平成十三年東京都議会会議録第十五号

平成十三年十二月四日(火曜日)
 出席議員(百二十六名)
一番谷村 孝彦君
二番東村 邦浩君
三番中屋 文孝君
四番矢島 千秋君
五番高橋かずみ君
六番山加 朱美君
七番柿沢 未途君
八番後藤 雄一君
九番福士 敬子君
十番伊沢けい子君
十一番大西由紀子君
十二番青木 英二君
十三番初鹿 明博君
十四番山下 太郎君
十五番河野百合恵君
十六番長橋 桂一君
十七番小磯 善彦君
十八番野上じゅん子君
十九番ともとし春久君
二十番萩生田光一君
二十一番串田 克巳君
二十二番小美濃安弘君
二十三番吉原  修君
二十四番山田 忠昭君
二十五番林田  武君
二十六番野島 善司君
二十七番真鍋よしゆき君
二十八番中西 一善君
二十九番山口 文江君
三十番真木  茂君
三十一番花輪ともふみ君
三十二番酒井 大史君
三十三番清水ひで子君
三十四番かち佳代子君
三十五番小松 恭子君
三十六番織田 拓郎君
三十七番藤井  一君
三十八番東野 秀平君
三十九番中嶋 義雄君
四十番松原 忠義君
四十一番田代ひろし君
四十二番三宅 茂樹君
四十三番川井しげお君
四十四番いなば真一君
四十五番近藤やよい君
四十六番高島なおき君
四十七番鈴木 一光君
四十八番吉野 利明君
四十九番小礒  明君
五十番新井美沙子君
五十一番相川  博君
五十二番樋口ゆうこ君
五十三番富田 俊正君
五十四番福島 寿一君
五十五番大塚 隆朗君
五十六番古館 和憲君
五十七番松村 友昭君
五十八番丸茂 勇夫君
五十九番鈴木貫太郎君
六十番森田 安孝君
六十一番曽雌 久義君
六十二番石川 芳昭君
六十三番土持 正豊君
六十四番倉林 辰雄君
六十五番遠藤  衛君
六十六番秋田 一郎君
六十七番服部ゆくお君
六十八番臼井  孝君
六十九番北城 貞治君
七十番野田 和男君
七十一番三原 將嗣君
七十二番大西 英男君
七十三番宮崎  章君
七十四番執印真智子君
七十五番馬場 裕子君
七十七番土屋たかゆき君
七十八番河西のぶみ君
七十九番中村 明彦君
八十番大山とも子君
八十一番吉田 信夫君
八十二番曽根はじめ君
八十三番橋本辰二郎君
八十四番大木田 守君
八十五番前島信次郎君
八十六番桜井良之助君
八十七番新藤 義彦君
八十八番星野 篤功君
八十九番田島 和明君
九十番樺山 卓司君
九十一番古賀 俊昭君
九十二番山崎 孝明君
九十三番山本賢太郎君
九十四番花川与惣太君
九十五番立石 晴康君
九十六番清原錬太郎君
九十七番小山 敏雄君
九十八番大河原雅子君
九十九番名取 憲彦君
百番藤川 隆則君
百一番小林 正則君
百二番林  知二君
百三番東ひろたか君
百四番池田 梅夫君
百五番渡辺 康信君
百六番木内 良明君
百七番石井 義修君
百八番中山 秀雄君
百九番藤井 富雄君
百十番大山  均君
百十一番野村 有信君
百十二番比留間敏夫君
百十三番松本 文明君
百十四番桜井  武君
百十五番佐藤 裕彦君
百十六番川島 忠一君
百十七番矢部  一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番田中 晃三君
百二十一番藤田 愛子君
百二十二番尾崎 正一君
百二十三番田中  良君
百二十四番和田 宗春君
百二十五番坂口こうじ君
百二十六番木村 陽治君
百二十七番秋田かくお君

 欠席議員(一名)
七十六番  西条 庄治君

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事青山やすし君
副知事浜渦 武生君
出納長職務代理者副出納長小泉 克已君
教育長横山 洋吉君
知事本部長事務代理次長三宅 広人君
総務局長大関東支夫君
財務局長安樂  進君
警視総監野田  健君
主税局長安間 謙臣君
生活文化局長高橋 信行君
都市計画局長木内 征司君
環境局長赤星 經昭君
福祉局長前川 燿男君
衛生局長今村 皓一君
産業労働局長浪越 勝海君
住宅局長橋本  勲君
建設局長山下 保博君
消防総監杉村 哲也君
港湾局長川崎 裕康君
交通局長寺内 広壽君
水道局長飯嶋 宣雄君
下水道局長鈴木  宏君
大学管理本部長鎌形 満征君
多摩都市整備本部長石河 信一君
中央卸売市場長碇山 幸夫君
選挙管理委員会事務局長南  靖武君
人事委員会事務局長高橋  功君
地方労働委員会事務局長大久保 隆君
監査事務局長中山 弘子君
収用委員会事務局長有手  勉君

十二月四日議事日程第一号
第一 皇孫殿下御誕生にあたり天皇陛下ならびに皇太子殿下に賀詞を奉呈することについて
第二 第百六十九号議案
  政治倫理の確立のための東京都知事の資産等の公開に関する条例の一部を改正する条例
第三 第百七十号議案
  特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四 第百七十一号議案
  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五 第百七十二号議案
  東京都宿泊税条例
第六 第百七十三号議案
  東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第七 第百七十四号議案
  東京都立保健科学大学条例の一部を改正する条例
第八 第百七十五号議案
  都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例
第九 第百七十六号議案
  特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律関係手数料条例
第十 第百七十七号議案
  東京都自動車排出窒素酸化物総量削減計画策定協議会条例の一部を改正する条例
第十一 第百七十八号議案
  東京都環境科学研究所手数料条例の一部を改正する条例
第十二 第百七十九号議案
  東京都立総合精神保健福祉センター及び東京都立精神保健福祉センター条例及び東京都地方精神保健福祉審議会条例の一部を改正する条例
第十三 第百八十号議案
  東京都港湾設備条例の一部を改正する条例
第十四 第百八十一号議案
  臨時東京都多摩、八王子、町田新住宅市街地下水道条例を廃止する条例
第十五 第百八十二号議案
  東京都公園審議会条例の一部を改正する条例
第十六 第百八十三号議案
  東京都市計画事業北新宿地区第二種市街地再開発事業施行規程の一部を改正する条例
第十七 第百八十四号議案
  東京都地方公営企業の設置等に関する条例の一部を改正する条例
第十八 第百八十五号議案
  東京都給水条例の一部を改正する条例
第十九 第百八十六号議案
  東京都下水道条例の一部を改正する条例
第二十 第百八十七号議案
  風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例の一部を改正する条例
第二十一 第百八十八号議案
  東京都テレホンクラブ等営業及びデートクラブ営業の規制に関する条例の一部を改正する条例
第二十二 第百八十九号議案
  平成十三年度新海面処分場Gブロック西側護岸建設工事(その一)請負契約
第二十三 第百九十号議案
  平成十三年度新海面処分場Gブロック西側護岸建設工事(その二)請負契約
第二十四 第百九十一号議案
  当せん金付証票の発売について
第二十五 第百九十二号議案
  水道事業の事務の委託について
第二十六 第百九十三号議案
  職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第二十七 第百九十四号議案
  職員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第二十八 第百九十五号議案
  東京都知事等の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
第二十九 第百九十六号議案
  公益法人等への東京都職員の派遣等に関する条例
第三十 第百九十七号議案
  職員の懲戒に関する条例の一部を改正する条例
第三十一 第百九十八号議案
  学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第百九十九号議案
  学校職員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十三 諮問第一号
  地方自治法第二百二十九条の規定に基づく審査請求に関する諮問について
第三十四 諮問第二号
  地方自治法第二百三十一条の三の規定に基づく審査請求に関する諮問について
第三十五 諮問第三号
  地方自治法第二百三十一条の三の規定に基づく審査請求に関する諮問について
議事日程第一号追加の一
第一 議員提出議案第三十四号
  首都移転の白紙撤回を求める決議
第二 議員提出議案第三十五号
  中小零細商工業者への緊急特別支援に関する決議
   午後一時二分開会・開議

○議長(三田敏哉君) ただいまから平成十三年第四回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(三田敏哉君) まず、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   三番   中屋 文孝君 及び
   六十六番 秋田 一郎君
を指名いたします。

○議長(三田敏哉君) この際、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第三十四号、首都移転の白紙撤回を求める決議外決議一件が提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(三田敏哉君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から十二月十九日までの十六日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、会期は十六日間と決定いたしました。

○六十七番(服部ゆくお君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日は、質問に先立ち議事に入り、日程第一を先議されることを望みます。

○議長(三田敏哉君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、質問に先立ち議事に入り、日程第一を先議することに決定いたしました。

○議長(三田敏哉君) 日程第一、皇孫殿下御誕生にあたり天皇陛下ならびに皇太子殿下に賀詞を奉呈することについてを議題といたします。
 去る十二月一日、皇孫殿下が、めでたくご誕生あそばされました。まことに慶賀の至りにたえません。
 つきましては、東京都議会として、天皇陛下並びに皇太子殿下に賀詞を奉呈し、慶祝の意を表したいと存じます。

○六十七番(服部ゆくお君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本件は、二十三人の委員をもって構成する賀詞起草特別委員会を設置し、案文を起草されることを望みます。

○議長(三田敏哉君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、二十三人の委員をもって構成する賀詞起草特別委員会を設置し、案文を起草することに決定いたしました。
 委員は、委員会条例第五条第一項の規定により、議長から、お手元に配布の名簿のとおり指名いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、委員は、お手元に配布の名簿のとおり選任することに決定いたしました。
     賀詞起草特別委員名簿
  真木  茂君  藤井  一君
  中嶋 義雄君  古館 和憲君
  河西のぶみ君  吉田 信夫君
  樺山 卓司君  古賀 俊昭君
  林  知二君  木内 良明君
  石井 義修君  野村 有信君
  比留間敏夫君  松本 文明君
  佐藤 裕彦君  川島 忠一君
  矢部  一君  内田  茂君
  田中 晃三君  藤田 愛子君
  田中  良君  和田 宗春君
  木村 陽治君

○議長(三田敏哉君) これより直ちに、議会運営委員会室に委員会を招集いたします。委員におかれましては速やかに起草を終了し、報告されるよう希望いたします。
 委員会開会のため、暫時休憩いたします。
   午後一時六分休憩
   午後一時三十六分開議

○議長(三田敏哉君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 賀詞起草特別委員長の報告を求めます。
 賀詞起草特別委員長田中晃三君。
   〔百二十番田中晃三君登壇〕

○百二十番(田中晃三君) 皇孫殿下のご誕生に当たり、奉呈すべき賀詞起草の特別委員会の経過並びに結果についてご報告申し上げます。
 先ほど議長より指名されました我々二十三名の委員は、直ちに委員会を開催し、委員長の互選を行いましたところ、不肖私が委員長の重責を担う光栄に浴しました。
 引き続き、委員一同、都民の喜びを率直にお伝えすべく、終始敬けんなる態度をもちまして賀詞の起草に当たりましたところ、成案を得ましたので、ここに案文を朗読いたします。
    天皇皇后両陛下に差し上げる賀詞
  このたび
  皇孫殿下が御誕生になりましたことは
  まことに
  慶賀に堪えないところであります
  ここに 東京都議会は 都民とともに
  謹んでお祝いを申し上げます
    平成十三年十二月四日
       東京都議会議長 三田 敏哉
    皇太子同妃両殿下に差し上げる賀詞
  このたび
  内親王殿下が御誕生になりましたことはまことに慶ばしいかぎりであります
  皇太子殿下 同妃殿下の
  ますますの御健勝と
  内親王殿下の
  お健やかな御成育 御隆運を
  心からお祈り申し上げます
  ここに 東京都議会は 都民とともに
  謹んで祝意をささげます
    平成十三年十二月四日
       東京都議会議長 三田 敏哉
 以上、謹んでご報告申し上げます。
 何とぞ、満場のご賛同を心からお願い申し上げまして、報告を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって、賀詞起草特別委員長の報告は終わりました。

○議長(三田敏哉君) これより採決を行います。
 本件は、特に敬意を表するため、起立により採決いたします。
 ただいまの委員長報告のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔総員起立〕

○議長(三田敏哉君) 起立総員と認めます。よって、本件は、委員長報告のとおり決定いたしました。
 なお、本件は、議長において、皇室へ奉呈の手続をとりますので、さようご了承願います。

○議長(三田敏哉君) この際、平成十三年十一月三日付をもちまして藍綬褒章を受章されました方々をご紹介いたします。
   小山 敏雄君
   宮崎  章君
   倉林 辰雄君
   和田 宗春君
 ここに敬意を表し、心からお祝い申し上げます。
   〔拍手〕

○議長(三田敏哉君) この際、謹んでご報告申し上げます。
 名誉都民マイケル・ジョセフ・マンスフィールド氏には、去る十月五日、また、名誉都民金子鴎亭氏には、十一月五日、逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 ここに生前の偉業をたたえるとともに、故人のご冥福をお祈りし、議会として深甚なる弔意を表します。

○議長(三田敏哉君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(川島英男君) 平成十三年十一月二十七日付東京都告示第千三百八十一号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案三十四件の送付がありました。
 次に、都議会説明員について、大塚俊郎出納長は、病気療養のため、本日の本会議には小泉克已副出納長が出席する旨、また、田原和道知事本部長は、病気療養のため、今定例会には三宅広人知事本部次長が代理出席する旨の通知がありました。
 次に、知事より、平成十三年第三回定例会の会議において同意を得た東京都公安委員会委員、東京都人事委員会委員及び東京都土地利用審査会委員の任命について、発令したとの通知がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について、報告が三件ありました。
 内容は、訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告について、警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例の報告について及び東京消防庁の設置に関する条例の一部を改正する条例の報告についてでございます。
 次に、監査委員より、例月出納検査の結果について、報告がありました。

○議長(三田敏哉君) 次に、東京都議会友好代表団について申し上げます。
 本議会を代表いたしまして、去る十月二十一日から二十七日まで、北京市及びソウル特別市へ、去る十一月五日から十一日まで、ニューサウスウェールズ州へ、それぞれ友好代表団を派遣いたしました。
 友好代表団を代表いたしまして、それぞれ報告のため発言の申し出がありますので、これを許します。
 北京市及びソウル特別市訪問東京都議会友好代表団副団長石井義修君。
   〔百七番石井義修君登壇〕

○百七番(石井義修君) 友好代表団の団長であります三田議長が議長席におられますので、副団長を仰せつかりました私、石井から、北京市及びソウル特別市訪問についてご報告申し上げます。
 三田敏哉議長を団長とし、各会派代表から成る友好代表団九名は、北京市人民代表大会常務委員会及びソウル特別市議会の招請を受け、十月二十一日から二十七日までの七日間、北京市及びソウル特別市を訪問いたしました。
 このたびの訪問の具体的な内容につきましては、報告書として本日、お手元にお配りしてございます。その概要についてご報告申し上げます。
 まず、北京市への訪問ですが、最初に于均波(ウ・キンハ)北京市人民代表大会常務委員会主任を表敬訪問し、東京、北京両都市が一九七九年に友好都市関係を締結して以来、二十二年間にわたり展開してまいりました、文化、経済、教育などの各分野にわたる交流の成果を確認し合いました。
 また、ともに人口一千二百万の大都市が抱える、大気汚染等の環境問題、交通問題を初めとする大都市の共通課題について意見交換を行いました。そして、今後ともさらに、強固な相互協力と信頼関係を築いていくことを確認いたしました。
 続いて代表団は、劉淇(リュウ・キ)北京市長及び全国人民代表大会常務委員会の何魯麗(カ・ロレイ)副委員長を表敬訪問いたしました。
 劉淇(リュウ・キ)北京市長は、友好代表団のこのたびの訪問は、両市及び両市民間の友好のさらなる増進と、日中両国の友好関係の発展に大きく寄与するものであること、また、二〇〇八年の北京オリンピック開催を目指して、オリンピックを成功させた東京都の教訓を、ぜひとも教えていただきたいとの発言がありました。
 全国人民代表大会常務委員会の何魯麗(カ・ロレイ)副委員長からは、来年は日中国交回復三十年の節目の年であり、今後、さらに両国の友好関係を深めていきたいとの発言がありました。
 これらの模様は、翌日のマスコミでも大きく報道され、広く北京市民に紹介されたところであります。
 次に、市内のさまざまな施設を視察いたしましたが、特に印象に残ったのは、小中高一貫教育を実施している景山学校であります。小学課程五年、中学課程四年、高校課程三年の一貫した就学年数制をとっております。
 景山学校では、小学校から徹底したパソコン教育に力を入れているほか、英語教育についても、小学校から集中的に行うなど、目覚ましく経済発展する中国を象徴する革新的な学校でありました。
 私自身、北京は八年ぶり、六回目の訪問でありましたが、高層ビルが林立し、高速道路が縦横に走る、北京の目覚ましい発展ぶりに、改めて驚かされた次第であります。
 友好代表団は、十月二十四日に北京市の訪問を終え、ソウル特別市へ向かいました。
 ソウル特別市では、最初に高建(コ・ゴン)市長に表敬訪問し、ソウルの現状や課題について説明を受け、さらに、両都市が抱える都市問題、財政、景気、雇用問題など多方面にわたり、率直な意見交換を行いました。
 ソウル市議会の表敬訪問については、金種求(キム・ジョング)代表議員運営委員長及び市議会各委員会委員長を表敬訪問いたしました。
 金(キム)委員長とは、両都市の十三年の交流の中での、文化、教育、スポーツ、技術等の交流の成果と、今後一層の友好増進を図ることが確認されました。
 その後、同席の各委員長を交え、議会制度、議会運営の現状、両都市に共通する都市問題等について活発な意見交換が行われました。
 また、日韓共同開催の二〇〇二年ワールドカップサッカーについて、その開催が、日韓両国はもちろんのこと、アジアの発展と世界平和に寄与することを、ともに確認いたしました。
 さらに、今回は板門店を視察いたしました。非武装地帯を経て、共同警備地区である板門店に入りました。板門店の軍事停戦委員会本会議場では、緊張感が漂い、日本に住む私たちには理解しがたい光景でありました。
 これらの視察を通じて、韓国が置かれている現実について、認識を新たにするとともに、平和のとうとさを実感した次第であります。
 そのほか、ソウル市では完成間もない仁川国際空港と、完成直前のソウル・ワールドカップ競技場などを視察いたしました。
 仁川国際空港では、空港建設の経過や今後の空港拡張計画などについて、詳細な説明を受けました。
 仁川空港は、ソウル市から四十分の距離にあり、アジアのハブ空港を目指して建設され、四千メートルの滑走路が二本完成し、さらにあと二本建設するとのことであります。片側四車線の高速道路が走り、その下に新交通システムが計画されており、まさに、壮大な規模と近代的な施設を備えた海上空港でありました。
 この視察を通じて団員一同、改めて東京の空港問題の重要性を痛感したところであります。
 以上、北京市及びソウル特別市訪問の概要を申し上げましたが、過去における歴史的経過や主義主張はあるにしても、今後、東京都と北京市及びソウル特別市との間で、対話と友好交流を一層拡大し、発展させていくことが重要であると実感した次第であります。
 最後に、このたびの訪問に当たり、お世話になりました、北京市及びソウル特別市の皆様に、心から厚く御礼を申し上げまして、東京都議会友好代表団の報告とさせていただきます。(拍手)
(報告書は別冊に掲載)

○議長(三田敏哉君) 続きまして、ニューサウスウェールズ州訪問東京都議会友好代表団団長橋本辰二郎君。
   〔八十三番橋本辰二郎君登壇〕

○八十三番(橋本辰二郎君) 東京都議会友好代表団のニューサウスウェールズ州議会訪問についてご報告申し上げます。
 各会派代表から成る友好代表団九名は、オーストラリアのニューサウスウェールズ州議会からの招請を受け、平成十三年十一月五日から十一日までの七日間、州都シドニーを訪問いたしました。
 この代表団は、両都州の友好交流の一層の推進を図るとともに、観光産業の振興策、環境保全対策と都市施設、都市の活性化等について、視察や意見交換を行うことを目的といたしました。
 友好代表団は、まず、メレディス・バーグマン上院議長並びにジョン・マレー下院議長を表敬訪問し、一九八四年、昭和五十九年に友好都市提携が結ばれてから今日まで、幅広い分野における活発な交流が展開され、両都州の相互理解と友好が一層進展したことを確認し合いました。会談後は、下院議会において、クエスチョン・タイムと呼ばれる政府と与野党との白熱した議論を傍聴いたしました。
 また、マリー・バッシー州総督を表敬訪問し、日豪両国の友好親善や東京都とニューサウスウェールズ州との関係強化について意見交換を行いました。
 次に、両都州に共通する課題に関し、州政府の担当者や在シドニー日本総領事館から概況説明を受け、順次、視察等を行ってまいりました。
 まず、観光産業の振興については、観光客誘致の基本となる魅力ある都市景観の保全のため、住宅の増改築や屋根の色などに厳しい規制が課せられており、州を挙げて観光産業の育成に対する取り組みが強化されておりました。しかし、オーストラリアにおいても、米国の同時多発テロによる観光産業への影響は深刻であり、十二月末までの海外からの旅行予約は、昨年比で二六%の減少が見込まれているとのことでありました。
 環境保全対策に関しては、土壌汚染問題等を克服し、周辺の環境に配慮して建設された世界最大級のオリンピック関連施設群を視察いたしました。これらの施設は、シドニーの中心部から車で約三十分の場所に建設されており、付近一帯は新しい商業・レジャー地域として発展しつつあります。
 都市の活性化に関しては、一九八〇年代に再開発が進められ、かつての港湾地域から、今やオーストラリア有数の商業・観光地域に生まれ変わったダーリング・ハーバー地区を視察し、活力ある都市づくりなどについて関係者との意見交換を行いました。
 また、日本との技術協力のモデルである日本酒製造工場の視察を行うとともに、急遽日程に組み入れられましたシドニー郊外の州立小学校の訪問に際しては、授業風景の参観とともに、児童との和やかな交流も行われました。
 このほかにも、オーストラリア博物館や州立美術館などを訪れ、オーストラリアの歴史や文化などについて、詳細な説明を受け、理解を深めることができました。
 以上、ニューサウスウェールズ州訪問の概要を申し上げましたが、改めて、この友好交流をさらに発展させ、両都州がアジア、太平洋地域の平和と安定に貢献するリーディングシティーとして、より広範な分野において活発な相互交流を図るべきとの思いを深めた次第であります。
 最後に、このたびの訪問に当たり、投票所の中を視察することができました。連邦議会議員選挙の投票日直前という、多忙をきわめる中、親身になってお世話をいただきました、ニューサウスウェールズ州議会上院下院両議長を初め、州職員の方々に、団員一同、心より感謝を申し上げまして、ご報告とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
(報告書は別冊に掲載)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって、東京都議会友好代表団の報告は終わりました。

○六十七番(服部ゆくお君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 日程の順序を変更し、追加日程第一及び第二を先議されることを望みます。

○議長(三田敏哉君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、日程の順序を変更し、追加日程第一及び第二を先議することに決定いたしました。

○議長(三田敏哉君) 追加日程第一、議員提出議案第三十四号、首都移転の白紙撤回を求める決議を議題といたします。
 案文は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略いたします。
議員提出議案第三十四号
   首都移転の白紙撤回を求める決議
 右の議案を別紙のとおり東京都議会会議規則第十二条の規定により提出します。
  平成十三年十二月四日
(提出者)
 谷村 孝彦  東村 邦浩  中屋 文孝
 矢島 千秋  高橋かずみ  山加 朱美
 柿沢 未途  後藤 雄一  福士 敬子
 青木 英二  初鹿 明博  山下 太郎
 長橋 桂一  小磯 善彦  野上じゅん子
 ともとし春久 萩生田光一  串田 克巳
 小美濃安弘  吉原  修  山田 忠昭
 林田  武  野島 善司  真鍋よしゆき
 中西 一善  真木  茂  花輪ともふみ
 酒井 大史  織田 拓郎  藤井  一
 東野 秀平  中嶋 義雄  松原 忠義
 田代ひろし  三宅 茂樹  川井しげお
 いなば真一  近藤やよい  高島なおき
 鈴木 一光  吉野 利明  小礒  明
 相川  博  樋口ゆうこ  富田 俊正
 福島 寿一  大塚 隆朗  鈴木貫太郎
 森田 安孝  曽雌 久義  石川 芳昭
 土持 正豊  倉林 辰雄  遠藤  衛
 秋田 一郎  服部ゆくお  臼井  孝
 北城 貞治  野田 和男  三原 將嗣
 大西 英男  宮崎  章  馬場 裕子
 西条 庄治  土屋たかゆき 河西のぶみ
 中村 明彦  橋本辰二郎  大木田 守
 前島信次郎  桜井良之助  新藤 義彦
 星野 篤功  田島 和明  樺山 卓司
 古賀 俊昭  山崎 孝明  山本賢太郎
 花川与惣太  立石 晴康  清原錬太郎
 小山 敏雄  名取 憲彦  藤川 隆則
 小林 正則  林  知二  木内 良明
 石井 義修  中山 秀雄  藤井 富雄
 大山  均  野村 有信  比留間敏夫
 松本 文明  桜井  武  佐藤 裕彦
 川島 忠一  矢部  一  内田  茂
 三田 敏哉  田中 晃三  尾崎 正一
 田中  良  和田 宗春  坂口こうじ
東京都議会議長 三田 敏哉殿
   首都移転の白紙撤回を求める決議
 首都移転問題については、平成二年十一月の国会決議以来、国民世論の合意形成もない中で、国会において移転を前提とした審議だけが進められている状況にある。
 平成十一年十二月の「国会等移転審議会」の答申では、栃木・福島、岐阜・愛知、三重・畿央の三地域が移転先候補地として示された。これを受けて、衆議院の「国会等の移転に関する特別委員会」において、来年五月を目途に移転先候補地を一箇所に絞り込むための検討が行われており、最近では、東京都知事をはじめ八府県の移転先候補地の知事を参考人として招致し、意見を聴取している。
 しかし、「国政全般の改革」、「東京一極集中の是正」、「災害対応力の強化」等の首都移転の意義・効果が現実的意味を失っていると断じざるを得ない状況の中で、拙速に結論のみを求めることは、決して許されるものではない。
 長引く景気低迷の中で、国家財政も地方財政もますます厳しさを増しており、二十兆一千億円(直近の都の再試算による)もの巨費を投じ、また、大規模な自然環境破壊を引き起こしてまで首都移転を行うことに、到底、国民の理解が得られるとは考えられない。
 首都移転によって、我が国と首都圏の活力を共に喪失させ、国際的な地位を低下させる過ちを犯してはならない。今、求められているのは、首都圏の再生を図ることであり、我が国に繁栄を取り戻すことである。
 よって、東京都議会は、首都移転の白紙撤回を強く求めるものである。
 以上、決議する。
  平成十三年十二月四日
               東京都議会

○議長(三田敏哉君) これより採決に入ります。
 本案は、起立により採決いたします。
 本案は、原案のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

○議長(三田敏哉君) 起立多数と認めます。よって、本案は、原案のとおり可決されました。

○議長(三田敏哉君) 追加日程第二、議員提出議案第三十五号、中小零細商工業者への緊急特別支援に関する決議を議題といたします。
 案文は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略いたします。
議員提出議案第三十五号
   中小零細商工業者への緊急特別支援に関する決議
 右の議案を別紙のとおり東京都議会会議規則第十二条の規定により提出します。
  平成十三年十二月四日
(提出者)
 谷村 孝彦  東村 邦浩  中屋 文孝
 矢島 千秋  高橋かずみ  山加 朱美
 柿沢 未途  後藤 雄一  福士 敬子
 伊沢けい子  大西由紀子  青木 英二
 初鹿 明博  山下 太郎  河野百合恵
 長橋 桂一  小磯 善彦  野上じゅん子
 ともとし春久 萩生田光一  串田 克巳
 小美濃安弘  吉原  修  山田 忠昭
 林田  武  野島 善司  真鍋よしゆき
 中西 一善  山口 文江  真木  茂
 花輪ともふみ 酒井 大史  清水ひで子
 かち佳代子  小松 恭子  織田 拓郎
 藤井  一  東野 秀平  中嶋 義雄
 松原 忠義  田代ひろし  三宅 茂樹
 川井しげお  いなば真一  近藤やよい
 高島なおき  鈴木 一光  吉野 利明
 小礒  明  新井美沙子  相川  博
 樋口ゆうこ  富田 俊正  福島 寿一
 大塚 隆朗  古館 和憲  松村 友昭
 丸茂 勇夫  鈴木貫太郎  森田 安孝
 曽雌 久義  石川 芳昭  土持 正豊
 倉林 辰雄  遠藤  衛  秋田 一郎
 服部ゆくお  臼井  孝  北城 貞治
 野田 和男  三原 將嗣  大西 英男
 宮崎  章  執印真智子  馬場 裕子
 西条 庄治  土屋たかゆき 河西のぶみ
 中村 明彦  大山とも子  吉田 信夫
 曽根はじめ  橋本辰二郎  大木田 守
 前島信次郎  桜井良之助  新藤 義彦
 星野 篤功  田島 和明  樺山 卓司
 古賀 俊昭  山崎 孝明  山本賢太郎
 花川与惣太  立石 晴康  清原錬太郎
 小山 敏雄  大河原雅子  名取 憲彦
 藤川 隆則  小林 正則  林  知二
 東ひろたか  池田 梅夫  渡辺 康信
 木内 良明  石井 義修  中山 秀雄
 藤井 富雄  大山  均  野村 有信
 比留間敏夫  松本 文明  桜井  武
 佐藤 裕彦  川島 忠一  矢部  一
 内田  茂  三田 敏哉  田中 晃三
 藤田 愛子  尾崎 正一  田中  良
 和田 宗春  坂口こうじ  木村 陽治
 秋田かくお
東京都議会議長 三田 敏哉殿

   中小零細商工業者への緊急特別支援に関する決議
 長引く不況に加え、アメリカでの同時多発テロの発生による世界経済への影響により、我が国経済は非常事態を迎えている。さらに、消費者心理に水を差す狂牛病問題の発生などを背景に、需要減退傾向は顕著となっている。加えて、中国などアジア諸国への生産拠点の移転により、東京のモノづくりを支えている中小零細製造業の経営は一段と厳しい局面を迎えている。
 また、先月には都内にある五つの信用組合が破たんするなど、中小零細企業者に金融不安をもたらしている。それに加え、中小零細企業者の事業経営のための資産に対する固定資産税や相続税などは、景気の動向とかかわりなく厳しい負担を強いられ、事業継続への意欲を損なう結果ともなっている。
 一方、雇用情勢も完全失業率が調査開始以来最悪の五%を超えるなど深刻さを増しており、雇用不安が広がっている。
 東京の活力の源泉は、中小零細企業の元気にある。「日本の再生」、「東京の再生」は、東京の中小零細企業の活性化なしには成し得ないことは自明の理である。
 東京都は、先に「緊急雇用・経済東京プロジェクトⅡ」を発表したが、今日の事態を打開するためには、更なる対策の強化が必要である。厳しい社会経済状況の中に置かれている、東京の経済を支え、雇用を支え、地域社会を支える中小零細商工業者に対する、緊急かつ特別な支援が不可欠である。
 よって、東京都議会は、東京再生の中核である中小零細商工業者の活性化を図り、雇用不安を解消するためにも、緊急かつ特別な支援について、以下の事項を実現するよう強く求めるものである。
一 東京の産業を支えている、中小零細商工業者に対する緊急融資を始めとした特別支援対策の強化
二 雇用機会の確保や雇用のミスマッチ解消のため、緊急雇用事業の積極的展開や職業能力開発施策の推進
三 過重な負担となっている固定資産税等の軽減措置
四 国に対する中小企業者の承継税制の改善要望
 以上、決議する。
  平成十三年十二月四日
               東京都議会

○六十七番(服部ゆくお君) ただいま議題となっております議員提出議案第三十五号については、原案のとおり決定されることを望みます。

○議長(三田敏哉君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、議員提出議案第三十五号については、原案のとおり可決されました。

○議長(三田敏哉君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成十三年第四回都議会定例会の開会に当たり、都政運営に対する所信を申し述べ、都議会並びに都民の皆様のご理解とご協力を得たいと思います。
 十二月一日、めでたく内親王殿下がご誕生されました。首都東京の知事として、都民とともに心からお喜びを申し上げます。
 内親王殿下のご誕生は、都民、国民のだれもが久しく待ち望んでいた慶事であります。皇太子、皇太子妃両殿下のご慈愛のもと、内親王殿下が健やかにご成長され、皇室がより一層ご繁栄されることを深く祈念いたします。
 一方、名誉都民であるマイケル・ジョセフ・マンスフィールドさんが十月五日に、同じく金子鴎亭さんが十一月五日に逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
 次いで、先般の職員の不祥事について、都議会の皆様、都民の皆様に心からおわびを申し上げます。
 一人の職員の愚劣な行為が、都政全体の信頼を著しく低下させたことは、まことに遺憾であります。とりわけ、三宅島の方々が島外への退避を強いられ、島の復旧が都政喫緊の課題となっているこの時期に、復旧の当事者が不正を働いたことは、島の方々を初め、都民や支援者を冒涜するものであり、重ねて陳謝申し上げます。三宅島については、この忌まわしい事件が影響を及ぼすことのないよう、着実に復旧作業を進めます。
 現在、事件の全貌と問題の所在を徹底して究明しております。このような不祥事を二度と起こすことのないよう、本件を都庁全体の問題として重く受けとめ、再発の防止に万全を期し、信頼の回復に全力を尽くします。
 七都県市により構成されている首都圏は、国家のダイナモとして、我が国の発展に大きな役割を果たしてまいりました。しかし現在は、我が国に内在するさまざまな危機がより先鋭的な形で表出し、活力や魅力が大きく薄らいでおります。
 このままでは、首都圏は、世界の中で競争力を失い、それはそのまま、日本の国力の低下に連鎖いたします。首都圏の再生は、国家の再生そのものであり、我が国にとって一刻の猶予もならない課題となっております。
 その際の国の役割は、環状道路のような巨大事業を責任を持って遂行することであり、一方、地方自治体には、地域特有の課題を主体的に解決することが求められます。加えて、近年は、環境や防災、治安など広域的な課題がより増加しており、七都県市を中心にした自治体の連携も、欠かすことのできない取り組みとして急速に比重を高めております。
 都県境を越えて走行するディーゼル車は、環境に高い負荷をかけており、低公害車の普及促進や統一した基準による規制など、七都県市の連携した取り組みが、規制の実効性を高める上で不可欠であります。首都高速を走行するディーゼル車から徴収した税を排気ガス対策に活用することで、大気汚染の改善が進むことになります。
 また、七都県市は、産業廃棄物に関し、不法投棄の増大など共通した問題を数多く抱えております。産業廃棄物の対策を効果的に進めるには、処理施設の整備や広域的な監視体制を実現し、発生の抑制やリサイクルの促進に共同して取り組む必要があります。排出事業者の責任を明確にするため、共同事業に必要な経費を事業者への課税により賄うことは、有意義な手法であると考えております。
 それぞれの自治体は、法定外目的税を共同で導入し、収入を合算した後に改めて配分し直すことで、事業規模に応じた財源を確保することが可能になります。
 環境問題は、目に見える形でお互いが恩恵を分かち合うことのできる分野であり、ぜひとも共同して事業を実施したいと考えております。
 いつ襲ってくるかわからない大地震や、テロのような人為災害に対しては、広範囲にわたり被害が発生することを想定し、十全の備えを講じる必要があります。
 アメリカには、州政府の手に負えない緊急事態に対処する組織として、連邦危機管理庁FEMAが設置されており、さきの同時多発テロの際もすぐれた働きを示し、事態の収拾に当たりました。
 翻って我が国では、官僚主義、縦割り行政が依然として続いており、非常時において、統一的、機能的な行動をとる体制が全く整備されておりません。広域災害から、首都圏に住む三千三百万人の生命と財産を守るためには、国に頼ることなく、首都圏版のFEMAを立ち上げ、情報の一元化、有機的な連携体制の確立、対応策の立案など独自の機能を強化する必要があります。
 危機に対する備えとしては、日常の訓練も欠かすことができません。この夏東京都が、関係機関と連携して、かつてない規模で実施した図上訓練は、指揮官の判断力を養い、相互のネットワークを強化する上で、非常に有意義なものでありました。緊急事態への対応能力を向上するには、近隣自治体や国、自衛隊も巻き込んだ、大規模かつリアリティーの高い図上訓練を実施することが必須の条件となっております。
 先月開催された七都県市の首脳会議では、こうした分野で、事業の共同実施、税の共同課税、新しい組織の設置などに取り組むことを提案いたしました。これから七都県市で議論が始まりますが、連携を強める意義と必要については、理解が深まったと思います。
 今回の取り組みは、あくまでも第一歩を踏み出したにすぎないものであり、首都圏は、今後さらに強固につながる必要があります。それが、地方主権を確立し、首都州構想など広域行政の議論を活性化させることにもなると考えております。
 首都機能を連携して担っている七都県市にとって、首都移転の断固反対もまた、異論をはさむ余地のない一致した見解であります。
 この十月、東京都は、必要な情報を提供しない国にかわって、移転費用や国政運営上の問題点などについて検証いたしました。その結果、行政機関がすべて移転し、人口五十六万人の都市が形成された場合に、国が十二兆三千億と試算している移転費用は、二十兆円を超える額に膨らむことが明らかになりました。移転先では、立法、行政、司法の各機能をさらに広く分散させるため、業務効率も極めて悪くなります。しかも、域内の移動手段として建設する新交通システムは、五十年間で数千億の赤字を抱える見込みであります。
 しかし、衆議院の特別委員会は、移転先の絞り込み期限を来年五月に控え、作業を急いでおります。そこでは、国民の負担の増加など、肝心の問題に一切触れないまま、日程の消化だけを優先させており、委員会の持ち方に重大な欠陥があります。
 そもそも、委員の構成や参考人の人選には、極端な偏りがあります。移転の是非を真っ当に議論する土壌すらでき上がっていないことには、怒りよりも先に、一人の国民として、非常に大きな不安を覚えます。議論が一向に盛り上がらないのも、国民が、鋭く本質を見抜き、既に関心を持つことにすら、うんでしまっているからにほかなりません。
 先般、参考人として特別委員会に出席しましたが、国会は、相変わらず抽象的な議論に終始しており、具体的な新首都のイメージは全く伝わってきませんでした。その中で、審議の進め方として、移転候補地を一カ所に絞り込んだ上で、改めて東京との比較考量をするという手順を確認できたのだけは、一つの収穫ではありました。
 この問題は、重大な局面に突入しようとしており、今、我々が首都移転の不当性を訴えなければ、我が国は、取り返しのつかない過ちを犯すことになりかねません。声を大にして正論を述べ、移転計画を白紙撤回させることが、都民、国民に対する政治家の責務であります。
 都議会の皆様のご支援とご協力をお願いいたします。
 我が国が総力を挙げて取り組むべき国家プロジェクトは、首都移転ではなく、首都圏における都市基盤の整備であります。
 とりわけ、アジアの大都市で巨大な空港が次々に開港する中、国際競争力の向上に直結する空港の整備は、焦眉の急となっております。羽田空港の再拡張が早期実現に向け動き出したことは大きな進歩ではありますが、国際化は、再拡張を待つことなく速やかに実施すべき課題であります。
 羽田空港は、国内線では使用していない発着枠の一部を転用するだけで、直ちに一日九十回の国際線の発着が可能となります。これだけでも年間一兆五千億の経済波及効果と八万七千人の雇用誘発効果があり、低迷を続ける現下の経済にとって、強力な刺激となることは確実であります。
 早急に本格的な国際ターミナルを整備し、国際化を実現することを、そして再拡張を含めた予算を不足なく措置することを、国に対して強く要求いたします。
 アメリカ軍が保有する横田飛行場では、滑走路の大規模な改修工事がワールドカップを前に既に実施されており、同時多発テロに対する軍事行動が始まって以降も、工事は継続されたままであります。アメリカ軍にとって、有事の際も横田飛行場の機能がすべて必要となることはなく、戦略上、横田飛行場の比重は極めて低いことが、図らずも明らかになりました。
 本来なら、こうした実体を見逃すことなく返還交渉の材料とするのが国の役割でありながら、鈍感な国は、一片の関心も示さず、これまでも、アメリカとは、現状の打開に向けた議論すら行おうとしませんでした。せめて東京都は、関係する市町村とともに、現地の最高責任者である司令官と直接対話をしたいと考えております。率直な意見交換を重ねることが、お互いの立場や主張を認識することにつながり、それが将来、大きな果実をもたらすことになると思います。
 区内を走行する車の平均時速は十八キロで、全国の半分しかなく、慢性的な交通渋滞の解消も、首都圏を再生する上で大きな課題であります。
 踏切は、交通渋滞ばかりでなく、交通事故や地域分断の要因ともなっており、現在、百三十カ所を超える踏切の解消を目指して、七路線四十キロにわたり連続立体交差化を進めております。
 連続立体交差事業は、用地の取得が問題となることも少なく、十分な事業費さえあれば、工期の大幅な短縮が可能となります。先般、総理大臣と面談した際には、事業の促進に必要な財源として、新しい貸付制度の導入を強く要請いたしました。都民の強い期待にこたえ、一日も早く完成できるよう、今後とも、着実に事業を推進いたします。
 このほかにも、我が国には多くの難題がありながら、国の対応は相変わらず緩慢で、およそ危機感が感じられません。
 その顕著な事例は観光であり、国が観光振興の哲学を持ち合わせていないため、日本の国際旅行収支は、年間で三兆五千億もの赤字となっております。
 初めての法定外目的税として本定例会に提案している宿泊税は、東京の観光振興に必要な財源を安定的に確保するため、ホテル等の宿泊客を対象に課税するものであります。大衆課税となることのないよう、免税点や負担額には十分配慮したつもりであります。関係者の意見も聞きながら、この財源を活用して、外国人向けの観光案内や国際会議の誘致活動、海外でのキャンペーンなどを充実し、内外からの訪問客の増加につなげたいと考えております。
 立ちおくれている東京の観光振興を転回させることが、宿泊税導入の最大の眼目であります。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
 ペイオフが解禁となる来年の四月が間近に迫ってまいりました。これまでの地方自治体は、金利やリスクに対する感覚がなく、民間企業であれば敏感に反応する市場の動向を意識することも、まれでありました。
 これからは、公金管理の失敗が、財政破綻や再建団体への転落を招きかねない時代となり、地方自治体の公金管理も大きな変革が求められますが、国は、この分野でも、十分な対応策を示しておりません。
 東京郡は、みずからの責任のもと、安全で効率的な公金管理を実施するため、金融機関の選択基準などペイオフ解禁後の公金管理のあり方について、専門家を交え、検討を進めております。四月以降は、常設の委員会を設け、専門家の意見を聞きながら、取引先金融機関の経営状況を厳格に判断し、都民から預かっている公金を適切に管理したいと思います。
 あわせて、支払い事務の簡素化や出納事務所の全面廃止など、会計制度、執行体制を抜本的に見直し、定型的な業務から、制度の企画、指導や公金の管理など専門的な業務へと、出納事務をシフトいたします。
 全国に例のない大胆な改革となりますが、金融市場の荒波の中へ船出するには不可欠な取り組みであると考えております。
 環境影響評価、すなわちアセスメントも東京が先行している分野であります。
 現在、東京都は、大規模な開発事業に対し、条例に基づきアセスメントを実施しております。しかし、現行のアセスメントは、事業の実施段階で行うため、計画の抜本的な見直しが難しく、改善を求める声が寄せられております。
 そのため、全国初の取り組みとして、計画段階でのアセスメントが有効な手法となり得るかどうか、杉並区から三鷹市にかかる都市計画道路を対象に試行いたしました。そこでは、複数の計画案に対し、環境面から評価を加えることができ、大きな意義があったと思います。この取り組みを軌道に乗せ、都民の信頼を得るには、制度化が必要であり、現行条例の見直しに着手いたしました。
 計画段階でのアセスメントの実施が、環境への一層の配慮と事業の円滑な進捗につながるよう、既存の手続を簡素化しながら、計画から事業段階までの一体的な制度を構築するつもりであります。今ある制度との整合を図り、課題を整理した上で、来年、条例改正を提案したいと考えております。
 今の時期は、こうした制度の構築に加え、来年度の都政の大きな流れを考える大切なときでもあります。
 財政再建が都政の逼迫した課題となっている中では、どのような予算を編成するかがとりわけ大きな案件であります。
 地方交付税の不交付団体である東京都は、歳入の根幹をなす都税収入の動向が、予算編成を左右する重要な要素となります。しかし、懸念していたとおり景気は悪化を続け、都税収入は、もはや大幅な減少が避けられないところにまで至っております。
 このような状況を踏まえ、来年度予算の編成に当たっては、これまで以上に厳しく歳出額を抑制することを基本に据えます。入るをはかって出るを制す、これが財政の破綻を防ぐ唯一の選択肢であると思います。
 財政再建に向けた決意を示すため、特別職と管理職については、給与削減措置を来年度も継続いたします。
 財政再建の途上であっても、東京が直面する危機を打開するためには、重点的に取り組む政策課題を明示することが必要な責務ともなります。
 予算編成に先立ちこのたび策定した平成十四年度の重要施策は、限りある予算や人員を優先的に措置する施策を選定したもので、いわば、来年度の都政の背骨に相当するものであります。
 個別事業の選定に当たっては、新規事業や東京構想二〇〇〇で掲げた三カ年の推進プランを中心に精査を重ねました。特に、新規推進プロジェクトは、組織の壁が障害となって取り組みがおくれているもの、少ない費用で大きな事業効果が期待できるものなどに的を絞り、三十四のプロジェクトを厳選したものであります。
 例えば、荒廃している多摩の森林を効果的に再生するため、数局にまたがる事業を束ね、新しい発想に立って、環境保全や林業振興を進めることにしております。また、効率よく渋滞を解消するため、残りわずかな区間で開通する道路の整備やバス停留所部分の拡幅工事などを優先的に実施いたします。
 来年度は、重要施策を通して、首都圏の再生と都民生活の不安の解消に取り組んでまいります。
 世論調査や都政モニターアンケートを見ると、防犯対策の充実を求める声は、近年急激に高まっており、今や、良好な治安の回復は、都民にとって非常に切実な問題となっております。実際、刑法犯は、過去最高の認知件数となりながら、検挙率、検挙件数は、ともに昭和四十一年以降最低の水準にとどまりました。また、来日外国人の薬物事件がこの一年で倍増するなど、東京の治安は致命的に悪化してきております。
 絶対数が不足している留置場の拡充は、治安維持の基礎となるものであり、早急な対策が求められております。民間の力を積極的に活用しながら、日本社会事業大学の跡地に、オフィスビル、警察署などと一体的に、相当の規模の留置場を整備したいと考えております。東京都としての原案がまとまった段階で、関係者には十分説明したいと思っております。都民の安全を守るため、関係する皆様には、ご理解とご協力をぜひともお願いいたします。
 社会状況が大きく変化し、消費者の価値観や行動が多様化する中で、従来の消費者行政では対応し切れない深刻な問題が数多く発生しております。現行の規定では、事業者の指導、処分に慎重を期す余り、機動的な対応がとれないため、悪質事業者による被害の拡大を防止し切れておりません。新しい形態である電子商取引についても、有効な規制が確立していないため、トラブルの急増を招いております。
 消費者は、安易に取引を行うことなく、みずからが責任を持って行動することが求められますが、同時に、行政は、不当な取引に対し厳然たる姿勢で臨む必要があります。
 消費生活の実態に即した措置を迅速、的確に講じるため、次の定例会を目途に消費生活条例を改正したいと考えております。
 失業率の悪化がとまらない中で、都民の不安を解消するには、雇用の確保も重要な要素であります。とりわけ東京の失業率は、景気に大きく左右されるため、全国と比べ格段に高くなっており、いわゆるフリーターの就業支援を含め、雇用対策が急がれております。職業訓練や雇用相談を拡充するなど、現在実施している緊急雇用対策をさらに充実いたします。
 しかし雇用は、国が抜本的な対策を講じない限り、劇的な改善が望めない領域であり、国に対し、責任ある取り組みを行うよう、あらゆる機会を通じて強く要請してまいります。
 昨年から着手した医療改革は、いよいよ具体的な成果を提供できる段階に到達しました。
 東京ERは、だれもが、いつでも、安心して救急診療を利用できるよう整備を進めてきたもので、先月二十八日、墨東病院で最初の業務を開始いたしました。従来の救命救急機能に加えて、内科、小児科などの救急診療科を新たに設けることで、多くの救急患者に、適切、迅速な医療サービスを提供できるようになりました。来年度は、広尾病院と府中病院にERを広げ、救急診療体制を充実いたします。
 五月に設置した患者の声相談窓口には、既に七千件もの声が寄せられております。現行の医療に対し、多くの都民が、不満や疑問、意見を持っていることが鮮明になりました。これらの貴重な声を今後の医療に生かしていくため、医療を受ける方、医療に携わる方などさまざまな立場の関係者と、よりよい医療のあり方について検討を深めております。そこで交わされた議論や都民からの意見、提案を参考にして、患者の視点に立った医療を実現したいと思っております。
 都立病院では、民間企業の経営管理手法を取り入れるなど、院長を初めとする医療従事者の意識改革を進めております。都立病院にかかわる一連の改革については、年内に策定予定の都立病院改革マスタープランにおいて、具体的な姿を明らかにいたします。
 保健医療分野の研究成果を地域経済の活性化に還元することも、医療改革の一つの課題であります。先週開催した研究交流フォーラムは、製薬会社やバイオベンチャーといった民間企業との連携の第一歩となるもので、今後、東京都が蓄積してきた研究資源を積極的に提供し、先端医療の育成を図ります。
 規制緩和は時代の大きな趨勢であり、福祉の分野においても、その推進が強く求められております。しかしながら、国が唱える規制緩和は、極めて不十分なものでしかなく、社会福祉法人に代表される旧来の体系を温存しようとしているのは明らかであります。その上、大規模施設の整備を中心とした画一的な施策から脱却できないため、大都市では、需要と供給の乖離が目立ち、大きな矛盾を露呈しております。
 もはや大都市の福祉を全国一律の政策で縛ることは無理であり、東京は、大規模施設への措置から、地域での自立と暮らしを支える福祉へと、政策の中心を転換すべき時期を迎えております。
 急激に増加する高齢者には、住みなれた地域で、継続して生活できる場を提供することが重要であります。特に今後は、高齢者向けのグループホームを重点的に増強したいと考えており、あす、現場を視察する予定にしております。
 整備に当たっては、NPOや民間事業者などを積極的に支援し、多くの事業者の参入を促進いたします。異なる業種の間での健全な競争は、サービスの量の拡大と質の向上の両面で大きな効果があります。
 こうした取り組みを通じて福祉改革推進プランを発展させ、新しい福祉の将来像の全貌と実現に向けた道筋を示していきたいと思っております。
 いつの時代においても、国家を動かすのは、意欲にあふれた人材、特に若い力であります。しかし最近は、次の時代を担う若者から、彼らの特権である情熱やエネルギーを感じることが、めっきり少なくなってまいりました。その主たる原因は、若者自身よりも、むしろ、想像力や感受性、あるいはひらめきといった、個人が持つ才能を押しつぶす教育しかできなかった国にあります。
 先月策定した大学改革大綱は、教育改革の一環として、新しい大学の役割や目指すべき大学像を示したものであります。
 都立の四大学は、それぞれの長所を生かした上で、より幅広い分野を持った総合大学へと発展させるため、平成十七年度を目途に再編統合したいと考えております。大学院に最先端の科学技術を研究する学科を新しく設けるほか、高度な専門知識を備えた社会人の育成にも力を入れます。教育や研究事業の評価をしっかりと行うことで、教員の意識改革も強力に進めたいと思います。
 持てる機能を十二分に発揮するため、公立大学法人とする新しい大学には、民間の経営感覚を取り入れ、人事会計制度の弾力化など、柔軟な手法を積極的に導入いたします。国に対しては、必要となる法令の整備を強く要求してまいります。
 大学改革は、これでようやくスタートラインに立つことができました。策定した大綱の内容をどのように具体化していくのか、これからが正念場となります。引き続き、有識者の方々のご意見を聞きながら、大綱で示した内容を遺漏なく実現し、都立の大学を一新したいと思っております。
 東京の住宅は、日本の首都にふさわしい質の確保が久しく求められていながら、なかなか改善が進んでおりません。現在策定中の住宅マスタープランでは、都営住宅の建設、管理を中心とする従来の政策を大幅に転換し、総合的な居住政策を推進することを目的としております。
 例えば、今後は、土地の有効利用を図るため、都内に点在している都営住宅について、敷地の高度利用を図りながら集約することを基本といたします。このようにして生み出した土地を、都心の再生や木造住宅密集地域の解消に活用し、東京の改造を促進いたします。
 民間住宅は、都内の住宅の九割を占めていながら、必要な情報が不足しているため、中古住宅の取引をちゅうちょする例が多数見られます。リフォームなどの記録を統一的に残すフォーマットをつくることで、良質な住宅の流通を支援し、中古住宅市場を活性化いたします。
 広く都民の意見を聞きながら、今年度中に新しい計画を策定したいと考えております。
 ディーゼル車に関しては、七都県市への提案以外にも、新しい対策を間断なく進めております。
 ディーゼル車の排気ガスを軽減するには、車両本体の改良とともに、良質の軽油を使用することが不可欠であり、低硫黄軽油の流通と不正軽油の撲滅は、特に重要な課題であります。
 低硫黄軽油は、従来の軽油に比べ、粒子状物質の発生を五%から一〇%軽減し、粒子状物質減少装置との組み合わせで、さらに相乗的な削減効果を生み出します。
 このたび、東京都の要請を真摯に受けとめ、石油連盟が低硫黄軽油の供給時期の前倒しを素早く決めたことは、画期的な対応であったと高く評価しております。この結果、動きの遅い国に頼ることなく、平成十五年四月から都内のほとんどすべてのガソリンスタンドで低硫黄軽油が供給されることになり、ディーゼル車対策は大きく前進いたします。
 一方、路上での軽油抜き取り調査をきっかけとして、不正軽油の大規模な密造、販売グループの存在が明らかになり、先月、福島県など五県と共同して、製造基地など三十二カ所を強制調査いたしました。
 ここまで広域にわたる脱税事件の合同調査は全国で初めてのことであり、地道な調査を繰り返してきた結果が、悪質業者の発見に結びついたと思います。他県とも円滑な連携体制をしくことができ、不正軽油の撲滅に向けた東京都の毅然たる姿勢は、全国に浸透していると感じました。今後さらに調査を進め、早期に告発したいと考えております。
 こうした取り組みを通じ、流通する軽油の質が向上し、大気汚染が改善に向かうと期待しております。
 二十一世紀最初の年も、残すところ一月となりました。実に多くの事件に接し、実にさまざまなことを考えさせられた一年でありました。
 文明が高度に発達し、多様な価値観が複雑に重なり合って存在する社会にあっては、いかに東京が一千万人を超える人口を抱えた世界都市であっても、単独での行動には限界があります。その点で、多くの共通項を持つ七都県市やアジア大都市との連携をこれまでにも増して重視したことは、転換期に不可欠な選択であったと思います。そうした中から、七都県市では首都圏としてのアイデンティティーが生まれました。また、首都圏再生の取り組みを通じて、都市の重要性に対する認識が広がったのは大きな成果でありました。
 一方、この夏に起きた歴史をめぐる幾つかの事件は、戦後半世紀以上が経過しながら、日本が、主権国家としての強固な意思をいまだに持ち得ていない実態を露呈いたしました。その中で、東京都の教育委員会は、歴史教科書の採択に関し主体的な判断を貫き、それが、歴史に対する見方や教科書のあり方について、活発な議論を喚起することになりました。国民が歴史、さらに国家を見詰め直すよい機会になったと思います。
 ことしの後半は、かつて経験したことのない事件に次々と直面いたしました。とりわけ、アメリカで発生し、日本人も多く犠牲となった同時多発テロは、世界の構造と秩序を一変させかねない事件でありました。しかし、国権の最高機関であるはずの国会は、世界が、人類の存在をも左右しかねない爆弾を抱え込んだ、新しい局面に突入したという時代認識をほとんど持ち合わせておりませんでした。国会での議論は、従来の枠組みを守ることだけに拘泥しており、事の本質を見失っているといわざるを得ません。
 狂牛病の問題では、東京都は、都民の食の安全を確保するため、いち早く独自の検査、監視体制を徹底しましたが、国の対応がおくれたため、国民の不安や混乱が今なお続いております。
 総じて、今の日本は、初めて遭遇する多くの出来事を前にして、いたずらに立ちすくんでいるだけのように思えてなりません。我々には、過去の成功体験は通用しない時代に突入したという自覚、頼るべき大樹も存在せず、みずからの進路はみずからが選択、決断するしか生き残るすべはないという覚悟が必要であります。
 東京が果たすべき責務は、日本の首都として、今後進むべき道を切り開き、国家存亡の危機を乗り越える牽引役となることであります。都議会の皆様と力を合わせ、新しい国の形をここ東京から発信したいと思います。よろしくお願いいたします。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例二十七件、契約案二件など合わせて三十四件の議案を提出しております。よろしくご審議をお願いいたします。
 以上をもちまして所信表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○六十七番(服部ゆくお君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明五日から十日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(三田敏哉君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明五日から十日まで六日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、十二月十一日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後二時三十二分散会

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