平成十二年東京都議会会議録第十二号

   午後三時七分開議

○議長(渋谷守生君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百四番村松みえ子さん。
   〔百四番村松みえ子君登壇〕

○百四番(村松みえ子君) 私は、日本共産党都議団を代表して、石原知事に質問いたします。
 初めに、大規模な噴火災害に遭われ、島外への避難を余儀なくされた三宅島島民を初め、地震災害に遭われた伊豆諸島の皆さんに、心からお見舞い申し上げます。
 また、有毒な火山ガスの中で島を守られている方や、地震に脅かされながら安全確保と災害復旧に携われている方々にも、心から敬意を表するものです。
 三宅島では、六月に雄山が噴火し、新島や神津島などで地震が激しくなって以来、既に三カ月になろうとしています。
 我が党は、数次にわたる現地調査団を派遣すると同時に、三宅島島民の全島避難後は、分散している避難先を訪ね、ふなれな地で不自由な生活をされている皆さんの声を直接聞いてきました。今後の生活や仕事のことなど、さまざまな要望が寄せられ、問題が山積しています。私は、解決すべき主なものに絞って、知事に質問いたします。
 まず、避難生活を余儀なくされている方々への支援の問題です。
 知事は、所信表明で、可能な限りの対策を講じているといいましたが、実態は、とてもそのような状況ではありません。
 その一つが生活資金の問題です。避難されている方々がこもごも出された、島では畑でとれる野菜でも暮らせたが、ここでは何でも買わなくてはならない、という言葉に示されているように、島の暮らしからは考えられないほどに、避難先での生活にお金がかかるということです。にもかかわらず、都は、十万円の生活資金の貸し付けを行っているだけです。貸し付けではなく、公的な災害給付を行ってほしい、これが圧倒的な皆さんの声です。
 知事、島民の避難生活を支援するために、光熱水費を免除するとともに、当面の生活資金を直ちに支給すること、また、三宅高校の授業料は全額免除し、親の経済的苦境から就学を断念することのないように、支援することが必要です。
 さらに、避難指示の前に自主避難された島の方々は、生活必需品を自費で購入せざるを得ませんでした。この方たちに購入費を補てんする必要があると考えますが、あわせて答弁を求めます。
 災害で収入を断たれながら、多くの人が、貯金を取り崩して生活費に充てていますが、そうした事情に関係なく、口座からどんどんと引き落とされているのが、借金の返済金です。
 三宅島では、十七年前の噴火のときに、生活や営業の再建資金として、公的機関や民間金融から融資を受け、今も返済の途上の方がたくさんいるのです。その上に今回の災害です。生活のめどが立つまで、公的制度融資の貸付金の返済を一括猶予すべきです。
 また、住宅ローンその他の民間からの融資についても、都が返済の猶予を金融機関に働きかけることを求めるものですが、所見を伺います。
 島の人々は、たとえ避難先の一時的な生活であっても、みずから働いて得た収入で生活する意欲を持っています。しかし、現実には、働き盛りの世代でも、仕事探しに大変な苦労をしています。人口の三割以上を占める高齢の方々はさらに困難で、島では、畑仕事や海での漁、土木工事など現役で働いていたのに、東京では、年齢を理由に職を断られると、実情を訴えています。
 避難が長期にわたることが予想される中で、就労の要求はますます切実です。避難住民の雇用を確保するために、国の緊急地域雇用特別基金事業を利用した都の雇用対策がとられていますが、事業が限られており、極めて不十分です。都独自の時限的な緊急失業対策として位置づけ、業種と採用枠を拡大すべきです。
 また、区市町村や民間企業への働きかけも行われていますが、より雇用を促進するために、都が助成を行うなどの措置が必要だと考えますが、いかがでしょうか。
 避難した住民が、都内各地や隣の県に点在しているので、親戚や知り合いとの交流ができず、被災者同士がお互いを励まし合うこともできません。せめて知り合いの人と連絡がとれるようにしてほしいという要求も強く出されています。
 各区市町村には名簿が届けられているようですが、村議会の議員らが求めても、都から教えてはならないといわれていると、断られたとのことです。三宅村の住民同士の交流を保つことを、都がなぜ阻害するのでしょうか。このような態度は直ちに改め、避難された方々が連絡をとり合えるように、避難先名簿をつくり、避難者に配布すべきではありませんか。
 また、村民同士の行き来を保障するために、都として交通費を補助することや、子どもたちのいる秋川高校と避難先を結ぶバスを配備することを求めるものです。所見を伺います。
 島の復旧、復興へ向けた取り組みも重要です。
 三宅島の噴火災害のほかにも、群発する大地震によって、新島、式根島、利島、神津島、御蔵島では、個人の住宅や公共施設が壊れ、生活道路が寸断され、がけ崩れなどによって農地や漁場が破壊されるなど、大きな被害をこうむっています。地震被害のなかった大島、八丈島も、観光客が激減しています。これらの島々に都が特別の支援を行うべきです。都道の復旧はもちろんのこと、村道や農地などの復旧、観光事業や農漁業の再生など、島の復興全般について、財政力が疲弊し切っている村任せにするのではなく、都が積極的に受けて立つことが必要ではありませんか。答弁を求めます。
 今回の災害で破壊された生活基盤を再建することは、個々人の努力の限界を超えたものです。ところが、我が国では、個人の自助努力が原則として、個人の災害被害への補償を、政府がかたくなに拒否し続けています。
 知事、個人への補償は、既に世界の流れになっています。イタリアのアッシジ地震や、ロサンゼルス、台湾の大地震でも、個人補償が行われています。日本でも、雲仙普賢岳が噴火した際、長崎県は、国に実情を強く訴え、県費だけでなく、国費も投入させて基金をつくり、寄せられた義援金を活用しながら、被災者への生活支援金、営業支援金の支給、高校の授業料免除など、各種の助成事業を実施しました。有珠山の噴火災害でも、生活資金給付の制度が実現しています。
 私は、こうした経験に学んで、知事が率先して国に働きかけ、個人補償を実現させるとともに、それにとどまらず、都の旗振りで基金をつくるなど、個人補償の仕組みづくりに直ちに着手することも急がれると考えますが、所見を伺います。
 さて、二十世紀も三カ月を残すだけとなり、私たちは、新しい世紀の門口に立っています。しかし、多くの都民は、未曾有の不況とリストラ、国政、都政による、福祉、社会保障の相次ぐ後退の中で、新しい世紀に希望を持てる状況にはありません。
 とりわけ高齢者の方々は、介護保険の重い利用料負担、十月から始まる保険料徴収に加えて、石原都政が推進した、かつてどの都政もできなかったような福祉切り下げ、すなわち、シルバーパスの全面有料化、老人福祉手当とマル福の廃止に向けた削減などが次々押し寄せ、本当に厳しい秋を迎えています。
 障害者の方々のところには、障害者医療費助成の所得制限強化による制度消滅通知という書類が来て、驚きと不安の声が広がっています。
 石原知事、今、東京の福祉と都民生活の現状がどういう事態になっているのか、直視すべきです。
 我が党は、その足がかりとして、特別養護老人ホームの状況が、介護保険と、都独自に職員配置等をふやす、いわゆる都加算事業などの廃止により、どうなっているのか、調査を行いました。都内三百カ所の施設のうち、過半数の百五十九施設から回答をいただくことができました。その結果、介護保険で施設運営が大変厳しくなったとの回答が六〇%に及び、どちらかといえば厳しくなったを合わせると、実に八八%が、厳しくなったと回答しています。また、都加算事業廃止の影響について回答を寄せた百三十一施設のうち、七九%が、影響は大きいと回答しています。
 重大な問題は、こうした施設運営の厳しさが、職員配置の削減や利用者サービスの低下につながっていることです。全体の六五%が常勤職員を減らし、非常勤に切りかえています。レクリエーションの削減やバス旅行の中止を初め、施設での生活を豊かなものにするために行われてきたサークル活動や誕生会など、行事の見直しをした施設は五六%に上ります。食事の質が落ちたとの声もありました。実に六〇%以上の施設が、介護保険で利用者サービスは厳しくなったと回答しています。大変よくなったはゼロ、どちらかといえばよくなったは、わずか九施設、六%にすぎません。
 知事、いかがでしょうか。介護保険が始まるからとの理由で、都加算事業と、職員給与を保障する公私格差是正事業を廃止しましたが、利用者サービスが後退した特別養護老人ホームの現実をどう受けとめますか。
 多くの施設から、サービスの質を維持していくために、都加算、公私格差是正事業を復活させてほしい、都加算事業などにかわって創設された経営支援事業は、三年後見直しでなく、期限なく継続し、充実してほしいとの声が寄せられました。この切実な声にこたえ、補助を拡充すべきだと考えますが、見解を伺います。
 今回の調査で、デイサービスが深刻な事態となっていることも、浮き彫りになりました。デイサービスは、介護保険を機に都の補助がなくなり、介護報酬のみによる運営が原則となっています。そのため、多くは大幅減収で、存続の危機に直面している、介護報酬だけでは続かないとの、悲鳴ともいえる声が寄せられています。約八割の施設が、減収を補うため定員をふやしており、利用者からは、息苦しく、楽しくなくなったなどの声も上がっています。この改善は急務です。国に対し、介護報酬の充実を要求することは当然ですが、同時に、都として直ちに、デイサービスへの経営支援事業を創設すべきです。お答えください。
 介護保険と都の福祉切り下げによる深刻な影響は、介護保険の利用料、保険料負担と、都の老人福祉手当、マル福の削減などによってもたらされています。寝たきりのお年寄りを介護している方から、私はこんな訴えを聞きました。老人福祉手当があるから、ようやく介護保険の利用料が払えたのに、ことしからそれが四分の一減らされ、来年、再来年と減らされて消えていくと思うと、一体夫の介護の利用料はどこから出せばいいのか、先が真っ暗になってしまう。また、ことし六十五歳になって、糖尿病の治療費の負担が軽くなると思っていたのに、マル福があと二年も待たないともらえないとわかって、本当にがっかりしたという声も聞きました。その上、十月から介護保険料の負担が始まるのです。
 介護保険が始まって半年がたち、お金がない人はサービスが利用できず、家族介護は軽減されないという、深刻な実態が明らかになってきました。その中で、例えば石川県七塚町は、低所得者の利用料軽減と同時に、四月に廃止した介護手当と介護見舞金の復活を決めました。一つの町の経験ではありますが、自治体としての見識を示したものと、私は思います。
 第二回定例会で、我が党は、介護保険の利用料負担が重いために、サービス利用を抑制せざるを得ない実態があることを指摘しました。その後、都が十二区市町を対象に調査を行い、介護保険で利用できる限度額の四九・五%のサービスしか実際は利用されていない結果となったことが明らかになりました。都内の介護事業者が、利用者約千人を対象に調べた結果は、四九・七%の利用で、ほぼ同様の数字が出ています。利用料負担の重さが、こうした実態の最大の要因の一つになっていると私は思うのですが、認識はいかがでしょうか。
 現状のまま、介護保険の負担軽減策が講じられることがなく、その上、老人福祉手当やマル福の段階的廃止、削減、高齢者も多く利用している障害者医療費助成の切り下げ、有料化が続くなら、本当に命を削るような事態が進行することは避けられません。
 したがって、第一に、介護保険の負担軽減策は急務です。この動きは既に全国各地に次々広がっており、東京でも、狛江市、武蔵野市などに続き、新たに武蔵村山市が、利用料減免の実施を決めました。また、大阪市は、低所得者の保険料軽減を市独自に行うことを既に決めており、東京都の市長会は、低所得者に対し、都独自の保険料減免措置を講ずることを都に要望しています。
 ところが、政府は、一定の所得層を対象として一律に保険料を免除することは、制度の趣旨に照らして適当ではないなどといって、自治体独自の措置に介入しようとしています。
 政府の地方自治に対する不当な干渉に対し抗議するとともに、都民の福祉を守る立場から、都独自の保険料減免制度を直ちに検討、実施することこそ求められています。
 また、利用料三%軽減の対象を、在宅サービス全体に広げ、新規利用者にも広げるよう、国を動かすこと、そのためにも、国に先駆けて都として独自の利用料軽減を実施することを強く求めますが、答弁を求めます。
 第二に、老人福祉手当、マル福、障害者医療費助成、障害者にかかわる手当は、高齢者、障害者が自立した生活をするための不可欠の支えとして、ますます役割が重要となっています。しかも、国会に、健康保険法、老人保健法の改悪案が提案されており、もしこれを許すなら、マル福も障害者医療費助成も自動的に定率一割負担になります。また、障害者医療費助成の所得制限で対象外となった人は、高額医療費が天井知らずとなり、いずれも重い負担増となります。
 老人福祉手当は、段階的廃止、削減をやめ、介護保険の欠陥を補える形で拡充すべきです。また、マル福、障害者医療費助成、さらには障害者関係の福祉手当は、もとどおりの制度に直ちに戻すよう求めます。それぞれお答え願います。
 知事は、繰り返し、都財政は赤字だ、ないそでは振れないなどといって、こうした福祉の切り捨てを強行しました。しかし、本当にお金がないのでしょうか。お金の使い方を切りかえれば、財政が厳しくとも、福祉を切り下げる必要は全くありません。私が今要求したことを実施することは可能だと考えます。
 その第一が、大型開発を中心とした投資型経費にメスを入れることです。実際に今年度の予算で見ると、投資的経費と、経常経費にもぐり込んでいる投資形経費を合わせると、まだ一兆円を超える規模のお金が投入されています。この金額は、今日のように公共事業が大手を振っていなかった八五年と比べても、まだ二倍以上の高い水準です。そして、その内容が、幹線道路や再開発、区画整理など、バブル時代の計画を引きずった開発が主流を占めていることも、指摘しなければなりません。
 首都高速関連街路や臨海関連街路、調布保谷線、府中所沢線などの幹線道路には八百十六億円、都が直接行う市街地再開発や区画整理などの投資的経費には七百七十三億円も投入されています。多くの幹線道路は、住環境を大規模に破壊するなど、住民の強い反対があります。区画整理は、従来のやり方が変えられ、事業費のほとんどを税金で賄うものとなり、再開発は、大手開発業者や悪質な地上げ業者が莫大な利益を受けるものが多数を占めているのが実態です。
 本来福祉や人件費などを中心とした経常的経費に紛れ込んでいる投資型経費は、首都高速道路公団への出資金、貸付金は百七十一億円、市街地再開発事業会計には二百二億円、都市開発資金会計には七十四億円など、今年度だけでも三千億円以上にも膨れ上がっています。本来これらは投資的経費として計上すべきものですが、なぜか経常的経費に計上され、福祉や人件費は削られても、これらの投資型経費は、この数年、金額はほとんど減らされていません。
 その一方で、公園や道路補修、住宅、教育施設など、都民生活に密着し、中小企業にとって役立つ生活密着型公共事業は、軒並み予算は削減されています。都営住宅のように新規建設がゼロになってしまったものもあります。十五年前と比べて、道路、街路などの事業は二・三倍に膨らんでいるにもかかわらず、住宅、福祉、教育の生活密着型の投資的経費はわずか三〇%ふえただけなのです。
 私たちは、大型公共事業はすべてだめという立場はとりません。しかし、首都高速道路公団への貸付金を自己資金で賄わせるとか、不急の区画整理や再開発は一時凍結する、住民の強い反対がある幹線道路計画を見直す、必要な事業であっても財政状況に見合った適正な事業執行を行う、こうしたことをやれば、支出を大幅に減らすことは十分に可能です。
 知事、公共事業のあり方を都民生活密着型に切りかえるとともに、大型公共事業に抜本的にメスを入れることが必要です。こうして投資的経費を半減させるなど、逆立ちした都財政運営を見直すことこそ緊急の課題であると考えるものですが、知事の見解を伺います。
 都財政を圧迫していることが明らかなのに、一向にメスが入れられない最大の問題が第三セクターです。昨年度の第三セクターの経営状況は、都が監理している二十四社のうち半分以上の十四社が累積の損失を計上し、その金額は千二百八十八億円にも上りました。そのうち国際貿易センターを除いた臨海関連の八社だけで、何と千二百五十二億円もの累積赤字を抱えています。国際貿易センターは累積損失を抱えていませんが、昨年度赤字を計上しています。同センターは、タイム二十四、ファッションタウンの二つの破綻した三セクとの合併を行うということで、百六十億円の借り入れを行っていますが、合併が不成立になった今日、その借金を返さないばかりか、それを原資とした株の投機に手を出して九億円の損失を生み出すという、驚くべき乱脈経営を行っていたことが明らかになりました。
 知事、行政改革というなら、財政立て直しのためにも、まず手をつけるべきは、これらの第三セクターの乱脈経営を正し、清算も含め、第三セクターを整理することだと思いますが、見解を求めます。
 さて、私は、石原知事が最近発表した、東京構想二〇〇〇中間のまとめ、都政改革ビジョンなど一連の文書によって、福祉の切り下げにとどまらず、都政が福祉から撤退していくといっても過言ではない方向に進もうとしていることを指摘しないわけにはいきません。この構想などでは、福祉を初めとする都民施策の分野は民間企業の市場原理にゆだね、採算に乗りにくい事業はNPOやボランティア活動に任せ、それでも足りないものは極力区市町村に任せて、都の役割をできる限り小さくするという方向が打ち出されているのです。それに加えて、自己負担によるサービス利用が強調されており、サービス提供は民間任せ、サービス利用はすべて有料で重い負担という介護保険型福祉を障害者福祉や保育の分野にまで徹底して広げていこうとするものにほかなりません。
 実際に、知事は、所信表明で、介護保険は今後本格化する構造改革の流れの先駆けとなるものだなどと述べています。先ほども、介護保険による問題点、介護保険の実施を理由にして都が推進した福祉切り下げの問題点の一端について指摘をしましたが、現実が、利用者本位とかサービスの選択の自由といわれてきたものとかけ離れていることは明白です。こうした介護保険型福祉を拡大し、都の福祉からの撤退路線を全体に拡大するようなことをしたら、東京の福祉は大変なことになってしまいます。知事は、このようなやり方を子どもや障害者の福祉に広げても問題がないと思っているのですか。答弁を求めます。
 既にその先取りともいえることが推し進められようとしています。今定例会に提案された精神障害者の都営交通乗車証条例は、議会を通った予算は無料制度となっているのに、千円の手数料徴収が盛り込まれています。これは、福祉は何でも有料、自己負担という東京構想の考え方を具体化したものといわねばなりません。関係者から、既に実施されている心身障害者と同様の無料乗車証とし、手数料なしで直ちに実施してほしいとの声が上がったのは当然です。
 また、いずれ心身障害者の乗車証まで有料化されるのではないかとの不安が広がっています。心身障害者の都営交通乗車証は無料制度として実施されており、大変喜ばれております。障害者福祉増進の観点から、この事業の意義について所見を伺います。
 私は、精神障害者の都営交通乗車証も、心身障害者の制度と同様、手数料なしの無料制度で十月から直ちに実施することを強く要求するものです。
 保育所の規制緩和で株式会社の参入に道を開き、同時に、新設の保育所は、社会福祉法人も含め、すべて職員配置と施設面積について都基準より低い国基準で設置できるようにしたことも、東京構想の具体化であり、重大な問題です。当面、既設の保育園は都基準とされていますが、長い間にはいずれ国基準の低い方へ、東京の保育水準が大きく低下していくことが心配されます。
 例えば看護婦、保健婦の配置がない、離乳食をつくる保障もない、さらには、ヨーロッパの国々に比べて保母の配置が数分の一といった、全く時代おくれの不十分な国基準を引き上げることこそ必要ではないですか。少なくとも当面、現行の都基準による東京の福祉水準を守り抜くよう求めるものです。見解を伺います。
 また、少子化対策として重要な乳幼児医療費助成制度は、対象年齢や所得制限の有無など、はっきりした多摩格差が生じており、拡充が急がれています。格差が生まれる原因は、二十三区と多摩地域の財政力の違いであり、格差解消のためには都制度の充実が不可欠です。そのためにも、対象年齢については、ことしから五歳未満となりましたが、引き続き就学前まで着実に拡充を図るとの姿勢を明確にすべきです。さらに、所得制限を大幅に緩和することなどを行う必要があると思いますが、答弁を求めます。
 さて、東京都は、福祉から大きく手を引いて、一体どんな仕事をやろうというのでしょうか。東京構想二〇〇〇は、世界都市の名のもとに、環状メガロポリス構造を提起して、東京圏に国や都の資金を集中的に投入して、大規模な開発を進めることを強調しています。どのような開発を進めるのか。具体的に示されているのは、臨海部開発や圏央道、外郭環状道路など、限られています。しかし、首都圏整備基本計画に示されている開発はもとより、青山副知事がゼネコン向けに東京におけるビジネスチャンスとして監修した「東京計画地図」などに示された百カ所以上の開発計画や幹線道路などが含まれていることは容易に推測されます。石原知事が最近視察した秋葉原を初め、丸の内・大手町、汐留、新橋虎ノ門間再開発など、今例示した都心部での再開発だけで百七十四ヘクタールも開発が計画され、二十三区全体で再開発を進める地域は四百五十一地区、一万数千ヘクタールに及んでいます。
 また、先日発表された東京ベイエリア21、すなわち臨海部再整備指針によれば、臨海部を東京再生の起爆剤と位置づけて、臨海副都心開発の開発継続を無責任に打ち出すだけでなく、開発面積を七千ヘクタールと、臨海副都心の十五倍以上に拡大し、臨海部全体で同時多発的な開発を進めることを打ち出しています。
 知事、国際的な金融都市、情報都市のうたい文句で出発した臨海副都心開発は、表面的なにぎわいとは裏腹に、今日では、民間企業の進出は土地利用のわずか二割にすぎず、東京都施設や第三セクターを含めても、土地利用は六割にとどまっています。このため、臨海開発事業会計は、これまでの累積欠損金が四千九百九十一億円に達するとともに、起債残高が五千百八十五億円にも上っています。これに二つの埋立会計からの借金三千五百八十億円、ビル経営の第三セクターの借金三千七百九十八億円などを合わせると、優に一兆二千億円を超える借金が既に生まれています。
 また、収入が、長期貸付土地賃貸料や権利金収入などを合わせても、毎年地代収入は百五十億円程度なのに対して、支出は開発者負担などで五百億円も発生しています。すなわち、毎日一億円ずつ赤字がふえ続けているのです。にもかかわらず、抜本的に見直して都財政負担の増大を抑えることもやらないで、新たな大型開発を臨海部全体で進める。そればかりか、今行き詰まっている東京全体の大型開発を推進していく。これはまさに大型開発に対する壮大な税金投入の道を開くものであり、破綻を無反省に拡大することにほかならないではありませんか。
 今、知事が行うべきことは、東京の大型開発を推進することではなく、その現状を都民の前に明らかにして、全面的に都民の判断を仰ぐことではありませんか。見解を求めます。
 これらの大型開発による影響は、巨額の都財政投入だけでなく、交通、住宅、都市基盤、地球環境など多面にわたることが予想されます。例えば、自動車交通については、汐留地区再開発だけで一日三万台と、青梅街道の交通量に匹敵する新たな交通量が発生します。臨海部の新たな開発地域だけで二十五万台もふえる計算になります。大型開発の無責任な推進が、交通渋滞や排ガス公害、ヒートアイランド化など、新たな都市公害を大きく激化させる要因になることは明白です。
 知事、これに対して、ニューヨークやロンドンなど世界の大都市は、環境や財政を守る立場から、行き過ぎた幹線道路建設を抑えたり、再開発を見直すなど、都市の成長を管理し、コントロールする方向に足を踏み出しています。このような世界の大都市の流れにこそ東京都が学ぶべきことがあるのではありませんか。見解を求めます。
 二十一世紀を目前にして、公共事業に五十兆円もつぎ込みながら、社会保障には二十兆円しか使わないという逆立ちした政治の転換が求められています。中でも焦眉の課題である公共事業の見直しについては、東京都が今こそ計画段階の事業や進行中の事業も含め、事業の必要性、採算性がどうか、環境への影響がどうかなど、十分な検討を行う、特に計画段階の評価、点検を重視すること、住民の参加を制度的に保障することを貫く立場で事業評価を行うことを基本に、以下の三つの見直しの方向を提案するものです。
 一つは、都市づくりについては、都の財政能力を無視した同時多発型を改めて、不要不急事業を見直すこと。
 二つ目は、貴重な自然を破壊する圏央道や有明北地区の埋め立て、オオタカの営巣地周辺の開発、自動車公害や都市型災害をもたらす大型開発などについては一時凍結するなどして、都民参加で再検討する。
 三つ目は、都市計画道路は、その多くが戦後の復興期から高度成長期にかけて東京が急速に都市化する中で計画されたものであり、今日では少なくない道路建設が住宅の追い出しや環境破壊などの元凶となっていることを踏まえ、少なくとも、計画後、事業化計画にも至っていない道路計画は直ちに凍結し、見直しを行うこと。事業化計画に入っている路線でも、未着手の路線や区間は凍結するなどです。
 知事、浪費とむだが指摘されているのは国だけではありません。都においても、公共事業における浪費とむだを徹底的になくすために、今私が提案したような仕組みが必要だと考えますが、見解を伺います。
 知事が策定を急いでいる東京構想二〇〇〇や都政改革ビジョンの方向を進めれば、都財政はさらに破綻するとともに、都民施策に大なたが振るわれることは明らかです。東京の都市問題が一層激化します。我が党は、知事の進めようとしているこれらの方向が都民の利益と相入れないものであることを厳しく指摘しておくものです。
 次に、二十一世紀に向けて都政が取り組むべき課題について何点か伺います。
 まず、東京の自然と緑を守り、二十一世紀に伝えていく問題です。
 東京の自然と緑は、急速な都市化と開発優先の政治のもとで、二十三区では面積の九割が市街化され、多摩地域でも農地や自然林などが相次いで失われています。開発は里山や谷戸などにも及び、オオタカに代表されるような貴重な生き物や植物が絶滅の危機にさらされています。そこで、希少動植物の保全や緑の回復について幾つかの提案を行いたいと思います。
 まず、生態系の頂点に立つオオタカや多摩地域だけに生息するオオムラサキなどの絶滅が危惧される動植物の保全についてです。
 既に広島県や熊本県などでは、独自の保護条例をつくるなどの先進的な取り組みが始められています。私どもが調査した広島県は、オオタカやツキノワグマなどの希少動植物の保護を目的とした独自の条例が制定され、市町村と協力した保護活動が取り組まれています。愛知県では、愛知万博会場でオオタカの生息が確認されたことから、県民の世論が万博委員会を動かし、大幅な会場縮小を実現しました。
 ところが、東京都は、全国に先駆けて、絶滅が危惧される希少動植物を調査したレッドデータブックを作成していながら、必要な保護、保全については有効な手だてがとられず、事実上野放しになっています。例えば、圏央道や川口リサーチパークの開発地域でオオタカの生息が確認されています。しかし、都は、営巣地は破壊しないから影響はないとして、開発を予定どおり進めようとしています。営巣地の周りだけ囲えば周りの緑は破壊してもよいとするやり方で、どうしてオオタカが守れるのでしょうか。
 希少動物を次の世代に引き継ぐことは、二十世紀を生きてきた私たちに課せられた責務です。私は、東京都が独自の希少動植物保護条例を制定し、保護すべき種の指定や、保護区の設置、個体の捕獲、採取、殺傷、譲り渡しの禁止など、具体的な保護の取り組みを始めることを提案するものです。
 また、レッドデータブックに基づく実態調査を、広く自然保護団体や専門家、都民の参加も呼びかけて、早急に実施することを求めるものですが、答弁を求めます。
 緑の回復、保全の取り組みも立ちおくれています。都市環境の指標の一つである公園面積は、知事が何かと比較するニューヨークと比べると、ニューヨークが行政面積の二六・六%の公園を有しているのに対して、東京二十三区ではわずか三・七%にすぎません。
 その上東京都は、財政再建推進プランのもとで、都内に五カ所あった緑の相談所や緑の相談員、保護樹林公有化資金貸付の廃止、公園予算の削減など、あからさまな緑行政からの撤退を進めています。
 都が先日発表した緑の東京計画は、ヒートアイランド化を課題として位置づける提案が行われましたが、これまでの緑化率にかわる行政指標とされる緑率では、河川や道路の植樹、ビルの屋上緑化までも含まれています。自然保護団体から、まるで数合わせ、公園整備を棚上げして、ビルの屋上緑化で済ませようとするものと批判が寄せられるのも当然です。これ以上の環境破壊をどう食いとめ、公園をふやすのか、このことにこそ東京都は全力を傾けるべきです。
 多摩地域では、まだ残されている丘陵地や里山などを開発から守ることが待ったなしです。日野市にある百草地区は、多摩丘陵に残された貴重な地域です。民間の百草園など、都民に親しまれており、日野市は百草地区緑のまちづくりプランを策定し、自然と文化財を守るための取り組みを始めています。
 私は、この地域が、都の自然公園の普通地域に指定されていながら、開発への有効な規制がないために、開発がどんどん進められていることを取り上げ、自然公園内であっても緑地保全地域の指定ができるよう、改善を繰り返し求めてきました。このほど出された自然保護審議会の最終答申は、自然公園の普通地域について、緑地保全地域として指定することで強い規制が行えるよう、自然保護条例を改正するよう提案したもので、実現に向けて貴重な一歩を踏み出したものと歓迎するものです。
 そこで、都が改正を予定している自然保護条例に、自然公園普通地域での緑地保全地域の指定などを具体的に盛り込むことを強く要求するものです。また、東京の緑を回復し、保全するための都の責務を改めて明らかにするとともに、緑地の確保や開発規制など、実効性のある条例にすることが求められていると思いますが、あわせて答弁を求めます。
 また、特に守るべき緑を所有している都民との間で、環境保全契約といったものを結び、固定資産税や相続税などの大幅軽減を行うことも有効と考えますが、見解を伺います。
 次に、子どもと教育の問題についてです。
 まず、広範な都民や教育関係者の共通の声となっている三十人学級の問題について伺います。
 アメリカのクリントン大統領が十八人学級に取り組んでいますが、少人数学級はいよいよ世界の趨勢となっています。我が国でも、昨年の日本教育学会で、二十五人前後を境にして教育効果は大きく変わると報告されています。子どもたちの勉強がわからないという最大の悩みを解決するために、当面、三十人学級の実現が急がれています。
 知事、学年ごとに、段階的に来年度から実施する方向で具体的な検討を開始してはどうですか。答弁を求めます。
 次に、都が進める教育行政と知事の教育観との関係について伺います。
 知事は、著書「『父』なくして国立たず」の中で、しごき、体罰、校則の効用を見直せと述べ、むちでたたくというのは手でたたくよりよいこと、しつけの効果として後にしこりを残さないで済むからと、しつけの手段としての体罰の有効性を説いています。さらに、知事は、しごきによって死者を出し、裁判で係争中の戸塚ヨットスクールを支援する会の会長を務めており、同スクールを、体罰によって成功した例として公然と賛美しています。
 こうした体罰などを肯定する知事の特異な教育観には、率直にいって驚かざるを得ません。体罰は、学校教育法でも明確に禁止されています。凶悪な犯罪を犯す青少年に、幼いときに親から体罰を受けた経験を持つ子どもが多いという総務庁の調査結果もあります。体罰の有害性は疑問の余地がありません。知事は、心の東京革命行動プランを発表しましたが、こうした特異な教育論が都の教育行政に持ち込まれるようなことがあってはならないと、強い危惧を覚えます。
 二十一世紀を前にして、子どもと教育の面でも大きな転換点を迎えている今、子どもたちのために、私たち大人が大切にしなければならないことは、体罰強化など時代の流れに逆行する方向ではなく、子どもたちを一人の人間、権利の主体として承認し、子どもの最善の利益を追求する、その立場に立って、一人一人の多様な個性を伸ばしていくという方向こそ求められていると考えますが、知事の答弁を求めます。
 この点で、子どもの権利条約を生かすことが大事だと考えます。我が国では、この条約を批准はしたものの、政府が消極的で、取り組みがおくれています。しかし、幾つかの自治体では、子どもの権利条例制定の作業を、子どもも参加し、意見を反映させていく形で進めており、川崎市では、今年度内に市としての条例を制定する方向です。また、青少年のための施設で、子どもたちの自治と自主性を尊重した運営方法を取り入れ、大きな成功をおさめる区や市が生まれています。
 知事、東京都も都としての子どもの権利条例を制定するとしていますが、作業は事実上進んでいません。今こそ、条例制定に向けて、子どもの参加を重視し、その意見も取り入れながら、都民参加で作業を開始すべきと思いますが、明快な答弁を求めるものです。
 最後に、知事の基本姿勢について、我が党の立場を表明します。
 知事は、就任以来、さまざまなメディアを通して、憲法否定発言を初め知事の特異な主張を繰り返しています。特にことしに入ってからは、知事としての公的な立場や権限を使って、それを都政に露骨に持ち込んでいます。
 例えば、知事は、一月の職員への訓示の中で、我が国はわけのわからない憲法を米国から押しつけられたと述べ、四月には、自衛隊の式典で、三国人、治安出動発言を行って、大問題になりました。八月には、都知事として初めて靖国神社公式参拝を行い、何がいけないのかと居直りましたが、これは、公人による靖国参拝が憲法のよって立つ政教分離原則に照らし、憲法二十条三項が禁止する宗教活動に該当する違法な行為という、既に確定された司法判断を踏みにじるものにほかなりません。
 さらに、九月三日の防災訓練は、あなたの、戦車、装甲車でまちを封鎖する訓練もしてもらいたいなどという発言を受けて、自衛隊のみが突出する、自治体の防災訓練としては極めて異常なものでした。
 また、最近の記者会見では、武器輸出の禁止、制限を決めた三原則をばかなルールと呼びましたが、これも憲法の平和原則への敵視というべきです。
 知事は、都知事選挙の際、こうした特異な主張を公約に掲げたわけではありません。にもかかわらず、知事になった途端、その地位を利用して、憲法に反する特異な主張を都政に持ち込むことは、許されるものではありません。また、憲法に反する特異な発言を繰り返すことと、憲法遵守義務を負う知事の立場とは絶対に両立しません。地方自治は、憲法を土台にして成り立つものであるからです。
 私はこのことを厳しく指摘して、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 村松みえ子議員の代表質問にお答えいたします。
 災害被害に対する個人補償についてでありますが、平成十年十一月から施行された被災者生活再建支援法により、被災者個人に対する支援制度が確立しており、都では、その基金に対して拠出もしております。
 なお、三宅村の適用可否については、被害状況の詳細を調査中であり、適用条件が整い次第、必要な措置を講じていきたいと思っております。
 また、被災者の住宅再建を目的とした共済制度の創設については、全国知事会等を通じて要望しているところであります。
 次いで、特別養護老人ホームの現状についてでありますが、介護保険制度の実施に伴い、措置制度を前提とした特別養護老人ホームに対する都加算及び公私格差是正の補助事業は、廃止いたしました。新たに、特養ホームが介護保険制度に円滑に移行できるよう、特別養護老人ホーム経営支援事業を実施しております。
 特養ホームにおいては、現在、経営支援事業の助成を受けながら、介護保険制度のもとでの経営の自立を目指し、利用者に対するサービスの維持向上と運営の充実について積極的に取り組んでいるところであります。
 高齢者、障害者の手当、医療助成制度の見直しについてでありますが、ご質問の見直しは、いずれも、昭和四十年代に骨格ができた都の福祉施策について、社会経済状況の変化や国の施策の充実などを踏まえ、経済給付的事業を見直し、新たな時代にふさわしい施策に再構築したもので、区市町村や関係団体、都民の声などを十分に考慮し、都議会での審議を経て決定いたしました。したがって、もとの制度に戻す考えはありません。
 投資的経費についてでありますが、財政構造改革を推進するためには、経常経費、投資的経費を問わず、都の行うすべての施策について聖域のない見直しを行う必要があります。投資的経費については、引き続き都の財政力で対応可能な範囲に抑制しつつ、東京における社会資本の整備に向け、限られた財源を重点的、効率的に配分していくつもりでございます。
 今後の福祉のあり方についてでありますが、これからは、行政が型にはまったサービスを提供するのではなくて、事業者が互いに競い合いながら、都民ニーズに応じた多様なサービスを提供し、都民はその中から主体的に選択し、利用していくことになります。行政が硬直しないためにも、いろいろな選択肢を提供することが、新しい行政の本質につながると思います。
 ことし四月に導入された介護保険制度は、こうした方向を目指しているという点で、時代の先駆けとなるものでもあります。
 子どもや障害者の分野におけるサービス提供の仕組みを検討するに当たっても、今述べた視点に立って、利用者本位の新しい福祉の実現を追求すべきものと考えております。
 都市基盤の整備についてでありますが、都における都市基盤整備については、これまでも、事業の緊急性や必要性を考慮しつつ、限られた財源を重点的、効率的に配分して進めてまいりました。今後とも、厳しい財政状況を踏まえ、これらの事業についても聖域のない見直しを行うとともに、投資の重点化を図り、都市基盤の整備を着実に進めていくことが必要であると思います。
 都民の判断でありますけれども、間もなく選挙もやってまいりますから、そこで大いにそれを論じられたらいいんじゃないんでしょうか。
 次に、公共事業についてでありますが、共産党は、何かこのごろ本質的に変革を余儀なくされているようでありますけれども、公共事業については相変わらず硬直したお考え方のようで、いろいろ公共事業についての議論があることは承知しておりますけれども、東京における空港、鉄道、道路などの都市基盤施設は、次の世代に引き継ぐ財産となるものでもありまして、その着実な整備は、産業の活性化や国際競争力の向上を図るためにも、生活基盤の質を高める上でも、極めて重要であると思います。
 しかし、今日、都の財政は非常に厳しい状況下にあり、今後とも、限りのある財源を投資的効果の高い事業に重点的に配分し、その着実な整備に努めていきたいと思っております。
 希少動物の保護に関する条例の設置についてでありますが、東京における自然の保護と回復に関する条例は、総合的な条例として、保全地域における野生動物、植物保護対策についても規定しております。
 今回の東京都自然環境保全審議会の答申では、保護の種類や保護区の指定及び保護増殖事業などを条例に規定すべきとの提言がなされておりまして、この答申を踏まえ、絶滅のおそれのある野生動物、植物の保護など、対策の充実に向けて条例を改正していきたいと思っております。
 最後に、子どもの最善の利益の追求と多様な個性を伸ばしていくことについてでありますが、教育を通じて子どもたちの個性や創造性を伸長していくことは極めて重要でありますが、それと同時に、権利と義務、自由と責任について理解を深めさせることも極めて必要であります。
 子どもの教育は、学校だけでなくて、親や大人が責任を持って子どもの正義感や倫理観、耐久力、根性、思いやりの心をはぐくむ必要がございます。
 私の著書について、いろいろつまみ食いをされまして、勝手な解釈をされているようでありますけれども、人の本は、もう少し慎重に腰を据えて読まれたらいいと思う。
 ノーベル賞をもらった動物行動学のコンラッド・ローレンツは、体罰も含めて、子どものころに我慢も強いられることである肉体的な苦痛を遭わされることのなかった人間は、大人になって非常に不幸なことになるということをいっておりますが、私は至言だと思います。
 なお、その他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 三十人学級についてお答え申し上げます。
 文部省が本年八月に策定しました小中学校の第七次教職員定数改善計画では、教科等の特性に応じたきめ細かな指導に対する支援として、平成十三年度から五カ年で、総数二万二千五百人の教員定数を改善することが示されております。
 都教育委員会としましては、この計画の趣旨等を踏まえ、小人数授業の実施や教職員の弾力的な配置も含めまして、平成十三年度以降の学級編制や教職員配置について総合的に検討してまいります。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、三宅島災害にかかわる光熱水費の免除、生活資金の支給、高校授業料の就学支援についてのお尋ねでございますけれども、東京都は、これまで、島外避難した村民に対しまして、都営住宅等のあっせん、生活福祉資金の貸し付け、水道・下水道料金の納期限の延長及び就労相談など、多方面にわたる生活支援を実施するとともに、都立秋川高校に小中高生を受け入れるなど、就学支援に努めてきたところでございます。また、三宅高校の授業料につきましては、減免制度の適用要件、手続等につきまして、学校長を通じて保護者に通知いたしました。
 今後も、避難生活を続ける村民の生活に留意し、村と連携、協力して、必要な就学支援対策を図ってまいります。
 次に、自主避難した村民が購入した生活必需品の購入費の補てんについてのお尋ねでございますが、都は、島外避難した村民に対しては、自主避難した村民も含めて、申し出に応じて、寝具、衣類、台所用品及び電化製品等、さまざまな生活必需品の支援を行ってまいりました。
 お話しのような、避難した方々が自費で対処されたケースもあるかと思いますが、この費用を都が直接補てんすることについては考えておりません。
 今後の支援サービスの提供のあり方につきましては、村と協議の上、検討してまいります。
 次に、公的制度や民間融資の返済猶予についてでございますが、都は、これまで、被災した村民に対し、生活福祉資金、災害復旧資金等さまざまな生活及び産業支援に努めてまいりました。ご指摘の民間融資返済猶予の働きかけにつきましては、今後、関係機関や村とも協議し、必要に応じて検討してまいります。
 次に、避難者名簿の作成、配布等についてでございますが、避難者名簿につきましては、三宅村が現在その把握に努めているところであり、都は、都営住宅居住者の情報提供などの支援、協力を行っております。
 また、お話しの交通費補助等につきましては、総合的な支援策を検討する中で、三宅村とも協議していく内容だと考えております。
 次に、伊豆諸島の復興に対する都の取り組みについてでございますが、今般の噴火や地震災害により、伊豆諸島の多くの島々は甚大な被害を受け、いまだ災害が終息していない状況にございます。
 現在、都は、精力的に都道等の復旧や生活支援に当たっておりますが、あわせて、村道等、村の復旧施策につきましても支援していくことが必要であると考えております。
 さらに、農漁業、観光等の基幹産業や生活基盤の復興につきましては、今後、各村と十分協議いたしまして、連携を図りながら解決に取り組んでまいります。
 最後に、いわゆる第三セクタ-の改革についてでございますが、団体の改革は、何よりもまず当事者である団体みずからが危機意識を持って、主体的に取り組むべきものと考えております。
 今回の改革は、団体活用の原点に立ち返って抜本的な見直しを行うこととしております。そのため、本年二月に公表いたしました基本指針に基づき、各団体が経営改善計画を策定するとともに、都においても、団体の統廃合計画を含めた点検作業を行っております。この総点検結果につきましては、本年十一月に公表する予定でございます。
   〔労働経済局長浪越勝海君登壇〕

○労働経済局長(浪越勝海君) 避難島民の
方々に対する雇用についてのお尋ねでございますが、このたび、労働相談、仕事のあっせん、緊急的な雇用の創出の三つを柱とする緊急就労対策を講じ、既に民間や国、区市町村への求人依頼を行ったところでございます。
 現在、避難島民の方々に対して、個々に就業に関する情報の提供及び就労意向の調査を行っており、さらに、就職希望者と求人企業主が一堂に会した合同就職相談会を、この二十八日には多摩地域で、二十九日には区部において実施をいたします。
 また、今回特に、被災地域において休業を余儀なくされた農林漁業者や観光事業者などの方々も対象として、緊急地域雇用特別基金を活用し、公共施設の樹木の剪定など、就業の場の提供に努めてまいります。
 今後とも、事態の推移に合わせて、東京労働局を初め関係機関と連携し、避難島民の生活の安定に向けて、就業の促進に努めてまいります。
   〔福祉局長高齢者施策推進室長兼務前川燿男君登壇〕

○福祉局長高齢者施策推進室長兼務(前川燿男君) 十点にわたるご質問についてお答えをいたします。
 最初に、介護保険等についてでございます。
 まず、特別養護老人ホーム経営支援事業を拡充すべきとのお尋ねでございますが、特養ホーム経営支援事業は、民間の全施設に対し二回の実態調査を行うとともに、特養ホーム代表者と十分に協議をし、都議会の審議を経て創設したものであります。既に特養ホームからの申請をもとに助成を実施しており、今後とも、本事業の適正な実施に努めてまいります。
 次に、デイサービスについてでございます。
 デイサービスは、他の在宅サービスと同様に、介護報酬の中で運営していくものであります。そのため、都は、デイサービスが介護保険に円滑に移行できるようリニューアル事業を実施し、事業主体である区市町村や社会福祉法人を指導してまいりました。
 都としては、こうした制度の本旨とこれまでの経緯を踏まえ、区市町村と連携し、事業者への助言や指導などを行ってまいります。
 次に、介護保険の利用料負担についてであります。
 介護保険制度では、高齢者本人の心身の状況や希望などに適合した介護サービス計画を本人が同意した上で、サービスを提供することとされております。国の資料によれば、サービス利用量については、従来の約六割の利用者において増加をしており、また、提供されたサービス内容については、約八割の利用者がおおむね満足をしていると聞いております。
 したがって、現段階では、必要としているサービスを、利用料の負担が抑制しているとは考えておりません。
 次に、介護保険料の減免制度についてでございます。
 区市町村が地域の実情に応じて独自に実施する減免措置は、基本的にみずからの判断と責任において行うべきものと考えます。ただ、一定の所得階層を対象として一律に保険料を免除することは、すべての被保険者が保険料を負担し合って制度を運営するという介護保険法の趣旨に照らして、適当ではないと考えております。
 したがって、都としては、ご提案の都独自の対応については考えておりません。
 次に、利用料の軽減についてでございます。
 介護保険制度では、サービスを利用する人としない人との公平の観点から、かかった費用の一割を利用者が負担する仕組みとなっております。在宅サービスのうち、ホームヘルプサービスについては、利用者の多くがこれまで負担が無料であったことから、一割の負担を三%に軽減する特別対策がとられましたが、これはあくまでも激変緩和の観点に立った経過的措置であると考えております。
 したがって、都としては、ご提案のような国への要望や独自の取り組みは考えておりません。
 続いて、福祉施策についてでございます。
 まず、心身障害者に対する都営交通乗車証についてのお尋ねですが、この乗車証は、東京都交通局の規程により発行されていますが、心身障害者福祉の向上を目的とする身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法の趣旨を踏まえて設けられた全国制度の障害者運賃割引制度をもとに実施されているものでございます。
 次に、保育所の職員配置についてでございます。
 都としては、かねてから、保育所への入所待機児童の解消を図るため、低年齢児童の受け入れに関連した補助制度等の拡充を国に提案している次第でございます。
 次に、保育所に係る施策についてでございます。
 都としては、保育所のあり方について、区市町村の地域特性に応じた柔軟な対応を図り、低年齢を中心とした待機児童の解消や、多様な保育需要にこたえていくことが必要であると考えております。
 今後とも、実施主体である区市町村と連携しながら、保育施策の充実に努めてまいります。
 次に、乳幼児医療費助成制度についてでございますが、本制度は、少子化対策の一環として、平成十年十月に対象年齢を一歳拡大して四歳未満といたしましたが、本年十月には五歳未満とし、さらに一歳拡大することとしたところでございます。所得制限につきましては、負担の公平の観点から、一定の制限を設けることは必要であると考えております。
 最後に、子どもの権利条例についてでございます。
 子どもの権利擁護、権利保障をどうとらえ、どう進めていくかについては、多様な意見があり、慎重に考慮する必要があると考えております。これまで、外部の学識経験者の意見を聞くなど、さまざまな角度から検討してまいりましたが、今後とも、東京の子どもの置かれている状況を幅広い視点からとらえた上で、慎重に検討してまいりたいと存じます。
   〔都市計画局長山下保博君登壇〕

○都市計画局長(山下保博君) 東京の都市づくりを世界の大都市に学べとのことでございますが、情報化の著しい進展とともに、人や企業が国境を越えて都市を選ぶ時代を迎えて、世界の大都市では、既に十分整備された社会資本ストックを活用しながら、新しい発想で、さまざまな手法を取り入れて、魅力あふれた都市づくりに取り組んでいるところでございます。
 一方、東京におきましては、世界の大都市と比べまして基盤整備がおくれているため、交通渋滞などによる経済の高コスト構造を生み、国際的な魅力を低下させる原因となっております。
 このため、都は、環境との調和を図りながら、道路、公園などの都市基盤整備を行い、あわせて都市の再構築に取り組むことによって、活力と魅力にあふれた国際都市を目指すことこそ重要であるというふうに考えております。
   〔環境局長中野英則君登壇〕

○環境局長(中野英則君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、いわゆるレッドデータブックに基づく実態調査についてでありますが、平成十年三月に策定しました「東京都の保護上重要な野生生物種」、いわゆる東京都版レッドデータブックは、特に保護上重要な種を選定し、これらの種を地域別に、かつ、哺乳類や鳥類などの分類別に明らかにしたものであります。
 都は、絶滅の危機に瀕しており、その対応について特に緊急性の高い種でありますアカガシラカラスバトを対象に、今年度から専門家の意見を聞きながら実態調査などを進めてまいります。
 次に、東京における自然の保護と回復に関する条例の改正についてでありますが、都はこれまでも、現行条例において、区市町村と連携しながら自然の保護と回復に努めてまいりました。先般、東京都自然環境保全審議会から、自然公園普通地域内においても保全地域指定をすべきである、また、建設残土による埋立規制などの開発規制の強化、里山保全地域などの保全地域制度の拡充などを図るべきとの答申がありました。
 今後は、この答申の趣旨を踏まえた条例改正を行い、自然の保護と回復に一層努めてまいります。
 次に、緑地保全のための固定資産税や相続税などの軽減についてでありますが、固定資産税の軽減につきましては、都民への開放など一定の要件に該当する樹林地などについて実施しております。
 また、都指定の保全地域、自然公園の特別地域等に係る相続税につきましては、生産緑地並みの納税猶予制度について、国へ要請を行っているところであります。

○議長(渋谷守生君) この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後四時十七分休憩

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