平成十三年東京都議会会議録第十六号

   午後六時二十四分開議

○議長(三田敏哉君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百五番渡辺康信君。
   〔百五番渡辺康信君登壇〕

○百五番(渡辺康信君) 私は、日本共産党を代表して質問いたします。
 東京の失業率は五・六%に達し、企業倒産も十月末までに二千七百八十五件と昨年を上回る勢いで、不況とリストラはとどまるところを知りません。それは、不況克服の先頭に立つべき政府が、小泉首相の構造改革一本やりで、経済の六割を占める家計を痛めつける政策をとり続けているからにほかなりません。
 加えて、小泉首相は、来年度から医療費の三割負担の導入やマル優の廃止を表明、消費税の増税も検討が必要だとまでいいました。とんでもない話だと思います。私は、このようなときに、石原知事が都民の命と健康、暮らしと営業を守ってほしいという都民の切実な声にどうこたえるのかが鋭く問われていると思うのであります。その立場から伺います。
 事態の深刻さを最も鮮明に示しているのが、失業による自殺者の急増であります。この間、不況の進行に比例して自殺者はふえ続け、東京の自殺者は二千九百十七人に及びましたが、その理由のうち、経済、生活問題がこの五年間で二倍にふえております。
 こうした中で、先日、親を自殺で失った自死遺児の大学生、専門学校生七人が、小泉首相に自殺防止対策を訴えた後、記者会見を行い、もうこれ以上自殺で親を亡くす子をふやさないでほしい、こう訴えました。遺児の方の心情は、察するに余りあるものがあります。
 また、遺児の支援を行っているあしなが学生募金の事務局の方は、小泉政権の構造改革の痛みによって、さらなる自殺者の急増も懸念される。市場原理を貫けば経済が再生すると主張する人々の耳には、痛みに直撃される弱者の悲痛な叫びが聞こえているのですかと訴えられております。
 知事は、所信表明で、雇用について、国に対しあらゆる機会を通じて強く要請していくことを表明されましたが、そうであれば、知事としても改めてこの親を自殺で亡くした子どもたちの声を小泉首相に率直に伝え、大量失業を生み出す構造改革を見直すよう、強く要請すべきではありませんか。
 また、自死遺児や交通事故遺児の皆さんへの奨学金の支給や生活資金援助、加えて雇用対策では、期限を切らない安定的な失業対策事業や、フランス並みの五年程度の雇用保険の延長について、国が踏み切るよう働きかけることを提案するものですが、答弁を求めます。
 また、東京都としても、雇用保険期限が切れた失業者や、雇用保険の対象とならない自営業者や建設労働者のための生活つなぎ資金や、公立学校の授業料減免の拡充や、私学生のための緊急授業料補助、都としての奨学金制度など、手だてを尽くすべきではありませんか、答弁を求めます。
 より根本的な問題として、リストラ、大量解雇の規制の問題も避けて通れません。日本労働弁護団が今月一日に全国二十三都道府県で一斉に実施したリストラ一一〇番で、東京には過去最高の二百件の相談が寄せられました。弁護団は、相談内容から、大企業を中心に執拗な退職勧告や出向、転籍の強要、また安易な解雇などが横行していること、さらには今後一層首切りの増加が予想されると分析し、解雇規制の必要性を訴えております。
 知事、これ以上の悲劇を繰り返さないためにも、整理、解雇の四要件の法制化、大企業の身勝手な海外移転、リストラ規制などを国に提案し、その先頭に立つ考えはありませんか、答弁を求めます。
 都がこの間発表した緊急の雇用対策や金融支援対策は深刻な事態に対応するものですが、その内容は、目玉の一万五千人という特別雇用基金事業にしても、一日当たりの雇用効果は百二十四人にすぎません。中小企業への融資も、業者が求めている別枠の融資が組まれていないなど、今日の深刻な事態に見合ったものとしては不十分であります。
 問題は、既定の産業労働局の当初予算の範囲内では、到底抜本的な対策を講じることは困難だということです。この点では、全国の四十七都道府県のうち、四十道府県が九月議会で補正予算を組んだり、緊急対策本部を設置するなど緊急の雇用対策や中小企業対策を講じているのであります。
 まず、知事のもとに緊急景気対策本部を設置して、全庁的な取り組みを進めることが必要です。また、来年度予算では景気対策を最重要施策の一つに据えること。さらには、緊急対策として、国の緊急雇用対策の上乗せ実施、本格的な失業対策事業や中小企業のための別枠融資、新製品の開拓、販路拡大、中小企業への公共事業の優先発注、木造個人住宅改修助成など、本当に役立つ景気対策を実施すること、そのための補正予算を編成することを知事に強く求めるものであります。あわせて答弁を求めます。
 小泉内閣が進めようとしている医療保険制度見直しの主な内容は、サラリーマンの医療費自己負担は現行の二割負担から三割に、高齢者も七十歳以上は一律一割負担で、一定以上の所得がある人は二割負担に引き上げるものであります。このような患者負担増で受診を抑制しようという政策は、国民の健康破壊を招くばかりか、病気の重症化による医療費の増大をもたらすものであり、きっぱりと中止すべきであります。この際、はっきり反対の声を上げることを提案するものですが、知事の答弁を求めます。
 次に、都立病院の統合、廃止、民営化の問題であります。
 十六カ所の都立病院を八カ所に削減、縮小しようという都立病院改革会議の報告書が出されてから五カ月になりますが、都民の反対と不安の声は高まる一方であります。この間の質疑と多くの都民の声を通して、その報告書の道理のなさがいよいよ明らかになってきました。
 一番の問題点は、地域医療から手を引いて、だれでも、どのような病気にかかった場合でも、良質な医療を公平に受けることができるようにするという都立病院の本来の役割を大きく後退させようとしていることであります。その矛盾が鋭くあらわれているのが、八王子、清瀬の小児病院と母子保健院の廃止問題であります。
 知事は、東京の医療施設は他に比べて非常に充実しており、東京全体を見て重複している部分を解消するのがねらいだといいますが、そんな話は成り立ちません。第一に、人口十万人当たりの病院ベッド数は、全国平均が千三百床に対し、東京は千百床にすぎません。非常に充実しているというのは、全く事実と違うのであります。第二に、中でも八王子、清瀬を初めとした多摩地域は、小児医療と未熟児、周産期医療が非常に不足している地域です。
 以上二点について、知事はどう認識しているのですか。東京が全国に比べ比較的充実しているのは大学病院などの高度専門医療であり、不足している地域医療から手を引いて、都立病院全体を高度専門医療のセンター化していこうという改革会議報告書の方向では、東京の医療問題を解決することはできません。
 私は、小児病院、母子保健院や荏原、大久保、豊島病院を初め、それぞれの都立病院を地域の中の安心のよりどころにして充実していくよう求めるものであります。
 また、老人医療センターは統合、民営化が提案されていますが、高齢者に対する総合的、包括的な医療を行っている全国でただ一つの貴重な病院であることが質疑で明らかになりました。板橋区の開業医からも、疑問だ、全く了解できないとの声が上がっています。民営化問題についても、都立の老人医療センターは差額ベッド料を徴収していないのに対し、民間病院では、一日三万円以上が都内で九百四十床に及ぶことが明らかになり、患者の負担増につながる心配が一層現実的なものとなりました。
 今回の改革会議は、都立病院への財政支出の削減が最大のテーマとされてきたことも、重大な問題点であります。しかし、先日発表された都民生活に関する世論調査を見ても、都政への要望について、医療、衛生対策と答えた人が四割に上り、高齢者対策に次ぐ第二位で、調査開始以来、最も高い比率となっています。昨年度実績で四百四十五億円の都立病院の一般会計補助金については、都政モニターアンケートの調査の結果、六割以上の人がもっと積極的に税金を投入してもよい、あるいは現状程度の税金投入はやむを得ないと答えており、これ以上の削減を推進する必要はありません。そもそも都立病院への一般会計補助金の多くは、難病、精神、救急を初めとした不採算医療など、地方公営企業法第十七条の二に定める負担金であり、都として当然負担すべきものと考えますが、見解を伺います。
 都民の声と運動は日増しに広がり、小児病院の存続を求める署名は、八王子で市民の四人に一人に及び、清瀬では市の人口六万七千人を上回る、実に九万人が署名しています。そして多摩市長会が、東京都に対する来年度要望では、多摩地域の小児医療の中心的役割と新生児センターとしての役割を担っている八王子、清瀬両小児病院の存続を訴え、これらの病院の移転、統合方針は、市と都の信頼関係を損なうものだと訴えるに至りました。市長会の一致した要望は、とりわけ重いものであります。
 また、世田谷区と板橋区でも、区長、区議会、区民を挙げた取り組みが広がっています。荏原病院、大久保病院についても、存続を求める住民の会が設立されました。さらに特徴的なことは、東京都知的障害者育成会を初め、肢体不自由養護学校PTA連合会、難病団体、助産婦会など、各地域にとどまらず、東京全域の団体から都議会への請願陳情や、都に対する要望書が提出されていることであります。
 いずれも共通しているのは、都立病院が都民の命と健康を守るために、いかにかけがえのない役割を果たしているのかということであります。都立病院は、いざというとき頼りになる救急病院であり、身近な病院でもあり、同時に高度専門医療も受けることができる、なくてはならない病院なんだ、そういう声であります。こんなうれしい話はないじゃありませんか。
 知事は、多摩市長会の要望、そして多くの都民と自治体の切実な声、要望の広がりをどう受けとめておりますか。知事は、改革会議報告書を受けた都としてのマスタープランを年内につくると述べましたが、都立病院のあり方は、都民の命と健康にかかわる問題であり、地元自治体、住民の声を尊重し、十分な同意と納得が必要であり、見切り発車するようなことがあってはなりません。
 改革会議報告書そのものに対しこれだけの意見が出ていて、全く都民合意が得られていないのですから、改めて都民的な検討に付すべきであります。知事の答弁を求めます。
 来年度の都の重要施策に位置づけた新たな肝炎対策と引きかえに、慢性肝炎と肝硬変及び肝細胞がん、へパトームへの医療費助成を来年度廃止しようとしているのも重大な問題です。これにより、都単独の難病医療費助成を受けている四万八千人のうち、実に三万一千人が打ち切りの対象になります。
 都は、患者数が多い、原因が解明されたなどを理由に、必ずしも難病といえない、医療費助成は打ち切るとしています。しかし、慢性肝炎の大半を占めるB型肝炎、C型肝炎の原因は、輸血や、かつて行われていた注射器の使い回しなど医療行為によるウイルス感染であり、多数の肝炎患者は、国の不十分な衛生行政の犠牲者であることが明らかになったのであります。だから国の責任が問われることになり、来年度から検診など新たな肝炎対策に踏み出さざるを得なくなったのであります。そのときに、都が国に先駆けて行ってきた医療費助成を打ち切ることは、到底理解できるものではありません。
 治療法が確立したということも理由にしていますが、主な治療法であるインターフェロンで治るのは患者全体の三分の一にすぎず、あとの三分の二の人は、進行をおくらせることができるにとどまるか、あるいは治療できないというのが現状であります。しかも、国の肝炎対策有識者会議では、治療にかかわる医療費が高額であり、適切な対応が必要なこと、これまで実施されてきた種々の施策を一層強化していくことが重要であることを指摘しているのであります。
 来年度から実施予定の新たな肝炎対策は、早期発見、早期治療を軸としたものであり、既に慢性肝炎や肝硬変、肝細胞がんに進行した人はその恩恵を受けることはできません。知事、本人に何ら責任なく、国家の責任が問われる不適切な医療のために肝炎となり、懸命の治療を続けている方々を切り捨てるようなことがあってはならないと考えますが、いかがでしょうか。
 これは、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞がんの医療費助成の打ち切りという問題であり、知事の判断に患者の皆さんの命がかかっているといって過言ではありません。肝炎患者の方々は、医療費助成は患者の生命線であり、何としても継続をと切なる声を上げています。こうした患者の皆さんの願いに耳を傾けて予算編成をされるよう求めるものであります。重ねて知事の所見を伺います。
 来春から完全実施される学校週五日制の対応が急がれています。それは、月一回のペースで始まった当時と比べてみて、社会的関心が低く、地域での受け皿づくりが進んでいないからであります。このままでは子どもたちが行き場や遊び場などの居場所を失いかねないからであります。
 また、十年前と比べ、子どもたちを囲む環境は大きく変化しています。長期不況による生活悪化、少子化と家族の孤立化の中で、多くの父母が子育てに悩んでおり、また、地域の教育力もコミュニティの破壊で後退しています。加えて、区市町村の児童館や学童保育も土曜閉鎖が相次いでいます。それだけに、学校週五日制完全実施に当たっての対策がこれまで以上に求められているのであります。
 同時に、幾つかの区市町村で、地域での子育て、教育の力を再構築していこうと、国の子どもゆめ基金などを活用した社会教育館の放課後、土日の開放、地域ボランティアによる軽いスポーツや趣味など、子どもの居場所づくりの新たな取り組みが始まっていることに注目すべきであります。都として、まず学校週五日制への対応状況についての実態を把握すること、区市町村が地域や子どもたちの要望に合わせて行う多様な活動を支援する仕組みなどは早急に具体化することが求められています。また、国に対して、子どもゆめ基金の補助の抜本的な拡充を求める必要があると思いますが、あわせて答弁を求めます。
 土日休校のもとで、月曜日には少なくない子どもたちが学校生活のリズムを崩して学校に登校します。養護教諭の複数配置やカウンセラーの全校配置など、心のケアのための態勢が重要です。また、行き届いた教育を進めるために、小中学校の第七次定数改善を前倒し実施するなどの対策も欠かせません。あわせて答弁を求めます。
 以上、切実で緊急の都民要求を幾つか取り上げましたが、共通しているのは、東京都が自治体として都民の要求にこたえる姿勢に立つかどうかであります。あわせて福祉十事業の復活、介護保険の利用料減免制度の改善と保険料減免を初め、暮らし、福祉、医療、教育などの都民施策の充実の方向に転換することを強く求めるものであります。
 豊かで住みよい東京をどうつくっていくのかという問題も都政の大きな課題の一つです。この点では、石原知事は、昨年、東京の将来像を描いた東京構想二〇〇〇を発表し、その後、首都圏メガロポリス構想や都市づくりビジョンなどの都政の基本方向にかかわる提案を相次いで出されました。また、知事は、今定例会での所信表明で、新しい首都像の構築を第一の柱に掲げ、首都圏の再生は国家の再生そのものであり、我が国にとって一刻の猶予もならない課題となっていますと述べるなど、首都圏の再生や都心再生に並々ならない情熱を傾けています。
 その中で、知事が反対の姿勢を明確にしている首都移転は、十四兆とも二十兆円ともいわれるむだ遣いとなるものであり、我が党も一貫して反対の立場を貫いてきたものであります。
 国会での首都移転の動きは、来年五月までに移転候補地を絞り込み、東京都と比較考量するという急テンポで進んでいますが、移転をやめさせるには、公共事業の見直しが大きな流れになっているもとで、壮大なむだ遣いをやめよの世論を国民的規模で形成することが欠かせません。知事、壮大なむだ遣いをやめよの一致点での全国民的な共同を呼びかけることが、局面打開のかぎとなるのではありませんか。見解を求めます。
 我が党は引き続き、首都移転を断念させるまで全力を尽くすものであります。
 同時に、首都移転の議論のきっかけとなった東京への政治、経済、人口の一極集中と、その集中がもたらす地球環境や住環境などの矛盾が解消されているわけではありません。地価がむしろ下がったとはいえ、業務機能の集中による高い住宅、劣悪な子育て環境、地球温暖化などの被害が都民を脅かしている事実に変わりはないのであります。その点について幾つかの角度から考えてみたいと思います。
 まず、子どもたちの将来世代への課題としての地球環境問題では、知事が進めようとしている首都圏メガロポリス構想の方向は、ますます環境破壊を進めることになることは明らかであります。
 第一に、オフィスビルの乱立の影響です。メガロポリス構想が示したセンター・コア、すなわち首都高速中央環状線の内側地域で現在既に開発が進められている一ヘクタール以上の大規模開発の床面積は、七百三十ヘクタール、東京ドーム約百五十杯分に及びます。これにベイエリア21で示された未利用地の開発や都市づくりビジョンによる規制緩和などによる開発が今後ますます進められるならば、これらのビルによって莫大なエネルギーが消費され、また、大量の自動車交通が呼び込まれることになります。知事、こうした開発は、ヒートアイランド現象や都市型水害などを増加させるものであり、地球温暖化対策の視点からも厳しく問い直す必要があるのではありませんか。所見を伺います。
 地球温暖化対策では、ようやく日本が京都議定書を締結する運びとなりました。この結果、地球温暖化対策で急がれている温室効果ガスでいえば、日本は一九九〇年比で約六%削減することが課せられ、国内最大のエネルギー消費地である東京の取り組みが注目されているのです。しかも、温室効果ガスの大部分を占める二酸化炭素、すなわちCO2発生源で見ると、オフィスと自動車が六割を占めていることからも、この分野での対策は欠かせません。
 ところが、都が先日発表した環境基本計画のあり方についての答申は、二〇一〇年の予測値に対してCO2二〇ポイントの削減が必要としながら、肝心の削減のための対策は極めて不十分なものとなっています。例えば第一章の自動車排ガスの項では、ディーゼル規制だけで、CO2減は一言も触れられていませんし、CO2具体的な削減計画と対象ごとの削減目標も設定されておりません。知事、都として、二酸化炭素削減のための年次計画と、分野別の削減目標と計画を持って取り組むことは、最小限の義務と思いませんか。答弁を求めます。
 また、開発の抑制とともに、二十三区内、とりわけ都心部での都市公園の拡充や市街地に残された緑の保全、多摩地域の四五%を占める森林の再生などは、地球温暖化を防ぐ上で欠かせないと思いますが、見解を求めます。
 また、今でも八兆円近い借金を抱えている都財政をさらなる破綻に導くという点でも、都市再生プロジェクトは都民にとって認めがたいものであります。この点では、知事が来年度予算編成に当たって選定した重要施策は、都市再生の具体化を図る開発のための施策に比重が置かれ、実際に選定された施策は、事業費の七割強が建設局、都市計画局、港湾局などの公共事業関連の局によって占められ、その一方で、重要施策から外された福祉や教育などの都民施策は一律一〇%削減が要求されているのであります。
 また、首都圏メガロポリス構想の中軸をなす圏央道、外郭環状道路、首都高速中央線のいわゆる三環状道路の同時進行は、莫大な工事費をつぎ込むことになります。知事が国の責任でといっても、実際には直轄事業負担金や無利子貸付金などの形で、半ば強制的に都財政をつぎ込まされることになるのではありませんか。
 知事、都市再生などの名目で進める開発が、都財政に多大な困難をもたらすこと、さらには都民のための施策にしわ寄せが行くことを率直に認めるべきではありませんか。むしろ高齢者や障害者のための福祉や三十人学級などの教育条件の整備、中小企業対策などにこそ予算を重点的に配分すべきではありませんか。あわせて答弁を求めます。
 知事の進めようとしている方向は、地球環境の点でも、深刻な都財政の点でも、地方自治のあり方の点でも見過ごすことのできない問題であり、知事が憲法に定められた地方自治の精神に立ち返って都政運営に当たることを強く求めるものであります。
 次に、石原知事の都政運営における基本的な姿勢について伺います。
 いうまでもないことでありますが、都政を運営し、どのような施策を実施するに当たっても、第一に、関係者の合意を得るように誠実に努力すること。第二に、異を唱える声にも真摯に耳を傾けること。第三に、行政の継続性を重んずる立場から、たとえ前任者の時代のことであっても、都が事前に約束を交わしていたことは尊重すべきであることなどは大事なことであります。しかし、石原知事、あなたにはこうした点を踏まえようとする気があるのかどうか疑わしいと指摘せざるを得ない事例が少なくないのであります。
 例えば、原宿における社会事業大学跡地への大規模留置場建設問題であります。そもそも五百人を超えるという規模の留置場を自治体が建設するという計画が前代未聞のことであり、当然予定地を初めさまざまな意見が起こるのは当たり前のことであります。
 ところが、知事は、この計画を記者会見で正式に発表すると同時に、これに反対する住民の声を地域エゴだと決めつけました。その上、都は、来年度予算編成に向けた重要施策に大規模留置場を盛り込むことも既に行っています。これでは、幾ら知事がその後の所信表明で、原案がまとまった時点で関係者には十分説明したいといい、ご理解とご協力をぜひともお願いいたしますといっても、もはや知事と住民とが対等の話し合いによって理解と合意に達するというのは困難であることは明らかです。知事はまず、つくり上げた既成事実は白紙に戻し、関係する住民の声に耳を傾けることから始めるべきではありませんか。答弁を求めます。
 同時に、この計画が道理も根拠もないことも明らかです。その一つは、東京都と渋谷区との間には、用地の取得に当たって、都が利用計画策定に当たっては、渋谷区及び地元住民との事前協議に誠意を持って対応するという約束を公文書をもって取り交わしていたということであります。
 二つ目には、留置場が不足しているということについても、我が党の調査では、留置場に置かれている人の三分の二は、本来拘置所や入国管理所で対処すべき犯罪者が留置場にとめ置かれている、いわゆる代用監獄として使われているのであって、決して留置場が不足しているということではないのであります。また、拘置所についていえば、現在東京拘置所の建てかえが進められており、二〇〇四年三月の完成時には八百人以上も収容人数がふえることになっているのですから、東京都が代用監獄となる大規模な留置場を建設する必要がないということは明らかではありませんか。知事、これでも地域エゴだというんでしょうか、ご意見を伺います。
 最後に、知事が女性週刊誌上及び都が設置した「少子社会と東京の未来の福祉」会議の席上での発言について、女性団体が強く抗議していることについてです。
 知事はインタビューの中で、女性が長生きすることはむだで罪、地球にとって非常にあしき弊害などといい、表現することもはばかられるような言葉で女性をべっ視する発言を繰り返しました。知事はこれらの発言を、東京大学大学院教授である松井孝典氏の言葉として引いているのですが、女性週刊誌では、なるほどとは思うがといい、少子社会と福祉会議では、ひざをたたいてそのとおりという言葉を加えて、みずからの見解と同じであることを認めています。
 私もこの引用のもとになったと思われる松井氏と知事のテレビ対談のビデオを見ましたが、松井氏自身は引用されたようなことはいっておりません。結局、松井氏の名をかりた知事の放言ということになりますが、それにしても、知事としての発言として許される性質のものではありません。知事が、高齢者や障害者、特に名指しされた女性の高齢者など、弱者を、ただ消費するだけの生きる価値のない者という思想の持ち主であるとしたら、都政への信頼は根底から失われることになるのではありませんか。知事、女性週刊誌などでの発言は、きっぱりと撤回すべきであります。このことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 渡辺康信議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、構造改革についてでありますが、日本が直面する危機的な状況を打開するためには、戦後半世紀を経てというか、むしろ明治の時代から延々続いてきております、しかし、もう現代では機能しなくなった社会システム、政治のシステムを見直し、民営化や規制緩和、あるいは行財政制度の再構築など、思い切った構造改革を早急に実現することが必要であると思います。これは歴史的な必然性であり、蓋然性であると思います。同時に、都市の再生など国家社会の将来にとって有益な投資を行うことなどによりまして、産業、雇用の拡大を図り、経済にもダイナミズムを取り戻すことが不可欠であると思います。
 東京都としては、都民の雇用不安を解消するために緊急雇用対策に取り組んでおりますが、所信表明でも述べましたように、国に対しても抜本的な対策を強く要求していきたいと思っております。
 いずれにしろ、再三申してきましたが、日本の特殊法人というのは、まさに中国やソビエトがもう限界を感じて見限った国営企業と同質のものでありまして、これを合理化するのは当たり前のことでありますが、ただ、私はあえて申しますと、やはりこれに加えて、並行して、景気浮揚策というものは当然可能でありまして、これは決して二者択一の問題ではないと思っております。同じことを総理にも再三申してきております。
 次いで来年度予算についてでありますが、十四年度予算の編成に当たりましては、都税収入の大幅な減少が避けられない状況にありますから、財政再建の取り組みをより一層進めるとともに、首都圏の再生と都民生活の不安解消のための優先課題に財源を重点的に振り向ける考えであります。
 景気対策としては、さきに選定した重要施策の中で、雇用危機の突破や東京産業の育成などを掲げておりまして、これに沿って適切に対応していきたいと思います。
 また、景気対策のための補正予算についてでありますが、国はさきに雇用対策を柱とする第一次の補正予算を成立させましたが、引き続き第二次補正予算の提出を予定しているようであります。しかし、物によっては、地方自治体の裏負担の問題もありまして、都としては、今後こうした国の補正予算の内容を十分に把握しながら、厳しい財政状況にありますが、適切に対応していきたいと思っております。
 なお、次いで国の医療保険制度改革についてでありますが、高齢化の進展等によって国民医療費が増大する一方、利用者の視点に立った質の高い医療サービスの提供が求められておりまして、医療制度の改革は不可避のものであります。また、すべての国民に医療を平等に保障してきた我が国の医療保険制度を維持発展させていくためには、利用者間の負担の公平に留意しながら、低所得者にも配慮した適正な負担を国民に求めていくことは必要と思います。国からは医療制度改革の大綱が示されましたが、今後とも国の動向を注視し、都としても適切に対処したいと思っております。
 また、都立病院改革のマスタープランについてでありますが、都立病院改革会議の報告は、都立病院が担うべき役割やその経営形態を明確にするなど、東京から全国へ発信する公立病院改革の新しい形を示してくれたものと評価しております。したがって、この報告内容を尊重しつつ、年内を目途にマスタープランを策定して、具体的な再編整備のスケジュールを明確にした上で、早期に改革の実行に着手していかなきゃならぬと思っております。
 また一方、新規に設けました医療に関する相談窓口にも、短期間でありますけれども、既に七千件もの相談がありました。そうした相談内容を分析し、相談された方々の意見もそんたくして、これもまた都民の声という形で反映をしていきたいなと思っております。
 次いで首都移転問題についてでありますが、今回、移転費用を再試算しましたら、二十兆円を超えることがわかりました。このほかにも、広域交通網の整備費用や起債の利子負担などが必要となりまして、移転費用はさらに膨らむはずであります。
 また、世界の常識からいって、一国の、しかも先進国の首都でありますから、その首都が首都たる絶対必要条件の一つであります国際空港というものを、どこにどうつくるかということはさっぱり議論もされておりません。極端な話、ニューヨークやワシントンから四時間かかってスーパーソニックで飛んできても、飛行場がそこになければ、数時間かかって新首都なるものに行かなくちゃいけない。こんなものが果たして世界的に新しい日本の首都として通用するかしないかということは、都会議員ならわかるけれども、国会議員にはわからないのかもしれませんが、まあ、論外な話であると思います。
 来年の五月の移転先候補地の絞り込みを控えまして、首都移転に反対する広範な世論を巻き起こすことが重要であると思っております。あらゆる場と機会をとらえて、都民、国民に首都移転の不当性を訴え、白紙撤回を目指していくつもりであります。(「そのとおり」と呼ぶ者あり)ありがとう。
 都市開発についてでありますが、東京の魅力と活力を高め、国際的な競争力を向上させることは、東京はもとより首都圏全体の喫緊の課題でありまして、都市の業務機能の更新や都心居住の推進などを図ってまいりました。
 今後とも、環境と共生する都市づくりを進める上からも、首都圏三環状道路の整備や、業務、商業、居住など複合的な機能の集積を図りまして、環状メガロポリス構造を実現していきたいと思っております。
 次いで地球温暖化対策でありますが、温室効果ガスの排出抑制は、本来、国が明確な目標のもとに取り組むべき課題であると思います。しかし、国は、京都議定書の締結に向けた準備をようやく開始するにとどまりまして、なかなか実効のある対策を打ち出してはおりません。こうした国の緩慢な動きこそ問題にすべきだと思いますが、都は既に地球温暖化対策への取り組みを事業者に求める制度を国に先んじて条例化し、来年度から本格実施をしてまいります。しかし、東京都の権能には限りがあります。地球温暖化対策という非常に大きな困難な課題ではありますけれども、いずれにしろ、だれかが先んじてやらなくちゃいけないということで、こういう問題に取り組んでいきたいと思います。
 先日、実は、あるところで、どこかの飲み屋さんでしたが、珍しく私の友人でありました開高健の色紙がありました。思い返してみますと、彼はいつもあの言葉を書いていたような気がするんですが、彼自身の言葉か、あるいはだれの言葉か知りませんが、いつも開高君はその言葉を色紙に書いておりました。それは、あす地球が滅びるとも、君はきょうリンゴの木を植える。あす地球が滅びるとも、君はきょうリンゴの木を植える、非常に美しい言葉というか、美しい志だと思います。アメリカが参加しようがしまいが、日本は日本でこういった問題に取り組むべきだと思いますし、それが日本人という民族の文明の、文化の高さであり、志の高さだと私は思います。東京も、日本においても、そういう仕事を果たしていきたいと思っております。
 都市再生のための開発についてでありますが、東京の再生のために、これまで事業の緊急性や必要性に応じていろいろ都市基盤の整備を進めてまいりました。中でも、東京における空港、鉄道、道路などの都市の骨格を形づくる施設の整備は、次の世代に引き継ぐ財産となるものでありまして、産業の活性化や国際競争力の向上はもちろんのこと、生活基盤の質を高める上でも極めて重要であります。このように、都市再生のために取り組んでいる開発事業はまさに都民のための施策の根幹をなすものでありまして、今後とも限りのある財産を投資効果の高い事業に重点的に配分し、都市再生に取り組んでまいります。共産党のおっしゃることを聞いておりますと、一体この国が、この東京がどうなるのか、さっぱりイメージがわいてこない。
 次いで、福祉施策などへの予算の配分についてでありますが、これまで都市基盤の着実な整備とあわせて、福祉改革の推進や中小企業対策など、ソフトの面の施策についても積極的な展開を図ってきたつもりでございます。
 十四年度予算の編成に当たりましては、引き続き経常経費、投資的経費を問わず、聖域のない見直しを行い、より一層の財政構造改革を進めるとともに、厳しい財政状況のもとにあっても、雇用危機の克服や福祉、医療の推進、東京の教育の立て直しなど、都民生活の不安を解消するための施策の推進に重点的に取り組んでいきたいと思っております。
 次いで、日本社会事業大学跡地の利用についてでありますが、ご承知のように、近年、凶悪な犯罪が増加する一方で、検挙率は著しく低下しておりまして、都民は治安の悪化に非常に大きな危惧を抱いております。意識調査しましても、去年は十位に入らなかった治安に対する不安が三位にまで浮上してきております。
 こうした中で、留置場の不足がますます深刻な問題になっております。都民の生活を守るべき東京都としましても、問題の重大性を明らかにし、対応策を示すのは当然の責任であります。留置場の建設を白紙撤回することは毛頭考えておりません。
 地元には、さまざまな異論があることは十分承知しておりますが、一応の原案ができた時点でこの問題は施策が立地される地元の利害のみで議論されるべき問題ではなく、広く都民全体の安全にかかわる問題でありまして、今後話し合いの中で、地元には大局的な見地からの判断を求め、理解と協力を得たいと思っております。
 次いで、この跡地利用に関する経緯及び留置場の必要性についてでありますが、社会事業大学の跡地の当初の計画は、原宿警察署の建てかえと、防災施設の整備という内容でありましたが、その後の東京の治安状況の著しい悪化などを踏まえ、原宿警察署の建てかえに当たって、一体的に相当の規模の留置場を整備したいと思っております。
 いずれにしろ、東京の限られた有効な空き地というものの利用は、ある時点で、いかなる自治体と自治体が契約を交わそうと、しかし、その後の時間の経過で、それに対する本質的なニーズというのは変わってくるわけでありまして、そういった時間の計数の中で変化していく都民にとっての必要性というものを勘案しなければ、これは、行政は行政にならないと私は思います。警察署の建てかえと防災施設の整備という当初の計画内容に関して出された地元の六項目の要望については、現在、取り入れ可能かどうか鋭意検討しております。
 代用監獄制度のもとで、本来なら国が構えるべき拘置所に収容される者が留置場に収容されているという問題があることは否定いたしませんが、現実には、東京拘置所の建てかえが終了したとしても、なお相当数の留置場不足が予測されておりまして、留置場建設の必要性は何ら変わらないと思います。
 次いで、私の週刊誌等の発言についてでありますが、これは私が一時間余、松井教授とMXテレビで話をしました。その後、それがどういうふうに編集されたかはわかりませんが、人間の存在をめぐるこの地球の環境悪化について、惑星物理学の泰斗であります松井さんからいろいろ話を聞いて、慄然とした思いでありました。その話の連脈の中で、彼はかなり思い切ったレトリックで、人間がいかに地球にとって尊大で、傲慢で、自然の共存の循環その他を壊してきたかという話をしております。
 結論から申しますと、今のご質問は、私の発言のごく一部を引用しているだけで、極めて恣意的といえば恣意的ですが、卑劣なデマゴーグ的な手法で、これは私は非常に危険な発言の構造だと思います。時間がたったから、皆さんお急ぎかもしれません。ゆっくり大事な話をしますので、お聞きいただきたい。
 私が松井さんとした話は、なかなか暗示的、啓示的でありまして、私、議員のころ、十数年前ですけれども、東京のある場所で、例のブラックホールを発見したホーキングの話を聞きました。この人は筋ジストロフィーで、もう死ぬ死ぬといわれて、その後長生きして、奥さんも取りかえたみたいだけれども、言葉が出ずに、コンピューターで言葉をつくって講演しましたが、その後質問が許されまして、ある専門家らしい人が、しからばこの宇宙に、この地球並みに高い文明を備えた星が幾つぐらいあるんでしょうかと聞きましたら、ホーキングが言下に、二百万ぐらいだろうと。みんなびっくりしました。そしたら、その後また若い人が質問しまして、なぜ我々は、それだけ文明の進んだ星が周囲にありながら、宇宙人とか宇宙船を、映画では見たりしますけれども、実際に目にすることはないんだろうかといったら、ホーキングは、それはあり得ない、宇宙船を飛ばすようになった惑星というのは、地球に限らず、宇宙全体の時間の総量からすると、本当に瞬間的な時間帯で不安定になって消滅する、地球も必ずそうなるといいました。
 そんな話を松井さんとしまして、松井さんは、そのとおりだといった。しかも、そのころちょうど私、ある本屋から本を贈られました。それは日本以外の、外国の人も含めて、ある専門性を持った専門家と称する人たち、これは人文科学も含めてでありますが、この文明の状況の中で、人類はあと何年ぐらい存在するだろうかという質問に対して、八五%の専門家がたしか、七、八十年から百年以内という答えをした。中には永遠なんていう人もいましたが、これは論外であります。
 私がその話をしましたら、松井さんも、実にそのとおりだ、地球なんかもう長くない。どんなに長くたって百年で人類は滅亡する。人類だけが、人間だけが存在というものを、難しくいえば、哲学の命題として心得ている。つまり、地球というものの存在を認識できる動物というのは人間しかいないわけですから、人間がいなくなってアブラムシやカラスがばっこしても、地球が存在するという形にはならない。ということで、私は、やっぱりそんなにもちませんかといったら、もたないでしょうと。
 地球に一番近い、高度な文明を持っている星というのはどこですか、宇宙の何とかという星だろうと。しかし、石原さん、それはべらぼうに遠い、とにかく太陽と地球の間の距離を十円銅貨の直径に例えるなら、それで換算すると、三十三キロある、とてもそんなものは、地球に、いかなる宇宙船でも人間が乗ってくるわけにいかないという話をしていました。
 話は少し長くなりますが、多分、私たちが行政を考える、人間のための行政を考えるために、いいよすがになると思いますけれども――共産党、嫌なら退室されて結構ですよ。(「すりかえなさんな」と呼ぶ者あり)いや、すりかえてないんだ。大事な話をしているんだよ。最後まで聞きなさいよ。長くかかると断ったでしょう。
 でありまして、松井さんは、五十万年前に人間が人間として発生した、それから狩猟を続けてきて、一万年前に人間は牧畜、農耕を始めることによって、備蓄というものを覚えて、物をもっともっと生産するという非常に強い願望を持つようになったと。そして、牧畜を通じて、この地上に生存する他の動物を人間のために使役する方法を覚えた。そのあたりから地球の自然の循環が狂ってきて、地球圏に人間圏という別の世界ができた。私はそれは文明ということだろうといったら、まさにそうです、その文明が始まってから、人間は地球に張りついたがんのようなものですと。今さらになって、危機感を感じて、地球に優しいとかなんとかいったって、そんなものはちゃんちゃらおかしい。とにかく我々はこの地球の存在の形を狂わして、ここまで来たので、百年足らずで多分人類は滅びるでしょうということを彼は平然といいました。
 そして、他の動物、他の生命とのかかわりの中で、人間が人間というものの存在の主張をし過ぎたために、非常に横暴な存在になった。そして、彼が例を挙げたのは、ほとんどの動物は繁殖、種の保存ということのために生きて、それで死んでいくが、人間の場合にはそういう目的を達せない人でも、つまり、人間という尊厳の中で長生きをするということで、彼はかなり熾烈な言葉でいいまして、私はそのときに、なるほどなといいながら、しかし、それは政治家にはいえないから、あなたみたいな専門家じゃなきゃとてもいえませんなといって、そのときに慨嘆したんだ。
 それを、私は他の座談会なりにわかりやすく説明したつもりでありますけれども、それを共産党がどう解釈するか別でありますが、いずれにしろ、私が思わずひざをたたいたゆえんの一つは、私の友人でもありました深沢七郎氏が書いたうば捨て山という、あの、要するに「楢山節考」という、年をとったそのおばあさんを、その部落の貧困のゆえに、あえて生きている人間を捨てに行くという、これは年とった女の人が、他の動物の生存の仕方に比べれば、かなり横暴な存在であるという表現の、実は逆説的な一つの証左でありまして、私はいろんなことを思い合わせながら、その松井さんの話を非常に印象深く聞いたわけです。
 ゆえをもって、私はそれを私なりに受けとめたわけでありまして、あなたは何か私の発言を撤回しろというけど、私は私で女性を敬愛しております。ゆえに私の発言を撤回するすべもございませんし、する必要もないと思います。終わります。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 公立学校の授業料減免についてですが、経済的に困窮する家庭に対する対策としまして、公立学校の授業料及び入学料の納入が困難な生徒の就学を援助するため、従来から減額免除制度を実施しておりますので、今後とも、学校を通じて授業料等の減免制度の活用を図るよう努めてまいります。
 次に、学校週五日制への対応状況及び子どもゆめ基金についてですが、都教育委員会では、平成十一年度から学校週五日制に対応した区市町村事業の調査を実施しておりまして、それによりますと、区市町村においても、子どもたちの学校外活動を支援するさまざまな取り組みが行われているところでございます。
 また、政府の出資金及び民間の出捐金をもって今年度創設されました子どもゆめ基金は、民間団体が行う青少年の自然体験活動等に対して直接助成し、子どもの健全な育成を推進するものでございますが、都教育委員会としては、その趣旨を踏まえ、区市町村を通じて同基金の有効活用を関係団体に周知しているところでございます。
 最後に、心のケアと行き届いた教育についてですが、子どもたちに対する心のケアにつきましては、スクールカウンセラーを国庫補助事業として、順次、全中学校に配置する計画を進める中で、学校における相談体制の充実を図ってまいります。
 また、教職員の定数につきましては、国の第七次公立学校教職員定数改善計画や都財政の状況を踏まえ、今年度から平成十七年度までの五カ年で計画的な改善に努めてまいります。
   〔知事本部長事務代理次長三宅広人君登壇〕

○知事本部長事務代理次長(三宅広人君) 不況、リストラ対策に関する国への要望についてのご質問にお答えいたします。
 都民が事故や失業など不測の事態に直面した場合に、生活不安に陥らないよう、セーフティーネットを整備することは重要でございます。お話の自死遺児や交通事故遺児への奨学金、生活資金援助につきましては、都や国の育英資金制度や各種年金手当制度により対応しているところでございます。
 また、期限を切らない失業対策事業の実施や五年間程度の雇用保険支給については、新たに正規の仕事につくまでの臨時的措置というそれぞれの制度の趣旨に照らして困難と考えております。
 なお、東京都といたしましては、緊急雇用対策の実施や医療・福祉サービス基盤の整備など、都民生活の安心の確保のために積極的に努めているところでありまして、国に提案要求する必要があれば、適切に対処してまいります。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) 失業者への生活つなぎ資金についてのご質問にお答えをいたします。
 失業者の生活安定に関する施策は、基本的に国の責任において措置されるべきものと考えております。国は、雇用情勢が一層厳しさを増す中で、総合雇用対策の一環として、雇用保険制度の枠外にある自営業者やパート労働の失業者並びに雇用保険の給付期間切れによる失業者を対象として、一定の条件のもとに新たに生活資金を貸し付ける制度を創設をいたしました。
 既に、さきの臨時国会において、貸し付け等に要する経費について十三年度補正予算が成立をいたしております。今後国と協議し、適切に対応してまいります。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 私立学生のための緊急授業料補助や都としての奨学金制度についてのお尋ねですが、都は、私立学校の授業料等の負担を軽減するため、私立高等学校等授業料軽減補助制度を設け、保護者の所得状況に応じ、授業料の一部を補助しております。
 また、失業や倒産など家計の急変に対する措置として、学校の授業料減免額の一部を補助するほか、育英資金の特別貸付を実施しており、これらの総合的な取り組みにより修学の支援に努めているところであります。
   〔産業労働局長浪越勝海君登壇〕

○産業労働局長(浪越勝海君) 不況、リストラ対策に関する三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、解雇規制の法制化等についてでございますが、整理解雇については、その必要性や解雇を避けるために努力することなど、いわゆる整理解雇の四要件を満たさなければならないとの判例が確立されているところでございます。
 また、雇用対策法で、大量の離職者が生じる場合には、公共職業安定所への事前届け出や再就職援助計画の作成を企業に義務づけられているところでございます。
 なお、国においては、解雇の基準やルールの立法化に向けて検討を開始したところであり、都としては、その動きを見守っていきたいと考えております。
 次に、緊急景気対策本部についてでありますが、長引く景気低迷の中で、東京都の完全失業率が五・六%に達するなど、厳しい雇用情勢が続いており、雇用経済対策は喫緊の課題であると認識しております。
 このため、都は、「緊急雇用・経済 東京プロジェクト」Ⅰ、Ⅱを初め、各種の施策を適宜適切に実施してきたところでございます。今後も、景気や雇用情勢の悪化が懸念される中で、適宜、効果的な対策を講じてまいります。
 最後に、国の緊急雇用対策の上乗せなど、緊急景気対策についてでありますが、都はこれまで、雇用経済対策として、二回にわたる「緊急雇用・経済 東京プロジェクト」のほか、中小企業制度融資における緊急金融支援対策等を打ち出してきたところです。
 さらに今後、国が新たに創設した緊急地域雇用創出特別交付金を有効に活用して、雇用経済対策に取り組んでまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 保健、医療について六点のご質問にお答えいたします。
 まず、都内における医療資源の認識についてでございますが、都は人口が集中していることなどから、全国平均に比べ、人口当たりの病院病床数は少ないものの、診療所数は突出して多くなっており、また、大学病院のような高度先進医療機関も数多く集積しております。このような特徴を生かし、都内の医療施設がそれぞれの役割分担に基づき、機能連携を進め、効率的な医療提供体制を構築することが重要であると認識しております。
 次に、多摩地域における小児医療や未熟児などに対する周産期医療についてでありますが、都はこれまでも、東京都保健医療計画に基づき、地域医療の確保に努めてまいりました。多摩地域の周産期医療や小児医療については、周産期母子医療センターと新生児医療に対応可能な医療機関が連携する多摩地域周産期医療連携強化事業や、小児科医が常時診療を行う休日・全夜間診療事業を実施するなど、医療機能の充実に努めております。
 次に、都立病院への一般会計補助金についてのお尋ねでありますが、病院事業は地方公営企業法で、その経営に伴う収入をもって充てることが適当でない救急医療などの経費や、能率的な経営を行ってもなお不採算性が高い高度医療などにかかる経費について、政令に定める繰り出し基準等に従って一般会計が負担しております。
 次に、都立病院改革に対する都民、自治体の要望についてでありますが、都立病院改革会議の報告が提出されて以来、地元自治体や都民の皆様から、さまざまなご意見やご要望をいただいており、都立病院が都民の厚い信頼を得ていることを改めて認識したところであります。
 今後、都立病院改革の推進に当たりましては、地元自治体や地域の医療機関との役割分担を踏まえながら、密接な医療連携を通じて地域住民が安心できる医療提供体制を確保していくことが重要と考えております。
 次に、慢性肝炎等の医療費助成についてでありますが、特殊疾病対策協議会の報告によれば、慢性肝炎、肝硬変、ヘパトームは、ほとんどがB型、C型ウイルス肝炎によるものであり、難病の定義である希少で原因不明、治療法が未確立とはいえないことから、難病医療費助成の対象疾病としてはなじまないとされております。この提言を受け、新たに総合的なウイルス肝炎対策として、予防から早期発見、早期治療までの一貫した体制へ、再構築する必要があると考えております。
 終わりに、難病対策に関する予算編成についてでございますが、現行の慢性肝炎等に係る医療費助成は、予防から早期発見、早期治療への一貫したウイルス肝炎総合対策として、施策の再構築を行う中で、より効果的な制度への転換が図れるよう必要な要求をしているところであります。
   〔環境局長赤星經昭君登壇〕

○環境局長(赤星經昭君) 地球温暖化防止のための緑の確保に関します質問にお答え申し上げます。
 緑には、ヒートアイランド現象の緩和や防災性の向上とともに、二酸化炭素の吸収、固定によります地球温暖化防止などのさまざまな機能がございます。緑の持つこうした機能を最大限に活用するため、昨年十二月に策定いたしました緑の東京計画を踏まえまして、都市公園の整備、緑の保全などを総合的に進めてまいります。

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