平成十三年東京都議会会議録第四号

   午後一時開議

○議長(渋谷守生君) これより本日の会議を開きます。

○議長(渋谷守生君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(渋谷守生君) まず、日程の追加について申し上げます。
 知事より、東京都固定資産評価審査委員会委員の選任の同意について外人事案件十五件が提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(渋谷守生君) 昨日に引き続き質問を行います。
 十七番藤井一君。
   〔十七番藤井一君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○十七番(藤井一君) 初めに、新生児に対する聴覚検査について伺います。
 日本では、毎年約百二十万人の赤ちやんが誕生しますが、そのうち千人に一人か二人が難聴などの聴覚障害があると推測されています。
 一方、現状では、三歳児検診で聴覚検診を行っていますが、その時点で障害に気づいて療育しても、言語能力の発達がおくれるといわれております。
 アメリカでの調査によれば、三歳児の言葉の習得能力は、聴覚障害のない子どもは五百から一千語話せるのに対し、聴覚障害児の場合、誕生直後に障害を発見して補聴器などの手立てを講じた場合は、三百八十から七百語。それが生後六カ月以降に発見がおくれた場合では、百三十から三百三十語まで下がり、さらに、生後二年まで発見がおくれると、何と百語未満しか話すことができないという報告が出されております。
 このように、聴覚障害を持って生まれた赤ちゃんでも、生まれてすぐに発見し、適切な療育を施せば、聴力の正常な子どもと同程度まで言葉を話せるようになります。また、ゼロ歳児から療育すれば、聾学校に通う子どもの三割から五割は普通学級に通えると指摘する専門家もおります。
 一方、これまで、難聴児の早期発見は難しいとされてきましたが、新生児の難聴に対する先進的な取り組みが行われているアメリカでは、出生直後の乳児でも、難聴かどうかを調べることができる装置と検査方法が開発されました。
 この検査方法では、ベッドで寝ている赤ちゃんの耳に、小型イヤホンとマイクロホンが内蔵された端子を入れるだけで、十秒間で測定が可能です。病室で簡単に検査でき、生後数十時間から六カ月まで対応できます。これまでは、睡眠薬を飲ませ、音が遮断された脳波室で一時間程度の検査が必要であったのに比べて、非常に簡略化され、リスクもなくなりました。
 国は、これらの装置が開発されたことを受け、二〇〇〇年度から新生児への聴覚検査を試行的に実施するとして、都道府県に検査費用を補助することを決定しました。しかし、現在、手を挙げている自治体はありません。
 都においても、難聴児の早期発見、早期ケアを実現する体制を整備することが重要であると考えます。そこで伺います。
 第一に、都は、現在、新生児や乳幼児に対する聴覚検査をどのように実施しているのか。
 第二に、まず都立病院において、早急に新生児の聴覚検査のモデル事業を実施すべきであると思いますが、所見はいかがでしょうか。
 第三に、自分の子どもが難聴にならないようにと願う若いお母さん方のために、新生児への聴覚検査及び療育体制を早急に整備することが重要であります。そのため、都は具体的にどのように取り組むのかお伺いいたします。
 知事は、常日ごろから、何事にもスローな国の施策に対しては、都が先手を打つことを信条とされていますが、新生児の聴覚検査のように、スピーディーな国の政策に対しては、全国に先駆けて都が対応してもいいのではないかと考えます。難聴の子どもを早期発見し、適切な療育に結びつけることができる新生児の聴覚検査の実施を、知事に強く要望するものであります。
 次に、中小企業対策について伺います。
 景気は緩やかに回復しているといわれますが、個人消費の低迷や輸入製品の増加などで、都内の中小企業は、受注の減少という厳しい状況にあります。
 こうした状況を打開し、少しでも中小企業への発注を高めていくためには、インターネットを活用した受発注体制を構築していくことが有効であると考えます。そこで何点か伺います。
 第一に、都においては、中小企業振興公社において、受発注のあっせん事業を行っていますが、このあっせんシステムにインターネットを積極的に活用すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 第二に、先日、労働経済局長を先頭に都が、キャラバン隊を編成し、都内の中小企業向けに仕事の発注開拓を実施したことに、敬意を表するものであります。
 その結果、東芝府中工場が、現在のところ発注をインターネットで広く実施しており、都の受発注システムともリンクさせたいとの話があったと聞いております。こうした企業の発注システムとリンクさせて、都内の中小企業の受注の機会を拡大させることが重要であります。
 そこで、現在、東芝府中との話はどのように進んでいるのか。また、都は、今後、他の企業の発注システムとのリンクを積極的に進めていくべきであります。所見を伺います。
 第三に、こうした受発注システムの一つとして、大田区においては、昨年八月に大田区産業情報ネットワーク協議会が設立され、広く国内外に引き合いを呼びかける国際コールセンターが立ち上げられました。聞くところによりますと、ここには海外からのものも含めて大型発注も出ており、ニューサウスウェールズ州との経済連携も進んでいるとのことであります。
 昨年夏に策定された産業振興ビジョンの中で、都は、この国際コールセンターを支援することを明らかにしておりますが、今後どのように支援されるのか伺います。
 次に、羽田空港の国際化及び跡地対策について伺います。
 二月十六日、羽田空港から国際旅客チャーター便が運航されました。これは、羽田空港の夜間早朝の時間帯を活用して、サイパン、ホノルル、グアム、韓国済州島へチャーター便が飛ぶものであり、いよいよ羽田空港の国際化への道が開かれたものとの感慨を深くするものであります。そこで伺います。
 第一に、羽田の国際化については、昨年十二月に都が発表した航空政策基本方針の中で、国際定期便を就航させるとしております。今後、一日も早く実現するため、知事はどのように取り組んでいかれるのか決意を伺います。
 第二に、羽田空港沖合移転跡地の範囲についてであります。
 昨年運輸省から発表された羽田空港沖合移転の跡地面積は、当初の二百ヘクタールから、七十七ヘクタールと大幅に削減されました。また、運輸省が示した跡地案では、住宅地から一番近い北地区の市街地側が範囲に入っておりません。ここは、万が一、地震や災害が起きた場合、羽田地域の住民が避難する拠点として重要であり、航空機騒音の緩衝地帯ともなっているところであります。
 そこで、北地区の市街地側を跡地の範囲とするよう、都は三者協議会の事務局として、国に対して積極的に調整すべきと考えます。所見を伺います。
 第三に、空港周辺の航空機騒音防止対策についてであります。
 昨年三月、国と都及び大田区は、北風のときにおいて、新A滑走路北側から離陸し、左旋回するジェット機を朝七時から九時までの間に毎日五便飛ばすことを合意しました。この際、空港周辺の住宅地の上を飛行するため、機種はYS11並みの低騒音機により行うことを国は明らかにしました。しかしながら、実態は八〇デシベルを超える騒音のため、羽田空港周辺の住民は、早朝から毎日飛行機の音に悩まされているのであります。
 そこで、空港周辺の航空機騒音の実態はどうなっているのか、また、これを改善するために、都はどのように対応するのか伺います。
 次に、海上公園の整備について伺います。
 先日公表された東京ベイエリア21では、中央防波堤外側処分場などの海上公園の整備に際し、新たな東京のシンボルを整備することが提案されております。
 今後、羽田空港の国際化が進んでいくと、中央防波堤外側処分場付近は、外国からの訪問者が飛行機から最初に東京を目にする場所になります。こうした場所に整備されるシンボルは、いわば東京の第一印象を決定する重要なものになるであろうと思われます。そこで、このシンボルのデザインについては、広くデザインを公募するなど、都民が将来にわたって親しみ、世界に誇り得るものとすべきと考えます。所見を伺います。
 次に、京浜急行線の連続立体交差事業について伺います。
 建設省は、昨年の十二月二十八日、京浜急行線の連続立体交差事業の認可を出しました。都は、これを受け、本年二月から地元の地権者に対する用地補償説明会を開催し、用地取得に着手すると聞いております。
 いよいよ長年の課題であった京浜急行線の高架化が実現に向けて動き出したことは、地元大田区民だけでなく、都民全体の夢と期待が実を結ぶものと感じるのは、私一人ではないと思います。
 私は、平成十一年の第四回定例会において、京急の高架化事業を早期に完成するよう質問した際、石原知事は、この事業を集中的に積極的に取り組んでいくと答弁されました。
 そして、本年二月一日、知事は、森首相とともに、京浜急行蒲田駅近くの環状八号線と交差する踏切を視察されました。当日は、雨が降りし切る中、一時間のうち四十分も閉まっているあかずの踏切の実態を首相に認識させたことは、知事の熱意のたまものであると評価したいと思います。そこで伺います。
 まず、第一に、視察された際、森首相の反応はどうだったのか、また、知事とどのような会話、約束がなされたのか伺います。
 第二に、地元では、一日も早く高架化の実現により交通渋滞をなくしてほしいという声が高まっております。
 そこで、京急高架化の完成までのスケジュールはどうなっているのか。また、都は、今後どのように取り組むのか伺います。
 第三に、用地買収にかかわる補償についてであります。
 京浜急行高架化事業により、用地買収の対象となる土地建物は約三百件であります。これらの方々は、長年住みなれた土地への愛着心と将来への不安が複雑に入りまじっております。
 そこで、都は、用地買収の対象となる方々に対し、誠意を持って補償説明を行い、不安を解消すべきですが、今後、どのように対応するのか伺います。
 以上をもって私の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 藤井一議員の一般質問にお答えいたします。
 羽田空港における国際定期便の就航についてでありますが、これまでも国に働きかけてまいりましたが、ようやく羽田空港への国際チャーター便などの運航が実現いたしました。
 世界全体が、時間的、空間的に狭くなっておりますけれども、どうも国の動きは非常に遅くて、羽田空港の国際化をもっともっと量的にも急ぎませんと、日本は世界から取り残されていく懸念がございます。
 羽田は、幸い二十四時間使用が可能となりましたので、こういった羽田の空港をもっともっと有効に活用して、例えば、来年に迫ったサッカーワールドカップの開催期間中の羽田―ソウル間のシャトル便とか、その他、本格的な国際定期便の就航を国に強く働きかけてまいりたいと思います。
 例えば、成田は、深夜の使用が禁止されておりますけれども、それによって、エネルギーをセーブする夏時間も、日本では不可能になっておりますが、深夜に羽田に到着した飛行機も、世界の中で最も首都のダウンタウンに近い空港でありますから、まして深夜は、交通の便、それは非常に時間がかかるということにもならないと思いますので、とにかく成田に比べて、二十四時間使用のできるこの羽田の利点を生かして、国際化というものを進めていきたいと思っています。現に三十数カ国が、新規の日本への飛来をウエイティングしておりますけれども、それも必ず羽田を使えば可能になると思っております。
 次いで、京浜急行の環状八号踏切を視察した際の森総理との会話についてでありますが、現地で私は、これはもうまさに羽田という国際空港の、のど元にあるボトルネックであって、これが国際化が進みますと、あの渋滞に巻き込まれたことで、国際問題にさえ発展しかねない事態が生じ得ると。人間でいいますと、非常に大事な部分に脳梗塞を起こしているみたいなものでありますから、とにかくいつまでやっているかわからぬけれども、あなたの在任中にしかとした返事をいただきたいと。わかったわかったということで、周りの人たちに、総理がうんといったから、みんな万歳しろと、万歳いたしましたが。
 総理自身も、議員のときに、あそこの踏切の渋滞に引っかかって、飛行機に乗り損なったことがあるといっておりましたし、いずれにしろ、この連続立体交差事業は、国の力もかりまして、積極的に前倒しをすることで、世界に恥をかかずに済むと思います。
 なお、その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 新生児に対する聴覚検査について三点のご質問にお答え申し上げます。
 新生児や乳幼児に対する聴覚検査についてでございますが、現在、区市町村が行う三カ月児から一歳六カ月児までの四回の健康診査におきまして、問診票と医師による診察を行っております。さらに、三歳児健康診査におきましては、聴覚検診を実施しております。その結果、聴覚障害が疑われる場合には、専門機関での精密健康診査を行っております。
 また、新生児の聴覚検査モデル事業の実施についてでございますが、現在、国が計画しているモデル事業は、スクリーニングとしての新生児聴覚検査でございますが、この検査体制のあり方や聴覚障害が疑われる新生児のための早期療育に加え、保護者に対する指導助言等のフォロー体制の整備など、課題が多いのも事実でございます。
 現在、国は実施基準等の細目について検討を行っている段階でもあり、都としては、この動向を注目しているところであります。
 また、新生児の聴覚検査に対する今後の取り組みについてでございますが、新生児等への聴覚検査や療育体制を早期に整備することは、子どもの生育環境を整える上で重要であると認識しております。
 都といたしましては、ただいま知事への強い要望もございました、承りまして、国の動向や東京の地域特性などを踏まえ、来年度、関係機関を加えた検討会の設置などによりまして、対応策を検討してまいります。
   〔労働経済局長浪越勝海君登壇〕

○労働経済局長(浪越勝海君) 中小企業対策に関しての三点のご質問にお答えいたします。
 まず、受発注あっせんシステムについてでございますが、中小企業の受注機会を拡大し、迅速なあっせんを図るためには、インターネットの活用が大変有意義であると認識しております。現在、中小企業振興公社においては、受注を希望している中小企業の得意分野などのPR情報をインターネットにより提供しております。
 本年四月からは、受注を希望する中小企業が、インターネット上で発注情報にアクセスして、直接、取引の交渉ができるようにいたします。また、対象を製造業だけではなく、卸売業やサービス業にも広げるなど、受注機会の拡大とスピードアップを図ってまいります。
 次に、中小企業振興公社と企業との受発注システムのリンクについてでございますが、資材調達情報をインターネット上で公開している企業と公社のシステムとをリンクすることによりまして、受注を希望する中小企業が、発注企業のシステムへ容易にアクセスできるなど、受注機会を拡大する上で大変有効と考えております。
 先日、中小企業への発注拡大を要請するため、東芝府中事業所を訪問した際、公社のシステムとのリンクを要請し、快諾をいただいたところでございます。
 今後は、中小企業が公社のシステムを通じて、発注企業の情報に直接アクセスできるよう、他のメーカーにも積極的に働きかけてまいります。
 最後に、国際コールセンターの支援についてでございますが、大田区の国際コールセンターは、地元の中小企業が主体となり、都、区などとの連携のもとに設立したものでございまして、大田区の産業を活性化させる上で、画期的な取り組みであると評価をしております。
 今後は、国際コールセンターと国内外の企業データベースの連携を促進することにより、引き合い情報の増加や受注増加を図るとともに、大田区の産業情報ネットワークをさらに発展させるよう支援してまいります。
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) 羽田空港の跡地範囲についてのお尋ねでございますが、昨年八月に、国、東京都、地元区で構成する三者協議会におきまして、国から、当面の跡地範囲として七十七ヘクタールの区域が示されました。
 これに対しまして、都は、羽田空港の国際化を求めておりますことから、当面の跡地範囲につきましても、国際化に支障のない範囲とすべきであるという考え方を示したところでございます。
 また、大田区の方では、ご指摘の市街地に近い海老取川沿いの地区につきましても、跡地範囲に含めるべきだと主張しているところでございます。
 このため、都といたしましては、早期に妥当な結論が得られるよう、引き続き関係者間の調整を積極的に進めてまいりたいと思います。
   〔環境局長中野英則君登壇〕

○環境局長(中野英則君) 羽田空港周辺の航空機騒音の実態とその対応についてでありますが、羽田空港の航空機騒音は、空港の沖合展開の結果、平成八年度以降は全地点で環境基準を達成しております。
 また、ご指摘の昨年開始されました北側離陸の影響につきましても、昨年十月の調査結果によれば、いずれも環境基準を達成しております。
 しかし、飛行コースが当初の予定コースを外れて運航される場合もあり、幾つかの測定点で、最大騒音レベルが一時的に八〇デシベルを超えたこともありました。
 都としては、今後も実態の把握に努めるとともに、国土交通省などに対して、当初の飛行コースの遵守等を求めてまいります。
   〔港湾局長齋藤哲哉君登壇〕

○港湾局長(齋藤哲哉君) 海上公園の整備についてのご質問にお答えいたします。
 東京ベイエリア21で提案いたしました中央防波堤外側埋立地などに設置をいたしますランドマークにつきましては、航空機からの見え方や著作権などにも配慮しながら、将来にわたり都民が親しめ、世界に誇り得る東京のシンボルとなるようなものにしていきたいと考えております。
 このため、ご提案の都民参加によるデザインの選定などについて、今後の海上公園整備の中で検討してまいります。
   〔建設局長古川公毅君登壇〕

○建設局長(古川公毅君) 京浜急行線の連続立体交差事業のスケジュールと今後の取り組みについてですが、本事業は、環八、第一京浜などによる踏切渋滞や地域分断の解消に寄与する極めて重要な事業です。
 そのため、事業の実施に当たっては、集中的な用地取得や工期短縮の工夫を行い、地元区、鉄道事業者と緊密に連絡をとり、高架構造の仮線による平成十七年度の環八踏切の解消と、二十六年度の全体事業の完成予定をさらに短縮し、前倒しするよう一層努めてまいります。
 用地取得の対象となる方々への対応についてですが、事業の早期完成には、用地取得の進捗が大きく影響するため、関係住民の理解と協力を得ることが重要です。
 本年二月には、用地補償説明会を行い、補償の内容と用地取得のスケジュールについて説明いたしました。
 平成十三年度当初から始まる用地交渉に当たっては、移転資金の貸し付けや代替地のあっせんなどの生活再建制度を活用し、きめ細かく対応してまいります。

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