対して、多摩地域は二十万人となっており、教育庁の主張は根拠はありません。
  また、多摩地域の住民は、日比谷図書館をやめて、多摩地域に持ってくればよいなどと、誰も考えていません。多摩地域に児童書が必要ということを理由に、日比谷図書館の児童書機能を廃止するいわれはどこにもありません。
  東京には、一千二百万人が住んでいます。日比谷図書館は中央図書館として、児童図書の機能をもち、多摩地域には、多摩固有の児童図書の機能があっても不思議はありません。多摩地域への児童図書館の要望もつよくありましたが、むしろ、これだけの大都市で、三館体制ですませていることこそが問題なのであります。
  いま、都がおこなうべきことは、多摩へ児童書を移転するのではなく、交通至便な現在の場所を生かして日比谷図書館に存続させること、利用者の要望に応えられるように改築をおこない、抜本的に機能を拡充することではありませんか。所見を伺います。
  今回の「中間のまとめ」では、資料収集、保存の方針を変更し、全都で一タイトル一冊のみ購入、永久保存はやめるとし、その結果、不要となる図書十四万冊を来年春までに処分することにしています。
  しかし、一タイトル一冊、永久保存の中止などは、公共図書館の役割を放棄するものと言わざるをえません。それは、複数配備、永久保存は、利用者の要望にこたえるうえで、欠かせない仕組みだからです。「中間のまとめ」の考えは、今日の図書館活動の到達点からしても大きく逆行するものであり、到底納得できるものではありません。
  さらに、多摩図書館は一九八七年の開設以来多摩地域の"図書館の図書館"として市町村立図書館との緊密な連携で協力事業をすすめており、多摩地域の各図書館にたいする住民の高い評価の背景には、都立多摩図書館のバックアップがあるということは、まぎれもない事実であります。
  そのため、「中間のまとめ」が示した多摩図書館のありかたについて、関係者や都民が様々な疑問を寄せています。
  (イ)多摩図書館が果たしている多摩の市町村立図書館事業への支援と連携について、どう評価しているのか。(ロ)特に檜原村などのように全面的に多摩図書館に依存している所への「協力貸出支援」こそ、都立図書館の使命ではないか。(ハ)多摩図書館の蔵書には、市立図書館から引き継いだものや多摩の個人や団体からの寄贈など、多摩地域に住む都民全体の知的財産というべきものも含まれている。自治体や図書館関係者からの「合意なしの処分は中止せよ」との声にどうこたえるのか。(ニ)来年三月時点でも受け入れ先が決まらない図書は廃棄してしまうのか。(ホ)一タイトル一冊では、複数の貸し出し請求に対応できないのではないか。(ヘ)都立図書館だからこそ重要資料として生かされるのに、各自治体に分散して、資料の値打ちが生かされるのか。(ト)関係自治体や利用者、現場の職員などとの話し合いもおこなわないのはなぜか。などについて、それぞれ、回答を求めます。
  以上の疑問は、いずれも長い歳月と都民の税金をかけた収集された、貴重な図書が財政難だからといって、簡単に破棄されることは許されないことを示しているものです。
  今年度末とされている蔵書の処分など、あってはならないことだと思いますが、どうか、また、各自治体や関係者などとの話し合いに誠意をつくすべきではありませんか。それぞれ、見解を伺います。
  図書館の予算がおおきく減らされてきていることも見過ごせません。図書館資料費は、九七年度に四億四千四百九万円あったものが、今年度は二億五千九百七万円で、何と四八%・約二分の一に減額されています。図書館のサービスに深刻な影響を与えているのは明らかです。
  そこで、都立図書館がいま持っている機能すなわち都民への図書、資料提供機能、区市町村への支援、そして様々な資料の保存などを今後も維持充実するためにも、予算の拡充を求めるものです。所見を伺います。
  また、図書館レファレンスサービスなど、より充実させるためにも司書を含む必要な職員の増員をはかるべきと思いますが、お答えください。
  最後に、東京都がいまおこなうべき事は、都立図書館の仕事を区市町村立図書館におしつけることではなく、都立図書館と区市町村立図書館が協力しあって、都民の多様な要望にこたえる仕組みをつくりあげることではありませんか。そのための、支援をこそ惜しみなく東京都がおこなうことをつよく求めるものです。所見を伺います。

平成十三年第四回都議会定例会
小松恭子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 社会教育施設について
  1 東京都立図書館のあり方検討委員会中間のまとめは、図書館行政のあるべき姿から大きく後退するものである。見解を伺う。

回答
  都教育委員会では、都立図書館を取り巻く環境の変化や、区市町村との役割分担を明確にした上で、都民ニーズに的確に応える新しい都立図書館のあり方を示すことが必要と考えています。
  都立図書館のあり方検討委員会では「中間のまとめ」を踏まえて、都立図書館の役割、機能、体制などについて幅広く検討し、報告書を取りまとめたところです。

質問事項
 一の2 図書館協会などの団体や多くの都民の声をなぜ無視するのか。見解を伺う。

回答
  都立図書館あり方検討委員会の「中間のまとめ」及びその後の検討の状況について、都立図書館協議会や区町村などの関係者に説明し、幅広く意見を伺ったところです。

質問事項
 一の3 児童書を多摩へ移転するのではなく、日比谷図書館に存続させること。利用者の要望に応えられるように改築を行い、抜本的に機能を拡充すべきである。見解を伺う。

回答
  来年度、国立国際子ども図書館が区部に本格オープンすること、他方、多摩地域に児童図書の専門図書館がないことなどから、児童図書は来年度から多摩図書館に移管するのが適当であると考えています。
  日比谷図書館については、平成十三年十一月に出された「平成十三年度行政評価結果」において、そのあり方について抜本的な見直しが必要であるとされており、それを踏まえ、都教育委員会として検討してまいります。

質問事項
 一の4 多摩図書館のあり方について
    ア 多摩図書館が果たしている多摩の市町村立図書館事業への支援と連携について、どう評価しているのか伺う。

回答
  都立多摩図書館は、多摩の市町村立図書館に対して図書の協力貸出し、協力レファレンスなどの支援を行い、市町村立図書館と連携して利用者サービスの充実を図ってきたものと考えています。

質問事項
 一の4のイ 檜原村等、全面的に多摩図書館に依存している所への「協力貸出支援」こそ、都立図書館の使命ではないか。所見を伺う。

回答
  地域住民の情報ニーズに応じた直接サービスを行う区市町村立図書館に対する、図書の協力貸出しなどのバックアップ機能は、府県行政としての都立図書館の重要な役割であると考えています。

質問事項
 一の4のウ 自治体や図書館関係者からの「合意なしの処分は中止せよ」との声にどうこたえるのか、所見を伺う。

回答
  都立中央図書館と多摩図書館とで重複する資料については、再活用計画をたてて区市町村立図書館などでの有効活用を図っているところです。

質問事項
 一の4のエ 来年三月時点でも受け入れ先が決まらない図書は廃棄するのか、伺う。

回答
  重複する資料の有効活用については、区市町村立図書館等の要望を踏まえ、適切に対応していきます。

質問事項
 一の4のオ 一タイトル一冊では、複数の貸し出し請求に対応できないのではないか。所見を伺う。

回答
  現在、都立中央図書館と多摩図書館について、重複しているタイトルは両館の所蔵図書のうち一五%程度であり、ほとんどの資料については一タイトル一冊で区市町村立図書館に対する協力貸出しや、館内閲覧への対応が可能となっています。
  今後、都立中央図書館と多摩図書館との両館で、資料収集を原則一タイトル一冊とし、より多くのタイトルを確保することで、協力貸出しのサービス向上に努めていきます。

質問事項
 一の4のカ 各自治体に分散して資料の値打ちが生かされるのか。 所見を伺う。

回答
  今回、区市町村立図書館等に提供して再活用を図る資料は、多摩図書館と中央図書館で重複保存している資料です。
  これらの資料は、提供された先の区市町村立図書館などで住民に有効に利用されるものと考えています。

質問事項
 一の4のキ 関係自治体や利用者、現場の職員等との話し合いを行わないのはなぜか。所見を伺う。

回答
  「中間のまとめ」やその後の検討状況については、特別区や市町村の教育長会等の自治体関係者や、公募した都民も含む外部委員で構成される都立図書館協議会などの関係者に説明し幅広く意見を伺ってきたところです。

質問事項
 一の4のク 今年度末とされている蔵書の処分など、あってはならないことだが、見解を伺う。

回答
  今回、都立多摩図書館と中央図書館で重複する資料について、各自治体などに提供し、区市町村立図書館等の蔵書の充実に寄与し、都民の有効利用に資するようにしたいと考えています。

質問事項
 一の4のケ 各自治体や関係者等との話し合いに誠意をつくすべきだが、見解を伺う。

回答
  都立図書館のあり方については、その検討の過程で、区市町村の教育長会や、公募した都民を含む外部委員で構成される都立図書館協議会などの関係者に説明し、幅広く意見を伺ってまいりました。
  これら意見についても参考にした上で、「都立図書館のあり方」を最終的にとりまとめたところです。

質問事項
 一の5 都立図書館が今持っている機能を今後も維持充実するためにも予算の拡充を求めるものだが、所見を伺う。

回答
  都立図書館は、府県行政の広域的立場から区市町村立図書館をバックアップすることをその基本的な役割としており、今後ともその機能の充実に努めていきます。

質問事項
 一の6 図書館レファレンスサービスなど、より充実させるためにも司書を含む必要な職員の増員を図るべきだが、所見を伺う。

回答
  区市町村立図書館や利用者に対し、高度、専門的なレファレンスサービスなどを提供していくことは、都立図書館の基本的な役割であり、そのための効率的な組織を整備していきます。

質問事項
 一の7 都立図書館と区市町村立図書館が、協力し、多様な都民の要望にこたえる仕組みをつくりあげるための、支援こそ惜しみなく都が行うことを強く求める。所見を伺う。

回答
  地域住民の情報ニーズに応じた直接サービスは、第一義的には区市町村立図書館の役割であり、一方、区市町村立図書館に対する図書の協力貸出し等の支援や、利用者等に対する高度で専門的なレファレンスサービスの提供などは、府県行政としての都立図書館の重要な役割と認識しています。
  今後とも、区市町村立図書館との役割分担を踏まえつつ、相互に協力し、利用者サービスの向上を図っていきます。

平成十三年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 松村友昭

質問事項
 一 都市型水害対策と自然の川の再生について
 私は、都市型水害対策と自然の川の再生についての二点について質問します。
一 都市型水害対策は従来型からの転換が必要
  近年の都市部における台風や局地的集中豪雨により、甚大な被害が発生し、水害対策は大きな転機を迎えています。最近の都市災害から、従来型の河川整備、あるいは下水道整備では、都市型水害を防ぎきれないと専門家は指摘しています。国土交通省も「都市型水害対策検討委員会」を設置し、二カ年計画で、都市型水害対策を推進するとし、都においても「東京都市型水害対策検討会」の最終報告が出され、ハード面だけでなく、洪水ハザードマップや浸水予想区域図の作成・公表というソフトを重視していることは注目されます。同時に、東京の水害は、なんといっても、都市化の進展で、農地や緑地がつぶれ、地域の保水能力を著しく低下させていることに大きな起因があることは明らかであり、まずそれを回復する対策が急務です。そのためには、過度の都市化を防ぎ、都市の緑率の維持・拡大、浸透ますや透水舗装、雨水抑制施設への支援などで、雨水の地下への還元など自然の力を回復させることが何よりも重要です。
  そこでうかがいます。まず第一に、都は、現在進めている都心部開発と都市水害の関係をどうとらえているのか。
  第二に、都市型水害を未然に防ぐために、開発をコントロールすることが不可欠と考えるがどうでしょうか。
  第三に、地下街や地下鉄での水害を防ぐために対策を緊急に講ずるべきだと考えますがどうか。それぞれの見解を求めます。
  東京にあって、各区・市が自然力を回復させるために、雨水抑制施設などの設置を進めようとしていることは極めて重要です。ところが、都は各戸貯留・浸透施設等助成事業を各区市から継続を求める強い要望を受けながら、今年度から廃止してしまったことは、極めて重大です。この事業について、都は再三重要性を表明していながら、廃止の理由を、地域住民へ普及啓発するという都の先導的役割は達した、今後は事業主体である区市において実施するとしました。しかし、どこまで到達したのかといえば、二十三区、三十九市町村のうち、十区、十五市で、まだ半数にも達していません。普及件数もようやく一万件を超えてこれからという時の廃止です。この間の都の補助金額も七億三千万円余にすぎません。そもそもこの事業は、練馬区などの先駆的な取り組みによって助成事業が開始されたのですが、「助成の財源は、施設設置の一部を助成すると考えても、かなりの金額を要するため、基礎的自治体が全面的に負担することには問題があり、広域的な治水対策の一環という位置づけを考えれば、今後の都や国の取り組みが必要である」との強い要望を都が受けてはじまった事業です。いくつもの自治体をまたがる河川など雨水対策は広域的性格を持っています。都の廃止理由は全く筋違いで、もとに復活すべきです。見解をお聞きします。
二 住民参加で、白子川を自然の川へ再生を
  水害を発生させないための都内中小河川の整備は必要でありますが、これも従来型で、これまでの既定計画の踏襲からの転換が求められているのではないでしょうか。
  都内中小河川の一つ、練馬区内を流れる白子川の河川改修事業計画の地元説明会が都河川部により十一月に行われました。説明会の参加者は、今回の事業予定地、東大泉三丁目から上流八百メートル、時間雨量五〇ミリ改修にかかる土地所有者のみに限って行われました。川と隣り合わせの自転車屋さんは、二階の大家さんから説明会があることを知らせてもらったので参加できましたが、二件隣の商店会長の時計屋さんは知りませんでした。
  参加者の発言は、「寝耳に水の全く突然の計画説明。生活再建について不安」との心配の声とともに、「河川改修が必要なのは、もっと下流ではないのか。この地域や上流は全く水害も起きていないし、なんで河川事業をやるのか疑問」との声が相次いで出されたと聞きました。その後、一ブロック、十九世帯を対象にした、二回目の説明会を行ったのみで、都はすでに地権者に測量を行う通知を出し、今年度中に河川予定地の公告、来年度から事業実施ですすめようとしています。
  今、なぜ、この地域の河川改修か。白子川のこの地域においては、すでに雨水流出抑制公共下水道の普及とあわせて、徹底的な雨水浸透施設の設置によって、相当の治水効果を発揮している地域です。ここ数年練馬の地域においても局地的な集中豪雨に見舞われ、浸水被害は起きていますが、緊急対策が雨水整備クイックプランによってとられる地域は、白子川流域以外の、むしろ雨水浸透施設の設置が遅れている地域です。
  そこで伺います。
  第一に、地域住民の声は、なぜ今、都市計画もされていない東大泉地域の部分を急いで、しかも八百メートルの河川改修に多額な費用をかける、必要性と緊急性がよく説明されていないし、理解できないというものです。
  第二に、これからの川づくりは、川に愛着を持つ地域の人たちから意見を聞きながら行うというのが国も含めた大きな流れになってきているのではないでしょうか。一、二度の、しかも関係権利者のみの地元説明会で事業実施とはあまりにも拙速です。立ち退きを余儀なくされる関係権利者だけでなく、地域全体の川として、住民参加でどういう川にしていくかを考え、計画していく方向で再検討すべきではありませんか。
  第三に、地域の住民は、白子川こそ自然の川に再生できるもっとも可能性の高い川だと確信しています。この地域には湧水が今でもわきでている八の釜いこいの森、井頭親水公園など、水と緑の貴重な自然があります。都としてもこの自然を生かす河川再生を考えるべきではありませんか。
  第四に、西東京市などの上流の雨水処理量が増えることを改修の必要性としているとも聞きますが、すでに比丘尼などの三つの調節池が完成し、総貯留量は、二十四万六千トンに上っているのです。都自身もこれまで、白子川調節池の完成によって、この区間では現況河道のままで五〇ミリ規模程度の安全性は充分確保されると説明してきたのであり、また、雨水各戸貯留・浸透施設補助をうち切っておいて、上流の雨水が増えるとすることなど、理由になりません。白子川調節池群を生かせば、白子川の三〇ミリ暫定河道でも、旧保谷市からの流路の排水断面を拡張し、流入量を増やしても、充分対応可能であることは明らかです。
  第五に、将来の西東京市などの市街化の発展に対応した雨水処理については、徹底した総合治水対策を今から行うことによって対処すべきです。将来、それ以上の流量が予想される場合でも、すでに完成している白子川調節池群を生かすことで対策が図れるのではないでしょうか。それぞれの見解を求めます。

平成十三年第四回都議会定例会
松村友昭議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 都市型水害対策について
  1 現在進めている都心部開発と都市型水害の関係をどうとらえているか、伺う。

回答
  都心部は、既に不浸透域が大半を占めており、新たな開発による雨水流出量の増大は見込まれませんが、都は、都心部開発に際しても、計画立案の段階における河川管理者、下水道管理者への協議や、法令、条例等に基づいた開発に伴う雨水流出抑制対策や緑化などの指導等を行っております。
  今後とも、局所的な集中豪雨による溢水対策などにも資するよう、必要な対策を推進してまいります。

質問事項
 一の2 都市型水害を未然に防ぐために、開発をコントロールすることが不可欠と考えるが、所見を伺う。

回答
  都及び区市町村では、樹林地等の開発において、法令、条例等に基づき、雨水流出抑制対策や緑化などの指導等をしております。
  今後とも、安全なまちづくりに向け、河川、下水道の整備を計画的に進めるとともに、総合治水対策の一環として、貯留浸透施設の設置など、流域対策の普及拡大に努めていきます。

質問事項
 一の3 地下街や地下鉄での水害を防ぐために対策を緊急に講ずるべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  地下街等施設の水害対策は、施設への浸水防止施設の設置など、基本的に各施設管理者が行うべきものと考えております。
  都としては、河川や下水道の整備を進めるとともに、従来より浸水実績図などの公表や、大規模地下空間管理者への気象情報や河川水位等の伝達サービスなどに努めてまいりました。
  今後とも、「東京都都市型水害対策検討会」の報告に基づき、必要な施策を行ってまいります。

質問事項
 一の4 各戸貯留・浸透施設等助成事業の廃止理由は全く筋違いで、もとに復活すべきだが、見解を伺う。

回答
  本事業は、個人住宅等における貯留浸透の一層の促進を図るため、平成四年から区市の行う助成事業に対して補助を行ってきたもので、地域住民へ普及啓発するという都の先導的役割はほぼ達成したことから、各自治体において個人住宅等の雨水流出抑制対策を実施するよう制度を見直したものです。

質問事項
 二 白子川の再生について
  1 「なぜ今、都市計画もされていない東大泉地域の部分の河川改修を急いで、多額な費用をかける必要性と緊急性が理解できない。」との地域住民の声にどう答えるのか伺う。

回答
  白子川では、昭和五十七年から一時間当たり五〇ミリメートル程度の降雨に対処できるよう、河川改修に着手しておりますが、中・下流部は、埼玉県境を流れていることから、県と都により工事協定を締結し、整備区間を分担しています。
  下流部の都整備区間二・七キロメートルは既に完成しておりますが、中流部の県整備区間一・四キロメートルは未着工であり、完成までに相当の期間を要します。そのため、その上流部の東京都域における水害軽減を早期に図るために、比丘尼橋調節池群を先行的に設置し、上流部の五〇ミリメートル改修を進めることとしました。
  一方、近年、練馬区などで一〇〇ミリメートルを超えるような局所的な集中豪雨が発生し、増加傾向にあることを背景に、平成十三年十月には、改修促進要望に関する意見書が、練馬区議会から全会一致で東京都知事あてに提出されるなど、早急な改修が強く求められており、東京都においても、重点的に整備を進める河川の一つとしております。
  なお、事業手法については、都市計画法に基づく場合と河川法に基づく場合がありますが、白子川については、埼玉県との協議により、河川法第五十六条による河川予定地を指定して進めることとしました。

質問事項
 二の2 地域全体の川として、住民参加でどういう川にしていくかを考え、計画していく方向で再検討すべきだが、所見を伺う。

回答
  白子川の改修は、建設大臣(現国土交通大臣)から全体計画の認可を得て、昭和五十七年から事業を実施してきております。
  事業を進めるに当たっては、これまでも事業計画や用地・補償、あるいは工事等の説明会を通じ、地域住民の方々から、幅広い意見を聞いてきております。
  今後とも、より一層、きめ細かく地域住民の意見を聞きながら河川改修に努めてまいります。

質問事項
 二の3 白子川は自然を活かす河川再生を考えるべきだが、所見を伺う。

回答
  白子川は、湧水が多く緑地等の自然が残された地域を流れていることから、これまでも、生物の生息・生育に配慮してコンクリートを張らない河床にしたり、最上流部の大泉井頭公園沿いでは、公園と一体となった自然に配慮した整備を進めてきました。
  今後とも、整備に当たっては、地域住民の意見を聞くとともに、周辺環境に配慮しながら、自然を活かした川づくりに努めていきます。

質問事項
 二の4 上流の雨水処理量の増加を改修の必要性としているとも聞くが、白子川調節池群を生かせば、白子川の三〇ミリ暫定河道でも、旧保谷市からの流路の排水断面を拡張し、流入量を増やしても、十分対応可能であるが、所見を伺う。

回答
  現在、下流部の新河岸川合流点から川越街道の東埼橋までの河道拡幅と、中流部の比丘尼橋上流調節池、比丘尼橋下流調節池の二つの調節池が完成しておりますが、この調節池群上流の約二・九キロメートルは未改修であり、一時間当たり三〇ミリメートル程度の降雨に対処できる河道流下能力しかありません。
  この白子川の未改修区間に流入する西東京市の下水道は一時間当たり五〇ミリメートル規模で計画されているので、これと整合を図り、流域に降った雨水を安全に流すためには、未改修区間の河道拡幅を行う必要があります。

質問事項
 二の5 将来の西東京市などの市街化の発展に対応した雨水処理については、徹底した総合治水対策を今から行うことで対処すべきである。白子川調節池群を生かすことで対策が図れるのではないか、見解を伺う。

回答
  総合治水対策は、河道拡幅や調節池の設置等の治水施設の整備と雨水貯留及び浸透施設の設置など流域対策とを併せて行うことにより、流域全体の安全性を高めていくものであります。
  白子川を含む新河岸川流域では、昭和五十五年に国や、都・県・区・市などの関係自治体で構成する流域協議会が発足し、昭和五十七年には流域整備計画が策定され、総合治水対策を実施してきています。
  今後とも、治水対策に最も効果的な河道拡幅や調節池の設置を進めるとともに、関係区市や民間開発事業者とも連携しながら流域対策を積極的に推進してまいります。

平成十三年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 丸茂勇夫

質問事項
 一 中小建設業対策について
  1 生活密着型公共事業の拡充と発注の改善について
  2 下請保護対策について
  3 生活保障について
 私は、中小建設業対策について、三点にわたって質問します。
一 中小建設業対策について
  東京の失業率は、五・六%と最悪を示し、企業倒産でも昨年を上回り、経済・生活的理由による自殺もこの五年間で二倍に増えています。特に重大なのは、日本経済が、個人消費がマイナス一・七%でデフレの悪循環に足を入れつつあるという事態で消費不況が急速に悪化していることです。こうしたもとで、これまで、不況の受け皿となってきた建設業が、長引く消費不況と大手企業のなりふり構わない「まちば仕事」への進出で、仕事不足は深刻な事態を迎えています。そのため中小零細建設業では、倒産が相次ぎ自ら命を断つ経営者や労働者が急増しており、その支援は急務になっています。
  小泉内閣がすすめる「構造改革」の中心である「不良債権早期処理」は、銀行が債務の相手先企業に社員の解雇や下請中小企業の整理を条件として債権放棄をおこなう、また、不良債権の大部分をしめる中小企業には融資を打ち切り法的整理・倒産に追い込むものです。銀行のかかえる不良債権の四割以上が建設、不動産関係に集中していることから倒産がいっそう増大する事態が進行しています。直近でも青木建設の倒産など建設大手に及んでいます。
 1 生活密着型公共事業の拡充と発注の改善について
   政府は、大型公共事業の見直しをすすめるとしていますが、高速道路など大型道路建設は従来と変わらず、都においても東京構想二〇〇〇において、三環状道路や大型再開発をすすめるというもので、厳しい中小企業への仕事増は見込めません。
   我が党が、これまでも公共事業においては、中小企業の仕事確保のために、生活密着型に転換することが極めて重要な効果があることを提案しましたが、知事も、今定例会で「家を一軒建てるなり、建てるに等しいリニューアルをしたときに、そこに配備するいろいろな……大小家具があり……アイテム数は非常に多くて、非常に経済効果がある」と表明しました。
   そこで、都の公共事業を都営住宅建設や学校の耐震補強や改修、介護基盤施設整備など生活密着型に転換し、中小企業向け発注を増やすべきと考えますがどうか。
   また、個人住宅・高齢者住宅のバリアフリー、木造住宅の耐震補強に助成を行い、中小零細建設業の仕事確保への支援を行うよう求めるものだがどうか、見解を求めます。
   つぎに、二〇〇〇年度の都の契約実績は、中小企業向け発注比率が件数で前年比〇・二%減少し八五・一%、金額でも前年比〇・七%減の五四・一%となっています。中小企業基本法が改正され、特に建設業では、中堅でも大企業が中小企業の範疇に入るなど、中小企業向け発注は更に減少しているのが実態です。
   そこで、中小企業向け発注率を契約額で七五%に設定し、件数、金額でも前年度を上回るよう発注するよう求めるものですがどうか。また、官公需適格組合や地元東京の企業に優先発注するよう力を尽くすべきと考えますが、見解を伺います。
   都は、施工の合理性、コスト縮減を理由に分離分割発注を一元化させるとしているもとで、ある公社住宅では、中小企業が当然受注できる中層住宅をわざわざ二棟を廊下で結び大手に発注するおかしな事態も生まれています。不況のおり、公共工事においては、発注の大規模化でなく分離分割発注に努め、極力中小企業が受注できるよう改善すべきと考えますがどうか。答弁を求めます。
   官公需適格組合や事業協同組合から、今年四月一日施行の公共工事入札適正化法によって、東京都建設局が「発注者の承認の有無にかかわらず、公共工事の一括下請負は全面禁止。事業協同組合等においても、構成会社への一括下請負はできない」旨を公表しています。建設適格組合は、官公需適格組合証明基準に基づき、技術者を常時直接雇用し、工事の施工に実質的に関与していることから、組合が共同受注した工事を組合員企業が施行することは一括下請負の禁止には該当しないと訴え、従来どおりの共同受注ができるよう要望していますが、見解を求めます。
 2 下請保護対策について
   建設業法では、元請責任が明記されていますが、元請けが倒産した場合の下請け保護が法律的に保護策がなく、大手建設会社の横暴がまかり通っています。
   建設業の下請け保護法の制定を国に求めること。また、都として下請け保護Gメンの配置や中間ブローカーの排除など具体的対策を講じることについて、それぞれ答弁を求めます。
   昨年成立した「公共工事入札・契約適正化促進法」では、契約の透明性の確保や不正行為の排除と共に、その付帯決議で元請け・下請けの契約関係の適正化に努めること、建設労働者の賃金・労働条件の適切な確保がうたわれています。現在、元請けからの一方的な低単価の押し付けである「指値発注」や下請けへの前払い金の未払いが横行しています。これら不当行為に対する特段の行政指導を行い直ちに是正させること。また、民間工事における発注者責任を明らかにし、大手不動産会社などに下請工事代金、賃金未払いの解決に当たらせるよう求めるものですがどうか、答弁を求めます。
   下請け中小企業の連鎖倒産を防止するために、元請け倒産時に、下請債権、労働債権を優先的に保護させることが必要です。建設業は、下請の施工や労務の提供が生産の大部分を担っています。ところが、元請企業が倒産した場合、銀行や国が担保を先に差し押さえ、工事代金の未払い分など下請業者の債権が確保されず連鎖倒産に追い込まれるなど、一番被害を受けるのは下請中小業者です。
   しかも下請債権は、労務費が大部分を占めています。下請企業の労働者の未払い賃金を労働債権として認め、これらの労働債権については、「労働債権の保護に関する厚生労働省報告」でも述べられているように「特別の保護すべき債権」として優先的に確保されるよう求めるものですが、所見を伺います。
   また、倒産防止特別融資は、一次下請けしか使えません。重層構造になっている建設業においては、二次下請以下の企業も使えるようにすべきと考えるがどうか、伺います。
 3 生活保障について
   多くの建設労働者は、ひとり親方や日雇い労働者です。そのため、病気やケガで仕事を休むと収入が途絶える。さらに、不況のもとで、仕事がない、単価が値切られるなど不安定雇用が他業種をしのいでいます。こうした建設労働者にとっては、建設国保は命綱であります。建設国保の水準を維持するため、都として財政補助を強めるべきと考えるがどうか。
   賃金不払いの防止も重要です。賃金不払いや元請けの不当行為に関する現在の国土交通省、地方整備局、都道府県の相談体制は、人員も少なく、指導内容も極めて不十分です。必要な人員配置と調停と指導の役割が果たせるよう体制の拡充を求めますがどうか。
   建設業では、手間請けと呼ばれる雇用形態が増えています。手間請け労働者の賃金を労働債権として認め、社員労働者と同様に賃金確保法を適用するよう国に求めること。また、賃金立て替えの上限引上げを要求すべきと考えますが、所見を伺います。
   また、建退共制度に加え、離職したときの失業保障制度を新たに国に求めるべきと考えますがどうか。また、都として離職の間の生活つなぎ資金を創設すべきと考えますがどうか、伺います。

平成十三年第四回都議会定例会
丸茂勇夫議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 中小建設業対策について
  1 生活密着型公共事業の拡充と発注について
   ア 都の公共事業を都営住宅建設や学校の耐震補強や改修、介護基盤施設整備等、生活密着型に転換し、中小企業向け発注を増やすべきと考えるが、所見を伺う。

回答
  公共事業については、これまでも、生活・福祉関連事業などを含め、事業の緊急性や必要性を考慮しつつ、都市基盤の整備を進めてきています。
  また、これらの契約に当たっては、コスト縮減の観点を踏まえつつ、適切な分離・分割発注の推進、共同企業体方式の採用、事業協同組合等の活用などにより、中小企業の受注機会の増大に努めてきています。

質問事項
 一の1のイ 個人住宅・高齢者住宅のバリアフリー、木造住宅の耐震補強に助成を行い、中小零細建設業の仕事確保への支援を行うべきだが、見解を伺う。

回答
  都は、都営住宅、都民住宅、高齢者向け優良賃貸住宅や優良民間賃貸住宅などにおいて、積極的にバリアフリー化を推進するとともに、個人向けには、バリアフリー住宅の建設・購入やバリアフリー化のための増改修に対して、住宅建設資金の融資あっせんを行っています。
  また、木造住宅の耐震補強に対する助成等の支援については、区市が主体となって実施しているところです。
  今後も、これらの制度が都民に積極的に活用されるよう、PR等に努めてまいります。

質問事項
 一の1のウ 都の中小企業向け発注率を契約額で七五%に設定し、件数、金額でも前年度を上回るよう発注すべきだが、見解を伺う。

回答
  公共工事の発注に当たっては、競争入札参加有資格者に等級格付けをして、それに対応して、工種区分ごとに工事の規模、内容、施工難易度、品質確保等の観点から施工能力に応じて発注しています。
  このため、発注対象業者は個々の案件ごとに決定されるものであり、一律に目標率を定めることは困難です。

質問事項
 一の1のエ 官公需適格組合や地元東京の企業に優先発注するよう力を尽くすべきだが、見解を伺う。

回答
  官公需適格組合や地元企業については、その保護育成及び円滑な施工の確保等の見地から、他県業者と比べて優先的に指名するなどの優遇措置を採っています。
  また、毎年、財務局長と産業労働局長との連名により、官公需についての中小企業者の受注機会の確保等について、各局に対し通知しているところです。

質問事項
 一の1のオ 公共工事においては、発注の大規模化ではなく、分離分割発注に努め、中小企業が受注できるよう改善すべきだが、所見を伺う。

回答
  都の財政が極めて厳しい状況にある中で、入札・契約制度においても、これまで以上に経済性の確保を図る必要があることから、従来どおり中小企業の受注の確保施策を基本に置きながら、コスト縮減の観点を踏まえ、適正な発注規模を設定することにより、効率性及び経済性を高めていくこととしています。
  今後とも、発注者として品質の確保と経済性の追求に努めてまいります。

質問事項
 一の1のカ 建設適格組合は、「組合が共同受注した工事を組合員企業が施工することは一括下請負の禁止には該当しない」と訴え、従来どおり共同受注ができるよう要望しているが、見解を伺う。

回答
  公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の制定により、公共工事については一括下請負禁止の例外を定めた建設業法第二十二条第三項は適用されず、一括下請負は全面的に禁止されています。
  建設業者は、その請け負った建設工事の完成について、誠実に履行することが求められており、もし、元請負人が下請契約の施工に実質的に関与していない場合は、一括下請負に該当するものと解されることになります。
  事業協同組合等においても、組合として請け負った工事を下請けさせることは可能であるが、工事の施工に当たり、工程管理及び安全管理などについて自ら企画、調整、指導をするなど実質的に関与していることが必要です。

質問事項
 一の2 下請保護対策について
    ア 建設業の下請け保護法の制定を国に求めるべきだが、所見を伺う。

回答
  下請負人の保護への取組については、建設業法において、不当に低い請負代金の禁止や、出来高払いを受けた際の下請負人に対する代金支払義務などの規定があり、今後とも、適切な運用によって対処してまいります。

質問事項
 一の2のイ 都として、下請け保護Gメンの配置や中間ブローカーの排除等、具体的対策をとるべきだが、所見を伺う。

回答
  都としては、元請・下請間の建設工事紛争に対しては、調整の窓口を設け、必要に応じて立入調査を実施しています。
  また、建設業法においては、一括下請負の禁止などを定めており、不良建設業者の排除に努めています。

質問事項
 一の2のウ 「指値発注」や下請けへの前払い金の未払いなどの不当行為に対する特段の行政指導を行い直ちに是正させるべきだが、所見を伺う。

回答
  いわゆる「指値発注」など不当行為の改善については、建設業法に基づき、下請契約における請負代金の設定や代金支払いの適正化に努めるよう、今後とも、関係団体を通して指導してまいります。

質問事項
 一の2のエ 民間工事における発注者責任を明らかにし、大手不動産会社などに下請工事代金、賃金未払いの解決に当たらせるべきだが、所見を伺う。

回答
  建設業法においては、発注者に下請代金や賃金の未払いに対する責任を求める規定はなく、民間工事において発注者責任を求めていくことは困難と考えます。

質問事項
 一の2のオ 下請労働者の未払い賃金を労働債権として認め、「特別の保護すべき債権」として優先的に確保されるべきだが、所見を伺う。

回答
  労働債権の保護のあり方については、法律制度の問題であり、国の所管事務となっています。
  現在、法制審議会において、労働債権について審議が行われていますが、お話の下請企業の労働者の未払い賃金を、元請企業に対する労働債権と認めることについては、検討されていないと聞いております。

質問事項
 一の2のカ 倒産防止特別融資を二次下請以下の企業も使えるようにすべきだが、所見を伺う。

回答
  東京都中小企業制度融資において、元請企業が倒産した場合、それと直接取引のある一次下請企業は経営安定支援資金融資のなかの倒産企業関連融資の利用が可能です。
  この融資は、国が指定した倒産企業と直接取引のある企業が、区市町村の認定を受けることにより、別枠の信用保証が利用可能となる制度です。
  この制度に基づき、一次下請企業への金融支援により、連鎖倒産は基本的に防止されると考えています。

質問事項
 一の3 生活保障について
    ア 建設国保の水準を維持するため、都として財政補助を強めるべきだが、所見を伺う。

回答
  国民健康保険組合に対する補助については、平成十一年十二月の国民健康保険委員会答申を踏まえ、平成十二年度より「医療費相当分」、「事務費相当分」及び「付加給付相当分」の三項目について補助を実施しています。
  同答申では、公営保険者が保険料の適正化を図った場合には、公営の被保険者との公平性の観点から国保組合への助成策のあり方について再検討する必要があると指摘しており、今後、この答申の趣旨に沿って、適切に対応してまいります。

質問事項
 一の3のイ 賃金不払い等の元請けの不当行為に関する国・都道府県の相談体制は不十分である。必要な人員配置と、調停と指導の役割が果たせるよう体制を拡充すべきだが、所見を伺う。

回答
  請負代金の不払いなどについての下請負人からの相談に対しては、建設業法に基づき、元請負人に対して報告を求めるなど、事実確認を行ったうえで指導しております。
  また、これに併せて、元請負人が特定建設業者である場合には、下請負人が使用している労働者に対する賃金の相当額を立替払いをさせるなど、適切な措置を講ずるよう指導しております。
  今後とも、建設業法を適切に運用することによって対処してまいります。

質問事項
 一の3のウ 手間請け労働者の賃金を労働債権として認め、社員労働者同様、賃金確保法の適用、及び賃金立て替えの上限引き上げについて国に要求すべきだが、所見を伺う。

回答
  いわゆる手間受けに係る未払い債権に対し、「賃金の支払の確保等に関する法律」を適用するかどうかについては、国では、契約内容や労働実態等を総合的に勘案し、労働契約か請負契約かを判断し運用しているところであります。
  なお、賃金立て替えの上限引き上げについては、同法施行令の一部改正により、平成十四年一月一日から施行されています。

質問事項
 一の3のエ 建退共制度に加え、離職した時の失業保障制度を新たに国に求めるべきだが、所見を伺う。

回答
  国は、雇用情勢が一層厳しさを増すなかで、総合雇用対策の一環として、雇用保険制度の枠外にある自営業者やパート労働の失業者並びに雇用保険の給付期間切れによる失業者を対象とし、一定の条件のもとに新たに生活資金を貸し付ける制度を平成十三年十二月に創設したところです。都としては、国に対し新たな失業保障制度の設置を要望する考えはありません。

質問事項
 一の3のオ 都として、離職の間の生活つなぎ資金を創設すべきだが、見解を伺う。

回答
  失業者の生活安定に対する施策は、基本的に国の責任において措置されるべきものと考えております。
  国は、雇用情勢が一層厳しさを増すなかで、総合雇用対策の一環として、雇用保険制度の枠外にある自営業者やパート労働の失業者ならびに、雇用保険の給付期間切れによる失業者を対象とし、一定の条件のもとに新たに生活資金を貸し付ける制度を創設しました。すでに、先の臨時国会において、貸付等に要する経費について十三年度補正予算が成立しております。
  今後、実施方法等について国と協議し、適切に対処してまいります。

平成十三年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 大山とも子

質問事項
 一 マンション管理適正化法の活用について
 二 区市町村のマンション施策支援の強化について
 三 マンション管理組合のペイオフ対策について
 四 マンションの届け出制度について
 私はマンション問題について、以下のように文書質問します。
一 マンション管理適正化法の活用について
 1 マンション管理組合がつよく要請していたマンション管理適正化法が、ことし八月から施行された。同時に政府は、法にもとづく「マンションの管理の適正化に関する指針」(「適正化指針」)を告示した。マンション管理のルールづくりと管理業の規制をはじめとした同法、およびそれにもとづく「適正化指針」を、管理組合と管理業者にどう徹底し定着させていくかが今後の重要な課題であると考えるが、都の認識はどうか。
 2 適正化法および「適正化指針」を管理組合、管理業者に徹底・定着させていくために、パンフレットの作成、シンポジウムや説明会など積極的に行う必要がある。都としてどのような取り組みをするのか具体的対応を伺う。
   適正化法には、「国及び地方公共団体の措置」として第五条に、「国及び地方公共団体は、マンションの管理の適正化に資するため、管理組合又はマンションの区分所有者等の求めに応じ、必要な情報及び資料の提供その他の措置を講ずるよう努めなければならない」と定めている。
   さらに「適正化指針」には、「国及び地方公共団体は、必要に応じ、マンションの実態の調査及び把握に努め、マンションに関する情報・資料の提供について、その充実を図るとともに、特に、地方公共団体、マンション管理適正化推進センター、マンション管理士等の関係者が相互に連携をとり、管理組合の管理者等の相談に応じられるネットワークの整備が重要である」としている。
 3 こうした内容をふまえ、都としてマンション管理適正化への支援策をいっそう強化・充実することが求められると考えるがどうか。認識と具体策について答弁を求める。
 4 都の「分譲マンション維持・管理ガイドブック」などを、適正化法と「適正化指針」にあわせて直ちに改訂する必要があるのではないか。
 5 マンションの実態調査は、九七年五月の住宅政策審議会答申「分譲マンションの良好な維持・管理のための施策について」の審議に際して必要な調査を行ったとされているほかは、区市町村ごとに行われている。区市町村ごとの調査を促進すると同時に、少なくとも五年に一度程度は都としていっせい調査を行い、系統的なデータを直接蓄積していくことも重要ではないか。
   最近のマンションに関する深刻な問題のひとつに、居住者・区分所有者の高齢化とマンションの経年劣化が平行して進んでいることがある。年金階層が増える一方、古いマンションほど維持管理が不十分で修繕積立金が少ない傾向もあり、大規模修繕をしようにも積立金も足りず一時負担もできないという状況が生まれている。
 6 居住者・区分所有者の高齢化とマンションの経年劣化にともなう問題は、今後ますます増えることが予想される。早急に調査し、対策を検討することが必要だがどうか。
   十二月九日に行われたマンション管理士試験は、全国九万六千人のうち東京で五万人が受験した。一月末日に合格発表があり、二月以降に管理士の登録が始まる。はじめての職種であり、管理士の資質の向上と業務の適正化に取り組むことが必要である。
   「適正化指針」も、「国、地方公共団体及びマンション管理適正化推進センターは、マンション管理士制度が早期に定着し、広く利用されることとなるよう、その普及のために必要な啓発を行い、マンション管理士に関する情報提供に努める必要がある」としている。
 7 都としてマンション管理士制度の定着と普及、情報提供のため、どのような取り組みを行うのか。介護保険にかかわり福祉局は、介護支援専門員(ケア・マネージャー)の協議会の設置や、研修などの支援を実施している。マンション管理士についても協議会を設置することや、研修を実施するなどの支援を行うべきではないか。答弁を求める。
二 区市町村支援の強化について
  マンション管理への支援は、基礎自治体である区市町村が、それぞれのマンションの管理組合とのつながりを日常的につよめ、その実情と具体的要望に応じたきめ細かい対応を行うことが重要である。都としてこれまで、区市町村もまじえた分譲マンション施策推進行政連絡会の設置や、区市町村分譲マンション実態調査補助などに取り組んできたが、今後、区市町村への支援を抜本的に強化する必要がある。
  マンション実態調査を実施した区市町村で、その分析にもとづく具体的な施策展開が十分になされていないのも、施策展開のための財源の裏づけがないからだ。実態調査そのものがなかなか進捗しないのも、調査後の施策展開の財源保障がないことが要因のひとつになっている。
 1 そこで、区市町村によるマンション施策を支援するための、区市町村のアイデア、独自性を生かし、使い勝手がよい新たな補助制度の創設を提案するがどうか。
   なかでもマンション相談は、実態調査とならぶ基本的な施策であるが、財源の裏づけがないなかで、区市町村は苦労している。
   新宿区では、相談の受付と一次相談は区の職員が対応し、二次相談は一級建築士や弁護士はじめ専門家の方々が相談を受けているが、これは専門家のみなさんの熱意によるまったくのボランティアである。複雑な相談が多いので、一回の相談時間は一時間三十分で、対応を誤ることがないよう複数の専門家で対応している。
 2 このような区市町村が取り組むマンション相談に対し補助を行うことは急務だ。見解を伺う。
三 ペイオフ対策について
 1 マンションの維持管理、大規模修繕や建て替えのために多額の積立金を、素人のボランティア集団である管理組合が管理しており、ペイオフ解禁への対応は深刻で切実な問題となっている。今後、金融機関の破綻にともない、多額の積立金を失うような管理組合が生まれた場合、そのマンションの適切な維持管理は不可能となり、スラム化の心配をはじめ、大きな社会問題になることは避けられない。マンション管理組合のペイオフ対策の重要性について、都の認識を伺う。
   また、深刻な事態を未然にふせぐため、都としてペイオフ対策について可能な支援を親身になって行うことが求められている。
 2 都としてマンション管理組合の団体等をまじえたペイオフ対策の検討会を設置してはどうか。また都がペイオフ解禁にむけ設置した「公金管理に関する検討委員会」で得られた情報やノウハウを適切なかたちでマンション管理組合に提供することをはじめ、都として管理組合むけのペイオフ対策マニュアルの発行、情報提供などは、やる気になればすぐできるのではないか。
 3 マンションの管理、修繕、建て替えのための積立金の保障システムをつくることも必要である。その点で、住宅金融公庫のマンション管理債券は、ひとつの試みであり、ペイオフ対策としても有効である。
   このような公的なリスク分散のしくみをいろいろなかたちで整備することも重要ではないか。そのひとつとして、東京都も山捐し、マンション管理組合の資金によってつくる「東京都マンション管理支援基金」(仮称)を創設してはどうか。
四 マンションの届け出制度について
  マンション管理適正化法で管理業者は届け出が義務づけられたが、分譲マンションの建設・販売についての届け出は法制化されていない。このため都内のマンションストックの正確な数が把握できないばかりか、自治体がマンション施策にとりくむ際、分譲マンションの所在・分布そのものが十分に把握できないことが、大きな問題となっている。
  マンションが大量建設され、賃貸住宅や事務所ビルなどの中高層建物との混在が著しい東京では、この問題の解決はとりわけ急務である。
 1 分譲マンションは、区分所有建物であり、公共性が高く、管理組合への支援が必要であるなどの独自性をもっており、その建設・販売段階での、都にたいする届け出制度をつくる必要があるのではないか。
 以上、答弁をお願いします。

平成十三年第四回都議会定例会
大山とも子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 マンション管理適正化法の活用について
  1 「マンション管理適正化法」及びそれに基づく「マンションの管理の適正化に関する指針」を管理組合と管理業者にどう徹底し、定着させていくかが今後の重要な課題である。見解を伺う。

回答
  「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」及び「マンションの管理の適正化に関する指針」の内容を管理組合と管理業者に理解させ、定着させることは、適正なマンション管理の推進を図るために重要なことであると認識しています。

質問事項
 一の2 法及び指針を管理組合と管理業者に徹底し、定着させるために都としてどのような取組をするのか、具体的な対応を伺う。

回答
  現在、都は管理組合や管理業者の団体も参加している「東京都分譲マンション管理・建替え協議会」及び管理組合等の身近な相談窓口である区市と「東京都分譲マンション施策推進行政連絡会」を設置し、協議、意見交換等を行っています。
  これらの会議を通じて、「マンション管理適正化法」及び「マンションの管理の適正化に関する指針」の周知を図っております。
  今後も、国や区市、マンション関連団体とも連携し、一層の周知を図ってまいります。

質問事項
 一の3 マンション管理適正化への支援策を一層強化・充実することが求められると考えるが、都の認識と具体策について伺う。

回答
  分譲マンションの維持・管理は、管理組合や区分所有者等が自らの責任と判断の下に進めていくことが基本です。
  しかし、区分所有者の合意形成が難しいことなどもあり、都は、管理組合等によるマンション管理が適正に行われるよう区市等とも連携し、分譲マンション管理アドバイザー等による相談等の支援を行っているところです。
  今後、「東京都分譲マンション管理・建替え協議会」における協議や「分譲マンション相談マニュアル」の改訂、各区市の相談員との連絡会による意見交換等を通じて、区市等の相談体制が、さらに充実するよう支援してまいります。

質問事項
 一の4 「分譲マンション維持・管理ガイドブック」などを、法と指針に合わせて直ちに改訂すべきだが、所見を伺う。

回答
  これまでに都は、分譲マンションの維持・管理に取り組むための基本的な手引き書である「分譲マンション維持・管理ガイドブック」、計画的な修繕に取り組むための「分譲マンション長期修繕計画・計画修繕ガイドブック」を発行し、都民への周知を図っているところです。
  これらのガイドブックは、「マンション管理適正化法」及び「マンションの管理の適正化に関する指針」の主旨に沿ったものであり、内容的にも合致しているものと考えております。

質問事項
 一の5 マンションの実態調査について、区市町村ごとの調査を促進すると同時に、五年に一度程度は、都として一斉調査を行い、系統的なデータを直接蓄積することが重要である。所見を伺う。

回答
  分譲マンションの実態調査は、地域に最も身近な自治体である区市町村が行うことが適切と考えます。
  都は、「東京都区市町村分譲マンション実態調査事業補助要綱」に基づき、区市町村に対し支援を実施し、統一的なデータを得るよう努めています。

質問事項
 一の6 居住者・区分所有者の高齢化とマンションの経年劣化に伴う問題は、今後ますます増えることが予想される。早急に調査し、対策を検討することが必要である。所見を伺う。

回答
  分譲マンションは、「マンションの管理の適正化に関する指針」の定めるところに留意して、管理組合が適正に管理するよう努めるべきものです。
  都は区市と連携し、「マンション管理適正化法」に基づき必要な情報及び資料の提供等を行い支援していきます。

質問事項
 一の7 都として、マンション管理士制度の定着と普及、情報提供のため、どのような取組を行うのか。マンション管理士についても協議会の設置や研修を実施するなどの支援を行うべきではないか。所見を伺う。

回答
  マンション管理士制度については、国や区市等と連携し普及・啓発に努めております。
  今後、都は分譲マンション管理アドバイザーとしてマンション管理士を活用するなどの方策について検討してまいります。

質問事項
 二 区市町村支援の強化について
  1 区市町村によるマンション施策を支援するための、区市町村のアイデア、独自性を生かし、使い勝手がよい新たな補助制度の創設を提案するが、所見を伺う。

回答
  分譲マンションについて、都は、広域的自治体の立場から区市と「東京都分譲マンション施策推進行政連絡会」において情報や意見の交換、協議などを行っており、この会議を通じ、今後のマンション施策のあり方についても検討していきます。

質問事項
 二の2 区市町村が行うマンション相談に対し補助を行うことは急務である。所見を伺う。

回答
  都は、区市町村における分譲マンション相談に対しては、「分譲マンション相談マニュアル」の充実、各区市の相談員との連絡会による意見交換等を通じて支援しております。

質問事項
 三 ペイオフ対策について
  1 金融機関の破綻に伴い、マンションの維持管理等の積立金を失う管理組合が生まれた場合、大きな社会問題になる。マンション管理組合のペイオフ対策の重要性についての都の認識を伺う。

回答
  ペイオフ対策は、マンション管理組合に限らず、都民や民間企業にとっても重要なことと認識しています。

質問事項
 三の2 都は、マンション管理組合の団体等を交えたペイオフ対策の検討会を設置すべきだが、見解を伺う。

回答
  現在、管理組合の団体やマンション関連団体などで構成する「東京都分譲マンション管理・建替え協議会」を設置し、分譲マンションの維持・管理等について協議や意見交換等を進めており、ペイオフ対策などマンションの維持・管理上の課題についても、この協議会で対応が可能であると考えております。

質問事項
 三の3 都は、「公金管理に関する検討委員会」で得られた情報やノウハウを適切なかたちでマンション管理組合に提供することをはじめ、管理組合向けペイオフ対策マニュアルの発行等の情報提供を行うべきだが、所見を伺う。

回答
  ペイオフ対策については、すでに「分譲マンション相談マニュアル」に掲載し、各区市の相談窓口等での対応を通じ、管理組合等に対する情報提供を行っているところです。

質問事項
 三の4 住宅金融公庫のマンション管理債券のような公的リスク分散の仕組みをいろいろなかたちで整備することも重要である。都も出捐し、マンション管理組合の資金によってつくる「東京都マンション管理支援基金(仮称)」を創設すべきだが、所見を伺う。

回答
  住宅金融公庫の「マンション修繕債券積立制度」の活用や修繕積立金等の預け入れ先の分散化など、マンション管理組合が自己の責任と判断のもと対応すべきものと考えています。

質問事項
 四 分譲マンションは、公共性が高く、管理組合への支援が必要であるなどの独自性をもっており、建設・販売の段階での都に対する実態把握のための届け出制度をつくる必要があると考える。所見を伺う。

回答
  分譲マンションの供給数等の実態については、現在、区市が実施する実態調査結果や「住宅・土地統計調査」結果、さらには民間研究機関の調査結果により新規供給数やストック数等を把握しております。

平成十三年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 曽根はじめ

質問事項
 一 学校週五日制の対応について
一 学校週五日制への対応について
  来春から公立の小・中・高校で学校週五日制が完全実施されようとしています。毎週土日を休みにすることは、子供と教育をめぐる状況を一変させるだけに、学校の内外で混乱を招くことなく、子どもたちに真のゆとりをもたらすためには、区市町村と連携した都の本格的な対策が求められています。
  最大の問題は、週五日制が始まったときより、学校も家庭も地域も、五日制を支えるための教育条件が充実するどころか、逆に大きく低下していることです。
  わが党は第四回定例会の代表質問で、都が急いで取り組むべき主な課題について質しましたが、教育長の答弁もふまえ、以下、学校週五日制をめぐる具体的課題について文書質問を行います。
 1 学校での対応について
   学校五日制を二十一世紀初頭に完全実施することを明記した、九六年の中央教育審議会第一次答申では、実施への条件として、教育内容の厳選と授業時間数の縮減、学校外活動の充実と家庭や地域の教育力の充実、過度の受験競争の緩和などを挙げていますが、その後五年間、これらの施策が実効ある内容で進められてきたとはとうてい言えない現状です。学級定数もいまだに四十人のままであり、早期に三十人学級の実現が必要です。
   学校教育については、完全五日制と合わせて新学習指導要領を実施予定ですが、授業時間を減らし、つじつまを合わせることばかり優先して、これまで以上に詰め込みでわかりにくくなり、子どもたちの基礎学力低下に拍車をかけることが多くの専門家より危惧されています。また、平日の授業時間が増えることによって、放課後の部活動や学校行事にしわ寄せされることが心配されます。
   また一方で毎週二連休となることから、当面は休み明けなどに、子どもの学校生活のリズムを取り戻すための特別な手だてが必要です。とりわけ体調を崩したり、保健室登校が現状よりさらに増えることが予想され、養護教諭と保健室の体制の整備が不可欠と考えます。この観点から以下質問します。
  ア 都は三十人学級実現を一貫して拒否してきましたが、いまだに具体化させないのはなぜですか。
  イ 学習内容について行けない子どもを生まないため、学級定数の改善をめざしつつ、当面一年生と最終学年、また四十人やそれに近い人数のクラスにはティームティーチングや補助担任などの積極的配置を行うべきと考えますが、どうですか。
  ウ 子どもたちの学習が詰め込みになっていないか、絶えず現場教員の意見を聞き、学習指導要領の必要な改善を国にはたらきかけるべきではありませ
んか。
  エ 部活動指導や図書館での読書指導、学校行事の準備など、学校運営が支障を来さないよう教員定数の増配置に努め、教員の持ち時間数を減らす努力が必要ではありませんか。
  オ 養護教諭の複数配置を全校に進めることを求めます。また当面、国の七次改善に基づく複数配置の基準を繰り上げて実施することは十分可能ではありませんか。
  カ 保健室に、必要に応じて相談できるコーナーをつくるなど設備の改善を支援すべきと思うがどうですか。
 2 都と区市町村の施設について
   週五日制が月一回始まった当時、社会的関心も高く、都も含めてさまざまな地域行事が公民館や社会教育施設、児童館、博物館などで組まれました。ところが今日では東京都の社会教育施設や児童福祉施設も、多摩を中心に軒並み廃止・縮小・地元移管などが計画されています。区市町村の児童館や学童保育も財政難を理由に土曜閉鎖が続出しています。これでは週五日制で土曜休日を完全実施する一方で、そのための地域における子どもたちの居場所を、行政が自ら奪っているといっても過言ではありません。
  ア 都として、本来の役割を無視した社会教育施設の縮小・統廃合は再検討し、むしろ都の青少年センター、児童会館もふくめて機能の充実こそ必要ではないでしょうか。
    高尾自然科学博物館、近代文学博物館、生涯学習センター、多摩社会教育会館などをなぜ廃止・縮小するのか、それぞれの理由をお聞きします。
  イ また都として、都内自治体に児童館や学童保育の土曜開設を呼びかけるべきではありませんか。
 3 地域での子どもの居場所づくり、活動支援について
   学校外の子どもの生活、とりわけ毎週土曜休みになる子どもたちの居場所がどんどん減っています。それはかつての地域コミュニティーが破壊され、子ども活動の世話役が不足しているのに加えて、国や都をはじめとする社会教育・生涯学習施策の廃止・縮小によって地域の教育力がさらに弱まっていることが大きな要因です。
   わが党の代表質問で、区市町村の学校五日制への対応を調査すべきとの問いに教育長は「区市町村でも子どもたちの学校外活動を支援するさまざまなとりくみが行われている」と答弁されましたが、問題は、自治体によって方針もばらばらで、しかも取り組みの規模が、地域の子ども全体に責任を持つだけの量と質には程遠いという点にあります。
   この点で渋谷区では、上原社会教育会館の社会教育委員のかたがたが、国の「地域活動支援事業」補助を受けて、中学生の居場所づくりに取り組み、その後「ファン・イン」という名称で区内中学七校のうち六校に広がってきました。学校近くの区民間で集会室やロビーを借りきり、放課後の時間にビーズ細工やヒップホップダンス、ビオトープづくりなどさまざまな教室やサークル活動に取り組んでいます。中学生を対象に、とりくみが区内全域に広がりつつある点が重要です。
   国は週五日制にむけて子ども地域活動支援事業など三か年計画を行ってきましたが、予算も少なく立ち上げ資金しか援助がありません。今年度から始まった「子どもゆめ基金」を活用して何とか事業を続けていますが、国の立ち上がり支援事業が終われば、維持していくのはなかなか困難になります。多くの区市町村が、こうした事業に二の足を踏んでいる原因のひとつが、この財政負担の問題です。本来こうした地域の居場所づくりは、自主的なグループや団体の力を発揮してもらいながらも、国と自治体がすべての子どもに責任を持って保障すべき施策です。そこで以下、質問します。
  ア 都はこうした活動を、地域の人々の協力も得ながら都内全域に広げていくよう取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。
  イ そのためにも区市町村と連携し、地域活動の拠点と体制づくりのために、国に必要な財源を求めるべきと考えるがどうでしょうか。
  ウ 「子どもゆめ基金」が、自主的な団体への直接補助であることから、その思いきった拡充を求めると同時に、自治体の五日制対策の取り組みへの財政補助も、合わせて制度化するよう国に要請する必要があると考えますがどうですか。
  エ できるだけ子どもの身近にこうしたたまり場所や活動場所を確保するには、地域の教育はじめ公共施設の全面的な活用が必要です。都として、都内自治体の社会教育館や児童館、その他子どもの居場所となる施設での「居場所づくり」の様ざまな事業について、地域の実情や子供たちの要望などによって多様な活動が可能なように、プロポーザル方式で財政支援を検討すべきではありませんか。
 4 障害児の対応について
   学校週五日制の完全実施でもっとも影響の大きいのが障害児です。とりわけ盲・ろう・養護学校に通う障害児は、居住地域との結びつきが薄く、しかも重度・重複の場合が多いため、これまでも休日には家庭にこもりがちという問題が指摘されてきましたが、土日が毎週休日になったとき、本人はもちろん家族も含めて家庭に閉じ込められ、ストレスなど心理的悪影響が心配されます。そこで当面の対策をお聞きします
  ア 地域で障害児が参加できるさまざまな行事や「居場所」をどうつくっていくのか、関係者の協議と対策を急いで行うことが必要です。都として障害児の休日の過ごし方など実態を調べ、対策を協議する場を先頭にたってつくる必要があると考えるが、どうか。
  イ 障害児が、地域の児童館や社会教育施設に出かけやすいように、バリアフリー対策をとることが求められます。都の施設の現状を調査の上、必要な改修・改善工事を行うこと、また区市町村の子供の施設のバリアフリーのための工事には促進の立場で補助の上乗せを実施してはどうか。
  ウ 都と区市町村が連携して土日の休日を利用した、障害児を対象とした行事や、障害児が地域の子どもたちと交流できる行事などを実施することを求めるものですが、どうか。
  エ 都内の各地域で、多くの自主的グループ、団体が、障害児の学童保育などにとりくんでおり、これに対して都は地域福祉財団を通じて支援してきました。財団の廃止に伴って支援が縮小・廃止されないよう、また障害児の学校外の活動を支援する新たな自主的活動に都の支援を積極的に行うべきだがどうか。
    以上、答弁を求めます。

平成十三年第四回都議会定例会
曽根はじめ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 学校週五日制の対応について
  1 学校週五日制への学校の対応について
   ア 都は、三十人学級を一貫して拒否してきたが、いまだに具体化させない理由について伺う。

回答
  都教育委員会は、児童・生徒が社会性を養うための教育効果の観点から、生活集団としての学級には一定の規模が必要と考えています。
  一方、基礎学力などの向上に配慮し、きめ細やかな指導を行っていくには、学級とは異なる少人数の学習集団を編成し指導していくことが、より効果的であると考えています。
  このため、学級編制基準については現行の四十人を変更せず、教科等の特性に応じた少人数による指導の拡充に努めてまいります。

質問事項
 一の1のイ 学習内容について行けない子供を生まないため、学級定数の改善を目指しつつ、当面一年生と最終学年、また四十人やそれに近い人数のクラスにはティームティーチングや補助担任などの積極的配置を行うべきだが、所見を伺う。

回答
  ティームティーチング等については、平成五年度から、国の教職員定数改善計画を踏まえ、個に応じた多様な教育を推進するため、複数の教員が協力して行う個別指導やグループ指導など新しい指導方法を積極的に導入することが可能となるよう、教員定数を改善してきたところです。
  今後の教員配置については、区市町村教育委員会の意向等を勘案し、ティームティーチング教員を配置するとともに、国の第七次教職員定数改善計画を踏まえ、基礎学力の向上を図るため、学年や教科の特性に応じた少人数の学習集団による授業が可能となるよう、平成十三年度から十七年度にかけて計画的に定数改善に努めてまいります。

質問事項
 一の1のウ 詰め込み学習になっていないか絶えず現場教員の意見を聞き、学習指導要領の必要な改善を国に働きかけるべきだが、所見を伺う。

回答
  新学習指導要領では、完全学校週五日制のもとで、各学校がゆとりの中で、特色ある教育を展開し、生きる力を育成することを基本的なねらいにしています。
  都教育委員会では、こうした新学習指導要領の趣旨の徹底を図るため、教育課程に関する指導資料等を作成・配布するとともに、区市町村教育委員会や学校に対して説明会を実施してまいりました。
  都教育委員会は、今後とも、各学校が児童・生徒や地域の実態等を十分に踏まえ、特色ある学校づくりを進めていくよう、学校訪問や教員研修等を通して指導・助言してまいります。

質問事項
 一の1のエ 学校運営が支障を来さないよう教員定数の増配置に努め、教員の持ち時間数を減らす努力をすべきだが、所見を伺う。

回答
  教職員定数については、これまでも国の定数改善計画を踏まえ、改善に努めてきたところです。
  今後とも、小中学校は国の第七次教職員定数改善計画、高等学校については国の第六次教職員定数改善計画を踏まえ、計画的な定数改善に努めていきます。
  教員の授業持ち時数については、文部科学省は「新学習指導要領における授業時数の減とは児童・生徒にとっての減であり、教員の授業持ち時数が減るということではない。」との見解を示しているところです。このため、教員の授業持ち時数については現行どおり取り扱ってまいります。

質問事項
 一の1のオ 養護教諭の複数配置を全校に求める。また、国の七次改善に基づく複数配置の基準の繰上げ実施について、所見を伺う。

回答
  養護教諭の複数配置については、一定の規模以上の学校を対象に、国の第七次教職員定数改善計画や都の財政状況も踏まえつつ、平成十三年度から十七年度までの五年間で計画的に配置基準を改善していきます。

質問事項
 一の1のカ 保健室の設備の改善を支援すべきだが、所見を伺う。

回答
  都教育委員会は、心身の健康問題で保健室に来室する児童・生徒に対して、プライバシーへの配慮や相談しやすい雰囲気づくりなどが必要と考え、これまでも指導資料等を区市町村教育委員会を通じて各学校に配布してまいりました。
  各学校では、これらの資料を活用し、コーナーにソファーを置くことやつい立で区切るなど、実態に応じたさまざまな工夫を進めており、都教育委員会では、今後とも的確な情報提供を行うなど、相談活動の充実に努めてまいります。

質問事項
 1の2 都と区市町村の施設について
    ア 社会教育施設の縮小・統廃合は再検討し、むしろ都の青少年センター、児童会館も含め、機能の充実こそ必要ではないか、所見を伺う。

回答
  青少年が自由に使える時間の中で、様々な社会体験、自然体験等の体験活動ができる機会や場などを提供し、青少年の自立と社会性の発達を支援していくことは重要であると考えます。
  このため都教育委員会としては、「とうきょう親子ふれあいキャンペーン」の実施や新しい青少年施設「ユース・プラザ」の設置など、都と区市町村との役割分担を踏まえ、広域的な立場から学校週五日制も視野に入れた青少年施策を、関係部局等との連携を図りながら充実していきます。

質問事項
 一の2のイ 高尾自然科学博物館、近代文学博物館、生涯学習センター、多摩社会教育会館などをなぜ廃止・縮小するのか、それぞれの理由を伺う。

回答
  東京都近代文学博物館については、少ない入館者数、交通の利便性などの問題点及び文学関連施設が多数設立されているという時代変化を踏まえ、都が近代文学に限定した小規模な施設を運営する意義は薄くなっていることから、平成十三年度をもって廃止します。
  東京都生涯学習センターについては、IT化の進展により都民の情報収集手段が多様化していること、区市町村において関連施設が充実されてきたこと等により、都が直接都民に施設サービスを提供する意義は薄くなっていることから、平成十三年度をもって廃止します。
  東京都立多摩社会教育会館の市民活動サービスコーナーにおける市民活動は、基本的には市民団体が主体的・自主的に地域社会において取り組むべきものであり、その活動への支援については、基礎的自治体である市町村の役割と考えていることから、平成十三年度をもって市民活動サービスコーナー事業を廃止します。
  なお、東京都高尾自然科学博物館については、平成十二年十二月の『都庁改革アクションプラン』において「あり方を抜本的に見直す」こととされており、現在、都教育委員会として、設置主体や運営形態等を含めた館のあり方を検討しているところです。

質問事項
 一の2のウ 都内自治体に児童館や学童保育の土曜開設を呼びかけるべきだが、所見を伺う。

回答
  子どもが自由に使える時間の中で主体的に活動し成長することを支援するために、地域での活動機会や場の充実を図ることが重要であると考えます。
  都教育委員会は、こうした視点に立って、区市町村等と連携しつつ、学校週五日制の施策の推進に努めていきます。

質問事項
 一の3 地域での子どもの居場所づくり、活動支援について
    ア 子どもたちの学校外活動を支援する様々な活動を地域の人々の協力も得ながら都内全域に広げていくよう取り組むべきだが、所見を伺う。

回答
  子どもが学校外の活動を通じて地域の人々とふれあうことにより、豊かな人間性を身につけ、社会の基本的ルールを体得することは重要なことであると考えます。
  都教育委員会はこの視点に立って、区市町村及び民間団体等の協力の下に、「とうきょう親子ふれあいキャンペーン」や都立学校公開講座における「子ども教室」等を実施しているところです。今後はこれら諸機関との連携を図り、施策のさらなる充実に努めていきます。

質問事項
 一の3のイ 区市町村と連携し、地域活動の拠点と体制づくりのため、国に必要な財源を求めるべきだが、所見を伺う。

回答
  子どもの地域活動を促進していく取組について、都教育委員会はこれまでも国の諸事業を活用しながら、区市町村における施策の充実に努めてきたところです。
  国では、平成十四年度から地域教育力・体験活動等の総合的な取組を推進するという観点に立ち、子どもたちの地域活動をさらに充実させるための諸施策を検討しています。
  都教育委員会は、今後も、これら国の施策等を活用しながら、区市町村教育委員会が実施する子どもの地域活動の充実に向けた取組を支援していきます。

質問事項
 一の3のウ 「子どもゆめ基金」の思いきった拡充を求めると同時に、自治体の五日制対策への財政補助もあわせて制度化するよう国に要請すべきだが、所見を伺う。

回答
  政府の出資金及び民間の出えん金をもって今年度創設された「子どもゆめ基金」は、民間団体が行う青少年の自然体験活動等に対して直接助成し、子どもの健全な育成を推進するものです。都教育委員会としては、その趣旨を踏まえ、区市町村を通じて、同基金の有効活用を関係団体に周知しているところです。
  平成十四年度からの学校週五日制の完全実施に向け、都教育委員会は、国の補助事業等を活用し、地域の教育力の向上を図っていきます。

質問事項
 一の3のエ 「子どもの居場所づくり」事業について、地域の実情や子どもたちの要望などによって様々な活動が可能なように、プロポーザル方式で財政支援を検討すべきだが、所見を伺う。

回答
  子どもの健全育成の一層の推進を図ることを目的として、国では民間団体が子どものニーズや地域の特性等に基づいて企画した事業に対し財政支援する「子どもゆめ基金」を設けています。
  都教育委員会は、この「子どもゆめ基金」を、地域における青少年活動団体が積極的に活用できるよう、区市町村を通じて、引き続き関係団体に周知していきます。

質問事項
 一の4 障害児の対応について
    ア 地域で障害児が参加できる様々な行事や居場所をどう作っていくのか、関係者の協議と対策を急いで行うことが必要である。都として、障害児の休日の過ごし方など実態を調べ、対策を協議する場を先頭に立ってつくるべきだが、所見を伺う。

回答
  障害のある子どもたちが地域の行事等に参加できるよう環境を整備することは重要なことであると考えています。
  平成四年度からの学校週五日制実施に伴い、都と区市町村の間でそれぞれの役割分担などについて協議を重ねてきました。
  これらを踏まえて、都及び区市町において学校週五日制に対応した地域活動事業を実施しているところです。

質問事項
 一の4のイ 障害児が地域の児童館や社会教育施設に出かけやすいように、都の施設の現状を調査の上、バリアフリーに必要な改修・改善工事を行うべきである。所見を伺う。

回答
  東京都児童会館のバリアフリー対策については、すでに、入口への視覚障害者誘導ブロックの設置、廊下の段差解消、階段の手すりや障害者用トイレの設置、障害者専用駐車スペースの確保、さらに障害児・者のためのエレベーターの設置など「東京都福祉のまちづくり条例」に定める整備基準に基づき、障害児等が安心して利用できるよう適切な対応を行ってきています。
  また、都教育委員会においても、都立図書館ほか、都立の社会教育施設のバリアフリー化への対応として、障害のある都民や子どもたちも利用しやすいよう、スロープや障害者用トイレなどを整備してきています。

質問事項
 一の4のウ 区市町村の子どもの施設のバリアフリー対策工事には、促進の立場で補助の上乗せを実施すべきだが、所見を伺う。

回答
  都は、区市町村における児童館の施設整備に対し、児童館整備費補助要綱に基づく必要な補助を行っています。
  児童館のバリアフリー化については、すべての子どもが安心して利用できるよう、その設置主体である区市町村が、適切な対応を図っていくべきものと考えています。

質問事項
 一の4のエ 都と区市町村が連携して土日の休日を利用した、障害児を対象とした行事や、障害児が地域の子どもたちと交流できる行事などを実施するべきだが、所見を伺う。

回答
  障害のある子どもたちが地域で交流できる行事などを実施することは、大切なことと考えます。
  都教育委員会では、障害のある子どもたちが地域で豊かに生活できるよう、区市町と連絡して「心身に障害のある児童・生徒の地域活動促進事業」などを実施しているところです。

質問事項
 一の4のオ 地域福祉財団の廃止に伴い、障害児の学童保育などに取り組んでいる、多くの自主グループ、団体への支援を、縮小・廃止されないよう求める。所見を伺う。

回答
  福祉を取り巻く状況は、介護保険制度が導入され、障害福祉等の分野でも支援費支給方式の導入が予定されるなど、措置から契約へとその仕組みが大きく変化しており、また、東京都では、利用者本位の新しい福祉の実現を目指した福祉改革への取組を進めています。
  このような中で、これまで社会福祉法人などへの財政支援を中心に事業を展開してきた地域福祉財団については、その設立趣旨にまで立ち返り、事業、組織の徹底した見直しを行った上で、なお継続して行うことが適当な事業については新たな実施体制を構築して、組織を廃止することとしたものです。
  当財団が実施してきた地域福祉振興事業については、先駆的、開拓的、実験的性格を持つ奨励的な助成制度であり、今後、障害者(児)施策を取り巻く社会経済状況の変化等も考慮して対応していく考えです。

質問事項
 一の4のカ 障害児の学校外活動を支援する新たな自主的活動に都の支援を積極的に行うべきだが、所見を伺う。

回答
  障害のある児童・生徒の学校外活動を支援していくことは重要であると考えています。都立盲・ろう・養護学校では、休業となる土曜日について、平成四年度から社会教育活動としてレクリエーション・スポーツ活動を中心とした「心身に障害のある児童・生徒の学校外活動事業」を実施しているところです。

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