平成十三年東京都議会会議録第三号

○議長(渋谷守生君) 二番中嶋義雄君。
   〔二番中嶋義雄君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○二番(中嶋義雄君) 具体的な問題につきまして、何点か質問をいたしたいと思います。
 まず最初に、小田急線連続立体交差事業について質問をいたします。
 この事業は、昭和三十九年の都市計画決定以来、さまざまな議論を経て今日に至った問題であり、住民が、地下派、高架派に分かれて、過度に政治化されて争われてきたという不幸な経緯をたどった問題でもございます。平成五年の都市計画変更により、梅ヶ丘駅以西、成城学園までの事業が着手され、残された区間の事業着手が強く望まれておりました。
 昨日の本会議において、この区間の構造形式を地下方式として、都は改めて都市計画素案の作成に入るとの方針が明らかにされました。
 私は、かつて世田谷区議会におきまして、梅ヶ丘以東、下北沢周辺に関しては地下方式も含め検討すべきであると述べたことがあり、一方、世田谷区は、駅周辺まちづくりの推進を図るには構造形式の早期決定が不可欠との要請を繰り返し都に行ってまいりました。したがって、都の方針の明確化は歓迎すべきことであり、今後は、事業の早期達成のため全力で取り組んでいただきたいことを強く要請いたしたいと思います。
 そこで、何点か質問いたします。
 地下方式で素案づくりを行うとの都の意向は明らかになりましたが、住民には、今後の見通しがより重要であります。地元との協議やアセスの手続などはどのように進められ、事業展開の今後の見通しはどのようになっているのか、見解を伺います。
 今後は、駅周辺まちづくりに関連して、道路整備が進められてまいります。下北沢周辺では、補助五四号線を初めとする幾つかの道路整備計画が、これまで長期間、事業化されず放置されてまいりました。これらの道路を鉄道と一体的に整備し、下北沢にふさわしいまちづくりを住民参加で推進すべきです。都はどのようなスタンスで道路整備の支援に取り組んでいかれるのか、答弁をいただきたいと思います。
 また、地元からは、連続立体事業に関連して、まちづくりに伴うさまざまな要望が出されております。例えば、井の頭線の高架下を利用した、新しい駅へのアクセス道路の必要性が強調されたり、既に買収済みの用地を暫定的に駐輪場として活用できないかなどとの問い合わせもございます。今後の事業の円滑な推進を図る意味で、こうした地元からの要望には極力前向きに対応していただきたいと思います。第一義的には、区がまちづくりの中で取り組むべき課題ではありますが、まちづくりに対する都の支援策について、見解をお示しいただきたいと思います。
 次に、交通バリアフリー法に関連して質問いたします。
 公明党は、連立政権の内部で、この法律の制定に積極的に取り組んでまいりました。また、都においては、昨年来、例えば福祉のまちづくり推進協議会などで、この法律にかかわる事業に関する議論が交わされております。法律の基本的な枠組みは、国の基本方針のもとで、区市町村等の自治体が基本構想を策定し、交通事業者が講ずべき措置、重点整備地区における重点的、一体的なバリアフリーの推進、国の支援措置などが定められています。
 都市計画局はこのほど、地下鉄のバリアフリー化を含む補正予算を組みましたが、これも法施行への迅速な対応として評価いたしたいと思います。
 さらに、この法律は、福祉局、交通局はもちろん、道路に関しては建設局も関係し、また、さきに述べた重点整備地区では、交通安全特定事業として都道府県公安委員会が行う事業も定められており、およそすべての局にわたる事業展開が予想されます。
 このように大変多岐にわたる交通バリアフリー事業であるだけに、今後は、施策や事業の体系化、総合化、あるいは全体の事業の進行管理などが必要になると思います。都はいかに対応していくのか、まず、この点のご答弁をいただきたいと思います。
 また、法律では、市町村による基本構想の策定を促していますが、都の役割は明確ではありません。しかし、特別区においては、都と区の関係の歴史的経緯があり、都はやはり各区の事業の支援策を講じる必要があると考えますが、都の見解はいかがでありましょうか。あわせて答弁いただきたいと思います。
 次に、この問題に関連して、具体的課題について質問したいと思います。
 小田急線の連続立体化は進展を見ましたが、京王線は先が見えません。したがって、当面京王線に関しては、連続立体事業とは切り離して、バリアフリー化を進める必要があります。
 特に要請が強いのは桜上水駅であります。この駅の東側、つまり新宿寄りの踏切は、引き込み線を含め五線をまたぐ、大変幅の広い踏切になっております。しかも、京王電鉄の調査では、朝夕のラッシュ時の遮断時間は、一時間で五十二分から五十七分に上っております。お年寄りや障害者の方からは、遮断機のあいている時間が短くてとても渡れないとの苦情が多く、例えばスロープつきのアンダーパス通路などの整備が求められています。
 また、代田橋駅でも、地下通路はあるもののスロープがなく、大変不便だとの指摘があります。
 こうした鉄道各駅のバリアフリー化が今後の重要な課題であります。交通バリアフリー法の制定の意義に照らし、都は応分の役割を果たすべきであり、法の理念を尊重し、むしろ法の定めるところを先取りする対応を求めたいのでありますが、都の見解はいかがでありましょうか。
 次に、PCB処理について質問いたします。
 私は、一昨年七月の一般質問で、病院や学校にいつまでもPCBを保管しておく必要はなく、そもそも保管場所として適当でないと主張し、処理体制の確立を求めました。その後、八王子や岐阜でPCB使用の蛍光管が破損し、子どもたちにPCBが降りかかるという事故が発生しました。
 文部科学省の調査では、全国の学校や大学で九十万台のPCB照明器具が使用され、都環境局調査でも、都庁、警視庁、消防庁、また小中学校を除いた都立の学校などで、合計四万四千五百八台が使用されていることがわかりました。都は、これらをすべて交換する方針を明らかにしておりますが、それはまた、公共施設や学校での保管量がさらにふえることを意味し、やはり迅速な処理体制の確立が急務であります。
 私も、世田谷区の小中学校の保管実態を改めて調べたところ、小中学校合わせて、使用台数千七十七台、保管台数が九百七十八台に上っておりました。
 折しも国は、PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法案を国会へ提出し、一昨年に比べ、急速に処理体制確立への動きが活発化しております。
 昨年の予算特別委員会での我が党の提案を受け、都は独自の検討委員会を設置して、国に先行する施策の展開を試みてまいりましたが、今後は具体的にどのようにPCB処理を進めていくのか、答弁をいただきたいと思います。
 次に、さきに述べたように、器具が交換されるにつれ、今後、保管量が増加いたします。また、交換の際、保管に至らずに紛失してしまう危険性も発生いたします。特に民間の事業者などでは、紛失、漏えい、不適正廃棄の可能性が高く、環境リスクが増大いたします。交換の際の紛失を未然に防止するため、改めてPCBの適正管理に努めるべきでありますが、都の方針はいかがでありましょうか。
 最後に、都立大学の改革について質問いたします。
 現役時代、どちらかといえば劣等生であった私が都立大学の改革を口にするのは不適切とのそしりは恐らく免れがたいと思っておりますが、みずからの出身校という点を、みずからの母校という点を捨象していわせていただければ、都立大学は、向学心のある学生にとっては極めて利用価値の高い大学であると認識をいたしております。学生数に対して教員の数が多く、意欲さえあれば幾らでも学問に専念できる環境が整っております。残念ながら、私自身はその環境を十全には利用しなかった、あるいはできなかったのでありますが、せっかくの首都東京が保有する大学でございます。国際的にも存在価値の高い大学となるよう、学長初め教職員、事務当局のより一層の努力をぜひとも求めたいと思います。
 その上で、二点申し上げます。
 第一は、都市研究所の一層の活用でございます。
 都市研究所が旧環境保全局から調査研究の執行委託を受け、交通需要マネジメント、いわゆるTDM東京行動プラン策定に貢献したことは、都市研究所並びに都立大学と都政の連携のあり方を象徴するものとして評価したいと思います。このような都政と連動した研究活動をさらに積極的に展開すべきであります。
 巨大都市東京には、環境、防災、交通、住宅など、都市特有の課題が数多く存在いたします。まさにこうした課題こそ都市研究所の格好のテーマであり、今後はさらに都庁各局との連携を密にして、都政をリードする政策立案に参加すべきでございます。都政のシンクタンクとして機能し、その政策提案能力によって都民に貢献できる都市研究所をぜひとも構築すべきであると考えますが、大学当局の所見を伺いたいと思います。
 同様に、大学と都立の各試験研究機関との連携も重要であります。
 都立の大学同様、各試験研究機関も、改めてその存在意義が問い直されております。都立大学大学院理学研究科では、本年四月から、東京都老人総合研究所、同医学研究機構の臨床医学総合研究所、神経科学総合研究所と連携大学院協定を結び、研究、学生の指導などの面で緊密な連携を図っていく方針と伺っています。
 東京都には、ほかにも、環境科学研究所を初め、労働経済局に関連する試験場や研究所などが多数存在いたします。都立大学が触媒となって、こうした各種試験研究機関のネットワークを構築することができたならば、資源の有効活用によって大きな成果が期待できます。
 都立大学並びに各種試験研究機関の機能を最大限に発揮するため、大学を触媒、中核としたネットワーク化を提案したいのでありますが、見解はいかがでありましょうか。
 最後に、時間の関係で通告から省きましたので、要望にとどめたいと思いますが、二点申し上げます。
 先日、NHKの番組で、化学物質過敏症、一昨年取り上げましたが、化学物質過敏症のためのクリーンルームが北海道旭川に建設され、六人の患者がそこで生活を始めるという報道がございました。原因が不明で、臨床的にもデータが乏しく、いまだ病として認定されていないものの、一昨年の一般質問で指摘したように、深刻な症状が数多く報告されております。今のところ、化学物質を極力排除したクリーンルームで生活し、化学物質を体外に排出するしか治療法がありません。
 まさにこうした問題こそ、都立の各種試験研究機関、そして大学、都立大学などが率先して研究すべきテーマでございます。知事の言葉をかりれば、まさにこれは文明論的課題であり、文明論的アプローチとともに、さまざまな支援策が不可欠です。ぜひとも国に先行する取り組みを行っていただきたいと思います。
 最後に、世田谷区の烏山のオウムに対する取り組み、ぜひとも東京都も真剣に取り組んでいただきたいことを要請して、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) 中嶋義雄議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、小田急線下北沢駅付近の連続立体交差事業の今後の見通しについてでございますが、現在、都市計画素案の作成に向け、地元区など関係機関と協議を進めておりまして、本年四月を目途に、都市計画素案の地元説明会を開催したいというふうに考えております。
 その後、都市計画や環境影響評価の手続を進め、地域の方々の理解と協力を得ながら、早期事業化に向けて取り組んでまいります。
 次に、補助五四号線など、下北沢駅周辺の道路整備に対する支援についてでございますが、連続立体交差事業とあわせて、関連する道路を一体的に整備することは、地域交通の円滑化や地域の活性化を促すことから、重要であるというふうに考えております。
 下北沢駅周辺の補助五四号線を初めとする道路整備は、地元区が主体となって進めることとなっておりますが、都といたしましても、連続立体交差事業と一体的に整備する観点から、地元区に対し適切な支援を行ってまいります。
 次に、下北沢駅周辺のまちづくりに対する支援についてでございますが、まちづくりに関するさまざまな地元要望につきましては、地元区が中心となり取り組んでいく必要があります。
 都といたしましては、連続立体交差事業にあわせて駅周辺のまちづくりの推進を図るため、関係機関と連携を図りながら、区の取り組みを支援してまいります。
 交通のバリアフリー化に対する今後の都の対応についてでございますが、都では、従来、施設整備基準の制定及び区市町村に対する支援事業などを通じ、駅のエレベーター等の整備など、交通バリアフリー化を進めてまいりました。
 昨年五月に公布された交通バリアフリー法は、高齢者や障害者の方などに対して、駅前広場や道路などの整備を含め、公共交通機関を利用した移動の利便性及び安全性の向上を図ることを目的としております。
 今後、法の趣旨を踏まえまして、関係局がより一層連携を強め、区市町村とともに、交通のバリアフリー化に総合的、体系的に取り組んでまいります。
 次に、交通バリアフリー化における区への支援についてでございますが、これまでも都は、鉄道駅エレベーター等整備事業による交通バリアフリー化などに対しまして、区市に支援を行ってきております。
 このたびの交通バリアフリー法の制定に伴い、区市町村が、道路管理者、交通管理者など関係機関と協議、調整を行い、ハード、ソフト両面の施策を盛り込んだ基本構想を策定することとなりました。
 都といたしましては、従来の施策に加え、こうした区の取り組みに対しても引き続き必要な協力、支援を行ってまいります。
 最後に、鉄道駅のバリアフリー化に対する都の役割についてでございますが、駅などにおける交通バリアフリー化は、従前から、基本的には鉄道事業者や地元自治体が中心となって推進してきており、これに対し都が適切な支援を行ってまいりました。
 今後とも、公共交通機関を利用した移動の利便性及び安全性の向上が図られるよう、鉄道事業者や区などに対し、関係局が連携いたしまして必要な支援を行ってまいります。
   〔環境局長中野英則君登壇〕

○環境局長(中野英則君) PCBに関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、PCBの適正処理の取り組みについてでありますが、国においては、PCBの特別措置法案を今国会に提出しているところでありますが、都におきましては、既に、長期保管に伴う環境リスクを未然に防止するため、PCBの適正処理促進に向けた検討委員会を設置し、昨年十二月に提言をいただきました。
 今後、この提言を踏まえ、十年間で処理を完了することを目指し、都民の理解を得るためのリスクコミュニケーションなどの取り組みや、都の関与による処理施設の整備について検討を進めるなど、PCBの適正処理の促進に努めてまいります。
 次に、PCBの適正管理への取り組みについてでありますが、ご指摘のとおり、PCB入り蛍光灯器具などの交換に際しましては、保管されずに紛失するなどの環境リスクが懸念されております。このため、PCBを使用している事業者に対して、使用機器の登録や、交換の際の届け出制の導入など、使用段階からのPCBの適正管理について、都独自のルールを早急に策定してまいります。
   〔都立大学事務局長川崎裕康君登壇〕

○都立大学事務局長(川崎裕康君) 都立大学の改革に関します二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立大学都市研究所の活用についてでございますが、当研究所は、都市に関するさまざまな学術研究を行うほか、東京都からの受託研究や、各局の調査研究に対する専門的な評価などを行ってきております。しかし、ご指摘の政策面からの都政への貢献という点では、これまで必ずしも十分な成果を上げてきたとはいえないのが現状でございます。
 改革に当たりましては、首都東京の抱えるさまざまな課題について実践的な研究を進めるとともに、体制の強化を図り、都民や都政との接点となる重要な組織として位置づけ、そこでの成果が都の政策立案等に反映されるなど、期待される役割を積極的に果たすことができるようにしてまいりたいと思います。
 次に、都立大学と試験研究機関との連携についてでございますが、大学の基礎研究と試験研究機関の応用開発研究を結び、相乗効果による研究活性化を図り、その成果を都民の健康対策や産業支援などの課題解決につなげていくために、ご指摘のような連携協力は極めて有意義なものと考えております。
 このため、本学では既に、さまざまな研究機関と共同研究を行っていくほか、研究員の交流や施設の相互利用など、連携についての具体的な検討を始めてきているところでございます。
 今後、大学改革を進めるに当たっては、こうした観点を十分踏まえ、大学と試験研究機関とのネットワーク構築に向けて積極的に取り組んでまいります。

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