平成十三年東京都議会会議録第十七号

○副議長(橋本辰二郎君) 十九番ともとし春久君。
   〔十九番ともとし春久君登壇〕

○十九番(ともとし春久君) 初めに、東京再生のための都市計画道路の整備促進について伺います。
 交通網整備のかなめの一つである道路整備は、行政の重要な責務であります。まして景気回復、都市再生が最大のテーマである現在、物流の効率化やコスト削減を初め、渋滞解消や排ガス公害の低減、さらには生活圏、生活道路の安全確保など、さまざまな観点から道路整備は住民の生活にとって不可欠の事業であります。
 とりわけ、渋滞の原因となっている交差点や橋梁などのボトルネック箇所を解消することが、喫緊の課題となっています。私の住む足立区では、荒川にかかる江北橋の東側が未完成で、朝夕混雑する橋として、区民がその改善を久しく望んでまいりました。
 そこで、江北橋に接続する補助第九一号線の今後の見通しについて、まずお伺いいたします。
 次に、都内の都市計画道路整備についてであります。
 計画決定から長い年月を経ているにもかかわらず、いまだ事業化に至っていない路線が数多くあります。十二年度末現在の都市計画道路整備率は、約四二%にすぎません。国や都の財政も厳しく、道路整備に関する財源確保が困難なため進捗しない状況は理解いたしますが、事業化に至らない地域の人たちは、長年厳格な建築規制のもとに置かれ、しかも、多くの地権者の高齢化が進み、将来の見通しが立たない状況に対する強い不満と不安が渦巻いています。住民をいたずらに不安定な状況に放置しておくことは、行政として適切な対応とはいえません。
 少なくとも、都民に対して約束している第二期事業化計画、とりわけ都が施行すべき幹線道路については、これらの人たちが将来展望を持てるようにすべきであると考えます。
 そこで、区部の第二次前期事業化計画における都施行幹線道路の整備について、所見を伺います。
 次に、住宅政策について伺います。
 住宅建設は、すそ野の広い事業であり、景気波及効果が極めて高いといわれています。まさに質の高い住宅供給は、住民生活の豊かさの確保を通して、都市再生、東京の活性化に直結する事業でもあり、したがって、都政における住宅政策は、今後ますます重要性を増していくことは間違いありません。
 そこでまず、今後は、住宅供給にも民間活力の導入が欠かせません。その意味で、都営南青山一丁目団地建てかえプロジェクトは、民間活力による全国初の手法として評価いたします。
 都営住宅の建てかえに当たっては、例えば足立区本木地区のように都営住宅と木密地域が混在している地域の整備にも、こうした手法を展開すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 また、高齢化の進展に伴い、公共、民間を含め、住宅をバリアフリー化し、またリフォーム化することは、景気対策の側面からも重要であります。この六兆円事業ともいわれるリフォーム市場は今後も拡大し、二〇一五年までに、約二十二万人の新たな雇用創出効果があるといわれております。このため、民間投資の誘導策や刺激策を講ずるべきでありますが、所見を伺います。
 続いて、水道局の電力小売参入について伺います。
 水道局では既に、金町浄水場の常用発電事業にPFIを導入しています。そして今後、三郷浄水場における発電規模を拡大し、ほかの公共施設等にも電力を供給する構想を、民間と共同で取り組むことが発表されました。水道局のこの構想は、電力の安定供給、経済性、環境への配慮などを重視したエネルギー供給事業として期待できます。
 そこで伺います。この構想は、都の財政支出削減を図る上からも時宜を得たものであります。この際、一歩進めて都民の水道料金軽減へ反映させることが重要と考えますが、見解を伺います。
 なお、事業展開に当たっては、競争力、事業採算性がポイントになります。これをおろそかにすると構想倒れにもなりかねません。成功に向けて万全の取り組みを行うベきであります。所見を伺います。
 次に、新交通日暮里・舎人線についてお伺いいたします。
 この新線については、先月二十六日、開業目標を四年延期すると突然の発表があり、関係区を初め沿線住民の落胆は極めて大きいものがあります。この日暮里・舎人線は、沿線住民の長年の夢であり、これまで開業を目指して、地元区と住民が協力して、沿線の区画整理、まちづくりなどを進め、さらに、新線とバス路線による新たな交通体系構想を、平成十五年度の開通に合わせて準備してきたところであります。
 ところが、当初の平成十一年度開業予定が平成十五年度に延期され、今回再び平成十九年度への再延期ということになると、これまでの努力は一体何のためであったのかという声が上がるのは当然であります。
 そこで、一日も早い開業を望む立場から伺います。
 第一に、今回の開業延期について、都はどう考えているのか。私は、工事の現状と問題点などを、都議会や関係区に早い時点で情報を提供すべきだったのではないかと思います。今後は、工事の進捗状況について、問題点も含め早期の情報提供に努めるべきであります。見解を伺います。
 第二に、開業時期延期の原因は、用地買収と難工事によるおくれとのことですが、具体的な進捗状況の説明を求めます。また、開業に向け、都の決意を伺います。
 第三に、工期が延びることによって、経営の収支、採算に影響が出ないのか懸念されております。今後は、事業費の圧縮等により経営の安定化を図るべきでありますが、いかがでしょうか。
 また、当初はすべて都の財源で賄う方針でありましたが、平成十一年の見直しで、関係区にインフラ外工事費の負担を依頼したという経緯があります。それらに変更がないのかどうか、所見を伺います。
 次に、コミュニティバスについて伺います。
 現在、高齢者の社会参加と移動手段の確保という観点から、各地でコミュニティバスが導入されています。路線もきめ細かく、公共施設などへのアプローチにも配慮され、さらにアイドリングストップ機能や車いすの乗降用リフトなどが設置され、高齢者や障害者、そして子どもたちにも優しい乗り物として、利用者から歓迎されています。足立区でも昨年四月より、民間事業者が運行を開始し、七十歳以上の高齢者の利用が平均で二〇%、多い月には三〇%に上っています。
 しかし、このバス会社は関東運輸局の指導により、道路運送法四十二条の二に基づいて運行許可を受けているため、四条許可を前提にしたシルバーパス運送事業者にはなれないという問題があります。そこでバス会社は、会社の経営努力で、七十歳以上の利用者の運賃無料化を今日まで実施しているのであります。
 しかしながら、このままでは、事業の採算性がとれず、有料化を考えなければならないところまで追い込まれています。地元区は関東運輸局に対し、改正道路運送法により、同法四条許可取得が早期に実現するよう働きかけていると聞いていますが、そこで伺います。
 第一に、都としても、既に運行実績のある四十二条の二の事業者には、四条許可事業者として許可が得られるよう支援すべきと思います。都の見解を伺います。
 第二に、都は既に包括補助事業の中の高齢者いきいき事業により、運行立ち上げ経費を区市町村を通して補助しておりますが、しかし、平成十三年度の運行補助対象は、二区八市町村、十五路線にとどまっております。今後、コミュニティバス路線の拡充に向けて、都は一層、区市町村を支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、隅田川のスーパー堤防について伺います。
 本年九月の台風十五号は、戦後、東京に最大の高潮被害を発生させた昭和二十四年のキティ台風と同程度まで、隅田川の水位を上昇させたのであります。それでも浸水被害が発生しなかったのは、隅田川などの高潮防潮堤や水門などの治水施設が完備されていたからであります。
 しかし問題は、一部地域で阪神・淡路大震災級の地震に襲われた場合、大丈夫なのかなと不安があります。すなわち、私の地元足立区では尾竹橋上流や尾竹橋下流の貯木場跡地などにスーパー堤防の計画がありますが、今なお未整備であります。
 そこで伺います。
 第一に、隅田川スーパー堤防構想の全体の進捗状況と今後の予定について、特に、私が指摘した尾竹橋上下流の取り組み状況と今後の対応について伺います。
 第二に、尾久橋付近の管理用通路は、歩行者や自転車を中心とした生活道路として利用できるよう、足立区と協議すべきであります。
 都の見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) ともとし春久議員の一般質問にお答えいたします。
 都営住宅の建てかえに際しての民間活力の活用についてでありますが、今般、南青山一丁目団地建てかえプロジェクトは、PFI的手法を活用した、都心居住推進のリーディングプロジェクトであります。東京を再生するために、随所で今後ともこうした取り組みを積極的に進めていきたいと思っております。
 木造住宅密集地域の整備は、防災や住環境の面からも大きな課題でありまして、東京で想定される危機は、まず何といっても地震でありまして、何しろ日本は世界最大の地震国でありますから、地震は必ずやってくるでありましょう。ゆえにも、非常に危険をはらんだ、大きな地震という危機が到来すれば、非常に被害の大きいはずの木密地域の再開発のためにも、こうした手法を活用しながら、かつ、都営住宅の再編整備も進める中で生み出される用地も活用して、何といっても、民間の創意を生かしながら、新しい手法を構築して、その整備に取り組んでいきたいと思っております。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔建設局長山下保博君登壇〕

○建設局長(山下保博君) 六つのご質問にお答えいたします。
 まず、補助第九一号線の整備の見通しについてでございますが、本路線は、地域の渋滞解消を図る上で重要な道路でございまして、現在事業中の江北橋から尾久橋通りまでの延長七百メートルのうち、東側区間四百五十メートルについては、既に完成しております。
 残る西側区間の橋の取りつけ部分二百五十メートルについては、用地取得が完了するとともに、荒川の河川管理者である国との協議が調いましたことから、工事に着手できることとなりました。今後、工事を着実に進め、渋滞の早期解消に努めてまいります。
 次に、区部の幹線道路の整備についてでございますが、第二次前期事業化計画は、区部の都市計画道路を重点的、効果的に整備するため、平成三年度からおおむね十年間において、優先的に整備すべき箇所を選定したものでございます。
 このうち、都が施行すべきものは、計画延長で約百十五キロございますが、厳しい財政状況や合意形成に時間を要することなどによりまして、平成十二年度末現在で約四一%の事業着手にとどまっております。このため、本年一月にこの計画を三カ年延伸したところでございます。
 今後とも、渋滞解消効果あるいは防災性の向上など、事業の必要性や優先度を勘案いたしまして、国費などの財源確保を図りながら、都民の協力と理解を得ながら、整備促進に努めてまいります。
 次に、日暮里・舎人線の開業時期についてでございますが、このたび、用地取得の難航、それから幹線道路におきます工事の困難などによりまして、開業時期が四年間延伸せざるを得なかったことは、まことに残念でございます。
 お話の情報提供につきましては、これまで都議会や地元区には、事業の進捗状況等について機会あるごとに説明するとともに、地元には、区の広報や沿線の工事広報板などを活用いたしまして、事業の実施状況の周知に努めてきたところでございますが、今後、より一層の工夫を凝らし、可能な限り迅速な情報提供に努めてまいります。
 次に、日暮里・舎人線の進捗状況と今後の取り組みについてでございますが、現在の進捗状況は、用地の六七%は取得済みでございまして、工事につきましては、支柱の六八%、けたの三四%が完成または施工中でございます。
 今後は、残る用地取得について、関係権利者の協力が得られるよう、精力的に折衝を進めるとともに、解決が困難な案件につきましては、土地収用制度を積極的に活用し、用地の確保に努めてまいります。
 また、幹線道路上での工事でございまして、作業時間が制約される中で、工程管理に万全を期すとともに、地元及び関係機関等の理解や協力を得ながら、平成十九年度開業を目指してまいります。
 次に、隅田川のスーパー堤防の整備についてでございますが、堤防の耐震性や親水機能の向上を図るため、隅田川では、川沿いの再開発などまちづくりと合わせまして、今、スーパー堤防の整備を進めているところでございます。
 計画延長十九・五キロメートルのうち、平成十二年度末までに八・四キロが完成しており、今後、足立区の千住桜木地区などで、順次事業化をしてまいります。
 なお、足立区内につきましては、計画延長三・七キロのうち、〇・六キロが完成しております。
 また、お話の尾竹橋付近につきましては、周辺のまちづくりと整合を図るため、現在、足立区と協議を進めているところでございます。
 最後に、尾久橋付近の隅田川沿いの管理用通路についてでございますが、地元の方々が散策路などとして利用するには、川沿いに立地しております企業の占用物件の取り扱いや、安全性の確保の検討が必要でございます。このことから、利用可能な箇所につきましては、平成十四年度から順次、足立区と協議していくことといたしたいと思います。
   〔住宅局長橋本勲君登壇〕

○住宅局長(橋本勲君) バリアフリー化などの住宅リフォームを促進するための誘導策等についてでございますが、リフォームの一層の推進に向けまして、民間事業者等との協議、連携の場を創設いたしますとともに、ガイドブックの作成や、住宅の履歴情報を記録する家歴書の普及などを図ってまいります。
 また、リフォームローンの減税制度の周知を図りますとともに、マンションの共用部分の改修に係る利子補給制度や、民間賃貸住宅における高齢者向け住宅への改修助成制度などを活用しまして、民間への支援を実施いたします。
 さらに、バリアフリー化を促進するため、都民や民間事業者等とで構成するバリアフリー推進協議会による啓発、相談や、都営住宅のスーパーリフォーム手法の民間への普及など、さまざまな取り組みを進めてまいります。
   〔水道局長飯嶋宣雄君登壇〕

○水道局長(飯嶋宣雄君) 二点の質問についてお答えいたします。
 まず、三郷浄水場における自己発電構想についてでございますが、本構想は、浄水場内に発電設備を整備し、電源の二系統化により災害時等における安定給水の確保を図るとともに、天然ガスを燃料とする効率の高いシステムを導入することにより環境負荷の低減を図るものでございます。
 さらに、この構想では、電力の自由化や立地条件を生かした事業を民間事業者と共同で実施することにより、浄水場のみならず、都の公共施設などに低廉な価格で電力を供給することを通して、コストの縮減とともに収益性の確保が期待できるものでございます。
 水道局では、これまでも新しい経営手法を積極的に導入するなど、最大限の企業努力を行うことによって、現行料金水準を通算で十年間維持することとしており、今後とも、安定給水の確保はもとより、効率性を一層重視した事業経営に努めてまいります。
 次に、自己発電構想の事業化に当たっての取り組みについてでございますが、本構想において想定する事業期間や今後の電力価格、規制緩和の動向等を考慮いたしますと、ご指摘のとおり、他の事業者との競争力や事業としての採算性を確保することが、事業化に当たっての最も重要な課題であると認識しております。
 このため、安定した燃料の調達、発電システムの選定、需要先の確保、資金の調達方法等、これまで多角的に調査検討を行ってきたところでございまして、現時点において競争性や事業採算性は十分にあるものと考えております。
 今後は、共同事業者と事業内容をより精査するとともに、事業化に向けて必要となる諸条件の確定と、事業スキームの策定に向けた取り組みを鋭意進めていくこととしております。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず最初に、日暮里・舎人線の経営収支などについてでございます。
 日暮里・舎人線は、現時点ではまだ、いわゆるインフラ外部の工事には着手しておりませんので、今回の工期の延伸によって軌道事業の経営収支への直接的な影響はないと考えております。しかしながら、開業後の経営の安定化を考えますと、できる限り初期投資を抑える必要があります。
 このため、今後、インフラ外工事費のさらなる縮減に向け、関係者間で協議してまいります。
 また、インフラ外工事に対する地元区の負担については、地域の利便性に資するという観点から、都区間で分担することとしたものであり、変更はないと考えております。
 次に、コミュニティバスの運行許可についてです。
 道路運送法に基づく一般乗合バスについては、来年二月から法改正によりまして、需給調整規制を前提とする免許制から、輸送の安全の確保などに関する資格を要件とした許可制に移行することとなっております。
 東京都としては、ご指摘の許可が速やかに得られることを期待するとともに、要請に応じ、区との連携を図ってまいります。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) コミュニティバスと高齢者いきいき事業についてでございますが、高齢者いきいき事業は、区市町村がみずからの発想に基づき、地域のニーズを生かした特色ある事業を主体的に展開できるよう、区市町村の努力や創意工夫を支援する柔軟な補助制度でございます。
 お話のとおり、現在、都内の区市町村のうち十団体が、地域における高齢者の社会参加を促進するため、この制度を活用し、コミュニティバスを導入いたしております。また、九団体が導入に向けた調査などに着手いたしております。
 今後とも、こうした区市町村の自主的な取り組みを積極的に支援してまいります。

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