平成十三年東京都議会会議録第四号

   午後三時三十一分開議

○副議長(五十嵐正君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 一番織田拓郎君。
   〔一番織田拓郎君登壇〕

○一番(織田拓郎君) 初めに、高齢者施策について伺います。
 日本の近代的社会福祉事業は、明治五年、養育院が創設され、渋沢栄一を院長に迎えて以来といわれています。板橋区にある都の老人医療センターや老人総合研究所、ナーシングホーム、老人保健施設、養護老人ホームなどの施設群、いわゆる旧養育院板橋キャンパスは、その流れをくみ、お年寄りがいつまでも元気で生活が送れるようにするとの一貫した考え方のもと、緊密な連携をとりながら医療、福祉、研究の三位一体的なサービスを提供してきたところであります。
 高齢社会の深まりとともに、板橋キャンパスが果たしてきた先駆的、先導的事業の役割は、一層重要さを増してくると思いますが、昨年末に出された都庁改革アクションプランでは、板橋ナーシングホームや板橋老人ホームについては、民営化を目指し、運営方法を抜本的に見直すとされております。老人医療センターも、病院改革会議で、そのあり方について検討していると聞いております。
 こうした動きの中で、板橋区民を初め、都民は、今までどおりサービスが受けられるのかどうか、不安を持っております。
 そこで、各施設の運営主体が異なった場合、第一に、都立施設として果たしてきた先駆的、先導的役割をきちんと担えるのかどうか、第二に、連携のあり方に不都合が生じないようにできるのかどうかを伺いたいのであります。
 また、板橋キャンパスの各施設は、昭和四十五年ごろに建設され、老朽化が目立っております。このため、板橋老人ホームは、板橋を含め、都内四カ所での分散改築を進めており、今年十一月には吉祥寺、大森老人ホームに続き、三番目の施設として潮見老人ホームがオープンすると聞いております。
 ところが、唯一残された板橋老人ホームは、財政状況の変化から、計画が凍結されたままになっている上、当初計画では板橋老人ホームと合築で板橋ナーシングホームの建てかえを進めることになっていたため、ここにも影響が出ております。
 実際、板橋老人ホームやナーシングホームでは、居室環境が国基準を下回っているところもあり、都立の施設としては好ましい状態ではありません。一刻も早く板橋キャンパスの各施設が都民に期待される施設として整備される必要があると思います。
 今後の整備について、どう進めていくのか、伺います。
 次に、介護保険に関連して伺います。
 措置から契約へという福祉行政の大きな流れの第一陣として、介護保険制度がスタートしてから一年がたとうとしています。この中で、サービス利用者が安心して質の高いサービスを選択するには、事業者情報の提供が行われることが大切であります。
 板橋区では、携帯電話のインターネット接続サービスを利用して、施設の空き情報を提供していく動きがあり、都では既に東京都介護サービス情報提供システムにより、インターネットを通じて、事業者名、所在地など東京都が入力する情報と、施設の空き情報や併設サービスなど事業者が入力する情報とを都民に提供しております。
 ところが、介護老人福祉施設については、情報を入力する施設が当初の三倍にふえたとはいえ、現在、なお五割弱にとどまっていると聞いております。また、情報の内容についても、例えばほとんどの介護老人福祉施設で入所待ちの状況といえる今日、単なるあきがないという情報よりも、何人待ちなのかといったきめ細かい情報提供が課題であります。
 こうした観点から、より多くの事業者がみずからのサービス情報を提供できるように、そして都民により役立つよう、きめ細かく提供するように、都として情報提供を充実すべきと考えます。所見を伺います。
 次に、昨年の第一回定例会で私は、都の老朽化した都市基盤の更新問題を取り上げましたが、その際、具体的に触れなかった都営住宅の建てかえ事業などについて伺います。
 都営住宅の老朽化に対応して建てかえ事業を進めることは、都の住宅政策の重要な柱の一つであります。これは、単に住宅の更新のみならず、防災化、不燃化、土地の有効活用、そして居住水準の向上、まちづくりへの貢献と、多様な効果を持つからであります。
 そこで、まず、都営住宅の建てかえ事業を都はどのように進めていこうと考えておられるのか、伺います。
 私の住む板橋区では、間もなく建てかえ時期を迎える住宅が多くありますが、現状は移転、仮移転用住宅が大幅に不足しており、このままでは建てかえが著しく困難になりかねません。
 一方、我が地域では、ここ数年、工場が閉鎖され、その空き地にマンションが次々に建設をされております。そこで、工場跡地や都の未利用地など適切な土地があれば、そこに周辺の建てかえ時期を迎えた都営住宅のための移転用住宅を建設し、居住者に移転してもらえば、全体の建てかえ事業がうまく回転していくのではないかと考えます。
 住宅を建てかえる場合には、必ずそこで生活する居住者がおり、建てかえ事業を促進するためには、種地が必要です。場合によっては、公社住宅や公団住宅を活用する方策も検討すべきではないでしょうか。
 現行制度上は、課題も多いとは思いますが、問題の重要性を考えて、あえてここで問題提起をしておきたいと思います。
 また、東京構想二〇〇〇では、都は公平性確保を図る観点から、都営住宅制度の改革に取り組むとしております。
 都営住宅は、真に住宅に困窮する都民に的確に供給されるべきであり、その意味から、特に高齢者や障害者などには特段の配慮があっていいはずであります。特に、制度の入口である募集のあり方については、優遇抽せんや募集枠の拡大など、さらなる改善が必要と考えますが、所見を伺います。
 次に、交通安全対策について伺います。
 昨年の都内の交通事故は、死者数が五年ぶりに四百人を超え、発生件数、負傷者数とも、前年に比べて二〇%以上もの大幅な増加となるなど、極めて深刻な状況にあります。
 交通事故は、病気などと違い、遭遇して初めて重大性に気づくものであります。その事故による死傷者数は、都内だけでも年間十万人に及び、事故の重さも、悲惨な死亡事故はもとより、生涯、後遺症で苦しむ負傷事故も多いなど、単に事故として片づけられるものではありません。
 交通事故は、都民のとうとい命と健康を害する重大な脅威と考えますが、交通安全対策に対する知事の基本的認識を伺います。
 次に、事故に最も弱いといわれる高齢者の対策について伺います。
 高齢者の事故は、年々増大の一途をたどっており、また、軽微な事故であっても、負傷した場合は、若い人とは違って回復がおくれたり、寝たきりの状態になったりすることもあり、当事者の負担は大事故と全く変わらないことが特徴であります。したがって、高齢者の事故は、大小を問わず重視しなければなりません。
 都は、現在、平成十三年度を初年度とする五カ年計画である東京都交通安全計画を策定中と聞いておりますが、同計画に軽微な事故対策をも視野に入れた高齢者の交通事故対策を重点として盛り込むべきと考えます。見解を伺います。
 同時に、最近では、自転車の歩道上走行に加え、キックボードやスケートボード、インラインスケートや、さらには電動車いすなどの登場で、交通環境も大きく変化し、軽微に見える事故もふえていると思われます。軽微な事故は、統計にも上がりにくく、実態を把握しづらいこともあり、実効ある対策がとられているとは限りません。
 高齢者などには重大な影響を及ぼす、このような事故に対しても、実効ある対策がつくられるような仕組みを具体的にこの際考えるべきであります。所見を伺います。
 これに関連して、自転車道の整備について伺います。
 道路交通法では、自転車は自転車専用道か車道を走行すると規定されているものの、歩道や車道の路肩がその役割を代行しているのが現実であります。
 自転車道の整備は、自転車走行の安全確保にとどまらず、地球温暖化防止や渋滞解消の一助にもなり、整備が急がれるところであります。今後の都の自転車道の整備の方針と、現在の取り組み状況をお伺いをいたします。
 次に、都市計画道路補助二六号線の整備について伺います。
 この路線は、五十五年前の昭和二十一年に戦災復興計画の中で定められた補助幹線道路の一つで、板橋区氷川町を起点に、品川区大井一丁目に至る延長二十二キロメートルの環状道路ですが、今日に至るも全計画路線の半分も完成しておりません。
 板橋区においても、放射三六号から川越街道までは事業中ですが、肝心の大山駅周辺地区では全く事業化のめどが立っておりません。
 理由は簡単であります。大山駅周辺地区は、都内でも有数の庶民的な商業集積があり、これを核として成熟した地域コミュニティが形成されているにもかかわらず、補助二六号はその商店街を真っ二つに分断するため、これまで事業化計画が示されるたびに、地元から反対運動が起きたからであります。
 都市計画決定から半世紀以上を経過している計画を、今後も中途半端に引きずるのは許されないのではないでしょうか。確かに、何度か地元区が中心になって検討がなされたとは聞いておりますが、私はこの際、大胆に大山駅周辺地区の事業の進め方を見直すべきではないかと思います。
 もちろん、地元住民も、この地域の健全な発展を図ることに異論はありません。東京構想二〇〇〇では、都市づくりのための新たなルールづくりの重要性を指摘し、PI的手法の導入に取り組むことを表明しております。
 そこで、大山駅周辺地区の現状を打開するには、再開発事業の手法に限らず、補助二六号線の整備について、都と区、地元商店街、住民などが虚心坦懐に話し合い、協働のまちづくりを試みてはどうかと思うのであります。
 今後どう取り組んでいくのか、都の見解をお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、動物愛護推進員について伺います。
 平成十年の都の調査によれば、都内における猫の生息数は百十六万頭、うち飼育されている猫は百五万頭、飼い主のない猫が十一万頭と推計されております。
 一方、東京都内では、自主的に動物愛護に取り組んでいる団体やグループも多く、動物との触れ合いを促進する活動や、不幸な野良猫をふやさないため、野良猫の里親探しを進めたり、自費で不妊、虚勢手術を行ったり、地域に正しい猫の飼い方を啓発したりしております。
 そうした中、昨年十二月に改正動物愛護法が施行され、都道府県知事等は、地域における犬、猫等の動物の愛護の推進に熱意と識見を有する者のうちから、動物愛護推進員を委嘱することができるとなりました。
 これを受け、動物愛護家の間では、早く動物愛護推進員の委嘱を行ってほしいとの声が大きくなっております。
 都は、この動物愛護推進員の委嘱にどう取り組む考えか、スケジュールを含めて伺います。
 以上をもちまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 織田拓郎議員の一般質問にお答えいたします。
 東京都の交通安全対策についてでありますが、交通事故はもう大都市につきものの弊害でございまして、昨年、都内の交通事故死亡者が急増したことを厳しく受けとめまして、緊急アピールを出しました。
 ことしに入りまして、死亡者数は減少はいたしておりますものの、事故件数そのものは横ばい状態にありまして、事故防止対策は引き続き重要な課題であると認識しております。
 都としても、これまでも春、秋の交通安全運動など、施策の推進に努めてまいりましたが、今後一層、区市町村、警察等関係機関、団体と連携して、交通事故情勢に対応した事故防止対策に力を注いでいきたいと思っております。
 昨年、東京都も関連しておりますMXテレビで、都内の非常に事故の多発する、魔の交差点というんですか、そういうものの特集がありました。確かに、こう画像で見ますと、非常に運転している者が錯覚しやすいような状況があちこちでありまして、こういうものはやはり、ああいう情報をもとに、その対策を具体的に講じていきたいと思っております。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔福祉局長高齢者施策推進室長兼務前川燿男君登壇〕

○福祉局長高齢者施策推進室長兼務(前川燿男君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、いわゆる旧養育院、板橋キャンパスの高齢者施設等についてでございますが、渋沢栄一以来の伝統を受け継ぐ板橋キャンパスは、福祉、医療、研究の各施設が連携し、我が国の高齢者医療や福祉サービスの歴史の中で、先駆的、先導的な役割を果たしてまいりました。
 しかし、今、高齢者の福祉、医療ニーズが多様化、高度化し、利用者本位の視点に立った都民サービスの充実が求められる中、板橋キャンパスのあり方も見直しを迫られております。
 これまでの蓄積を生かしまして、福祉、医療、研究の機能的な連携を保持しながら、都として求められる先駆的な役割を果たしていくことが必要でございます。運営主体が異なることとなりましても、協定の締結などにより緊密な連携を保ち、都民の期待にこたえてまいります。
 次に、板橋キャンパスの施設整備についてでございますが、板橋キャンパスの高齢者福祉施設は、老朽化が著しく、居室の広さについて、ほとんどが国の設置基準を満たしていないなど、施設整備面で改善が必要となっております。
 当面、居室改善等を実施し、入所者の処遇の改善を図るとともに、先ほどお話しをした、都として求められる役割に照らして、従前の計画を見直し、できるだけ早期に将来のあり方を明らかにしていく考えでございます。
 最後に、介護サービスの情報提供についてのお尋ねでございますが、都民が福祉サービスをみずから選択、利用できるよう、都は総合的な情報システムとして、福祉ITネットワークを構築することといたしております。そのうち、介護サービスに関しては、介護保険の実施にあわせ、先行してシステムを稼働させた次第でございます。
 現況を見ますと、稼働後間もないこともありまして、ご指摘のように、事業者みずからの情報入力が少ないことは事実でございます。
 今後、より多くの事業者が、よりきめ細かく最新情報を入力するよう、研修や指導検査等のさまざまな機会をとらえて積極的に呼びかけ、情報提供の充実に努めてまいります。
   〔住宅局長戸井昌蔵君登壇〕

○住宅局長(戸井昌蔵君) 都営住宅についての二点のご質問にお答えいたします。
 一点目は、都営住宅の建てかえ事業の進め方についてでございます。
 建てかえに当たりましては、民間の住宅や福祉、医療、産業、防災等の施設の導入を図り、地域の活力あるまちづくりに貢献できるよう、敷地を有効に活用することが重要であると思っております。
 具体的には、全団地を対象に、都営住宅等ストック総合活用計画を策定いたしまして、建てかえ事業の計画的、効果的な推進を図ってまいります。
 二点目は、高齢者や障害者などに対する都営住宅の募集のあり方についてでございます。
 現在、住宅困窮度の高い世帯から入居できるポイント方式による募集を実施するとともに、抽せん方式による場合でも、当せん率が高くなる優遇抽せん制度を新築募集において採用しているところでございます。
 来年度からは、ポイント方式による募集割合を高めるほか、優遇抽せん制度の空き家募集への導入や、単身者向け空き家募集戸数の拡大によりまして、真に住宅に困窮する都民に、より一層配慮した募集の仕組みをしていきたいと考えております。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 交通事故対策について、二点お答えいたします。
 まず最初に、高齢者の交通事故対策についてですが、高齢者は、他の年齢層に比べて交通事故による致死率が極めて高く、また事故の発生件数も増大しており、高齢者の事故防止に重点を置いた対策の強化が急務となっております。
 このため、都は、現在策定中の第七次交通安全計画において、高齢者の交通安全の確保を重要課題の一つとして位置づけ、高齢者に配慮した道路交通環境の整備や、参加、体験型を初めとする交通安全教育の推進などを盛り込んでいこうとしております。
 二番目に、軽微な事故に対する対策についてでありますが、交通ルールを無視した自転車の歩道上通行などにより、ご指摘のような軽微な事故が発生し、問題となっております。
 このような事故を防止するためには、とかく歩行者への配慮を忘れがちな自転車利用者などが、交通ルールやマナーを守り、実践していくことが肝要であります。
 都としては、今後とも警察等関係機関、区市町村等とも連携しながら、地域の中で正しい通行方法の普及啓発などを有効に推進していきます。
   〔建設局長古川公毅君登壇〕

○建設局長(古川公毅君) 自転車道整備の方針と現在の取り組み状況についてですが、地域交流の促進と公共交通網を補完するため、国道、都道、区道の既存の道路空間を活用し、自動車や歩行者から分離する構造を基本とした自転車道ネットワークの形成を図り、あわせて、区との連携のもとに、駐輪場の整備やマナー向上のための施策等も推進してまいります。
 現在、千代田・中央地区など七地区で自転車利用環境整備基本計画を策定し、都心部の昭和通りなどでは、広い歩道をカラー舗装で区別したのに加えて、図入りで歩行者優先とわかりやすい標識を設置し、また、板橋区では、植樹帯で分離した、安全に走行できる自転車道の整備を進めております。
 大山駅周辺地区の補助二六号線の整備についてですが、補助二六号線は環状六号線と環状七号線とを補完する重要な路線であり、防災都市づくり推進計画では、再開発事業の導入を検討するとしていました。
 都としては、財政構造改革の一環として、再開発事業の見直しと再構築に着手したところであり、これらの状況を踏まえつつ、その整備手法などを含め、住民との協働のまちづくりに向け、地元区と連携を図ってまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 動物愛護推進員の委嘱についてご質問がございました。
 動物愛護推進員は、動物の愛護及び管理に関する法律に今回新たに設けられた制度でございまして、動物の愛護と適正な飼育の重要性について、住民の理解を深めるなどの活動を行うこととされております。
 こうした動物愛護推進員の活動は、今後の動物行政において重要な役割を担うことから、都は、来年度に動物愛護を目的とする関係団体及び行政等で構成する協議会を設置し、動物愛護推進員の委嘱及び活動内容等に関して検討協議を開始いたします。その結果を踏まえまして、できるだけ早期に委嘱を行い、動物愛護の推進に取り組んでまいります。

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