平成十三年東京都議会会議録第三号

   午後四時一分開議

○副議長(五十嵐正君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 七十六番田中良君。
   〔七十六番田中良君登壇〕

○七十六番(田中良君) まず初めに、商店街対策について伺います。
 商店街をめぐる環境は非常に厳しいものがあります。商店街の人たちの中には、この原因が、あたかも大型店の影響であり、大型店イコール悪者であると主張している人たちもいるようであります。
 しかし、大型店は、商店街の人がいうように、本当に商店街に大打撃を与える悪者なのでありましょうか。確かに、大型店が出店することで地域のまちづくりが大きく変わることもあります。人の流れが変わり、大型店に駐輪場が整備されていなければ、自転車が公道上にあふれてしまったり、深夜遅くまでの営業が地域の生活環境を脅かすこともあります。
 しかし、一方で、大型店の出店によって、雇用が生まれ、地域の活性化に結びつくことも多いはずです。消費者にとっても、品数も多く、低価格で、夜遅くまで買い物ができるお店は、ありがたい存在であります。
 大型店の出店は、地域のまちづくりとの関連から規制がされることはあっても、商店街との商業調整といった観点からむやみに規制されるべきではありません。むしろ、商店街には、大型店と対抗していく、あるいはすみ分けて共存していくといった前向きな理念と戦略が必要なのではないでしょうか。
 大型店やチェーン店は、消費者の動向に敏感に反応して、販売形態の多様化や低価格化を図っている上、リストラなどで経営努力もしております。
 一方で、商店街がこのような厳しい状況に置かれているのは、長引く消費の低迷もさることながら、消費者ニーズの多様化やライフスタイルの変化に商店街自身が対応できてこなかったことも原因があるのではないでしょうか。
 そして、そのさらなる原因は、商店街の一部の有力者のいうことだけを聞いているだけで、何ら商店街の将来像を示してこなかった、与党自民党及び東京都労働経済局にも責任があるのではないでしょうか。
 私は、商店街が消費者ニーズや時代の変化に的確に対応し、真に発展していけるように、厳しい努力をしていただくことも含めて、商店街の経営者の意識改革に努めていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 商店街の振興には、新たな商店街対策の展開が必要であります。これまで商店街の政策は、時代の変化や消費者ニーズをとらえ切れず、商店街の指導的立場に立つ人たちの危機意識の欠如をいいことに、商店街が置かれた厳しい現実をあえて直視、直言することなしに、甘い言葉や美辞麗句で糊塗してきた面があるように思われます。
 来年度予算案の中では、自民党などが主張していた元気を出せ商店街事業が盛り込まれましたが、商店街施策の問題点は、元気を出せ商店街事業しか政策が出てこない、その発想の貧困さにあるのであります。(発言する者あり)
 現在実施している元気を出せ商店街事業は、いってみれば一過性のイベントであり、単なる一時的なカンフル剤にすぎません。無意味とはいいませんが、商店街の振興策が元気を出せ商店街事業しかないかのごとく、その継続を求めているだけでは、商店街の抱えた根本的な問題の解決にはならないと思います。むしろ、元気が出るという幻想を振りまいているだけで、商店街をますます窮状に追い込んでいく一面を包含しているのではないでしょうか。商店経営者の中には、言葉は悪いが、蛇の生殺しという意見さえあるのです。
 新しい時代に必要なのは、消費者が何を求めているのか、消費者ニーズをとらえ、それに対する対策を立てることであり、元気を出せ商店街事業の継続ではありません。
 そもそも元気を出せ商店街事業は、平成十年度の予算編成の最終段階において、自民党のごり押しによって創設された事業であると聞いております。当初は一年限りの景気対策事業として創設をされましたが、以後三年間も継続し、十三年度予算案においても計上されております。
 この間、大店立地法や都市計画法、中心市街地活性化法など、商店街を取り巻く状況が大きく変わりました。にもかかわらず、自民党はこのようなばらまき的な事業の継続にこだわり、東京都もその圧力に屈して、真に必要な新しい施策の実施をおくらせてしまったのではないでしょうか。このことは、さまざまな分野において、何ら将来像を示すことなく、ただ単に選挙目当てのばらまきを得意としてきた自民党体質そのものではないかと思うのであります。
 私は、区市町村が、まちづくりや地域の特性などを踏まえて定めた商店街振興プランをもとに、ハード、ソフト両面から商店街を振興していく事業を展開していくべきと考えています。台東区合羽橋商店街なら食器用具、中央区月島商店街ならもんじゃなど、だれもがそれとわかるように、特色を持った商店街づくりをこれによって進めていくことも可能であります。
 元気を出せ商店街事業に投入されている七億もの財源は、本来はこのような商店街の将来の活性化につながる事業に振りかえていくべきであります。そのためには、商店街振興策は商店街自身の問題であるという意識改革を促し、商店街自身の自主的、自立的取り組みを支援していくということが重要と思いますが、見解を伺います。
 次に、都市計画道路の整備について伺います。
 東京における慢性的な交通渋滞は、経済効率の低下や環境悪化など、都民生活や都市活動への大きなマイナス効果を及ぼしております。この交通渋滞の主な原因が都心やその周辺への通過交通にあることは、これまで指摘されてきたとおりであります。
 一例を挙げれば、首都高速都心環状線の一日の交通量は、およそ四十七万台ですが、その六割に相当するおよそ二十九万台が、都心に用のない通過交通であります。したがって、交通渋滞を抜本的に解消するには、このような都心部に流入する通過交通を迂回させ、自動車交通をバランスよく分散させる必要があり、そのための具体的な方法として、一刻も早い環状道路の整備と、それによる道路ネットワークの形成が不可欠であります。
 しかし、現状では、高速道路ネットワークのうち、東京を中心とした放射方向では、関越道と都心方向を結ぶ構想路線等を除き九割が完成しているのに比べ、環状方向は、首都高速中央環状線の荒川沿いの部分、外郭環状道路の常磐道と関越道の間、首都圏中央連絡道の関越道から青梅インターチェンジ間などが完成しているのみで、完成率はわずか二割という状況にあります。
 このような現状を考えると、私は、外郭環状道路、首都高速中央環状線、首都圏中央連絡道のいわゆる三環状道路に、人、物、金を集中して、これらを優先的に整備すべきと考えています。中でも、外環の関越道から東名高速までの区間の整備は重要であります。
 さて、東京の道路整備が以上のような課題を抱えている一方で、これに対する都民の反応は、常に、総論賛成、各論反対であります。現実には、事業予定地域の住民や自治体の合意を形成することは、非常な困難を伴います。
 しかし、事業を進めていくためには、住民の合意と協力が不可欠であることは、今さらいうまでもありません。それには、その事業の公益性について、適切かつ丁寧な説明が必要であり、それなくして住民の理解を得ることは不可能であります。
 そして、その際重要なことは、可能な限りの客観的なデータを集め、それらを都民に公開し、今、なぜそこにこの道路が必要なのか、それが完成したらどのようなメリット、デメリットがあるのかを率直に議論し、理解してもらうことであります。
 東京都は、これまでも、都市計画道路については、計画的、効率的に整備を進めるため、都市機能の確保、都市防災の強化、地域環境の保全、都市空間の確保といった基本目標を定め、事業化に取り組んでいるとしています。しかし、住民の理解を得ていくには、それだけでは十分ではないと思います。
 そこで、東京の基幹的な道路ネットワークである外郭環状道路や、事業が進んでいる千葉県内の湾岸道路から都内の東名道路までの区間が完成した場合、それが東京の渋滞解消などの交通問題に対してどのような効果があるのか、さらにきめ細かく、新たに具体的な調査研究を行い、その結果を都民に公開し、理解を得る努力をすべきと考えますが、ご所見を伺います。
 次に、高速道路以外の一般道路についてであります。
 外郭環状道路を初めとした三環状道路の完成が、東京を中心とした交通渋滞の解消に大きく貢献することについては、これまで述べてまいりましたが、今、私が提案いたしました、外郭環状道路が完成した場合の影響についての調査研究の結果得られたデータに基づいて、その道路の優先度、重要度を定め、それに従って整備を進めていってはどうかと考えるのであります。
 例えば、五年以内に事業化すべき路線、十年以内に事業化すべき路線といったようにランク分けを行ったら、わかりやすいのではないでしょうか。それらを都民に示し、都民との合意形成を図った上で事業を進めていけばいいのではないでしょうか。所見を伺います。
 さて、現在、杉並区内において、放射五号線を対象とした総合環境アセスメント制度の試行が実施されておりますが、地元では、玉川上水の保全や、渋滞箇所が新たに発生するのではないかということから、多くの反対意見も出されているわけであります。
 玉川上水は、江戸時代からの歴史的な土木遺構として、その価値が高いともいわれており、都民の貴重な財産でもあります。さらに、この歴史的遺産と一体となった自然の存する地域として、歴史環境保全地域にも指定をされております。
 また、放射五号線の試行区間付近は、都市計画決定されてから三十五年も経過をしており、人々の環境に対する価値観も大きく変化していると考えられます。
 玉川上水は、住環境を高めており、地域のオアシスとして人々に親しまれていると思います。
 そこで、放射五号線の未整備区間についても、外環など三環状道路の整備効果を十分調査研究をし、それに基づいて、この道路が本当に必要なものであるのか否か、場合によっては再検討も含めて対応すべきと考えますが、所見を伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田中良議員の一般質問にお答えいたします。
 商店街の経営者の意識改革についてでありますが、まことにそのとおりだと思います。長引く消費の低迷、商品の低価格化や大型店舗の進出など、商店街を取り巻く非常に厳しい環境や、経営者の高齢化あるいは後継者難などによって、時代の変化に適応できない商店街が増加しております。このような状況下で生き残っていくためには、何よりも経営者自身が、消費者ニーズの多様化など情勢の変化に的確に対応できる経営感覚と実行力を持つことが重要であると思います。
 このため、都としては、商店街に対して、今後みずから取り組むべき姿と戦略の方向性を提示するとともに、こうした意欲のある商店街に対しては、驥尾に付した支援をしていきたいと思っています。
 ですが、元気を出せ商店街、行事としていろいろ限界もあるでしょう。それを批判されるのは大変結構でありますけれども、それならひとつ民主党の英知でそれにかわるいい案をぜひ出していただきたい。いい案が出れば、都は挙げて賛成して、それを遂行していきたいと思います。
   〔労働経済局長浪越勝海君登壇〕

○労働経済局長(浪越勝海君) 商店街に対する支援についてでございますが、元気を出せ商店街事業につきましては、これまで一定の役割を果たしてきており、平成十三年度においても実施を予定しているところでございます。
 また、商店街の活性化を図るためには、商店街の自主的、自立的な取り組みが不可欠であるとともに、地域の実情に精通した区市町村の果たす役割が極めて大きいと認識しております。
 このため、都は平成十三年度から、区市町村の計画づくりを支援する商店街活性化総合支援事業において、自主的な取り組みをする意欲ある商店街に対して、積極的に支援を行うこととしております。
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) 道路関係のご質問三つにお答えいたします。
 まず、道路の整備効果の公開についてでございますが、区部の一般道路の整備効果につきましては、これまでも、都内の混雑時の平均旅行速度が改善された場合の直接便益などを算出して、公表してまいりました。
 また、外環につきましては、例えば関越道大泉インターチェンジから東名高速用賀インターチェンジまで一時間以上要しているものが、約十二分に短縮されると見込まれるなど、移動時間の短縮効果やその年間経済効果などについて、パンフレットなどを作成し、都民に明らかにしているところでございます。
 今後とも、この路線の必要性や整備効果について、より多くの人に理解が得られるよう、さらに周知に努めてまいります。
 次に、高速道路以外の一般道路の整備の優先度についてでございますが、一般道路につきましても、幹線や補助線などによるバランスのとれた道路ネットワークの形成が必要でございます。このため、区部と多摩それぞれの都市計画道路につきまして事業化計画を策定し、優先的に整備すべき路線を定め、計画的、効率的な事業の推進に努めております。
 今後とも、社会経済情勢の変化や財政状況を踏まえつつ、優先度についても十分配慮しながら、整備を進めてまいります。
 最後に、放射五号線の未整備区間への対応についてでございますが、この道路は、区部と多摩の連携を強化し、均衡のとれた東京の発展に不可欠な路線でありまして、当該区間が唯一未整備となっております。
 現在、総合環境アセスメントの試行の中で、採用可能な複数案を示すとともに、早期整備の必要性を地元に説明してきているところでございます。
 今後とも、三環状道路の将来における整備効果を踏まえつつ、効率的な道路ネットワークの形成に向け、整備の優先度について十分検討しながら、地元の理解と協力を得てまいりますよう努めてまいります。

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