平成十三年東京都議会会議録第八号

○議長(渋谷守生君) 九番大西由紀子さん。
   〔九番大西由紀子君登壇〕

○九番(大西由紀子君) これまでの産業中心社会は、私たちの周りにダイオキシンや環境ホルモン、そして多様な有害化学物質に囲まれる環境をつくり出しました。こうした物質は、花粉症やアトピー、そして化学物質過敏症との関連性が指摘されており、まず、子どもへの影響を危惧せざるを得ません。
 なぜなら、こうした物質の摂取にせよ、被曝にせよ、同じ量であるならば、子どもは体が小さいために、体内濃度は大人より大きくなること、さらに子どもの細胞は成長期であるため、外部刺激に対して大人より大きく反応するおそれがあることが、学者によって指摘されています。
 大人基準しかないために、生まれれば塩ビのおもちゃや環境ホルモンが溶出する食器を口にし、ホルムアルデヒドが飛散する室内に置かれるという状況です。リスクは複合的で総合的であり、国の施策のおくれは否めません。この点から、未然防止を柱とした、条例による都独自の子ども基準の設定などを積極的に検討すべきです。
 そこで知事に伺います。
 こうした憂うべき子どもを取り巻く環境衛生を総合的に改善し、子どもの未来に健康なまち東京をつくっていくことは、都政にとっても重要な課題であると考えますが、いかがでしょうか。
 さて、昨年十二月に、当時の厚生省は、ホルムアルデヒドなどのほか、四物質を加え、室内空気中化学物質の室内濃度指針値及び総揮発性有機化合物の室内濃度暫定目標について、通知しました。
 都は、私たちの提案を受け、これまでこの問題について、平成十年にホルムアルデヒドの基準値を設定するなど、先駆的に取り組んできました。まず、国の動きを受け今後どのように施策を進めるのか、伺います。
 また、この通知の中では、子ども関連としては、保育園、養護施設など、子どもが暴露される可能性の高い空間を指針値の適用範囲とし、空気管理と継続的なモニタリングの必要性を指摘しています。今後はこれらの対応を踏まえ、子ども施設にふさわしい基準の設定が必要であると考えます。
 都では、東京都有害化学物質対策基本方針を策定し、都の施設における率先した有害化学物質の適切な管理の必要性を示しており、実際、私たちの指摘で、都内の学校関係ではパラジクロロベンゼンは既に使用禁止となっています。子ども施設こそ厳しい管理が必要であると考えます。この観点から、児童会館、養護施設など、都立の子ども施設においては、適切な空気管理やモニタリングをどのように進めていくのか、伺います。
 次に、八ツ場ダムについて伺います。
 東京の水政策は、水源を他県に依存する中で、都市の貴重な水源である地下水や雨水利用への取り組みは、なかなか進んでいません。一方、都市用水の需要実績が横ばいとなり、人口予測も頭打ちの中、水需給計画の需要予測が過大になっています。また、水道の配水量が減少傾向に転じているにもかかわらず、過大な流域総合計画が推進されています。
 私たち生活者ネットワークは、水循環の回復に取り組むことを提案するとともに、水需要計画を見直し、事業評価し、八ツ場ダムなど、ダム計画は中止することを提案してきました。
 都では、平成十一年度に八ツ場ダムの事業評価を行いました。しかし、投資的経費にかかわる一部の事業評価でしかなく、また、公募市民もなく、極めて第三者性の疑わしいものでした。
 今回、八ツ場ダムの工期が平成二十二年度予定と、工期延長のみの計画変更が提案されています。今後、都の負担は一千億にも上るとの試算もあります。しかし、計画の前提である洪水水量は、はるか五十数年前のものであり、また利水計画を見ても、首都圏を含む五県の人口予測も二〇一〇年をピークに減少が予測されており、ダムが完成したときには、その必要性が疑問視されます。
 こうした計画策定時からの条件変更が基本計画になぜ反映されないのか、伺います。
 また、人口減少や渇水対策の推進などが今後の水資源開発にどのように反映されるのか伺って、質問を終わります。
 以上です。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 大西由紀子議員の質問にお答えいたします。
 私も、かねがね、例えばダイオキシンもそうでありますけれども、非常に有害と想定されている物質についての環境基準値というのは、何で先進国に比べて日本だけが高いというのですか、低いというのですか、甘いのかということは、いつも疑問を感じておりました。
 例えば東京湾の実態を見ましても、いろいろなものが流れ込んでああいう現象が起こっているのでしょうが、魚介類がどんどん中性化していって、つまりその動物、生物プロパーの繁殖能力を失っているのですね。
 それから今度、大都会の男の子どもの精子の数が半減しているというのは、これは恐ろしいことでありまして、これが因果関係がわからないだけに、先延ばしにされるべきものではなくて、むしろ行き過ぎであっても阻止する措置というものを、環境基準なら環境基準で行わなければ、私は、行政を担当している人間が子孫に対する責任を負い切れないと思います。
 そういうことで、こういう問題は、国が鈍感であるならば、たとえ国と抵触しても、東京なら東京の研究をしまして、東京の基準値というものをやはり打ち立てるべきではないかと、私はかねがね思っております。ただ、そのためのすべき研究というものに、やはり時間もお金もかかるでしょうけれども、拙速ではなしに、急いでやらないと、私たちが死んだ後になって実は取り返しがつかないことになっても、責任が負い切れないと思います。
 ということで、都は都なりに、これまで哺乳瓶など、子ども用品から溶け出す化学物質の実態調査も行いましたし、業界団体に対して改善も指導いたしました。また、環境確保条例も設定し、化学物質対策の強化拡充を図ってまいりましたが、しかし、やはり一番わかりやすい基準値というようなものできちっと線を引かないと、結局垂れ流しになってしまうのじゃないかと思うのです。
 これはもう党派を超えて、立場を超えて、私たち日本人という、民族の存続の問題にかかってくることになりますし、ひいては人類の存在の問題にかかってくるわけでありまして、いずれにせよ、私たちは百年先の子孫の危機に備えるつもりで、その視点で、そういう措置を、行政を通じてでも行っていかなければいけない。東京が日本における先進大都市であるならば、それなりの文明的な責任を東京は負っていると自覚しております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 室内空気中化学物質に関する都の対応について、お答えいたします。
 都はこれまで、室内環境の衛生と安全を確保するため、ホルムアルデヒドの望ましい基準を設定し、実地に調査を行うなど、全国に先駆けた取り組みを進めてまいりました。
 今後とも、国が新たに示した室内空気中化学物質の指針値等に対象施設が適切に対応できるよう、関係機関への情報提供や保健所での相談体制等の充実に努めてまいります。
   〔福祉局長前川燿男君登壇〕

○福祉局長(前川燿男君) 都立の児童福祉施設における環境管理についてのご質問にお答えいたします。
 児童会館、児童養護施設などの都立施設におきましては、従来から、児童が安全で衛生的な環境のもとで過ごせるよう、法令等に基づき、児童の健康面などに十分配慮した管理に努めてまいっております。
 今後ともご質問の趣旨を踏まえ、保健所等関係機関との連携を図りながら、適切に対応してまいります。
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) 二つのご質問にお答えいたします。
 八ツ場ダム建設に関する基本計画についてでございますが、八ツ場ダムは、洪水調節と一都四県の水道用水及び工業用水の供給を目的として、国が建設する多目的ダムでございます。
 今回の変更点でございますが、基本計画に定められている事項のうち、工期のみを変更することを求めてきているものでございます。
 変更の理由は、長期化していた水没地の関係住民との補償交渉が妥結に向け見通しが立ったことから、ダム本体の建設に向けて、工期を十年間延伸するというものでございます。
 次に、水資源開発基本計画についてでございますが、国が昭和六十三年に策定いたしました現行計画の、いわゆる第四次フルプランは、関係都県の水需給の実績や、将来水需要の調査をもとに、水道用水など、用途別の需要見通しと供給目標、目標達成に必要な水源施設の建設に関する基本的な事項について定めております。
 国は現在、次期計画でございます第五次フルプランの策定を目指し、これまで、関係都県に対し水需給の実績調査を行っております。今後国は、社会経済情勢の変化を踏まえて、水需要の的確な把握と、水利用の安定性などを十分に考慮しながら、適切に対応していくものというふうに考えております。

○議長(渋谷守生君) 以上をもって質問は終わりました。

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