平成十三年東京都議会会議録第四号

○議長(渋谷守生君) 十二番福士敬子さん。
   〔十二番福士敬子君登壇〕

○十二番(福士敬子君) 今回、臨海副都心開発事業が行き詰まり、羽田沖埋立事業及び埋立事業会計との統合が打ち出されています。
 七番目の副都心として開発されたこの開発事業は、初期の段階で、さまざまな疑問が市民から出されていました。例えば、地震の際、液状化現象のおそれがある埋立地でのインフラ整備、そのために高額となった建設費、ビルの林立により海風がふさがれ、都心のヒートアイランド現象が進むことなど、防災、環境面での心配に加え、本当に副都心が必要かという根源的な疑問でした。
 地方の衰退の上に成り立った一極集中は、副都心計画より、むしろ地方の自立と活性化を進めるとともに、日本全体の底上げを考える問題ととらえるべきでした。
 そのような中、臨海副都心のテレコムセンター竣工時には、既にテレポート構想と時代のずれ、都心の空洞化により、企業進出の望みは断たれていたはずです。
 それを、当時、空き室に無理やり都施設を入れ、我と我が身を削るごまかしでしのぎ、さらに九一年、都議会の臨海副都心開発事業会計の否決という転換期に、きちんとした計画改正を逃した結果が、幾つも問題点を覆い隠し、今日まで赤字を引きずったと思います。
 埋立事業から独立して臨海副都心事業会計を立ち上げた所期の目的は、会計を明確にすることであったはずですが、今回の統合の動きの中で、どのような総括がなされたのかを伺います。
 公共事業が、社会動向を見きわめることなく、民間企業を当てにしてインフラ整備を進めたからといって、民間が行政の意のままに動くわけはありません。よほどしっかりとした目的を持つか、目的に陰りが出れば即刻計画の見直しを行うという柔軟さが、行政及び公営企業会計の事業に求められます。
 こうした事業計画を適正に見直すためには、個々の事業について細かく収支を判断する必要があります。赤字を表面上見えなくするような会計統合は、全く逆の動きであるといわざるを得ません。
 価格を次々に下げても、即座に土地を処分できる保証がない中では、土地を保有したまま情勢の変化を待ち、対応を図るという選択もあるはずです。
 そもそも財政再建は、後になって収支をはかる物差しを変えて帳じりを合わせることではないはずです。
 今回出された統合案は、これまで個人で体重測定をし発育の記録をとっていたのを、これからはクラス全員で体重計に乗ることにしますというようなものです。
 会計統合を行うことによって、事業収支をはかる物差しそのものが変わります。臨海副都心事業会計は、これまでの基準を変えることなく、単独で収支をはかり、民間企業を当てにした公共事業のあり方も含め判断すべきです。それがない限り、全国で問題となっているディベロッパー的公共事業の失敗を今後も続けることになるのではないでしょうか。
 この三会計統合においては、その達成目標を明確に定める必要がありますが、その中で、臨海副都心開発における達成目標はどのように位置づけられ、その成功と失敗の判断基準をどのように定めるか、また、それが当初の臨海副都心開発の達成目標とどのように関係するのか、伺います。
 本臨海副都心開発事業を初め、ある程度の規模を超える事業については、達成すべき目標をきちんと掲げ、事業を継続する際には、目標を達成できたか否かについて定期的に検討を行うことが必要だと思います。その上で、目標に達しない場合には事業そのものを見直すといったハードルを設けないと、責任の所在があいまいなまま、事業がずるずると進むことになります。こうして、一般市民の不信感につながる公共事業が脈々と続いてきたことを、行政側も心していただきたいものです。
 大規模開発事業を進めるに当たり、目標の達成状況をチェックするシステムについてのお考えを伺います。
 現在、あるべき都市の姿を示す計画の一つに、東京ベイエリア21が出されました。しかし、こうしたあるべき都市の姿と実際に行われる個々の開発、あるいは市民が求める都市の姿との間には明らかにギャップがあります。
 東京ベイエリア21では、こうした構想を立てるに当たって、NGOやNPO、民間企業の参加が提案されています。しかし、現実にどのような市民参加のあり方が考えられているのか見えません。
 構想の段階で市民が積極的な意見を述べる場は少なく、実現間際に反対運動が起きても、行政は事業を強行するのでは、何ら今までと変わりません。
 現在、大学における建築や都市計画系の研究室では、長期間の地域調査や住民の意見を取りまとめるほか、設計課題に市民の意見に沿った再開発計画をつくることなども行われているようです。
 このような調査研究などとも連携することで、大きな費用をかけずに、より地域に密着した調査と、市民の声を取りまとめることが可能となると思います。
 また、臨海副都心のように住民が少ない地域でも、大学の調査研究能力を生かすことで、机上の空論だけではない実質的効果が得られると思います。
 まちのあり方を提案し、市民の声を取りまとめるのに大学を活用することについてのお考えを伺います。
 最後に、知事に伺います。
 臨海副都心開発計画と同じころ計画され、類似した開発の例として、関西国際空港に関連した、りんくうタウンの開発があります。
 このりんくうタウンは、今すべての土地が売れたとしても、約一千億円の赤字と五百億円の利払いが残るとされています。また、空港開発に関連した計画としては、泉佐野コスモポリス計画が破綻しています。このほか、宮崎のフェニックスリゾート・シーガイアなど、全国で、行政が出資を行った第三セクターの経営破綻が相次いでいます。
 こうした経営破綻は、最終的に税金投入による救済を見込んだずさんな経営や、民間企業の進出を当てにして、いたずらに計画の規模を広げる行政側の怠慢などが原因であるといった指摘もあります。他地域の成功例や失敗例の検討を行うことが、都の事業計画の参考になることはいうまでもありません。
 りんくうタウンを初めとする第三セクターの経営状況に関する知事の評価と、その評価理由を伺います。
 また、他の例を教訓として東京都の事業計画にも生かすべきですが、これについても知事のお考えを伺って、質問を終わります。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 福士敬子議員の一般質問にお答えいたします。
 第三セクターの経営についてでありますが、今挙げられました、りんくうタウンなるものの実態を、私よく存じておりませんけれども、大体本質的にそれに等しい厄介な第三セクター、東京はたくさん抱えておりまして、まあ第三セクターといえども独立した商法法人でありまして、自治体に依存することなく、自主的、自律的に経営を進めることが本来は基本だと思います。
 今般あちこちに見られました第三セクターの破綻は、これは、あなたも含めて日本人全体が浮かれていたバブルというものを、いつだれが崩壊するかというのはだれも予測できなかったわけでありますから、いずれにしろ、そのバブル経済の崩壊によって景気が低迷を加え、そして経営者及び出資者等の経営の見通しも非常に甘かったことや、迅速な対策を講じなかった結果で、こういうことになりました。
 ご存じかどうか、東京都は、外部から、日本の経済界の非常にすぐれた経営者であります、例えば樋口廣太郎さん、あるいはオリックスをつくった宮内さん、あるいは牛尾治朗さん、そして高橋宏さん、そして加えて、今東京のバランスシートをつくっていただいております日本公認会計士協会の会長の中地さんも含めて、この東京の第三セクター、外郭団体についての建言をいただくアドバイザリーボードを開きまして、検討を進めてきましたが、ある瞬間、ある報告を聞いたときに、これに出席したこのメンバーの皆さんが、同じ瞬間に、なるほど税金かあ、といって慨嘆された。つまり、一般世間が扱っている金の感覚と、都庁を含めて、とにかく第三セクター、まあ官僚の諸君が天下りしてるんでしょうけれども、そこで行われている経営というものは、金に対する概念が基本的に違うということを、だれも有無をいわさず評価している日本の代表的な経営者が、ほとんど同じ瞬間に慨嘆したというのは、私にとって非常に印象的でございました。
 それから加えて、筆谷さんという東京の会長にお願いして外部監査を入れておりますが、もうこれはいろんな問題が出てきまして、筆谷さん自身もときどきあきれて、自分で噴き出すような事態もございますが、いずれにしろこれが実態でありまして、これを踏まえて、都においては、今日公共性の薄いと思われる事業を実施している第三セクターで、経営が悪化し再建の目途が立たなくなった場合には、問題を先送りすることなく、速やかに対処していくつもりでございます。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔「知事、藤田さんにいわれたばかりじゃないですか。今の答弁、最初のところは失礼だと思いますよ。謝ってください。バブルに浮かれていたとは何ですか。ひどいですよ。それは議長もきちんと知事に対して……」と呼ぶ者あり〕
   〔港湾局長齋藤哲哉君登壇〕

○港湾局長(齋藤哲哉君) 臨海副都心開発事業についての二点についてお答え申し上げます。
 まず、三会計統合についてでございますが、臨海副都心開発事業会計は、臨海副都心開発という地区別プロジェクトの事業収支を明確にするため、平成元年度に埋立事業会計から分離、設置されたものでございます。
 しかし、現在は地域内の都市基盤施設の約八割が完成し、整備の重点が広域交通基盤に移るなど、その開発は新たな段階を迎えております。また、今後は東京臨海地域全体を総合的、一体的に再編整備していく必要がございます。今日の厳しい経済環境のもとでこれらの課題に弾力的に対応していくためには、財政基盤を強化することが必要であり、その一つの手法として三会計を統合するものでございます。
 次に、臨海副都心開発の達成目標についてでございますが、臨海副都心開発は、首都東京の活力と創造力を生み出し、都民生活を支える新しいまちを創造することを目指しております。このまちは、現在、国際研究交流大学村や、テレビ局、総合商社を初め七百社を超える企業等が進出するなど、着実に発展し、活況を呈しております。三会計統合後も臨海副都心開発の達成目標は変わるものではなく、引き続き事業を着実に推進してまいります。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 大規模公共事業の目標達成状況を検証するシステムについてお答えいたします。
 これまでも大規模公共事業につきましては、予算査定、あるいは行政監査等を通じまして、公正性や効率性などの観点から検証し、その見直しに取り組んでまいりました。来年度からは、これに加え、事業の着手前に、目標とその効果を含め検証する大規模公共事業等の事前評価制度を構築してまいります。さらに事業着手後は、目標の達成状況を成果重視の視点から評価する行政評価制度を本格実施し、時代の変化に応じた、より効率的な事業運営に努めてまいります。
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) まちづくりへの大学の活用についてでございますが、大学がまちづくりについての専門的な知見を有していることは認識しております。これまでも大学の調査研究成果を必要に応じて活用したり、あるいはいろいろなご提言もいただいてきておりまして、まちづくり計画に反映してきたところでございます。しかしながら、各種行政計画への住民意見の反映ということにつきましては、行政みずからの責務として行うべきものというふうに考えております。都といたしましては、まちづくりに当たりまして、今後とも住民の意見を十分把握し、反映するよう努めてまいります。
   〔十二番福士敬子君登壇〕

○十二番(福士敬子君) まず、あなたはバブルに浮かれていたというのは、どういう根拠でおっしゃったのか、まず伺います。
 次に、中曽根政権で打ち出した民間活力導入は、公共投資を節約しつつ内需拡大につながるというふれ込みでしたが、公共投資の節約どころか、投資はしたが民間踊らずのまま、日本のあちこちで破綻を迎えました。先ほどのご答弁がございましたけれども、私は、こうした他の例を教訓として都の事業計画にも生かすべきことも質問いたしました。臨海副都心と似た例としてりんくうタウンを挙げましたが、そこからどのような教訓を得られたのか、もう一度確認をいたします。ちゃんとご答弁をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 中曽根内閣のころ、まあしきりに民活ということがいわれました。例えば都内二十三区におけるオフィスの需要面積などというものは非常に膨大な数字を挙げて、それが誤算でありましたけれども、別に私、あのときあの内閣にいたわけでございませんが、やっぱり中曽根内閣に限らず、いろんな形で日本の国政というものを、かじ取り間違ってきましたから、それを大いに参考にして、参考になるものはすべて参考にして、都政というものを立て直していきたいと思っております。
 それからバブルの件でありますけれども、私はもうほとんど日本人は浮かれておったと思いましたが、あなただけ浮かれてなかった。失礼いたしました、どうも。(笑声)

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