平成十二年東京都議会会議録第十三号

○副議長(五十嵐正君) 百十番桜井武君。
   〔百十番桜井武君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○百十番(桜井武君) 質問に先立ちまして、我が党を代表しまして一言申し上げます。
 我が党の三原議員の一般質問は、本年一月二十八日に、日本共産党東京都議会議員団が、知事あての二〇〇〇年度東京都予算に関する復活要望書の中で、総務局所管について、陸・海・空三自衛隊との総合防災訓練を行わないことと要望している事実や、反対する団体の要請行動に木村幹事長が同席している八月二日付の新聞赤旗の記事などの事実から見て、発言の撤回には応じる必要は全くないと考えます。
 それでは、質問に入ります。
 心の東京革命について伺います。
 先般発表された心の東京革命行動プランでは、次代を担う子どもたちに対する親や大人の責任が特に強調されております。これは、五十有余年の戦後社会において、人としての心に対する教育を私たち大人がおろそかにしてきたことに大きな原因があると考えます。個人主義や平等主義を履き違え、例えば、自己の権利を主張する中で社会全体の利益を顧みない行動が多く見られ、権利の行使には義務や責任が伴うことなどが忘れられています。
 また、かつては親の権威、教師の権威というものが存在し、学校教育や家庭でのしつけの中でそれが生かされ、規律や規範意識などがごくごく自然に子どもたちに身についていったものでございます。
 ところが、戦後の長きにわたる歳月の中で失われつつある規範意識や思いやりの心を、今こそ取り戻して、本来の人間としてあるべき姿を今こそ復活させるときであろうと思います。
 心の東京革命は、戦後の日本社会が経済の発展と引きかえに失ってしまったものを取り戻す壮大な取り組みと考えますが、プランを発表した今、知事にその推進に当たっての決意を改めて伺います。
 行動プランでは、家庭、学校、地域などの行動主体それぞれが具体的に何をなすべきか、都民一人一人の行動指針が示されています。このような活動は、従来から、地域のさまざまな団体などが地道に取り組んできているものではありますが、団体同士が連携した活動など、地域が一体となった広がりのある取り組みは、必ずしも十分とはいえません。このような活動には、商店会や老人会等が中心になって、子どもの体験学習の機会を充実させるなど、何といっても地域の核となって活動する団体の存在が大きなかぎになると思います。
 地域の特性を生かした事業を展開し、他の地域でも参考になるような取り組みを進めている団体に対しては、心の東京革命の推進に弾みをつけるためにも、表彰制度のようなものを取り入れたらばいかがかと思いますが、所見を伺います。
 また、キャンペーン展開の一つとして、このプランの中では、家族ふれあいの日の設定を挙げておりますけれども、家族同士のコミュニケーションがややもすれば失われている昨今、大変重要なことであると思います。この日には、例えば家族水入らずの家庭料理で一家団らんをしたり、近所の喫茶店やホテルのレストランなどの協力を得て、家族での食事に割引などのサービスをしてもらい、親子のコミュニケーションづくりのきっかけにするような試みも必要と考えます。これはプラン発表時の報道でも多く取り上げられ、無関心層を含め、広く都民が関心を持つ効果的な取り組みであります。今後、この家庭ふれあいの日をどのように進めていくか、伺います。
 また、心の東京革命行動プランでは、家庭に対して、お年寄りをいたわることを教えようとも期待しています。そのためには、特に介護を必要とするお年寄りとその家族にとって、いざというとき安心の介護保険制度の充実が急がれるところであります。
 この介護保険制度は、先ごろの新聞報道のアンケート調査に見られるように、十分な国民の理解を得ているとはいえない状況であります。特に、制度の基本的な一端を担うケアマネジャーは、本来業務であるケアプランの作成などの面で大変なご苦労があると認識されておりますが、このケアマネジャーに対しての一つのバックアップ策として、東京警視庁では、ケアマネジャーが認定調査のために車両を使用するに当たっては、駐車許可証の対象にするよう、改善策を講じていただきました。迅速な警視庁の対応に感謝を申し上げます。こうしたきめの細かい対応を初めとして、東京都はケアマネジャーに対するさらなる支援策を早急に策定すべきと考えますが、所見を伺います。
 心の東京革命の取り組みは、申すまでもなく、一人でも多くの都民がこの運動に参加することが何よりも肝要であります。都は、そのための環境整備や機運づくりなど、多方面において積極的にサポートしていくことを要望しておきます。
 次に、心の東京革命の推進に当たっては、家庭、学校、地域が一体となって取り組み、学校はそのかなめとしての役割を果たすことが重要と考えます。このためには、学校は、学校の伝統や校風、育てる生徒像などを明確にし、家庭や地域の強い信頼を得ることが不可欠であります。
 そこで、心の東京革命行動プランに掲げられております、世界の中の日本人としてのアイデンティティー教育にあるように、子どもたちに日本人としての自覚や誇りをはぐくむことが必要でありますが、これまでの学校教育では不十分な面も見受けられます。このことについて、これをどのように受けとめ、これから進めていくのかを伺います。
 また、現在、東京都の教育委員会は、都立高校改革を進めております。この改革では、新しいタイプの学校づくりだけでなく、従来からの伝統と校風のある都立高校がより一層質の向上を図るなどして、各学校のアイデンティティーを確立することも重要と考えます。
 ところで、今日まで、都立高校の入試は、東京都教育委員会が作成した共通問題を使って試験を行っているのが実情でございますが、生徒の多様化が進む今日において、この方式は、都立高校の独自性を育てるという観点に立ったときに、必ずしも適切とはいえないのではないかと思われます。例えば、私立高校は、各校とも独自に入試問題をつくって試験を行っております。都立高校がみずから入試問題を作成し、試験を実施することは、これからの都立高校の個性化、特色化の推進と質的向上に極めて有効であると考えられます。
 そこで、先般、新聞等で報道された日比谷高校の独自入試はどのようなねらいがあるのか、教育長の所見を伺うものであります。
 また、今後は、日比谷高校のように入試問題を自分の学校で作成する都立高校がふえることが望ましいと考えられますが、あわせて見解をお伺いいたします。
 次に、都立高校の統廃合などにより発生することとなる跡地の活用についてお伺いいたします。
 都立高校につきましては、現在、二次にわたる改革推進計画が進められ、これらに基づきまして、今後、幾つかの高校について再編、統合が行われることが明らかにされております。これによりまして廃止、統合されることとなる高校の敷地は、いずれもある程度の規模を持った貴重な都有地でございまして、今後これだけのまとまった土地が新たに生み出されるチャンスは少ないものと思われます。
 また、このほかにも、行政改革により、都庁全体で組織再編や事業の見直しなどがなされまして、都立高校ほどの規模ではないにしましても、今後新たに土地や施設があいてくることも見込まれます。
 都立高校の跡地などの今後の利用につきましては、教育目的など従前の施設と同じ用途に限定することなく、より幅広く、福祉や文化、環境など、都民全体の利益となるさまざまな用途を検討すべきであり、当面の具体的用途がない場合には、売却の対象とすることも考慮する必要があると思われます。
 このように、土地のさまざまな利用方策を的確に検討するためには、十分な検討期間をとることがどうしても必要であります。ところが、実際に高校などが廃止されてから跡地利用の検討を開始するのでは遅過ぎ、時期を失ってしまうことになります。
 しかし、現行制度では、事業の廃止までの間には、事業遂行中の部局が廃止後の幅広い利用方策を検討することは全く困難であります。このため、事業の廃止や組織の統合などに関する計画が決定された時点におきまして、財務局に土地や建物の事実上の仮引き継ぎを行い、財務局が地元の要望なども考慮しながら、都庁全体を視野に入れた跡地の有効活用策を検討する仕組みを新たにつくる必要があると思いますが、いかがでしょうか。見解を伺います。
 以上をもちまして私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 桜井武議員の一般質問にお答えいたします。
 心の東京革命の推進に当たっての決意についてでありますが、現在の青少年の問題は、その根底には、社会で最低限守らなくてはならない人間としての基本的なルールに対する認識の欠如が著しくございます。物事の基本的な道理喪失があると思われます。これは、おっしゃるとおり、あくまでも私たち大人の責任でありまして、ゆえに、次代を担う子どもたちのために、人が生きていく上で当然の心得を伝えていくために、親と大人が責任を持って本気で立ち向かっていくことが重要であると思います。
 先般、私も時々メンバーとして出ていますMXテレビのあるバラエティー番組で、この問題についての世情をテストするために、渋谷の一番人通りの多い歩道橋の上に、子どもに頼みまして、通行の邪魔になる形で二人座ってゲームをしてもらいましたが、何と四十分を超しても、そこを過ぎていく大人の中で、だれ一人それを注意する人がおりませんでした。やっと一時間近くたって、それを激しくしかる四十代の男性があらわれまして、その人のインタビューをテレビのスタッフがしたわけでありますが、もってそのようなことでありました。
 ゆえに、今後、この取り組みを社会全体の運動にしていくために、地域団体や企業等の参加を得た、心の東京革命推進協議会――仮称でございますけれども、それを発足させるなどして、都民と一体となった継続的な取り組みを展開していきたいと思っております。
 その他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 三点の質問にお答えします。
 まず、世界の中の日本人としてのアイデンティティーについてですが、日本人としてのアイデンティティーをはぐくむためには、子どもたちが我が国の歴史や文化、伝統を学び、家族や郷土、国を愛する心を持つとともに、国際社会に生きる資質、能力を身につけることが必要であると認識いたしております。
 都教育委員会としましては、各学校が、道徳、社会あるいは総合的な学習の時間などの日常の教育活動を通して、世界の中の日本人としての自覚や誇りをはぐくむ教育を進めるよう指導しますとともに、こうした各学校の活動の成果を共有し、発展させるため、子どもたちが学習で得た体験の発表会や外国の子どもたちとの交流会を実施してまいります。
 次に、都立日比谷高校が自校で入試問題を作成するねらいについてですが、学校みずからが入試問題を作成することを通して、求める生徒の能力、適性を明確に示しますとともに、生徒の学習の到達度をよりきめ細かく評価することが可能となり、入学後の指導体制の一層の充実を図ることができます。
 一方、このことによりまして、特色ある学校としての校風や伝統を広く都民にメッセージすることにもなります。
 また、入試問題を自校で作成するということは、相当の努力が必要とされますことから、教員の資質向上につながることもねらいの一つでございます。
 次に、入試問題を自校作成する都立高校の今後の動向についてですが、全日制高校の入試問題の自校作成につきましては、都立高校改革の一環として、平成十二年三月に都立高校も加えた検討委員会を設置し、鋭意検討を続けております。
 入試問題の自校作成は、高校改革を進める上で多くの効果が期待できますことから、校内体制が整った高校において、平成十四年度入試以降、順次実施していく予定でございます。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 心の東京革命における表彰制度についてでありますが、心の東京革命は、広く都民や地域団体の参加を得て、家庭、学校、地域等において具体的な行動を実践していく運動であり、ご指摘のとおり、地域で活動する団体の力は重要であります。地域団体が実施する多くの取り組みのうち、特に心の東京革命の活動モデルとなるようなものを取り上げて表彰することは、団体の活動意欲を高め、他の地域へ広めていくためにも大変有益であると考えております。
 今後、こうした取り組みを通じて、社会全体の運動としての弾みをつけてまいりたいと考えております。
 次に、家族ふれあいの日についてでありますが、家庭は子どもにとって最も大切な居場所であり、しつけなども含めた重要な教育の場であります。また、親子を初め家族間のコミュニケーションは、心の東京革命の推進の基礎ともいうべきものであります。
 こうした観点から、家族ふれあいの日――仮称でございますが――の提案が、行動プランが掲げられておりますが、今後、十月に設立予定の、民間団体等の参加によります心の東京革命推進協議会におきまして、その名称や設定日等も定めて、その運動を広めていきたいと考えております。
   〔福祉局長高齢者施策推進室長兼務前川燿男君登壇〕

○福祉局長高齢者施策推進室長兼務(前川燿男君) 介護支援専門員に対する支援策でございますが、介護支援専門員は、介護保険制度の中で、利用者の依頼に基づき、心身の状況や本人の希望に適合した介護サービス計画を作成するという重要な役割を担っております。この介護支援専門員が、制度発足間もない中、介護サービス計画の作成やその給付の管理などで多忙をきわめているのは、ご指摘のとおりでございます。
 都としては、介護支援専門員の実態の把握に努め、これに基づき、新たに支援会議を設置するとともに、事務負担の軽減を図るなど、総合的な支援策をできる限り速やかに取りまとめ、積極的に対応してまいりたいと存じます。
   〔財務局長木内征司君登壇〕

○財務局長(木内征司君) 都立高校の再編によって生じた跡地などの活用についてのお尋ねでございます。
 事業の見直しなどによって生じる土地や施設については、その価値や機能を十分に生かすために、売却を含む全庁的な活用を図ることが必要であると考えております。現在、財産の利用実態を調査し評価する資産アセスメントを実施中でございまして、この結果などをもとに、財産利活用総合計画を策定する予定でございます。
 この計画を策定する中で、ご指摘のような、いわば財務局への仮引き継ぎも含めまして、財産の有効活用のための具体的な方策を検討してまいりたいと思っております。

ページ先頭に戻る