平成十三年東京都議会会議録第十三号

○副議長(橋本辰二郎君) 六十番森田安孝君。
   〔六十番森田安孝君登壇〕

○六十番(森田安孝君) 当面する都政の課題について、提案を含め、質問をいたします。
 先端技術を活用し、夢と希望あふれる新しい世紀にふさわしい島しょの振興、活性化対策について、具体的な提案を含め、質問をいたします。
 第一は、火山エネルギーの有効活用です。三宅島を初め伊豆諸島は富士火山帯の上にあって、火山エネルギーの宝庫です。八丈島では、このエネルギーを地熱発電に活用し、島で使用する電力の三分の一を供給しています。なぜ三分の一かというと、電力使用量が最小限になる春の明け方に合わせるためです。なぜなら、地熱発電は発電量の調整ができにくいため、現状ではこの最小値を発電し、それ以上は、必要な電力はディーゼル発電で賄っています。しかし、地下のエネルギーの量は十分あります。
 そこで、提案です。地熱エネルギーを有効活用するため、使用量が最大となる夏の昼間に必要な電力を発電できるプラントを設置し、使用量が少ないときの余剰電力で水蒸気を水素に変換します。この水素に変換するのがポイントです。ご承知のとおり、水素エネルギーは無公害で、未来のエネルギーとして自動車産業やエネルギー産業が大変に注目しています。十年以内には水素を燃料とした自動車が東京の町中を走ることが予想されています。欧米ではダイムラーなどが、日本ではトヨタ、ホンダなどが積極的に実用化に取り組んでいます。日本と同様、地熱エネルギーの豊富なアイスランドでは、実験段階ですが、水素燃料で三台のバスが町中を走っているそうです。また、ピナツボ火山で有名なフィリピンでは、完成している原子力発電所を稼働せず、地熱発電で電力を賄っているそうです。八丈島、三宅島などの島しょで水素エネルギーを製造し、船で東京に運び、既存のディーゼル車を水素を使用するエンジンに転換すれば、都内で無公害の車が走行します。しかも、都内で生産される自前の無公害のエネルギーです。夢のような計画です。
 今こそ豊富な火山エネルギーの活用について、都が旗振り役となり、電力会社、自動車メーカー、燃料会社、研究機関などの先頭に立って、まず実用化への研究に着手すべきです。十年単位の壮大な事業ですが、それだけに東京都以外にはできないと思います。このアイデアは、東京都立大学の若き学者の提案です。先見性ある知事の決断を期待いたします。所信を伺います。
 第二は、海洋深層水の活用です。都は、伊豆七島、小笠原諸島などを抱えた全国一の海洋自治体です。したがって、海洋資源をもっと活用すべきです。例えば、海洋深層水です。海面から三百メートル以上深いところの海水は、さまざまな有用な特性を持っています。主な特性は、ミネラルが多く、温度が一定であり、汚染されてなく、病原菌などが少ないことなどが特徴です。高知県、富山県、沖縄県などでは、魚の養殖など水産分野で大きな成果を上げています。また、水産分野以外でも、この特性を生かして、発電や淡水の製造、冷房や花き栽培の温度調節などに活用できます。さらに、ミネラルが豊かであるために、食品、美容、薬品などへ利用するための研究も進んでいます。海洋水ですので、無限ともいえる資源であり、無公害に近い、環境に優しい資源です。高知県、富山県などは、県立の研究所を設立して研究しています。最大の海洋自治体である都は、島しょの振興、活性化につながるこのテーマに取り組むべきです。所見を伺います。
 つい最近まで、時代変革の旗手はITでありました。ITがバラ色の未来の中心的存在でした。しかし、今やIT不況、ハイテク不況等、不況はITからといった、不況の代名詞になってしまいました。時代の変化は激しいといっても、余りにも激し過ぎるように思います。知事は、電子都庁推進計画の前書きで、ITは、産業革命に匹敵する歴史的転換を社会にもたらすといわれております。先端技術に造詣の深い知事は、現在のITの状況と今後についてどのように認識されていますか、伺います。
 次に、具体的に伺います。
 東京のベッドタウンである市川市は、市民の便宜を図るため、市内はもちろん、首都圏の七百十六カ所のコンビニエンスストアにある端末から、スポーツ施設や会議室などの施設の予約ができるサービスを提供しています。また、神奈川県横須賀市は、電子入札の便宜を図っています。入札情報、提出書類の入手は、市役所に行かなくても可能です。三鷹市は、教育関係の電子化が充実しており、すべての市立小中学校がホームページを持ち、運動会や授業参観のお知らせ、教員の紹介、学年便りなど、工夫を凝らして情報を提供しています。
 推進計画では、電子都庁実現によるメリットとして、都民、事業者へのサービス向上として、インターネットの利用で来庁しないで済むようになるため、都民の可処分時間が約千百六十二万時間創出される、それに伴い、来庁しなくてよいので、交通費が約二十一億円軽減されると報告されています。しかし、都庁への来訪者は、減っているとは思えません。現時点ではどのようなサービスを行い、それにより都民の何人ぐらいが恩恵を受けているのでしょうか。また、将来、目標どおりのサービスを実現するために必要な予算額と達成年次をご答弁ください。
 また、都庁内の事務効率化として、職員に一人一台のパソコンを配備して、職員の可処分時間の創出が二百五十万時間、ペーパーレス化による事務コストの軽減が約十八億円といっております。パソコンを利用しても、ペーパーレスについては厳しい面があると認識していますが、この点は現在どこまで進んでいますか。いつまでに目標を達成し、そのために予算はどのくらい必要なのでしょうか。
 さらに、このような電子都庁の新規システムだけでなく、既存システムにも目を向ける必要があります。IT技術は猛スピードで進んでいます。税務や住宅管理、福祉や保健医療のシステムなど、都民生活に密着した多くのコンピューターシステムが運用されていますが、中には陳腐化したシステムが都民サービスの妨げになっている例もあります。早急に既存のコンピューターシステムの見直しを行うべきです。ご答弁ください。
 教育問題について伺います。
 都内には、体調を崩し、病院への入院を余儀なくされている児童生徒が少なくありません。小児がん、腎臓病などは長期になることが多いといわれています。その際、病状にもよりますが、子どもたちは治療を受けながら、社会復帰をしたときに備え、病院内で学習をしています。すべての病院ではありませんが、病院内に設置された教室で、または派遣された教員により、病室で個人授業を受けるなどの形で授業をしております。病院の医師の話では、学習を受けている児童生徒の方が病気の回復が早いといわれています。この病院内教室は、ごく一部の市立小中学校所属の極小規模のものを除き、他はすべて都立養護学校の所属になっています。都教育庁は、国立がんセンターを初め、国立病院、都立病院、私大病院などに教室を設置したり教員を派遣したりして、病院内教育を行っています。
 本日は、みずからも小児がんを克服し、現在は院内教育の教員として活躍されている教員を初め、父兄たちの現場から聞いてきた課題について伺います。
 第一は、病院内教室は、肢体不自由養護学校の所属になっています。ところが、肢体不自由養護学校は、大方、九割以上の児童生徒が知的障害を持ち合わせ、普通校のような教科指導は難しい状況にあります。一方、小児がんや腎臓病、アレルギーなどで入院中の子どもは、知的障害は持っておりません。よって、普通学級のような教科指導が病院内分教室には求められています。しかし、東京都の場合、病院内分教室は肢体不自由養護学校の所属になっていることから、さまざまな課題が生じています。他府県はほとんどが病弱養護学校の所属になっています。このことは、平成七年の東京都病院内教育等検討会の報告でも問題点として指摘されています。早急に院内分教室を久留米養護学校のような病弱養護学校へ所属を変えるべきです。その際、現在は病弱養護学校に高等部が設置されておりませんが、現在の院内高等部を病弱養護学校の高等部とし、存続、移行させるべきと考えます。
 第二に、東京には専門病院、大学病院が多く、全国から子どもの患者も集まってきています。しかし、住民票が東京にない高校生は、院内分教室が都立のため、入学ができないそうです。他の府県ではそのようなことはなく、例えば隣の埼玉県は、都民の高校生でも入学ができます。教育庁はかたくなにルールを守るのではなく、学ぼうとする子どもの側に立って運営すべきです。ご答弁ください。
 第三に、来年三月一日に、世田谷区にある現在の国立大蔵病院の敷地に、国立成育医療センターが開院します。国はこれを日本の小児成育医療の基幹的、センター的病院と位置づけ、医療のみならず、よりふさわしい病院内環境を目指すと聞いております。その中には都立養護学校の分教室も入ることが決まっております。院内分教室の規模としてはトップクラスのものになるだろうということで、既に関係者の間では全国的に注目されています。
 病院には、当然、就学前の幼児も入院しています。大中規模の病院では、幼児への保育ボランティアの活動が、ここ十年の間に広まってきています。しかし、スペースや遊具の問題など、さまざまな困難を抱えているのが現状です。国立医療センターでは、病院内ボランティアの積極的導入をする予定で、現在、当初の予定を大幅に上回る五百名近い応募があるそうです。病院内分教室も、学校開放や教育相談など、開かれた学校として、このようなボランティアの方々や保護者と積極的に協力し合い、幼児の支援を行っていくなど、全国の模範になる病院内分教室を目指すべきです。所信を伺います。
 以上で質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 森田安孝議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、島しょでの地熱発電についてでありますが、ご承知のように、日本は世界最大の火山脈の上にございます。アラスカに発してアリューシャン、日本、マリアナ、フィリピンまで及ぶ最大のファイアリングでありますが、そのせいで、このごろボーリングの技術も進みまして、コストも安くなりましたので、日本じゅうどこを掘っても温泉が出ます。東京でもどこでも出ます。そういうことで、これほど地熱発電に恵まれた地勢学的条件というのは、世界の他にないような気がいたしますが、いずれにしろ、地熱発電によって二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーが供給されるわけでありまして、そういう意味で、我が国でも全国あちこちで行われておりますが、また、この地熱発電を使って水素をつくり、都内で利用するというアイデアは、非常にユニークな提案であると思います。しかし、コストや技術の面で多くの問題があるのではないかと思いまして、今後の技術動向や研究成果を見守りたいと思いますが、現にヨーロッパなどでは、地熱発電に限らず、コストは少し高めでも、地球環境というものを保つために、あえてインセンティブもつけて、単価が高くともきれいなエネルギーというものを使おうじゃないかという傾向もございまして、これから私たちは、やっぱりこういう問題を本気で考える時期に来たんじゃないかという気がいたしております。
 次いで、ITの基本認識についてでありますが、先般、私、ある人の紹介で、日本に来ておりましたシリコンバレーの幹部といいましょうか、あそこで大事な仕事をしている責任者たち数人と会食いたしました。
 そのときに彼らがいったことは、余りITに期待しない方がいいと。これは、確実に物をつくってその消費を待つというような、そういう技術体系ではなくて、ただただ便利、便宜さを提供するだけであって、そういう意味では、何というのでしょうか、非常に枝葉のような、大きなフルーツを生んでいく技術体系ではないといっておりました。
 その時点で、アメリカはまだバブルでありましたが、アメリカの経済繁栄の非常に多くの部分をITの技術体系が支えているということ、そのものが非常に危険だということを、彼ら自身がいっておりました。
 いずれにしろ、しかし日本はその普及がおくれているわけでありまして、東京都も都民に対する便宜供与ということからも、入札の方法が新しくなる云々を含めて、ITというものを積極的に取り組む準備をしておりますし、もしも東京を中心にした三千三百万の、いわゆる首都圏を構成している七都県市が速やかに電化されましたら、これはある意味で、人類史の中で新しい一つの文明の革命だと私も思っております。
 そういうことで、東京都はITの利点、欠点を踏まえながら、その可能性を最大限に引き出しまして、都民の暮らしや経済を支えていくすべにしたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 病院内教育に関します、三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、病院内分教室についてですが、都教育委員会では、長期にわたって病院に入院しております児童生徒に対して教育の機会を確保するため、病院内に肢体不自由養護学校の分教室を設置したり、教員を病院へ派遣する訪問教育を行っております。
 現在、肢体不自由養護学校等で実施しております病院内教育につきまして、病院に入院している児童生徒の病類が大変変化してきておりますことから、多岐にわたる病類に応じまして、教科指導をより一層充実することのできるよう、肢体不自由養護学校における病院内教育のあり方について、その位置づけも含め、早急に検討をしてまいります。
 次に、住民票が都にない高校生の受け入れについてですが、養護学校の病院内分教室や病院内訪問教育を希望する高校生につきましては、都民であることと、学籍を高校から養護学校へ移すことを条件といたしておりますが、お話しのように、養護学校の病院内分教室や病院内訪問教育を希望する高校生につきましては、本人の学ぶ意欲にこたえる必要があること、また、入院期間の短期化や、入退院を繰り返す傾向にあることなどを踏まえまして、住民票の移動の有無については、見直しを行ってまいります。
 次に、入院をしている幼児への支援についてですが、来年三月開設予定の国立成育医療センター内に、現在、国立小児病院内にございます都立光明養護学校、そよ風分教室の小中高等部の移転を予定をいたしております。
 お話しの病院内ボランティアにつきましては、病院において、面会者の子どもの一時預かりや幼児の図書の読み聞かせ等につきまして、幅広く活用すると伺っております。
 都教育委員会としましても、今後、病院と相談の上、保護者や病院内ボランティアと協力をしまして、小学部低学年と幼児との交流を行うなど、開かれた分教室づくりに努めてまいります。
   〔産業労働局長浪越勝海君登壇〕

○産業労働局長(浪越勝海君) 海洋深層水についてでございますが、近年注目されている海洋深層水は、新たな可能性を持つ海洋資源であり、お話しのように、高知県などでは水産分野での応用に向けた研究が進められております。
 東京の広大な海域を活用するため、海洋深層水の研究に取り組むことは、意義があるものと考えます。都としては、今後、水産試験場において、水産分野での活用に向け取り組みたいと考えております。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 電子都庁にかかわります、三点のご質問にお答えいたします。
 まず、電子都庁における都民サービスについてでございます。
 現在、インターネットを利用した先導的な取り組みを実施しております、スポーツ・レクリエーション施設の予約、これは月に約九万件ほどございます。また、水道の利用申し込み、これも月に約四百件の利用がございます。また、約五百五十種の申請様式につきまして、自宅や事業所で都のホームページから入手できるようにしてございます。
 平成十三年度以降、各種システム開発、それからパイロット事業等行いまして、平成十五年度を目途に、電子申請などの都民サービスを本格的に実施していく予定でございます。
 なお、こうしたシステム開発に要する経費でございますけれども、三カ年でおおよそ十億円程度と見込んでございます。
 次に、電子都庁の事務効率化についてでございます。
 現在、都庁のパソコンネットワークでございますTAIMSの整備を進めておりまして、本年度中に本庁一人一台体制を確立いたしまして、来年度以降は事業所へと展開していく予定でございます。また、このパソコンネットワークの整備と並行いたしまして、職員名簿、あるいは庁内電話帳の電子化など、直ちに可能なペーパーレス化に積極的に取り組んでおります。
 今後、年間百万件に及ぶ起案文書の電子化、あるいは庶務事務のシステム化などを進めまして、平成十五年度を目途に、事務の抜本的な簡素効率化を図ってまいります。
 こうした事務効率化に要するシステム開発経費、これも三カ年でおおよそ十億円程度になる見込みでございます。
 次に、既存システムの見直しでございます。
 技術革新のスピードが速い現在におきまして、コスト削減や事務処理迅速化の視点から、常に既存のコンピューターシステムを見直していくことは不可欠でございます。このため、知事部局等の約百七十のシステムにつきまして、平成十一年度及び十二年度において総点検を実施いたしまして、古くて大きいシステムから小型ですぐれたシステムにかえる、いわゆるダウンサイジング、あるいは再構築などいたしまして、抜本的な改善方向をまとめているわけでございます。
 こうした点検結果を踏まえまして、今後とも都民サービスの向上、事務効率化の観点から、的確に既存システムの改善を進めてまいります。

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