平成十三年東京都議会会議録第十七号

○議長(三田敏哉君) 七十九番中村明彦君。
   〔七十九番中村明彦君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○七十九番(中村明彦君) 去る十二月一日、敬宮愛子内親王がご誕生されましたことは、ご皇室を敬愛する私にとりましても、まことに喜ばしい限りでございます。内親王殿下のお健やかなご生育を心よりお祈り申し上げる次第でございます。
 この長引く景気低迷の中に明るいニュースが飛び込んでまいり、あすに向けて日本人の心にも明るい希望を持たせていただきました。この平成十三年も間もなく終わろうといたしておりますが、この明るい話題を景気の回復に結びつけてまいりたいと考えたとき、先月末に発表されました東京都観光産業振興プランが一番効果的であると判断し、以下の質問に移らせていただきます。
 この観光産業振興プランは、東京都が先頭に立って観光政策を転換し、産業として振興策に取り組んでいくことを内外に示したものであります。東京を訪れる外国人旅行者の増加を図ることは大変重要であるということは、私も十分認識をしているところであります。
 そこで、まず知事にお伺いいたしますが、観光を産業政策の新しい柱として位置づけた理念をお伺いいたします。
 私の住んでいる台東区でも、観光都市宣言をし、上野の山の動物園、博物館、美術館等の文化ゾーンや、浅草の観音様に代表される神社仏閣等のエリア、下町情緒あふれる谷中の町並みなど多くの魅力を紹介し、観光客に親しまれているところであります。
 このような観光客を引きつける場所は、台東区ばかりではなく、銀座、新宿、渋谷、原宿といった繁華街や、明治神宮、都内の庭園、多摩の自然等、都民が誇りとする場所が多くあるにもかかわらず、それらが十分に伝えられているとはいえないのが現状でございます。
 そこで、来年開催されるワールドカップサッカー大会、これをシティーセールス及び経済活性化の絶好の機会としてとらえられてはいかがでしょうか。
 過日、韓国の釜山市で組み合わせ抽せん会が行われ、ワールドカップサッカー大会の組み合わせが決定されました。日本では、六月一日より、札幌市、宮城県、新潟県、茨城県、埼玉県、横浜市、静岡県、大阪市、神戸市、大分県の十カ所で開催されます。六月三十日の横浜で行われる決勝戦までの一カ月間に、約四十万人の外国人の方が日本を訪れるであろうと試算されております。これだけの外国人が一時期に来日するのはめったにないことであり、こうしたときに日本の文化や歴史に親しんでもらうことが、外国人観光客の倍増計画につながるのではないでしょうか。
 成田空港におり立った外国人観光客は、まず東京に来てから、他の横浜、埼玉、茨城等に移動すると予測されます。特に、東京に来る手段としては、バスで東京まで参りますと、運賃が三千円、JR成田エクスプレスでは二千九百四十円と高く、私鉄の京成スカイライナーで千九百二十円、京成特急電車では、二十分ほど余計に時間がかかりますが、千円で上野まで来ることができるのであります。(笑声)現在でも、外国人旅行者はなるべく交通運賃を安くしようと工夫しているという話を聞きます。このようなことから、東京は開催地ではないのですが、日本のゲートウエーとして自覚を持ち、積極的な観光行政を展開していくべきと考えます。
 そのためには、まず、東京に訪れた外国人旅行者が東京の歴史、文化に気軽に親しめるようにしなければなりません。浅草など外国人に人気の観光地、日本の歴史、文化を紹介できる博物館、美術館、下町の生活文化、歌舞伎を初めとする伝統芸能などの情報をターミナル駅や商店街など多くの場所で的確に提供する体制の整備が必要であると考えますが、いかがでございましょうか、ご所見をお伺いいたします。
 また、東京での滞在を快適に過ごしていただくために、現在でも積極的に外国人旅行者を受け入れているジャパニーズ・イン・グループという宿泊施設グループがございます。加盟店は全国で八十軒、そのうち東京都内には十二軒あり、さらに、そのうち我が台東区には六軒もあります。特に台東区内の旅館業者の方は、日本の情緒を少しでも味わってもらおうと、宿のご主人が獅子舞を披露したり、町内のもちつき、盆踊りにも参加させたりと、日本の味わいを親切に提供しております。また、旅行業者も、日本の歴史、文化の情報提供に積極的に取り組んでおりますが、まだまだ十分といえるような現状とはいえないのであります。
 そこで、私は、地域の事情に明るい商店主や地元住民の方々にボランティアとして参加していただいたらと考えております。東京都でも、観光ボランティアを募集し、育成、組織化するとありますが、地元で生活している人々は、決められたマニュアルではなく、実生活、実体験から、一番よい方法で、よいアドバイスをしていただけるものと確信しますし、外国人観光客も地元のボランティアの方の情報を大いに喜ぶと考えますが、いかがでございましょうか、ご所見をお伺いいたします。
 次に、本定例会に上程されました宿泊税についてお尋ねいたします。
 この宿泊税を財源とし、先進観光都市に比べておくれているといわざるを得ない東京都の観光振興施策を活性化し、観光を産業化し、旅行者の増加を図っていこうとする意図は、私も十分に理解いたしております。しかし、この宿泊税は、事業者にとりましては、コンピューターソフトや印刷物の変更をしなければならないなどの多くの費用がかかってしまう、そういう話を聞かされました。私はそのことについてとやかくいうのではございませんが、宿泊税はホテルや旅館を利用する者に負担を与えるものであります。税を払っても満足感を得て、リピーターとしてまた東京を訪れたくなるような観光振興策を展開する必要があると思います。この施策の推進に当たっては、利用客と日々接しているホテル、旅館を初めとした観光関連業界の人々の意見を十分に伺い、協力して取り組んでいかなければならないと考えますが、いかがでしょうか、ご意見をお聞かせください。
 次に、放置自転車対策についてお尋ねいたします。
 現在の駅前放置自転車対策は、大型駐輪施設を整備して、特定地域の放置自転車を撤去することで対応しております。平成十二年度の調査では、駅前放置自転車は都内全域で二十万台あり、一年間に撤去された自転車は七十九万台、そのうち所有者が引き取りに来ないで廃棄処分された自転車は三十二万台で、全体の四一%という膨大な数であります。
 私の地元でもある台東区でも、放置自転車の撤去状況は、移送台数二万三百六十五台、そのうち廃棄処分の対象となる自転車は九千三百七十九台です。台東区はこの自転車のリサイクルも行っておりますので、五百九十四台は再利用されましたが、実に八千七百八十五台もの自転車が、一台当たり二百七十円の費用を払って処分されてしまいます。まだまだ使える自転車、これがごみとして処分されているのです。国や都、区市町村では、地球環境を守りましょう、資源のむだはなくしましょうと口々にいっておきながら、実は行政の中でほとんどの自転車をごみとして処分しているのが実態でございます。
 現在の自転車に関する法律、条例等における放置自転車の定義は、自転車の利用者がその自転車を離れ、当該自転車を直ちに動かせない状態をいう、としております。現在の道路上に長時間置かれている自転車は、すべて道路交通法違反となるのでございます。
 また、所有者のマナー、ルールが守られていないのも現状であり、路上放置されている自転車によって緊急自動車の通行の障害になったり、障害者の点字ブロックの上に自転車が放置されているため点字ブロックがわからなかったり、お年寄りや交通弱者に対して大きな障害物となって、さまざまな問題を引き起こすことになっております。
 区市では、条例を設け、駐輪場を設置し、放置自転車に対しては撤去活動を中心に進めておりますが、抜本的な解決に至っていないのが現実であります。このような現状に対して、放置自転車対策を今後どのように進めていくのか、見解をお伺いいたします。
 次に、共用自転車について、私から提案をさせていただきます。
 石原知事は、就任前の新聞紙上の「知事予定者に聞く」とのコーナーで、環境対策としての車の規制を打ち出していましたが、電車に乗っていますかとの記者の問いに対して、地下鉄にもよく乗るし、自転車にもよく乗るよ、東京に数十万台自転車をほったらかしにしてね、あいている自転車があったら、だれでもそれに乗って、また置きっ放しにすればいいと、お話しになっておりました。
 道路は、多くの自転車の存在を認識することなく、自動車、歩行者を対象につくられており、自転車はいまだに、歩道を走ってよいのか車道を走ってよいのか迷っているのが現状でございます。これからは、自転車の現状を踏まえたインフラ整備を推進し、新しいルールやマナーを確立していかなければならないと思います。
 自転車は、人にとって一番身近で便利な乗り物であり、環境を整えることによって交通体系のバランスが整い、円滑さが生じてくると考えております。しかし、現在では、その自転車を仕方なく、大型駐輪場を設置して対応しております。しかし、駅周辺にはなかなか大規模なスペースがなく、現実には対応でき切れないのであります。
 放置自転車問題の解決のため、レンタサイクルの試みを行っている区市もありますが、私は共用自転車の提案をさせていただきます。道路上の公共の場所に自転車をとめないようにするためにも、駅や店舗等の施設に数台から数十台の共用自転車のステーションを設置し、利用者がバトンタッチ式で利用するものであります。こうすれば、自転車の総量を抑制し、道路上の放置自転車を少なくし、快適な歩行者道路の確保につながると考えるのであります。
 また、環境にも優しく、まちを訪れる方々や観光客にも、買い回り客にとりましても、非常に便利な乗り物と考えます。こうしたメリットのある共用自転車の導入、活用について、今後検討されてはいかがでしょうか、見解をお聞かせいただき、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 中村明彦議員の一般質問にお答えいたします。
 観光を産業政策の新しい柱として位置づけた理由についてでありますが、世界の主要国、主要都市はすべて観光に力を入れて取り組んでおりますけれども、なぜか我が国では、国ばかりか都もその重要性を認識してまいりませんでした。予算措置一つ見ましても自明のことでありまして、ゆえに、先ほどの質問でも申しましたが、世界が狭くなった今、平和が続く限り、私は、国際的な人の行き来というのはますます頻繁になりまして、それにのっとった観光というものも、大きな大きな産業としてあると思います。現に日本は、国から出ていって外国の観光に出向く日本人は非常に多いんですが、やってくる外国人が少な過ぎるために、およそ三兆五千億という大幅な赤字を、観光に関しては構えております。貿易は、それぞれのアイテムによって多少のインバランスがありますけれども、これほど一方的に食い込んだ赤字を構えている産業というのはないと思うんです。
 いずれにしろ、日本にしからば観光資源がないかといえば、この日本のエキゾチズムというのは、フランスにいろいろな影響を与えたりしたぐらい、海外においても、与えたぐらい、特色のあるものでありまして、えてして日本人というのは、自分の説明あるいは自分の売り込み、まして自分の宣伝は非常に下手であります。アメリカに行きますと、このごろ、すしバーというのはどこにでもありますし、ハーバード大学の学生食堂にまですし屋があるんですが、これは何も日本人が売り込んだわけじゃなしに、アメリカ人が日本にやってきて、すしのよさを体得して帰って、向こうで流行になった。どうも私たち、やはり自分というものをもう少し積極的に外に向かって顕示して、説明し、誤解もあるかもしれませんが、みずからをいい意味で商品化して世界に展示する必要があると私は思います。
 そういう意味で、今回ベクトルを変えまして、東京は、所管を生活文化局から労働経済局に移しまして、産業の一つとして認識を変え、積極的に東京の宣伝をし、できるだけ多くの外国人を東京に招致し、ひいては日本に招致したいと思っております。
 今後、プランの実現に向けて、全力を挙げて観光産業の振興に努めていく所存であります。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長浪越勝海君登壇〕

○産業労働局長(浪越勝海君) 観光産業振興に関する三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、ワールドカップサッカー開催時の観光情報の提供体制についてでありますが、東京は開催地ではございませんが、多くの観戦客が訪れることが予想され、シティーセールスの絶好の機会であると考えます。このため、空港や鉄道の主要な乗りかえ駅等に臨時観光情報センターを開設するとともに、観光客が多く訪れるような地域については、地元の区市町村や各種団体等と連携を図りながら、外国人旅行者に東京のさまざまな魅力を伝えるための仕組みをつくってまいります。
 具体的な内容につきましては、交通事業者や地元区市町村、地域の観光協会など、観光関連団体と意見交換を行い、決定してまいります。
 次に、観光ボランティアについてでありますが、地域に愛着のある住民の方々が、外国人旅行者への観光、飲食、ショッピングの案内など、さまざまな場面を通じて触れ合いや交流を深め、おもてなしの心を伝えることは、大変意義のあることと考えます。
 このため、臨時観光情報センターには、語学に堪能な帰国子女や海外駐在経験者のほか、地域で活躍する観光ボランティアも積極的に受け入れていきたいと考えます。
 また、地域の人々のボランティアとしての多様な取り組みを支援するため、区市町村などと連携して、観光情報の提供などに努めてまいります。
 最後に、観光振興施策の推進についてでありますが、観光産業振興プランに掲げた施策を具体的に推し進めていくには、行政と民間事業者や観光関連団体等とが連携し、協力体制を構築することが重要であると認識しております。
 このため、交通業界、旅行業界やホテル、旅館業界等との観光情報連絡会を設置し、十二月六日には第一回目の意見交換を行ったところでございます。
 今後はさらに、課題ごとの部会を立ち上げるなど、連携を深め、関係業界の意見を伺いながら、官民一体となり、施策を積極的に推進してまいります。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 放置自転車対策についてでありますが、放置自転車は、長期的に見ると若干減少傾向にありますが、引き続き取り組むべき都市的課題の一つであると認識しております。
 この対策につきましては、地域性が強いことや自転車利用の実態などから、基本的には住民に身近な自治体である区市町村が実施することが効果的であるため、それぞれの自治体が地域特性に応じたさまざまな取り組みを行っているところであります。
 一方、都は、広域自治体として、駐輪場設置のための都有地の提供、都市計画自転車駐車場補助など、財政支援のほか、広域キャンペーンを行ってまいりました。
 駐輪場整備そのものにつきましては、都全域では、駐輪可能台数が駅周辺に乗り入れる自転車総数以上となってきており、今後は、地域偏在の解消や一部の使用されにくい駐輪場の活用を図ることが必要であると考えております。
 こうした課題に対し、鉄道事業者等の関係機関への働きかけなど、区市町村の取り組みが円滑に推進されるよう都としても支援するとともに、ソフト対策として、撤去の迅速化あるいは一層の駐輪場の活用の推進や利用者のルールの遵守、マナーの向上など、普及啓発活動を関係方面と連携して積極的に進めてまいります。
 次に、共用自転車についてでありますが、ご指摘の共用自転車は、一台の自転車を複数の人が利用することにより、限られた資源を有効活用し、放置自転車の減少にもつなげようとする新しい試みの一つであると考えます。しかし、このシステムについては、場所的な需給バランスの問題や、道路管理者や交通管理者との調整、それから、ルールが守られないと、かえって乱雑な放置につながるおそれもあることなどから、解決すべき課題も多くあると考えております。
 都といたしましては、各区が行っているレンタサイクル事業や、今後、ご提案の趣旨が生かされ、実施が予定されております社会実験の効果や問題点を整理しつつ、その実効性を検証してまいりたいと考えております。

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