平成十三年東京都議会会議録第十三号

   午後四時十一分開議

○議長(三田敏哉君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十八番吉野利明君。
   〔四十八番吉野利明君登壇〕

○四十八番(吉野利明君) まず初めに、多摩の将来像二〇〇一についてお伺いいたします。
 現在、多摩地域は発展の可能性にあふれた極めて魅力的な地域となっています。先端技術産業の集積や多数の大学立地、豊かな自然の存在などにより、首都東京の再生を担う多摩地域の役割はますます重要となってきています。また、多摩地域は、埼玉や神奈川など環状方向での人や物の動きが活発化し、東西方向も含め、東京圏の中での面的な広がりを見せるとともに、各市町村においては個性的なまちづくりに向けた主体的な取り組みが始まっています。
 しかしながら、一方では少子高齢社会の進展や長引く不況など、社会経済状況の変化の中で、地域における産業振興や効率的な物流システムの構築、環境と調和したまちづくりなど、総力を挙げて取り組まなければならない課題が山積していることも事実であります。
 このような状況の中で、今後、多摩地域の着実な発展を目指すためには、公共交通や道路など都市基盤の整備を初め職住近接のまちづくりなど、多摩地域における活力に満ちた質の高い住民生活の創出に向けて全庁的に取り組んでいく必要があります。
 こうした背景のもとで、東京都は先月十五日に、多摩の将来像二〇〇一を発表しました。私は何度か読み返しましたが、夢のような多摩の未来が浮かび上がってくる気がいたしました。横田基地ではなく、横田空港から海外へ出かける日が、もう間もないことのような気にもなってきます。折しも知事が先日ワシントンを訪問したのも、その実現に向けた地ならしではないのかとさえ思うほどです。ともあれ、今後の発展を見据えた多摩振興のための新たなビジョンとしては評価するものであります。
 そこで、多摩地域を取り巻く環境の変化を踏まえ、多摩の将来像二〇〇一について、どのような基本的考え方のもとに策定したのか、見解をお伺いします。
 多摩地域の発展には、各地域が居住、業務、産業、文化など多様な機能を集積させ、自立性を向上させながら、個性あるまちづくりを進めていくことが必要です。その際には、東京圏全体を視野に入れた活力ある都市づくりのもとで、多摩の住民が快適な住民生活を送れる環境づくり、まちづくりが求められますが、多摩の将来像二〇〇一においては、今後、どのような多摩地域を目指そうとしているのでしょうか、お伺いします。
 さて、多摩の将来像二〇〇一は、十五年先を見据えた長期的な構想であります。将来像として描かれているビジョンは適切だと思いますが、実現しなければ、単なる絵にかいたもちになってしまいます。今、中央線の連続立体交差事業の工事が始まっていますが、これとて構想から実に三十年もたってやっと実現という、これまでの多摩地域のまちづくりのスピードからしますと、十五年先を見据えたこの構想の実現に疑念を持たざるを得ません。
 今後、構想である将来像に魂を吹き込み、その着実な実現を図っていくことがぜひとも求められます。そのため、東京都は、積極的に多摩振興のかじをとりながら、市町村と緊密に連携、協働しつつ、活力ある多摩地域の実現を目指していかなければなりません。
 また、今後、都市再生、首都東京の再生を図っていくに当たっても、多摩地域は首都圏メガロポリスの重要な一部として、さまざまな都市機能を担いつつ、首都圏全体のバランスある発展、再生に寄与していくことが求められます。その意味から、多摩地域の振興は都政の最重要課題の一つであり、全庁一丸となった取り組みが必要不可欠であると考えます。そして何よりも、今後、多摩地域が着実な発展を図るためには、知事みずからが強いリーダーシップを発揮されて、多摩振興に邁進していただくことが重要であります。
 そこで、活力と魅力にあふれた多摩の創造を目指し、今後の多摩振興に向けた知事の決意をお伺いいたします。
 さて、これからの東京は、国際競争力を一層高め、豊かで安全、快適な魅力ある都市生活が営めるよう、首都東京としての再生を図り、活力に満ちた都市づくりを強力に進めていくべきであると思います。中でも、道路においては、交通渋滞の解消のため、放射、環状のネットワーク形成が急務であり、沿道環境の改善や環境負荷の低減などを図りながら、積極的に道路整備を進めていくことが重要であります。
 そこで、東京都では、計画をより環境に配慮したものとするため、計画策定の早い段階から複数案を示し、環境への影響を総合的に調整する総合環境アセスメント制度を導入することとしましたが、我が国初の制度化について、これまで取り組んできたことを高く評価するものです。
 この制度は、計画策定の段階から情報を公開し、都民の意見を聞きながら計画内容を調整していく仕組みでありますが、計画策定に当たって広く都民の意見を反映させることは、結果として早期の事業化につながり、都市再生が促進されるものと考えます。先ごろ、この制度により、東京都として放射第五号線及び三鷹三・二・二号線の基本計画を決定しましたが、総合環境アセスメントの試行過程を踏まえ、地元の意見をどのように反映し、今後の整備に生かしていこうとしているのか、お伺いをいたします。
 一方、多摩地域においても、先ほど来触れてきていますように、さらなる発展が求められている中で、道路などの交通基盤の充実が必要不可欠であります。特に、多摩地域と区部を結ぶ幹線道路は、甲州街道や青梅街道などに限られ、一部の道路に交通が集中している状況にあります。放射第五号線及び三鷹三・二・二号線も、多摩地域と区部を結ぶ重要な幹線道路でありますが、今回、総合環境アセスメントを実施した区間だけが唯一未整備であり、東八道路がここでとまっています。
 このため、甲州街道など東京を東西につなぐ道路の交通混雑を招くとともに、三鷹市の下本宿通りなど、道幅が狭い生活道路に通過交通が流入し、歩行者など市民の皆さんの安全にも問題があると感じています。
 このようなことから、放射第五号線及び三鷹三・二・二号線をできる限り早期に整備していく必要があると考えますが、今後の見通しについてお伺いします。
 次に、ペット動物の中の犬について何点かの質問をいたします。
 今日、厳しい経済情勢のもと、物質優先の反省から、都民の価値観も物から心へと変化しており、私たちの心をいやす存在として、犬や猫など動物との触れ合いが重要視されております。犬の登録数を見ると、全国においても、また東京においても増加の一途にあり、平成十二年度には都内の登録犬数は三十二万頭を超えています。また、いわゆるペットショップや動物に関連した雑誌類もふえてきているようです。このように、動物の存在は都民生活の中に深く浸透していることがうかがえます。
 こうした動物への高い関心を受けて、動物保護相談センターには、飼い主から逸走した犬や猫について、年間二万五千件以上もの問い合わせがあると聞きます。確かに、狂犬病予防法や東京都動物の保護及び管理に関する条例により、収容した動物の情報提供の制度として公示制度が実施されていますが、必ずしも飼い主にとって便利な方法にはなっていないのではないだろうかという気がいたします。
 今日、インターネットなどIT技術が進歩していることを考えると、都が保護収容した動物の情報についても、これらの最新のIT技術を活用して、迅速かつ便利な情報提供を行うことが必要であると考えますが、いかがでしょうか、お伺いします。
 また、東京のような都市部で動物を飼うためには、それに応じた一定のルールにのっとって飼う必要があります。飼い主は、動物の習性や都市生活を営む上での他人への配慮について、十分な知識がないまま動物を飼い始めると、動物を適切に取り扱うことができず、結果として、動物にとっても、飼い主にとっても、また周りの人々にとっても不幸なことになってしまいます。動物を逸走させてしまうということもその一つでありますが、飼い主がきちんとしつけを行い、適切に接することができるように、都は、飼い主及びこれから動物を飼おうとする都民に対してどのような対応を行っているのでしょうか、伺います。
 次に、ペットとしての犬ではなく、人間の体の一部としての介助犬について質問いたします。
 先日、私の事務所の近くにある日本介助犬アカデミーの専務理事である高柳友子さんの来訪を受けました。高柳さんは医学博士であり、ボランティアで日本介助犬アカデミーの仕事をされている方です。介助犬という言葉は知っていても、具体的な内容について話を聞いたのは初めてのことでした。
 障害者の日常生活を支援する動物としては盲導犬が広く知られており、現在、九百頭近くの盲導犬が視覚障害者の自立と社会参加に貢献していることは、広く知られていることであると思います。先日、あのニューヨークの惨事の折にも、盲導犬とともに辛うじてビルを脱出した方の無事が報じられておりました。
 最近、盲導犬以外に、聴導犬、介助犬という言葉を耳にする機会がふえています。盲導犬、聴導犬、介助犬とも、障害を持つ人間の個々のニーズに合わせた補助作業ができるように訓練された犬で、米国ではサービスドッグともいわれています。その中で、盲導犬と聴導犬については作業内容が比較的定まっています。
 一方、介助犬を見てみると、介助犬の作業内容は大変広くなっています。介助犬とは、しかるべき知識と経験を有する訓練者によって、肢体不自由の一定の介助ができるよう訓練され、生活等の訓練をともに修了した肢体不自由者によって使用されている犬とされています。
 介助犬の介助内容としては、一、手の届かないものを持ってくる、落としたものを拾って渡す、ドアのあけ閉めを行う、衣服などの脱着を手伝うなど、使用者の上肢機能を代償する介助、二、車いすを引く、エレベーターや電気のスイッチを押す、歩行や立位の支持をする、体位変換の手伝いをするなど、使用者の状態に応じて作業を補完する介助、三、緊急時に電話の受話器を持ってくる、人を呼んでくるなど、他の人との連絡手段を確保する介助等が挙げられます。まさに、自分の体の一部としての機能を補っているわけです。
 介助犬を使用する障害者は、障害の種類や程度も異なるため、介助ニーズも千差万別です。障害者のニーズに的確にこたえられるようにするためには、今後、介助犬訓練基準の作成や介助犬訓練者の養成等、法整備とあわせて行っていく必要があると考えますが、このことに対する都の認識と今後の対応について所見をお伺いいたします。
 先述の高柳さんから一冊の本をいただき、読ませていただきました。一匹のペット犬が介助犬へと育っていく過程が、その使用者の苦闘とともに描かれています。その中で、一方で、アメリカでは介助犬が多く使用される現状の中、統括する公的機関はなく、自己申告制のため、さまざまなトラブルが生まれていることも報告されています。訓練を受けているはずの犬が公衆の前でほえたり、介助犬の順番待ちリストを上げてもらうため、法外なお金を育成団体から要求されたりと、高柳さんは、欧米の制度が完璧だとはいえない、日本は後発だからこそ、欧米をある面では反面教師として、介助犬を行政や医療を巻き込んだ福祉政策として確立していくべきだといっています。
 国も、この秋の臨時国会で介助犬を含めた身体障害者補助犬の法制化を準備していますが、介助犬の具体的な基準づくりはまだこれからという段階と聞いております。国の動きに先駆け、東京から日本を変えていこうとする石原知事のもとで、都としての積極的な対応を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 吉野利明議員の一般質問にお答えいたします。
 私も若いころ、大学生のころ、三多摩の一部であります小平と国立で四年間過ごしました。当時から今日までの多摩地域の変化を眺めますと、まさに隔世の感があります。結果として、二十三区とは全く違う性格の新しい都市にとって、大都市にとって、東京にとって不可欠な部分が造成されたと思っております。むしろ、二十三区よりも、スペースという点から見ても、あるいは他県とのアクセスなどを見ても、非常に可能性の多い地域だという気がつくづくいたします。
 東京の再生は日本の再生でありまして、その一翼を担う多摩地域の振興は、首都圏のバランスある発展に大きく寄与するものと考えております。今後、活力と魅力にあふれた多摩地域の創造を目指して、積極的に多摩の振興を図っていきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 多摩の将来像にかかわります二点のご質問にお答えいたします。
 まず、多摩の将来像二〇〇一策定の基本的な考え方でございますけれども、お話のように、現在、多摩地域は先端技術産業の集積や豊かな自然など、発展の可能性に満ちた魅力的な地域となってございます。今後、多摩地域は、みずからの個性、独自性を伸ばしながら、区部との格差是正の観点ではなくて、自立性を高めて主体的な発展を目指すことが必要となっております。こうした考え方のもとに、新たなビジョンとして多摩の将来像を策定いたしました。
 次に、多摩の将来像二〇〇一において、どのような多摩地域を目指しているかということでございますが、今後、多摩地域は、自立と連携を基本理念といたしまして、活力と魅力あふれる多摩の創造を目指してまいります。具体的には、都市基盤の整備が進み、産業、物流機能が充実した東京の活力の一翼を担う多摩、それから、環境と調和し、職住近接のまちづくりなどが進んだ全国に誇れる多摩の生活と魅力という、二つのグランドデザインの実現を図ってまいります。
   〔建設局長山下保博君登壇〕

○建設局長(山下保博君) 道路に関しまして、二つのご質問にお答えいたします。
 まず、放射第五号線及び三鷹三・二・二号線の整備における地元意見の反映についてでございますが、この路線は、区部と多摩地域を結ぶ重要な幹線道路でございますが、当該計画区間だけが唯一未整備の区間となっております。この区間には玉川上水が含まれておりますことから、より環境に配慮して整備をするため、総合環境アセスメントの試行を行ってまいりました。
 整備の基本計画策定に当たりましては、この試行における関係区市長や都民の意見、また、これらを踏まえた審査意見書などを尊重し、放射五号線区間では、玉川上水の保全などを配慮いたしまして、都市計画幅員を五十メートルから六十メートルに広げる案を採用いたしました。また、三鷹三・二・二号線区間では、隣接する事業中区間の幅員を考慮し、現在の都市計画幅員三十メートルで整備する案を採用いたしたところでございます。
 今後、玉川上水を保全するための緩衝緑地や沿道環境に配慮した環境施設帯などについて、地元住民などの意見を可能な限り反映しながら整備を進めてまいります。
 次に、整備の見通しについてでございますが、本路線の早期事業化を図るために、先ほど申し上げました基本計画などに関する地元説明会をつい先日開催いたしたところでございます。三鷹三・二・二号線区間につきましては、早速、沿道環境への影響調査を進めまして、来年度には測量を実施してまいります。また、放射第五号線区間につきましては、幅員を広げるため、現在、都市計画変更や条例アセスメント手続の準備を進めているところでございます。
 今後とも、地元の理解と協力を得ながら、円滑な事業の推進に努めてまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 動物行政について、二点のご質問にお答えいたします。
 まず、保護収容動物の情報提供についてでありますが、動物を保護収容した場合は、狂犬病予防法及び東京都動物の保護及び管理に関する条例に基づく公示のほか、動物保護相談センターにおいて、電話等により、都民からの問い合わせに個別に対応しております。
 ご指摘のIT技術の活用については、インターネットにより、日々のデータ更新と二十四時間利用が可能な画像情報を取り入れたシステムを構築することが、飼い主を初めとした都民サービスの向上につながると考えており、速やかに情報提供を開始する予定であります。
 次に、飼い主及びこれから動物を飼おうとする都民に対する対応についてでございますが、現在、動物保護相談センターや保健所等において、しつけ方教室等の講習会のほか、小冊子やリーフレットを作成し、動物の適正な飼育方法の啓発に努めております。また、これら講習会の日程を初め、犬や猫の飼い方についての情報は、衛生局のホームページによる提供も行っております。
 なお、動物保護相談センターでは、逸走させた動物の飼い主に対して、飼い主としての責任やしつけ等、個別の啓発や講習を行った上で返還をしております。今後とも、これらの内容の充実を図ってまいります。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) 介助犬についてのご質問にお答えいたします。
 現在、介助犬は、育成訓練などについて法律的な位置づけや基準などがなく、個々の民間団体が育成しているのが現状でございます。近く国が検討会を設置し、介助犬の訓練基準や認定のあり方などについて検討する予定と聞いており、都としても参加する方針でございます。
 今後、この検討状況などを見守りながら、適切に対応してまいります。

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