平成十三年東京都議会会議録第四号

○副議長(五十嵐正君) 十四番くぼた光君。
   〔十四番くぼた光君登壇〕

○十四番(くぼた光君) 初めに、都営バス路線の廃止縮小について伺います。
 昨年十二月、都営地下鉄大江戸線の開業に伴って、私の地元、港区民の生活に欠かせない都営バス路線を、実態調査や地元住民、区との協議も行わず、都が一方的に廃止縮小したことに怒りが広がっています。
 知事、なぜ多くの区民が廃止に憤り、今なおその復活を望んでいるのかわかりますか。それは、バスが港区民にとって欠くことのできない交通機関だからです。実際に、総合病院がなく、交通機関がバスしかない芝浦や海岸、港南地域は、路線が廃止縮小されたため、地下鉄の駅ができたわけでもないのにバスがなくなり不便になった、病院を変えるわけにもいかず、タクシーを使うので家計は大変という悲鳴に近い声が上がり、地域ぐるみで路線確保の取り組みを始めています。
 地下鉄ができたといっても、身近に商店や開業医が少ない都心区では、買い物や病院、銭湯通いにと、生活の足として利用されてきたバスのかわりにはならないのです。また、駅の間が長い地下鉄に比べ、バス停はおよそ二、三百メートルごとにあり、余り歩かないで済むこと、地下鉄と違って平面移動で乗車できるバスは、お年寄りや障害者にとって安全で安心できる乗り物であることが重要なのです。
 実際に、開通した大江戸線の六本木駅と次の青山一丁目との間は一・三キロあり、これまでは四つのバス停がありました。それが、今では駅まで長い道のりを歩かなければならず、さらに、東京で最も深い六本木駅の地下四十二メートルのホームにたどりつくには、地上から十分もかかるなど大変な思いを強いられているのです。
 そのため、廃止後も、町会や老人会の集まりでは、必ずといっていいほどバスが話題になります。一時間に一本でもいいから病院に通えるバスを走らせてほしいと切実で、港区老人クラブ連合会を初め、都に対するバス路線復活、路線確保の署名や要請は、こうした住民の声が反映されたものなのです。
 港区は、この事態のもとで、事前調整もなく、都が一方的に保健医療地域を走る路線を廃止したのだから、都の責任で解決を図るべきといっているのです。
 知事、都民の生活実態や区議会の意向も無視したやり方は許されません。まず、港区長と責任をもって話し合うべきです。答弁を求めます。
 都が行ったバス路線廃止である以上、地上交通確保に全力を尽くすのは都の責任です。廃止路線をもとに戻すのはもちろん、都心部の足の確保のために、都の責任で、コミュニティバスなど地域に根差した交通網の整備に力を尽くすべきと考えますが、答弁を求めます。
 次に、マンションの問題について伺います。
 港区では、全世帯の六割が集合住宅で、その半数が分譲マンションです。現在も区内の至るところで分譲マンションの建設が続いています。都においても、ストックは約六十五万戸、居住者は百六十万人を超え、分譲マンションは都市型持ち家住宅の主流となろうとしています。
 こうした実態を把握し、建設から販売、管理までの一貫したシステムを確立することは、今後の都民居住にとってのみならず、東京のまちづくりの上からも焦眉の課題であることは間違いありません。
 そこで、まず、新築分譲マンションの供給について伺います。
 都において、昨年だけでも六万戸以上も新築マンションの着工がされました。最近では、ついの住みかとしてマンションを購入する傾向が高まっており、マンション購入者が、良質のものを買うために的確な情報を得られることが、とりわけ大切になっています。
 大手ゼネコンが施工し、大手分譲会社が販売した港区内のいわゆる億ションでは、排水系の施工不良で、築五年で天井が落ち、大きな話題となりました。また、別のマンションでは、販売会社が売りやすくするために修繕積立金を少なく設定していたため、いざ修繕というときに、積立金が不足して行き詰まったというケースもありました。
 このように、欠陥住宅を買わされたり、販売会社に有利な条件が設定されていたりすることが、後々のトラブルの原因になり、今、社会問題にもなっています。
 同じようなトラブルに見舞われたアメリカのカリフォルニア州では、パブリックレポート制度という消費者保護のシステムがつくられています。それによると、マンションを開発するとき、開発業者は、販売前に州の不動産局に対して、その仕様や構造を初め、長期修繕計画まで提出しなければならず、その上、管理費、修繕積立金の額まで適正であるのかチェックを受けることになっています。さらに、その内容を購入者に徹底的に開示させることで消費者を保護しようというものです。こうしたシステムが待ち望まれているのです。カリフォルニア州のパブリックレポートに学ぶことが必要です。
 マンション居住が都市の居住形態の大きな柱になろうとしている今日、マンション売買に伴う消費者保護の対策や情報公開を進め、建物としてのマンションだけでなく、その維持管理についても、購入するという観点から行政が関与していくことを課題として位置づけることが必要ではありませんか。また、マンションの建設、販売、管理までの一貫した消費者保護のシステムを都として構築していくことを提案するものですが、それぞれ所見を伺います。
 また、九八年度より、マンション建設中の一定段階で建物の施工が法令の基準に達しているかをチェックする中間検査が導入されましたが、この最低限の検査でさえ、全都平均で六割台にとどまっています。都としても、少なくとも、中間検査が法で定められた住宅に対し、完全に徹底されるような仕組みをつくるべきと思いますが、見解を伺います。
 次に、マンションの長寿化の問題です。
 都内には、建てかえ時期を迎えたマンションや改善が必要なマンションが少なくありません。老朽マンションの建てかえについて、基金制度や法整備などのより根本的な対策も急がれていますが、同時に、居住者の負担が少なく、建物の長寿化にも役立つ定期修繕の促進は大きく立ちおくれています。
 台東区の実態調査によれは、マンション居住者のうち、七割の人が修繕や改善を望んでいるにもかかわらず、建物の維持に必要な築後十年から十二年が目安とされている屋上防水工事の実施率は二五%、外壁塗装は六・三%にとどまっています。
 この点で先行している横浜市では、NPO法人の協力を得て、安い費用で済む老朽度診断を実施するとともに、大規模修繕費融資についても、利子分をすべて補助するなどの支援を始めています。
 横浜市のような老朽診断促進支援事業の創設などは、都が率先して行う事業ではないかと思いますが、どうか。また、現行のマンション共用部分工事助成の対象戸数をさらにふやし、無利子とするなどの拡充も必要です。答弁を求めます。
 次に、マンションの実態をつかみ、施策に生かしていく問題です。
 我が党の提案により、都は九八年に分譲マンションについて実態調査を行いましたが、アンケートによるサンプル数二千、回答率三四%という調査にとどまり、区や市が九九年から開始した実態調査も、実績は五区のみにとどまっています。このペースでは、マンションの多い区部とその周辺部を把握するだけでも十数年かかり、マンション対策に支障を来しかねません。
 これに対し、横浜市では、九六年度から、二十万戸ある市内全分譲マンションと管理組合の状況を把握する分譲マンション基本台帳作成事業に取りかかり、現在までに八割の実態調査を終え、さらに逐次更新を行うとしています。しかも、この台帳を分析して、その特徴である市内多数を占める小規模分譲マンション向けに横浜型標準管理規約をつくり、普及に取り組んでいます。また、大規模修繕や管理組合支援などについても、実態に合わせた施策の実施に踏み出しています。
 都は、こうした実践に学んで、区市の協力を組織しながら悉皆調査を行い、分譲マンション基本台帳の作成に取りかかること、そして、大規模修繕の促進や管理組合の育成など、都の施策展開に役立たせるべきではありませんか、見解を求めます。
 マンション居住は、今後ますますふえます。この問題の最後に、これからの住宅問題に大きな位置を占める建てかえ問題を含め、都はこれからのマンション施策にどう取り組むのか、知事の基本的な姿勢を伺います。
 最後に、高過ぎる都心の固定資産税の問題についてです。
 固定資産税の評価替えの今年度も、都心区の納税者で結成された高い固定資産税から営業と住まいを守る会の百九十名は、固定資産税に対する不服申し出を行いました。この口頭審査の過程で、不動産業者への聞き取りや土地の鑑定依頼など独自に調査した、赤坂、新橋、浜松町、芝では、土地評価額が売買実例のほぼ二倍となっており、とても適正な時価とはいえない実態が明らかになりました。これまでにも、裁判で適正な時価を上回った評価額は地方税法上違法であるとの判決が出されています。
 納税者が払い切れない高い税額となっているのは、公示価格の七割を課税の基礎にしたことに加えて、評価額そのものも時価の二倍となっているからなのです。絶対に納得することはできません。
 知事、こんな評価に基づく固定資産税を払えというのですか。お答えください。住民の不服申し立てに応じ、都の責任で実態に合った土地の評価にやり直すのは当然と考えますが、どうか、答弁を求めます。
 また、土地評価の規準としている公示地価格に対する不服申し立ての仕組みをつくることや、土地評価のあり方の改善を国に要求すべきと考えますが、見解を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) くぼた光議員の一般質問にお答えいたします。
 分譲マンション施策についてでありますが、東京における分譲マンションは、都市型の居住形態として定着し、今後ますます拡大していくことが見込まれております。
 都は、これまで独自にマンション管理に係る各種支援に努めるとともに、国に対してマンション管理法の制定を要求し、このたび実現を見ました。
 今後とも、区市町村と連携し、適正なマンション管理の一層の推進を図るとともに、建てかえ事業法の早期制定を国に強く求めていくつもりでございます。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔交通局長寺内広壽君登壇〕

○交通局長(寺内広壽君) バス路線再編整備に関してのお尋ねでございますが、大江戸線全線開業等に伴うバス路線再編整備は、鉄道との役割分担を明確にし、新しいバスサービスの提供や重複路線の見直しを図るとともに、事業採算性も考慮し、公共交通ネットワークの充実を図る上から実施したものでございます。
 この路線再編整備につきましては、関係区、関係区議会及び地域住民等にも理解を得られるよう説明をしてきたところでございます。
 今後とも、必要に応じ関係区との協議をしてまいります。
 次に、地域に根差した交通網の整備についてでございますが、今回のバス路線再編整備につきましては、ただいま申し上げた考え方をもとに、鉄道との競合状況、乗客潮流の変化、事業採算性等を勘案し実施したものであり、廃止路線の復活は困難でございます。
 しかしながら、コミュニティバス等につきましては、既存路線との整合性、事業採算性などを考慮し、区との役割分担等、条件整備を含め、関係区と十分協議してまいります。
   〔住宅局長戸井昌蔵君登壇〕

○住宅局長(戸井昌蔵君) 分譲マンションに関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、消費者保護についてでございます。
 マンションの建設、販売時におきましては、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明義務のほかに、先ごろ制定されました住宅の品質確保の促進等に関する法律、略して品確法というふうにいわれておりますけれども、この法律によりまして、瑕疵担保責任の義務づけ、また、住宅性能表示制度の導入がなされたところでございます。
 また、維持管理につきましては、都といたしましても、近々国がマンション管理法に基づきまして策定する指針を活用し、区市町村とも連携を図りながら、その適正化を図ってまいりたいと考えております。
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) 共同住宅に対して中間検査を徹底すべきとのことでございますが、都は、中間検査、完了検査の確実な実施を目指しまして、平成十一年度に、区市などとともに、建築物安全安心実施計画を策定いたしました。この計画で、共同住宅に関しましては、平成十三年度末の中間検査受検率の目標を一〇〇%としております。
 この実現に向けまして、都は、区市などとともに、検査体制の強化や、検査制度の広報、普及、建築主などへの中間検査受検の督促を行っております。
 さらに、建築主が融資を受ける際に検査済み証の添付を条件とするよう金融機関に働きかけるなど、受検率の向上に努めているところでございます。
   〔主税局長大塚俊郎君登壇〕

○主税局長(大塚俊郎君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、固定資産税についてでございますが、固定資産の評価は、あくまでも正常な条件のもとで成立した売買価格を基準とするものでありまして、売り急ぎ、債務清算、競売など特殊な要因がある価格は、その基準として用いることができません。全国的に統一された客観的な評価基準に基づき、不動産鑑定士等専門家の支援を得て、個々の課税客体を適正に評価の上課税をしているものでございまして、当然お支払いをいただきます。
 なお、評価等に不服がある場合には、納税とは別途、行政庁に対する審査の申し出、裁判所への訴訟が、地方税法等により制度として用意されております。
 次に、審査の申し出でございますけれども、土地の評価は、ただいま申し上げましたとおり、全国的に統一された客観的な評価基準に基づき適正に行っているものでございますが、審査の申し出があった場合には、さらに固定資産評価審査委員会において改めて当該評価を検証しております。
 なお、繰り返しますけれども、評価に当たっては、当事者間の事情など特殊な条件のもとに成立した取引価格は採用しないものであります。
 最後に、土地の評価でございますけれども、国の所管である地価公示価格は、現実の取引価格等を基準として示された指標であります。不服申し立てにはなじまないものと制度的にされております。
 地価公示価格との関連で、土地評価のあり方について、見直しを国に要求する考えはありません。

ページ先頭に戻る