平成十三年東京都議会会議録第十三号

○副議長(橋本辰二郎君) 十八番野上じゅん子さん。
   〔十八番野上じゅん子君登壇〕

○十八番(野上じゅん子君) 初めに、教育問題についてお伺いいたします。
 石原知事は、東京から日本を変えるという視点で東京構想を打ち出されましたが、私は、二十五年間の教師生活で得た教育体験の中から、未来を担う子どもたちを守り抜くという立場で質問をさせていただきます。
 文部科学省が昨年末に発表した資料によりますと、おととしの一年間で何らかの処分を受けた公立学校の教員は、何と四千九百三十人に上ります。処分理由のトップは、交通事故千四百三十三人、体罰三百八十七人、わいせつ行為百十五人であり、特にわいせつ行為で処分を受けた教員は過去最高となっています。東京都においてもその傾向は同じで、その数は年々増加傾向にあります。
 そこで、お伺いいたします。第一に、教員の免許更新制度の導入についてであります。
 現在の制度では、教員の資格を取得した後は、その資質が問われるような仕組みがありません。先ほど示したように、処分を受ける教員がふえている現状を考慮し、教員免許についても更新制度を設け、常に資質と意識の維持向上を図るべきではないかと提案するものであります。例えば、ポイント制度導入による五年ごとの教員免許の更新制度です。研修や研究授業及び地域行事の参加、一般企業研修、ボランティア活動の実績等を考慮したポイントを、更新の際の判断基準にするなどの制度です。
 都教育委員会では、ライフステージに合わせた研修の機会を設けておりますが、さらなる教員の資質向上のために、全国に先駆けて免許を更新する制度を導入すべきと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 第二に、薬物乱用防止教育のあり方についてお伺いいたします。
 近年、喫煙、アルコール、シンナー、覚せい剤などの薬物乱用は、大変な勢いで拡大の傾向にあります。薬物乱用の拡大は、次の時代を担う青少年への影響もはかり知れず、未来社会への根幹を揺るがしかねない、極めて憂慮すべき事態であります。安易な方法で薬物が手に入る社会環境こそ問題です。
 先日、ある中学校で、せきどめシロップを一、二本一気に飲み、ふらふらになるという生徒が続出し、学校やPTAが総力を挙げて防止に取り組んだという事件がございました。一般には単なる薬と思われますが、この中には幻覚作用を及ぼす成分が含まれております。また、同様の成分が他の日常薬にも含まれています。都としては、こうした事態を踏まえて、医薬品の乱用防止と適正使用に向けて具体的な対応を講ずるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 また、小学校の高学年で、薬物乱用防止に関する指導を教育制度の中に位置づけてはおりますが、薬物の怖さをさらに徹底する予防教育を行い、自分で自分の身を守ることができる、強い意思と行動力を身につけた子供たちを育てることが極めて重要と考えます。このためのカリキュラムへの位置づけをも含めた、具体的な対応策の実施を訴えるものです。
 薬物乱用防止キャラバンカーは、公明党の提案を反映して、既に実施されている事業ですが、現在、八台が配置され、全国で活躍をしております。都は、このキャラバンカーを活用するなど、教育現場での薬物乱用防止を徹底すべきでありますが、都の所見をお伺いいたします。
 第三に、スクールカウンセラーの拡充についてであります。
 いじめ、不登校、学級崩壊など、教育の課題は山積しておりますが、依然として都内小中学校の不登校の数は一万人を超え、増加の一途をたどっています。また、自立の時期を迎えても、家に引きこもったまま社会参加できない青年が全国で八十万人ともいわれ、その大半の原因が不登校からであり、大きな社会現象にもなっています。
 私の住む地元葛飾区におきましては、全都に先駆けて、本年四月より、すべての中学校にスクールカウンセラーを配置いたしました。現場では大変好評を博しており、葛飾区では不登校の生徒の数は減少していくものと期待されています。
 子供たちが健全に成長している社会こそ、未来に希望が持てる社会です。教育は、子供の幸せのためにあるべきです。その意味におきましても、中学校だけでなく、この際、ぜひとも小学校にもスクールカウンセラーの配置を進めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、地域における子育て支援策についてお伺いいたします。
 近年、都市化、核家族化、少子化が急速に進み、子育てについて不安や悩みを抱えている親がふえ、その結果、子どもへの虐待件数も増加し、大きな社会問題になっています。親が安心して子育てをし、子どもたちが健やかに成長していくためには、地域ぐるみの教育が必要であります。子どもへの接し方やしつけ等、家庭の教育機能を高めていかなければなりません。現在、その役割を評価されている子ども家庭支援センターについては、今後、各区市町村で整備が進み、中心的な機能を果たすことになります。
 しかし、地域ぐるみの子育ては、もっと身近なところで行われることが望まれます。そのためには、小中学校の余裕教室、児童館、幼稚園等を利用しながら、地域の子育て経験者の方々を積極的に活用し、家庭における教育を地域が支えていく仕組みをつくっていく必要があります。
 先ごろ、東京都社会教育委員の会議によって、子育てパートナー構想の提案が行われましたが、地域における、より細かな子育て支援策が待望されております。そこで、都教育委員会として、こうした趣旨を踏まえた文部科学省の補助事業、子育て支援ネットワークの充実等を積極的に活用した新たな施策を進めるべきと考えますが、都の所見を伺います。
 ところで、家庭にいる主婦の子育て対策について、我が党はたびたびその充実策を訴えてきたところであります。近くに父母や身内もなく、複数の乳幼児を孤立して育てている若い母親からは、一日じゅう二十四時間子どもにまとわりつかれ、肉体的にも心理的にも負担感が大きいなど、支援を求める切実な声が相次いでいます。都としても、ファミリー・サポート・センターでの一時預かりを拡充するなどの施策を推進していますが、費用負担や利用の困難さから、さらに改善が求められております。また、認可保育園での一時保育の利用も可能ですが、いまだ全認可施設の一割程度でしか利用ができません。制度の趣旨からいえば、高齢者における在宅介護支援センターのように、子育て支援ルームというようなものが、中学校区に一カ所ずつでもあればよいと思いますが、現状では、子ども家庭センターもいまだ全区市町村に設置されるに至っていません。
 福祉改革プランを推進する中で、少子化社会においても、子育てに奮闘する若い母親を温かく支援する仕組みを、区市町村と連携して充実することが求められていますが、都の見解をお伺いいたします。
 次に、不妊治療の保険適用の拡充についてであります。
 不妊で悩んでいる夫婦は、十組に一組ともいわれております。子どもが欲しいとの願いから、人工授精しますと一万五千円、体外受精は三十万円、顕微受精は四十万円から五十万円かかります。もちろん病院施設によって多少価格に差はございますが、高額であることに変わりはなく、若い夫婦にとっては大変な負担となっています。現在、保険適用されているものは、排卵誘発法にかかる注射や薬だけであります。都としても、不妊症に対する相談業務などを行っておりますが、都民の声等に寄せられる意見では、保険適用の範囲拡大を望むものが圧倒的に多いと聞いております。少子化に歯どめをかける意味でも、都にあっては、さきに触れた治療を保険適用の対象とするように、国に対しても強く働きかけるべきであります。所見をお願いいたします。
 最後に、地元葛飾区の課題である三菱製紙工場跡地の開発と、京成押上線四ツ木駅から青砥駅間の連続立体交差事業について伺います。
 まず、三菱製紙工場跡地開発は、JR金町駅の北西五百メートルと近接した場所にある、十八・二ヘクタールの広さがあります。本年三月に、都市基盤整備公団が購入し、開発に向けた検討が進んでいるものと仄聞しています。地元では、この広大な土地を自然環境や水辺を生かし、多様な世代が暮らし、若者が集う地域として発展させ、自然環境の保全をも配慮したまちづくりをすべきとの声も強く、あるいは大学等の学術機関の誘致をという熱い期待の声も寄せられています。また、まちの発展に向けて、防災上の機能として、さらには金町駅周辺との整合性のある開発での位置づけなどについて、議論が盛んになっております。今後、こうした地元区の熱い期待にこたえるために、都としても支援を行うべきであります。答弁を求めます。
 次に、四ツ木駅から青砥駅間の連続立体交差事業については、本年二月、都市計画決定が行われ、地元にとっての大きな朗報となっています。京成押上線が成田空港と羽田空港を直結させ、国際都市東京を支える重要な路線であることはもとより、地元区にとっては、渋滞解消という交通上の理由やまちの安全性の視点から、一日も早い着工、完成が望まれています。この事業に対する都の認識と、今後の見通しをお聞きいたします。
 以上で質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 野上じゅん子議員の一般質問にお答えいたします。
 教員の免許更新制度についてでありますが、現在、中央教育審議会で審議中とは聞いておりますけれども、私としては、これ、お聞きして、ごく当然のことと思います。この激しい変化の時代に、一度取得した資格というものが永久に続くということは、ちょっとどの分野でも考えられないことでありまして、教員の資質、能力の向上は、教育改革を進める上で根幹にかかわる最重要課題の一つであります。
 教員一人一人の意識の改革と意欲的な教育活動が、二十一世紀の日本を担う子どもたちの教育のために最も重要なことでありまして、感性、個性をはぐくむ指導力のある教員が求められております。こういう新しい制度に反対をする節もあるでしょう。そういう先生たちが、ご自身どういう教員としての資格を持っているかということは、三者的に眺めれば自明なことと思いますし、私は、ぜひこういう制度を導入することで、日本の教員の資質というものを、やはり向上といいましょうか、とにかくまともなものにしてもらいたいと熱願するものの一人でございます。今後、この中央教育審議会で、教員の資質向上のための施策の一つとして、真摯な議論がなされることを期待しております。
 他の質問については、教育長及び関係局長からお答えいたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、薬物乱用防止に関する指導についてですが、薬物乱用が低年齢化している状況を踏まえますと、小学校からの指導の徹底を図ることが必要であると考えております。
 児童生徒が薬物に絶対手を出さない態度あるいは判断能力を育てるためには、従来からの指導方法に加えて、グループ活動等による実践的な理解を図ることが大切でございます。
 このため、都教育委員会では、ロールプレーイングやディベートなど、多様な学習例を数多く取り入れた健康教育指導資料を本年度中に作成、配布する予定でございます。
 また、警察官、麻薬取締官OBなどが講師として直接子どもたちに指導します、薬物乱用防止教室をすべての学校において開催するよう、区市町村教育委員会や学校に対して指導の徹底を図りますとともに、薬物乱用防止キャラバンカーの活用についても情報提供に努めてまいります。
 次に、小学校へのスクールカウンセラーの配置でございますが、現在、スクールカウンセラーは国庫補助事業として、不登校、いじめ、暴力行為など課題の多い中学校に配置しており、順次全中学校に配置する計画でございます。
 スクールカウンセラーを配置した中学校では、小学校の教員や保護者からの相談などをあわせて行っているところでございますが、今後は小学校の実態をも考慮しまして、スクールカウンセラーの配置等を拡大する中で、小学校での活用について周知を徹底し、小学校からの相談や派遣要請などを受けやすくする体制づくりを工夫してまいります。
 次に、地域における新たな子育て支援についてですが、お話しのように、親が安心して子育てができるよう、子育てを地域の人々が支え合い、家庭や地域の教育力の回復を図っていくことは重要なことであると考えております。
 都教育委員会としましては、地域の子育て支援の仕組みとなる子育てパートナー事業を実施してまいりたいと考えております。そのため、新たに、子育て経験者等がボランティアとして、子育て中の親の相談相手となる子育てパートナーの養成を推進してまいります。来年度、二つの区市でモデル事業として実施することとしまして、そのために、子育てパートナーの研修に必要な情報資料の提供や経験交流集会を実施しますとともに、今年度中にも、区市町村や都関連部局で構成する子育て支援連絡協議会を開催し、具体化に向けた検討を行ってまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、医薬品の乱用防止と適正使用についてでございますが、医薬品の中には麻薬等の成分が含有されているものがございます。特に、せきどめシロップは、乱用により、ご指摘のとおり幻覚作用等を及ぼす危険性が高いため、都では医薬品製造業者等に対し、味や処方を乱用しにくいものに変えるよう指導してまいりました。その結果、昨年末からその方向へ改良された医薬品が市販されております。
 また、せきどめシロップを含めた医薬品の販売に当たりましては、用法、用量の説明を十分に行うよう薬局等に指導をしております。あわせて、ホームページを活用し、都民への医薬品に関する情報提供の充実を図るなどして、今後とも、医薬品の乱用防止と適正使用の徹底に努めてまいります。
 次に、不妊治療の保険適用範囲の拡大についてでございますが、不妊治療については、現在、国の厚生科学審議会において、生殖補助医療に関する制度整備の具体化について鋭意検討が行われておりますが、治療の安全性や倫理面など、さまざまな課題が残されていると聞いております。
 都といたしましては、こうした国の動向を見守ってまいりますとともに、不妊で悩む方々が、専門家や同じ悩みを経験された方に電話で直接相談できる不妊ホットラインなどによりまして、引き続き必要な相談、助言に努めてまいります。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) 子育て支援についてのご質問にお答えいたします。
 女性の社会進出が進み、保育サービスの充実が求められておりますが、その一方で、家族や地域の養育力が低下する中、子育てで問題を抱えながら孤立しがちな親に対する支援が重要な課題となっております。
 都では、こうした子育てに悩む親に対する相談、相互交流、一時保育等のサービスを提供する場として、子ども家庭支援センターの設置を促進いたしております。
 福祉改革推進プランに基づき、すべての区市町村への設置を図る方針であり、ご指摘の趣旨を踏まえ、区市町村と協力しながら、広報、周知に努め、子育て支援策の充実を図ってまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 三菱製紙の工場跡地の開発についてのご質問にお答え申し上げます。
 跡地の開発は、基本的には土地の所有者が、ここでは都市基盤整備公団が主体となりまして、地元区などとも十分協議、調整を行い、実施するものでございます。
 東京都といたしましては、今後、工場の移転に伴い大規模な土地利用転換が想定されますことから、近く設置が予定されている関係者による検討の場を通じて、必要な技術的支援を行ってまいります。
   〔建設局長山下保博君登壇〕

○建設局長(山下保博君) 京成電鉄押上線の四ツ木駅から青砥駅に至る区間の連続立体交差事業についてでございますが、本事業は、交通渋滞の解消、交通安全の確保、及び分断されているまちの一体化を図るとともに、立石駅周辺の防災性向上の観点からも大変重要でございます。
 この区間は、本年一月に都市計画決定し、現在、地元区や鉄道事業者と協力して用地測量を実施しているところでございます。
 今後、地元区のまちづくりと連携を図りながら、早期事業化に努めてまいります。

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