平成十二年東京都議会会議録第十三号

   午後一時一分開議

○議長(渋谷守生君) これより本日の会議を開きます。

○議長(渋谷守生君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(渋谷守生君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 知事より、東京都教育委員会委員の任命の同意について外人事案件二件が提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(渋谷守生君) 昨日に引き続き質問を行います。
 四十六番野田和男君。
   〔四十六番野田和男君登壇〕

○四十六番(野田和男君) 初めに、防災対策についてお伺いいたします。
 このたびの三宅島火山災害及び新島、神津島などの地震災害に遭われた方々に、心からお見舞い申し上げます。
 私は、昨年の第一回定例会、第四回定例会において、災害時の避難場所の安定的確保について要望し、その具体的対策について質問をしてまいりました。今こそ対策強化が必要であります。
 区部において都が指定した避難場所を初め、近隣の避難者が一時的に集合する、一時集合場所など、避難場所の所在は、地域住民はもとより、付近に通勤通学する方々にも十分に周知されていなければなりません。現在、どのような周知方法をとっているのか、お伺いいたします。
 避難場所などを周知するのには、避難場所を知らせる標識の設置も効果的方法と考えます。都では、計画的に標識設置を進めてきたと聞いていますが、余り目立っておりません。特に、各区市町村が設置する一時集合場所などについては、よく知られていないようであります。
 その周知促進を図っていくためには、例えば、よく見かける広告つきの消火栓標識のように、避難場所などを示す標識に広告をつけることを認めるのも、有効な方策と考えます。各区市町村から、こうした取り扱いについて要望があった場合にはどう対応されるのか、お伺いいたします。
 次に、痴呆性高齢者対策についてお伺いいたします。
 急速な高齢化の進展に伴い、痴呆性高齢者も増加の一途をたどっております。都の推計では、現在その数約七万五千人、これが、十五年後の平成二十七年には、現在の一・六倍の十一万九千人に達すると見込まれています。加えて、その重症化も進んでいます。支える家族の負担は大変なものがあります。総合的な都としての対策が求められる状況にあります。
 そこでお伺いいたします。都においては、こうした痴呆性高齢者、とりわけ重度の痴呆性高齢者に対してどのような対策を講じていくのか、基本認識も含めてお伺いいたします。
 痴呆性高齢者対策では、医療と福祉が連携した対応が重要であり、そうした観点からの相談、診断などのネットワークシステムの構築や、医療基盤の整備などの対策が必要ですが、現状ではそれは十分確立されておりません。
 こうしたいわば未開拓の福祉、医療が連携した施策を、モデル的、先駆的に実施していこうとする意欲的な試みとして、高齢者福祉・医療の複合施設を整備していると聞いていますが、そこではどのような施策を実施し、何を目指しているのか、また、現在の施設整備の進捗状況、開設の見通しなどはどうなっているのかについてお伺いいたします。
 次に、水道問題についてお伺いいたします。
 近代水道百年を経た東京の水道は、この間、関係者の努力によりまして、最も重要なライフラインとして首都東京の都市活動を支えるとともに、都民生活を守り続けてきました。
 東京の水道は、これまで、東京の発展に伴う水需要の増大に対応し、水源の確保や施設の整備拡充に努めてきましたが、今後の東京のありようを踏まえて、これからの新しい世紀に向けた水道の基本とは何なのか、まず、この点についてお伺いいたします。
 ところで、WHO、すなわち、世界保健機関のガイドラインによれば、鉛の摂取量が一定量を超えた場合には、体内に蓄積し、人体へのさまざまな影響があるとされております。具体的には、急性の場合の兆候として、筋肉の衰えとか幻覚、記憶の喪失などがあります。慢性の場合の兆候としては、疲労、不眠、関節痛及び胃腸障害などがあるとされております。
 一方、厚生省の検討会報告によれば、現在までに、鉛製の給水管による健康被害が報告されていないこと、さらには、モニタリング調査においても、血液中の鉛濃度は、日本において極めて低く維持されていることなどを考慮すると、現状では、健康被害をもたらさない状況であります。しかしながら、将来にわたり、リスクは極力避けるべきだ、このように指摘しております。
 また、人体へは、大気、飲料水、食物、ほこりなどから摂取され、人が取り込む鉛の八〇%以上が、食物やほこりの摂取に起因しているとされております。
 したがって、飲料水や大気などからの摂取はわずかとされておりますが、健康への影響が指摘されている以上、水道水の問題について触れざるを得ないわけでございます。
 現在では、鉛製の水道管を新規に使用することはできませんが、かつては、各家庭に引き込む給水管は、ほかにかわる材質のものがなく、施工も容易ということで、すべて鉛製であったと聞いております。
 その後、公道部分については、漏水防止対策の一環として、ステンレス鋼管への取りかえなどを進めてきたことにより、かなり改善されたと聞いております。しかし一方では、宅地内の給水管については、今でも多く残っているのではないでしょうか。
 水道水の鉛問題は、都議会において、これまで議論されてきませんでした。そこで、この問題を取り上げ、これまでの経過や現状、あるいは、国の動向はどのような状況なのか、これに対して都はどのように対応していくのか、こういった点を明らかにしていく必要があります。
 こうした中で、事実経過を明らかにし、都民の安心と信頼を得ていくことが、私どもの重要な役割ではないかと思うわけであります。
 そこで、具体的に伺いますが、鉛製の給水管は、これまで、どのような経過で使用されてきたのか、お伺いいたします。
 また、鉛の蓄積といった特性から、保育園や幼稚園など、乳幼児関連施設での影響が懸念されますが、こうした施設や一般家庭も含め、鉛製の給水管は、現在、どの程度使用されているのか、お伺いいたします。
 鉛の摂取と人体への影響は、食料品などとの関係が多くあり、水道水だけで判断すべきでないといった問題はありますが、水道水の安全性は、厚生省が定める水質基準がよりどころになっているわけであります。
 そこでお伺いしますが、鉛に関する水質基準は、定期的な検査の中で、現在クリアしているのかどうか、お伺いいたします。
 また、鉛に関する水質基準を強化する動きがある、このように聞き及んでおりますが、どのような状況なのか、お伺いいたします。
 これまでに、公道部分の給水管の多くはステンレス化されてきましたが、その工事方法は、経年配水管の更新に合わせて行う方式であることから、鉛製給水管の解消は、十年以上かかってしまうのではないかと思います。また、これをペースアップしていくためには、多額の事業費も必要になると思います。
 しかし、都民の信頼を引き続き得ていくためには、水質基準の改正動向を踏まえ、公道部分のステンレス化を早急に進めていくべ
きであると考えます。ステンレス化に要す
る期間や、事業費の財源確保を含めた、具体的な取り組み方針についてお伺いいたしま
す。
 厚生省は、全国の自治体に対して、給水管にかかわる衛生対策について通知しております。この通知の中で、酸性かアルカリ性かを示すpHの改善として、水道水のpHが低いほど鉛が溶け出すことから、pHの低い水道にあっては、その改善に努めることとされております。
 また、広報活動として、鉛の溶け出しが問題になるのは、長時間滞留した場合の使い始めの水であることから、その水を飲料水以外の用途に用いることが望ましく、その旨の広報活動を行うこととされております。
 そこでお伺いしますが、厚生省が通知した、pHの改善、広報活動の実施について、どのように対応しているのか、その状況についてお伺いいたします。
 次に、給水管についてお伺いいたします。
 給水管は私有財産であり、特に宅地内については、都民みずから管理していかなければならないことは、十分承知しております。したがって、宅地内の給水管を取りかえる費用は、都民が負担しなければなりません。
 ところで、都民が負担する額は一件幾らで、また、全体で幾らぐらいになるのかをお伺いいたします。
 都民の健康を守るためには、鉛製給水管について、正しい理解のもとに適切な対応が図れるような環境づくりが極めて重要であると考えます。
 水道事業は、地域の実情に応じた事業展開が必要であり、原則として市町村の事務とされております。このため、給水管の使用経過や鉛製給水管の残存状況については、全国一律ではないかもしれません。
 先ごろ、財団法人水道技術研究センターがまとめた、鉛製給水管の状況に関するアンケート調査の結果によると、給水人口五万人以上の水道事業体では、鉛製給水管を使用しているのは三千五百八十万戸、鉛製給水管の総延長は二万七千キロメートルと推定されております。また、布設がえするための費用は一兆三千億円程度に達する見込みだといわれております。
 このように、この鉛問題は、東京だけに限った問題ではなく、国や他の自治体と連携した取り組みも必要であります。したがって、こうした観点に立って、都が誘導していく仕組みをつくっていくべきではないかと思います。
 例えば、都民に対する情報提供を的確に行うためにはどうすべきか、あるいは、都民負担を軽減するための財政支援策ができないか、こういった幅広い視点での検討が必要だと考えますが、その見解をお伺いいたします。
 事業を拡張するための投資などは、水需要の増加に伴う水道料金の増収で回収していくことができるわけですが、しかし、これまで取り上げた鉛の問題への対応は、事業区域の拡張と異なり、料金の増収には結びつきません。であるからといって、十分な対応がなされなければ、都民の安心を得ていくことや、都民の安全を確保していくことは決してできません。
 そこで、今後とも、量はもとより、質の高い給水サービスを提供していくためには、より効率性を重視した経営が求められると思いますが、今後の水道経営の基本的な考えをお伺いいたします。
 最後に、経営の効率化に関連して、知事にお伺いいたします。
 経営主体を民間にゆだねるいわゆる民営化は、旧国鉄や電電公社などに導入され、経営の抜本的な立て直し、あるいは、国際競争力の向上などに大きく貢献しております。
 一方、海外の水道事業では、民営化が進み、その背景は、財政破綻の解消、経営の効率化、世界銀行の融資条件など、さまざまでございます。
 都の水道事業は、民間活力を積極的に導入するとともに、都民サービスの向上に努めてきたことは、一定の評価を惜しみません。
 しかしながら、一層の経営効率の向上を目指していくためには、水道事業の民営化も重要な検討課題の一つではないかと思うわけでございます。
 こうした大胆な見直しには、さまざまな制約があることから、法令改正を含めた条件整備が必要であります。一朝一夕になせるものではありませんが、水道事業の民営化について、知事のご所見をお伺いいたします。
 以上で、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 野田和男議員の一般質問にお答えいたします。
 新しい世紀に向けた今後の水道の基本についてでございますが、実は、つい先日も、日本からの呼びかけで、各国から専門家が集まりまして、世界全体の水について考える東京クラブが発足いたしました。世界の水事情は、慢性的な水不足が深刻化しておりまして、聞くところ、大体二十五億人が不衛生な水で生活しているようであります。
 一方、日本の水道は、九六%まで普及いたしました。特に東京の水道は、最も重要なライフラインとして、首都東京の都市活動及び都民生活を支え続けるなど、世界で有数な着実な活動をしていると思います。
 今後も、安全でおいしい水を、安定的に、できる限り安い料金で供給することが基本的な問題だと思います。
 二十一世紀の東京が目指すべき将来像などを踏まえて、水道の水準を一層向上していかなくてはならないと心得ております。
 次いで、水道事業の民営化についてでありますが、都の水道事業は、不断の企業努力を行っておりまして、部分的にも、PFIを国内で初めて導入するなど、非常に効率的な経営に努力をしております。
 世界的に眺めますと、水道事業の民営化はかなりあちこちで進んでおりますが、ただいまご指摘のように、いろいろ法令を整備しませんと、ままならぬ問題もあります。国の規制や水に関する権限が、ばらばらに各省庁に分散していまして、また、税の制度も含めて、解決すべき問題、民営化というもののために前提として解決すべき問題がたくさんございます。
 今後とも、民間活力の一層の活用、新しい経営手法の導入など、経営効率の向上に努めるとともに、民営化も視野に入れた将来のあるべき経営形態について、総合的な視点に立って幅広く検討していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) 防災対策に関する二問についてお答えいたします。
 まず、避難場所や一時集合場所の周知についてでございますが、震災時におきます住民の避難誘導は、各区市町村が中心となりまして、その地域防災計画に基づき実施することとなっております。
 住民の避難は、発災後、まず一時集合場所に避難し、その後の災害の状況に応じて、集団で避難場所に避難するという二段階の態勢となっております。住民への周知は、避難誘導に混乱が生じないように、区市町村が誘導標識の設置、防災マップや防災読本の配布、防災訓練の実施などを通じて行っているところでございます。
 一方、都では、震災予防条例によりまして、区部におきまして避難場所を指定しております。避難場所及びその周辺におきまして、避難道路沿いに避難標識を設置し、普及啓発にも努めているところでございます。
 次に、広告つき避難誘導標識の設置についてでございますが、道路上におきます広告つきの標識の設置は、現在、交通安全などの見地から、消火栓標識など既に認められている標識以外は、道路法や屋外広告物条例による許可の対象となっておりません。
 今後、ご指摘のように、区市町村から具体的な要望があった場合には、その設置の可能性について検討する必要があると考えておりまして、道路管理者等、関係機関と十分協議しながら対応してまいりたいと思っております。
   〔福祉局長高齢者施策推進室長兼務前川燿男君登壇〕

○福祉局長高齢者施策推進室長兼務(前川燿男君) 痴呆性高齢者対策についてお答えいたします。
 まず、基本的な考え方でございますが、痴呆性高齢者につきましては、徘徊などの行動異常が見られることから、家族にとってはもちろんですが、施設入所の場合でも、その介護は深刻な問題となっております。
 痴呆性高齢者対策は重要な課題であり、都として、今後とも、グループホームなどの施設整備、専門的人材の養成、権利擁護のための仕組みづくりなどを総合的に実施してまいります。
 特に、重度の痴呆性高齢者の場合には、福祉と医療の連携した取り組みが必要であり、現在、そのモデルとなる高齢者福祉・医療の複合施設を建設しているところでございます。
 次に、高齢者福祉・医療の複合施設についてでございますが、この施設は、病院、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設が、地域の医療機関、施設などと連携して、重度の痴呆性高齢者を受け入れ、一貫した専門的医療やケアを行っていくものでございます。また、これまで対応の難しかった身体合併症に対する医療や救急医療なども行うものでございます。
 こうした取り組みを通じて、痴呆性高齢者への福祉・医療対策をモデル的、先駆的に展開する拠点となることを目指しております。
 進捗状況でございますが、病院につきましては、既に工事に着手をしており、平成十四年度当初には開設する予定でございます。また、特別養護老人ホームと介護老人保健施設につきましては、それぞれ平成十四年度及び十五年度に開設する予定となっております。
   〔水道局長赤川正和君登壇〕

○水道局長(赤川正和君) 七点のご質問にお答えいたします。
 初めに、鉛製給水管の使用経過などについてでありますが、鉛製給水管は、近代水道が創設された時代から全国的にも広く使用されてきましたが、都では、漏水防止対策の一環として、昭和五十五年から道路部分のステンレス化を進めてまいりました。この結果、平成十一年度末のステンレス化率は、八八%まで普及しております。
 一方、宅地内は、昭和三十年ごろから、硬質塩化ビニール管の普及などに伴い、使用範囲を順次縮小し、平成七年から新規の使用を全面的に禁止いたしました。
 また、鉛製給水管の使用件数については、宅地内の大部分で使用されているものが約二十万件あり、一部の使用も含めると約百五十万件と推定されております。
 次に、鉛に関する水質基準の適合状況と基準の改定動向についてでありますが、水道局では、公園などの蛇口におきまして定期的な水質検査を実施しておりますが、いずれも現行の水質基準にすべて適合しております。
 また、平成四年十二月の厚生省通知では、水道水中の鉛濃度の一層の低減化を推進するため、おおむね十年後の長期目標として、基準値の改定が示されております。
 次に、今後のステンレス化の取り組み方針についてでありますが、先生ご提案の公道部分の早急なステンレス化は、少なくとも、向こう三年間の工事期間と四百億円を超える事業費が必要であります。
 このため、水質基準の改正動向を踏まえ、施工方法の工夫、事業の優先順位の見直しなどにより、鉛製給水管の早期解消に向けて最大限努力してまいります。
 次に、pHの改善と広報活動の実施についてでありますが、都の水道水のpHについては、決して低い値ではありませんが、さらに鉛溶出の改善に向け、引き続きpHに関する調査検討を行ってまいります。
 また、鉛に関する広報活動については、都民向けの「水道ニュース」や、本年から実施している水道フレッシュ診断において全戸に配布する水道水読本などによって、念のため、使い始めの水道水を飲料水以外で使用するようPRしているところであり、今後とも、水の使われ方に応じた、きめ細かな都民PRに努めてまいります。
 次に、宅地内の給水管の取りかえ費用についてでありますが、宅地内の給水管がすべて鉛製であった場合、取りかえに要する標準工事費は、一件当たり約十五万円であります。
 また、鉛製給水管が一部でも使用されているものを含めた取りかえ費用の総額は、少なくとも五百億円以上と推定されます。
 次に、都民に対する情報提供と財政支援策の創設についてでありますが、鉛の溶出抑制に関する調査や実験結果の解析を引き続き実施するとともに、宅地内を含めた鉛製給水管の使用状況について、今年度中にデータベース化してまいります。今後、これらを最大限活用し、的確かつ迅速な情報提供に努めてまいります。
 また、財政支援策の創設については、全国的な取り組みが必要なことから、日本水道協会や他都市と連携し、国に対して強力な働きかけを行ってまいります。
 最後に、今後の水道経営の基本的な考えについてでありますが、ご指摘のとおり、鉛製給水管を早期に解消していくためには、より効率性を重視した経営が求められます。
 このため、本年一月に策定した水道事業経営プランに基づき、新しい経営手法を積極的に導入していくとともに、徹底した企業努力を行うなど一層の効率経営を確保し、今後とも、量はもとより質の高い給水サービスの提供に最大限努力してまいります。

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