平成十二年東京都議会会議録第十三号

○議長(渋谷守生君) 五十番沢西きよお君。
   〔五十番沢西きよお君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○五十番(沢西きよお君) それでは、無所属クラブを代表いたしまして、代表質問といきたいところでございますけれども、一般質問をいたします。
 質問に先立ちまして、まず、このたびの噴火災害で故郷の島を離れ、不安と不自由な生活を送られている三宅島島民の皆様と、これまた、相次ぐ地震に日々緊張と不安の生活を余儀なくされている伊豆諸島の皆様に、都議会無所属クラブとして、心からお見舞いを申し上げます。
 さて、石原知事は、三宅島の災害対策について、万全の体制を整え、島の再生に全力を尽くすと言明されました。この知事の毅然たる姿勢が、現在、故郷の島を離れ、抗すべくもなく不安な日々の生活を強いられている島民の皆様に多くの勇気を与えるものであり、さらなる強力なリーダーシップの発揮を求めるものであります。
 推測するまでもなく、島民の皆様の望みは一日も早い帰島であり、再びもとの生活を取り戻すことにあると思います。とはいえ、相手は自然現象であり、島民の皆様にとってはつらいことではありますが、避難指示の解除が長期にわたり発令できない状況の続くことも十分考えられます。
 現実の対応を一層充実させることはもちろんのことですが、一方で、長期戦になることも視野に入れての対策にも、抜かりないようにすべきと考えます。所見のほどを伺います。
 さて、本定例会の直前に発表されました東京構想二〇〇〇中間のまとめについてお伺いいたします。
 今回の東京構想二〇〇〇中間のまとめでは、将来の東京を単独でとらえるのではなく、いわゆる東京圏という見地からの創造に向け、環状メガロポリス構造を掲げています。そのことをすべて否定するつもりはありません。しかし、この中で示された多摩地域の位置づけには疑義を示さざるを得ません。
 中間のまとめを読む限り、多摩地域は、浦和、大宮や横浜、川崎、千葉などと同じように、東京圏内でセンター・コア、区部の周辺に配置された業務核都市の一つという扱いにしかすぎず、東京都の中の多摩という、認識というか発想が乏しいと指摘せざるを得ないのであります。確かに、都内を九つのエリアに区分して、多摩地域についてもその特性や将来像が示されて、多摩地域の自立性を向上させ、バランスのとれた東京圏を実現するという政策目標も示されています。
 しかし、知事もご案内のことと思いますが、従来、東京においては、多摩と区部との格差是正が大きな行政課題であり、バランスある東京づくりという立場から、功罪はいろいろあったにしても、多心型都市づくり構想のもとに、多摩の自主性の向上に向けてのきめ細やかな取り組みが進められ、多摩各市も、都のこうした方針に呼応して取り組んできたという歴史があります。
 今回の中間のまとめでは、東京圏全体でのバランスの地域構造の創造ばかりが強調され、先ほど申し上げましたが、東京都の中にある多摩地域の育成という点からの具体性が感じられないのであります。
 そこで伺いますが、多心型都市づくり、あるいは多摩の心しんの思想は転換するのか。するのであれば、それにかわる政策をどうするのか、多摩に住み、働く都民が安心できるよう、ご説明をお願いしたい。
 次に、市町村合併について伺います。
 全国各地で市町村合併の実現に向けた動きのある中で、東京都では、田無市と保谷市とが二十一世紀最初の対等合併を決定し、西東京市としてスタートするわけですが、本定例会にも、そのことにかかわる議案が提出されております。田無市長、保谷市長に深甚なる敬意を表するものであります。
 市町村合併は、いうまでもなく、市町村の自主性と住民の意思を尊重して行われなければなりません。その立場からすれば、このたびの田無市と保谷市が十八歳以上の市民を対象にした意向調査を行い、住民の意思を踏まえた上で合併を決定したことは、非常に意義のあることで、両市の合併を心から祝したいと思います。
 本格的な分権の時代の到来という時代背景を考えるならば、基礎的自治体である市町村が、広域的な行政需要や多様化する住民ニーズに効率的に対応していくための手段として、合併が一つの選択肢であることは間違いのないところであります。私は、田無市、保谷市の合併に続く動きが出てくることは、当然のことととらえています。ある一面では、合併は最大の行政改革ともいわれております。都としても、一つのポリシーとして打ち出すべきと考えております。
 都も、現在、平成十二年度内に提示できるよう、市町村合併に関する検討指針を策定中と聞いていますが、単に行政機関に示すだけを目的とするのではなく、市町村が合併した場合の意義や効果をわかりやすく明示し、住民に対しても積極的に情報提供すべきと考えますが、所見のほどを伺います。
 次に、心の東京革命について伺います。
 私ども都議会無所属クラブは、次代を担う子どもたちを、健やかで、節度と責任を重んじる調和のとれた人間として成長してもらうため、従来のIQ、知能指数偏重の教育からEQ、心の知能指数を重んじる教育への移行を実現するため、単に学校教育だけでなく、地域社会にも有機的につながった教育の実現に努めていくことを、共通の政治目標の柱の一つとして掲げております。
 先月発表された心の東京革命行動プランは、本質において、私たちの目指すところと何ら変わりないものと受けとめており、大いなる評価をするとともに、その実効を期待しているところであります。特に私は、この行動プランの中で提示されている群れ遊びの復活は、子どもたちが心身ともにバランスのとれた人間として成長していく上で、大変重要なポイントであると考えています。
 地域の子どもたちの健全育成のためには、テレビゲームなどの一人遊びから解放され、異なる年齢の子どもたちが、みずからのルールや決まりのもとで集団で遊べる子ども社会の復活がぜひとも必要と考えますが、所見を伺います。
 かつての社会における基本的ルールは、今思うと、どうも教室の中だけではなく、上は中学生から下は小学校の下級生までが一緒になって遊んでいる中で、自然に身についたようであります。私たちのジェネレーションが、社会における基本的なルールや一定の倫理観を身につけることができたのは、年上の人や年下の子と一緒になって遊べたことによるものだと思うのであります。
 群れ遊びの復活というのは、プランの中で示されているような、地域のイベントや何かで、缶けり等の群れ遊びを経験させるということとは違うような気がするのであります。もちろん、そうしたことが全くむだだといっているわけではありません。大変重要なことだと思いますが、少子化という現状を考えると、日常的に、子どもだけの世界としての群れ遊びの復活は難しいように思います。
 今の子どもたちに、大人の側からそうした場や環境を与えるためにはどうすればよいのか。もちろん、この問題は息の長い取り組みが求められますが、今回の行動プランでは、このような場づくりをサポートするものとして、どのように施策を推進していこうとしているのか、所見を伺います。
 いずれにしろ、心の東京革命行動プランの実行が、将来の東京を担う青少年の健全育成にとって欠くべからざる要件であると思います。プランを示すだけではなく、文字どおり、それぞれの場で現実的な取り組みが展開されるよう、都としての積極的な行動を強く要望しておきます。
 次に、環境ホルモン対策についてであります。
 最近の新聞報道によりますと、これまで知られてきた環境ホルモン物質に加え、新たに昨年九月から国内での販売が開始されたピルなどの女性ホルモンが河川などに放出された場合、これまで知られてきた環境ホルモン物資と同様の影響を及ぼすとの研究結果があると報告されています。
 ピルの使用については、若い女性の身体や胎児へのあしき影響がこれまでも指摘されているところですが、それだけでなく、し尿に含まれる女性ホルモンとして、河川などに排出されることによって、環境ホルモンとしても生態系に悪影響を及ぼすと指摘している研究グループがあると聞いております。
 また、その研究グループは、多摩川の下水処理場の放水口付近で捕獲した雄のコイの中に、雌化現象のあることを確認したと発表しています。
 東京都環境ホルモン取り組み方針では、多摩川のコイなどについて、生殖器官の異常等の影響調査を実施することとなっていますが、これまでの調査結果はどのようになっているか、まずお聞きします。
 環境庁の報告書によりますと、農薬やプラスチックの原料などさまざまな化学物質が環境ホルモン作用を持つ疑いがあるとされていますが、そうした化学物質以上に、合成性ホルモンであるピルは、水生生物の生殖器官に対して大きな影響を及ぼすと考えられていると聞いています。
 幸いなことに、現状では、国内販売が開始されるに当たっての予測ほどには使用されていないようですが、今後、ピルの使用が増加するであろうことは十分に考えられます。そうなれば、環境への影響も大きくなることは必然であります。
 したがって、このような合成性ホルモンによる生物への影響をも考慮した対策が求められると思うのですが、そのことも含め、都は今後、環境ホルモンに対する取り組みをどのように進めていくお考えか、お伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 沢西きよお議員の一般質問にお答えいたします。
 長期化することを視野に入れての三宅島の対策についてでありますが、これまで、島外避難した村民に対しては、都営住宅などのあっせんを初め、さまざまな支援を実施してきております。
 火山活動は、六月二十六日に緊急火山情報が出されて以来、既に三カ月が経過しておりますが、現在も噴煙や火山ガスの発生が続いており、終息がなかなか見えにくい状況にございます。
 秋に入り、冬も近づいてきて、だんだん寒さが募ってきますと、避難されている方々も、とにかく正月は自分の家で迎えたいという切なる思いが高じてくると思いますけれども、やはり危険は危険でございますから、いずれにしろ、村民が一日も早く帰島できることを願っておりますけれども、なお危険が去らずに、今後これが長期化した場合でも、就労、就学及び生活等の支援を分厚く行い、安んじて避難生活が送れるよう、村民の意向を踏まえながら必要な対応を図っていくつもりでございます。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔政策報道室長安樂進君登壇〕

○政策報道室長(安樂進君) 東京構想における多摩地域の位置づけについてのお尋ねですが、多摩地域のまちづくりは、これまで、多摩の心しんを育成することによって多摩地域の自立性を高め、その発展を図っていくという考え方に立って進められてきました。
 今回の環状メガロポリス構造においても、この基本的考え方は継承されておりまして、それに加えて、圏央道などの環状方向の道路整備を促進することなどにより多摩地域の一層の自立発展を図っていくとした点に、今回の東京構想の特色があります。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 市町村合併に関する検討指針の住民への情報提供についてお答えいたします。
 ご指摘のとおり、市町村合併は、住民の意思を尊重しながら、市町村みずからが自主的、主体的に考え、取り組んでいくことが基本であると認識しております。そのため、東京都といたしましては、市町村における合併検討に資するよう、合併の意義や効果などを盛り込んだ仮称市町村合併に関する検討指針を今年度中に作成する予定でございます。
 今後、都内市町村において、この検討指針を活用して、合併に関する検討が活発に行われるよう働きかけていくとともに、あわせて、住民の合併機運の盛り上がりを期待する意味からも、都民に対して、この検討指針の内容を広報紙やホームページなどを通じて情報提供してまいりたいと考えております。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 子ども社会の復活の必要性についてでありますが、子どもたちは、異なる年齢の集団の中での遊びや触れ合い、競い合いを通じて、物事の達成感や、人が生きていく上での基本的ルールを身につけていくものであります。この意味において、ご指摘のような子ども社会は、子どもが健やかに成長していくために大変重要な場であり、地域においてぜひつくり上げていく必要があるものと考えております。
 次に、その関連でございますが、群れ遊びの復活をサポートする心の東京革命行動プランの具体的な施策についてでありますが、都としては、社会教育施設等を利用し、野外活動やスポーツなどを通じて異なる年齢の子どもたちの交流を促進するなど、地域における体験と触れ合いの場や機会を設けていきます。
 また、区市町村や地域の活動団体等が行う事業の中で、群れ遊びを体験できるような場や機会を積極的に取り入れるよう、働きかけを行ってまいります。
   〔環境局長中野英則君登壇〕

○環境局長(中野英則君) 環境ホルモンに関するご質問にお答えいたします。
 まず、コイなどの生殖器官異常等の調査結果についてでありますが、東京都環境科学研究所では、平成十年度から、多摩川水系の河川や神田川などの五地点において、コイ等の生殖腺の異常の有無について調査を実施してきております。
 平成十年度及び十一年度の調査結果によりますと、コイの雄、雌の比率は、いずれの年度においてもほぼ同じでありました。
 次に、合成性ホルモンを含めた環境ホルモン問題への今後の取り組みについてでありますが、都はこれまで、東京都環境ホルモン取り組み方針に基づき、河川水について人や動物に由来する女性ホルモンの調査を実施してきました。また、今年度から、これらの物質に加え、合成された性ホルモンの調査も行っており、今後とも、取り組み方針に基づき、環境ホルモンにかかわる現状把握、調査研究及び都民への積極的な情報提供に努めてまいります。

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