平成十三年東京都議会会議録第十七号

   午後三時三十二分開議

○議長(三田敏哉君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十九番小礒明君。
   〔四十九番小礒明君登壇〕

○四十九番(小礒明君) まず、第一問目の多摩振興について質問いたします。
 首都圏は、人口三千三百万を擁し、その生産力においてもイギリス一国に匹敵する世界最大の都市圏であり、この中核となる東京は、これまで、我が国の首都としての役割を担いながら、日本経済を牽引してまいりました。
 一方、バブル景気の崩壊後、我が国は社会経済の幅広い分野で行き詰まりを見せており、有効な手だてが打てないまま、長い不況から抜け出せない状況にあります。
 このような状況の中で、東京に活力を呼び戻すためには、慢性的な交通渋滞の解消や大気汚染などの環境対策、産業の振興などの課題に総力を挙げて取り組んでいかなければなりません。その際、多摩地域を包括する首都圏における広域連携拠点相互の交流と連携を可能とする環状ネットワークを形成し、高度な機能を集積していくことが不可欠と考えます。
 先日東京都が策定した東京の新しい都市づくりビジョンにおいても、多摩地域を広くカバーする核都市広域連携ゾーンにおいて、圏央道の整備などによる都県境を越えた環状方向の広域的なネットワークによる一層の連携の強化や、情報通信技術を活用した産・学・公の連携、多摩に住む豊富な人材のネットワークなどによる多様なビジネス、産業機能の連携を図り、核都市を中心とする自立都市圏の形成を促すことが必要である旨、記されております。
 多摩地域を、従来より石原知事はアパラチア山脈に例えられて、自然を保全する地域のようにいわれておりますけれども、確かに、先ほども質問がございましたとおりに、自然を保全すべきところもあります。しかし、多摩地域全体を見ると、そうしただけの地域ではなく、現に多様性を持つ三百九十万が生活する、区部に負けない自立した市街地として、また、大学の立地や先端技術の集積など、さまざまな高度な可能性を有する地域であると考えます。これらのことを踏まえて、改めてお伺いいたしますが、石原知事は、首都圏における広域連携拠点としての多摩地域の位置づけをどのように考えておられるのか。また、石原都政における多摩振興についてのご所見をいただきたいと思います。
 また、第五次首都圏基本計画では、多摩南部地域において、多摩市が八王子・立川業務核都市に追加され、現在、これに基づく八王子・立川・多摩業務核都市基本構想が策定中であると聞いております。この構想の中心となる多摩ニュータウンは、事業着手から三十五年が経過いたしまして、造成工事は収束の段階に入りました。昨年の七月には、多摩ニュータウン事業の再構築が発表され、新たなまちづくりの段階を迎えています。
 このような中で、先ほどの新しい都市づくりビジョンにも記載されているように、多摩ニュータウンは、首都圏メガロポリスにおける重要な核都市の一つであり、この地域において、今後どのようにまちづくりを進めていこうと考えておられるのかを伺いたいと思います。
 ところで、これまでの多摩ニュータウン事業を振り返ってみますと、単に住宅開発にとどまらず、交通ネットワークづくりなど広域的観点から、東京の都市づくりに大きく貢献することが期待されています。
 例えば、多摩ニュータウンの整備と連動して、京王相模原線が橋本まで延伸をし、小田急多摩線や多摩モノレールも整備されてまいりました。しかし、道路については、ニュータウン通りなど幾つかは完成はしておりますが、広域的な観点から見れば、いまだ極めて不十分であります。
 そこで、北は調布保谷線を経て埼玉県、南は神奈川県相模原市に連続する南北道路であるとともに、稲城大橋を経て中央道により山梨県、さらには都心に直結できる南多摩尾根幹線について申し上げます。
 当路線は、このように首都圏における広域的道路ネットワークを形成する主要な幹線道路であり、完成の暁には、人や物の円滑な流れや経済的波及効果は、極めて大きいと考えられております。
 費用については、都市基盤整備公団所有の土地がほとんどで、用地費を低く抑えることができるため、通常では用地費の占める割合が八割程度と聞いておりますけれども、この道路では二割で済み、格段に安い。したがって、費用対効果は、極めて大きく良好であることは間違いありません。私は、この南多摩尾根幹線が二十一世紀の首都圏における誇るべき資産となるものと考えておるわけであります。
 さて、都政上の重要課題は、長期的視点に立脚して判断すべきであると考えるわけでありますが、平成十三年度の行政評価結果では、何と多摩地域にとって極めて重要な骨格幹線道路である、この南多摩尾根幹線を抜本的に見直すなどという、これはまさに見過ごせないものとなっています。将来に禍根を残さないために質問し、真意をただしたいと思います。
 そこで、首都圏メガロポリス構想を実現するためにも必要不可欠なこの路線の整備を抜本的に見直すとは、どのようなことを意味するのか、知事本部に伺います。
 また、所管部局である多摩都市整備本部は、この点についてどのように考えられているのか伺います。
 このような幾多の課題を抱えた中で、昨年十二月に発表された都庁改革アクションプランにおいて、多摩都市整備本部の廃止が打ち出されました。他の組織に統合されるようでありますが、地元では、これまで多摩都市整備本部とともに築き上げてきた信頼関係が失われ、都の熱意ある取り組みが進められなくなるのではないかと、大変心配をしておるところであります。宅地造成事業などはほぼ完了しつつありますが、多摩ニュータウンにおいては、建物の老朽化、施設のバリアフリー化等、少子高齢化対策や商業、業務の活性化等、多くの課題が残されております。
 このような中で、地元各市は、多摩ニュータウン事業を一体的に所管する組織の配置や、これらの事業にかかわる担当理事の配置などについて、強く要望が出されているところであります。
 こうした状況を踏まえ、都は、多摩都市整備本部が廃止されても、多摩ニュータウンの総合的窓口となり得る組織を維持するとともに、理事級の職員を配置して多摩ニュータウンに関連する事業を一体的に推進できる体制を整備する必要があると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、環境問題について伺います。
 去る十一月三十日、東京都環境審議会は、石原知事が昨年末に諮問していた東京都環境基本計画の改定に関して答申を行いました。
 石原都政になって以来、都は環境問題に対して、ディーゼル車NO作戦に代表されるような積極的な施策を開始しております。平成九年につくられた現在の環境基本計画は、こうした最近の施策展開から見ても、また地球温暖化問題などの深刻化という状況変化から見ても、全く時代おくれになっており、早急に改定すべきことは当然であります。
 その際、重要なことは、新たにつくる環境基本計画を絵にかいたもちにしてはならないということであります。都に限らず行政の中では、基本計画や基本構想、マスタープランなどの位置づけというものは、理念こそ立派にうたい上げられていますが、つくられた後は棚上げされてしまうという傾向がしばしば見られます。しかし、環境問題への取り組みは、決して棚上げしてよいものではありません。新たな環境基本計画の策定を機に、首都東京が直面している環境の危機克服に向けた施策を一層強化すべきと考えますが、ご所見を伺います。
 次に、環境の危機の中でも、特に重点的な対策が必要な土壌汚染について伺います。
 近年、都内において工場跡地の売買や再開発、地方自治体による地下水測定、企業におけるISO一四〇〇一取得の際に、土壌汚染が発見されて問題となるケースが、数多く発生をしております。
 また、米国企業などの外資系企業が、バブル崩壊後に値下がりした日本の土地を取得する際、本国で適用されているスーパーファンド法を念頭に、取得する土地の土壌汚染の調査を厳しく行うことにより、汚染が発見され、またそのため多くの係争事件に発展しているなど、新たな問題が生じてきております。
 私が住む多摩地区においては、昨今、工場閉鎖に際して土壌汚染調査を実施をいたしたところ、環境基準の何と八百倍もの六価クロムが検出されました。ほかの場所におきましても、環境基準の四十四倍ものダイオキシン類が検出されるなどの事例も現実に出てきており、近隣住民を巻き込んだ問題に発展をしているようであります。
 土壌汚染は、一たん発生すると、その回復には長い年月や多大な労力、費用が必要になるものであり、未然に防止することが何よりも重要であり、そこで伺いますが、都は、土壌汚染そのものを生じさせないために、どのような対応をしているのでしょうか。
 一たん引き起こされた土壌汚染は、健康への影響も大きく、さらに土地の資産価値を引き下げるため、そのまま放置しておくことはできません。万一の場合は、深刻な地下水の汚染も引き起こしかねません。土壌汚染は、全国的な課題であり、国がその対策を真剣に検討しなければならない重要な問題であるにもかかわらず、いまだに法制度もできていないというのは、全く国の怠慢といわざるを得ません。
 その点では、都は、昨年十二月に環境確保条例を制定し、全国に先駆けて土壌汚染防止の制度をつくるなど評価できるものであります。環境確保条例の土壌汚染の規定は、本年十月からの施行でありますが、都は、土壌汚染対策にどのように取り組んでいるのか、その施行状況についてお聞かせいただきたい。
 さきに指摘したように、米国では、スーパーファンド法という法律があり、汚染原因者のみならず、土地の所有者や土地の売買時に融資を行った金融機関まで、汚染土壌処理の費用負担をさせられることになっており、土壌汚染対策についての取り組みがなされております。土壌汚染の調査から処理までは、予想外の費用がかかる場合があることから、我が国においても、国が一日も早い枠組みづくりを行うことが必要であります。
 環境省は、都の環境確保条例の制定を後追いし、土壌汚染対策の制度化を検討する中で、この九月に中間の取りまとめが公表されました。この中間の取りまとめについて、都はどのように受けとめているのか伺います。
 景気が一段と冷え込んでいる現在、土地の流動化の障害や、土地の取引の際のトラブル発生の一要因ともなっている土壌汚染を早急に処理することは、東京の再生にとっても極めて重要であります。この問題に対する都の一層積極的な取り組みを要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 小礒明議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、首都圏における多摩地域の位置づけについてでありますが、多摩地域は、多くの大学を初め先端技術産業の集積、さらには豊富な人材などの多様性を備えて、地政学的にも、区部にはあり得ない形の、区部にもまさるさまざまな発展の可能性を保有していると思います。
 こうした多摩地域の持つ特色のある資源を活用しまして、特色のある豊かなまちづくりを進めるとともに、環状方向の都市間の連携を強化することによりまして、地域の持つポテンシャルをさらに高めていく必要があると思っております。
 そのため、都市基盤の整備などにより、埼玉、神奈川県などの近隣県との交流を深めまして、首都圏のバランスのある発展に寄与していくことが重要であると心得ております。
 次いで、具体的に多摩振興についてでありますが、首都東京の再生は日本の再生でありまして、その一翼を担う多摩地域の振興は、区部ではあり得ない種々の振興策があると思います。それを実施することで、首都のバランスのある発展に寄与すると考えております。今度とも、活力と魅力にあふれた多摩地域の創造を目指して、積極的に多摩の振興を図っていきたいと思っております。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔多摩都市整備本部長石河信一君登壇〕

○多摩都市整備本部長(石河信一君) 多摩ニュータウンのまちづくりについてでございますが、多摩ニュータウンは、道路、公園などの基盤整備がほぼ完了しておりまして、この良好な環境を生かしたまちづくりを進めてまいります。
 多摩ニュータウンは、長期にわたる整備の中で、その求められる機能も変化をしてきております。土地利用につきましても、住宅ばかりでなく、働く、学ぶ、憩うという機能を持たせるための見直しも行われ、学校、業務、商業などの施設の立地も進んでおります。
 これに伴いまして、周辺地域から、これらの施設に人、物、情報が集中しつつありまして、多摩ニュータウンは、首都圏メガロポリスにおける重要な核都市の一つとしての役割を果たしつつあります。
 今後は、多摩ニュータウンの良好な環境を活用し、既存の機能を一層高めるとともに、広域的な連携を確保する道路などの基盤整備を進めまして、また、地元市の意向と自主性を尊重しながら、教育・文化施設、情報産業、ベンチャー企業などの立地、育成を進め、多摩ニュータウンの中核都市としての機能の向上を図ってまいります。
 次に、南多摩尾根幹線についてでございますが、この計画は、昭和四十四年に策定されたものでありまして、この間、社会経済状況は大きく変化しております。
 多摩ニュータウンにつきましては、広域連携拠点としての新たな機能が求められておりますし、圏央道を初めとする幹線道路の整備も進んできております。このような中にあって、多摩地域の広域交通ネットワークの中核を形成する本路線の位置づけは、ますます重要になっております。
 そこで、この路線の整備を進めるに当たって、多摩ニュータウンの広域的位置づけや開発の進展及び将来交通量の見通しなどを勘案して計画を見直し、整備手法や道路構造、コスト縮減方策などを十分検討した上で、優先順位をつけ、段階的かつ着実に整備していこうとするものであります。
 なお、これまで鶴川街道から町田街道まで、暫定二車線の整備を進めてきておりますが、全線開通に向けて、残る区間の事業を積極的に進めてまいります。
   〔知事本部長事務代理次長三宅広人君登壇〕

○知事本部長事務代理次長(三宅広人君) 南多摩尾根幹線に係る行政評価についてのご質問にお答えいたします。
 本路線につきましては、多摩ニュータウンの関連街路整備事業として、地域住民の移動の利便性を確保するとともに、多摩地域の広域道路交通ネットワークを形成する路線として、その必要性は十分認識しております。
 しかしながら、今お話もあったように、昭和四十四年の都市計画決定当時に比べ、社会経済状況や周辺状況が大きく変化しております。本線整備に当たっては、今後、最新の交通量推計で計画を精査し、改めて事業手法について検討する必要があると評価したものでございます。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 多摩都市整備本部廃止後の体制についてお答えいたします。
 多摩ニュータウン事業の残された課題について、引き続き適切に対応していくことが大切であると考えております。このため、都としての役割を着実に果たせるよう、ご指摘の趣旨や関係市の要望も踏まえて、新たな体制を整備してまいります。
   〔環境局長赤星經昭君登壇〕

○環境局長(赤星經昭君) 環境行政についての四点の質問にお答えいたします。
 まず、環境施策の強化についてでございますが、東京は、自動車公害問題など都民の健康と安全を脅かす直接的な危機と、地球温暖化やヒートアイランド現象など都市の持続可能性の危機に直面しております。これらの課題は、いずれも緊急の取り組みを必要とするものでございます。
 環境審議会の答申を受けて、近く策定する新たな環境基本計画の中に、可能な限り具体的な施策を織り込み、環境の危機の克服に向けた取り組みを一層強化してまいります。
 次に、土壌汚染の未然防止についてでございますが、本年四月に施行いたしました環境確保条例におきまして、有害物質の地下浸透を防止するため、工場、指定作業場におけます施設の構造基準等を新たに定めました。
 都は、事業者がこの基準を遵守するよう区市と連携して、指導の徹底を図っております。
 次に、条例に基づく土壌汚染への取り組み状況でございますが、東京都は、工場等を廃止する場合や、三千平方メートル以上の土地の改変等を行う場合には、事業者に対して調査を行わせ、汚染が認められる場合には、汚染土壌の処理等を行わせることとしております。
 本年十月の規定の施行以来、二カ月の実績は、土地利用の履歴調査等が七十件、土地汚染状況の調査が二十二件、汚染拡散防止計画の作成が八件、汚染拡散防止措置が完了したものが二件でございます。
 最後に、土壌環境保全対策の国の中間の取りまとめについてでございますが、その内容が、汚染土壌の浄化の義務を土地の所有者に課すものとなっており、汚染原因者でございます事業者の責任が不明確であること、また地域特性に応じた処理技術の開発等が不十分であることなどから、その旨、国に対して意見書を提出したところでございます。
 都といたしましては、早期に適切な実効性のある制度化が図られるよう、今後も国に強く働きかけてまいります。

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