平成十三年東京都議会会議録第十七号

○議長(三田敏哉君) 二十三番吉原修君。
   〔二十三番吉原修君登壇〕

○二十三番(吉原修君) 自由民主党の吉原修でございます。都議会第四回定例会に当たり、私にとりまして初めての一般質問をさせていただきます。
 今私の住んでいる町田は多摩地域に属しております。多摩地域は古い歴史を持ち、独自の文化と緑豊かな自然をはぐくんできた愛すべき我がふるさとであります。
 石原知事も、就任以来、精力的に横田基地や奥多摩の水源林、都立大学キャンパス、障害者施設など、さまざまなところを視察なさっているとのことですが、その多くは車やヘリコプターを使い、車窓から、あるいは空から多摩地域を見ることが多いかと思います。そういう目で見た多摩地域は、一見緑が豊かに見えるかもしれませんが、長年住み続けた私から見ますと、身近なところから、どんどん緑が失われてきているのであります。
 町田市では、つい数年前、たった一年で東京ドームの約十二倍の緑が失われました。ほかの地域も、推して知るべしの状況であります。私は緑の果たす重要性を踏まえ、緑の積極的な保全の観点から、都市・環境委員会において、土地税制の問題や、あるいは都市基盤整備のあり方などについて、関係局と議論をさせていただいているところであります。
 そうした議論の中、緑の東京計画や多摩の将来像といった行政計画について説明をいただき、私なりの理解を深めているところでありますが、東京都のスタンスは二十三区との格差、いわゆる多摩格差はほぼ解消された、そして多摩地域はみずからの個性や独自性を伸ばし、主体性を持った発展を目指す時期に来ているとのことであります。
 多摩格差については、我が党の代表質問にもありましたように、南北道路一つをとってみましても、決して解消されていないのが現実であります。私自身は、ただ単に二十三区に追いつくことだけが多摩地域の生きる道ではなく、みずからの個性や独自性を持って主体的な発展を求めていくことが重要だと考えております。
 私自身は、そのとき最も大事な要素となるのが多摩の自然、すなわち緑であると考えております。知事ご自身は多摩という地域をどのように見ておられるのか、都が作成している計画で述べられているお役所言葉ではなくて、知事ご自身の言葉による多摩都民への心のこもった夢のあるメッセージをいただけたらありがたいと思います。
 監理団体についてお尋ねいたします。
 平成十四年度の予算編成はこれから佳境を迎えるところでありますが、都財政は大変厳しい状況にあります。もし都民に行政サービスの後退をご理解いただくとすれば、東京都においても、足元のレベルでの歳入あるいは歳出のさらなる見直しに徹底して取り組むことが重要ではないかと考えます。
 昨年、都がまとめました監理団体改革実施計画では、各団体の改革や改善策を都民の前に明らかにした点で、その意義は極めて大きかったと思います。
 そこでまず、策定計画から一年経過した監理団体改革の進捗状況、とりわけ都の財政支出の削減もしくは都へ財政的還元の観点から各団体でどのような改善策が検討され、そして実行されているのか、具体例を交えてお教えいただきたいと思います。
 現在、監理団体の数は五十八団体に及んでいますが、その一つ一つについて財務諸表の分析から事業の運営実態の把握、それに基づく経営改善の指導など、詳細なレベルまで入り込んでの指導が必要であります。
 監理団体への東京都の財政支出を十一年度の二千七百四十一億円から四年間で七百二十億円削減するという、そのこと自体は大変な努力だとは思います。しかし、よくよく考えてみれば、それでも二千億円を超える額を東京都は引き続き監理団体に支出するわけであります。都民感覚からすると、にわかには納得しがたい数字ではないでしょうか。東京都は真に都民の納得を得るために、二千億円の支援に見合う都民への還元とその努力を、各団体に対してもっと明確な指導をすべきと考えます。
 そこで、財団法人東京国際交流財団についてお尋ねいたします。
 財団法人東京国際交流財団は、国際交流事業補助金として、今年度約五億円を都財政から支出されました。なおかつ国際フォーラムを運営しており、貸しホールの収入はなんと六十七億円であります。この財団に広い都有地、そして大変立派なホールの施設を東京都が無償貸与しておるわけであります。しかも、大規模修繕は東京都が行うと聞いております。
 国際フォーラムがスタートして五年になりますが、ようやく今年度初めて約五千万円を都に還元することになっているとお聞きしております。しかし、国際フォーラムの運営を財団以外の民間会社に委託すれば、JR有楽町駅前の一等地に、その土地に見合った土地と建物に対する還元が東京都にかなりされるものと考えます。一刻も早く都民に理解を得られる改革の一つとして、財団以外の民間委託に移すべきと考えますが、その前向きなご回答をお願いいたします。
 次に、報告団体についてお尋ねいたします。
 現在ある七十二の各報告団体の事業の運営あるいは経営実態を把握し、都民の前に明らかにすることは大変重要なことと思います。そこで、全庁的に報告団体を精査する担当部署を設けていただき、監理団体と同じレベルの改革や改善策を打ち出していくべきと考えますが、今後の方針をお伺いいたします。
 次に、タクシー、ハイヤーのラッピングについてお尋ねいたします。
 平成十二年のラッピングバスに加えまして、ことし十月から電車、新交通などの車体利用広告規制が緩和されました。
 そこで、我が党はかねてから、タクシーやハイヤーについても、一定の基準を設けて広告の規制緩和を認めていくべきではないかと主張してまいりました経過があります。私も所属しております都市・環境委員会にて、過日、趣旨採択されたところであります。平成十四年度中の実現に向けまして、今後の方針をお伺いしたいと思います。
 次に、屋外広告物についてお尋ねいたします。
 さきの第三回定例会において、我が党の小美濃議員が要望いたしました道路上の立て看板につきましては、都の速やかな対応をいただきました。しかし、まだまだ都内の屋外広告物の状況を見ると、大量の広告物が統一性のないままはんらんし、景観が無秩序なものになっています。屋外広告物のはんらんによる景観阻害について、今後どのように対応するのか、お尋ねをいたします。
 次に、消防団員に対する表彰についてお尋ねをします。
 九月十一日、米国で発生いたしました同時多発テロの際に、多数の消防職員の方々がみずからの犠牲を顧みず、被災者の救出、救助に大活躍をされました。もし東京で大震災等の災害が発生した場合はどうでしょうか。東京では東京消防庁の職員に加えて、我が国が世界に誇る民間の防災機関消防団もこれに対応することになっていると思います。実際に、消防団員が三宅島や新島あるいは神津島の災害発生では、地域を守るために大きな役割を果たされました。都内二万七千人の消防団員は生業を持ちながら、地域の防災活動に従事しております。そして行政として、日ごろの活動に報いるべきと考えます。
 そこで、消防団員に対する知事功労賞の贈呈は一定の基準を持って行っているものと思いますが、対象者を公平に選定するには個々の活動実績等に対して行われるべきであると思います。同一地域の表彰歴は不要と考えますが、見解をお尋ねいたします。
 次に、教育についてお尋ねいたします。
 さて、教育は国家百年の計といわれますが、中でも学校教育は我が国の将来の礎を築く極めて重要なかなめであります。しかしながら、我が国の学校教育の現状は必ずしも国民の期待にこたえるものとはなっておりません。我が国の行く先を考えると、憂慮せざるを得ない状況であります。
 学校教育をめぐる不安定な状況は、依然として改善の方向を見出せないでおります。児童生徒のいじめや不登校、暴力行為、学級崩壊、指導力不足教員などの問題が山積する中で、学校教育に対する国民の信頼が大きく揺らぎ、教育への情熱や理想を見失ってしまった教職員、将来への明確な目的を抱くことができなくなってしまった子どもたちは少なくありません。
 都教育委員会は、こうした状況の改善と打開に向け、心の東京革命を初め、人事考課制度の導入、そして指導力不足教員への研修体制の整備など、全国に先駆けてさまざまな施策を講じてきたと思います。こうした一連の教育改革により、学校運営も少なからず改善されつつあると理解しております。しかし、教育の危機的状況と教育改革は必ずしも組織的に行われてきたのではなく、校長、教頭の個人的な能力に頼ってきた部分が大きいと考えます。
 そこで都教育委員会は、こうしたさまざまな分析を行い、解決の方法を探る中で、学校改革の要諦は学校運営組織の改善にあるとの認識に立って、従来の学校組織を見直し、二十一世紀型の新たな学校運営組織のあるべき姿を追求するために検討委員会を立ち上げたと聞いております。
 そこで、まず、学校組織の現状にどのような問題があるのか、お尋ねをいたします。
 次に、都教育委員会では、こうした学校組織の問題を解決するため、全国で初めて、公立学校の新しい職として主幹というものを置くということであります。この新たな職をすべての公立学校に置くことの効果についてお尋ねいたします。
 東京都教育委員会は、東京から日本の教育を変えていく意気込みと英断を持って改革を推し進めていただくことを強く期待いたしまして、私の質問を終わりとさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 吉原修議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩地域についてどういう印象を持つか。多摩地域の現在と未来についてでありますが、私は、東京の強みの一つは、案外都民そのものも知らないんですけれども、実にいろいろな顔を東京が備えているというところだと思います。その中で、多摩は自然と市街地が融合しながら、独特の魅力を醸し出している点が、区部とは歴然と違う多摩の特質だと思います。
 アメリカの東部でも、よく申しますが、ニューヨークなどの大都市の背後にはアパラチア山脈がありまして、そう高くない山ですけれども、非常にナイーブないい山脈でありますが、市民の憩いの場となっております。奥多摩から他県に広がる山岳地帯は、アパラチア山脈同様、都会に近接していながら、非常に豊かな自然を残していると思います。
 半年ほど前に、EU大使の会議に招かれた答礼で、大使たちを招きまして、二台のヘリコプターに分乗して都心の二十三区を飛び、南下して伊豆七島の三宅を上から眺めて、神津島、新島、大島とそれぞれおりて島を鑑賞してもらった後、今度は多摩の温泉に案内しまして、あそこに点在する温泉もまた非常に集客力のある有力な観光資源であると思います。
 大使との夕食会では、東京都が開発しました例のTOKYO・Xという豚肉も賞味をしてもらいまして、みんな舌鼓を打っておりましたが、もし、一生懸命努力しておりますけれども、横田の基地がまず第一段階として共同使用、ジョイントユースということになれば、構想としては、あそこに羽田が国際化していった後のはみ出した国内線をあそこに迎える。もう既に電車も通っておりますし、東京駅からも、新宿からも非常に至近の、極めて便利な、恐らく熊本や広島、岡山の新空港よりも、ダウンタウンからははるかに近い空港になると思いますが、そういう形であそこが共同使用になりますと、これは新しい大きな玄関が実はあの三多摩の地域にできるわけでありまして、そこで多摩の振興も非常に大きく進むと思っております。
 その上で、自然や資源をうまく活用することによって、多摩地域がさらに一層発展する可能性を持っていると思います。地元の方々と一緒に、都心部とは一味も二味も違う、個性のある地域として多摩を育てていきたいなと思っておる次第であります。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 学校組織に関します二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、学校組織の現状の問題点についてですが、現在、児童生徒のいじめ、あるいは不登校、暴力行為や指導力不足の教員の存在など、学校教育が抱える課題は山積をいたしております。
 しかしながら、このような課題に対して、学校は必ずしも迅速かつ的確に対応してきたとはいいがたい状況にございます。
 その最も大きな原因は、学校が課題に対して組織的に対応する体制を整えていないことにあると認識をいたしております。
 具体的には、校長、教頭以外は職位に差がない教員で構成されておりますことから、管理職の指示が教職員に徹底されにくいこと、あるいは意思決定に必要以上の時間を要するなどの問題がございます。
 また、教職員間に横並び意識が存在しており、相互に指導助言を行い、切磋琢磨する意識が醸成されていないなどの問題もございます。
 次に、新たな職、主幹を置くことによる効果についてでございますが、主幹を置くことによりまして、学校の組織的な課題対応力が高まり、保護者や都民の要望に迅速かつ的確に対応することができるようになると考えております。
 また、校長、教頭とともに、主幹が教諭等を指導育成する役割を担いますことから、計画的な人材育成が可能となり、学校全体の教育力を高めることができることとなりますことから、学校は児童生徒に対してより質の高い教育を提供することが可能となり、地域に信頼される開かれた学校づくりを一層推進することができるものと考えております。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、監理団体改革の進捗状況でございます。
 各団体では経営改善計画を策定し、都財政支出の削減や事業の効率化等に実施年度を定めて取り組んでいるところでございます。
 これらの計画はおおむね順調に実施されておりますけれども、例えば株式会社ゆりかもめ等では、都の横並びを廃しまして、民間鉄道会社に準拠した新たな給与制度を既に導入いたしました。また、東京ビッグサイトにおきましては、これまで無償であった都施設の使用料を一部有償化いたしまして、都に還元する仕組みをつくりました。
 今後とも、都は団体の経営努力に見合った財政支出を行うため、利用料金制の導入などを計画的に進めてまいります。
 次に、国際フォーラムについてのお尋ねがございました。
 都では、民間の資金や人材を活用することで、直営で実施するよりも経済的、効率的な事業展開が図れる、このように認識しております。
 民間でできるものは民間でという原則のもとに、不断の見直しを行うことは当然でございます。
 このような視点に立って、ご指摘の国際フォーラムを初め、各団体の事業について、今後とも一層の経営改善と東京都への財政的な還元について検討してまいります。
 次に、報告団体への対応でございます。
 都では、出資比率が低く、継続的な財政支出、人的支援がわずかで、みずからの責任と判断のもとに経営を行っている団体を、報告団体と位置づけております。
 現在、この報告団体につきましては、各団体の所管局が、団体との委託契約や補助金交付要綱などに基づき、団体の経営改善を含め、日常的な指導監督を行っております。
 また、全庁的に、この結果を各所管局長が総務局長に報告し、必要な調整等を行っているところでございます。
 最後に、消防団員の知事功労賞でございます。
 知事功労賞につきましては、原則として、消防業務に精励し、他の模範となる消防団員に贈られるものでございまして、これまでは団員歴、地域性などを総合的に判断して行ってまいりました。
 今後は、ご指摘のように、同一地域での表彰歴などは採用せず、本人の活動実績状況や貢献度合いなどに配慮した表彰となるよう推薦してまいります。
 また、国における消防団員に対する表彰は、総務省消防庁において、長官表彰を行っておりますけれども、都としましても、功労があった者に対しては積極的に表彰を行うよう、国に働きかけてまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 屋外広告物に関する二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、タクシー等の広告規制についてでございます。
 タクシー等は、都内に約五万五千台と台数が多く、路線バスや電車のような路線性もないことから、屋外広告物が禁止されている住居専用地域なども走行しております。そうしたことから、それらの広告が町並みの景観に与える影響を配慮する必要がございます。
 また、高速道路を走行することから、それが事故の原因ともなりかねず、広告規制の緩和については、交通安全面も十分に考慮しなければなりません。
 このため、タクシー等については、先日の請願審査で趣旨採択されたことを踏まえつつ、今後、景観面における都民の意識調査や交通安全面の調査を実施し、検討してまいります。
 次は、屋外広告物による景観阻害などへの対応についてでございます。
 大量の屋外広告物が、町の美観を損ない、交通安全上の問題となっていることは、よく承知をいたしております。しかし、行政が広告物の内容そのものを規制することは、表現の自由などにもかかわることから難しい面があり、さまざまな配慮をしなければならないと考えております。
 今後は、屋外広告物の実態把握のための調査や都民の意識調査等を踏まえた上で、広告物規制の適切なあり方について論議してまいります。

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