平成十三年東京都議会会議録第十六号

   午後三時十二分開議

○副議長(橋本辰二郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十四番和田宗春君。
   〔百二十四番和田宗春君登壇〕

○百二十四番(和田宗春君) 私は、都議会民主党を代表して、当面する都政の主要課題について、石原都知事、野田警視総監並びに関係局長に伺います。
 先週、財務省が発表した七―九月期の法人企業統計によりますと、情報技術、いわゆるIT関連の不振が響き、全産業で三年ぶりの減収、減益となっており、経常利益では三二・五%もの大幅減益となっています。同時に発表された十一月時点の景気予測調査でも、十―十二月期の景況判断は、全産業、全規模でマイナスとなっています。
 現在の日本経済は、バブル崩壊と経済のグローバル化に伴う大競争に加えて、同時多発テロによる世界不況という第三のデフレ圧力が加わり、いわゆるデフレスパイラルに落ち込みかねない、極めて危険な状況にあります。これまでの自民党政権の無理、むだな公共事業を抑制するための、小泉内閣の国債発行額三十兆円以下等の方針は理解しますが、だからといって、今の危険な状況に無為無策であってよいわけではありません。
 構造改革の中でも、規制緩和と市場への資金提供の拡大によって需要を喚起するとともに、首都圏の環状道路整備や住宅の耐震改修など、景気浮揚効果の高い分野に重点的に資金を投入するなどの対策を一刻も早く講ずるべきであります。
 現下の経済状況と小泉内閣の方針について、石原知事、あなたはどのようにお考えか、所見を伺います。
 こうした中で、知事は、財政再建の途上であっても、東京都が直面する危機を打開するために重点的に取り組む政策課題を明示するとして、重要施策の選定を行われました。各局が立案した百九十一事業の中から、新規事業四十三、推進プラン事業六十三、継続事業十九、合計百二十五事業を選定するという意欲的なものであります。具体的な事業の実施規模、事業費、年次計画等は今後の予算編成の中で確定していくということになって、少しトーンダウンしていることは残念であります。
 そこで伺います。重要施策の選定を終えた石原知事の、現在の所見をお伺いをいたします。
 また、平成十四年度予算編成に当たっては、厳しい財政的な制約のもとにあっても、さまざまな工夫を凝らして、日本経済の再生は東京が先導するくらいの強い姿勢で臨まれるよう、これも求めておくものであります。
 知事は、さきの所信表明で、入るをはかって出るを制す、これが財政の破綻を防ぐ唯一の選択肢であると述べられています。しかし、経済は生き物であります。出るを制することばかりに意を用いた結果、事の軽重なく財政を切り詰め、都の活力の低下という最悪の事態を招くことのないようにしなければなりません。
 そのためには、厳しい雇用情勢を踏まえた緊急雇用事業の実施や、ボトルネックを解消する道路の整備など、事業効果の高い分野に重点的に取り組むことが必要と考えます。また、将来的なメンテナンスコストを踏まえて、トータルコストが軽減されるような視点で事業を選択し、重点的に予算を配分することも重要なことであります。
 現下の経済情勢を踏まえ、都民が将来に夢が持てるような、真に効果的な予算編成を行う必要があると考えますが、知事の所見をこれまた伺うものであります。
 デフレスパイラルを阻止するには、国内総生産の六〇%を占める個人消費を高めていくことが何よりも肝要であります。しかし、現在は、残業の減少や賃金カット、そして失業率の拡大など、将来不安を高める要素が積み重なり、消費マインドは冷え込んでおります。借り手が減少しているにもかかわらず、国内の銀行における個人預金はこの二年間で実に二十二兆円、この一年間だけをとってみても十四兆円もふえ、総額三百兆円を超えているのであります。この個人預金の一割でも直接消費あるいは投資に向ければ、小泉総理も、国債発行額三十兆円以下に苦労することはないのであります。
 企業がバランスシートを回復するために投資や給与を抑え、個人は将来不安から消費を抑え預金をふやす、税収の減った行政は歳出を減らす、それぞれが正しい選択を行っているにもかかわらず、それが相まってデフレスパイラルへと、奈落の道を用意しつつあるのであります。
 第一義的には、信用を創造し、資金供給を拡大できる国や日本銀行の責任が重大でありますが、東京都としても、都民の消費意欲を引き出し、社会全体に、余裕のある人は預金の一割を消費や投資に回そうという機運を広げるような積極的な取り組みを進めれば、今の閉塞状況は大きく変わることになるのであります。
 石原知事、あなたはこうした個人消費の拡大についてどのようにお考えか、所見を伺うものであります。
 さて、長期にわたる景気低迷と公共事業の大幅な削減のもとで、企業の受注をめぐる競争は、ますます厳しさを増しています。多くの中小企業が相次いで倒産、廃業に追い込まれているのであります。中には、プレハブと電話一本で受注し、実際の事業は上前をはねて他企業にゆだねる、そのような企業まで出る始末であります。
 中小企業の中には、当座の現金を確保するために、赤字覚悟で受注するという悪循環を積み重ね、倒産に追い込まれる企業もあります。公正な競争で敗北し、倒産するのならまだしも、不良企業の参入によって優良企業が倒産するという事態は、将来の東京を担う企業群を崩壊させることにつながるのであります。
 東京都は、現在、不正軽油撲滅作戦を実施中ですが、将来のために健全な企業群を維持するためにも、不良企業の排除にも積極的に取り組むべきと考えますが、安樂財務局長の所見を伺います。
 また、このほど、電子都庁推進の流れの中で東京都が発注した、文書総合管理システムの開発業務委託、これが想像を絶する安値で応札をされたことは、ご承知のとおりであります。しかし、公正取引委員会は、十一月二十二日、この委託事業を受注した事業者に対し、独占禁止法の規定に違反するおそれがあるとして、警告を行っています。
 公取委の警告を待つまでもなく、このたびの入札価格は異常であります。仮にこのような低価格入札が繰り返されれば、それは公正な市場競争を阻害するだけでなく、情報システム産業の健全な育成をもゆがめることにつながることは明らかであります。
 常識を超えた低価格入札は今に始まったことではなく、過去にも一円入札が問題になったことがありましたが、制度的な改善を不十分なままに過ごしてきたことが、今回の問題を招来した最大の原因であると断定せざるを得ません。
 このような低価格入札を防ぐ手だてを財務局長はどのように考えているのか、伺います。
 次に、ペイオフ解禁について伺います。
 日本銀行が十一月九日に発表した預金者別預金調査によりますと、国内銀行の預金総額は約四百八十兆円で、前年同月比で〇・九%増と、横ばいであります。しかし、来年四月のペイオフ解禁後、定期預金の一千万円を超える部分は保証の対象にならないことから、預け入れ金額一億円以上の層で一〇%の減少となっています。この数字は、明らかに預けがえが行われている証左であります。
 その反面、全額保護の措置が平成十五年三月まで続く決済性預金は、一千万円以上十億円未満の層で、実に二〇ないし三〇%もふえているのであります。入りと出で二十兆円にも達する東京都を初め、指定金融機関に多額の預金を集中している自治体でも、資金運用先を定期預金から国債、地方債に切りかえる動きが出てきているところは、ご承知のとおりであります。
 ペイオフ解禁は既定の方針ではありますが、ペイオフ実施がもたらす混乱を想定するならば、解禁までに、国においてペイオフに至らぬよう、金融機関に対する万全の対策をとらなければなりません。しかし、我が国の金融機関は、アメリカ大手格付機関のムーディーズが、ほとんどの大手銀行にE、わずか数行にDをつける、そのような惨たんたる状態が現実であります。
石原知事は、このような最悪の金融状況におけるペイオフ解禁についてどのようにお考えか、伺います。
 また、私は、ペイオフ解禁に備えた預けがえによって大きな影響を受ける信用組合、信用金庫の破綻と、それによる中小零細企業の連鎖破綻を危惧するものであります。都民生活を守る立場から、東京都としてはどのような具体的な対策をとられるのか、準備しているのか、浪越産業労働局長の所見を伺います。
 次に、観光振興策について伺います。
 このほど、千客万来の世界都市を目指して、東京都観光産業振興プランが策定されました。この振興プランでは、現状では年間約二百七十七万人とされている東京への外国人旅行者を、五年で倍増の六百万人にするとの目標が掲げられています。
 具体的な施策としては、情報の収集及び発信、シティーセールスの積極的な展開、コンベンション誘致活動の展開などを柱に、それぞれに目的達成に有効と思われる施策を提示していますが、私は、それらの施策が確実に展開されるかどうか、これが一番の問題だと思うのであります。それも、それぞれの施策が単独で進められるのではなく、有機的な連携のもとに展開されなければ、実効は期待できないと思うのであります。
 外国人旅行者の誘致競争のライバルと目すべきシンガポールや香港、台湾、韓国等の、国を挙げて取り組んでいる都市に互して千客万来を実現するのは、生半可なことではできないと私は思うのであります。それこそ、一局に匹敵するくらいのプロジェクトを立ち上げて、事業展開を図る必要があります。知事の決意のほどをお聞きいたします。
 いずれにしろ、今後、シティーセールスやコンベンション誘致に成果を求めようとするならば、私は、そのための前線基地は絶対必要だと考えています。事業としてスピーディーかつ効果的に取り組むためには、意を決して、ニューヨーク事務所、そしてヨーロッパ地域に対応できる事務所を、誘致競争に勝ち抜くための仕事をしっかりとする事務所として再開することを真剣に検討すべきだと思いますが、所見のほどを産業労働局長にお伺いをいたします。
 また、東京都の観光振興策を拡充する財源を確保するために、本定例会には、東京都宿泊税条例案が提案されています。知事も述べられましたように、本税は、免税点や負担額に十分配慮されており、過重な負担であるとは考えられません。しかし、観光振興に用いる財源が、その主要な部分をホテル等の宿泊者のみに課せられる点、また、宿泊税提案の発表から実際の条例提案までの期間が短く、本税の円滑な実施に欠かせないホテル、旅館業者の理解が十分得られていない点、これなどは、本税を都民に受け入れていただくためにも、十分に危惧される点であります。
 東京都は、これら関係者の理解を得るためにどのような対策を講じ、今後どのようにしようとされているのか、安間主税局長の所見を伺います。
 次に、雇用対策について伺います。
 十月の全国完全失業率が、過去最悪の五・四%を記録いたしました。東京都の七月から九月の失業率も、五・六%となっています。この間のIT不況が失業率の上昇を招いていると思われますが、米国の同時多発テロや狂牛病などによる影響、さらには、これから始まるであろう小泉内閣の不良債権処理による雇用への影響により、今後の失業率はさらに悪化するものと思われます。
 特に、これまで日本の技術力を支え、雇用の受け皿でもあったすぐれた製造業は、日本の三十分の一の賃金ともいわれる中国などに流れ、空洞化が急速に進展しています。しかし、アメリカなど他の先進諸国に比べ、資源、エネルギーの乏しい日本が世界で生き残っていくためには、日本の物づくりの技術、たくみのわざ、そして製造業を無視できるはずがありません。
 そこで、まず、日本が世界経済のために生き残っていくためには、どのような方向でかじをとるべきと考えているのか、石原知事の認識を伺うものであります。
 十二月一日に、私は都議会民主党の同志と一緒に、大田技術専門校の東京ものづくり名工塾を視察してまいりました。この名工塾は、製造業で失われつつある高度熟練技能を、都内の企業に勤務している若い技術者に継承してもらうという事業であり、私が視察したときは、金属工作機械加工、いわゆる汎用旋盤で高い技術を持っている熟練技能者が、若い、三十代前半の人たちを熱心に教え、若い人たちもそれにこたえ、技能の継承を目指して、熱心に学んでいたのであります。
 私は、こうした事業を他の専門校でも実施していくべきであると考えているのであります。今こそ、製造業における高度熟練技能の継承に積極的に東京都が取り組まなければ、東京都初め日本の製造業は危機的な状況に陥ってしまうのではないかと考えますが、産業労働局長の見解を伺うものであります。
 景気回復の兆しが一向に見られない中で、企業のリストラの対象となり、大きな打撃を受けているのは、私のような中高年者であります。
 中でも、中高年のホワイトカラーは、管理部門の外部委託などが進む中、厳しい就業環境に置かれているのであります。社会経済状況が変化する中で、企業にとっては変化に対応できる人材の確保が必要であり、そして個人にとっては、それに見合うだけの能力を身につける必要があります。中高年者の職業訓練は何よりも重要でありますが、私は、それに加えて、企業が欲している人材の能力や、個人が持っている能力をそれぞれが評価でき、雇用におけるミスマッチの解消につながる制度を構築していくべきが今ではないかと考えますが、局長の見解を伺います。
 構造改革が進む中で、中高年者を中心に増加する失業者の再就職を円滑に進めるためには、適性に見合った企業の開拓と、職業訓練の充実が中心となりますが、それだけではカバーできない人たちが、必ず出てまいります。しかも、第三次産業がIT革命による新たな形で失業者を受け入れることができるようになるまでには、まだ四、五年はかかると私は思われます。今、この空白期間の雇用をどうしてつくり出していくのかが問われていると思うのであります。
 和歌山県の木村知事と三重県の北川知事は、自然環境を回復、再生させるとともに、新たな雇用の受け皿を創出する緑の公共事業、仮称でありますが、この創設による地方版セーフティーネットの構築を提言しておりますが、私は、日本農業を回復、再生させる、農業のある公共事業を提案したいと思うのであります。
 政府の一律減反を初めとしたこれまでのノー政、いわゆる英語でいうノー――農政によって被害を受けた、耕作が放棄された農地が全国に点在しています。耕作放棄農地を持つ他府県との連携のもとで、農地の再生事業を一定期間支援する形で、雇用の受け皿をつくるべきであります。こうした他府県との連携による雇用対策についてはどのようにお考えか、産業労働局長の見解を伺います。
 さて、これからの雇用対策は、企業への就業を実現するだけのものとは限りません。収入のためだけではなく、自己実現のために働くという労働のあり方が、今後ますますふえていくと思われます。
 環境や福祉、まちづくりや国際協力などの幅広い分野において活動しているNPOやボランティア団体なども、これからの私たちの働く場として大いに期待できるものであり、また、NPO等が東京都との協働を図ることで、住民ニーズに即した、機動的できめの細やかなサービスを都民に対して提供していくことも期待できるのであります。
 このようなNPO等の活動をさらに活性化させていくためには、東京都の各事業におけるNPOとの協働を進めるとともに、NPOの収益事業に対する課税軽減策などの税制改正を国に対して積極的に働きかけていく必要があります。さらに、会計、税務、人事、労務などの運営基盤の脆弱であるNPO等の団体に対して、ノウハウを持つ企業人材を東京都がコーディネートしていくことも必要であると考えます。
 私は、これらの施策に積極的に取り組み、NPO等の活動がさらに活性化するよう、総合的に支援していくべきと考えますが、高橋生活文化局長の見解を問うものであります。
 次に、障害者福祉について伺います。
 石原知事は、所信表明の中で、福祉改革の次なる展開として、東京は、大規模施設への措置から、地域での自立と暮らしを支える福祉へと、施策の中心を転換すべき時期を迎えているとの認識を示し、その上で、特に今後は、高齢者向けのグループホームを重点的に増強したいと述べられました。私も、これからの福祉はまさに地域であると考えますが、高齢者に加えて、障害者についても重点的に取り組んでいきたいと思うのであります。
 平成十五年度に障害者の福祉サービスが措置から契約に移行するのを踏まえ、地域での自立と暮らしを支援していくためには、体験型生活寮モデル事業や、生活寮への支援体制の充実、あるいは障害者が地域での生活に移行できるように支援していくことが重要であると考えます。
 私は、障害者の地域での自立と暮らしへの支援に向け、生活寮の充実を初め、総合的な支援体制を構築していくべきと考えますが、前川福祉局長の見解を問います。
 次に、精神障害者施策について伺います。
 平成五年の障害者基本法制定により、精神障害者も身体や知的と同じ障害者として定義されました。また、平成七年の法改正により、精神障害者にも手帳制度が創設をされました。精神障害者と他の障害者との格差是正、すなわち授産施設などの施設職員の配置基準、そして民間バスの運賃の割引について、いつまでも国に要望するだけにとどまらず、東京都として、率先して格差是正、私からいえば差別是正を実施すべきと考えますが、今村衛生局長の見解を伺うものであります。
 また、精神障害者の保健福祉サービスは、平成十四年度から各市町村を中心に、本格的に取り組むことになっています。東京都は、これまで国に先駆けてホームヘルプサービスなどの在宅福祉施策に取り組んでまいりました。市町村がこれらのサービスを主体的に取り組むことができるよう、積極的に支援すべきであると考えますが、衛生局長の見解を伺います。
 精神障害者が、地域での自立と暮らしを支援していくためには、精神障害者地域生活支援センターの整備が急務であります。地域生活支援センターは、地域で生活する精神障害者の日常生活に関する相談、助言等を行い、地域交流活動の場として、今後の地域福祉ケアの中核としての役割を担っていくことが期待されています。
 平成十三年度は、二十二区市で整備すると聞いておりますが、精神障害者が地域で安心して暮らしていくためには、その整備を早急に図っていくことが必要ではないかと考えます。精神障害者地域生活支援センターの整備について、衛生局長の見解を伺います。
 精神障害者の社会復帰施設は、利便性の点から、地域の中に確保していく必要がありますが、いまだ十分な量が整備されていないだけでなく、地域的に偏在もしているのであります。また、単に量的な確保だけでなく、サービスの質の向上も確保する必要があります。さらに、精神障害者においては、社会復帰施設等に関する十分な情報が得られにくく、自己の意思決定が不得手であるため、必要なサービスを選定することは容易ではありません。
 十一月十六日に、精神障害者社会復帰施設のあり方検討委員会から、最終の取りまとめが出されました。私たち都議会民主党は、この報告書に沿って、施設の整備やサービスの向上などについて、着実に事業を展開すべきと考えるものであります。
 精神障害者が必要なサービスを利用したいときに利用できるようにするために、東京都の今後の取り組みについて、衛生局長の見解を伺います。
 次に、児童虐待について伺います。
 児童虐待防止法が施行されてちょうど一年が過ぎました。都民の児童虐待に対する関心も高まってきているところであります。児童虐待防止法は、虐待を受けている子どもの発見、保護の仕組みをつくりました。しかしながら、子どもの保護を行えばすべてが解決するわけではありません。とりわけ心身に傷を負った子どもたちのケアや、成長のためにどのような養護が大切かという課題については、まだまだ議論が十分尽くされていません。虐待に限らず、さまざまな事情により、家庭で生活することができず、社会的な養護が必要な子どもの数は増加傾向にあると思うのであります。
 東京都は、今日の社会的養護の状況をどのように認識し、どのような対応を行ってきているのか、福祉局長の見解を伺うものであります。
 子どもたちが大人との信頼関係を再び取り戻し、自分の人生を力強く進んでいくために必要なのは、愛情に満ちた家庭的環境であります。ところが、ほとんどの子どもは児童養護施設で集団生活を送っており、定員が百名を超える大規模なところも少なくないのであります。また、東京から遠く離れた施設に入所していることも多いようであります。東京都では、戦後一貫して施設中心の児童養護施策を展開しており、現在、養育家庭、すなわち里親に預けられている子どもは全体のわずか七%、約二百人にすぎません。ここまで児童養護施設委託の割合が高いのは、先進国では日本だけであるといわれています。
 十一月二十四日、福祉局子ども家庭部は、都庁で養育家庭シンポジウムを開催し、私も参加をいたしました。児童虐待の増加等を背景として、児童養護施策を、これまで続いてきた施設中心のものから、里親を活用することなどによる家庭的環境を重視したものに転換していくべきだと考えますが、福祉局長の見解を伺うものであります。
 次に、大学改革についてお尋ねをいたします。
 「21世紀を切り拓く都立の大学をめざして」との副題を付して、このたび策定された東京都大学改革大綱の中で、都立の大学が持つべき役割の大きな柱の一つに、東京の産業に貢献するべきことが掲げられています。私は、日本の産業が再び活力を取り戻すための欠かせない要件の一つに、大学がただ学問の府としてあるのではなく、産業界等の求める知識や技術の高度化に機動的に対応できるような存在になる、このことが大切であると考えています。その意味で、このたびの大綱で、大学院に情報技術、生命科学、ナノテクノロジーなどの最先端の科学技術を研究する学科を新設することを、率直に私は評価したいと思うのであります。
 その上でお伺いをするのでありますが、今後、産・学・公の連携強化を図る上からも、例えば二十一世紀の新産業の創出や事業を起こすための支援を積極的に行う大学としなければ、大学改革を行う意味は半減してしまうと私は心配するものでありますが、石原知事の所見を伺うものであります。
 大学改革問題に関連して、もう一点お伺いをいたします。
 私は、産・学・公連携を円滑に進めるために不可欠なものが、それにかかわる教員の意識改革だと考えてまいりました。日本の大学教員の間には、産業界との連携を是としない、いわゆる学尊民卑的な風潮がまだまだ強くあると私は思ってまいりました。この風潮を払拭できなければ、いかに大学改革を進めようとも、大学が社会の要請に的確に対応できるようになるとは決して思えません。例えば、特許の所有権の所在などであります。
 とかく閉鎖的、保守的といわれる大学教員の意識を開かれたものとし、産・学・公の連携の実を上げていくためにどのような方策が必要か、鎌形大学管理本部長の見解を伺うものであります。
 次に、東京の都市づくりビジョンについて伺います。
 十月十九日、東京都は、東京における今後の都市づくりのあり方を示す東京の新しい都市づくりビジョンを発表いたしました。都市づくりビジョンについては、これまでもPI的手法の導入やNPOとの連携、街区再編プログラムの導入、地区計画の策定などについて何度も触れてきていますので、端的に本日は二つの問題について伺いたいと思うのであります。
 一つは、PPP、すなわちパブリック・プライベート・パートナーシップによる都市づくりの推進であります。PPPは公共と民間とのパートナーシップを意味する言葉で、都市開発においては、公共と民間が双方の合意に基づいて、互いに賃金や労務、技術などの資源を提供して行う開発手法を意味し、中でも、非営利のまちづくり組織による環境改善の取り組みであるBID制度、ビジネス・インプルーブメント・ディストリクツを導入していくことは、地域の活性化を図る上でも有効なものであります。
 都心部の中では、清掃等の施設管理や子育て支援施設の管理運営などを通じて、コミュニティの維持、育成に努めている地域もあり、汐留地域では、地域のまちづくり協議会がBID制度を導入し、環境美化や治安維持などの公共サービスの提供に乗り出す旨も報じられてきているところであります。
 私も、地域のまちづくりの中で、このような非営利のまちづくり組織による取り組みを積極的に支援すべきと考えますが、東京都は日本版BIDのような新しいまちづくりについてどのように取り組もうとされているのか、木内都市計画局長に伺うものであります。
 このビジョンに基づいて、本当に実効のあるまちづくりを進めていくためには、街区再編プログラムや町並みデザイナー制度などの創設を図りながら、着実にこれを実施していく必要があります。例えば、地区計画策定の原則化を掲げてはいるものの、区市町村の協力なしには地区計画の策定はできないのであります。また、街区再編プログラムなどの新たな都市計画のルールを定めるに当たっては、ある程度、法的な後ろ盾があった方がまちづくりも着実に進むものであります。このような中で、都市づくりビジョンでは、多様な主体の参加による都市づくりを進めるため、都市づくり基本条例を制定していくとしています。
 そこで、東京都は都市づくり基本条例について、どのような内容で、いつまでに制定しようとしているのか、都市計画局長にこれまた伺うものであります。
 次に、環境政策について伺います。
 環境の世紀といわれる二十一世紀の環境行政は、単に公害発生源を規制する狭い環境行政から、都市づくりや産業など、あらゆる施策に環境的視点を盛り込んでいく広い環境行政に転換していくことが求められているのであります。
 先月三十日に東京都環境審議会が発表した答申は、私たち都議会民主党のこうした考えと全く方向を同じくするものであり、評価するものであります。
 しかし、答申の中では、かつて提案されたグリーントラスト基金のような施策も盛り込まれておらず、緑の保全策については具体的な施策が乏しいように思われます。そこで、私は市民緑地制度を参考に一つの提案をしたいと思うのであります。
 市民緑地制度は、地方公共団体や緑地管理機構が地権者と契約を結び、屋敷林や樹林地などを一般に公開していくという制度でありますけれども、建設局ではこの制度を活用し、都市計画公園区域内の未買収地を緑地として確保した事例もあります。今年八月の法改正により、NPOもこの制度に参加できるようになりました。このように、用地を取得しなくとも、NPOとの連携のもとで緑を保全する手法がある中で、予算がなくとも、知恵を絞れば東京の貴重な緑を残していくことも可能ではないのでしょうか。
 私たちは、このような制度を参考にしながら、都民やNPOとの協働のもと、東京の緑を積極的に保全していくべきと考えますが、赤星環境局長の見解を問うものであります。
 私たちは、この間、ヒートアイランド対策についても多くの提案を行ってまいりました。
 十一月二十六日に東京都知事本部から発表された行政評価結果でも、政策評価の一つとしてヒートアイランド対策を取り上げて、東京都のヒートアイランド対策の達成状況は最悪であり、抜本的な対策が急務であるとして、具体的な取り組みとして、人工排熱の抑制、地表面被覆の改良、風の道の積極的利用という三方向を示しているのであります。
 中でも、これまで我々都議会民主党が指摘してまいりました風の道、東京湾からの海風を都心部に導く海風や川沿いの風を都心部に効果的に導入することによって、東京を冷やす風の道を確保することは極めて重要であります。私は、風の道の確保に向けて、東京都としても積極的に、かつ具体的に取り組むべきと考えますが、環境局長の見解を問うものであります。
 また、都市の地表面を覆うコンクリートやアスファルトをはがしていくことも、ヒートアイランド対策の大きな柱であります。そのためには、道路や公園、駐車場、小中学校の校庭などを保水性や親水性の素材に変えていくことが必要であります。
 中でも、一般の都市開発とは違い、容積率のボーナスを受けることで、単位面積当たりの放熱量も高くなると思われる都市開発制度の中で、ヒートアイランド対策の視点を盛り込んでいくことが必要であります。例えば、総合設計や特定街区などの制度は、公開空地の提供が義務づけられていますけれども、提供される公開空地がコンクリートやアスファルトで覆われているのでは、せっかくのオープンスペースもその意義を半減してしまいます。
 これらの制度を活用して創出された公開空地については、保水性舗装や芝生を利用したものにするなど、ヒートアイランド対策の観点を取り入れていくべきと考えますが、都市計画局長の見解を問います。
 かつて臨海副都心開発の見直し議論の中で、お台場や有明地域に高層ビル群を建てることは、東京湾からの海風を遮断し、都心のヒートアイランド現象を加速させるという学者の指摘がありました。風の道の確保とともに、東京湾の海面を確保していくことは、都市のヒートアイランド現象を加速させないためにも重要な視点であります。
 例えば、東京都は既に東京湾の富栄養化防止対策で、千葉、神奈川の三都県で窒素、リンの上乗せ排出基準を条例化しており、臨海地域の総合的な土地利用についても、周辺自治体との連携による取り組みが進んでいます。私は、こうした東京湾にかかわる自治体間の連携は、水質改善や土地利用にとどまらず、東京湾に残された貴重な干潟の保全や生態系に配慮した水辺の創設、あるいは個別自治体だけの判断による埋立事業の抑制のために、条例化も視野に入れつつ、周辺自治体と連携しながら東京都は取り組んでいくべきだと考えますが、田原知事本部長の見解を問うものであります。(発言する者あり)承知です。
 さて、さきの知事の所信表明にもありましたように、近年、治安の悪化が進み、平均留置人数も過去十年間、毎年一〇・三%の率で伸びてきております。既に平成十一年には、適正留置人員である留置定員の八〇%を超えています。今後、年九%の伸びで推移するとすれば、平成二十年には、平均留置人数が、現在の留置定員二千六百三十九人を千九十八人も上回る三千七百三十七人に達すると予測されています。一方で、各種団体の示威行為が激減しており、昭和五十七年の申請件数二千百五十八件、申請人員二百八十八万余名に対して、平成十二年には九百六十七件、九十七万人余にまで減っています。
 こうした事態を踏まえ、警視庁内の人員配置を見直し、犯罪抑制に努める必要があると考えますが、野田警視総監の所見を伺います。
 また、石原知事の、日本社会事業大学跡地での六百人留置場構想は、現下の悪化する治安状況を訴えるためには実に衝撃的であり、効果のあるものであります。しかし、留置場の一極集中は捜査効率を大きく落とすこととなり、原宿周辺を護送車の大渋滞に巻き込むものであります。護送車を集中させないとすれば、冤罪の温床として国内外から厳しい批判を浴びている代用監獄として使用することになります。
 私は、事態の緊急性にかんがみ、警視庁各方面本部の犯罪発生状況を踏まえた計画的な留置場の分散と増配置が必要と考えますが、警視総監の見解を伺うものであります。
 以上で、都議会民主党を代表しての私の質問を終わりますが、石原都知事、野田警視総監並びに関係局長の誠意ある答弁をお願いして終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 和田宗春議員の代表質問にお答えいたします。
 現下の経済状況についてでありますが、企業の業績や失業率の悪化、さらに、テロの影響などによるかねてからの懸念が現実の姿になりまして、日本の景気は一段と冷え込んできている気がいたします。政府も景気の悪化を認めてはおりますが、国民の感覚は、どうも政府の認識よりももっと厳しいように思います。
 このような状況の中、構造改革と景気浮揚は二律背反であるとして、構造改革を先送りしようとする考えもありますが、この二つは、決して同時に達成できないものではないと私は思います。
 いずれにしろ、特殊法人というのは、いってみれば国営企業でありまして、こういったものは社会主義国家の通弊でありましたが、隣の中国でも、ソビエト、ロシアでも、とっくにそのような非に懲りて解消しつつあるものが、どうもこの日本では、実質的に国営企業としてのうのうと数多く残っているというのは、当然改革されるべき一つのあしき構造でありますけれども、それを変えることで、費用対効果の観点から、既存の公共事業を抜本的に見直すことも大事だと思います。しかし、景気の浮揚策というものを、これを並行して行うことが不可能であるという認識は、私はやはりとるべきでない。やろうと思ったら、二つ同時にできると思うんです。
 かねてから私いっておりましたが、国債の発行をある限度に抑えろ、抑えろというのも確かに正当な論かもしれませんけれども、しかし、日本は外国から金を借りた経験がございません。外国に金は貸していても、借りているわけではありませんので、私はこの際、かねてからいっていることですけれども、新しいファンドをつくって、外国から金を引いてきて、それを積極的に使う。
 しからば、外国から引いてくる金の担保は何にするかといえば、日本が膨大な量を買わされて持っているアメリカの国債でありまして、政府だけでも三十二兆、民間の保有量を合わせれば三百兆のアメリカ国債を抱えている。皮肉なことに、かつては余り価値がなかったようですが、最近、アメリカの国債の相対的な値打ちというのは出てきまして、私はこれをもって担保とすれば、十分潤沢なファンドが、外国の金を引くことでも形成できると思います。
 ただ、それを何に向かって積極的に使うかという案があるようでありますが、これをここで一々、国政の問題ですから詳しく申しませんが、私もその論文を書いて発表したことがありますけれども、いずれにしろ、やはり新しい発想で、持っている力を有効に使う。アメリカの国債を膨大に保有していることも、また日本の一つの力でありまして、それを活用することで、私は新しいお金の使い方で、すべき事業を展開し、新しい雇用も起こして、また先ほど申しましたように、アメリカのヘッジファンドが日本でいろいろなものを買いあさっているというのは、実は、やがては日本の経済は再生していくであろう、そのときに、つまり買いたたいたものを高く売って売り逃げしようという魂胆であります。彼らが日本の経済というものの将来性を信じていないなら、そういう膨大な金をつぎ込んで買い物するわけもないわけでありまして、そういうところの分析というのは、いささか私は足りないと思いますし、親しい大蔵省の連中のOBなんかと会って話しましても、どうもそういう習慣というものを私たちは失ってしまった、主に戦後培われた経済的な日本人のDNAで、お金の思い切った使い方ができなくなったということは慨嘆として聞かされましたが、しかし、大事なことは、現役の政治家なり現役の国の官僚が、こういった発想で事を果敢に行うことだと私は思います。
 次いで、重要施策の選定についてでありますが、幾ら重要でも、ない袖は振れないわけでありまして、限りのある中で何をもって重要とし、つまり、何に優先順位をかぶせて東京の活力を回復し、都民の生活不安を解消していくかということであります。
 厳しい財政下、いろいろ工夫をしておりますが、その一つが、今回実施いたしました重要施策の選定であります。これは、都民のために今何が必要かの観点から事業を立案し、それを予算編成に先立って十分検討した上でプライオリティーをつけた後に、優先的に予算、人員を配置する、措置するということでございます。選考過程では、実に庁内でも活発な議論が行われました。また、選定した事業の中には、各局が創意工夫を凝らしたものも見られまして、庁内の積極的な取り組みを引き出すことができたと思っております。
 次いで、来年度の予算編成についてでありますが、国内の景気は悪化を続けておりまして、都税の収入は大幅な減少が避けられない状況に立ち至っております。十四年度予算の編成に当たっては、あくまでも入るをはかって出るを制すという考えを基本に、これまで以上に厳しく歳出額の抑制を図り、財政再建の取り組みを一層進めていきたいと思っております。しかし、角を矯めて牛を殺しても仕方ありません。
 しかし、こういう状況の中にあっても、ご指摘のように事業の費用対効果を十分に考量するなど、さまざまな工夫を凝らしながら、都民の期待にこたえ、首都圏の再生と環境の改善、雇用危機の突破など、都民生活の不安解消のための優先課題に財源を重点的に振り向けて、めり張りのついた効果的な予算を編成していきたいと思っております。
 次いで、個人消費の拡大についてでありますが、GDPの六割を占める個人消費につきましては、この先大きく落ち込む懸念が強まっておりまして、景気の回復にとって個人消費の拡大が重要な課題となっております。個人消費を拡大するには、雇用、所得、年金、社会保障など、国民が感じている将来の不安を払拭することがまず必要でありまして、そのためには、政府は構造改革や景気対策に取り組むべきだと思っております。
 先般、ある席で、イトーヨーカ堂の鈴木社長と隣り合って座りました。そのときに、イトーさんが、こういうと口幅ったいようですが、今、非常に強い不況感覚を持っているのは銀行と不動産の方々で、私たちはそういう実感を余り持ってないというと僭越かもしれませんが、そういうものをそれほど強く深刻に感じていません、その一つの証左は、新しい、いい商品をつくったら必ず売れますということをいっておりました。これは非常に大事なことでありまして、一方では、消費者も非常に合理的になってきましたから、非常に高いカスタムメードの洋服を着ながら、家庭ではユニクロの一点千円、二千円のものを着るという、そういう消費習慣というのは身についてきたと思います。
 いずれにしろ、経済が小さく萎縮することなく、よい方向に歯車が回転することが必要でありまして、国に対しても、今後とも積極的な対策を強く要望していきたいと思っておりますが、私、議員のときからもかねていってきたことでありますけれども、今、国民のほとんどにとって一番あこがれ、一番願望の強い、新規に購入したい商品は、やはり住宅であります。この住宅の建設と思い切ったリニューアルを、いっそ無税にしたらどうかと私はかねがねいってまいりました。そこから上がる税収は知れたものでありまして、もしそれを税的に強い優遇措置を設けますと、家を一軒建てるなり、建てるに等しいリニューアルをしたときに、そこに配備するいろいろな大きい、大小家具がありますが、こういったもののアイテム数は非常に多くて、非常に経済効果があると思うんですけれども、なぜか、かつての大蔵省はリラクタントでありまして、いずれにしろ、かなり思い切った措置というものを講じませんと、どうも消費者の感覚に国の行政がおくれているようで、消費者マインドというものが刺激されないというのが現況だと私は思います。
 次いで、ペイオフ解禁についてでありますが、これは国民がある意味で、銀行というものがそういうことになり得るのかと、かたずをのんで今解禁を待ち受けているというか、備えていると思うんです。
 ペイオフの解禁は、小泉行革の一つでもありまして、先般青木建設が完全に倒産したときに、小泉首相は、構造改革が進んでいる一つの証左だといいましたが、これは聞き方によったら非常に冷淡な物のいい方で、もうちょっといい方があったんじゃないかなという気がしないでもありませんが、いずれにしろ大事なことは、東京都は非常に短いタイムスパンでありましても、都民の税金を含めてかなり大金を銀行に預けておりますし、預金もしております。そういったものが危機にさらされたら、えらいことになりますから、さきに出納長とも相談しまして、そういったときの準備といいましょうか、都側の体制というものを整えようということで、今、出納長で非常に思い切った出納事務の業務の大改革を考えておりますし、恐らく今までなかったような改革を行うと思いますが、いずれにしろ、都もまた、国民、都民と同じように、この問題について慎重に対処していかなくてはならないと思っております。
 次いで、観光産業活性化の取り組みについてでありますが、東京都が標榜しておりますように、何年かかけて、現在の日本にやってくる外国人の数が倍近く、仮に六百万人になったときに、これは試算でありますけれども、産業誘発効果は五千七百億円ぐらい、それから雇用誘発効果は三万七千人という見込みが立ちます。
 いずれにしろ、繰り返して申しますけれども、観光は決して文化事業ではなくて、むしろ非常に有力な産業でありまして、私たち、そういう認識を、今この時点で、いささか遅きに失しましたが、持ち直す必要があると思っております。そして、その認識の上に組織を産業労働局にも移管いたしましたし、さまざまな政策を講じて、とにかく国際的な観光における日本の収支バランスというのは甚だ出超がかさんでいて、乱暴ないい方をしますと三兆五千億円の赤字になっているわけでありますから、これを少しでも取り戻す手だてを講じないわけにいかないと思っております。
 そういうことで、そのための一つの施策としても、ホテルや宿泊業のためにも、お客を呼んでくる手だてとして少し身銭を切ってもらうといいましょうか、宿泊税というものを考えましたが、これはもうたかだか知れているものでありますけれども、しかしなお、それを有効に使えば大きな効果が必ずあると思っております。
 次いで、今後の経済のかじ取りについてでありますが、さきの答弁と重複するところもあると思いますけれども、いずれにしろ日本が国際競争力を維持していくためには、我々が日本という国家社会として持っている力を正しく認識して、もちろん過剰な自負は禁物でありますけれども、冷静な自己認識の上に有効な戦略戦術というものを構築していく必要があります。例えば、日本の持っている力とすれば、世界じゅうにフローしているお金の三分の一は日本人が持っているものでありまして、国家は貧乏していますけれども、日本人は潤沢な金融資本を持っている、あるいは技術を持っている。そして、またその技術を駆使していい製品をつくっていくという、そういう努力というものを日本はまだまだ持っております。
 アメリカは、それを放てきして、それを上回る金融戦略で、日本のもうけた金をアメリカのために使おうという戦略に日本は簡単にやられているわけでありますが、いずれにしろ、先般も総理と会ったときに、私は、もし世界の経済がクラッシュしてしまったときに、真っ先に立ち上がっていく国はどこだと思う、これは、まさしく日本だぞと申しましたら、総理も、いや、実はこの間会ったEUの委員長、同じことをいっていたというんで、そういう認識でやってくださいということを申しました。
 かつてピーター・ドラッガーも、いかなるすぐれた技術を開発しても、それが製品にならなければ、その進んだ技術も石ころと同じだといって、彼はアメリカの経済というのを見放しましたが、日本はそれに比べてさまざまな、アメリカやあるいは中国は、その戦略のために――まさに垂唾な技術を民間資本として持っている、そういった日本の持っている力といいますか、カードというものを私たちは認識して、つまりアメリカとのつき合い、中国とのつき合いをしたらいいんじゃないかと思うんです。それがまた、日本の経済を進展させる一つの有力なよすがになると私は思います。
 いずれにしろ、日本には国民にとっての巨額な金融資産があるわけでありまして、それが結果としてほとんど利子を得ることもなく眠っているということが大きな問題だと思います。いずれにしろ、そういった日本人が持っている金融資産の有効な使用というものも含めて、私は決して日本人がこの日本に見限りをつける必要はないと思う。
 先ほど申しましたけど、サーベイランスであるとかリップルウッドとかいうヘッジファンドが日本に来て、日本のものをたたいて買いあさっているということの一つの証左は、つまりそれを買っておいて高く売ろうということで、そのときには日本の経済が復活してくるという、その見込みの上に彼らのそういう経済活動があるわけでありまして、私はそれをもって日本人がただ自信を持つというのは安易な姿勢でしかないと思いますが、しかしやはり、彼らの実態が何であるかということを私たちは承知した上で、日本の将来を、経済の将来を考える必要があると思います。
 次いで、新産業創出などへの大学の支援についてでありますが、産学共同というのは、かつて社会党などは非常に忌み嫌って、それが何か、要するに日本の軍国主義につながるような、非常にこっけいな非難をよくしておりました。いずれにしろ、米国などでは八〇年代以降、政府の積極的な政策転換によって大学などの研究成果を活用した企業化が飛躍的に進み、新産業創出の原動力となってまいりました。
 それに比べて、我が国では政府の取り組みがおくれておりまして、また大学も産業界との結びつきが薄く、企業ニーズに合った研究にも取り組む姿勢が欠けておりました。
 例えば、私、都立大学でしたか、技術大学でしたか、行きまして、そこで、雨が少なくてもとにかく十分に育つ、そういう植物の研究をして成功しておりまして、遺伝子組みかえで。そんなもの育てたってしようがないじゃないかと。やるなら君、芝生を育てろと。芝生だったら、みんな争ってゴルフ場も買うぞと。みんなでスプリンクラーで水まくのに苦労しているんで、少し製品について考えなさいといったら、なるほどなということで、そういうサジェスチョンが、要するに学者には出てこないけど、もし企業なら企業がそれに着目すれば、商品としてのユーティリティーを、市場というものを考えて非常にいい啓示、暗示を与えると思うんです。
 いずれにしろ、そこで新しい都立の大学は、東京の産業の発展への積極的な貢献を大きな目的の一つに掲げております。
 大学ではございませんけど、東京がやっているエコロジーの研究機関もありまして、この間、衛生局の所管でありますけど、それを企業に開放して、エコロジーはこれから新しい産業の一つになりますから、そういう意味でその研究所と企業との合体も推進しようということで、情報の公開というものを積極的に手がけております。
 今後は、大学の創造的な研究と企業の技術力が着実に結合しまして、新産業の創出に結びつくような仕組みづくりを新しい大学においても早急に構築していきたいと思っております。
 なお、その他の質問については警視総監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監野田健君登壇〕

○警視総監(野田健君) 初めに、警視庁内の人員配置の見直しについてお答えいたします。
 警視庁職員の人員配置については、犯罪の凶悪化、国際化、巧妙化や組織化、スピード化、そしてハイテク化が一段と進展しつつある情勢に対処するため、これまでも各所属について合理的に見直しを推進してきたところであります。
 本年は、管理部門、デスク部門、そして機動隊の定員を削減して、殺人、強盗などの重要犯罪や都民の身近な要望に的確に対応するため、本部の刑事、生活安全等の実働部門や第一線警察署に人員を配置し直しました。
 さらに、交通の安全、円滑を確保するため、交通機動隊を従来の六個隊から方面単位の十個隊に増設し、また、組織犯罪の防圧検挙の徹底を図るため、組織犯罪対策本部を設置するなど体制を強化したところであります。加えて、機動隊の多角的運用にも努め、機動隊員をひったくり等の捜査やピッキング対策などにも従事させ、成果を上げているところであります。
 このような状況の中で、米国で発生した同時多発テロ事件に伴う各種警備対策、さらには来年開催予定のワールドカップサッカー大会等の重要な警備事象が依然として山積しております。警視庁では、今後も徹底した合理化を進めながら、適正な人員配置に努め、首都東京の治安の万全と都民生活の安全の確保を図ってまいります。
 次に、計画的な留置場の分散配置についてであります。
 警察署等の留置場における留置人員は、毎年著しい増加を続けております。平成十二年の延べ留置人員は八十六万人を超え、平成二年に比べ二・六倍に達しております。
 警視庁では、平成十一年から各方面の留置施設の増設を計画し、移転、改築した警察署の旧警察署庁舎の暫定運用、あるいは警察署庁舎改築時における拡張等の諸対策を講じております。例えば、来年二月完成予定の大森警察署の留置定員は、従来の十九人を三十二人とする予定であります。
 来年度は、第八方面の多摩総合庁舎内に新たな留置施設の設置、第七方面の城東警察署の留置施設の拡張工事を計画しており、その推進に努めているところであります。
 なお、第一方面、第三方面及び第四方面の各警察署から近い社会事業大学跡地に取調室を併設した留置施設が設置されれば、日々の取り調べのために常時三名の警察官で行っております自署へ護送する業務が必要でなくなりますことから、この施設を利用する警察署等は効率的な業務運営ができることになります。
 また、六百人規模の留置施設に必要な護送車は、一日に大型車両で平均的には二台であり、これが朝夕二回の出入りでありますので、護送車による交通渋滞はないものと考えております。
   〔財務局長安樂進君登壇〕

○財務局長(安樂進君) 初めに、不良企業の排除についてのお尋ねでございますが、東京都は本年四月に施行されました公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律に基づきまして、いわゆるペーパーカンパニーなどの不良業者を排除するため、この八月に工事施行適正化推進要領を定めまして、都が発注する工事について、工事現場の施工体制のチェックと一括下請の排除を徹底して行うことといたしました。
 具体的には、工事現場に配置される技術を統括する責任者が落札業者に雇用された者であるかどうか、さらには工事現場に常駐しているかどうかなどを調べることによりまして、一括下請がされていないかどうかをチェックし、万一、一括下請の事実が判明したときは、これを排除することといたしております。この方式は八月から実施したばかりですが、今後、チェック体制を強化し、不良業者の排除を徹底していきたいと考えております。
 次に、低価格入札の防止策についてでありますが、地方公共団体の契約は、最も安い金額で申し込みをした者を落札者とするのが原則でありますが、久しい以前から一円入札のような極端に安い金額で落札することの弊害が指摘されてきております。
 現在、工事や製造の請負契約では最低価格を定めることが法律により認められておりますが、今回のようなシステム開発の委託契約などでは、最低価格を設定することが法律上できないこととなっております。しかし、現在のような低価格入札が頻発している状況を放置しておくことは、公正な市場競争を阻害し、好ましいことではありませんので、何らかの方策を講じていく必要があると考えております。
 そこで、現在、国が行っているような、低価格の入札があった場合に、その価格で適正な履行ができるかどうかを調査し、その上で落札者を決定する低入札価格調査制度、これを地方公共団体でも行えるよう国へ法律改正を要請しておりますが、改正が実現するまでの間は、価格だけで落札者を決めるのではなく、内容もあわせて評価する、いわゆる総合評価方式、これを可能な限り導入して低価格入札を排除していきたいというふうに考えております。
   〔産業労働局長浪越勝海君登壇〕

○産業労働局長(浪越勝海君) 五点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、中小企業の連鎖破綻の対策についてでありますが、中小企業にとって、取引先金融機関が破綻した場合の影響は多大であると認識しております。
 このため、都ではこれまでも、制度融資において、破綻金融機関と取引があった中小企業に対する融資を実施するとともに、特別相談窓口の設置や、破綻金融機関の利用者に対する融資制度の案内等の対策を講じてきたところでございます。
 さらに、金融機関の破綻から事業活動に影響を受けている中小企業者の負担軽減を図るため、明十二日から当該融資の金利引き下げを行うなど、今後とも的確な対応を図ってまいります。
 次に、海外でのシティーセールスやコンベンションの誘致活動についてでありますが、外国人旅行者を五年で二百七十七万人から六百万人にふやすという観光産業振興プランの目標を達成するためには、海外でのシティーセールスやコンベンションの誘致活動は重要なことであります。
 このため、固定的な事務所の設置も一つの手法ではありますが、内外の関係機関や民間事業者との連携、必要に応じた職員の派遣などさまざまな手法を活用して、より多面的かつ機動的なシティーセールスを展開してまいります。
 次に、製造業における高度熟練技能の継承についてでありますが、我が国の物づくり現場において高度な熟練技能が失われつつあることについて危惧しております。このため、これまで優秀技能者の表彰、技能継承推進者の認定など、技能の継承への取り組みを行ってきたところです。
 また、お話のように、この八月には東京ものづくり名工塾大田を開設したところであります。今後、この名工塾を他の技術専門校にも拡大していくなど、さまざまな事業を通じて積極的に高度熟練技能の継承を図ってまいります。
 次に、雇用におけるミスマッチの解消のための制度の構築についてでありますが、ご指摘のように、雇用のミスマッチを解消していく手段として、中高年のホワイトカラーが有する能力が適正かつ客観的に評価され、労働市場の中で活用されることは重要な課題であると認識しております。
 こうした手法の開発は、相当困難なものも伴うと考えられますが、都としては今後、民間と協働して労働市場に受け入れられるような制度づくりに向けて多角的な検討を行ってまいります。
 最後に、耕作放棄農地を持つ他府県との連携による雇用対策についてでありますが、現在、国の助成事業として耕作放棄農地の解消を進めるために、農地の流動化対策や中山間地域等直接支払い制度などが実施されております。
 また、失業者等が他府県の耕作放棄農地などに就農を希望する場合、国が広域的な観点から、その研修、養成、資金支援、情報提供などを行う事業を制度化して実施しております。こうしたことから、都としてもこれらの制度の活用を図っていきたいと考えます。
   〔主税局長安間謙臣君登壇〕

○主税局長(安間謙臣君) 宿泊税についてのご質問にお答えいたします。
 これまで、ホテル、旅館など関係業界に対して、観光振興目的税としての税の趣旨等について説明を行い、その協力を要請してきておりまして、おおむね理解を得られたものと考えております。
 宿泊税の円滑な実施には、納税者となる宿泊者はもとより、関係業界の理解と協力がぜひとも必要であり、引き続き関係業界への働きかけを行うとともに、旅行業界などのご協力を得て、納税者の理解を得られるよう努力してまいります。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) NPO等の活動への総合的な支援についてでありますが、福祉や環境、まちづくりなど幅広い分野におけるNPOの活動は、高齢者や女性などの社会参加を促すだけでなく、生きがいの場の提供や雇用の確保という面からも、その役割が期待されております。
 都は、NPO等との協働の推進指針を策定いたしまして、都の方針とそのあり方を内外に示すとともに、協働の視点からの全庁的な事業の見直しを行って、NPOの活動の場を拡大する契機としたいと考えております。
 また、これまでもNPOに対して各種の情報提供、相談、交流の場の提供など幅広い支援を行ってまいりましたが、今後、さらにマネジメント能力の向上のためのセミナーの開催や、会計、税務などの実務的な知識を持った人材の紹介など、NPO活動の活性化を都の重要施策として位置づけ、支援を進めてまいります。
 あわせて、今後も公益性の高いNPO法人に対する税制優遇措置を国にも要求するなど、都としても努力してまいりたいと考えております。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) 福祉行政に関しまして、三点のご質問にお答えいたします。
 まず、障害者の自立に向けた支援体制の構築についてでありますが、都は、福祉改革の取り組みを新たな段階に進め、障害を持つ方々を含め、だれもが地域で自立した生活を送ることができるよう支援する、新しい福祉の実現を目指しております。そのためには、障害者施策におきましても、施設と在宅の中間の生活の場である生活寮などの大幅な増設を図るとともに、施設や親元で生活している障害者が生活寮などで自立して生活を送れるようにするための訓練事業などを充実することが重要となります。
 こうした観点に立ちまして、今後とも区市町村と連携しながら、障害者の自立した地域生活を支える仕組みづくりに積極的に取り組んでまいります。
 次に、子どもの社会的養護の状況についてでございますが、社会的な養護を必要とする子どもの数は現在約三千人であり、急速な少子化の進展にもかかわらず、過去十年間、ほぼ横ばいで推移いたしております。
 その理由を見ますと、親の死亡や家出による養護需要は著しく減少している反面、虐待や親の疾病による養護需要が大きく増加いたしております。これは、一方では核家族化の進展、地域社会の変容、家庭の孤立化、他方では子どもの健全育成の重要性に対する認識の高まりなどが背景となって、これまで表面化しなかった養護需要が顕在化したものと考えられます。
 こうした養護需要の内容の変化に伴い、子どもの処遇についても、これまで以上にきめ細かな対応が求められており、社会的な養護のあり方は大きな転換を迫られていると考えております。
 最後に、児童養護施策の転換についてでありますが、本来、すべての子どもが家庭で愛情に包まれながら成長することが望ましいのは論をまたないところであります。社会的養護を必要とする子どもにおいても同様であり、特にきめ細かなケアを必要とする被虐待児などの場合には、家庭的な養護の必要性は極めて高いと考えております。
 しかしながら、現状を見ますと、お話のとおり、社会的養護を必要とする子どものほとんどが集団生活を基本とする施設で暮らしているのが実態でございます。こうした状況を転換し、家庭的養護の比重を大きく高めることは福祉改革の重要な課題の一つであり、今後、里親やグループホームの拡大に向け積極的に取り組んでいく考えでございます。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 精神障害者施策について四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、精神障害者と他の障害者との格差是正についてでありますが、都としては、昨年十月に精神障害者都営交通乗車証発行事業を開始するなど、他の障害者との格差是正のため、精神障害者福祉施策の充実を図るとともに、東京構想二〇〇〇の推進プランにおいても、社会復帰施設等の整備計画を策定し、現在、その着実な実施に努めているところであります。
 今後とも、精神障害者の自立と社会参加の促進を基本に、疾病と障害をあわせ持つ精神障害者の特性を踏まえた福祉施策の充実に努めてまいります。
 次に、在宅福祉サービスを市町村が取り組む上での支援についてでございますが、より身近な自治体である市町村がきめ細やかな福祉サービスを提供できるよう、その体制を整備することが求められております。
 このため都としては、市町村との役割分担のもと、市町村の人材養成に対する技術的援助や専門性向上のための研修の実施、さらに市町村間の広域的調整など積極的な支援に努めてまいります。
 次に、地域生活支援センターの整備についてでありますが、平成十二年十一月に報告された精神障害者社会復帰施設あり方検討会の中間のまとめでは、今後の整備の方向性として、すべての区市町村に設置すること、また、人口三十万人を超える区市には複数設置が望ましいとの提言がなされております。
 この提言を踏まえ、都では、さきの推進プランにおいて三年間で新たに三十三カ所整備する計画を策定し、現在、その着実な実施に努めているところであります。
 今後は、区市町村と連携のもと、医療法人やNPOなど民間事業者の参画もいただきながら、整備促進に努めてまいります。
 終わりに、精神障害者が必要なサービスを利用できるようにするための都の取り組みについてでございますが、サービスの利用に当たっては、精神障害者が自分の生活ニーズに合ったサービスを選択できることが重要と考えております。このため、施設などの情報公開、苦情対応の仕組みづくりや精神障害者社会復帰施設の特性に応じたサービス評価基準の策定など、利用者本位の視点に立った精神障害者福祉施策の充実に努めてまいります。
   〔大学管理本部長鎌形満征君登壇〕

○大学管理本部長(鎌形満征君) 産・学・公連携を推進するに当たっての大学教員の意識改革についてのお尋ねでございますが、これまでの大学における教員の評価は、とかく研究論文が中心で、特許の取得や産業界のニーズにこたえる研究には余り高い評価が与えられてきませんでした。これも教員が産・学・公連携に消極的であった大きな理由の一つと考えております。
 そこで、新しい大学におきましては、都立の大学にふさわしい形での大学法人化を実現し、人事・給与制度の弾力化を行う中で、特許や企業との共同研究などによる外部資金の取得などにも教員の業績として適切に評価する仕組みを導入するなどして、教員の意識改革を図ってまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、まちづくりの進め方についてでございます。今後の都市づくりは、ひとり行政のみならず、都民、事業者、NPOなど多様な主体の積極的な参画が求められております。
 ご指摘の、いわゆる日本版BIDは、道路、公園の維持管理を含めた環境美化やイベントの開催といった地域の活性化を図る事業などを、みずからの知恵を生かして主体的に進めていくものであり、魅力的な地域づくりの実現に有効であると認識しております。
 今後は、こうしたまちづくりの新たな進め方について検討を行い、民間のノウハウや意欲を活用したまちづくりを積極的に促進してまいります。
 次に、都市づくりに関する条例についてでございます。都市づくりビジョンでは、多様な主体の参画による魅力ある都市づくりを進めていくために、都市づくり基本条例、仮称でございますけれども、これを制定することとしております。
 その中では、例えば細街路のつけかえや敷地の統合などの街区再編を進めるために必要となる制度のほか、NPOの登録制度などを検討しているところでございまして、準備が整った段階で速やかに条例化することを目指してまいります。
 次に、ヒートアイランド対策についてでございます。都市づくりにおいては、ヒートアイランド対策を含め、環境との共生を図りながら持続的発展を目指すことが重要でございます。このため、これまでも特定街区などの都市開発諸制度の運用に当たりまして、公開空地を緑化する場合には容積率の割り増しを大きくするなど積極的な対応を図ってきました。
 さらには、本年四月には、屋上の緑化についても容積率割り増しの対象に加えたところでございまして、今後ともヒートアイランド対策の観点も取り入れて都市計画諸制度の適切な運用を図ってまいります。
   〔環境局長赤星經昭君登壇〕

○環境局長(赤星經昭君) 環境行政についての二点の質問にお答えいたします。
 まず、緑の保全についてでございますが、東京都は、現在、保全地域の対象となります里山や森林について、都民やNPO、地元自治体などと保全のあり方の検討を進めております。ご指摘の市民緑地制度は、緑を保全するためには有効な一つの手法と考えます。今後の検討に当たりましては、こうした制度を含め、多様な手法を活用し、貴重な緑の保全を図ってまいります。
 次に、風の道の確保についてでございますが、先日の東京都環境審議会の答申にもございますように、ヒートアイランド現象を緩和するためには、緑化の推進や人工排熱の抑制に加え、海風や川沿いの風を生かし、都市を冷やしていくことも有効と考えられます。風の道によるこうした自然の冷却機能を活用するためには、建物の配置や高さ、形状を工夫するなど、大気の流れを考慮した都市づくりを進める必要がございます。このような観点から、まず、都市内の局地的な気候を明らかにするモニタリングを実施するなど、風の道の活用に向けた検討を積極的に進めてまいります。
   〔知事本部長事務代理次長三宅広人君登壇〕

○知事本部長事務代理次長(三宅広人君) 東京湾にかかわる自治体間の連携についてのご質問にお答えいたします。
 東京湾は、首都圏共通の海であるという認識のもとに、さまざまな広域的課題について、国や関係自治体との連携、協調に基づき、共同して取り組んでいくことが重要なことと認識しております。東京湾を取り巻く課題に総合的に取り組んでいくためには、関係する法令や省庁が非常に多いこと、あるいは、都県市の役割分担など解決すべき問題点が多岐にわたっており、今後、関係者間で十分に議論し、調査検討を重ねていくことが必要であると考えております。

ページ先頭に戻る