平成十二年東京都議会会議録第十三号

○議長(渋谷守生君) 八十五番萩谷勝彦君。
   〔八十五番萩谷勝彦君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○八十五番(萩谷勝彦君) 私は、都政の当面する重要課題について、知事並びに関係局長にお尋ねをいたします。
 まず、多摩地域の格差問題についてお伺いします。
 永遠の課題とさえいわれておりますこの格差問題については、本年五月に発表された多摩の現状分析の報告書の中で指摘もされておりますが、この課題を設定して四半世紀、都と市町村は協力して真剣に取り組んでまいりました。
 しかし、私の住む北多摩北部地域では、区部と比較して、道路幅が区部八・二メートル、これに対し北部は五・九メートル、また、都市計画道路の整備率は、区部五五・一%に対し、北部は二五・七%、また、文化施設など、区部と比較して余りにも顕著な格差があるのが現実であります。
 私は、こうした事実から、それぞれの地域に着目すれば格差は、依然として残っているといわざるを得ません。この問題について改めて知事のご認識を伺いたいと思います。
 次に、地域に残された格差解消策についてであります。
 さきに述べた道路の問題など、地域に残された格差は、地域住民の日常生活に直接かかわることから、その解消は大事な行政課題であると考えます。
 現在の財政の厳しさは十分承知をしておりますが、こうした状況の中で格差解消を進めるに当たって、施策を重点化し、効果の高いものから重点的に投資していくべきと考えますが、都の取り組みについてお伺いをいたします。
 第三に、多摩の将来像についてであります。
 多摩地域には、多様で豊富な人材が住んでおり、市民活動もまことに活発であります。
 現在、三宅島から避難された多くの方々に、各方面からの、NPOの皆さんを初め自主的な支援活動が展開されております。また、ゆとりある空間、多様な産業の集積、七十を超える大学立地など、その多くの資源は、二十一世紀の多摩の未来像を語るとき、大きな可能性を示唆しております。
 こうしたすぐれた資源を生かし、多摩地域を大きく発展させるために、都は今こそ明確なビジョンを示すべきであります。現在策定中の多摩の将来像において、多摩のこのようなすぐれた資源をどのように生かそうと考えているのか、お伺いをいたします。
 次に、私は、昭和四十七年以来、多摩都市モノレールの実現に向け、一貫して取り組んでまいりました。
 おかげさまで、本年一月、南北十六キロが開業し、関係者は大変喜んでおります。関係当局のご努力に改めて心から御礼を申し上げます。
 ところで、新青梅街道の上北台から箱根ヶ崎方面への延伸は、多摩の自立都市圏の形成や地域の活性化に不可欠な都市基盤の整備であり、交通過疎問題に悩む沿線地域の人たちは、早期事業化を一日千秋の思いで待っております。
 多摩都市モノレールの箱根ヶ崎方面延伸についても、さらなる関係者のご努力を心から願うものであります。
 もちろん、都の財政状況や多摩都市モノレール会社の経営状態が依然厳しいことは十分承知をしております。しかしながら、多摩地域の発展には、本年一月に開業した南北十六キロに続いて、箱根ヶ崎までのモノレール延伸事業を軌道に乗せることが不可欠であります。
 仮に今、モノレール延伸の免許取得手続に入れないとしても、導入空間の確保だけでも極めて重要であり、行政としても緊急に取り組まなければなりません。本体工事に着手するためには、モノレールの支柱や駅舎に先駆けて、用地取得に相当の時間がかかることも覚悟をしなければなりません。
 箱根ヶ崎延伸事業については、平成四年十二月に、都が次期整備路線として正式に決定、平成六年には、国の国庫補助事業の採択を受け、平成十一年七月には、都が沿道づくり説明会において、一般部三十メートル、駅舎部三十七メートル程度になる明確な説明もされております。
 さらに、本年一月には、国の運輸政策審議会答申第十八号において、整備促進すべき路線としてのお墨つきもいただいております。
 このような経過を経て、武蔵村山市、瑞穂町合同の事業促進についての陳情を、去る七月二十四日、青山副知事ほか関係局長に行ってまいりましたが、関係者はこの成り行きを熱いまなざしで注目をしております。
 今や、延伸事業に着手する環境は万全となりました。ここで時期を逸して、またおくれるようなことがあれば、沿道住民からクレームがつくのは必至であります。
 現況十八メートルの新青梅街道を、一般部では三十メートルに拡幅することが必要であることもわかっております。既に地元住民への説明はなされており、まさにこれ以上都市計画の手続がおくれれば、行政の怠慢とのそしりは免れません。
 延伸事業を効率的かつスムーズに進めるため、モノレール本体の延伸手続と切り離して、導入空間に不可欠な新青梅街道拡幅の都市計画変更手続をぜひとも先行し、早急に行うべきであると考えますが、いかがでありましょうか。
 次に、旧日産自動車村山工場の百三十ヘクタールの大規模な跡地の活用についてお伺いをいたします。
 この跡地のうち、武蔵村山市の区域は八十六ヘクタール、立川市の区域が四十四ヘクタールとなっております。この跡地利用については、市、地元商工会など、あらゆる団体が参画して、いろいろな提案を含め検討をしてまいりましたが、一向に進展は見られない状況にあります。したがって、都が強いリーダーシップを発揮すべきと考えますが、同時に、地元の活性化のみならず、多摩地区全体の振興と発展につながるよう、都が広域的な観点から積極的に関与していくべきと考えます。
 また、跡地の検討に当たっては、最終的な土地利用のみに着目するのではなく、段階的、暫定的な整備、開発の観点を織り込むことが大切であります。
 また、モノレールの隣接地域では、モノレール新駅のありように大きな期待が持たれているだけに、大学、アウトレットモールなど、集客力のある施設の配置が有効ではないかと考えます。
 今後、跡地利用を検討する場合には、地域の活力を維持していけるような工夫と、モノレール延伸の起爆剤につながる活用に十分考慮していく必要があると考えますが、いかがでありましょうか。
 次に、村山貯水池上堰堤の交通安全対策についてであります。
 村山貯水池上堰堤は、大正十三年に築造されたものであります。以来、この上堰堤は、東大和市、いわゆる東京都と埼玉県を結ぶ重要な幹線道路として利用されております。
 この堰堤は、ご承知のとおり、一般道ではなく、水道局の管理道路のため、幅六メートルと狭く、歩道もなく、人と自転車は危険にさらされ通行できない状況であります。
 特に近年は、貯水池周辺の観光地化と西武球場ができたことによって、自動車、自転車、歩行者がふえ、まさに飽和状態が続いております。
 このため、昭和五十七年に、東大和市、武蔵村山市そして所沢市の周辺三市が中心となり、貯水池上堰堤交通安全対策協議会が結成され、問題解決に向けて精力的な運動が展開されてまいりました。私も、平成五年第一回都議会定例会において、緊急避難的に当面の安全対策について要請してきたところであります。
 その結果、関係局と東大和市のご尽力により、歩行者と自転車通行の安全を図るため、堰堤の下の段に幅三メートルの歩道がつくられ、利用者から大変に喜ばれております。
 しかし、六メートル幅の道路については、歩道が極めて狭く、歩行者及び自転車にとって、依然として大変危険な状態が続いております。また、車道が狭く、カーブもきつく、自動車通行も危険な状況になっております。
 この部分も、水道局が管理する道路として整備すべきであると考えますが、貯水池周辺の交通安全対策と今後の整備状況をお伺いいたします。
 最後に、東京の総面積の四割を占める森林、林業の活性化についてお伺いいたします。
 多摩の森林、林業は、地域産業としての経済的機能はもとより、千二百万都民の水がめとしての機能など、多様な役割を果たしてまいりました。
 しかしながら、山村の現場にあっては、担い手となる林業従事者の激減、著しい高齢化という深刻な事態に陥っております。
 昨年、第一回都議会定例会において、我が党は、林業の活性化のためには、消費者の意向を重視した画期的な木材流通システムを構築すべきであると提言しました。
 都も、私どもと同様の考えを持って推進してこられましたが、今後、林業施策の上でも、国に先んじて改革の道を開かれることを期待し、以下何点か質問をいたします。
 まず、知事は本年四月、多摩の林業を視察されましたが、その際、ごあいさつの中で、この貴重な自然は都民のかけがえのない財産であると申されております。改めて都の森林・林産業の現状に対する認識と、今後の活性化に関する基本的なお考えをお伺いしたいと存じます。
 次に、都が私どもの提案を受け入れ、国産材に対する消費動向について調査を始めたことは評価をいたします。一方、輸入材の需要動向を調査することも、今後の国産材の製材、流通、販売を考える上で不可欠であります。
 輸入材への需要動向の調査を含め、この際、新たな木材供給システムの構築に向けた都の具体的な取り組みについてお伺いし、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 萩谷勝彦議員の一般質問にお答えいたします。
 地域における格差についての認識でありますが、道路や下水道整備などのいわゆる三多摩格差八課題については、これまで、都と市町村が協力して積極的に取り組んできた結果、現在では、かなりの部分で解消してきていると思います。
 しかしながら、地域ごとに見れば、ご指摘のような道路の平均幅員などについては、個別的な行政課題として存在しているとも認識しております。
 今後、こうした地域的な課題については、これまでの格差是正という画一的な観点からの対応ではなくて、地域の実情や緊急性等を十分踏まえて取り組んでいくことが必要であると思っております。
 格差の是正と申しましても、多摩地域をいたずらに二十三区化するようなことではなくて、やはり多摩地域の得がたい特性を損なうことない是正というものが必要だと思っております。
 次いで、森林や林業等の現状認識と活性化についてでありますが、多摩地域の森林は、これまで、林業を営む地域の人々によって維持されてまいりました。
 しかし、近年、おっしゃるとおり、木材価格の低落と多量な外材の輸入によって、林業や木材産業の停滞が余儀なくされておりまして、山村地域の経済や雇用に深刻な影響を及ぼし、森林の荒廃が進んでおります。
 先般も、ホームレスを含めた失業者対策の労対、失対の現場としての多摩の奥の森林を視察に参りましたが、やはり非常に森が荒れかけているという印象が強くございました。
 こういう森林を健全に保全して、大気浄化や水資源の涵養など、山村地域だけでなくて、都市部においてもその恵みを受けているわけでございますから、都民にとってもこれは大きな課題となっていると認識しております。
 都としては、多摩産材の利用を積極的に進めて、林業、木材産業を活性化し、あわせて森林を保全していくことが重要であると認識しております。
 その他の質問については関係局長から答弁いたします。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 二点のご質問にお答えいたします。
 多摩地域に残された格差の解消に当たっての都の取り組みについてでございますけれども、昭和五十年に確認されました道路などの三多摩格差八課題につきましては、これまでも、都と市町村が協力しながら、計画的、効果的にその解消への取り組みを進めてきたところでございます。
 今後、厳しい財政状況の中で、地域に残された課題に的確に対応していくため、例えば道路につきましては、それぞれの地域の状況に応じ、渋滞解消のための交差点改良やネットワークの整備を進めるなどして、施策の重点化を図った取り組みをしていきたいと考えております。
 次に、多摩の将来像についてでございますが、多摩地域は、先端技術産業の集積や多数の大学、研究機関の立地などに加え、良質な居住環境や豊かな自然、豊富な人材など、多様な資源に恵まれております。
 今後、これらの資源を、産・学・公の連携による産業振興や、圏央道などの整備に伴う人や物の交流の活発化、豊かな自然を背景とした魅力的なまちづくりなどに生かせるよう、現在策定中の多摩の将来像に反映させてまいります。
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) 二点についてお答えいたします。
 新青梅街道拡幅の都市計画変更についてでございますが、この沿道では、武蔵村山土地区画整理事業を初めとする市街地整備が進められており、土地利用面では、郊外型の大型店舗や自動車販売店などが進出しているところでございます。
 新青梅街道の拡幅は、多摩都市モノレールの延伸と関連が深く、この事業についての採算性を踏まえつつ、沿線のまちづくりの動向や将来の土地利用のあり方を見据えまして、都市計画決定等も含め、実現の可能性を検討してまいります。
 次に、日産村山工場の今後の土地利用についてでございますが、この工場用地は非常に大規模なものでございまして、地域に与える影響が大きいことから、多摩地域全体の活力を維持向上する観点で将来の土地利用を検討していくことが望ましいと考えております。
 都は、今後、日産自動車の動向を見きわめながら、地元市などと密接に連携をとるなど、地域の活性化に役立つ計画的なまちづくりが行われるよう、適切に誘導してまいりたいと考えております。
   〔水道局長赤川正和君登壇〕

○水道局長(赤川正和君) 村山貯水池周辺の交通安全対策についてでありますが、これまで、堰堤部分は、関係局や地元市との協議に基づき、歩行者用通路を平成七年に設置するとともに、貯水池周回道路につきましては、順次、公道としての必要な整備工事を進めてきたところであり、現在までに堰堤前後以外の整備はおおむね終了しております。
 平成十二年度の整備内容につきましては、堰堤前後の周回道路の拡幅や道路そのもののカーブを緩くする工事を実施するとともに、ガードパイプを設置するなど、周辺の交通安全対策に取り組んでまいります。
   〔労働経済局長浪越勝海君登壇〕

○労働経済局長(浪越勝海君) 木材供給システムへの取り組みについてのお尋ねでございますが、多摩産材供給の現状は、多様化する消費者ニーズの的確な把握が不足していることなど、需要に十分対応できていない状況にあります。
 こうした状況を改善し、多摩産材の需要を拡大していくためには、消費者の情報を収集し、需要に合った製材品の生産、流通を担うシステムの整備が必要と考えます。
 このため、都としては、今年度設置いたしました地域材利用推進協議会において、新たな木材供給システムと、その核となる流通拠点の整備方法や、国産材に影響を与えている外材の需要動向調査の実施なども検討してまいります。

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