平成十二年東京都議会会議録第十三号

○副議長(五十嵐正君) 九番大西由紀子さん。
   〔九番大西由紀子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○九番(大西由紀子君) 初めに、伊豆諸島で続いている大規模な地震や噴火の被害、特に三宅島では雄山の噴火活動が活発で、その被害は甚大です。一日も早い事態の終息を祈るとともに、なれない地での避難生活を余儀なくされている皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 避難をされた方々にとって、今後の生活のことが一番気になるところです。特に就業対策においては、民間企業を初めとして、国や区市町村との連携をもとに、積極的な支援が必要と考えます。現在の取り組み状況を伺います。
 去る九月八日に、東京構想二〇〇〇の中間のまとめが発表されました。中間報告を見て、知事自身が、具体性がないと不満を漏らされたと報道されていましたが、確かに、何が新しい施策になるのか、具体的にどこがどう変わるのか、はっきりしません。
 今回の構想では、メガロポリスという言葉で、隣接県を含めた東京圏という範囲が施策を考える地域として意識されています。実際、千二百万人の人々が住み、さらに三百万人を超える人々が近隣県から通勤通学し、経済活動や買い物も県境を越えて行われるのですから、自治体の広域連合を進めることも必要です。
 しかし、膨れ上がった東京圏で、長距離混雑通勤、住宅事情の悪さなどがいまだ解決されていないこと、オフィス開発を優先させた結果、都心では、生活の場としての町の暮らしやコミュニティが分断されてきたことを考えれば、都心へのオフィス立地などを抑制し、各地で職住のバランスがとれるように、区市町村から積み上げられた分権、分散的な都市構造を実現することが望まれます。
 これまで都が進めてきた多心型都市構造は、東京への集中を緩和することが目指されてきました。多摩地域にも就業の場所をふやすなど、分散型の都市構想が継承されなければ、住みにくい東京をつくることになると考えます。知事にお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
 また、食品の安全についても、都民が安心して生活できる東京という項目で示されています。
 この夏ほど、低脂肪乳を原因とする食中毒や食品の異物混入などに関する事件が多発した年はありませんでした。また、残留農薬、遺伝子組みかえ食品の表示問題など、都民の食品に安全確保を求める声は高まっています。国に先駆け食品行政をリードしてきた東京都として、食品安全条例制定を東京構想等の中で検討すべきだと考えます。
 食べ物の国際化の中で、日本の伝統的な食文化、食習慣を踏まえるとともに、都民の食べ物への安心感が高められ、消費者の意向が施策に反映されるよう、国に対して食品安全確保対策の一層の推進を求めていくべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、福祉施設などの集団給食の安全基準について伺います。
 これまで学校や福祉施設には安全基準がありませんでした。本年六月に食品衛生調査会から答申された集団給食施設の衛生管理対策については、食の安全を求めてきた生活者ネットワークとしましても、大いに歓迎するところです。しかし、その対象となる施設には、民間のボランティア団体による配食サービスや、小規模な給食施設が含まれています。また、給食ボランティアの状況は、区市町村の施設を使用しているところも多く、基準を満たしていない施設は改善が必要となります。
 いうまでもなく、安全基準は必要ですが、規制によってボランティア団体の取り組みの意欲をなくし、後退することがないように、行政の一層の支援が望まれます。そこで、安全基準の実効性を上げるための基準の設定や、当該地域との協議、十分な経過措置をとるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 また、地域福祉の充実が求められている中で、サービスを必要とする人たちのニーズに合わせた調理方法や、行政基準以外のすき間を埋めるためには、このようなボランティア団体の地域での取り組みが欠かせません。そこで、地域でのNPO等の事業がこれからも盛んになっていくよう、区市町村と協力して支援していくべきと考えますが、いかがでしょうか。福祉局の見解を伺います。
 次に、子ども施策について伺います。
 子どもの状況を変えるには、頭ごなしに、しつけが大事と叫ぶのではなく、子どもの権利と責任、互いの存在を認め合う人権意識を育てることこそが、家庭、学校、地域に今求められています。
 九八年七月、東京都でも、児童福祉審議会の意見具申などでも、独立した第三者機関の設置や、子どもの権利条例の制定が盛り込まれています。九九年第二回定例会で、本会議答弁として、子どもの権利条例の制定に向け検討を開始したとの答弁がありました。
 これを踏まえ、子どもの権利条例研究会報告書では、子どもの権利については実態を踏まえていく必要があると述べられています。子どもの権利条例が東京都に制定されることが望まれますが、いかがでしょうか。
 また、平成十年十一月から、第三者機関的な役割を担う子どもの権利擁護委員会を設置し、子どもや親からの権利救済の訴えを直接受けとめる相談活動を試行的に行っています。丸二年の試行期間を経て、平成十二年度中には本格実施と聞いています。これまでの成果を踏まえ、充実させることが必要であると考えます。重ねて伺います。
 最後に、水循環について伺います。
 都市化の進展により、道路や建物の増加によって地表が覆われ、土壌の保水機能が低下し、水辺の空間や緑が喪失し、ヒートアイランド現象や都市型洪水が深刻になっております。また、地下水の過剰くみ上げによる地盤沈下も依然として見られます。
 東京の環境を守るためにも、現状で残されている自然の水循環を保全し、さらにさまざまな原因で失われた循環を回復する努力が必要です。そのためには、流域を単位とした関係行政機関、流域住民等の連携と、水収支についての科学的な調査の実施とその結果の公表、それに基づくまちづくり施策の推進が望ましいと考えます。
 水循環において、とりわけ重要なのは地下水です。今後、地下水の揚水規制を強化するとともに、水収支の動向を監視するため、事業者に水量メーターを設置させるなど、揚水量を正確に把握する必要があると考えます。公害防止条例の改定の中でどのように取り組もうとしているのか、伺います。
 都市化により最も大きな影響を受けているものに湧水があります。湧水は周囲に緑をはぐくみ、貴重なビオトープの役目も担っています。今、区市町村や住民と一体となって、湧水を保全していくことが急がれます。
 現在改定が検討されている自然保護条例に、こうした観点を位置づける必要があるのではないでしょうか。お考えを伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 大西由紀子議員の一般質問にお答えいたします。
 東京構想二〇〇〇における住みやすい東京づくりについてでありますが、東京構想で示した環状メガロポリス構造は、環状方向の道路を整備することなどによって、東京圏に地域の特性に応じた都市機能を適切に配置し、東京圏全体としての機能を最大限に発揮させることを目指したものであります。
 この目的を達成するため、センター・コア・エリアにおいては、土地の有効利用、高度利用を図るなどにより、都心居住を推進し、一方、多摩地域においては、就業の場を育成することなどによって、職住近接を図ることとしております。
 このように、東京構想では、これまでの多心型都市構造を決して否定するものではなく、さらにそれを環状に包んで、さらに発展させる形で、東京を活力ある住みやすい都市にしていこうとしているものでございます。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔労働経済局長浪越勝海君登壇〕

○労働経済局長(浪越勝海君) 避難島民の方々への就業対策についてのお尋ねでございますが、都としては、民間企業や国及び区市町村等と連携して、効果的な支援を実施することが不可欠であると考えております。
 このため、国と連携して、緊急労働相談を実施したほか、主要経済団体に対する求人の協力要請や、就職希望者と求人企業主を一堂に会した合同就職相談会の実施など、幅広く緊急就労対策に取り組んでいるところでございます。
 今後とも、事態の推移に合わせて、関係機関と協力して、避難島民の方々の生活安定に向けて、積極的に就業の促進に努めてまいります。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 食品の安全施策にかかわる国への働きかけについてでありますが、都は、東京都における食品安全確保対策に係る基本方針に基づきまして、全庁的な取り組みを行っております。
 国に対しては、これまでも、遺伝子組みかえ食品の適切な表示など、食品安全対策の推進を求めてきたところであります。
 今後とも、都民の食生活の安全を確保するため、バイオテクノロジーを応用した食品等の安全対策や、食品の安全にかかわる情報提供の推進など、国に対して強く働きかけをしてまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 集団給食施設に対する安全基準等についてのお尋ねでございます。
 本年六月、東京都食品衛生調査会から、食品衛生法の許可の対象となっていない福祉施設などの集団給食施設における衛生管理の徹底を図るため、届け出制とともに、施設基準や、管理運営基準の設定などを条例で規定すべきであるとの答申をいただいたところであります。この答申の具体化に当たりましては、対象となる給食施設の多様な実態や、ボランティア団体等及び関係機関の意見を把握しながら、適切な対応を図ってまいります。
   〔福祉局長高齢者施策推進室長兼務前川燿男君登壇〕

○福祉局長高齢者施策推進室長兼務(前川燿男君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まずNPO等の事業の支援についてでありますが、都民が、みずから主体的にサービスを選択し利用できる利用者指向の開かれた福祉を実現するためには、多様な主体による良質な福祉サービスが十分に供給されることが必要でございます。NPO等は、地域に密着したきめ細やかで弾力的なサービスの担い手として、独自の存在意義がございます。都としては、今後とも区市町村と協力し、支援していきたいと考えております。
 次に、子どもの権利条例の制定についてでありますが、子どもの権利擁護、権利保障をどうとらえ、どう進めていくかについては、多様な意見があり、慎重に考慮する必要があると考えております。これまで外部の学識経験者の意見を聞くなど、さまざまな角度から検討を続けてまいりましたが、今後とも、東京の子どもの置かれている状況を幅広い視点からとらえ、慎重に検討していきたいと存じます。
 最後に、子どもの権利擁護についてでございます。お話の委員会は、第三者的立場から子どもの訴えを直接受けとめる機関として、平成十年十一月に児童相談センターに設置をいたしました。現在は、試行的に実施しているものでありますが、現況を見ますと、学校や施設などでの対応や、関係機関との役割分担など、なお検討すべき種々の課題があります。したがって、当面、試行を継続していきたいと考えております。
   〔環境局長中野英則君登壇〕

○環境局長(中野英則君) 地下水の揚水規制の強化などへの取り組みについてでありますが、都では、東京都水環境保全計画に基づき、地下水の揚水規制など、地下水保全のための施策を進めてきておりますが、今後改正を予定しております公害防止条例においては、地下水を涵養する観点から、揚水規制の対象地域を拡大するとともに、小規模施設に対しても揚水量の報告を求めることなどを検討してまいります。
 次に、湧水を保全するための取り組みについてでありますが、湧水は、中小河川の貴重な水源となっているとともに、緑と一体となった潤いのある水辺空間を形成しております。都は、自然保護施策の一環として、湧水の復活再生や、雨水浸透ますの設置への補助など、水循環の回復のための事業を推進しているところであります。今後は、これらに加え、湧水の保全を条例に位置づけ、区市町村ともより一層連携を強めてまいります。

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