平成十三年東京都議会会議録第十七号

○副議長(橋本辰二郎君) 四十四番いなば真一君。
   〔四十四番いなば真一君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○四十四番(いなば真一君) 私は、都立病院改革を中心に、都政の課題についてお伺いします。
 本年七月に都立病院改革会議報告が提出され、まさに改革の名にふさわしい大胆な再編整備案が示されました。都では現在、この報告をもとに、都立病院改革マスタープランを年内を目途に策定中とのことですが、この都立病院改革を通しまして、関連する何点かお伺い申し上げます。
 私は、今回の都立病院改革には二つの大きなポイントがあると認識しております。一つは、都における小児医療の充実を目指して府中病院に隣接して建設される小児総合医療センター、もう一つは、民営化される高齢者医療センター併設地域病院であります。
 小児総合医療センターについては、既に議会でも再三取り上げられ、議論されているところですが、私は、都における小児医療の充実は、都立病院での取り組みに限らず、民間医療機関も含めた全体としての取り組みが基本ではないかと考えております。現在の診療報酬制度では、幾ら小児科医師が頑張っても採算がとれず、小児科医師は減少傾向にあります。
 そこで、小児科医師の養成や確保策について、都はどのように取り組もうとしているのか、お伺いいたします。
 次に、もう一つのポイントであります民営化される高齢者医療センター併設地域病院についてお伺いします。
 豊島病院と老人医療センターは、それぞれの歴史、機能は異なるものの、都の医療においてそれぞれが重要な役割を果たしてきたことは、大多数の都民が認めるところであります。しかしながら、過去の経緯を尊重しながらも、それらにとらわれることなく、常に新しい時代の新しい課題やニーズを見据えて、早めに対応することこそが改革の名に値すると考えます。だからこそ改革の難しさもあるわけであります。
 我が区にあります豊島病院と老人医療センターを統合し民営化するという結論に対して、都民の一部には、民営化するとサービスが低下するとの声もあるようです。しかし、他の医療機関と同じ土俵に立ち、競争関係に置かれてこそ、患者により一層信頼される医療サービスを提供しようという意欲がわくのでありまして、民営化はむしろサービスの向上につながると考えられ、サービスが低下すると断じることは、余りにも一方的な意見ではないでしょうか。
 統合民営化、公社化が提言されている病院の地元自治体や住民等から、改革会議報告後、三十件に及ぶ要望、要請など、さまざまな意見が寄せられてきています。マスタープラン策定に当たっては、こうした意見も踏まえて検討されていることと思います。
 そこで、病院の経営形態の変更など、改革の実現に当たっては、地元自治体や関係機関との十分な調整や協議の場が必要と考えますが、いかがでしょうか。
 次に、私が心配しているのは、現在の診療報酬制度上、どうしても採算確保が難しい医療分野が現実に存在するということであります。都立病院改革会議報告においても、このような不採算医療こそが、都が直接担うべき医療とされています。
 豊島病院は、精神科救急医療や感染症医療など、不採算医療分野を重点医療課題として運営しています。これらの医療機能は、統合民営化後はどうなるのか伺います。
 また、老人医療センターが統合民営化されることによりまして、これまで同一敷地内で、医療や福祉との連携のもと、高齢者について総合的研究を行ってきた老人総合研究所との関係はどうなるのか伺います。
 最後に、地域医療については、地域の医療機関に負うところが大きいのは当然のことですが、同時に、各区市町村が果たすべき役割も極めて重要であります。さきの第三回定例会で、都立病院の経営移管等について、地元自治体が意欲を示した場合、都も前向きに検討すべきであるとの我が党の質問に対し、衛生局長は、その意向を尊重しながら十分に協議すると答弁されています。
 豊島病院、老人医療センターの地元板橋区議会においてこの発言が取り上げられ、板橋区長は、いろいろ問題はあるが、区立病院というものを考えてもよいとの趣旨の発言をしております。地方分権を現実のものとして具体化していく一形態として、また、区みずからが地域医療の確保に責任を持つという観点からも、区が自力で病院を運営することは、大変望ましい姿であると考えます。
 板橋区が都立病院を引き受けたいとの明確な意思表示を行った場合、具体的な支援策など検討すべきと思いますが、いかがでしょうか。
 現在、国でも医療制度改革に取り組んでいるところですが、この解決には相当の時間を要すると思われます、しかし、医療は今日、あすの都民の命にかかわる緊急の課題であり、その結論を悠長に待ってはいられません。
 石原知事の強力なリーダーシップのもとに、果断に都立病院改革に取り組まれることを強く要望し、改めて知事の決意をお伺いいたします。
 次に、都営地下鉄の優先席などの、いわゆる交通弱者への対応に関して質問します。
 車内の優先席については、高齢者、障害者、病気の方や妊産婦の方などが利用することで、体への負担を少しでも軽減できるよう、それぞれの鉄道会社でさまざまな対応が図られています。
 関西では、阪急電鉄など数社が全席を優先席として乗客に譲り合ってもらおうという取り組みを行っており、一方、首都圏では、都営地下鉄のように、各車両の端の席をマークをつけて優先席に指定することが一般的ですが、JR東日本では、この十二月から優先席をこれまでのほぼ倍に拡大しております。いずれにしましても、優先席の趣旨が徹底されるかは、他の乗客のマナーによるところが大きいと思います。
 都を挙げて取り組んでいる心の東京革命においても、次代を担う子どもたちに対して、思いやりの心や社会の基本的ルールを伝えていくことが重要としており、公共の場においてマナーの徹底を呼びかける必要性が強調されております。
 そこで、まず質問します。
 都営地下鉄においても、優先席を利用すべき人が利用できるよう呼びかけを徹底する必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 また、それ以外にも、優先席を必要とする方の利用を促進するために、知恵を絞ることも必要です。例えば、優先席マークをホーム上に明示するなどして、だれもがその位置を認識できるようにすることが必要であると思います。これは、ドアの位置が異なる他社の車両と乗り入れている路線では難しい面がありますが、それ以外のところでは検討すべきと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、障害のある方にとりまして、電車に乗る際にも問題があると思います。それは、ホームと車両の床との段差です。視覚障害者がつまずいたり、車いすを利用している方が不便を感じずに乗車できるような配慮が求められます。だれにとっても利用しやすい都営地下鉄を目指すのであれば、このような物理的バリアは極力解消に努めるべきと考えますが、ご所見を伺います。
 続きまして、カラス対策についてお伺いいたします。
 近年、都内のカラスは急激に増加しており、今や二万羽とも三万羽ともいわれる数に達しています。それにつれて、都民からの被害や不安を訴える声が日増しに大きくなっているようであります。カラスによってごみが散乱する、ふんによって汚れる、カラスに襲われてけがをした、威嚇を受け恐怖を感じている、早朝、深夜を問わない鳴き声によって不眠症になった、公園などで安心して子どもを遊ばせることができないなど、さまざまな被害が生じております。ふえ過ぎたカラスの存在は、今や都民の日常生活を心身両面で脅かしているといっても過言ではありません。
 被害を受けているのは人間だけではなく、野鳥を初めとする弱小動物への影響も懸念されているところであります。ツバメやオナガなどの巣が襲われた、ひながとられる、また、カラスが著しく増加する一方で、他の野鳥が減少した地区があるという話も聞いております。
 知事は、早くからカラスの増加が及ぼすさまざまな影響を指摘し、被害の減少に向けて、二年にわたるカラス緊急捕獲事業の実施など積極的に取り組んでおられます。
 そこで、まず都として、今後、カラス対策についてどのような基本的考え方で取り組んでいくのか、お聞かせ願います。
 ここまで都内のカラスがふえた原因を考えてみますと、やはり生ごみの存在が大きいといえます。路上などに放置された状態の生ごみがカラスのえさとなり、その繁殖を促進しているのであります。したがって、私は、ごみ対策を進めることがカラス対策の大きな柱となると考えます。
 そこで、具体的に、都はカラス対策をどのように推進していくのか、お伺いいたします。
 最後の質問であります。東京港の国際競争力の強化について伺います。
 昭和十六年に国際貿易港として開港した東京港は、ことし満六十周年の大きな節目を迎えました。神戸港や横浜港に比べれば歴史の浅い若い港ではありますが、三年連続して外貿コンテナ取扱量が日本一となるなど、今や我が国を代表する国際貿易港となっております。
 しかし、我が国港湾の国際的地位は、アジア諸港が急成長する中、コストの高さや利用時間の制約などから相対的に低下してきております。このような中で、東京港の国際的地位も後退するようなことになった場合、どのような影響があるのか、所見を伺います。
 国際物流において圧倒的シェアを占めている海上物流分野において、我が国港湾が後塵を拝することになれば、我が国の将来にとって取り返しのつかない事態を招くことになりかねません。
 こうした危機感から、東京港の関係者は官民一体となって、コストの引き下げや港湾利用時間の延長のトライアルなどを次々と実施してまいりました。そうした取り組みは、我が国港運業界にも影響を与えつつあり、今春闘では、荷役作業時間の延長などが労使合意されるに至ったと伺っております。
 とはいえ、改革に向けた動きは、まだ緒についたばかりであります。今後、さらに使いやすい東京港を実現し、国際競争を勝ち抜いていく必要があると考えますが、具体的な取り組みについて所見を伺い、私の一般質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) いなば真一議員の一般質問にお答えいたします。
 都立病院改革についてでありますが、都立病院改革は、かねてから提唱してまいりました、透明で信頼のできる効率的な医療を目指す東京発医療改革の核となるものであります。
 今後、都立病院改革の着実な実現を図りまして、三百六十五日二十四時間の都民の安全、安心を支える、質の高い患者中心の医療を提供することによって、公立病院改革の新しい形を東京から発信していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 都立病院等について、四点のご質問にお答えいたします。
 まず、小児科医師の養成確保策についてでございますが、少子化の進行等に伴って、小児科医師は減少しており、今後、救急を初めとした小児医療を提供していく上で、医師の安定的な確保は重要な課題であると認識しております。
 小児科医師の養成確保につきましては、引き続き国へ提案をしていくとともに、今回、小児医療の充実が都の重要施策事業の一つに位置づけられたことから、新たな取り組みを検討してまいりたいと考えております。
 次に、都立病院改革における地元自治体等との協議についてでございますが、都立病院改革の推進に当たりましては、地元自治体等関係機関の理解を得る必要があることは、ご指摘のとおりでございます。
 今後とも、都立病院改革の目的である都民に対する総体としての医療サービスの向上の実現に向けて、さまざまな機会をとらえて、地元自治体や関係機関と十分に協議をしてまいります。
 次に、豊島病院の医療機能についてのお尋ねでございますが、都立病院改革会議の報告では、豊島病院が行っている重点医療課題である精神科救急医療、周産期医療、ターミナルケア医療、感染症医療等につきましては、段階的に他の都立病院にその機能を移転させるべきとしております。
 これらの医療機能については、機能移転が完了するまでの間、その提供を継続していく必要があると考えております。
 終わりに、都立病院の地元自治体への移管についてでございますが、ご指摘のとおり、区市町村みずからが地域医療の確保に責任を持つ立場から、主体的に病院を運営することは大変重要なことと考えております。
 したがって、板橋区から明確な意思表示があった場合には、区と十分に協議をいたしながら、さまざまな視点から支援策などについて具体的な検討をしてまいりたいと考えております。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) 老人医療センターと老人総合研究所との関係についてでございますが、老人医療センターは、これまで老人総合研究所と連携しながら、高齢者医療に関して、日本における先駆的、モデル的役割を果たしてきたものでございます。高齢化が急速に進む中、高齢者医療を一層充実させるためには、今後とも、臨床と研究の密接な協力が不可欠でございます。
 老人医療センターの統合民営化が実現した場合にも、引き続き、臨床と研究の両面にわたり、老人総合研究所との相互協力の強化を図ってまいります。
   〔交通局長寺内広壽君登壇〕

○交通局長(寺内広壽君) 都営地下鉄に関する三点のご質問についてお答え申し上げます。
 まず、優先席の利用についてでございますが、ご指摘のように、公共の場でのマナーが必ずしも十分には守られなくなっている中で、車内におきまして、お客様同士快適にご乗車いただくことが鉄道事業者全体の課題になっております。
 お話しの優先席の呼びかけに関しましては、都営地下鉄では、駅構内に優先席の趣旨を掲出するとともに、ホームの行き先表示機の文字情報やアナウンスで、お客様に繰り返しご協力をお願いしているところでございます。今後とも、あらゆる機会を通じて、その趣旨の徹底が図られますよう努めてまいります。
 次に、優先席位置の明示についてでございますが、都営地下鉄では、主に軌道側の壁に優先席のマークを掲出し、ご案内を行ってまいりました。また、三田線では、昨年ホームゲートを設置した際に、優先席に近い乗降口のゲートにマークを張るなど、路線の状況に応じた対応を図ったところでございます。
 今後、ご趣旨も踏まえ、だれもがその場所をあらかじめ認識できるよう、よりわかりやすい案内方法を検討してまいります。
 三つ目の、車両とホームとの段差についてでございますが、都営地下鉄では、お客様の利便性を確保するため、これまでも車両床面とホームとの段差の解消に努めてまいりました。
 今後も、車両更新時や駅の改修などの際には、その段差等をできる限り小さくするように努めてまいります。
 なお、当面の対応といたしまして、車いすを利用しているお客様がホームと車両との間を円滑に乗降できるよう、スロープ板を増備してまいります。
   〔知事本部長事務代理次長三宅広人君登壇〕

○知事本部長事務代理次長(三宅広人君) カラス対策に関する二つのご質問にお答えいたします。
 まず、カラス対策の基本的考え方についてでございますが、カラス対策による被害には、お話しのように、人に対する危害や野生の小動物を中心とした生態系への影響、生ごみの散乱などがございます。このような被害を減少させるためには、都内におけるカラスの生息数を適切な規模にする必要があると考えております。
 これまで、都では、庁内公募によるプロジェクトチームがカラス対策の案をまとめ、都民から意見や提案を募集してまいりました。
 今後は、都民から寄せられた意見、提案を踏まえ、カラスの捕獲を実施するとともに、区市町村等にごみ対策の充実について協力を依頼するなど、捕獲とごみ対策の両面で施策を展開してまいります。
 カラス対策は、生活環境の改善や都市の美観の向上にもつながるものであり、来年度の重要施策に位置づけて着実に推進してまいります。
 次いで、カラス対策の推進についてでございますが、捕獲については、都立施設を中心に、他の行政機関や民間施設などに捕獲トラップを百程度設置いたしまして、相当数のカラスを減少させます。
 また、ごみ対策、すなわちえさ断ちについては、現在、区市町村等に対して収集方法や集積所の改善を要請中でございます。
 あわせて、都民一人一人のごみ出しマナーの改善や、えさやり禁止など、普及啓発について区市町村とともに行ってまいります。
   〔港湾局長川崎裕康君登壇〕

○港湾局長(川崎裕康君) 東京港の国際競争力についてのご質問にお答えいたします。
 まず、東京港の国際的地位が後退した場合の影響についてでありますが、東京港の国際競争力が低下し、世界の基幹航路に就航する大型本船が寄港しなくなりますと、首都圏四千万人の生活を支えるために必要な食料品、日用品などの輸入物資は、アジアの諸港で別の船に積みかえられて東京港に入ってくることになります。
 こうなりますと、積みかえ作業や中継輸送が必要となるため、コストや輸送日数が増加するとともに、運航が不定期になり、供給が不安定になるおそれがあります。これらの輸送コストの増や不安定な供給は、輸入物資の価格上昇をもたらし、都民の生活や経済活動に大きな影響が生ずるものと考えております。
 次に、国際競争に勝ち抜くための港湾管理者としての具体的な取り組みについてでありますが、我が国港湾の地位低下の背景には、コスト面での競争は別にしまして、アジア諸港と比べ、諸手続が煩雑であること、港湾の利用時間に制約があることなど、サービス上の問題があると認識をしております。
 このため東京港では、手続面につきましては、ITを活用して、入出港や通関の手続を一元的に行うワンストップサービス化を国と連携して推進していくとともに、利用時間につきましては、これまで日曜荷役船の入港料等を免除するなど、三百六十五日二十四時間フルオープン化に向け支援を行ってきましたが、今後、昼休みのゲートオープンなど利用時間の拡大に向け、港湾事業者に強く働きかけてまいります。

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