平成十三年東京都議会会議録第十二号

   午後三時三十四分開議

○副議長(橋本辰二郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十三番田中良君。
   〔百二十三番田中良君登壇〕

○百二十三番(田中良君) 私は、都議会民主党を代表して、知事並びに関係局長に伺います。
 本定例会をもって本格的にスタートを切る第十六期都議会に課せられた最大の使命は、二十一世紀の東京が、都民と都政との協働による生活快適都市として、七都県市との連携のもとで、着実なる歩みを続けるための礎を築くことにあると考えます。こうした基本的な認識のもとに、私は喫緊の都政の重要課題について質問をいたします。
 まず、初めに、東京都における危機管理についてでありますが、質問に先立ちまして、去る九月十一日、ニューヨーク及びワシントンで起きた、同時多発無差別テロの犠牲となられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、この大惨事に遭遇された多くの方々に、心からお見舞いを申し上げます。事件発生以来、既に半月、いまだ被害の全貌さえ把握できずにいる現状の中で、この惨禍に打ちひしがれることなく、姉妹都市であるニューヨーク市の市民を初め、直接、間接に多くの人々が復旧、復興に向け雄々しく立ち向かっている姿を報道を通じて目にするたびに、私の中で、不特定多数の無辜の市民を標的としたテロ行為者に対する怒りが倍加していくことを抑え切れません。
 そのことはさておき、私は、このたびの事件が、決して対岸の火事でないということを、東京都は銘記しなければならないと思うのであります。それは、いうまでもなく危機管理の問題であります。
 石原知事は、本定例会の所信表明の中で、都民の生命と安全を守るためには、東京の危機管理能力を向上させることが不可欠であるとの見解を示されました。私も全く同感であります。同感ではありますが、現実の問題として、現在の東京の危機管理能力が、一体どれほどのものであるかさえ定かではないと思うのであります。石原知事は、現状における東京都の危機管理能力がどれほどのものであると考えているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
 危機管理を求める余り、市民生活を必要以上に抑圧するようなことがあってはなりませんが、必要な危機管理能力を備えるために、単に行政側の思考だけで進めるのではなく、議会、民間の有識者なども含めたプロジェクトを組み、危機管理能力向上への取り組みを早急に開始するべきと考えるのですが、知事の見解を伺います。
 次に、この事件も危機管理問題と不可分の関係にあると思うのですが、今月一日未明に起きた新宿歌舞伎町のビル火災に関連して伺います。
 この火災は、四十四名もの死者を出すという大変不幸な結果となりました。唯一救いがあるとすれば、周辺に延焼することがなかったということだと思います。消火、救出に当たった消防士の皆さんの労をねぎらい、敬意を表するものであります。
 この火災を機に、同規模、類似用途の、いわゆる雑居ビル四千棟を対象に、緊急特別査察を実施しているとのことですが、雑居ビルが密集し雑多な人々が集まる、いわゆる繁華街における災害発生の場合、一歩間違えば大混乱を引き起こし、大惨禍を招きかねない要素が内在しています。ましてや、昨今の歌舞伎町のような繁華街が多国籍化している状況を考えるとき、従来のような災害対策では、対応し切れないのではないかと思います。いわゆる危機管理という視点からの対策強化が急がれるべきと考えますが、知事の見解と決意のほどを伺います。
 明星ビル火災でお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りし、次の質問に移ります。
 平成十四年、十五年度、東京都はまさに財政再建の正念場を迎えることになります。これまでの財政健全化、財政再建の取り組みによって、一般歳出において、平成四年度のピーク時と比べて一兆六千六百億円以上の歳出削減を図ってきたにもかかわらず、今後も毎年度二千億円から三千億円もの財源不足が見込まれております。
 その一方で、東京は今、再生を図っていかなければ最悪のデフレスパイラルに巻き込まれかねない状況にあります。しかも、湾岸戦争時を連想するまでもなく、失速するアメリカ経済に、今回の同時多発テロの後遺症と新たな戦争が加わるならば、構造改革のおくれている日本経済は、一段の大不況に陥りかねません。この相矛盾する状況の中で、都政を運営していかなければならないわけですが、知事は、東京都の財政構造のどこを重点的に見直されようとお考えか、見解を伺います。
 また、知事は、新たな取り組みとして重要施策を立案し、予算、人員を優先的に措置するとされました。私も、財政状況に過度にとらわれて、施策立案の発想そのものが貧しくなってしまってはならないと考えていますので、知事の姿勢は基本的に評価したいと思います。
 しかし、厳しい財政状況下の限られた予算の中で、重要施策に優先的に予算、人員を措置すれば、当然のことながら、その分、より以上に既存の施策を廃止もしくは予算、人員を削減しなければなりません。私が見るところ、これまで相当の事業の見直しが進んでおり、そう簡単に廃止、削減できる事業があるとも思えません。そもそも重要施策が既存施策に優先するという判断基準が不明確な中で、重要施策の財源を当該局もしくは全庁的なスクラップやシーリングだけに求めるならば、自局の事業のスクラップをおそれて、思い切った重要施策は打ち出せないのではないか、また、あえて重要施策を優先して規模を膨らませれば、どこかに無理が生じるのではないかと危惧するものでありますが、まず、この点についてのご見解を伺います。
 また、重要施策の立案、選定の後、予算の査定が行われ、来年度予算の骨格が形成されるわけですが、この二つのかじ取りを知事はどのように進めていかれるおつもりなのか、見解を伺います。
 都政上の施策は、濃淡はあれ、都民生活に密接に結びついています。施策の廃止、予算の削減は、都民生活に直接、間接に影響を及ぼします。東京都は、本年度から自己検証システムを導入し、行政評価制度を本格的に実施しています。しかし、これらは、いずれも所管局が評価、検証し、知事本部が評価するものであります。知事も、さきの所信表明において、官公庁では社会一般とは別の価値観が組織を支配していた、社会の動きから一歩も二歩も取り残された存在となっていたと述べられました。この都民感覚と役所の常識との乖離を埋める手だてを講じなければ、せっかくの制度も血の通わぬものになってしまいます。
 私たちは、これまでにも、第三者機関としての行政評価委員会を設けるべきだと主張してまいりましたが、この都民と都政とのずれを正し、都政を都民感覚に近づけるために、東京都はどのような措置を講じられようとお考えか、見解を伺います。
 都政を都民感覚に近づけるためには、同時に都民との協働によって事業を進めていくことも重要な課題であります。特に、機動的できめ細かなサービスが提供できるNPOと連携協力を図っていくことは、都民サービスを向上させ、新たな雇用を創出するのみならず、地域社会の活性化にもつながるものであります。
 近年、福祉や環境保護、まちづくり、国際協力など幅広い分野において、さまざまな社会的課題の解決を目指すボランティアやNPOなどの社会貢献活動が拡大しています。これらの団体のうち、特定非営利活動促進法によって、法人格を取得した団体約五千のうち四分の一が東京で活動しており、今でも、毎月六十以上の団体が申請をしている状況と聞いています。東京において、さまざまな分野で数多くのNPOが活発に活動されていることは、東京都にとっても大きな財産であり、ほかの自治体と比較しても大変有利な点であります。
 東京都は、本年八月に社会貢献活動団体との協働の推進指針を策定していますが、今後、全庁的に協働事業を推進していくために、具体的にどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、環境問題について伺います。
 初めに、地球温暖化対策について伺います。去る七月に行われたCOP6再開会合において、京都議定書の主な運用ルールが合意され、地球温暖化対策は、いよいよ待ったなしの実行段階に入りました。いうまでもなく二酸化炭素に代表される温室効果ガスは、日々の仕事や生活のあらゆる側面から排出されるものであり、その抑制のためには、現在の社会経済システム全体の見直しが必要であります。このため、実効性のある地球温暖化対策を構築するためには、国の果たすべき役割が非常に重要であると考えます。
 欧州各国においては、環境税の導入、自然エネルギー開発の促進など先駆的な施策が次々と導入されています。しかし、これらの動きに比べ、我が国の取り組みは、いかにも立ちおくれているといわざるを得ません。こうした我が国の温暖化対策の閉塞状況を知事はどのように見ておられるのか、伺います。
 温暖化対策には国の役割が決定的でありますが、国の動きが非常に遅い現在、東京都としては、その立ちおくれを手をこまねいて傍観しているわけにはいきません。都の権限を最大限に活用し、可能な範囲において先駆的な取り組みを行う必要があるものと考えます。
 先日、東京都環境審議会が発表した「東京都環境基本計画のあり方について(中間のまとめ)」によれば、東京においては、特に事業所ビルに起因する二酸化炭素排出量が多く、これを対象とした対策の強化が必要であるとしています。こうした事業所ビルへの対策を含め、国の動きを先取りした施策を構築し、積極的に展開していくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、環境行政を推進するための仕組みづくりについて伺います。
 中間のまとめは、今後、都の環境行政を大きく前進させるために必要な仕組みとして、都市づくりとの連携、経済的手法の活用など七つの提言を行っています。これらの提言は、東京都における環境施策を全庁を挙げた横断的な取り組みとして発展させる上で、どれも重要なものと考えますが、ここでは特に、今後ますます重みを増すと思われる環境情報の役割に着目し、二点お伺いをいたします。
 第一は、情報発信機能の強化であります。都民、事業者、NGOなどの幅広い参加を得て環境行政を推進するためには、その大前提として、環境の現状、施策の内容などについて積極的な情報提供を行う必要があります。都はこれまでも、例えばディーゼル車NO作戦の実施に当たり、環境局のホームページ上で公開討論会を行うなど、インターネットを活用した情報提供を行ってまいりました。今後は、海外にも目を向けた情報発信を行うなど、さらに先駆的な取り組みを進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 第二は、調査研究機能の強化に関してであります。都の環境行政が国の施策の枠組みを超え、先進的な施策を展開しようとするならば、海外の政策事例なども含め積極的な情報収集を進めるとともに、調査研究機能を強化し、新たな政策立案を行う必要があります。その際、特に大切なのは行政内部だけの閉じた調査研究を行うのではなく、広く民間企業や大学、NGOなど外部の研究者と連携し、新たな発想を行政の内部に取り込んでいくことだと考えますが、見解を伺います。
 次に、ディーゼル車規制について伺います。
 条例では、平成十五年十月からディーゼル車の運行規制を開始するとともに、低公害車の導入義務も課しています。深刻な大気汚染の現状を改善するためには、ディーゼル車対策を強力に進める必要がありますが、一方では、規制を受ける中小事業者は厳しい経営環境の中で対応に苦慮しているのが実情であります。
 例えば、天然ガス車などの低公害車の導入を進めようとしても、ディーゼル車に比べ車両価格が高いことはもとより、自賠責保険などの経費が高額になるなど、維持にかかる経常費が増加するといった問題があります。このような状況は、低公害車の普及にとり、大きな障害となるものと懸念いたします。
 東京都としては、低公害車の導入が容易に進むような環境の整備及び事業者などへの支援策に積極的に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、福祉医療改革について伺います。
 私たちは、利用者が選択できる福祉を基本理念に掲げ、福祉サービスの量の拡大と質の向上、第三者によるサービス評価と情報の積極的提供などについて取り組んできましたが、これからもこのような視点に立ち、都民福祉の向上に努めていきたいと思います。利用者が選択できる福祉を実現するためには、何よりも利用者が選択できるだけのサービスが確保されていなければなりません。
 私たち都議会民主党は、NPOの参入や規制緩和などにより、特に福祉サービスの利用を希望する人たちが、必要なサービスを選択し、地域で安心して暮らしていけるよう全力で取り組んでいく決意であります。平成十五年度には、障害者の制度が選択制度に変わることになります。だれもが地域の中で福祉サービスを利用できるよう、その充実に向け積極的に取り組んでいただきたいと考えますが、知事の見解を伺います。
 また、利用者が選択できる福祉を実現するためには、第三者によるサービス評価と情報提供が重要であります。
 東京都においては、特別養護老人ホームや老人保健施設などにおいてモデル評価を実施してまいりました。障害者入所施設や児童養護施設でも、自己評価やオンブズパーソンによる評価を行っています。しかし、児童福祉施設などサービス評価事業では、都立の児童養護施設が対象となっているものの、民間の施設は対象になっていません。また、無認可保育所においては、指導基準を満たしているかどうかの立入調査の結果までインターネットで公表することとしており、サービスの種類や施設設置者によって対応はまちまちとなっております。
 私は、利用者が選択できる福祉を実現するためには、第三者によるサービス評価システムと評価情報を含めた総合的情報提供の仕組みを早急に構築すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、都立病院改革についてであります。
 少子高齢社会の進展や疾病構造の変化などによって、医療に求められる機能が変わりつつある中で、都立病院が担うべき医療サービスについても適切に見直していくことが求められています。七月に発表された都立病院改革会議報告書では、都立病院が担うべき医療機能を、新たに行政的医療と位置づけました。そして、医療機能の集約化を図り、都立十六病院を十二の病院に再編整備することなどを提言しています。
 しかし、都立病院をセンター的機能病院とすることは、現在各都立病院が持っている総合診療基盤を縮小し、特定な機能を強化するということになります。それでは、現にその病院が果たしている地域医療は、具体的にどのように保障をするのでしょうか。都立病院が再編整備されることで、都立病院で受診されている患者さんたちに対する医療サービスが低下するようなことはないのでしょうか。このようなことがあっては、何のための都立病院改革なのかということになってしまいます。
 本報告で提案された再編整備を初めとする病院改革によって、都立病院はこれまでとどう変わり、都民はどのようなメリットを享受することができるのか、伺います。
 また、東京都は今回の報告書に沿って、ことしじゅうにマスタープランを策定する予定です。都立病院への一般財源の投入が都立病院改革会議の中で見直しの対象とされている一方で、新たな都立病院の整備や各病院への機能集約のためには、相当な期間と財源を要すると考えられます。マスタープラン策定に当たり、東京都の厳しい財政状況の中でどう再編整備を進めていくのか、見解を伺います。
 都立病院の再編整備による統廃合は、結果として都立病院としての病床数や診療規模を減らすことになり、医療の切り捨てにつながるのではないかという不安も生じます。都立病院改革は、単に都立病院だけの問題ではありません。かかりつけ医など地域医療の充実をどう図るのか、医療連携をどう図るのか、あるいは私たちがかねてより主張している生活習慣病などの予防施策をどのように推進するのかといった、東京の医療がどのようにあるべきかの中で位置づけられるべきものと考えます。
 都立病院改革によって、都民への医療サービスが後退することのないよう求めるものでありますが、見解を伺います。
 次に、雇用対策について伺います。
 七月の全国の完全失業率が過去最悪の五%を記録するなど、雇用情勢がなお一層悪化しています。東京都が九月七日に発表した「緊急雇用・経済 東京プロジェクト」は、再就職支援や中小企業支援など、東京都が当面すぐに実施できる精いっぱいの対策であったと考えます。この中には、国への緊急提案として、地域に商工相談・指導や労働相談などの多様なネットワークを持つ地方公共団体が、みずから職業紹介事業を実施できない現行の仕組みを改めることなどが盛り込まれておりますが、私たち都議会民主党も、身近な地域で職業紹介事業が実施できるように、国に対して積極的に働きかけていく決意であります。
 また、再就職支援では、中高年離職者IT訓練や林業整備などの対策を講じるとしておりますが、東京都の十三年度予算での対応にも限界があり、現在の雇用情勢の中にあっては焼け石に水となりそうであります。政府においては、総合経済・雇用対策などを進めているところでありますが、東京都においても、地域での雇用・就業施策の展開に向け積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 さらに具体的には、東京都のそれぞれの事業を実施するに当たり、雇用という視点を盛り込んでいく必要があるのではないかと思います。
 例えば、平成十一年度から実施されている緊急地域雇用対策は、雇用、就業予定者数をあらかじめ算定するなど、雇用促進という視点を持って事業化されました。現在、東京都の事業の中には経済波及効果を算定している事業もあり、私は、さらに、東京都のそれぞれの事業がどの程度雇用を誘発できるのかなどを一つの目安として事業化するといった試みも、雇用促進のためには必要なのではないかと考えますが、見解を伺います。
 東京都への労働相談件数は、平成十二年度で四万八千四十五件あり、相談内容も解雇や賃金不払いに関するものが多数を占めるなど、大変深刻な状況にあります。一方で、東京都は労政事務所の統廃合を進めておりますが、私たちは、このような経済状況の中、むしろ労働相談機能を充実強化することが必要なのではないかと考えています。
 特に、深刻な問題を抱え、仕事の合間を縫いながら労政事務所を訪ねなければならない人たちは、平日昼間だけの対応に限らず、休日や夜間での対応も求めています。現在、東京都はすべての労政事務所において、毎週水曜日は午後七時まで受け付ける定例夜間相談を実施しており、「緊急雇用・経済 東京プロジェクト」では、八王子と中央の二カ所の労政事務所で夜間、土曜日の労働相談を実施することなどを盛り込んでいます。
 しかし、私は、必要な体制を整備しながら、すべての労政事務所で夜間、土曜日、あるいは休日相談を実施するなど、労働相談のより一層の充実強化を求めるものでありますが、見解を伺います。
 次に、観光振興について伺います。
 八月に東京都が発表した観光産業振興プランの素案は、観光振興を図る上でのさまざまなメニューが示されています。しかし、東京のシティーセールスを進めるための戦略については、まだまだ不十分な内容となっています。
 日本に訪れる外国人旅行者は、韓国、台湾、アメリカからの人たちが多くなっているのに対して、東京を訪れる人たちは、アメリカ、台湾、韓国の順となっています。アメリカの人たちが、日本料理や歴史的名所など日本の伝統的な面を好むのに対して、アジアの人たちは、買い物やファッション、温泉、テーマパークを好むなど、その嗜好も異なっています。
 このように、それぞれの地域や国の潜在力や嗜好が違う中で、メッセージ性のあるインパクトの強いキャンペーンを展開するためには、十分なマーケティング調査が必要です。これらの調査をもとに各国各地域における特性などを十分に踏まえ、戦略的なシティーセールスを展開し、必要であれば、石原知事みずからが東京の魅力を全世界に発信していくことが必要ではないかと考えますが、見解を伺います。
 また、観光振興プランでは、観光資源の開発についてもさまざまな提案がなされています。今後、これらのメニューに沿ってそれぞれの事業が予算化されるのではないかと考えますが、私は、事業着手の優先順位として、スーパー堤防の整備や大手町、丸の内などの都市再開発などハード部門への投資のみにとらわれることなく、外国人が考える東京の魅力、すなわち伝統文化や町並みなどの異国情緒、あるいは正直さや待遇面での親切さ、安全、衛生など滞在の心地よさを世界にアピールしていくことなども重点的に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 国の観光政策では、外国人旅行者のみならず、日本人旅行者にも目を向け、祝日三連休化の拡大などに取り組んでいます。東京都においても、観光振興を図る観点から、日本人による国内旅行を普及促進させていく必要があるのではないでしょうか。
 そこで、私は、東京都でも実施可能な取り組みとして、ゴールデンウイーク期間中の公立学校を休みにすることを提案いたします。
 ゴールデンウイークが飛び石連休であった年は、親が会社を休めるにもかかわらず、子どもの学校が休みでないために家族で旅行をしづらい状況にあります。一方で、東京都の公立学校の管理運営に関する規則では、夏休みを七月二十一日から八月三十一日と定めておりますが、例えば、この何日かをゴールデンウイーク期間中に振りかえれば、授業のカリキュラムにも影響を与えずに、親と子どもが同時に休める機会を提供することが可能になります。そして、この東京都の取り組みが全国に広がれば、東京の観光振興にも好ましい影響を与えるのではないでしょうか。
 私は、こうした観点から、東京発の改革の一つとして、公立学校の休業日のあり方についても検討をすべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、東京の新しい都市づくりビジョンについて伺います。
 東京都は、今般、東京における今後の都市づくりのあり方を示す「東京の新しい都市づくりビジョン(中間のまとめ)」を発表しました。この中で示されている豊かな環境の創出や都市文化の創造、安全で健康に暮らせる都市づくりなど、これまで私たちが主張してきた緑の都市づくりやユニバーサルデザインに配慮した都市づくりなどが戦略として取り入れられており、今後、このビジョンに基づき都市づくりが進められることに大きな期待を持つものであります。しかし、このような都市づくりを進めるためには、それらの戦略に基づいた実効性のある仕組みを整備することが不可欠であります。まず、今後、新しい都市づくりを進めるためには、都民やNPOなど多様な主体と連携していくことが重要であります。
 これまで私たちは、地域住民の自主的、創造的なまちづくりが推進されるよう、さまざまな提案をしてまいりました。今回、都市づくりビジョンにおいても、都市づくりの新たな進め方として、計画策定に際して、事前に広く市民の意見を聞くPI的手法の活用、NPOの登録制度、インターネットによる情報提供などが提案されています。住民が都市づくりに積極的に参画できるよう、これらの仕組みを早期に整備すべきだと考えますが、見解を伺います。
 さて、東京の水と緑を生かした都市づくりを進めるためには、屋上緑化のような建築物単体の規制も重要ですが、地域にある緑地や自然地を守ること、鳥や昆虫など野生の生き物が生息できる林や池などの環境を復元、創造することなど、地域全体を緑豊かなまちとしていくことが必要であります。その点で、ビジョンで提案されている良好な住環境を維持、保全する地区で地区計画の策定を推進することは、地域住民の意向を反映しながら、環境と調和した都市を実現する上で非常に重要と考えます。今後、この地区計画の推進に向けてどのように取り組んでいくのか、伺います。
 また、住みやすいまちをつくるという点からは、私の地元の杉並区を含む環状七号線沿線を初めとして、都内に約二万四千ヘクタールと大きく広がっている木造住宅密集地域の改善が必要であります。この木造住宅密集地域は、公園も少なく、狭い道路が入り組み、災害にもとても弱いまちとなっています。都市づくりビジョンの中で、都は独自の制度として街区再編プログラムを提案し、この制度を活用して整備促進を図るとしていますが、整備を進める中で緑のネットワークや、いわゆる緑の回廊の創造など生活環境の整備を思い切って進めることが期待されます。木造住宅密集地域の改善を進めるため、今後どのようにこの制度を具体化していくのか、見解を伺います。
 次に、都市計画道路の再検討について伺います。
 東京における都市計画道路は、昭和二十一年に当初決定され、それ以降四回の見直しを経てきております。最近では、昭和五十六年に区部全域における都市計画道路の再検討が実施されましたが、それから既に二十年以上もたっているのであります。都市計画決定後、路線の全線について事業化されていないものは百四十五件となっており、中でも、昭和二十年代に都市計画決定されたもののうち、八路線がいまだ事業化計画にすらのっていない状況であります。今後、首都圏三環状の整備が進めば、都内の道路ネットワークも大きく変わることになります。私の地元杉並区でも、外郭環状道路が整備されれば、放射五号線への自動車交通量は大きく減るのではないかといわれているほどであります。
 また、区市町村のまちづくりマスタープランが策定されつつあり、交通需要マネジメントの推進や道路構造令が見直されるなどといった社会情勢が変化する中で、都市計画道路について改めて再検討すべき時期に来ていると考えますが、見解を伺います。
 次に、多摩地域の振興について伺います。
 先月十五日に、今後の多摩地域の振興を図るためのビジョンとして、多摩の将来像二・・一が発表されました。このビジョンの中では、多摩地域の今後の発展の可能性が強調され、その要因として、多数の大学立地や先端技術産業の集積、豊かな自然や豊富なゆとりの空間などが、多摩地域のポテンシャリティーとして挙げられています。まさに多摩地域は大いなる発展の可能性を持った地域であります。この地域が多様な機能を持ち、市民とともに新たな発展の道を歩むことが、都心部への一極依存構造を和らげ、都心再生につながる道を切り開くことにもなります。
 知事は、この多摩地域にどのような期待を持たれ、今後、多摩地域の振興にどのように取り組まれようとお考えか、まず伺います。
 多摩地域のポテンシャリティーの中でも、豊かな自然は、快適な住民生活を創出する上でかけがえのない財産であります。現在でも、多摩地域においては、西多摩の山間地域はもちろんのこと、丘陵地には里山や谷戸が存在し、崖線からはわき水がわき出すなど、身近な自然が住民生活に潤いや安らぎを与えています。
 しかし、一方では、区部から連檐する市街化の進展や農林業の衰退により、身近な緑を初め、農地や森林などが急激に減少してきているのであります。地域における緑で覆われた割合を示すみどり率で見ましても、多摩地域全体で昭和四十九年の八六%から平成十年の八・%に減少し、その中でも、北多摩地域では四七%にまで減少しております。今後、このような自然の破壊に歯どめをかけ、かけがえのない自然を次世代に引き継いでいくことが我々の責務であると考えます。
 そのためには、多摩地域の発展を目指すに当たり、自然との調和、共生を図りながら地域の活性化に取り組むという視点が重要であります。多摩の将来像の実現を目指すに当たっても、自然と調和しながら地域の発展を図っていくという考え方が不可欠であると思いますが、いかがでしょうか。
 今後、多摩地域の発展を図っていくためには、広域的自治体である東京都と基礎的自治体である市町村が、より一層緊密に連携協力していく必要があります。特に市町村については、地域に密着した住民に最も身近な総合的な行政主体として、その責任を担っていかなければなりません。その際、市町村は住民の意向をきめ細かく反映しながら、地域の課題について主体的な判断のもとに取り組み、地域の特性に応じた個性的なまちづくりを行う必要があります。
 今後、市町村の役割はますます大きくなっていくと考えられますが、多摩の将来像に基づいた今後の多摩振興においては、市町村の役割をどのようにとらえているのか、伺います。
 また、私は先ほど都民との協働について伺いましたが、多摩地域は、明治二十六年に神奈川県から移管された当時より自由民権運動が盛んだった地域で、五日市憲法草案が誕生するなど、自治の精神にあふれた進取の気性に富んだ地域でありました。その伝統は今も引き継がれており、例えば市民サイドでは、市民約四百人が参加したみたか市民プラン21や、稲城市の条例制定市民会議、多摩交流センターなどを中心とした広域的市民ネットワーク活動など多様な活動が進められており、企業サイドでも、多摩を中心に神奈川県から埼玉県に至る広範な地域で五百社を超える企業を束ね、相互に特許や技術を融合しながら、新たなビジネスチャンスを開拓する首都圏産業活性化協会、TAMA協会の活動が進められています。この国の中でも東京が、そして東京の中でも多摩地域が、市民活動の最も先進的な地域であります。多摩地域の振興策においても、市民、NPO、企業との協働が欠かせないと考えるものでありますが、見解を伺います。
 さて、多摩の将来像は、自立と連携の基本理念のもとに、活力と魅力にあふれた多摩を創造するとしております。自立と連携というキーワードは、今後、多摩地域が主体的な発展を目指しつつ、広域的な地域のつながりや行政区域を超えた交流を促進し、地域間の連携を深めていくべきことを示していると思われます。特に重点的な取り組み課題としているチャレンジテーマなどは、都や市町村間の連携のもとに、その実現に向けて取り組む必要があります。
 そこで、将来像の実現に向けて、チャレンジテーマを初めとするさまざまな課題に都としてどのように取り組んでいくのか、伺います。
 以上で都議会民主党を代表しての質問を終わります。知事並びに関係局長の誠意あるご答弁をお願いします。
 ご清聴どうもありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田中良議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、都の現状の危機管理能力についてでありますが、これはいまだに寒心にたえない状況だと率直に申し上げざるを得ない。
 しかし、ということで、昨年来、二度にわたるビッグレスキューという、自衛隊も動員しての災害対策も行いました。災害に対するこれは一つの訓練でありますけれども、まだまだそのほかのいわゆる危機というものが、今回の多発同時テロを見ましても、日本の国内においても考えられ得るわけでありまして、それに十全の対処をするということは非常に至難であると思いますが、いずれにしろ、大事なことは、備えあれば憂いなし、その備えのための、まず意識の問題だと思います。
 昨年、都として初めて、多分日本でも初めての、陸・海・空三軍を動員しての大訓練を行いました。朝日新聞は、これを、銀座に戦車というキャッチフレーズで、いかにもこれが軍国主義の復活につながりかねないような、ためにする反対の記事を構成しておりましたけれども、こういう非常に笑止千万な、非常にセンチメンタルな、あるいはもっと悪い意味でセンセーショナリズムの報道というものが、実は都民、国民の危機管理に対する正当な意識というものを阻害しているということは、私は否めないと思います。まず、やはり議会がこれに冷静に対処していただきたいけれども、共産党は反対しておりましたが、いずれにしろ、あの訓練は議会の同意を得て行ったものでありまして、そういう意味では、私は、東京は国にも他の地方自治体にも先んじて新しい試みをし、それが都だけではなしに国全体の新しい知見になり、財産たり得ると思っております。
 今回ワシントンでは、たまたま私、そのとき向こうにおりましたが、事件発生から五分後に空軍の戦闘機が上空を警戒して飛び回っております。これはワシントンで初めて見る光景でありましたけれども、いずれにしろ、次の被害を阻止するための米軍の実に迅速な対応を目にいたしましたし、二年前の台湾大地震でも、地震発生から三十分足らずで軍が現地に到着するという、実に迅速な対応をしておりました。
 それに引きかえ我が国では、あの阪神・淡路大震災の際に、現場の責任者は自衛隊の出動要請というものを何時間もちゅうちょし、その結果、亡くならなくてもいい方々が千の単位で亡くなって、被害が大きく膨らんだという事実がございます。
 都は、都民の生命と安全を守るために、この二年間にわたって、実践的な訓練としてあのビッグレスキューを行ってまいりましたが、これからも危機管理能力の向上に努めるつもりでございます。東京が万一の場合、阪神・淡路大震災の悲劇を繰り返すことのないような、その他、形をかえた大規模なテロに対しても、迅速に対応できるような危機管理体制を今後も強化していきたいと思っております。
 次いで、危機管理能力の向上への取り組みについてでありますが、行政は、危機管理能力の向上を図るに当たって、民間の意見も取り入れることは当然であると考えております。現に、あのビッグレスキューのためには、自衛隊のOBであります志方さんを参与にも迎えて、実に有効なアドバイスをいただき、これを実現してまいりました。
 今後とも、都は、アジアの大都市とも連携して、七都県市による首都機能のバックアップ体制の確立と警備体制の強化を図っていきたいと思っております。
 次いで、歌舞伎町のビル火災に伴う危機管理の視点からの対策についてでありますが、歌舞伎町のような繁華街で都民の安心と安全を確保するためには、治安の確保とともに、雑居ビルの管理者に、事業者責任として消防法や建築基準法の遵守を求めることが必要であると改めて痛感いたします。
 警視庁では、今月四日、警視庁組織犯罪対策本部を新設し、治安の確保に努めているほか、今回のビル火災に対しては、東京都消防庁による緊急特別査察や、都市計画局による緊急安全点検を実施しております。
 今後も、危機管理の視点から、それぞれの部署が相互に連携しながら、総合的な対応を図っていきたいと思っております。
 次いで、都の財政構造の見直しについてでありますが、財政構造改革は、首都東京の再生を実現するため、構造的な赤字体質から脱却を図るとともに、将来の財政負担となる都債の抑制や税財政制度の改善を進め、強靱な財政体質を構築していくことを目指しております。
 景気の悪化がさらに見込まれまして、都税の収入の伸びが期待できない中で、他のプロジェクトに比べ、経済効果がはるかに高い都市の再生に国費の投入をも求めていくつもりでおります。
 そのほか、PFI手法の活用を図るとともに、歳出構造面から、とりわけまず内部努力の徹底や、施策の見直しをこれまで以上に強力に進めていく必要があると心得ております。
 次いで、重要施策についてでありますが、これは先ほど申しましたが、金目の多いものということでは決してありませんで、例えば、先般都庁内から公募してチームをつくりました、あの東京の恥の一つでもあります、外国の人を含めて、東京にやってきた内外のお客さんがまゆをひそめる、カラスのつくり出す非常に悪い印象も、先ほど申しましたですが、観光を産業と心得たこれからの指針の大きな障害になりますし、そういう東京のイメージというものをよくするためにも、さほどお金もかけずにできる、しかし効果の多い、つまり、産業としての観光にすぐはね返ってくる大事な試みだと思います。
 いずれにしろ、首都圏の再生や生活不安の解消など、都民の切実な要望にこたえていくため、来年度において真に重点的な、実施すべき施策を重要施策として選定することとしまして、現在、庁内で検討が進んでおります。選定された重要施策には、優先的に予算や人員を配分していきたいと思っておりますが、そのためには、既存の事業の見直しや施設の再構築をさらに徹底するとともに、加えて、国費の導入など財源の確保にも努めて、重要施策の実現性を確保していきたいと思っております。
 次いで、平成十四年度予算編成と重要施策の関連についてでありますが、十四年度予算編成においては、重要施策の選定を予算査定に先立って行う新しい方式を導入いたしました。厳しい財政状況下での財政構造改革の推進と、この重要施策の実現性の確保は、十四年度予算編成における二つの大きな柱でありまして、これらの両立を図りながら取り組むべきものと考えております。
 したがって、重要施策の選定と既存の事業の見直し、再構築を一体的に進めながら、限られた財源を重点的に効率的に配分する、めり張りのついた予算編成をしていきたいと思っております。そのプライオリティーの決定は、議会も含めて、多角的な意見をそんたくしながら行っていきたいと思っております。
 次いで、我が国の地球温暖化対策についてでありますが、私はかつて環境庁の仕事も引き受けたことございますけれども、どうも、やはり環境問題を文明論としてとらえる姿勢というのが国全体に希薄な気がしてなりません。
 例のCOP6の再開会合において、京都議定書の運用ルールが合意されましたが、アメリカはこの議定書離脱の姿勢を変えておらず、地球温暖化対策は岐路に立っておると思います。
 しかし、私は、これはアメリカに対する政府のいろいろ気兼ねもあるのかもしれませんが、アメリカがたとえ離脱した形でも、私は、やはり日本はこれを採択して、率先して批准するとともに、エネルギー需要の抑制、自然エネルギーの供給拡大、あるいは実効性のある措置を早急に導入して、対策を抜本的に強化していくべきだと思っております。
 地球温暖化対策は、まさに人類の存在そのものが問われているという、新しい、歴史的な必然性、蓋然性のもとでの大事件でありまして、そういう認識というものを、日本の政治の担当者というものはひとしく持つべきではないかと思います。
 私、何人か宇宙物理学、惑星物理学やっている学者と友人でありますけれども、先般、いわゆる有識者に広範囲なアンケートをある雑誌が行いました。そして、その質問の一つは、人類というものは果たして今後何年間存在し得るだろうかという中で、中には永久なんというばかな人もいましたが、圧倒的に多かったのは六、七十年、これが限界だという答えで、私は慄然といたしました。
 そのゆえんは濃厚にありますが、私、今になって思い出すのは、かつて同じ世代の作家の一人でありまして、非常にすぐれた作家でありました開高健君が、よく揮毫を頼まれますと、色紙に、彼の言葉か、それともだれの言葉か知りませんが、必ずこういうふうに書いていました。あす地球が滅びるとも、君はきょうリンゴの木を植える、これは非常にいい言葉でありまして、今になって、開高が死んだ後に、私は、彼が好んで書いたこの言葉を思い出さざるを得ない。
 次いで、福祉サービスの充実に向けた取り組みについてでありますが、都が目指す福祉改革は、高齢者や障害者などが地域の中で必要なサービスを選択し、可能な限り自立した生活を送ることができる、真の意味での利用者本位の福祉を東京において実現することであります。
 これまで、福祉改革推進プランに基づきまして、認証保育所などの戦略プロジェクトを中心として、サービスの量と質を確保するための都独自の施策を実施してまいりました。
 今後とも、大都会の東京の特性を生かした、そうした特性を生かして、民間企業など多様な事業主体の参入を積極的に進めながら、国に先駆けた取り組みをさらに展開することによりまして、福祉改革を引き続き推進していきたいと思っております。
 次いで、都市のシティーセールスについてでありますが、世界から旅行者を集客するためには、楽しさや期待感をかき立てるような東京のイメージを伝えるシティーセールスの展開が必要であります。これは今までほとんど皆無に近かった。
 しかし、これまで、国のみならず都も、外国人旅行者の誘致についてはほとんどやってこなかったわけでありまして、その結果が、先ほど申しましたが、国際旅行の収支に関しては、日本全体が三兆五千億の赤字ということであります。
 これからは、東京が先頭に立って政策を展開し、海外に東京の魅力を積極的に伝えて、外国人旅行者の誘致に努めていきたいと思っております。
 実は、先般、たまたま会合に呼ばれましたので、その答礼に、EU全体の大使をヘリコプターに乗せまして、伊豆の七島と、その後、三多摩の奥へ飛びまして、あの西多摩の峡谷と渓流、そして、非常に荒々しいけれども美しい伊豆の島々を紹介いたしました。非常に喜んでもらえまして、東京というのはかくも広範囲に、かくも変化に富む魅力があるのかということをみんなが共有して認識してくれました。
 これは本当にそのはしりでありまして、こういう努力を、何も大使相手だけではなくて、もっと広範に効果をもたらす方法を考えまして、これからも試みていきたいと思っております。
 最後に、多摩地域への期待と、今後の多摩振興への取り組みについてでありますが、現在、多摩地域は、さまざまな発展の可能性に満ちた地域となってまいりました。東京が抱える数々の課題を解決し、東京に活力を呼び戻すために大きな役割を果たし得る地域になってまいりました。今後、多摩地域は、地域の特性を踏まえつつ、区部との格差是正の観点から脱却して、主体的な発展を目指していくことが必要であり、都は、また市町村や住民、民間と協力して、活力と魅力にあふれた多摩の造成に尽くしていきたいと思っております。
 次いで、最後に申されました多摩の自然の美しさでありますけれども、私は、西多摩から隣の山梨県にかけてのあの山地というのは、アメリカの東部にありますアパラチア山脈という、ジョージア州からワシントンDCまでつながっている、非常になだらかな、懐の深い山合いによく似ておりまして、先般もあそこを、グリーンリッジウエーという大きなハイウエーがある、道路があるんですが、満喫して、何年か前、帰ってまいりました。
 今、国は経済逼迫しておりますけれども、やがてあそこを、そういう構想のもとに日本のアパラチア山脈に仕立てて、周囲に尾瀬沼であるとか、あるいは谷川であるとか、あるいは大菩薩峠であるとか、そして山を越せば甲州がある、こういう地勢学的な条件というのは、新しい観光の大きな財源になると思っております。
 なお、その他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 公立学校の休業日の振りかえについてですが、休業日は、国民の祝日、日曜日、毎月第二、第四土曜日、そのほか夏季、冬季、学年末など、設置者でございます教育委員会が、それぞれの規則で具体的に定める日となっております。
 また、平成十四年四月から完全学校週五日制が実施されまして、すべての土曜日が休業日となります。
 お話の休業日の振りかえにつきましては、実は平成十二年四月に、地方分権の一環として、休業日を規制していた区市町村立学校の管理運営の基準に関する東京都教育委員会規則が廃止されたことに伴いまして、小中学校の休業日の設定や弾力的な対応は、それぞれの設置者である区市町村の判断にゆだねられているところでございます。
 都立学校につきましても、検討すべき課題がございますことから、今後、十分な研究が必要であると考えております。
   〔知事本部長田原和道君登壇〕

○知事本部長(田原和道君) 行政評価制度におきまして、都民と都政とのずれを防ぐための措置が必要ではないかとのお尋ねでございます。
 行政評価の実施に当たっては、より客観性を高めていくことが必要であると考えております。
 このため、知事本部において評価を行う際、高度な専門性や実践的な識見が必要な場合には、外部専門家の意見を聴取いたしまして、その内容を評価に生かすこととしております。
 さらに、インターネットの活用など、多様な手段を使って都民にわかりやすく公表いたしまして、意見をいただくことで、都民の視点からの客観的な評価を確保できるものと考えております。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 社会貢献活動団体等との協働事業を進めていくための取り組みについてでありますが、協働事業の推進は、ご指摘のように、都民の生きがいの場の提供となるばかりでなく、行政だけでは対応しにくい住民ニーズへの取り組みや、行政改革の重要な手法ともなるものであります。
 現在、都が社会貢献活動団体等と協働したり、ボランティアの参加を得ている事業は合わせて百件以上に上っておりますが、これを一層拡充するため、既に都が直接実施している個々の事業についても、協働の視点から見直しを行い、来年度予算に反映させていく予定であります。
 また、今回の指針策定は、協働に対する都の積極的な姿勢と、これを実施していくための手法や手順を明示することにより、協働への機運を醸成するためのものであります。
 このため、協働を進める上で必要となるNPO等の活動実態などの情報を収集、提供するとともに、庁内及び都民の相談に対応できる体制を整備してまいります。
 あわせて、NPOの多くが団体の運営管理などの面でさまざまな課題を抱えていることから、こうした点を考慮しながら、活動環境の整備にも努めてまいります。
   〔環境局長赤星經昭君登壇〕

○環境局長(赤星經昭君) 環境問題についての四点の質問にお答え申し上げます。
 まず、都の地球温暖化対策についてでございますが、都は既に、国に先駆けまして、建築物の省エネルギー設計や、事業活動に伴います温室効果ガスの排出抑制を事業者に求めます制度を条例化いたしました。
 これらの制度を活用して、地球温暖化対策を強力に実行してまいりますとともに、本年度予定しております東京都環境基本計画の改定の中で、都民、事業者等との連携により、温室効果ガスの一層の排出抑制を進める施策の方向を明らかにしてまいります。
 次に、環境情報提供の先駆的な取り組みについてでございますが、環境局はこれまでも、新聞、放送など各種の広報媒体を通じまして、環境情報を積極的に提供しております。
 平成十一年からは、局のホームページを開設し、都の施策、大気汚染状況等をリアルタイムで伝えるなど、環境全般の情報をより早く詳細に提供しております。平成十二年度のアクセス件数は二十四万件を超えまして、多くの都民に利用されております。また、環境科学研究所のホームページでは、英語による研究情報の提供も行っております。
 今後は、これらのアクセス状況等を踏まえまして、海外への環境情報の効果的な提供を行ってまいります。
 次に、調査研究機能の強化についてでございます。
 近年、ますます複雑、困難化します環境問題に対しまして、広い視野に立った総合的な政策立案を行うためには、民間企業や大学等との連携によります調査研究が重要でございます。
 このため、環境科学研究所におきまして、これまでも民間企業や国立研究所、関係自治体等との共同研究を進めてまいりましたが、今年度から、ヒートアイランド緩和に関する研究などにつきまして、都立大学等との連携大学院による共同研究を始めたところでございます。
 今後とも、一層の情報収集に努めますとともに、外部の機関、研究者との連携を積極的に進め、新たな発想を都の環境政策の中へ取り込んでまいります。
 次に、低公害車の普及についてでございますが、都は、昨年設置いたしました新市場創造戦略会議での東京宣言を踏まえまして、その構成員でもあります自動車メーカー、燃料事業者、ユーザーに、低公害車の価格引き下げ、スタンド増設、低公害車の導入促進を積極的に働きかけてまいりました。
 また、平成十三年度から新たに天然ガス車の導入に関する補助制度を設けるなど、普及拡大を図っているところでございます。
 さらに、国に対しまして、低公害車への助成の充実や税制の優遇などを要請してまいりました。
 今後とも、低公害車導入に当たっての環境整備を国に強く働きかけますとともに、都としても、引き続き低公害車の導入促進に努めてまいります。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) 福祉行政に関しまして、サービス評価と情報提供の仕組みについてのご質問にお答えいたします。
 利用者がサービスをみずから選択できる、利用者本位の新しい福祉を実現する上で、ご指摘にもありましたが、多様な評価機関によるサービス評価や的確な情報提供は、重要な課題であります。
 そのため、都は、第三者によるサービス評価システムと、その評価結果も含めた総合的な情報提供の仕組みを早期に構築する方針で準備を進めております。
 これまで、福祉サービスの種類や特性に応じて、段階的に評価手法や評価項目を作成し、その有効性などを検証してきておりますが、今後とも、システムの構築に向け、こうした取り組みを一層積極的に進めてまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 都立病院改革について、三点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立病院改革の都民にとってのメリットについてでございますが、都立病院の再編整備により、その医療機能を整理するとともに、明確な役割分担のもとに他の医療機関と密接に連携することで、都民のニーズに的確に対応した、より質の高い医療を提供することが可能になると考えております。
 さらに、職員の意識改革を推進しながら、インフォームド・コンセントや医療安全対策の充実、ITの活用等を図ることにより、患者サービスの一層の向上につなげてまいります。その結果、都民に対する総体としての医療サービスの充実強化に確実に結びつけていくことができると考えております。
 次に、再編整備の方法についてでございますが、厳しい財政状況の中で、都立病院改革会議の報告が提案しております再編整備や機能集約を進めていくためには、一定の期間と財源が必要であることはご指摘のとおりでございます。
 一方、都民に対する医療サービスの充実を図るためには、可能な限り早期に改革を実現していくことがやはり必要でございます。
 このため、より一層の経営改善を行っていくことはもとより、病院の建設、運営に当たりましては、PFI等新たな手法を検討するなど、財政や運営の面でさまざまな工夫を行いながら再編整備を進めてまいりたいと考えております。
 三点目は、都民への医療サービスについてでございます。
 都立病院改革の基本的な目的は、都民に対する総体的な医療サービスの向上にございます。
 今後、改革を進めるに当たっては、都立病院の医療機能の充実を図るとともに、地域における医療連携をこれまで以上に強化し、都民ニーズに的確に対応した、より質の高い医療の提供を目指してまいります。こうした取り組みは、東京発医療改革の核となるものであり、東京全体の医療水準を高めていくものと確信しております。
   〔産業労働局長浪越勝海君登壇〕

○産業労働局長(浪越勝海君) 雇用対策及び観光振興の四点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、都としての雇用、就業施策の展開についてでございますが、完全失業率が調査開始以来最悪を更新する中で、都民の雇用、就業機会を確保していくためには、国が行う全国一律の雇用対策のみでは不十分であり、都みずからも、地域の実情に即したきめ細かい雇用、就業対策を講じていく必要があると考えております。
 このため、去る九月七日には「緊急雇用・経済 東京プロジェクト」を策定し、限られた権限と厳しい財政事情の中ではございますが、国に先駆けて、可能な限りの施策を実施しているところでございます。
 今後とも、景気動向や雇用情勢等を注視しつつ、適宜、効果的な対策を講じてまいります。
 次に、雇用誘発効果を事業化の一つの目安とすべきとのことでありますが、東京が抱える課題は、環境、防災、交通など多岐にわたっておりますが、現在の厳しい雇用情勢下においては、雇用の確保も重要な視点の一つであると認識しております。
 このため、都では、緊急地域雇用特別基金事業において三万人の雇用確保を目標としております。また、先日発表した観光産業振興プランの素案でも、約三万七千人の雇用誘発を目標としているところでございます。
 今後とも、各事業がどの程度雇用を誘発できるかという点をも念頭に置きながら施策を展開していくことが重要と考えております。
 次に、労働相談の充実強化についてでございますが、厳しい雇用情勢のもと、労働相談件数が引き続き高水準で推移しております。今後、さらに労働を取り巻く環境が厳しくなる中で、労使間のトラブルが増加していくことが懸念されます。
 このため、解雇や賃金不払いなど切実な問題を抱える都民の相談需要に対応し、今回、緊急総合相談窓口の設置や、一部労政事務所における土曜日の労働相談と夜間相談の拡充を実施することとしたところでございます。
 今後、全労政事務所で土曜、夜間の相談を拡充していくために、労政事務所の再編整備を行い、機動的かつ弾力的な労働相談体制を構築していきたいと考えております。
 最後に、観光資源の開発についてでありますが、観光産業振興プランの素案でお示ししたように、外国人が考える東京の魅力は、伝統文化や古い町並みなどの異国情緒のほか、ハイテク産業やテーマパーク、さらに正直さやホスピタリティーなど多岐にわたっております。
 しかし、これまでは、東京の魅力が十分に生かし切れず、外国人旅行者のニーズに応じた観光資源開発への取り組みも不十分でありました。
 このため、ご指摘の点も踏まえ、外国人旅行者を広く集客するための施策を、ハード、ソフト両面から総合的に推進してまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) さきに公表した新しい都市づくりビジョンに関連する四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、都市づくりへの都民等の参画の仕組みについてでございます。
 都市づくりを進めるに当たりましては、都市計画として定められた事業を迅速かつ着実に実施していくことが不可欠でございます。そのためには、都市計画決定プロセスの透明性の向上を図り、納得できる計画としていくことが必要であると考えております。
 具体的には、計画立案段階から、事業の必要性、経済効果などの情報をインターネットを含めたさまざまなルートで提供するとともに、必要に応じPI的な手法も活用しながら、都民などの意見を反映した計画案づくりに努めてまいります。
 また、計画の決定手続段階におきましても、インターネットによる計画内容の情報提供や意見書の受理など、都民等にとって都市計画がより身近なものとなるよう、環境づくりを行ってまいります。
 次に、地区計画の推進についてでございます。
 都市づくりを進めていく上で、緑地や水辺の保全、創出など、環境配慮の視点は重要と考えております。
 こうした観点を具体化するに当たりましては、地区計画は、身近な地域の中で、緑地の確保、水辺や樹林地の保全、壁面の後退にあわせた緑化などを進めていく上で、有効な手法の一つであるというふうに考えております。
 今後、区市町村と連携し、緑の充実にも配慮した地区計画の策定を積極的に進めてまいります。
 次に、木造住宅密集地域の改善についてでございます。
 これら地域におきましては、細街路が多く、敷地が狭隘で、また、権利関係も複雑であることなどから都市基盤の整備が進まず、敷地の共同化も難しい状況にございます。こうした地域において、街区単位での細街路のつけかえや敷地の統合などによりまして、オープンスペースを備えた良好な町並みの形成を促進する必要があります。
 こうした認識のもと、都市づくりビジョンでは、新たな制度として、地権者などがみずから容積率の緩和などの内容を含む都市計画を定めるよう要請することができる、街区再編プログラムの創設を提案したところでございます。
 今後、必要な制度改正を国に働きかけるなど、早期制度化を図ってまいります。
 四点目は、都市計画道路についてでございます。
 道路が交通機能や都市防災、さらには地域の環境面の効果を十分に発揮できるようにする上で、体系的な都市計画道路のネットワークを形成することが重要であると考えております。
 そのため、事業の優先度や財源の効率的投資等の観点から、既に事業化計画を策定しているところでございます。
 今後とも、社会経済情勢の動向を踏まえつつ、計画的、効率的に道路整備の促進に努めてまいります。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 多摩地域の振興にかかわる四点のご質問にお答えいたします。
 まず、多摩の将来像の実現に当たっては、自然との調和を図るべきではないかとのお尋ねがございました。
 多摩地域は、西多摩の森林や丘陵地の自然を生かした公園、河川やわき水など、水と緑に恵まれた魅力的な地域でございます。
 多摩の将来像においては、このような豊かな自然を、今後の多摩地域の発展の可能性の大きな要因の一つというふうにしております。
 今後、先端技術産業の集積などを生かした産業の振興を図るとともに、身近な緑地の保全や都市農業、林業の活性化などを通じて、自然環境と調和した均衡あるまちづくりを推進してまいります。
 次に、今後の多摩振興における市町村の役割についてでございます。
 地方分権が進展する中で、市町村は基礎的自治体として、自主性、自立性を確立しながら、地域特性を踏まえた個性あるまちづくりに取り組む必要があると考えております。
 そのため、都は、都市基盤の整備など広域的な課題に着実に取り組むとともに、今後の多摩振興策と市町村の各種計画との整合性を図るなど、市町村の自主性、自立性を尊重しながら連携を図ってまいります。
 次に、今後の多摩振興における市民、NPO、企業との協働についてでございます。
 多摩地域の発展のためには、都や市町村など行政部門だけではなく、住民や企業、さらにNPOなどが緊密に連携、協働して、各種の振興策に取り組む必要があると考えております。
 そのため、都は、多摩の振興策の具体的展開に当たっては、まちづくりへの住民参加や産業振興における産・学・公の連携など、地域の方々と連携、協働するための仕組みづくりに取り組んでまいります。
 最後に、将来像の実現に向けた都としての取り組みについてでございます。
 多摩の将来像で示している取り組みの方向などにつきましては、各局の今後の事業展開の柱として位置づけ、その具体化に向けて取り組んでまいります。
 特にチャレンジテーマにつきましては、行政のみならず、住民や企業等が連携、協力しながら重点的に取り組む課題として設定しておりまして、市町村や都民の声を踏まえながら、その具体化を図ってまいります。

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