平成十三年東京都議会会議録第四号

○議長(渋谷守生君) 九十九番河合秀二郎君。
   〔九十九番河合秀二郎君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○九十九番(河合秀二郎君) 通告に基づき質問いたします。
 今、新しい世紀、二十一世紀を迎え、将来の多摩地域を展望しながら、都政における幾つかの課題について、知事並びに関係局長に伺います。
 私たちは、戦後の人口増加による急激な都市の膨張に対して、住宅、上下水道や道路、小中学校や保育園、病院、診療所などの社会資本の整備に懸命な努力を払ってきました。その一方で、私たちは、子どものころなれ親しみ、仲間とともに遊んだ里山や谷戸、小川など、多くの自然を失ってきました。東京を取り巻く山々も、木材価格の低迷もあり、手入れされることなく荒廃への道を歩みつつあります。
 こうした中で、私の地元町田市においても、わずかに残された里山に、できるだけ昔ながらの多摩の雑木林をよみがえらせたいと、多くの市民が活動を始めています。八王子市においても、今月十七日、里山をめぐるシンポジウムが開催されます。
 さて、多摩地域には、このような部分的に残された里山が幾つか残されていますが、その中でも、あきる野市横沢入地区は、都内最大の規模を有する貴重な谷戸であり、昔ながらの里山景観がそっくり手つかずで残っている地区であります。
 幸い、東京都は、昨年十二月の定例会において、自然保護条例を改正し、里山保全地域を指定できることとしました。私は、この条例の規定をも活用し、東京における里山景観を今に残す貴重な空間である横沢入地区をぜひ守っていくべきと考えるものでありますが、見解を伺います。
 次に、多摩地域の医療について伺います。
 東京都は、石原知事の提唱により、救命救急センターを持つ都立病院に、いつでも、だれでも、さまざまな症状の救急患者に的確に対応する総合救急診療科、東京ERを計画的に整備するとしており、多摩地域では府中病院に整備することになっています。
 多摩地域の医療資源の状況を見ますと、人口十万人当たりで見た病床数は、おおむね区部並みの水準に近づきつつあるものの、多摩地域は区部に比べて、療養型病床群など長期療養型病床の割合が多いとされています。
 さらに、医療機能によっては、例えば周産期医療、小児科、耳鼻咽喉科の医療機関が少ないなど、区部に比べて不足していると考えられる医療機能もあります。こうした状況を踏まえ、東京都は多摩地域の医療について今後どのように取り組まれるのか、見解を伺います。
 さて、さきに発表された都庁改革アクションプランによりますと、多摩建築指導事務所が簡素化され、福祉局多摩事務所は廃止、多摩地域の保健所は見直し、そして多摩都市整備本部は十四年度に廃止するとなっています。
 個々の問題には触れませんが、都政において、いわゆる三多摩格差の解消が大きな課題とされ、これまでさまざまな取り組みを進めてきました。三多摩格差そのものについては、現在いろんな議論があることは私も承知していますが、多摩振興の重要性についてはいささかも変わりがないはずです。私は、組織の見直しを行うならば、多摩地域の振興を専管する部局が必要ではないかと考えますが、見解を伺います。
 次に、市町村合併について伺います。
 昨年の地方自治法の改正によって、地方公共団体は、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うとされ、市町村はその最も基礎的な主体に位置づけられました。しかし、残念ながら、全国の自治体の多くは、その役割を担い切るには力不足といわなければなりません。
 この一月に田無市と保谷市が合併した西東京市では、十年間で二百十八名の職員削減などの行財政運営の効率化により、百八十九億円の財政効果が得られるとして、合併効果を強調しています。しかし、現状では、地域の特性や住民感情、議会や首長の利害が絡まって、市町村合併に関する検討はなかなか進んでいないのが現実です。
 実際の合併問題については、まず住民自身が主体的に判断すべきですが、各首長や議員が地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うために、各市町村はどうあるべきか、市町村合併も含めて、改めて冷静に検討する必要があると思います。
 東京都においても、こうした検討を促進するために、積極的に問題提起を行っていく必要があると考えますが、知事の見解を伺います。
 また、私の地元の町田市などは、東京都内の隣接地より神奈川県の相模原市の方とより密接な関係にあります。先月上旬には、両市の市長も参加してシンポジウムが行われ、都県境を越えて人口百万人の政令指定都市を視野に入れた議論が交わされています。
 さきの市町村合併に関する検討指針では、東京都の行政区域を前提としたゾーニングが示されていますが、町田と相模原市の例のように、市町村合併は必ずしも府県行政の枠内にとどまるとは限りません。市町村合併と同時に、道州制の導入についても本格的に検討する必要があると思います。
 都庁改革アクションプランでは、都政改革ビジョンⅡの方向性として、道州制論を視野に入れるとしていますが、新たな大都市行政のあり方について、そしてこれからの広域行政のあり方について、知事はどのようにお考えか、見解を伺います。
 次に、国際政策について伺います。
 石原知事は、さきの施政方針の中で、アジア大都市ネットワークについて、ことしの秋には東京都で第一回会議を開催し、具体的な共同事業を決定すると述べています。
 昨年八月のクアラルンプールでは、東京、デリー、ソウルの提唱四都市のほか、バンコク、北京、ハノイ、香港、ジャカルタ、マニラ、シンガポール、台北、ヤンゴンの九都市に参加を呼びかけることが決められましたが、ソウルの高建市長からは、さらに北朝鮮のピョンヤンに呼びかけることなどが提唱されたと聞いています。
 石原知事が北朝鮮に嫌悪感を抱いていることは承知していますが、北朝鮮をめぐる国際情勢は変わりつつあります。知事が施政方針で表明したように、これからの日本は、アジア諸国との連携を深めることで初めてアメリカやEUとの対等な関係を構築できるというのであれば、好き嫌いという感情を超えて、むしろ北朝鮮を国際社会に溶け込ませていくという道をとった方が賢明ではないでしょうか。アジア大都市ネットワークにおけるアジア諸都市との幅広い連携について、見解を伺います。
 国際政策は、外交という面だけではなく、日本国内における陰の部分に対応していく必要があります。
 近年見られるような国際的な組織犯罪には、断固として取り組んでいくことが必要でありますが、一方で、外国人ということを理由に、過剰とも思える自衛策を講じている例も見られます。私たち日本人の中には、日本国籍の有無に関係なく、自分たちと違う容姿や話し方、立ち居振る舞いをする人、殊にアジアの人たちを蔑視し、疎外しようとする人も多くおります。殊に東京には多くの外国人がおりますが、東京都が真に国際都市東京を目指すのであれば、都民の意識を変革し、外国人と共生する社会をつくっていくべきと考えます。知事の見解を伺います。
 私は、一昨年三月の代表質問でも外国人学校について伺いました。外国人学校は、学校教育法第一条で定めた学校ではなく、各種学校という位置づけになっているために、さまざまな制約を受けています。
 東京都内には、中華学校や韓国学園、朝鮮学園やセントメリーズインターナショナルやアメリカンスクールといった私立外国人学校が三十余校もあるそうですが、これらの学校は、日本の私立学校並みの私学助成はされておりません。
 これからは、学校教育も自由化され、チャータースクールなど多様な教育環境が提供される時代となっておりますが、このような時代の趨勢も視野に入れながら、外国人学校に対する助成についても充実していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、外国人学校の中には、日本の学校のカリキュラムに準じた教育を行っている学校もありますが、高校や大学進学、各種資格の受験に際し、日本の学校と同じ取り扱いが受けられないことも多いようです。
 東京都においては、都立大学や科学技術大学では受験資格を認めているものの、都立看護学校では認められておりません。私は、外国人学校についても、カリキュラムの基準を満たせば、日本の学校と同じ扱いにしていくべきと考えますが、見解を伺います。
 近年、日本への外国人留学生はふえ続け、平成十二年度で六万四千十一人、そのうち、東京都には三分の一以上、二万二千三百十四人の留学生が集まっています。しかし、留学生のうち、学校が設置する宿舎に入居できるのはそれほど多くはなく、彼らにとって東京の住宅事情は厳しいものとなっています。
 そこで、留学生が短い期間の滞在であることを考えるならば、大学が多く立地している多摩地区において、例えば、都民住宅の空き家や建てかえ予定の都営住宅に入居させることも可能であると考えます。
 私は、都営住宅などを有効活用して、外国人留学生の受け入れを進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 以上で私の質問を終わります。知事並びに関係局長の誠意ある答弁を求めます。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 河合秀二郎議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、市町村合併についてでありますが、地方分権が進展する中で、市町村が行財政運営の効率化を図りつつ、広域的な行政需要に対応していく上で、合併は非常に大きな効果があると思います。
 合併を進めていくには、何よりもまず住民の意思を尊重しながら、市町村みずからが自主的、主体的に考えて取り組んでいくことが必要と思います。
 そのため、今回東京都は、合併の必要性や効果などを盛り込んだ市町村合併に関する検討指針を策定いたしました。
 今後、本指針を活用して、市町村や都民の中で、合併に関する検討が活発に行われるよう積極的に働きかけていくとともに、合併に向けた市町村の取り組みに対して、さまざまな支援を検討していきたいと思っております。
 今、発言の中にありましたが、もし仮に、町田市と相模原市が合併するような事態が生ずれば、これは非常に、道州制も含めて既存の行政区分というものが、時代におくれているということの一つの証左になると思いますけれども、現況では不可能だと思いますが、非常にこれは暗示的な事例であると私は思います。
 次いで、大都市行政及び広域行政のあり方についてでありますが、人々の生活の広域化に伴って、東京圈で発生している多様な問題に的確に対応できるとともに、自治体みずからがその責任と判断によって、主体的に地域経営を行える新しい仕組みの構築が求められていると思います。
 今後策定する都政改革ビジョンⅡでは、現行制度にとらわれることなく、道州制論なども視野に入れながら、広域行政や大都市行政のあり方について提言していくつもりでございます。
 次いで、アジア大都市ネットワークについてでありますが、アジア大都市ネットワークは、社会的、経済的にも深いかかわりのあるアジアの大都市が連帯協力して具体的に共同事業を行うことによって、二十一世紀をリードする極の一つとしてアジアの発展を目指すものであります。
 現段階では、国際社会に社会的、経済的に開かれているとはいいがたい北朝鮮のピョンヤンとさまざまな分野で共同事業を行うということは、いろいろ課題があると思います。
 私個人の感情についても付言されましたが、ヨーロッパや南米など外国も含めて、あのいたいけな十二歳で拉致され、既に十年以上閉じ込められたままでいる横田めぐみさんも含めて、公安筋の情報では百五十人もの拉致された日本人が帰らざるに、閉じ込められているという国に、私はどうしてもこだわらざるを得ません。
 参加都市の追加については、これは日本の意思だけではなくて、共同提唱四都市による合意が必要でありまして、今後四都市と協議しながら、夏までには結論を出していきたいと思っております。
 次いで、外国人と共生した社会づくりについてでありますが、これはまことに結構なことと思います。しかし、あくまでも正式に合法的に入国している外国人を対象とすべきでありまして、都内の外国人登録人口は三十万を超え、東京は多くの外国人が暮らす大都市となっております。
 東京の魅力を発信して、世界の人々が交流する都市にするためにも、都市の安全の確保とともに、外国人も住みやすく、また、活躍できる社会をつくることは、歴史的にも必要であるし、必然であると思います。
 都としては、区市町村などと連携を図りつつ、外国人向けの情報提供に努めるとともに、東京に住む外国人の声を聞く場や交流する機会を設けるなど、外国人との相互理解を促進していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔環境局長中野英則君登壇〕

○環境局長(中野英則君) 里山保全地域の指定についてでありますが、現在、横沢入地区を含め、谷戸及びその周辺の里山を対象に、自然環境の状況などについて調査を実施しておりまして、今月末をめどに結果を取りまとめることにしております。
 里山保全地域の指定につきましては、この調査結果を踏まえ、さらに、里山の維持管理に不可欠であります、住民の自然保護活動の実態や地元自治体の取り組みなどを総合的に勘案しながら検討してまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 多摩地域の医療への取り組みについてでございますが、都はこれまでも、東京都保健医療計画に基づき、二次保健医療圈を基本とした計画的な病床整備に努めてきたところであります。今後とも、各圈域の必要病床数の充足状況等を勘案し、また、医療機能等実態調査などにより把握した医療機能やニーズの状況を踏まえ、適切に対応してまいります。
 また、ご指摘の医療機能については、周産期医療における多摩地域連携強化事業や小児救急医療の充実などを通じて、引き続き多摩地域の医療の強化に努めてまいります。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、多摩地域の振興を専管する組織が必要ではないかとのお尋ねでございます。
 ご案内のように、都の組織は、都市基盤整備や保健、医療、福祉といったそれぞれの行政目的別に構成されておるわけでございます。そうした中におきましても、多摩地域の振興は都政の重要課題の一つであることから、都は、多摩島しょ振興を担当する副知事のもとで多摩島しょ振興推進本部を設け、各局が連携を図りつつ振興に取り組んできております。
 また、今回の組織改正におきまして、多摩振興の充実強化を図るために、総務局行政部の見直しを進めるとともに、今後とも、各局がそれぞれの役割を担いながら連携を強化し、多摩地域の総合的な振興に全庁を挙げて取り組んでまいります。
 次に、私立外国人学校への助成についてでございます。
 都におきましては、外国人学校の教育条件の維持向上や保護者の経済的負担の軽減を目的といたしまして、平成七年度から私立外国人学校教育運営費補助を都の単独事業で行ってきております。今後とも、これまでの経緯等を踏まえ、適切に対処してまいります。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 外国人学校卒業者の受験資格についてでありますが、外国人学校は、国の制度上、各種学校として位置づけられており、各種の受験資格において高等学校等とは異なる取り扱いを受けております。
 しかしながら、都においては、教育の機会を保障するという観点から、外国人学校の卒業生に対しても、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる場合には、都立の大学、短大の受験を認めております。
 ご指摘の看護学校等の受験資格についても、日本のカリキュラムに準じている場合には、日本の学校を卒業した場合と同等の取り扱いをされるよう国に提案要求しており、今後とも、国の動向等を踏まえて適切に対処してまいります。
   〔住宅局長戸井昌蔵君登壇〕

○住宅局長(戸井昌蔵君) 都営住宅等を活用した外国人留学生の受け入れについてのご質問にお答え申し上げます。
 留学生を取り巻く厳しい住宅事情を緩和するために、都営住宅等を活用して外国人留学生の受け入れを図ることは一つの有効な方策であると考えております。今後、関係機関などとの連携を図りながら、募集や入居の仕組みづくりなど、その具体化に向けて検討を進めてまいります。

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