平成十二年東京都議会会議録第十三号

   午後四時四十一分開議

○副議長(五十嵐正君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 七十五番坂口こうじ君。
   〔七十五番坂口こうじ君登壇〕

○七十五番(坂口こうじ君) まず、田無市、保谷市の合併と新市の誕生について伺います。
 いよいよ二十一世紀の到来まで三カ月余りとなりました。新しい世紀は、少子高齢化の急速な進展、日進月歩のIT革命、国際化の時代であるとともに、本格的な地方分権、地方主権の時代であり、大きな歴史の流れを見るならば、人間と科学技術、そして地球環境との共生の幕あけでもあります。
 国内では、長引く経済や景気の停滞、倒産、失業の増大、雇用不安、財政赤字の増大など、私たちの生活を取り巻く環境は大きく変化し、厳しさを増していますが、このような状況にあればこそ、地方行政の運営主体である地方自治体が積極的に自己変革をなし遂げ、市民の期待にこたえ得る強固で弾力的な行財政基盤を整え、新しい時代のニーズに適切に対応していくことが求められています。
 田無市、保谷市においては、平成九年九月の任意の合併協議会の設置と新市将来構想の策定、平成十一年十月の法定合併協議会の設置と新市建設計画の策定、市民説明会の開催、そして、我が国初めての試みである、十八歳以上すべての市民を対象とした、投票方式による市民意向調査を実施し、賛成三万七千九百八十五票、反対二万一千六百四十七票、どちらともいえない五千九百十六票という結果を得て、両市議会は八月十一日、歴史的な合併の議決を行ったところであります。
 また、同時に行われた調査で、新市の名称は西東京市に、特に力を入れてほしい施策としては、高齢者福祉の充実、安心して歩ける道路の整備、環境対策の推進や、公園緑地の整備等が挙げられたことも、これからの政策決定や実施にとって極めて重要であります。
 約四百年の歴史を持つ田無市と保谷市が、西暦二〇〇〇年という大きな歴史の転換の中で、将来を見据えながら、両市合併という究極の行財政改革を、小異を残して大同につくの精神で、市民の参加を大切にしながら実践したことの歴史的な意義は大きく、都内はもとより、今後、我が国の合併問題に取り組む自治体の有力なモデルの一つになると思われます。
 そこで、以下、知事並びに総務局長に伺いますが、第一に、田無市、保谷市の合併と西東京市の誕生についての率直な評価と、今後の区市町村合併についての基本的な考え、加えて、将来の道州制や分権型連邦国家論について、石原知事の所見をお伺いいたします。
 第二に、最近の国の動向、わけても住民投票制度の導入についての、地方制度調査会の答申と政府の合併特例法の改正の動きについて伺うとともに、我が国初めての試みとして実施された、十八歳以上すべての住民による投票方式による意向調査について所見を伺います。
 第三として、先駆的、先導的な自治体の合併成功例なくして、続く区市町村なしといえます。一人一人が輝き、支え合うまちづくりを目指す新市の建設計画への積極的な支援策について、総務局長の答弁を求めます。
 第二に、地方分権と税財源の移譲について伺います。
 昨年、地方分権一括法が成立し、ことし四月から、機関委任事務制度の廃止、国の関与等の見直し、権限移譲の推進、必要規制の見直しなどが行われていることは周知のとおりであります。明治以来百三十余年の中央集権国家としての歴史を振り返るとき、まさに画期的な出来事といっても過言ではありません。
 しかし、分権型社会を確立し、地方主権時代を創造していくためには、それぞれの自治体が、自主財源による自己決定、自己責任の財政運営を実現していかなければなりません。また、そのためには、地方税財政制度の抜本的な改革が必要であり、国と地方の税源配分を見直し、所得税や消費税等の税源を地方に移譲することが不可欠であります。
 しかるに、地方分権一括法においては、その附則第二百五十一条において、ご存じのとおり、地方財源の充実確保については中長期的な課題として先送りをしており、この附則の削除とともに、具体的な税財源移譲の確約を取りつけることこそが、この問題に係る最大の政治課題といわなければなりません。
 特に、首都東京の税制上重大な課題は、一人当たりの租税負担と、実質的な配分を示す租税還元率が、何と二九・二%と、四十七都道府県中最下位にあり、加えて、有権者の一票の重みが、衆院において、島根県、福井県、高知県などに比べ約二分の一しかなく、わかりやすくいうならば、両者合わせて、およそ六分の一以下の権利しか与えられていないに等しいという、耐えがたい現実があるのであり、もはや、行政による小手先の戦術的対応で解決できる限界を超え、政治の強力なリーダーシップにより戦略的に決着をつけていくべき課題となっていることであります。
 そこで、知事並びに関係局長に伺いますが、第一に、東京ひとり勝ちではなく、各都道府県、区市町村に公正に税源移譲を可能とする大戦略は、当面、一つとして、所得税と住民税の割合を、六九対三一から五〇対五〇に改革すること、二つとしては、消費税五%の国と地方の割合を、四対一から三対二に改革することを政府に迫り、具体的な成果を上げていくことであり、あわせて、衆参両院にわたる耐えがたい一票の重みの格差是正を政府に求めていくことであると考えますが、知事のお考えを伺います。
 第二に、そのためには、都議会はもとより、本年五月に設置された東京都税制調査会などを含め、活発な議論を巻き起こすとともに、インターネット等のメディアを活用し、都内区市町村はもとより、全国の自治体と連携して、制度の抜本的な改革を政府に強力に働きかけるべきと考えますが、どうか。今までの取り組みとともに、これからにかける知事の決意を伺います。
 第三に、今まで述べた税源移譲が仮に行われた場合、その総額は七兆六千億円であり、国民の租税総額八十七兆一千億円の一割以下の額ではありますが、都道府県財政はもとより、区市町村財政に極めて大きな効果をもたらします。
 知事が口癖のようにいわれますが、よらしむべし知らしむべからずの政治であってはなりません。東京都への税源移譲額及び区市町村への移譲総額は幾らとなるか、また、人口十万人当たりどれだけの額になるか、納税者であり主権者である都民の前に明らかにすべく、財務局長に答弁を求めます。
 最後に、産業廃棄物の適正な処理についてお伺いいたします。
 二十一世紀が、人間と環境の共生の世紀であるとするならば、産業廃棄物の適正な処理、処分に真正面から取り組むことなくして、日本の未来や地球の未来はないといっても過言ではありません。
 我が国においては、ことしの通常国会において、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、特定施設の整備の促進に関する法律が改正され、そのほとんどが、来月十月一日から施行されることになっています。
 その柱は、国、都道府県の役割強化、産廃処理業者の規制の強化、排出事業者の責任の強化等となっています。
 東京は、ご承知のとおり、各種産廃の最大の排出県でありながら、最終処分の八割近くを他県に依存しているのが実情であります。そのような中にあって、瀬戸内海の豊島、所沢、ニッソーの事件に象徴される、不法投棄や不適正な処理、処分事件の発生は、年間何と一千件を超えるに至り、今や、国民に大きな不安や不信を与える元凶となっています。
 他方、産廃処分場の残存量は、平成十一年末で、わずかに一・六年分を残すのみとなり、三重県を初め多くの道府県が、発生や流入の抑制に対し、税制を含めた新たな取り組みに着手しています。
 そこで伺いますが、第一に、改正法の施行を目前に控え、他の道府県に八割近くの最終処分地を依存している東京都の産廃行政がどう転換するのか、しないのか、環境局長に伺います。
 第二に、三重県では、北川知事が先頭になり、資源循環型・環境先進県づくりを推進するため、産廃にかかわる法定外目的税の検討を始めています。
 首都東京においても、減量やリサイクルを促進し、適正な処理、処分インフラを整備する観点から積極的な検討をすべきときに来ていると考えられますが、どうか。主税局長の所見を伺います。
 第三に、厚生省と環境庁は、頻発する不法投棄を防止するため、衛星とカーナビゲーションシステムを利用したGPS、全地球測位システムによる新しいシステムの導入方針を固め、全国数カ所を選び、モデル実施する方向であります。
 そこで、都としても、例えば都立十四病院から出される感染性廃棄物のマニフェストの作成や、適正な処理、処分等、早急に取り組むべき事業からモデル実施をし、先駆的、先導的な役割を果たすとともに、民間病院はもとより、他の分野にもその普及拡大を図るべきと考えますが、どうか。関係局長の答弁を求めます。
 最後に、改正法の本格的な施行と、都内処理をしても余りある産廃の適正な処理体制の確立を図るため、近県の協力を得ながら、早急に、GPSの活用も視野に入れた七都県市の広域ネットワークシステムの構築に取り組み、二十一世紀に向けての展望を示すべきと考えますが、石原知事の所見をお伺いし、私の質問を終わります。
 以上です。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 坂口こうじ議員の一般質問にお答えいたします。
 田無、保谷両市の合併の評価と、今後の区市町村合併についての考え方でございますが、地方分権が進展する中、市町村が、みずからの行財政運営の効率化を図り、広域的な行政需要に対応するために、市町村合併は大変重要なことだと思います。
 その意味からも、今回の田無、保谷両市の合併の意義は極めて大きく、また、全国で初めて投票方式による市民意向調査を行うなど、これからの時代の合併のモデルケースとして、高く評価されるべきだと思います。
 今後、市町村合併を進めていくに当たっては、何よりも住民の意向を尊重しながら、市町村みずからが自主的、主体的に考えて取り組んでいくことが必要であります。
 このためにも、東京都は、今年度中に市町村合併に関する検討指針を作成するなど、積極的に市町村合併を支援していくつもりでございます。
 次いで、分権型連邦国家論についてでありますが、まあ、明治以来百年を経た四十七都道府県の区割りは、もう、ちょっとこの近年の社会的変化に対応できなくなっているのは明らかでありまして、こういった都道府県制度にかわる、より機能的な新しい広域的自治制度の模索が、歴史的にも必要だと思います。
 ただ、連邦制は、ドイツやアメリカのような、国家が統合される歴史的経過の中で一つの形態として生み出された制度でありまして、古くから単一国家として形成されてきた我が国が、あえて統治権を分割する連邦制をとる合理的な理由は余りないと考えております。
 しかし、単一国家たる我が国においても、国から地方へ権限や財源を移譲し、自治体が責任を持って機能的に地域を運営するいわゆる地方主権を進めることは必要でありまして、歴史的な必然であるとも思います。
 次いで、税源移譲に関する戦略についてでありますが、国から地方への税源移譲を実現するためには、都ひとりだけではなくて、他の地方自治体との連携が肝要であります。
 ご指摘のような所得税や消費税を移譲する案も含めて、税源移譲の具体化に向けて議論を進め、地方主権にふさわしい制度改革の実現を図ってまいりたいと思います。
 さらに、一票の重みの格差でありますけれども、日本の政治は、これまで、全国の均衡ある発展を目指してきましたが、その結果、衆議院では、制度上、二倍までの議席配分の格差を容認し、参議院では事実上、五倍程度まで格差が広がるという結果を招いてしまいました。
 先般も最高裁が、何の根拠でか私には納得できませんが、一票の格差が一対四・八までは合憲であるという、非常に理解のしがたい結論を下しましたけれども、しかし、現在、人口が都市に集中しておりまして、国家のダイナモであります東京を初めとする大都市に、さまざまなゆがみが生じております。
 私は、かねてから、こうした大都市の抱える危機の克服こそが重要な政治課題であると考えております。そのためにも、民主政治の根幹である選挙制度における一票の格差は、早急に是正されるべきだと考えております。
 次いで、税源移譲を実現するための取り組みについてでありますけれども、これまでも、国の施策及び予算に対する東京都の提案要求において、税源移譲を初めとする税財政制度の抜本的改革を最重点事項として位置づけて、首相、官房長官にも直接申し入れるなど、国にも強く働きかけてまいりました。
 しかしながら、ご承知のように、税源移譲の早期実現は、さきの分権一括法にもうたわれているように、中長期という形で棚上げされまして、なかなか容易なことではございません。
 今後とも、みずから改革の先頭に立って、東京都税制調査会などを通じて活発な議論を巻き起こすとともに、都議会を初め、他の地方自治体とも連携を密にしながら、国に対し粘り強く働きかけてまいりたいと思います。
 現在、都の税調では、なかなか多岐にわたる案が検討されておりますが、近々、私はその案をまとめて、そして与党の税調に出席して、そこで都の意見を強く開陳したいと思っております。
 次いで、七都県市の広域ネットワークシステムの構築でありますけれども、産業廃棄物は、事業者処理責任のもとで、都県域を越えて広域に移動し、処理されております。
 廃棄物の不適正処理を防止するためには、行政としても広域的な連携が必要であります。
 現在、七都県市では、共同、協調して、適正処理のための広域的な取り組みを進めてまいっておりますが、今後も、新しい時代に向けて、情報連携を軸とした広域ネットワークの充実を図っていきたいと思います。
 これは、産業廃棄物の問題に限らず、このいわば日本の首都圏でありますメガロポリスの問題を、国との連携の中で積極的に解決していきたいと思っておりますので、先般からも、七都県市のネットワークに関する国との合議機関の設立を要望してまいっておりますが、近々、政府も、統廃合して新しいシステムになるようでありますから、その中で、初めてこれが実現されるべきだと思いますし、今度、総務省というんでしょうか、といったものの中に、私は、首都としての七都県市というものをどうするかということの、政府と七都県市の主体者との合議機関が必ず設けられるべきだと思っております。そこで、また、こういった問題が、より具体的に突っ込んだ形で、廃棄物の問題に関しても合議されるべきだと思っております。
 なお、他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 市町村合併にかかわる二点のご質問にお答えいたします。
 市町村合併をめぐる最近の国の動向や、田無、保谷両市での住民意向調査についてでございますけれども、現在国においては、第二十六次地方制度調査会において、住民自治のさらなる充実方策の中で、住民投票制度についても検討されておりまして、最終答申は十月中旬に出されると聞いております。
 今後は、この答申を踏まえた、合併特例法の改正などの検討も予想されるわけでございます。
 こうした国の動向に先んじまして、今回、田無、保谷両市で行われました、全国で初めての投票方式による住民意向調査は、合併の是非だけではなくて、新市の名称や、特に力を入れてほしい施策を問うなど、これからの時代の合併の先進的事例として高く評価されるものと考えております。
 次に、田無、保谷両市の合併に伴う新市の建設計画への都の支援策についてでございますが、新市が、「二十一世紀を拓き緑と活気にあふれ、一人ひとりが輝くまち」をつくるという建設の基本理念に基づき、新たなまちづくりを進めていくためには、将来にわたり、新市建設計画の施策を着実に実施していくことが重要でございます。そのためにも、東京都といたしましても、広域的団体の立場から、可能な限り必要な支援を行っていくことが大事だろうと認識しております。
 今後、公園、河川、道路など、都市基盤の計画的整備につきましては、新市と連携を図りながら積極的に取り組んでいくとともに、合併に伴う緊急かつ特殊な財政需要につきましては、合併支援特別交付金により支援を行っていく考えであります。
   〔財務局長木内征司君登壇〕

○財務局長(木内征司君) 税源移譲についてのお尋ねでございます。
 大まかな試算によれば、所得税と住民税との割合を五〇対五〇に、消費税と地方消費税との割合を三対二にそれぞれ変更した場合には、十二年度当初予算ベースで、都については約三千五百億円、区市町村については約七千三百億円、合計で一兆八百億円と試算されます。
 人口十万人当たりの金額は、約九十億円と、これも試算されます。
   〔環境局長中野英則君登壇〕

○環境局長(中野英則君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、産業廃棄物行政の転換についてでありますが、このたび、循環型社会形成推進基本法の制定や廃棄物処理法の改正など、循環型社会を構築するための基本的な枠組みと、廃棄物・リサイクル関連法体系の整備が図られました。
 これらの新しい関連法体系のもとで、今後、都の産業廃棄物行政は、これまでの適正処理を中心としたものから、廃棄物の発生抑制を最優先し、再使用、再生利用を積極的に進め、最終的に残った廃棄物を適正に処理するものに転換してまいります。
 次に、GPSなどによる監視システムの民間病院等への普及拡大についてでありますが、国は、産業廃棄物の不法投棄の未然防止と早期発見のために、人工衛星などを用いた監視システムの開発を、平成十三年度概算要求に盛り込んでおります。
 このようなシステムを、民間病院を初め他の分野にも普及拡大していくためには、システムの信頼性や有効性の確認などが必要であり、今後、国の動向を見ながら、その対応について検討してまいります。
   〔主税局長大塚俊郎君登壇〕

○主税局長(大塚俊郎君) 産業廃棄物に係る法定外税についてでございます。
 幾つかの自治体におきまして、まだ具体化はされておりませんけれども、それぞれの地域の特性に応じた取り組みが行われているところであります。
 都といたしましては、過日設置をいたしました東京都税制調査会において、都の地域における産業廃棄物の実情等を踏まえまして、どのような税制上の手当てが適当か、さまざまな角度から現在鋭意検討中であります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 都立病院における、衛星を利用したGPS監視システムのモデル実施についてでございますが、都立病院の感染性廃棄物については、これまでも、法に基づく処理確認に加え、東京ルールに従って適正に処理してきたところであります。
 ご指摘のように、現在、国では、廃棄物輸送トラックなどを追跡するGPS監視システムのモデル実施を検討していると承っております。
 今後、システムの信頼性や経済性の検証など、国の動向を見きわめながら、十分に検討してまいります。

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