平成十三年東京都議会会議録第三号

○議長(渋谷守生君) 十八番東野秀平君。
   〔十八番東野秀平君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○十八番(東野秀平君) 初めに、青少年健全育成と心の東京革命について伺います。
 青少年の健全育成は、これまで、都道府県が条例で定めて取り組み、都においては今定例会に、不健全図書について、自殺や犯罪を指定事由に追加するほか、コンビニなどでの区分陳列の導入を盛り込んだ、青少年健全育成条例の一部改正が提案されております。
 しかし、こうした規制だけでは、ますます加速すると思われる社会の変化に対応していくには限界があると考えます。今まさにIT革命が唱えられ、インターネットなどが急速に家庭にも普及する中、青少年に有害な情報に触れさせないようにすることは大変困難であります。
 こうした環境の中で、青少年自身が主体的に情報を取捨選択し、判断し、発信できる力であるメディアリテラシーを育成していくことは極めて大切であり、本格的な検討を開始すベきと考えますが、所見を伺います。
 二十一世紀を生きる青少年には、テレビゲームなどのメディアによる疑似体験が増加する中で、人々との交流や実体験を積み重ねることにより、規範意識や社会性を養うとともに、物事を判断する力を総合的に身につけさせていくことが何より必要と考えます。
 ところで、私は、知事が心の東京革命構想を打ち出されて以来、地域の教育者、父母等と地域教育懇談会を積み重ねております。青少年が自分の行動に責任を持ち、社会性を備え、自立した大人に育つよう、家庭、学校、地域などのそれぞれの場で支援していくことが重要でありますが、とりわけ地域における教育は、子どもの未来をつくるとともに、今日直面する多くの地域的課題の解決に向けた有力な力にもなり得ると考えるものであります。この地域の教育力の向上が、地域の活性化にも結びつき、東京再生、心の東京革命のかぎになると思いますが、知事の所見を伺います。
 さて、目黒区には、中学校単位で、「親父の会」と称する、父親たちが青少年に資するための団体が三つの学校にあります。私は、地域、特に父親同士が結びつくことによってこそ、知事のいわれる他人の子をしかることのできる社会が構築されていく、重要な手がかりとなるものと考えております。
 そこで、学校と地域の相互連携をさらに拡大させるため、この「親父の会」を発展させ、コミュニティスクールの創設を提案するものであります。
 教育改革国民会議でも述べられたコミュニティスクールでありますが、私は、このスクールにもっと広い役割と機能を与えることにより、地域教育力の向上に資するものと考えます。
 例えば、その機能として、社会教育の一翼を担うとともに、特に父親たちが集まる地域の結節点としての機能、不登校で悩む児童生徒を支援する機能、さらに、コミュニティカレッジとして単位認定の道を見据えつつ、大学レベルの内容が学習できる機能も有し、多様な機能と役割を持つべきと考えます。
 もちろん、地域から内発的に、このスクールの実現ヘ向けた動きが始まらなければならないことは論を待ちません。この市民の手づくりの学校創設の動きに、行政が、場所の提供を含め、地域の専門家による講師陣の紹介など、積極的に支援することにより、行政、地域とが一体となった地域コミュニケーションの活性化、すなわち、心の東京革命の基盤となり得る地域をつくり上げる大きなムーブメントとなると考えます。所見を伺います。
 次に、児童虐待の防止策について伺います。
 ここ数年、児童虐待をめぐる悲惨な事件が相次いで起こり、新聞報道をにぎわせておりますが、虐待を受けた児童の行く末を考えたとき、暗たんたる思いにならざるを得ません。
 そうした深刻な状況下で、国では、公明党の推進によって児童虐待防止法を成立させ、虐待の定義や早期発見の義務、立入調査権の拡大など、従来と比べて虐待を防止する意図が込められ、一歩前進したといえますが、この問題は人権にかかわるだけに、よりきめ細やかな対策が必要であります。
 我が党は、過日、品川児童相談所を訪問し、職員の皆様と意見交換をしてまいりましたが、以下、そうした点を踏まえて何点か伺います。
 第一に、児童虐待の実態については、マスコミ報道により浮き彫りになってはいますが、正確な状況を把握することが何よりも防止策の前提となります。都として早急に実態を把握、分析する必要があると考えます。
 第二に、虐待が疑われるとき、親子分離を含む適切な措置はやむを得ないと考えますが、理想的には、もう一度家庭で温かく育てられるべきであって、そのために、親に対するケアが重要であります。
 児童虐待防止法でも親の指導を義務づけていますが、親をケアした上で子どもを戻す体制は果たして十分なのでしょうか。国との連携のもとに、実績あるボランティア団体等の協力を得て、親の心のケアと子育て支援に積極的に取り組むべきと考えます。
 第三に、当然のことながら、子どもの心のケアこそ最重要課題であります。本来最も自分を守ってくれる親から虐待を受けた子どもの心の痛みは、想像に絶するものがあります。こうした子どもたちに精神的なケアが十分に行えるシステムを整備すべきであります。
 第四に、さきにも述べたように、法の施行によって、虐待発見時の通報義務や立入調査、面会、通信制限等が強化され、ある意味ではやりやすくなったことは事実でありますが、例えば、我が党との意見交換の中でも、一時保護については制限が設けられなかったことにより、親の強引な面会要求への対応に苦慮しているとの切実な声もありました。そのほか、親権との関係等でもう一歩踏み込めないという悩みなど、現場でのさまざまな声を集約し、より実態に即した取り組みができるよう、さらなる法改正をも視野に入れ検討を重ねることが必要と思われます。
 そうした取り組みを求めるとともに、虐待の通告義務についても、通告するだけで、あとは児童相談所任せというケースが大半だそうであります。この点についても、児童相談所を初めとして地域、教育施設等の強固な連携システムを構築すべきであります。
 以上四点について所見を伺います。
 次に、精神障害者の社会復帰施策について伺います。
 我が国は、国際的に比較して、人口当たりの精神病床数が多く、また長期入院患者の割合が多いといわれております。そしてこのうち、社会的な受け入れ条件が整えば退院可能な、いわゆる社会的入院は、平成二年の地方精神保健福祉審議会での入院施設調査によれば、分裂患者の三割であると報告されています。このことはまさに、社会復帰のための受け入れ体制のおくれを示しているといえます。
 長期入院の是正と社会復帰の促進を図るため、平成十一年、精神保健福祉法が改正され、社会復帰のための施策として、地域生活支援センターが十二年度より法定事業と位置づけられるとともに、区市町村を中心とした在宅福祉施策は、十四年度からの施行となりました。
 我が党は一貫して、精神障害者の自立と社会参加の実現のために、社会復帰施設の果たす役割が極めて大きいこと、そして計画的に整備を推進していくことの重要性を主張してまいりました。
 こうした状況を踏まえ、昨年末、東京都地方精神保健福祉審議会に精神障害者社会復帰施設あり方検討会の中間まとめが報告され、また、東京構想二〇〇〇の中では、精神障害者の社会参加の場及び居住の場の整備、さらにはサービスコーディネート機能の整備が計画事業とされたところであり、評価するものであります。
 そこで、都内における入院患者数及び長期在院患者数の状況、また、これからの精神障害者を社会復帰させるための都の基本認識について、まず伺います。
 入院患者を地域で受け入れていくためには、精神障害者社会復帰施設を地域の中に整備し、その内容を充実していくことが不可欠であります。日常生活の場を確保することは基本的要件であり、これらが十分確保されなければ、社会復帰も自立もないのであります。今後十五年間の整備の方向性は、中間のまとめに示されたところでありますが、東京構想二〇〇〇の流れを踏まえ、できるだけ早期に目標を達成すべきと考えます。
 さらに、社会復帰施設の中でも、グループホームや地域生活支援センターの確保は急務と考えますが、あわせて所見を伺います。
 最後に、環状六号線沿道の中目黒再開発について伺います。
 環状六号線については、昨年末、目黒区内の未着手区間の事業認可を得て、全線にわたって事業化が図られ、交通の円滑化と防災の向上に資するとともに、一層の沿道まちづくりが促進されるものと期待しています。
 現在、都心では、さまざまな地区で市街地の再開発が進んでいます。その大半は都心居住というコンセプトを組み込み、さまざまな施設を取り組むなど、多くの機能を有する市街地の形成を目指しています。
 目黒区では、再開発された代官山アドレスに隣接する中目黒地区で再開発事業が着手され、商業施設や歩行者動線の確保、サンクンガーデンなどの変化に富んだ空間をつくるなど、駅前にふさわしい都市基盤を整備し、居住機能と文化、商業、事務などが調和した市街地の形成を目指しております。
 そこで二点伺います。
 第一に、まちづくりを一体化するために、代官山と中目黒を結ぶ地区にJR跡地がありますが、この跡地は集合住宅として整備していく計画になっています。
 そこで、この跡地利用に当たっては、住宅整備とともに、両地区の回遊性を誘導すべく、連続的な再開発を進め、地域に溶け込み、個性が光るものとすることが必要と思いますが、所見を伺います。
 第二に、中目黒再開発は、環状六号線を挟み、目黒区上目黒一丁目と二丁目との時期をずらした再開発事業となっております。この付近は交通混雑地域であり、どのようにユニバーサルデザインを取り込むかが大きな課題となっております。環状六号線により分断された両地区を結ぶには、ペデストリアンデッキが最適であると考えます。所見を伺い、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 東野秀平議員の一般質問にお答えいたします。
 地域の教育力についてでありますが、教育というのは、何も教科書を読んで勉強するだけではありませんで、しつけも含めて、いろんな場で行われるべきものと思います。
 しかし、やはり生活の場がございます。つまり、自分の住居に近い地域というものが、私はやはり大変大切な場所であると思います。
 昔は、仲間と遊んでおりますと、その横町へ行くと非常にうるさいおじさんがいて、そこで遊ぶなとか、木に登るなとか、おじさん、おばさんに注意されたものでありますけれども、それでまあ、つまり子どもは社会人としての自覚も覚え、また規律というものを知っていくと思うのですけれども、そういう風潮がだんだん廃れまして、結果として、非常に自己中心的で社会性を備えない子どもたちがふえてきていると思います。
 そういう意味でも、子どもたちに社会の基本ルールなどを身につけさせるためには、地域の親や大人が連携し協力して、子どもの育成に積極的にかかわっていくことがまことに大切であると思います。
 そうした地域社会での積極的な取り組みが、また地域の活性化にもつながりますし、心の東京革命の推進にも大きな役割を果たすものと思います。
 なお、他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 市民の手づくりの学校創設が心の東京革命の基盤となるとの考え方についてでございますが、お話の、地域の人々による主体的な学習活動を通じ、地域の課題解決や世代間の交流などが行われることは、地域の教育力の向上など、心の東京革命の推進に大変意義のあることと考えております。
 都教育委員会は、これまでも、生涯学習の振興の観点から、講師の紹介などの情報提供や、都立学校の施設等の開放に努めてきたところでございますが、今後とも、区市町村と連携しながら、その充実に努めてまいります。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 青少年のメディアリテラシーの育成でございますが、青少年がメディアときちっと向き合い、賢く利用していくための必要な能力を、メディアリテラシーと申しておるようでございますが、インターネットなど新たなメディアが急速に普及する中で、有害な情報から青少年を守るためには、効果的な規制、指導施策とともに、ご指摘のとおリメディアリテラシーの育成が大変重要だと考えております。
 このため、平成十三年度の青少年問題協議会では、メディア社会の進展と青少年施策のあり方についてという大きなテーマを掲げており、その際、メディアリテラシーを重要なテーマとして掲げ、有効な方策について検討していただく予定となっております。
   〔福祉局長高齢者施策推進室長兼務前川燿男君登壇〕

○福祉局長高齢者施策推進室長兼務(前川燿男君) 児童虐待について、四点のご質問にお答えいたします。
 まず、実態の把握についてでございますが、児童の虐待は、大都市における家庭や地域の養育力、児童を育てる力の低下といった客観的な状況に、親としての未熟さ、あるいは貧困といった個人的な要因が加わったときに生じるものであると認識をいたしております。
 したがって、有効な虐待防止策を講じるには、ご指摘のように、虐待につながる児童や家庭の状況など、虐待の実態を正確に把握することが必要でございます。
 児童相談所に通告、相談のあった事例を中心に具体的データを整理分析し、来年度早い時期に、東京の児童虐待の現状をまとめた白書ともいうべきものを作成してまいります。
 次に、親への支援についてでございますが、児童を虐待した親は、さまざまな問題を抱えており、児童の家庭復帰を図るためには、個々の状況に応じて適切な指導、支援を実施していく必要がございます。
 従来から、児童相談所が中心となって、親の問題状況を把握し、地域で子育てを支援する子ども家庭支援センターや保健所、医療機関等と連携して対応しております。
 今後は、新たに配置される精神科医の支援のもとに、児童相談所における親への指導を充実するとともに、ご指摘の、実績のある民間団体を含め、関係機関と一層緊密な連携を図ってまいります。
 次に、虐待を受けた児童の精神的ケアについてでございますが、親から虐待を受けた児童については、これまでも、児童相談所や児童養護施設で、心理職の職員を中心に精神面のケアを行うとともに、必要に応じて医学的な治療指導も実施をいたしております。
 来年度は、児童相談所の一時保護所にも心理職の職員を配置し、児童養護施設にも職員の新たな配置を行う予定であり、児童が継続して、きめ細かな心のケアを受けられるよう、さらに取り組みを強化してまいります。
 最後に、地域における連携のシステムについてでございますが、児童虐待については、福祉、保健・医療、教育、警察等の関係機関が、地域社会の中で総合的に取り組むことが必要でございます。
 都では、こうした観点から、児童相談所の機能強化を図るとともに、広く関係機関との連携に努めてまいりました。
 来年度は、区市町村が中核となって、具体的な実践を通じて連携のあり方を探る、児童虐待防止ネットワーク事業をモデル的に実施をする予定であり、今後、この成果を踏まえて、児童虐待に地域全体で対応する仕組みを構築をしてまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 精神障害者施策について、二点のご質問にお答えいたします。
 まず、精神障害者の社会復帰施策の基本的認識でございますが、平成十二年六月末現在の都の調査によれば、都内における精神障害者の入院患者数は約二万三千六百人であり、このうち、五年以上入院している患者数は約八千五百人で、全体の三六%となっております。
 精神保健福祉施策は、入院医療中心の体制から地域ケアを中心とする体制へという方向にございまして、都においても、精神障害者の社会復帰を促進するため、地域における保健福祉サービスの充実を図ることが大変重要であると認識しております。
 次に、精神障害者社会復帰施設の早期整備についてでございますが、長期入院の是正と社会復帰の促進を図るには、精神障害者が地域の中で安心して生活し活動できる条件を整備していくことが重要であります。
 ご指摘のグループホームや地域生活支援センターの早急な整備を含め、まずは東京構想二〇〇〇の三カ年推進プランの着実な実現を図るとともに、その後の整備にも積極的に取り組み、精神障害者の自立と社会参加を一層推進してまいります。
   〔住宅局長戸井昌蔵君登壇〕

○住宅局長(戸井昌蔵君) 代官山と中目黒を結ぶ地区に位置するJR跡地を中心としたまちづくりについてのご質問にお答え申し上げます。
 この土地は、都営住宅と目黒区の福祉施設とを一体的に整備するため、平成七年に、国鉄清算事業団から、都と目黒区がおおむね半分ずつ取得したものでございまして、その利用につきましては、売買契約の中で用途が制限されております。
 しかしながら、本件土地は、都営住宅の再編整備を進める上で貴重な用地であるというふうに考えております。
 今後、両地区の回遊性など、地域のまちづくりに配慮しつつ、土地利用計画について区とも十分に協議してまいります。
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) 中目黒駅前再開発におけるペデストリアンデッキの整備についてのお尋ねでございますが、事業中の上目黒二丁目地区に加え、一丁目地区が昨年八月に都市計画決定されたところでございますが、今後、両地区の再開発の進展により、歩行者需要は増大するものと見込まれます。
 この地区のペデストリアンデッキについては、目黒区が策定した再開発基本計画に位置づけられておりまして、今後、区を中心に可能な事業手法が検討されるものと考えております。
 都といたしましては、ご指摘の点も踏まえ、両地区の一体性の向上が図られるよう、技術面も含め、必要な支援に努めてまいります。

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