平成十二年東京都議会会議録第十一号

平成十二年九月十九日(火曜日)
 出席議員(百二十名)
一番織田 拓郎君
二番中嶋 義雄君
三番羽曽部 力君
四番服部ゆくお君
五番真鍋よしゆき君
六番松原 忠義君
七番町田てるよし君
九番大西由紀子君
十一番林  知二君
十二番福士 敬子君
十三番山本  信君
十四番くぼた 光君
十六番木内 良明君
十七番藤井  一君
十八番東野 秀平君
十九番原   環君
二十番中西 一善君
二十一番田代ひろし君
二十二番川井しげお君
二十三番いなば真一君
二十四番近藤やよい君
二十六番藤田十四三君
二十七番大河原雅子君
二十九番土屋たかゆき君
三十番竹下 友康君
三十一番田中 智子君
三十二番浅川 修一君
三十三番清水ひで子君
三十四番吉田 信夫君
三十五番かち佳代子君
三十六番鈴木貫太郎君
三十七番森田 安孝君
三十八番谷口 卓三君
三十九番今井 悦豊君
四十一番高島なおき君
四十二番鈴木 一光君
四十三番小礒  明君
四十四番倉林 辰雄君
四十五番遠藤  衛君
四十六番野田 和男君
四十七番三原 將嗣君
四十八番樺山 卓司君
四十九番藤田 愛子君
五十番沢西きよお君
五十一番和田 宗春君
五十二番西条 庄治君
五十三番馬場 裕子君
五十四番藤岡 智明君
五十五番古館 和憲君
五十六番小竹ひろ子君
五十七番小松 恭子君
五十八番前沢 延浩君
五十九番大木田 守君
六十番曽雌 久義君
六十一番石川 芳昭君
六十二番白井 常信君
六十三番前島信次郎君
六十四番大西 英男君
六十五番田島 和明君
六十六番吉住  弘君
六十七番三宅 茂樹君
六十八番古賀 俊昭君
六十九番吉野 利明君
七十番比留間敏夫君
七十一番星野 篤功君
七十二番山本賢太郎君
七十三番松本 文明君
七十四番山崎  泰君
七十五番坂口こうじ君
七十六番田中  良君
七十七番寺山 智雄君
七十八番大山とも子君
七十九番曽根はじめ君
八十番たぞえ民夫君
八十一番松村 友昭君
八十二番丸茂 勇夫君
八十三番五十嵐 正君
八十四番石井 義修君
八十五番萩谷 勝彦君
八十六番桜井良之助君
八十七番田村 市郎君
八十八番花川与惣太君
八十九番新藤 義彦君
九十番野村 有信君
九十一番宮崎  章君
九十二番井口 秀男君
九十三番藤沢 志光君
九十四番立石 晴康君
九十五番清原錬太郎君
九十六番小山 敏雄君
九十八番藤川 隆則君
九十九番河合秀二郎君
百番尾崎 正一君
百一番東ひろたか君
百二番野村 友子君
百三番池田 梅夫君
百四番村松みえ子君
百五番植木こうじ君
百六番土持 正豊君
百七番中山 秀雄君
百八番橋本辰二郎君
百九番藤井 富雄君
百十番桜井  武君
百十一番白井  威君
百十二番山崎 孝明君
百十三番佐藤 裕彦君
百十四番川島 忠一君
百十五番矢部  一君
百十六番内田  茂君
百十七番三田 敏哉君
百十八番渋谷 守生君
百十九番田中 晃三君
百二十番奥山 則男君
百二十一番三浦 政勝君
百二十二番嶋田  実君
百二十三番小林 正則君
百二十四番西田ミヨ子君
百二十五番渡辺 康信君
百二十六番木村 陽治君
百二十七番秋田かくお君

 欠席議員(一名)
九十七番 大山 均君
 欠員
八番   十番   十五番
二十五番 二十八番 四十番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事青山やすし君
副知事浜渦 武生君
出納長佐々木克己君
教育長横山 洋吉君
政策報道室長安樂  進君
総務局長大関東支夫君
財務局長木内 征司君
警視総監野田  健君
主税局長大塚 俊郎君
生活文化局長高橋 信行君
都市計画局長山下 保博君
環境局長中野 英則君
福祉局長高齢者施策推進室長兼務前川 燿男君
衛生局長今村 皓一君
労働経済局長浪越 勝海君
住宅局長戸井 昌蔵君
消防総監池田 春雄君
建設局長古川 公毅君
港湾局長齋藤 哲哉君
交通局長寺内 広壽君
水道局長赤川 正和君
下水道局長横山 博一君
都立大学事務局長川崎 裕康君
多摩都市整備本部長田原 和道君
中央卸売市場長大矢  實君
選挙管理委員会事務局長南  靖武君
人事委員会事務局長中山 弘子君
地方労働委員会事務局長歩田 勲夫君
監査事務局長久保田康治君
収用委員会事務局長安間 謙臣君

九月十九日議事日程第一号
第一 第二百三十四号議案
  特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第二 第二百三十五号議案
  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三 第二百三十六号議案
  東京都非常勤職員の公務災害補償等に関する条例の一部を改正する条例
第四 第二百三十七号議案
  東京都都税条例の一部を改正する条例
第五 第二百三十八号議案
  東京都都税事務所設置条例及び東京都自動車税事務所設置条例の一部を改正する条例
第六 第二百三十九号議案
  東京都収入証紙条例の一部を改正する条例
第七 第二百四十号議案
  東京都青少年問題協議会条例の一部を改正する条例
第八 第二百四十一号議案
  東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第九 第二百四十二号議案
  東京都立学校の授業料等徴収条例の一部を改正する条例
第十 第二百四十三号議案
  東京都建築指導事務所設置条例の一部を改正する条例
第十一 第二百四十四号議案
  東京都建築安全条例の一部を改正する条例
第十二 第二百四十五号議案
  東京都都市計画局関係手数料条例の一部を改正する条例
第十三 第二百四十六号議案
  東京都環境基本条例の一部を改正する条例
第十四 第二百四十七号議案
  東京都廃棄物条例の一部を改正する条例
第十五 第二百四十八号議案
  東京都自動車排出窒素酸化物総量削減計画策定協議会条例等の一部を改正する条例
第十六 第二百四十九号議案
  東京都公害防止条例及び東京都環境事務所設置条例の一部を改正する条例
第十七 第二百五十号議案
  東京都社会福祉審議会条例等の一部を改正する条例
第十八 第二百五十一号議案
  東京都福祉のまちづくり条例の一部を改正する条例
第十九 第二百五十二号議案
  東京都児童相談所条例の一部を改正する条例
第二十 第二百五十三号議案
  東京都立老人医療センター条例等の一部を改正する条例
第二十一 第二百五十四号議案
  東京都精神障害者都営交通乗車証条例
第二十二 第二百五十五号議案
  墓地等の構造設備及び管理の基準等に関する条例の一部を改正する条例
第二十三 第二百五十六号議案
  食品衛生法施行条例等の一部を改正する条例
第二十四 第二百五十七号議案
  東京都結核診査協議会条例等の一部を改正する条例
第二十五 第二百五十八号議案
  東京都労働経済局関係手数料条例の一部を改正する条例
第二十六 第二百五十九号議案
  東京都経済事務所設置条例等の一部を改正する条例
第二十七 第二百六十号議案
  東京都営住宅条例の一部を改正する条例
第二十八 第二百六十一号議案
  東京都福祉住宅条例の一部を改正する条例
第二十九 第二百六十二号議案
  東京都地域特別賃貸住宅条例の一部を改正する条例
第三十 第二百六十三号議案
  東京都水防条例及び東京都公有土地水面使用料等徴収条例の一部を改正する条例
第三十一 第二百六十四号議案
  東京都地方公営企業の設置等に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第二百六十五号議案
  東京都給水条例の一部を改正する条例
第三十三 第二百六十六号議案
  東京都下水道条例の一部を改正する条例
第三十四 第二百六十七号議案
  性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例
第三十五 第二百六十八号議案
  警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第三十六 第二百六十九号議案
  火災予防条例の一部を改正する条例
第三十七 第二百七十号議案
  特別区の消防団員等の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第三十八 第二百七十一号議案
  都営住宅十二H―一〇二東(百人町四丁目)工事請負契約
第三十九 第二百七十二号議案
  都営住宅十二H―一〇三東(百人町四丁目)工事請負契約
第四十 第二百七十三号議案
  警視庁池上警察署庁舎改築工事請負契約
第四十一 第二百七十四号議案
  環状第八号線北町・若木トンネル(仮称)築造工事(十二・四―一)請負契約
第四十二 第二百七十五号議案
  平成十二年度東京港臨海道路中防側沈埋トンネル建設工事請負契約
第四十三 第二百七十六号議案
  東京都田無市及び同保谷市を廃し、その区域をもって西東京市を置くことについて
第四十四 第二百七十七号議案
  東京都水道事業の事務の委託の廃止及び委託について
第四十五 平成十一年度東京都公営企業各会計決算の認定について

議事日程第一号追加の一
第一 議員提出議案第十六号
  三宅島火山災害及び新島、式根島、神津島等伊豆諸島近海の地震災害に関する意見書
第二 東京都名誉都民の選定の同意について(一二財主議第三八一号)
第三 東京都名誉都民の選定の同意について(一二財主議第三八二号)

   午後一時一分開会・開議

○議長(渋谷守生君) ただいまから平成十二年第三回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(渋谷守生君) まず、議席の変更を行います。
 議席変更の申し出がありますので、会議規則第二条第三項の規定により、お手元配布の議席変更表のとおり、議席の一部を変更いたします。

○議長(渋谷守生君) 次に、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   十一番  林  知二君 及び
   六十四番 大西 英男君
を指名いたします。

○議長(渋谷守生君) この際、議会局の局部長に異動がありましたので、紹介いたしま
す。
 議会局長細渕清君、管理部長志村啓文君、調査部長小栗愼次郎君。
   〔局部長あいさつ〕

○議長(渋谷守生君) 以上で紹介を終わります。

○議長(渋谷守生君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(會田紳次君) 平成十二年九月十二日付東京都告示第千八十五号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案四十四件の送付がありました。
 次に、知事より、平成十二年第二回定例会の会議において同意を得た東京都副知事及び東京都教育委員会委員の任命について、発令したとの通知がありました。
 次に、知事及び東京都監査委員外三行政委員会より、先般の人事異動に伴う東京都議会説明員の変更及び説明員の委任変更について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき、それぞれ通知がありました。
 次に、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づき専決処分した訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告がありました。
 次に、監査委員より、例月出納検査の結果について報告がありました。
 また、同日付で、監査結果に基づき知事等が講じた措置に関する報告がありました。

○議長(渋谷守生君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 平成十二年第二回定例会に提出されました、大西由紀子さん、藤田十四三君、藤田愛子さん、和田宗春君及び松村友昭君の文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
   〔文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾に掲載〕

○議長(渋谷守生君) 次に、先般、副知事及び教育長に就任された方々をご紹介いたします。
 副知事浜渦武生君。
   〔副知事浜渦武生君登壇〕

○副知事(浜渦武生君) 平成十二年第二回定例会におきまして選任の同意をいただき、七月十三日、副知事を拝命いたしました浜渦武生でございます。
 はえある国旗・日の丸の掲揚されました議場でごあいさつのできることを、うれしく思っております。
 これからは、知事の掲げました政策を実現するために、一層励んでまいります。
 都議会の皆様方のご理解とご支援のほどよろしくお願い申し上げます。(拍手)

○議長(渋谷守生君) 教育長横山洋吉君。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) さきの都議会第二回定例会におきまして教育委員の選任のご同意をいただき、七月十四日付で教育長に就任いたしました横山洋吉でございます。
 今日、教育改革へ向けて、多くの課題が提起をされております。これら課題の解決に向け、全力を尽くし、職責を全うしてまいる所存でございます。
 都議会の皆様のご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。(拍手)

○議長(渋谷守生君) 以上をもって副知事及び教育長の紹介は終わりました。

○議長(渋谷守生君) 次に、先般の人事異動に伴い、異動のありました説明員の方々をご紹介いたします。
 政策報道室長安樂進君、総務局長大関東支夫君、生活文化局長高橋信行君、都市計画局長山下保博君、環境局長中野英則君、福祉局長高齢者施策推進室長兼務前川燿男君、労働経済局長浪越勝海君、港湾局長齋藤哲哉君、交通局長寺内広壽君、下水道局長横山博一君、都立大学事務局長川崎裕康君、多摩都市整備本部長田原和道君、選挙管理委員会事務局長南靖武君、監査事務局長久保田康治君、収用委員会事務局長安間謙臣君。
   〔理事者あいさつ〕

○議長(渋谷守生君) 以上をもって説明員の紹介は終わりました。

○議長(渋谷守生君) 次に、閉会中の常任委員の所属変更について申し上げます。
 去る七月十二日付をもって、総務委員田島和明君から、厚生委員へ、厚生委員藤川隆則君から、総務委員へ、それぞれ常任委員の所属変更の申し出がありましたので、委員会条例第五条第三項ただし書きの規定により、議長において、それぞれ同日付をもってこれを許可いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、それぞれ議長の許可のとおり承認することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、それぞれ議長許可のとおり承認することに決定いたしました。

○議長(渋谷守生君) 次に、閉会中の議会運営委員の辞任及び選任について申し上げます。
 お手元配布の名簿のとおり、各委員よりそれぞれ辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、それぞれこれを許可いたしましたので、ご報告いたします。
 なお、ただいまご報告いたしました委員の辞任に伴い、欠員を補充する必要性が生じましたので、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、お手元配布の名簿のとおり指名いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、それぞれ議長の指名のとおり承認することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、それぞれ議長指名のとおり承認することに決定いたしました。

議会運営委員辞任・選任名簿
〇辞任
 川島 忠一君(自) 藤沢 志光君(自)
 松本 文明君(自) 大西 英男君(自)
 星野 篤功君(自) 鈴木 一光君(自)
 三原 將嗣君(自) 小礒  明君(自)
 近藤やよい君(自) 河合秀二郎君(民)
 田中  良君(民) 和田 宗春君(民)
〔以上 平成十二年八月一日付〕
 山崎  泰君(無)
〔以上 平成十二年八月二十一日付〕
 大西由紀子君(ネ)
〔以上 平成十二年九月七日付〕

○選任
 佐藤 裕彦君(自) 山崎 孝明君(自)
 白井  威君(自) 宮崎  章君(自)
 野村 有信君(自) 新藤 義彦君(自)
 古賀 俊昭君(自) 吉住  弘君(自)
 三宅 茂樹君(自) 嶋田  実君(民)
 小林 正則君(民) 西条 庄治君(民)
〔以上 平成十二年八月一日付〕
 藤川 隆則君(無)
〔以上 平成十二年八月二十一日付〕
 藤田 愛子君(ネ)
〔以上 平成十二年九月七日付〕

○議長(渋谷守生君) 次に、閉会中の行財政改革基本問題特別委員並びに地方分権推進特別委員の辞任及び選任について申し上げます。
 お手元配布の名簿のとおり、各委員よりそれぞれ辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、それぞれこれを許可いたしましたので、ご報告いたします。
 なお、ただいまご報告いたしました特別委員の辞任に伴い、欠員を補充する必要が生じましたので、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、お手元配布の名簿のとおり指名いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、それぞれ議長の指名のとおり承認することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、それぞれ議長指名のとおり承認することに決定いたしました。

行財政改革基本問題特別委員辞任・選任名簿
〇辞任
 田代ひろし君(自) 三宅 茂樹君(自)
 清原錬太郎君(自) 矢部  一君(自)
〔以上 平成十二年九月十八日付〕

○選任
 いなば真一君(自) 高島なおき君(自)
 松本 文明君(自) 大山  均君(自)
〔以上 平成十二年九月十八日付〕

地方分権推進特別委員辞任・選任名簿
〇辞任
 大西 英男君(自)
〔以上 平成十二年七月十二日付〕
 林  知二君(民) 鈴木 一光君(自)
 田島 和明君(自) 吉野 利明君(自)
 比留間敏夫君(自) 星野 篤功君(自)
 井口 秀男君(自) 小山 敏雄君(自)
 大山  均君(自) 桜井  武君(自)
〔以上 平成十二年九月十八日付〕

○選任
 三浦 政勝君(無)
〔以上 平成十二年七月十二日付〕
 中西 一善君(自) 川井しげお君(自)
 野田 和男君(自) 吉住  弘君(自)
 山本賢太郎君(自) 坂口こうじ君(民)
 花川与惣太君(自) 藤沢 志光君(自)
 川島 忠一君(自) 田中 晃三君(自)
〔以上 平成十二年九月十八日付〕

○議長(渋谷守生君) この際、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第十六号、三宅島火山災害及び新島、式根島、神津島等伊豆諸島近海の地震災害に関する意見書、知事より、東京都名誉都民の選定の同意について二件がそれぞれ提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(渋谷守生君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から十月四日までの十六日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、会期は十六日間と決定いたしました。

○議長(渋谷守生君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成十二年第三回都議会定例会の開会に当たり、私の都政運営に対する所信を申し述べ、都議会並びに都民の皆様のご理解とご協力を得たいと思います。
 初めに、噴火が続く三宅島への対応等、東京の危機管理対策について申し上げます。
 伊豆諸島で続いている大規模な噴火や地震は、発端となった火山活動からはや三カ月近くが経過した今もなお、今後の推移が全くつかめず、過去に例を見ない異常な事態となっております。
 とりわけ三宅島では、たび重なる噴火により島全体が厚い灰に覆われ、ところどころに火砕流や泥流の傷跡を残す、目を覆うばかりの惨状となっております。大規模な火砕流のおそれがあるため、九月二日には退避指令が発令され、防災・ライフライン関係者を除く全島民が島外へ避難いたしました。
 新島、神津島などの島々でも、地震によるがけ崩れなどが相次ぎ、一部の住民が退避生活を余儀なくされております。
 多くの島民が生命の危険にさらされるとともに、港湾や道路など生活の基盤となる施設に大きな被害が発生し、観光、漁業など伊豆諸島の基幹産業は、軒並み多大な損害をこうむっております。
 東京都は、災害対策本部を設置し、地元の村や国など関係機関と連携を密にし、さらに近隣の自治体や民間の団体などからも協力を得て、島での応急対策や避難先での生活の確保に全力を尽くしております。
 島外避難を強いられておられる方々に対しては、居住環境に最大限配慮し、希望者全員に速やかに住宅を提供いたしました。このほか、病弱な高齢者や児童・生徒の受け入れ、緊急就労対策、相談所の開設、都税の減免、資金の貸し付けなど、日常生活の支障が少しでも解消されるよう、可能な限りの対策を講じております。
 このたびの災害に対して、多数の関係者が、粉骨砕身対応に当たっております。特に三宅島では、およそ二百人の人々が、危険が残る中、昼夜を分かたずライフラインの確保に力を尽くしております。この方々の労苦に、心より感謝を申し上げます。
 島の人々は、先行きのわからない極めて不安な状況に置かれています。多くの人が、ふなれな土地で不便を感じ、ストレスなどを抱えながら、懸命の生活を続けていることと察します。心よりお見舞い申し上げます。
 噴火と地震による被害がこれ以上拡大することなく、早期に終結することを切に願っております。
 伊豆諸島は、先人が、時にはとうとい生命をも犠牲にしながら、幾たびもの噴火災害を乗り越え、今日の生活を築き上げてきた、歴史ある地です。我々は、災害を克服する英知と勇気を持ち合わせております。
 島民の皆さん、決してあきらめることなく、希望を持ち続けてください。
 この先も、帰島時期、生活再建、復興対策など極めて困難な課題が山積しておりますが、私は、都議会のご協力をいただきながら、国に対しても強力な支援を要請するなど、万全の体制を整え、島の再生に全力を尽くす決意であります。
 先般、天皇皇后両陛下には、島民及び関係者へ、温かいねぎらいのお言葉を賜りました。また、秋川高校に退避している児童・生徒などに、お見舞いの品を賜りました。
 さらに、国内外から、義援金や救援物資を初めボランティア活動の申し出など、多くのご支援をいただいております。都民を代表して厚く御礼申し上げます。
 伊豆諸島に限らず、世界有数の火山帯の上で生活する我々は、地震や噴火がいつ起こっても不思議ではないことを日ごろより十分自覚し、万一の場合に備えておく必要があります。
 九月三日に実施した総合防災訓練ビッグレスキュー東京二〇〇〇は、都民の防災意識を高揚し、関係機関相互の連携を飛躍的に強化するなど災害対応能力を高める点で、画期的なものでありました。総理大臣の指揮する自衛隊七千人余が出動するなど、全体で二万五千人が参加する、たぐいない規模の防災訓練を実施し、他の大都市に先駆けて都市型防災の範を示すことができたと考えます。
 災害時に一人でも多くの命を救うためには、災害発生直後に適切かつ迅速な行動を起こすことが求められます。今回は、初動対応の確立に特に重点を置き、羽田空港での自衛隊機の離発着、大江戸線を利用した人員、物資の搬送など、救助活動に威力を発揮する多くの新しい訓練を取り入れました。
 災害が発生した場合、東京都は、人命の救助に全力を尽くしますが、住民にとってまず求められることは、みずからの生命はみずからが守ること、すなわち自助を基本とすることの自覚であります。次いで不可欠なのが、近隣同士が助け合う共助であります。地域と一体となった訓練を継続し、共助の必要性を多くの都民が体験することによって、今日の日本人が失いかけている、連帯を取り戻す効果もあるのではないかと思います。
 私は、予断を許さない三宅島噴火災害への対応を含め、今後のあらゆる活動に今回の成果を生かし、首都東京の危機管理に万全を期してまいります。
 こうした取り組みとともに、災害後の復興にも備えておく必要があります。都民生活の安定を図るためには、災害時の迅速な措置とともに、長期的視点に立った災害に強いまちづくりが重要であります。東京が大地震に襲われた場合、甚大な被害が生じると想定されますが、被災を繰り返さないためには、抜本的に都市を改造することが不可欠であり、この点の認識を都民と共有しておくべきであります。
 このような考え方のもとに策定した震災復興グランドデザイン中間のまとめには、主要な復興事業として、安全な住宅市街の形成や環状緑地帯構想などを盛り込んでおります。来年三月を目途に、課題を整理し、震災復興グランドデザインを完成させたいと考えております。
 この計画を画餅に終わらせることなく、東京の都市復興を実現するには、制約の多い現行の法制度を抜本的に見直す必要があります。今後、計画の策定にあわせて、新たな私権の制限など、まちづくりを計画的に推進する上で必要な法的課題を検討し、国に対し、法令の整備を強力に働きかけてまいります。
 次に、ディーゼル車対策への総力を挙げた取り組みについて申し上げます。
 東京の大気汚染の大きな原因は自動車の排気ガスにあり、中でも、ディーゼル車から排出される微粒子が、都民の生命と健康を脅かしております。ディーゼル微粒子の削減を早急に進めるためには、現在使用されている車を排出量の少ない車に転換させていくことが極めて重要であります。
 私は、この一年間、ディーゼル車NO作戦を展開し、ディーゼル車からの買いかえや微粒子除去装置、すなわちDPFの装着が促進されるよう、広く都民、事業者に協力を呼びかけてまいりました。既に産業界では、我々の取り組みを敏感に受けとめ、低公害車の導入やDPF開発などの動きを速めております。
 また、先日は、世界肺癌会議に出席し、ディーゼル車対策に取り組む決意を述べ、医学関係者の協力を求めました。私のメッセージにこたえ、会議では、ディーゼル車などの排気ガス対策を政府、業界に要望し、積極的に大気汚染対策を進めている東京の取り組みを評価するとの意見表明がなされました。今や、医学界でも、この問題に対し、効果的な対策を求める動きが急速に広がっております。
 にもかかわらず、国には、依然、深刻な事態への認識が欠如しており、迅速な対応も見受けられません。今月公表された中央環境審議会報告では、DPF装着の義務づけが見送られるなど、国民の健康被害を食いとめるに当たって、国の対応は全く不十分といわざるを得ません。環境問題への率先した取り組みは、国民に対する国の重大な責務であります。鈍感な国がその姿勢を変えるまで、粘り強く東京都としては働きかけを続けてまいります。
 ディーゼル車にかわる低公害車としては、天然ガスや液化石油ガスを燃料とする車が有効ですが、これらの車は利用者が少ないために燃料スタンドがふえず、また、燃料スタンドがふえないために利用者が少ないという、悪循環に陥っております。行政には、悪循環を断ち切り、低公害車の普及に弾みをつける先導役となることが求められております。
 六月に立ち上げた新市場創造戦略会議は、自動車メーカー、ユーザー、スタンド事業者、東京都が協力し、低公害車の普及策を検討するものであります。近く会議での意見を集約し、天然ガス車の導入やスタンドの設置など、具体的な取り組みを発表いたします。
 こうした自主的な取り組みだけでなく、規制をさらに強化し、現在のような大気が著しく汚染された状態を早期に改善する必要があります。
 私は、次の定例会で公害防止条例を大幅に改正し、都独自の排出基準の設定、基準を満たしていない車両の走行規制など、我が国で最も厳しいディーゼル車規制を導入したいと考えております。
 排気ガスの浄化をさらに徹底するためには、燃料となる軽油の硫黄分を低減することも不可欠であります。ヨーロッパでは既に厳しい基準が定められているのに対し、我が国は、規制強化の具体的内容をいまだに明確にしておりません。
 本日、私は、国の動きを待つことなく、都営バス三十四台に低硫黄軽油を使用することを指令いたしました。これは、全国初の取り組みとして、石油事業者の協力により十一月から開始するもので、低硫黄軽油の有効性を実証すると同時に、その導入を全国に広げる一矢を放つ、画期的な対策と信じております。
 平成八年に石油製品の輸入が自由化されて以降、多くの中小業者が石油の取引に参入する中で、無責任に質の悪い軽油が流通し、同時に、脱税や滞納が全国時に多発しております。
 七月には、税収確保の観点はもとより、環境対策としても軽油の流通の適正化が重要であることから、鳥取県と共同し、全国で初めて、脱税の刑事告発に向けた強制調査を実施いたしました。
 今後も手を休めることなく、悪質な業者の摘発に努めてまいりますが、根本的な解決には、法制度の改正が必要であります。都議会のご協力も得ながら、軽油引取税の改正を実現するよう、国に対しさらに強力に要請してまいりたいと思います。
 次に、名誉都民の選考について申し上げます。
 このたび、名誉都民選考委員会から、隅谷三喜男さん、山田五十鈴さんを候補者としてご推薦いただきました。
 隅谷三喜男さんは、長年教育に携わり、新たな労働経済理論の形成や社会保障研究の先駆的な取り組みを行うとともに、私学教育の充実、発展に貢献されました。山田五十鈴さんは、我が国の映画界、演劇界を代表する大女優として、数々の名画、名舞台を生み出し、華やかな芸風と確かな演技は、多くの人々に深い感銘を与えております。
 お二人は、それぞれの分野において多大な功績を上げられ、多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々です。都議会の同意をいただき、来月、顕彰したいと考えております。
 次に、都政のかなめとなる二つの長期戦略、東京構想二〇〇〇及び都政改革ビジョン1について申し上げます。
 東京は、江戸開闢以来、日本の首都として四百年の歴史を有し、戦後は、奇跡ともいわれた我が国の高度成長の牽引役となってまいりました。しかし今日、企業活力の低下や環境問題の深刻化など、低迷する日本を表象するさまざまな危機が東京に蔓延しております。我々は、確かな将来展望と再生に向けた長期戦略を打ち出し、立ちはだかる危機を果断に乗り越えていかなければなりません。
 東京構想二〇〇〇は、都政の基本構想として、五十年先を展望しながら、今後十五年間で目指すべき東京の将来像や、取り組むべき政策を明らかにするものであります。
 二十一世紀に目を向けた場合、高齢化の進展や人口の減少など大きな変化が予測される中で、社会の活力を維持していくためには、個性が生き、能力が十分に発揮される社会を構築することが不可欠であります。そのような社会においては、個人の努力が社会の発展に結びつくとともに、社会の発展が個人の生活を豊かにする、円滑な社会循環が生まれるでしょう。
 十五年後には、四人に一人が六十五歳以上となることが見込まれる中、豊富な知識と経験を持ち、多くの可処分時間を有する元気な高齢者は、社会の貴重な財産であります。この円熟シニアとも呼ぶべき人々が、これまでの体験を活用して社会に貢献しながら実りのある人生を送ることを、都市型高齢社会のモデルとして目指します。
 一方、都市づくりに当たっては、幹線道路ネットワークや業務核都市などを整備し、骨格的な都市構造を実現するとともに、住宅や公益施設などの機能を集約した、コンパクトな生活圏を形成することが必要であります。
 今回発表した中間のまとめは、こうした新しい東京の生活像や都市像を実現していくために、今後展開すべき政策の目標を、十六の分野にわたり示しました。
 東京のまちづくりがどの程度進んでいるか、都民に明らかにすることも、行政の大切な役割であります。中間のまとめでは、十五年後の東京が目指すべき姿をわかりやすい数値で示すため、政策指標を導入いたしました。通勤通学に要する時間、高齢者の社会参加の進展をあらわす六十歳台の就業率、環境改善の目安となる二酸化窒素の濃度など、六十六項目を案として示しております。
 今後は、都議会を初め各方面からの意見を広く聞いた上で、年内に三カ年の重点事業も含めた構想の最終的な形を取りまとめ、魅力と活力に満ちた千客万来の世界都市東京の姿を明らかにしてまいりたいと思います。
 社会の変化に対応し、自治体も、そのあり方を大きく変えていかなくてはなりません。成熟化が進む中、我が国が今後も発展を続けていくためには、民間企業が最大限に能力を発揮できるよう、行政による規制は極力緩和すべきであります。また、事業はできる限り民間にゆだね、行政の役割は、民間での対応が困難な分野に限定すべきです。
 東京都は、このような理念に基づき、広域的自治体として、政策の形成や区市町村、民間などの調整役に業務の重点を移し、できる限り小さな政府を目指します。
 広域的自治体としての機能をさらに強化していくためには、より広範な地域を一元的に統括する必要があります。今後は、現在の都道府県制度にとらわれない新しい行政の枠組みについて、深く掘り下げ検討したいと考えております。
 一方、基礎的自治体である区市町村は、行政サービスを提供する中心的な存在として、みずからの判断と責任がますます強く求められます。
 八月に策定した第二次東京都地方分権推進計画は、この考えに基づいて、東京都が独自に区市町村へ事務や権限の移譲を進めるものであります。また、区市町村が組織をスリム化しながら持てる力を高め、住民に質の高いサービスを提供する上で、合併は大きな効果をもたらします。今年度中に市町村の合併に関する検討指針も作成し、都内市町村の合併機運が高まるよう、積極的に支援してまいります。
 田無市と保谷市の間では、合併に向け、かねてから進められていた協議がこのたび調いました。来年一月に予定されている合併は、事前に市民の意向を調査するなど、周到な準備のもとでここまでこぎつけたものであります。両市の取り組みに深く敬意を表します。今定例会には、二十一世紀最初の対等合併として、西東京市の誕生を求める議案を提出しております。
 基本構想の策定と並び行政改革の推進も、東京の危機を乗り越える上で避けられない焦眉の問題であります。
 これまでの行政には、前例に固執して大胆な改革を回避しようとする傾向がありました。いわゆる役所仕事と批判されているもので、社会の一般常識との間には大きなずれがあります。こうした旧態依然とした行動や意識を改めない限り、都民の信頼を得ることはできません。
 都庁の本質を改善し、都民が求めるサービスを効率的に提供していくためには、行政の役割を根本から見直した上で、仕事の進め方や組織のあり方など、行財政システム全般に鋭くメスを入れる必要があります。
 外部監査は、外部の目を通して都政が抱える問題点を客観的に究明する制度であります。初めて導入した昨年度は、都立病院の経営管理など百九十八項目に及ぶ実に適切な指摘を初めて受けました。これをもとに改善を進めた結果、早くも多くの効果が上がっており、都政を変える手法の一つとして引き続き活用してまいります。
 しかし、外部監査を待つだけではなく、自己改革にも率先して取り組む必要が絶対にあります。
 私は、こうした基本的認識のもとに、新しい行政像を具体的に示すために都政改革ビジョンを作成しております。
 その第一段階として年内に策定する都政改革ビジョン1では、直ちに取り組むべき改革を、十五年度までの四カ年計画としてまとめます。このたび発表した中間のまとめは、行政改革の基本的考え方と行政評価制度の導入、監理団体の見直し、IT化の推進など、直面する課題を明らかにしたものであります。
 多くの民間企業は、技術進歩の著しい情報通信機器を活用して、経営革新を積極的に進めております。都庁もまた、情報技術を活用し、効率的で迅速な事務の執行体制を確立するとともに、時代に合った都民サービスを
提供することが喫緊の課題となっておりま
す。
 書類のやりとり一つを例にとっても、改善すべき点が多々あります。九月からは、インターネットで入手できる用紙等の種類を大幅に拡大しましたが、その先は、相変わらず窓口まで足を運ぶことが原則となっております。自宅のパソコンから各種の手続を行うことのできる電子申請を、早急に開始いたします。
 さらに、近い将来、国、区市町村ともネットワークを結び、一カ所の窓口ですべての受け付けを済ませることのできるワンストップサービスを実現したいと考えております。
 こうした改善を積み重ねることにより、都政を住民本位の行政に転換してまいりたいと思います。
 また、東京都は、土地・建物など多くの資産を保有しておりますが、中には長年にわたり放置されたままのものがあり、活用の余地が十二分に残っております。現在、財産の利用実態を調査、評価する資産アセスメントを実施中であり、その結果を見て財産利活用総合計画を策定し、財産の処分や転用などに取り組んでまいります。
 次に、東京の再生に向けた最近の取り組みについて申し上げます。
 福祉は今、大きな転換期を迎えております。少子高齢化が進み、住民ニーズが多様化する中、住民が必要なサービスを、みずからの責任で選択する時代が到来しています。これからは、行政が型にはまったサービスを提供するのではなく、事業者が互いに競い合いながら、住民の要望に応じたさまざまなサービスを提供していくことになります。
 今年四月に開始した介護保険は、今後本格化するこうした構造改革の流れの先駆けとなるものであります。
 行政は、規制緩和により多様な事業者の参入を促すとともに、住民に身近な区市町村を中心に、事業者が公正に競争し、住民がよりよいサービスを受けるための支援をすることが、主な役割となります。私は、東京都が担うべき役割と、新しい福祉施策の具体的展望を明らかにするため、年内を目途に福祉改革推進プランを策定いたします。
 高齢者や障害者が快適な日常生活を送るには、段差などの障害をなくし、自由に行動できるまちづくりに取り組むことが重要であります。制定から五年が経過した福祉のまちづくり条例について、対象施設の拡大や新たな整備項目の追加などを内容とする初めての改正案を、今定例会に提出いたしました。
 また、経済的、社会的に不利な立場にある精神障害者の自立と社会参加が一層促進されるよう、都営交通が利用できるパスを発行するための新たな条例を提案しております。
 東京の産業が消費者ニーズの変化や社会の潮流を的確にとらえていくためには、技術革新や新しい事業の開始、すなわち起業を活発化することが重要であります。
 七月には、総額七百億円のローン担保証券の参加企業を初め、約三千五百社を会員とする東京都中小企業ネットクラブを立ち上げ、世界に向けた情報発信を開始いたしました。今後、会員企業の拡大や登載データの一層の充実を図ってまいります。
 ローン担保証券については、第二回の発行に向けて、金融機関からの提案に基づき、発行方法を検討するなど準備を進めております。
 また、投資と経営指導を通じ、創業期にある企業を支援するため、先日、地方自治体として最初の投資事業有限責任組合を設立いたしました。
 私は、将来性の高い中小企業を支援するこうしたさまざまな施策を推進し、潜在的な東京の産業活力を引き出していきたいと考えております。
 観光は、運輸、飲食など多くの分野に経済効果が波及する複合産業であります。ロンドン、パリなどでは、年間一千万を超える訪問客を外国から集め、観光が都市の発展に大きく寄与しております。一方、東京は世界屈指の大都市でありながら、残念ながら観光が都市産業に占める比重は非常に低い状況にあります。
 観光は、取り組み方次第では、大きな発展が見込める産業であると考えております。私は、観光産業の充実を主要な政策の一つと位置づけ、東京を訪れる外国人観光客の増大などを目標に、これからの観光政策に関する基本方針の策定に着手いたします。
 商店街は、買い物の場であると同時に、地域のコミュニティを支える場として重要な役割を果たしてまいりました。ところが、近年、空き店舗の増加などにより、商店街は危機的な状況に陥っております。
 商店街の再生には、何よりもまず自助努力が求められますが、東京都の支援もまた不可欠な要素であります。来年三月を目途に二十一世紀商店街づくり振興プランを策定し、目指すべき商店街の将来像と実現に向けた道筋を明らかにしたいと思っております。
 フランスの思想家ルジャンドルは、若者が崩壊しているのは、大人が背負い切れなくなった重荷を彼らに背負わせた結果なのだと指摘しております。青少年の犯罪や社会のルールを逸脱した行動が、大きな問題となっていますが、それは、我々大人や社会全体の責任でもあります。大人がまずみずからの生き方を反省し、実際の行動を通じて、守るべき基本的ルールや社会に対する責任を、子どもに教えていかなくてはなりません。
 このため、私は、心の東京革命行動プランを策定し、家庭、学校、地域、そして社会全体それぞれが取り組むべき行動、そしてそれを支える行政の役割を明らかにいたしました。
 来月には、都民、各種の団体が参加する五千人規模の心の東京革命都民集会を開催いたします。これを契機として、都民と一体となった社会全体の運動を積極的に展開し、次の時代を担う子どもを健全に育成していきたいと考えております。
 東京は、世界でも有数の治安の良好な都市でありましたが、その評価にも陰りが見えつつあります。ニューヨークでは、ジュリアーニ市長の断固とした取り組みにより、犯罪が大幅に減少したのに対して、東京では犯罪の増加が続いており、ことし上半期の件数は過去最悪となっております。
 首都東京の治安を維持し、都民生活の安全を確保することは、知事としての最も基本的な使命であります。必要があれば、独自に条例を制定し、犯罪の防止や摘発に全力を尽くしてまいります。
 近年、繁華街の性風俗店等において、不当に高額な料金を乱暴な手段で奪い取る悪質な事件が相次いでおり、町を訪れる人ばかりだけでなく、地域の安全や健全な発展をも脅かしております。
 こうした行為を未然に防止し、町の安全を取り戻すため、不当な勧誘や料金の取り立てなどを禁止する、いわゆるぼったくり防止条例を、国や全国の自治体に先駆けて今定例会に提案いたしました。
 次に、東京の魅力を高めることにつながる、都市間の連携の新しい取り組みについて申し上げます。
 国は、長年にわたりむだが指摘され続けてきた公共事業の見直しに、ようやく着手いたしましたが、膨大な経費を要し、むだな典型ともいえる首都移転については、いまだその旗をおろそうとしておりません。国際社会における我が国の地位を高めていく上で最も重要なことは、七都県市から成る東京圏が、これまで蓄積してきた社会資本を活用しながら、首都として世界に誇り得る政治、経済、文化活動を展開することであります。
 そのためには、都議会の皆様とも協力しながら首都移転に断固、断固反対し、首都移転が白紙撤回されるまで徹底的に闘うとともに、より一層魅力にあふれた、新しい東京圏を形成していきたいと思います。
 私は、首都機能を引き続き担うための基盤整備として、いわゆる圏央道や外環道など環状方向の道路整備や、湾岸地域の一体的開発などを進め、環状メガロポリス型の都市づくりを目指す必要があると考えております。また、物流ネットワークの整備や国際空港機能の強化なども重要な課題であります。
 今後、七都県市が互いに知恵を出し合いながら、共同して東京圏全体の都市ビジョンを策定するよう、早急に関係者間で協議したいと思っております。
 その際には、国をも巻き込んだ連携体制を強化することがぜひとも必要であります。私は、これまでも常設の協議機関の設置を提案してまいりましたが、国の決断を促すために、この問題を、過日も総理大臣に直接強く建言しました。
 先月、私は、デリー、クアラルンプール、ソウルの首長と一堂に会し、かねて提唱していたアジアにおける大都市間のネットワークの構築について、議論を交わしてまいりました。
 都市の間では、政治的立場の相違を超えて、共通の目的に向かって協力することが可能であります。それぞれの国の心臓部であり頭脳である大都市が相互に連帯と協力を深めることは、アジア全体の平和と繁栄に大きく貢献できると確信しております。
 こうした認識のもと、四都市は、アジア地域の発展を目指す新たな協力の枠組みとして、アジア大都市ネットワーク21を構築することに合意し、共同宣言を採択しました。近く、他のアジア各地の代表的な都市に参加を呼びかけます。
 この取り組みに賛同する大都市の首長により、来年、東京でアジア大都市ネットワーク21の第一回会議を開催し、技術開発や、環境、都市計画、観光振興、災害対策などの分野で協力し、事業を展開してまいります。
 私は、この会議が、アジアの新たなアイデンティティーを確立し、アジアの時代の幕あけを世界に告げる場になるものと考えております。
 今日の日本は、国際競争力が著しく低下し、国そのものが溶けてなくなろうとしている、まさに国家存亡の秋ときに直面していながら、どうも永田町の政治家や霞ケ関の官僚の大半には、およそ危機意識が感じられません。来年一月の省庁再編を目前に控えても、二十一世紀の国家ビジョンや新しい省庁で取り組むべき政策など、本質に迫る議論は一向に伝わってまいりません。ただ聞こえてくるのは、族議員と省庁が保有している権益をいかに守り通すかという、余り次元の高くない話ばかりであります。このような状況を目の当たりにするとき、国民とともに、国に対し東京こそが厳しく変革を迫っていく必要を痛感いたしております。
 私は今後も、日本の改革につながる東京の改革に、全力で取り組んでまいります。それと同時に、東京単独では力が及ばない点は、国を揺り動かすことで変革につなげてまいりたいと思い、先月末に開催された第三回都市再生推進懇談会においては、環境問題のほか、地方税財源の充実などを総理大臣に強く提言いたしました。今月に入ってからは、三宅島復興に関する緊急支援を初め、来年度予算に関連して、国直轄事業負担金制度の見直し、米軍基地対策の推進などを要求いたしました。
 今後も、都議会の皆様と力を合わせながら、東京を変え、そして日本を変えていきたいと思います。都議会並びに都民の皆様の一層のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案三十七件、契約案五件など、合わせて四十四件を提案しております。よろしくご審議をお願い申し上げます。
 なお、終わりに当たり、再度、伊豆諸島の皆様に心よりお見舞いを申し上げて、私の発言を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(渋谷守生君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○議長(渋谷守生君) このたびの三宅島火山災害及び新島、式根島、神津島等伊豆諸島近海の地震災害により被害をこうむられた方々に対し、東京都議会として心よりお見舞いを申し上げます。
 本議会では、被災地へのお見舞い並びに現地調査のため、調査団を派遣いたしました。
 調査団を代表して、五十嵐正君より報告のため発言を求められておりますので、これを許します。
 八十三番五十嵐正君。
   〔八十三番五十嵐正君登壇〕

○八十三番(五十嵐正君) このたびの、三宅島の火山活動並びに新島・式根島・神津島近海の大規模地震による被災地をお見舞いするとともに、被害状況を調査し今後の対応強化に資するため、東京都議会は、渋谷議長を団長とした調査団を派遣いたしました。
 その調査結果について、調査団の副団長を務めさせていただきました私から、その概要をご報告申し上げます。
 調査団の団員構成を含め、報告書はお手元配布のとおりでありますが、九月二日に島民への島外避難指示が出された三宅島については、事態の緊急性にかんがみ、新島、式根島、神津島に先行して調査を実施いたしました。
 まず、三宅島の調査についてご報告申し上げます。
 九月二日、調査団は警視庁のヘリコプターで三宅島に向かい、全島民の避難指示という緊迫した状況の中で現地調査を行いました。
 島民の避難や、復旧に奔走する現地の皆さんに迷惑をかけない範囲で調査を行うという中で、極めて限られた時間内での調査であったことを、あらかじめご理解いただきたいと思います。
 まず、上空からの目視調査では、雄山山頂付近は雲に覆われ、噴煙は直接確認できませんでしたが、これまでの火山活動のため、本来は緑豊かな島の樹木は、火山灰のために全体的に灰白色を呈しており、また、道路上には車や人影はほとんど見られず、被害の重大さが眼下に広がっておりました。
 三宅島空港到着後、直ちに島の東部地域から現地調査を開始いたしました。人家や車両を初め、周囲一面は粘土質の火山灰に覆われ、これまでの台風や大雨による大規模な泥流跡が至るところで見られました。
 途中、三池地区付近の都道周辺では、噴火による強烈な硫黄臭や刺激性を帯びた火山性ガスが立ち込めており、旺盛な火山活動をまざまざと実感させるものでありました。
 島の北部、神着地区においては、八月二十九日の火砕流により、周辺は、ほとんどの樹木が火砕流の流れた海岸方向になぎ倒され、一面荒涼とした状況を呈しておりました。
 島の北西部の伊ヶ谷地区も降灰の被害が大きく、島の外周をめぐる都道では、降灰や噴石から身を守るためのコンクリート製避難用シェルターを配備するなど、緊急対策が講じられておりました。
 また、被災状況の説明会場となった三宅支庁では、渋谷団長から長谷川村長に、都議会の皆様方などからお預かりした見舞金を贈呈し、引き続き、長谷川村長から被災状況の説明を受けました。
 その際、今後の復興対策の重要性もさることながら、当面の重大な課題は、島外に避難したことにより収入の道が絶たれた多くの島民の日々の生活をいかに確保するかにあることが強調されたのであります。さらに、避難指示が出たために、やむなく島を出ざるを得ない島民の窮状などが訴えられました。
 このほか、泥流や火砕流等に対する対策、降灰による畜産業等への影響、避難先における村役場の窓口確保、島内残留者の健康問題、義援金の活用、さらに今後の噴火活動の見通しや観測体制の強化など、当面する諸課題に関して意見が交わされ、村側からは、特に、今回の災害に対する東京都議会の全面的な支援、協力が強く要請されたのであります。
 次に、神津島、式根島、新島の調査についてご報告いたします。
 この三島につきましては、荒天のため、これまで二度にわたって延期となっておりましたが、昨日、九月十八日に現地調査を実施いたしました。
 当日、東京消防庁のヘリコプターで神津島空港に到着後、直ちに神津島村役場を訪問し、今般の地震災害で犠牲となられた住民の方に哀悼の意を表するとともに、渋谷団長から山下村長に、都議会の皆様などからお預かりした見舞金を贈呈いたしました。
 引き続き、村側から被災状況の説明を受け、島を支える観光、農業、漁業といった基幹産業の早期復興などに関し意見交換を行いました。席上、これまでの頻発する大規模地震により大きな被害が出た生活関連施設の復旧・復興に関し、都議会の支援、協力が強く要請されました。
 その後、前浜地区周辺の被災状況の視察を行いました。切り立ったがけは大きく崩落し、巨大な岩石が数多く露出しており、復旧に際しては二次災害の発生が懸念されるなど、被害の重大さを目の当たりにいたしました。
 次に神津島から式根島に向かい、新島村の宮川助役から、小中学校を初め、被害の大きかった島内関連施設の説明を受けました。
 なお詳細については、この後の新島の調査の際に、あわせて報告を受けることといたしました。
 最後に新島に向かい、新島空港到着後、新島住民センターにおいて、今般の地震災害で負傷された住民の方々に対するお見舞いの意を表するとともに、渋谷団長から出川村長に、都議会の皆様などからお預かりした見舞金を贈呈いたしました。
 引き続き、村側から被災状況の説明を受け、調査団との間で、今後の復興計画等を中心に意見交換を行いました。神津島村と同様に、これまでの頻発する大規模地震により、大きな被害が出た島の基幹産業や生活関連施設の早期復興に関し、都議会の支援、協力が強く要請されました。
 その後、被害状況についての現地視察を行い、まず、檜山大崩落現場及び周辺地域の視察を行いました。現場の状況は、崩落が極めて大規模であり、このため、新島本村地区と北部の若郷地区は通行不能状態が続いており、さらに当現場付近は、二次災害の危険性も高いことから、復旧は難航し、そのため関係者の間では、復旧作業については、遠隔操作による無人の工作機器の導入についても検討が進められているとのことでありました。
 以上が調査団の活動の概要でありますが、お手元配布の報告書末尾の調査活動総括にも付記したとおり、各島とも極めて困難な状況下で、避難民への対応や復旧・復興対策に取り組んでおります。当調査団といたしましては、被災された島民の方々の生活の立て直しに向け、都議会を挙げて、被災地となった各島を支援すべく、早急に適切かつ、きめ細かな対応を講ずることを強く要請するものであります。
 最後に、このたびの一連の災害に対する、村当局を初めとした多くの防災関係者の連日にわたる不眠不休のご尽力に対し、調査団一同、心から敬意を表するものであります。
 今後の復旧・復興の道のりは、決して容易なものではなく、被災者の方々のお気持ちは、察するに余りあるものがございます。被災者の皆様方におかれましては、くれぐれも健康に留意されますようお願い申し上げますとともに、問題解決の見通しが一日も早くつくことを祈りつつ、調査団の報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○議長(渋谷守生君) 以上をもって五十嵐正君の発言は終わりました。
〔参考〕
   東京都議会三宅島火山活動、新島・式根島・神津島近海地震災害調査団報告書
1 調査団派遣の目的
  三宅島の火山活動並びに新島・式根島・神津島近海の大規模地震により、大きな被害を受けた前記四島を見舞うとともに、現地調査を実施し、今後の関係機関の対応強化に資する。
  なお、九月二日に全島民に対する島外への避難指示が出された三宅島については、事態の緊急性に鑑み、他の三島に先行して現地調査を実施した。
2 調査概要
(1)三宅島
 1調査日時 平成十二年九月二日(土)午後二時から六時
 2団員構成
   団長  都議会議長  渋谷 守生(自民党)
   副団長 都議会副議長 五十嵐 正(公明党)
   団員  都議会議員  佐藤 裕彦(自民党)
   団員  都議会議員  川島 忠一(自民党)
   団員  都議会議員  丸茂 勇夫(日本共産党)
   団員  都議会議員  森田 安孝(公明党)
   団員  都議会議員  小林 正則(民主党)
 3調査行程
    東京ヘリポート→三宅島→東京ヘリポート
 4調査概要
    当調査団は、「住民全員の島外への避難指示」による住民の避難が開始された緊迫した状況下で、現地調査を行った。
  ア 上空からの目視調査
    まず、警視庁ヘリコプターで三宅島上空から島の全容を視察した。
    雄山山頂付近は雲に覆われ、噴煙は確認できなかった。
    島の樹木は火山灰のために全体が灰白色を呈していた。
    道路上に車や人影などはほとんど見られなかった。
  イ 島民の避難状況
    三宅村災害対策本部は、九月二日の避難指示を踏まえ、直ちに防災・ライフライン要員(約六百名)を除く全島民の島外避難計画を定めた。
    九月一日時点の在島島民は人口三千八百五十五名中九百五十六名(約二五%)、離島者は二千八百九十九名(約七五%)である。小中学生や在宅要介護者のほとんどは、既に島外への避難を完了していた。
  ウ 島内視察
    三宅島空港到着後、直ちに島の東部地域から現地調査を開始した。
    人家や車両をはじめ、周囲一面は粘土質の火山灰に覆われ、これまでの台風や大雨による大規模な泥流跡がいたる所で見られた。周囲の沢沿いには大きな岩石が多数流出し、三宅支庁では全島で二十個所に応急泥流対策(ワイヤーセンサー設置等)を講じていた。
    三池地区の都道周辺一帯は、噴火によると思われる強烈な硫黄臭や刺激性を帯びた火山性ガスが立ち込め、旺盛な火山活動をまざまざと実感させた。
    島の北部、神着地区においては、八月二十九日に発生した火砕流の被害跡を視察した。周辺はほとんどの樹木が火砕流の流れた海岸方向に根こそぎなぎ倒され、一面荒涼とした状況を呈していた。
    島の北西部の伊ヶ谷地区も降灰の被害が大きく、去る八月十八日の第五回目の噴火による降灰厚は六〇ミリから一〇〇ミリに達した。本地域は陸上自衛隊による降灰除去活動が行われた地域であり、火山灰を入れた土のうが都道周囲の民家の庭先に積み上げられていた。
    島の外周をめぐる都道では、コンクリート製の緊急避難用シェルター(ボックスカルバート)や避難用コンテナが配備され、シェルターは十八箇所、コンテナは三十箇所に及んでいた。
  エ 見舞金贈呈及び被災状況説明・質疑等
    被災状況の説明会場となった三宅支庁では、冒頭に渋谷団長より、長谷川三宅村長に対して、東京都議会・東京都議会議員一同、全国都道府県議長会、十二都道府県議会議長会、関東甲信越一都九県議会議長会からの見舞金を贈呈した。
    次に、長谷川村長から被災状況の説明を受け、引き続き東京都の現地対策本部長を務める青山副知事も同席するなか、調査団との間で質疑・意見交換等が行われた。
    三宅村の当面の最大の課題は、復旧・復興対策の重要性もさることながら、東京に避難したことにより収入の途が絶たれた多くの島民の日々の生活を、いかに確保していくかということである。島を離れては生活ができないにもかかわらず、避難指示が出たためにやむなく島を出なければならない島民の窮状が訴えられた。
    この他には泥流や火砕流等に対する対策、降灰による畜産業等への影響、東京における村役場の窓口確保、島内残留者の健康問題、義援金の活用、今後の噴火活動の見通しや観測体制の強化など、当面する諸課題に関し意見が交わされ、三宅村側からは、特に今回の災害に対する東京都議会の全面的な支援・協力が強く要請された。
(2)新島・式根島・神津島
 1調査日時 平成十二年九月十八日(月)午前十時から午後五時
 2団員構成
   団長  都議会議長  渋谷 守生(自民党)
   副団長 都議会副議長 五十嵐 正(公明党)
   団員  都議会議員  佐藤 裕彦(自民党)
   団員  都議会議員  川島 忠一(自民党)
   団員  都議会議員  野村 友子(日本共産党)
   団員  都議会議員  桜井良之助(公明党)
   団員  都議会議員  嶋田  実(民主党)
 3調査行程
    東京ヘリポート→神津島→式根島→新島→東京ヘリポート
 4調査概要
  ア 神津島
 (ア)見舞金贈呈及び被災状況説明・質疑等
   消防庁ヘリコプターにて神津島空港到着後、直ちに神津島村役場を訪問し、冒頭、七月一日に発生した震度六弱の地震による山腹の崩落により、神津島村の住民に犠牲者が出たことに対し、調査団一同、哀悼の意を表した。
   次に、渋谷団長から山下村長に対し、東京都議会・東京都議会議員一同、全国都道府県議長会、十二都道府県議会議長会、関東甲信越一都九県議会議長会からの見舞金を贈呈した。調査団に同行した青山副知事や大島支庁関係者も同席するなか、村側から被災状況の説明を受け、引き続き調査団との間で今後の復興計画等に関する意見交換が行われた。
   神津島では頻発する大規模地震等により、家屋の破損や道路の陥没・亀裂、水道管の破裂など、島の生活関連施設に甚大な被害が発生し、住民生活に大きな影響が及んでいる。また、ゴミ焼却場に通ずる道路の損壊等により、現在もなおゴミは新島村に処分を依頼しているとのことであった。現時点での島の被災総額は、村道などの公共土木施設を中心に三十四億円にのぼるものと推定され、平成十二年度の村の予算額二十四億円を大きく上回る規模となっている。
   神津島村側からは、特に今回の災害に対する東京都議会の全面的な支援・協力が強く要請された。
 (イ)島内視察
   被災状況の説明後、島の東部の前浜周辺の崩落現場を視察した。
   急斜面には巨大な岩石が多数露出し、台風シーズンを迎え、今後の復旧にあたっては、二次災害が懸念される状況であった。
  イ 式根島
    神津島から式根島に向かった。
    新島村の一地区である人口六百人余の式根島も、今回の地震災害で住居やブロック塀の破損、崖崩れ、水道管の破損など大きな被害を受けた。当日は新島村の宮川助役並びに大島支庁関係者から被災状況の説明を受けつつ、島内視察を行った。
    式根島小学校においては、本来、住民の避難所として使用予定であった体育館の屋根が破損し、現在もなお、修繕の途上であった。
    また民宿の壁等には、地震によるひび割れ等が残るなど、島内のあちこちで地震災害の跡が見られた。
  ウ 新島
 (ア)見舞金贈呈及び被災状況説明・質疑等
   式根島から新島に向かい、新島空港到着後、新島住民センターにおいて、冒頭、七月十五日に発生した震度六弱の地震に伴い、住民に負傷者が出たことに対し、調査団一同、改めてお見舞いの意を表した。
   次に、渋谷団長から出川村長に対し、東京都議会・東京都議会議員一同、全国都道府県議長会、十二都道府県議会議長会、関東甲信越一都九県議会議長会からの見舞金を贈呈した。
   続いて、村側から被災状況の説明があり、調査団との間で今後の復興計画等に関する質疑・意見交換等が行われた。
   新島では頻発する大規模地震等により、若郷地区を中心に道路の陥没・亀裂、水道管の破裂、民家の破損など大きな被害が発生し、一時は当該地域に避難勧告が出されていた。
   現時点での島の被災総額は、村道などの公共土木施設を中心に、三十八億円にのぼるものと推定され、平成十二年度の村の予算額二十九億円を大きく上回る規模となっている。
   新島村側からは、神津島村と同様に、今回の災害に対する東京都議会の全面的な支援・協力が強く要請された。
 (イ)島内視察
   被災状況の説明後、檜山大崩落現場及び周辺地域を中心に視察した。
   檜山の崩落により、新島本村地区と北部の若郷地区は通行不能となっており、現在もなお新島本村との主な交通手段は、漁船の運行に頼っている状況にある。
   当現場の崩落は極めて大規模であり、二次災害の危険性も高いこと等から、復旧は難航し、現在、無人の工作機械の導入について関係者の間で検討が進められている。
3 調査活動総括
(1)三宅島
  都は六月二十六日付けで三宅村に災害救助法を適用し、応急対策及び復旧・復興対策を講じてきたが、その後の噴火活動の激化等により、事態は一変している。
  三宅島においては、大規模な火砕流や降灰による泥流等の二次災害の危険が高まり、九月二日の避難指示を受けて全島民が島外へ避難し、今なお都内各所で不自由な避難生活を余儀なくされている。
  噴火活動の今後の見通しが明らかでない現在、当面の緊急措置はもとより、島民の生活の立て直しや島の復興に向け、関係機関においては、できる限りの対策を講じ、総力を挙げて三宅村を支援していく必要がある。
(2)神津島
  都は七月一日付けで神津島村に災害救助法を適用し、応急対策及び復旧・復興対策に向け、適切な措置を講ずることとしたが、神津島の集落は、山あいに位置し、多くの住宅が裏山等の急斜面を抱えている。
  地震災害には今後とも厳重な警戒が必要であるが、台風シーズンを迎え災害等の発生に対する万全の備えと平行して、観光・農業・漁業など地域の基幹産業の復興や生活基盤の復旧に必要な財政措置を講ずるなど、神津島村を支援していく必要がある。
(3)新島、式根島
  都は七月十五日付けで新島村の区域に災害救助法を適用し、応急対策及び復旧・復興対策に向け、適切な措置を講ずることとした。
  新島、式根島ともに道路やライフライン関連施設が大きな被害を受けている。今後、地震災害に対する警戒はもとより、台風シーズンを迎え、災害等の発生に対する万全の備えと平行して、観光・農業・漁業など地域の基幹産業の復興や生活基盤の復旧に必要な財政措置を講ずるなど、新島村を支援していく必要がある。
(4)おわりに
  当調査団は、今般の一連の火山活動や地震災害に対する村当局をはじめとした、多くの防災関係者の連日にわたる不眠不休のご尽力に対し、心から敬意を表する。今後の復旧・復興の道のりは、容易なものではないと推察されるが、関係者におかれては健康に十分留意され、更なるご努力をお願いするものである。
  都議会においては、以上のような本調査団の調査結果を踏まえ、被災した島民の方々の生活の立て直しに向け、速やかに適切な措置を講ずるよう重ねて要望し、調査団報告とする。

○六十七番(三宅茂樹君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日は、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一から第三までを先議されることを望みます。

○議長(渋谷守生君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一から第三までを先議することに決定いたしました。

○議長(渋谷守生君) 追加日程第一、議員提出議案第十六号、三宅島火山災害及び新島、式根島、神津島等伊豆諸島近海の地震災害に関する意見書を議題といたします。
 案分は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略いたします。
議員提出議案第十六号
   三宅島火山災害及び新島、式根島、神津島等伊豆諸島近海の地震災害に関する意見書
 右の議案を別紙のとおり東京都議会会議規則第十二条の規定により提出します。
  平成十二年九月十九日
(提出者)
織田 拓郎  中嶋 義雄  羽曽部 力
服部ゆくお  真鍋よしゆき 松原 忠義
町田てるよし 大西由紀子  林  知二
福士 敬子  山本  信  くぼた 光
木内 良明  藤井  一  東野 秀平
原   環  中西 一善  田代ひろし
川井しげお  いなば真一  近藤やよい
藤田十四三  大河原雅子  土屋たかゆき
竹下 友康  田中 智子  浅川 修一
清水ひで子  吉田 信夫  かち佳代子
鈴木貫太郎  森田 安孝  谷口 卓三
今井 悦豊  高島なおき  鈴木 一光
小礒  明  倉林 辰雄  遠藤  衛
野田 和男  三原 將嗣  樺山 卓司
藤田 愛子  沢西きよお  和田 宗春
西条 庄治  馬場 裕子  藤岡 智明
古館 和憲  小竹ひろ子  小松 恭子
前沢 延浩  大木田 守  曽雌 久義
石川 芳昭  白井 常信  前島信次郎
大西 英男  田島 和明  吉住  弘
三宅 茂樹  古賀 俊昭  吉野 利明
比留間敏夫  星野 篤功  山本賢太郎
松本 文明  山崎  泰  坂口こうじ
田中  良  寺山 智雄  大山とも子
曽根はじめ  たぞえ民夫  松村 友昭
丸茂 勇夫  五十嵐 正  石井 義修
萩谷 勝彦  桜井良之助  田村 市郎
花川与惣太  新藤 義彦  野村 有信
宮崎  章  井口 秀男  藤沢 志光
立石 晴康  清原錬太郎  小山 敏雄
大山  均  藤川 隆則  河合秀二郎
尾崎 正一  東ひろたか  野村 友子
池田 梅夫  村松みえ子  植木こうじ
土持 正豊  中山 秀雄  橋本辰二郎
藤井 富雄  桜井  武  白井  威
山崎 孝明  佐藤 裕彦  川島 忠一
矢部  一  内田  茂  三田 敏哉
渋谷 守生  田中 晃三  奥山 則男
三浦 政勝  嶋田  実  小林 正則
西田ミヨ子  渡辺 康信  木村 陽治
秋田かくお
東京都議会議長 渋谷 守生殿

   三宅島火山災害及び新島、式根島、神津島等伊豆諸島近海の地震災害に関する意見書
 本年六月以来の三宅島における火山活動及び新島、式根島、神津島など伊豆諸島近海において頻発する地震活動により、各島で道路や通信、電気、水道といったライフラインが破壊されるとともに、農業、漁業及び観光等地域の基幹産業が深刻な打撃を受けている。
 特に三宅島においては、大規模な火砕流や降灰による泥流等の二次災害の危険が高まり、全島民が退去し、現在もなお都内各所において不自由な避難生活を余儀なくされている。
 東京都、三宅村、新島村及び神津島村は、早くから災害対策本部を設置し、国等の関係機関と連携することにより、被災者の救援や被害を受けた公共施設の復旧等に当たってきた。また、東京都は、島民の避難に際して、都営住宅を始め、福祉や教育関係の施設等への受入れなど、可能な限り対処してきたところである。しかし、今後、噴火や地震が更に活発化及び長期化し、被害が拡大することも予想されるため、当面の緊急措置のほか、島民の生活の立て直しや島の復興等が緊急かつ重大な課題となっている。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、三宅島火山災害及び新島、式根島、神津島等伊豆諸島近海の地震災害に関し、次のことを実現するよう強く要請する。
一 災害救助法の適用期間を延長するとともに、給付基準を拡大すること。
二 活動火山対策特別措置法による避難施設緊急整備地域の指定を行うとともに、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律などの関連法令を弾力的に運用すること。
三 特別交付税の増額や普通交付税の繰上げ交付などにより、各島に対して十分な財政支援を行うこと。
四 被災した島民の生活を立て直すため、雇用を確保するとともに、地域の産業復興に係る予算措置等を行うこと。
五 伊豆諸島住民の今後の不安を解消するため、噴火の予知、観測等監視体制を強化すること。
 以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
  平成十二年九月十九日
 東京都議会議長 渋谷 守生
衆議院議長  参議院議長  内閣総理大臣
大蔵大臣   文部大臣   厚生大臣
農林水産大臣 通商産業大臣 運輸大臣
郵政大臣   労働大臣   建設大臣
自治大臣   国土庁長官 あて

○六十七番(三宅茂樹君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 ただいま議題となっております議員提出議案第十六号については、原案のとおり決定されることを望みます。

○議長(渋谷守生君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、議員提出議案第十六号については、原案のとおり可決されました。

○議長(渋谷守生君) 追加日程第二及び第三を一括議題といたします。
   〔會田議事部長朗読〕
一、東京都名誉都民の選定の同意について二件
一二財主議第三八一号
平成十二年九月十九日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 渋谷 守生殿
   東京都名誉都民の選定の同意について
 このことについて、左記の者を東京都名誉都民に選定いたしたいので、東京都名誉都民条例第三条の規定により、東京都議会の同意についてよろしくお取り計らい願います。
       記
     隅谷三喜男
       略歴
現住所 東京都世田谷区
隅谷三喜男
大正五年八月二十六日生
大正五年   東京市麻布谷町(現東京都港区)に生まれる。
昭和十六年  東京帝国大学(現東京大学)経済学部を卒業。昭和製鉄所に勤務。
昭和二十三年 東京大学経済学部助教授となる。
昭和三十年  東京大学経済学部教授となる。
昭和四十年  東京大学経済学部長となる。
昭和四十四年 東京大学総長特別補佐を併任する。
昭和五十二年 東京大学退官。信州大学経済学部教授となる。
昭和五十三年 日本キリスト教海外協力会会長を務める。
昭和五十五年 信州大学退官。東京女子大学学長となる。昭和六十三年まで務めるとともに、この間、日本労働協会会長、雇用審議会会長、社会保障制度審議会会長を兼任する。
昭和五十七年 日本学士院会員となる。
昭和六十二年 東方学術交流協会を発足。中国人留学生への奨学金制度を創設する。
平成三年   運輸省等の委託を受けて、成田空港問題調査・平和的解決への道を模索する隅谷調査団を結成し、平成十年に最終所見を発表する。
同年     恵泉女学園理事長となる。
平成十二年  皇居での「講書始の儀」の進講者を務める。
       事績
隅谷三喜男氏
 大正五年八月二十六日、東京市麻布谷町(現東京都港区)に生まれる。
 昭和十六年、東京帝国大学(現東京大学)経済学部を卒業し、昭和製鉄所に勤務する。
 昭和二十三年、東京大学経済学部助教授となり、昭和三十年、同教授となる。翌年、カリフォルニア大学から招かれ、研究員として渡米。半年間、政治学の立場から日本の労働運動について研究生活を送る。
 昭和四十年、東京大学経済学部長となり、経済学部新館の建設や教授層の充実など、教育・研究体制の整備に手腕を発揮する。また、昭和四十四年には、東京大学総長特別補佐を務め、大学紛争解決のため奔走する。
 昭和五十二年、東京大学を退官後、信州大学教授となり経済学部の創設に貢献した後、昭和五十五年、東京女子大学学長に就任し、昭和六十三年まで務める。
 昭和五十五年に日本労働協会会長、他に雇用審議会会長、社会保障制度審議会会長を兼務し、五十五歳定年制を見直し、六十歳定年へ延長する案をまとめるなど、我が国の雇用労働、社会保障政策の新たな展開に大きな役割を果たしている。
 昭和五十七年、日本学士院会員となる。
 昭和六十二年、東方学術交流協会を発足させ、中国人留学生への奨学金制度を創設する。また、同年には、「世界平和アピール七人委員会」の委員となる。
 平成三年、運輸省等の委託を受けて、成田空港問題の調査・平和的解決への道を模索する隅谷調査団を結成。問題の解決に向けて尽力し、平成十年に最終所見を発表する。
 平成三年、学校法人恵泉女学園の理事長に就任し、現在に至るまで、建学の精神に則り女子教育の充実のため、同学園の教育体制の整備などをに尽力している。
 平成十二年、天皇皇后両陛下が年頭に学界の第一人者から講義を受けられる恒例の「講書始の儀」の進講者を務め、東アジア経済の混迷を、九〇年代末の韓国経済の金融危機を中心に、その現況を概説する。
 氏は、アメリカ労働経済学の観点を取り入れた独自の理論を打ち出すなど、労働問題の理論的、実証的な研究を行い、新たな労働経済理論を形成し、我が国の労働経済学に大きな影響を与えた。
 また、今後の我が国の社会保障制度の在り方を抜本的に検討する社会保障制度審議会に、学識経験者をメンバーとする社会保障研究懇話会をつくり本格的な議論を開始するなど、先駆的な取組を行った。
 さらに、都内私立学校の学長や理事長として、一貫して私学における女子教育を中心とした教育体制及び教育環境の充実・発展に貢献してきた。
 以上のような功績は、広く都民が敬愛し、誇りとするところである。
一二財主議第三八二号
平成十二年九月十九日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 渋谷 守生殿
   東京都名誉都民の選定の同意について
 このことについて、左記の者を東京都名誉都民に選定いたしたいので、東京都名誉都民条例第三条の規定により、東京都議会の同意についてよろしくお取り計らい願います。
       記
     山田五十鈴
       略歴
現住所 東京都千代田区
山田五十鈴
(本名・山田美津)
大正六年二月五日生
  大正六年 大阪府大阪市南区(現大阪
府大阪市中央区)に生まれ
る。
昭和五年   日活に入社。「剣を越えて」でデビューする。
昭和九年   新しく創立された第一映画に移籍する。
昭和十年   東京劇場で初舞台を演じる。
昭和十一年  溝口健二監督の「浪華悲歌」、「祇園の姉妹」に好演、第一線女優としての地位を確立する。
同年     第一映画の解散により新興キネマに移籍する。
昭和十三年  新興キネマを退社。六月東宝に入る。「鶴八鶴次郎」で長谷川一夫と共演。
昭和十七年  長谷川一夫と新演技座を結成。三月に東京宝塚劇場で旗揚げする。昭和十九年に最後の公演をし、昭和二十一年に復活したが、昭和二十七年に解散する。
昭和二十二年 長谷川一夫らと共に新東宝に移るが、フリーとなる。
昭和二十七年 「現代人」、「箱根風雲録」の演技によりブルー・リボン賞主演女優賞及び毎日映画コンクール女優主演賞を受賞する。
昭和三十年  「たけくらべ」等でブルー・リボン賞助演女優賞を受賞する。
昭和三十一年 「母子像」等でブルー・リボン賞主演女優賞及び毎日映画コンクール女優主演賞を受賞する。また、「流れる」等でキネマ旬報女優賞を受賞する。
昭和三十二年 「蜘蛛巣城」、「どん底」でキネマ旬報女優賞を受賞し、また、「蜘蛛巣城」で芸術選賞を受賞する。
昭和三十六年 五十鈴十種の「狐狸狐狸ばなし」を初演。
昭和三十八年 東宝演劇部の専属となる。「香華」(十種)、「丼池」、「明智光秀」でテアトロン賞を受賞する。
昭和三十九年 NHK大河ドラマ「赤穂浪士」で好評を博す。
昭和四十九年 「たぬき」(十種)で芸術祭大賞及び毎日芸術賞を受賞する。
昭和五十二年 「愛染め高尾」で二度目の芸術祭大賞を受賞する。
昭和五十八年 「太夫(こつたい)さん」等で芸術選奨文部大臣賞を受賞する。また「太夫(こつたい)さん」で三度目の芸術祭大賞を受賞する。
平成二年   第八回京都府文化賞特別功労賞を受賞する。
平成五年   文化功労者表彰を受ける。
同年     第十四回松尾芸能大賞を受賞する。
平成六年   朝日賞を受賞する。
平成十一年  第十四回ダイヤモンドレディ賞を受賞する。
       事績
山田五十鈴氏
(本名・山田美津)
 大正六年二月五日、大阪府大阪市南区(現大阪府大阪市中央区)に新派俳優の山田九州男を父に生まれる。母に手を引かれ、数えの六歳から常磐津、清元、舞踊などの芸事に励む。
 昭和二年、厳しい稽古のかいがあり、十歳で清元の師匠(清元梅美智)となる。
 昭和五年、両親の反対を承知で日活に入社し、大河内伝次郎の相手役でのデビュー作「剣を越えて」を始め、一年間で十五作品に出演する。
 昭和十一年、女優人生を大きく変える溝口健二監督作品の「浪華悲歌(なにわエレジー)」、「祇園の姉妹」での好演により、第一線女優としての地位を確立する。
 昭和十三年以降、長谷川一夫との共演作「鶴八鶴次郎」、「婦系図」、「蛇姫様」など数多くの作品に出演する。
 昭和二十七年には、「現代人」、「箱根風雲録」の演技が評価され、ブルー・リボン賞主演女優賞及び毎日映画コンクール女優主演賞を受賞する。
 昭和三十年、「たけくらべ」でブルー・リボン賞助演女優賞を受賞する。また、翌三十一年には、「母子像」等で二度目となるブルー・リボン賞主演女優賞及び毎日映画コンクール女優主演賞を受賞し、「流れる」等ではキネマ旬報女優賞を受賞する。
 昭和三十二年、「蜘蛛巣城」、「どん底」、「下町」では、二度目のキネマ旬報女優賞を受賞する。また、「蜘蛛巣城」が芸術選奨文部大臣賞を受賞するなど、名実ともに大女優となる。
 昭和三十八年に東宝演劇部の専属となる。また、翌三十九年のNHK大河ドラマ「赤穂浪士」では、確かな演技力が好評を博し、茶の間で広く人々から愛される。
 また、舞台では、昭和十年の東京劇場で初舞台を踏み、昭和三十四年の新劇合同公演「関漢柳卿」への出演、歌舞伎役者の中村歌右衛門や尾上松緑との共演を機会に舞台出演を積極的に行い、舞台女優として華やかな芸風と確かな演技力に磨きがかかる。
 昭和三十八年、「香華」、「丼池」、「明智光秀」でテアトロン賞を受賞し、昭和四十九年、「たぬき」で芸術祭大賞及び毎日芸術賞を受賞する。十数分にわたる浮世節の実演奏は評判となる。
 昭和五十二年に「愛染め高尾」、昭和五十八年に「太夫(こつたい)さん」で三度目の芸術祭大賞を受賞する。
 平成五年、文化功労者表彰を受ける。
 氏は、ひたすら女優としての道を歩み続け、たゆまぬ自己研鑽と熱い情熱により我が国の映画界・演劇界を代表する数々の名画と名舞台を残してきた。
 生涯現役を哲学とし、艶やかな美しさと種々の女性を演じきる氏の名演技は、都民をはじめとする多くの人々に感銘を与えた。
 以上のような功績は、広く都民が敬愛し、誇りとするところである。

○議長(渋谷守生君) お諮りいたします。
 本件は、いずれも知事の選定に同意することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、いずれも知事の選定に同意することに決定いたしました。

○六十七番(三宅茂樹君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこの程度をもって散会し、明二十日から二十五日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(渋谷守生君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(渋谷守生君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこの程度をもって散会し、明二十日から二十五日まで六日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、九月二十六日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後一時五十八分散会


文書質問趣意書及び答弁書

一二財主議第三九六号
平成十二年九月十一日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 渋谷 守生殿

   文書質問に対する答弁書の送付について
 平成十二年第二回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
   大西由紀子議員
   藤田十四三議員
   藤田愛子議員
   和田宗春議員
   松村友昭議員

平成十二年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 大西由紀子

質問事項
 一 多摩地域の医療について
 二 国立市立国立第二小学校問題について
一 多摩地域の医療について
  二十一世紀を目の前にして、高齢化・少子化の波はあらゆる社会システムに未来を先取りした変革を要求しています。いうまでもなく医療改革、医療保険制度改革は、この改革の中で、最重要な課題となっております。しかしながら、政府の医療改革は、なんら将来のビジョンを示すことなく、国民負担を先行させており、矛盾は未来に先送りされそうです。また、内容としても医療の高度化の中で、地域の医療供給は、必ずしも市民の要求に応えたものとなっていません。このことは都内にあっても変わりなく、多摩地域の小児科や耳鼻咽喉科などの医療供給が不十分であると考えます。
  そこで以下の点について伺います。
 1 多摩地域の医療供給の偏在について、どのように把握しているのか、またその原因について、伺います。
 2 市民より多摩南部地域における耳鼻咽喉科の不足状況を指摘する声があります。この中で、多摩南部地域病院の耳鼻咽喉科は、他の診療科目と比較して非常勤二名体制という状況で弱い体制であると聞きます。多摩南部地域の耳鼻咽喉科の不足状況に対する対策について、伺います。
 3 今後の多摩地域における地域医療の充実策について伺います。
二 国立市立国立第二小学校問題について
  国立市立国立第二小学校の卒業式等に係わる問題は、一部マスコミの報道を契機として、国立市立国立第二小学校及びその卒業生の教育環境に著しい悪化をもたらしています。
  そもそも、この問題は国旗・国歌の法制度化に端を発する問題です。私は、この制度化が、教育現場などにおいて、混乱となることを恐れ、平成十一年第三回定例会において文書質問しました。これに対し、都教育長より、「児童・生徒の内心まで立ち入って強制しようとする趣旨でない」例えば国歌を斉唱しないという態度をとっても「いじめや差別の問題が起こったり、成績等に関して不利益などがあってはならない」という答弁がありました。こうした見解は、平成六年の政府統一見解である「児童生徒の思想・良心の自由」を犯すものであってはならないという視点を踏まえたものです。しかし、法律上に何ら義務規定がないものであるにもかかわらず、教育現場に実態として、国旗や国歌が「強制」する事態が少なからず起き、国立にも混乱が生じたと言わざるを得ません。
  国立の小中学校では、授業の一貫として、教師と子どもたちが話し合いの中で長年子どもが主役の卒業行事が行われてきました。行事は自分たちで時間をかけて作り上げることが伝統として積み重ねられ、子どもたちも教師も誇りを持ってきたと聞きます。今回の卒業行事について一部誇張されて伝えられ、意識的に誹誇中傷を含む内容が先行し、子どもたちの教育環境の悪化につながったことは大変残念です。子どもの人権を守り、問題の本筋を捉え、真に教育の自治を重視する立場から、以下質問致します。
 1 一部マスコミの報道等を契機として、国立市立国立第二小学校卒業生が通う、中学校の周辺に街頭宣伝等が行われ、教育環境の悪化がもたらされ、授業の中止等の事態がありました。また、こうした行為によって、所属中学校がわかるバッジ等をはずして登校せざるを得ない事態が起きたことを都教育委員会は、どのように把握しているのでしょうか。この事態は、子どもの「思想・良心の自由」を実態として侵害し、さらに子どもの学習権を奪うものであると考えますが、いかがでしょうか。今後、同様の事態が再発するようであれば、他の関係機関を含めて厳正な対処が必要と考えますが、併せて見解を伺います。
 2 今回の平成十二年三月の卒業式等の行事の遂行にあたって、この「児童・生徒の内心の自由」を守ることを、どのように都の教育現場に周知されたのか、併せて伺います。
 3 国旗・国歌の法制化にあっても、政府見解や教育長見解にある子どもの「思想・良心の自由」を守っていくことは重要であると考えます。仮に未熟な判断にもとづく発言や態度であったり、自己の考え方が他の人間にわかることを恐れる態度をとったとしても、この態度がいじめや差別につながらないようにすることが、現場の校長及び教員の不可欠の義務であると考えますが、見解を伺います。
 4 一部報道の後、マスコミによって、国立市立国立第二小学校卒業生に対する、取材及びプライバシーの侵犯に係わる調査等が行われていると聞きます。子どもたちの人権や教育環境を守る立場から、こうした事態についての見解と今後の対応を伺います。
 5 今回の事態について、従来培ってきた信頼関係と異なる、学校の新しい管理職と子どもたちの関係に問題がある、あるいは管理職の態度そのものに問題があるとの指摘が地域にあります。今回の事態について、教員だけでなく、保護者や児童を含めた、幅広い層の市民の意見や議論が必要と考えますが、見解を伺います。
 6 都の教育委員会は、今回の事態について国立市教育委員会に対し、再三報告書の提出、そして再提出を求めていると聞きます。現場の実態を離れて、縦型の締め付けを行うことでは、地域での不信を作り出しかねません。地方分権の時代にあって、政治的中立性を踏まえ、都の関与は抑制的であるべきと考えます。教育の自治を進める立場から、都の教育委員会としては、国立市教育委員会の自治を最大限尊重すべきと考えますが、見解を伺います。
 7 個別卒業式だけでなく、卒業行事について、児童・生徒が積極的に意見を述べていくのは、子どもの権利条約における「意見表明権」の具体化であると考えますが、見解を伺います。
 8 教育現場については、「地域に開かれた学校教育」をめざすとの明確な方向性が提起されています。しかし、この解決は、縦型の権力などを使う手法では解決できないと考えます。問題は、地域の教育力を踏まえ、地域の子どもたちや、保護者を含んだ開かれた場の中で解決されるべきと考えますが、見解を伺います。
 以上

平成十二年第二回都議会定例会
大西由紀子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 多摩地域の医療について
  1 多摩地域の医療供給の偏在について、どのように把握しているのか。また、その原因についても、併せて伺う。

回答
  多摩地域の医療供給についてですが、多摩地域の五つの二次保健医療圏のうち、必要病床数に満たない圏域は平成十一年一月一日の時点で四医療圏でしたが、平成十二年七月一日現在では三医療圏となっています。
  多摩地域には、区部に比べて、特例許可老人病棟、いわゆる老人病院が多い反面、大学病院等高度先進医療を提供する病院が少ないなどの医療特性があります。
  その原因については、人口の増加など種々の要因があると考えています。

質問事項
 一の2 多摩南部地域病院の耳鼻咽喉科は、他の診療科目と比較し、非常勤二名体制という状況で弱い体制である。多摩南部地域の耳鼻咽喉科の不足状況に対する対策について伺う。

回答
  南多摩保健医療圏を含む多摩地域の耳鼻咽喉科医療について、都はこれまで休日、夜間等必要な時に受診できるよう、耳鼻咽喉科医療機関の輪番制による休日昼間の初期救急医療及び杏林大学を中心とする二次救急医療体制を整備してきました。
  平成十二年度からは、医療体制が比較的手薄となる休日及び夜間帯の耳鼻咽喉科の初期及び二次救急医療体制の強化に、更に取り組んでいます。

質問事項
 一の3 今後の多摩地域における地域医療の充実策について伺う。

回答
  多摩地域における地域医療の充実策については、都はこれまで、不足する病床の整備を促進するため、「病床整備資金利子補助制度」や「公的病院補助制度」により民間病院等に対して支援を行ってきました。
  今後とも、これらの制度を活用して、地域医療の確保に努めてまいります。
  また、医療機能実態調査により医療機能や医療資源の状況を把握した上で、市町村や医師会等とも緊密な連携を図り、既存の医療資源を最大限活用していくようにいたします。あわせて、救急医療体制については、小児医療を中心に更に強化を図り、救急医療全体のレベルアップに努めてまいります。

質問事項
 二 国立市立国立第二小学校問題について
  1 同校卒業生が通う中学校周辺での街頭宣伝等により、授業中止等の事態が生じ、また、この行為により、所属中学校の判別ができるバッジ等を外して登校せざるを得ない事態となったことを、都教育委員会はどう把握しているのか。
    この事態は、子どもの「思想・良心の自由」を侵害し、学習権を奪うものと考えるが、所見を伺う。
    同様の事態が再発するようであれば、他の関係機関を含め厳正な対処が必要と考えるが、所見を伺う。

回答(教育長)
  国立市教育委員会及び学校は、児童・生徒の安全指導について通知するとともに、警察署との連携を図り、安全確保に努めているところです。
  公立学校の教育は、法に基づいて、公正中立に行われるべきであり、それを阻害する行為はどんなものであれ、あってはならないことと考えます。
  都教育委員会は、もし、このようなことがあれば、安全指導の徹底を図るよう国立市教育委員会に対して指導・助言していきます。

質問事項
 二の2 今回の、平成十二年三月の卒業式等の行事の遂行にあたり、「児童・生徒の内心の自由」を守ることを、教育現場にどう周知したのか、伺う。

回答(教育長)
  学校教育において、国旗・国歌の意義を理解させ、それらを尊重する態度を育てることは極めて重要であり、校長、教員は、学習指導要領に基づいて、児童・生徒に国旗・国歌の指導をしています。このことは、児童・生徒の内心にまで立ち入って強制しようとする趣旨のものではなく、あくまでも教育指導上の課題として指導を進めていくことであり、この趣旨も含め、各区市町村教育委員会に周知しています。

質問事項
 二の3 未熟な判断に基づく発言や態度などが、いじめや差別につながらないようにすることが、校長及び教員の不可欠な義務と考えるが、見解を伺う。

回答(教育長)
  都教育委員会は、児童・生徒が国旗・国歌の意義を理解し、尊重する態度を育て、すべての国の国旗と国歌にひとしく敬意を表する態度を育てるよう、学習指導要領に基づき区市町村教育委員会を指導してきたところです。
  このことは、思想や良心の自由を制約するものではないと認識しています。
  児童・生括が単に「斉唱しない」ことを理由にいじめや差別を受けたり、あるいは児童・生徒自身の成績に影響が及んだりすることは、あってはならないことと考えます。

質問事項
 二の4 マスコミにより、同校卒業生に対する取材及びプライバシーの侵犯に係わる調査等が行われているが、子どもたちの人権や教育環境を守る立場から、こうした事態についての見解と、今後の対応について伺う。

回答(教育長)
  マスコミによる卒業生に対する取材については、国立市教育委員会から報告を受けていません。仮に、取材が行われプライバシーの侵害に関わるような事実があれば、適切に対応するよう、当該教育委員会を通して各学校に指導・助言していきます。

質問事項
 二の5 今回の事態について、教員だけでなく、保護者や児童を含めた幅広い層の市民の意見や議論が必要と考えるが、見解を伺う。

回答(教育長)
  学校教育は、児童・生徒及び保護者との信頼関係に基づいて行うことが重要です。国立市教育委員会への聴き取りによると、校長は学習指導要領に基づいて国旗掲揚・国歌斉唱の適正な実施を図るとともに、児童との信頼関係を築くよう努めてきましたが、一部の教員等の反対により適正な実施ができませんでした。
  今後、学校が児童・生徒や保護者との信頼関係の修復に努めるよう、当該教育委員会を通して指導・助言していきます。

質問事項
 二の6 都の教育委員会は、国立市教育委員会に再三の報告書の提出を求めるなど、現場の実態を離れ、縦型の締め付けを行っている。教育の自治を進める立場から、国立市教育委員会の自治を最大限尊重すべきだが、見解を伺う。

回答(教育長)
  都教育委員会は、区市町村教育委員会に対して、法に基づいて指導・助言及び調査等を行うことができます。
  国立市の問題は、市の公立学校の設置者である国立市教育委員会が解決していくべきものと考えます。国立市教育委員会では、改善への努力を開始しており、都教育委員会は市教育委員会の主体性を尊重するとともに支援していきます。

質問事項
 二の7 個別卒業式だけでなく、卒業行事について、児童・生徒が積極的に意見を述べていくことは、子どもの権利条約における「意見表明権」の具体化であると考えるが、見解を伺う。

回答(教育長)
  卒業式や入学式は、学習指導要領の趣旨に基づき、児童・生徒が学校生活に有意義な折り目をつけ、厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活への動機付けとするため、校長の責任において行われるものです。
  また、卒業式に関連する「祝う会」などの児童活動は、学校生活の充実と向上のために、児童・生徒の話し合いや協力を通し、その考えや意見を生かしながら実施されるものと考えます。

質問事項
 二の8 教育現場では、「地域に開かれた学校教育」を目指す明確な方向性が提起されているが、この解決は縦型の権力を使う手法では解決できないと考える。地域の教育力を踏まえ、地域の子どもたちや、保護者を含んだ開かれた場の中で解決されるべきと考えるが、見解を伺う。

回答(教育長)
  学習指導要領に沿って学校教育が正常に行われるよう、学校運営に保護者や地域住民の参画を求め、意見交換を行う場を設けて、地域全体から学校及び校長への支援体制をつくることが重要と考えます。

平成十二年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 藤田十四三

質問事項
 一 バランスシートにかかる中間報告について
 二 行政評価制度について
 第二回定例会に次の文書質問を提出し、知事並びに関係局長の誠意ある回答を求めます。
 一 バランスシートにかかる中間報告について
 二 行政評価制度について
一 バランスシートにかかる中間報告について
  先般、東京都参与中地宏氏と五人の専門委員から「バランスシートについての中間報告」が行われました。
  今回の「中間報告」では、「貸借対照表」ばかりでなく、民間の損益計算書に当たる「行政コスト計算書」、及び資金の流れを把握する「キャッシュ・フロー計算書」の三本立てによる財務諸表の分析、部門別バランスシート、そして東京都全体の連結バランスシートの作成など新たな提言が行われています。
  この「中間報告」は、公認会計士による提言だけに、これまでの都内部での試みとは異なって、客観的でかつ副題にあるとおり冷静な分析がなされているとうけとめます。
  平成十一年第二回定例会本会議質問で私は、官庁会計そのものに企業会計手法を導入することの行政効果について疑問を表明しましたが、今回の「中間報告」を読んだ後も私の疑問は氷解しませんでした。
  更に、付言すれば三本立てによる財務諸表の分析や連結バランスシートについてはさまざまな検討課題が残されているようにもとれ、それらの点については後日最終報告が行われた段階で改めて、その有用性などについて質してゆきたいと考えます。
  次に、個別の施策評価、即ち、個々の施設ごとにバランスシートを作成して、その会計数値から一定の評価を下していくという手法についてであるが、前述のとおり、私は、本会議質問で「バランスシートはミクロで使え」として主張してきたところであり、今回の「中間報告」の中で、部門別バランスシートの必要性が述べられている点は評価をいたします。
  しかしながら、今回部門別モデルとして採用された多摩ニュータウン関連事業は、本文でも触れられているとおり、宅地を造成し、それを処分(販売)して経費を回収し採算を取っていくという、民業に極めて近い事業であり、企業会計手法による分析になじみやすいものであったことに併わせ、この事業は既にその限界が誰の目にもはっきりしており、企業会計手法によってはじめてその実体が浮き彫りにされた、というものではないと思います。
  以上、「バランスシートの中間報告」に対し私の率直な考えを示しつつ、今後の都の取組みに期待する立場で以下の諸点について明快な見解を求めます。
 1 第一に、今回の分析は単に事実の追認に過ぎず、企業会計手法による財務分析の有用性が立証されたとは言い難いのではないか。
 2 第二に、今後、今回とは異なった性格の事業についてもモデル分析を行う必要があると考えるがいかがか。
 3 第三に、その場合には局単位という括り方ではなく、さらに細分化した個別の事業といったセグメントの取り方も検討すべきと考えるがどうか。
 4 第四に、今回の中間報告では、バランスシートの分析によって事務事業別の費用を明確に把握することができ、行政評価のための一つの資料を提供することができるとの見解にふれお尋ねいたします。
   確かに、財務諸表による分析にもそれなりの意味はあるが、行政が一定の政策判断に基づいて実施している事業や施策を、単に会計数値のみによって評価しようとすることには限界があるのではないか。
 5 第五に、今後重要となるのは、現在都が試行として行っている「行政評価制度」と企業会計手法による財務分析とを効果的に連携させていくことではないかと考えるがいかがか。
 6 第六に、バランスシートで表現される会計数字はあくまでも一面的なものであり、事業全体を見通すものではないことを思うとき、今回の中間報告に言う「機能するバランスシート」を、都という巨大な行政体の中で文字どおり機能させるためには、「数字」は行政の役割や政策判断という、より高次元な要素を補完するものだという認識を基本にすえるべきと思うがどうか。
二 行政評価制度について
  行政評価制度の導入について知事は、第一回定例会の所信表明の中で「試行を十二年度に拡大し、評価結果の活用やフォロー体制の検討を含め、十三年度の本格実施に向けた取組を進める」と述べています。
  この際、いくつかの点で「行政評価制度」について私の見解を明らかにしておきたいと思います。
  私は、行政評価制度導入の目的を「行政が行うさまざまな施策や事業活動の目的と結果を客観的な基準に基づいて評価するとともに、わかりやすい指標を通じて行政の実態を開示し、次の期の政策決定に反映させていくこと」であると考えています。
  同時に、こうした取組は、都政を都民に向けて開かれたものにするとともに、客観的でオープンな論議を広く喚起し、都民にとって真に必要な施策の選択や事業手法の効率化を促進する原動力ともなる、極めて意義のある試みであるとうけとめています。
  従って、私は、都が行政評価制度の導入を決めたことは大いに評価し、支持するものであるが、同時に、この制度が庁内はもとより都の内外に大きな影響・効果をもたらすものであることを考えるとき、「十三年度から本格実施」というスケジュールにいささかの不安を表明せざるを得ません。端的に言って未だ準備不足なのではないかというのが私の率直な危惧であります。
  本格実施ともなれば、最終的な評価に基づいて、事業を実施している各局に公式な責任・義務が生じることとなろうが、ルールそのものが確定していない中で「評価の公平性」が担保できるのか。評価への不信や不安が「本音」の議論を阻害することになる恐れはないのでしょうか。
  拙速に走るよりも、ここは今しばらく試行を続け、十分な検証・検討を繰り返すことによって制度の完成度を高めていく方が、最終的にはより良い結果が生まれるのではないか。これが私の基本的な考え方であります。
  このような観点から以下具体的にお尋ねいたします。
 1 第一に、「十三年度から本格実施」としている点について、「本格実施」とは具体的にどういう状態を言うのか。「試行」とはどこが違うのか。
 2 第二に、初めて試行が行われた十一年度の結果は、モデルとされた三十七事業の評価については詳細な報告がなされたが、完成させるべき評価制度自体の枠組みや、評価の手法、客観的な評価基準の求め方など、本来、試行の目的とされるべき事項についてほとんど検討されていないとの印象を受けた。
   十一年度試行の結果についてはどのようなとりまとめを行ったのか。
 3 第三に、本格実施に向けた制度の概要を、左記の点を中心に早急に示してほしい。
  1 評価の対象となる事業数は年間どの程度を予定しているのか。
  2 対象事業は誰がどのように選択するのか。
  3 年間のスケジュールはどのようになっているのか。
  4 この制度の運用に要する事務量はどの程度と想定しているか。
  時代の大きな転換点を迎え、都政もより柔軟で効率的な体質へと改革を遂げていかなければならない今、行政評価制度の役割は重要であるが、そのためには何よりも、定量的で論理的な、客観性の高い評価システムをきちんと構築することが不可欠であります。
  また、各局も、「行政改革は決して上から押しつけられて行うものではない」ということを改めて認識し、今後はこの行政評価システムを活用して、自らの不断の創意工夫を忘れない取組を広く起こすべきであります。
  全庁的な一層の努力を求めておきたい。

平成十二年第二回都議会定例会
藤田十四三議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 バランスシートにかかる中間報告について
  1 「バランスシートの中間報告」の今回の分析は、単に事実の追認に過ぎず、企業会計手法による財務分析の有用性が立証されたとは言い難いのではないか、所見を伺う。

回答
  多摩ニュータウン事業については、これまでも土地処分が進まないなどの課題が指摘されていましたが、今回の事業別バランスシートを作成したことによって、あらためて事業の採算性など財政上の問題点が客観的に示されたと認識しています。

質問事項
 一の2 今後、今回とは異なった性格の事業についてもモデル分析を行う必要があると考えるが、所見を伺う。

回答
  都の行う事業には、今回モデルとして取り上げた多摩地域における新住宅市街地開発事業や相原小山地区の区画整理事業のように経済性を重視する点で民業に極めて近い事業もありますが、その多くは公共性、公益性を帯びており、都税等の一般財源を投入している事業です。
  したがって、御指摘のように、今後、今回の多摩ニュータウン事業とは性格の異なった事業についてもモデル分析を行い、部門別バランスシートによる分析の有用性等をさらに検証していく必要があると考えています。

質問事項
 一の3 その場合には、局単位という括り方ではなく、さらに細分化した個別の事業といったセグメントの取り方も検討すべきと考える。所見を伺う。

回答
  今回の多摩ニュータウン事業をモデルとして行った分析においては、特別会計という事業単位での分析を試みていますが、今後は、さらに細分化した個別の事業を単位として分析することも研究課題のひとつであると認識しています。

質問事項
 一の4 財務諸表による分析にもそれなりの意味があるが、行政が一定の政策判断に基づき実施している事業や施策を、単に会計数値のみにより評価することには限界があるのではないか。所見を伺う。

回答
  行政がそれぞれの政策について評価を行う場合には、いうまでもなく総合的な検証に基づくべきであり、財務諸表による財政分析についても、あくまで判断材料のひとつとして位置づけられると考えています。

質問事項
 一の5 今後重要なのは、現在都が試行として行っている「行政評価制度」と企業会計手法による財務分析とを効果的に連携させていくことである。所見を伺う。

回答
  都は多様な事業を展開しており、事業の性格によってはバランスシートの作成が行政評価を行う際の貴重な判断材料のひとつとなりうると考えています。
  したがって、今後、御指摘のとおり、バランスシートによる分析と行政評価制度との効果的な連携を検討していく必要があると認識しています。

質問事項
 一の6 今回の中間報告にいう「機能するバランスシート」を、都という巨大な行政体の中で文字どおり機能させるためには、「数字」は行政の役割や政策判断という、より高次元な要素を補完するものという認識を基本にすえるべきだが、所見を伺う。

回答
  「機能するバランスシート」は、都が行うさまざまな施策の結果について、会計数値という側面から都民に対してわかりやすい形で説明責任を果たすとともに、都が一定の政策的な判断に基づいて行っている活動に対する評価を補完するものです。
  バランスシート等の財務諸表の導入に当たっては、こうした認識に立ち、文字どおり「機能」させていくことが重要であると考えています。

質問事項
 二 行政評価制度について
  1 行政評価制度を「十三年度から本格実施」としているが、「本格実施」とは具体的にどういう状態をいうのか。「試行」とはどこが違うのか。所見を伺う。

回答
  行政評価制度の本格実施とは、現在策定中の東京都政策指標を基本的指標とし、一定のルールのもと、全ての施策・事業を対象に、継続的に評価を実施し、その結果を予算編成や事務事業の見直しに反映する仕組みが確立していることと考えています。
  平成十一年度からの試行は、都政における重要課題の中から評価対象を選定し、実際に評価を行うことにより、評価方法や評価結果の活用の仕組みなど制度導入に当たっての課題を整理し、その改善策の有効性・妥当性を検証していくものです。
  本格実施後においても、常に新たな問題点の発見と課題の検証を重ね、都にふさわしい制度となるよう努めていきます。

質問事項
 二の2 十一年度試行の結果についてどうとりまとめを行ったのか、伺う。

回答
  平成十一年度の試行の結果、明らかになった課題は、
 ・都民に分かりやすく、かつ、施策や事務事業を的確に評価できる指標の設定
 ・事務事業執行当初からの目標値の設定
 ・事業の特性に応じた評価方法の開発
 ・費用対効果などについて定量的分析を充実するための手法の研究
 などであり、評価結果報告書に取りまとめたところです。

質問事項
 二の3 評価対象の事業数、対象事業の選定方法、年間のスケジュール、制度の実施に伴う事務量など、本格実施の際の制度の概要について、所見を伺う。

回答
  評価対象の事業数、対象事業の選定方法など、本格実施の際の制度の概要については、次のような考え方に沿って、検討しています。
  評価対象の事業数、対象事業の選定方法は、年度毎に、都政の重要課題に対応する事務事業や改善すべき課題が認められる事業などに重点を絞り、行政評価を所管している総務局が、関係部署とも調整しながら選定していきます。
  年間のスケジュールは、評価の結果を事務事業の見直しや予算編成に反映させるとともに、都民に公表し意見を求めることができるよう、適切に設定していきます。
  制度実施に伴う事務量は、対象となる事業数や内容により異なってきますが、的確な評価が効率的に行われる制度となるよう努めていきます。
  今後、試行と検証を重ねる中で、都にふさわしい制度を確立し、その概要について、早急に示していきたいと考えています。

平成十二年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 藤田愛子

質問事項
 一 分離信号について
 二 住民基本台帳ネットワークシステムについて
 三 不燃ごみ杉並中継所問題について
 四 東京都の防災訓練について
一 分離信号について
  青信号の横断歩道で歩行者が右左折の車両に巻き込まれ、犠牲となる事故が後を絶ちません。左折ダンプの事故で長男を失った両親が、「信号の構造そのものが事故につながっているのではないか」と歩行者が横断中は全方向の車両を停止させる「分離信号」に改善するよう、東京都と警視庁に求める署名運動を行ってきました。「分離信号」は、全く普及していない訳ではなく、その代表例は、歩行者が斜めにも横断できるスクランブル交差点があります。警視庁によると、スクランブル交差点以外は、分離信号という特別な「施設」はなく、あくまで信号の点滅をどう運用するかという問題だと言います。また、交差点での事故は「運転手の注意で防ぐことができた事故」とし、行政の交通事故死の対策は運転手に対してのみで、もっとも弱い歩行者がおざなりにされているのが現状です。
  歩行者の横断時に交差点の車両すべてを停止させる「分離信号」の導入を訴え、歩行者を守る立場から信号のあり方を見直そうという問題提起が、各地で活発になっています。
  「分離信号」にするかどうかは、都道府県の警察の判断です。
  「分離信号」にすると渋滞する。車両が脇道に流れる。歩行者が待ちきれず信号無視する。また交通ルールになじまない。などと否定的です。「分離信号」を数年前から導入している埼玉県警では「待ち時間が長くなっても右左折が歩行者に遮られなくなり、車の流れはかえってスムーズになっている」と「分離」の効果をあげています。また、一昨年九月には県内十カ所の交差点を一斉に分離信号化、スクランブル交差点を含めて県内四十一カ所の交差点が分離信号となりました。
  子どもの安全のためには、道路建設より安全な道路づくりを目指すとともに、通学路の分離信号化をすすめ、歩行者優先の安全な交通システムを導入し、信号や歩道を改善して、道路を高齢者やこどもに優しいものにすることが必要です。
  以上の主旨より警視庁に質問いたします。
 1 警視庁管内の分離信号機の設置状況を伺います。
 2 左折車による巻き込み事故の状況を伺います。
 3 分離信号が何故増えないのか伺います。
 4 分離信号機の設置基準と今後の方策を伺います。
二 住民基本台帳ネットワークシステムについて
  住民基本台帳ネットワークシステムは、昨年の改正により高度情報通信社会や地方分権の流れに対応するとして導入されます。このシステムは、各市町村で管理する住民基本台帳を基礎に全国すべての市町村及び都道府県を電気回線で結んだネットワークシステムであり、これらを越えた住民サービスの提供や個人を単位とするコードの設定により本人確認を容易に行うことができるとされています。
  高度情報社会の到来の中で、住民の利便性の向上や、事務の簡素化・効率化という効果はある程度予想されるものの、プライバシーが侵される、知らぬ間に個人情報が流失されるのではないか、などの個人情報の保護やセキュリティの側面で問題はないのかどうか。あるいは今後のシステムの設計による投資的経費の増大など危倶される側面があります。
  そこで以下の点について伺います。
 1 住民基本台帳については、これまで市区町村の事務であり、そのデータの処理について都に条例がありません。詳細については、今後決定されるにしてもこのネットワークシステムを使用していくことにおいて、OECD八原則を盛り込んだ都としての基本的な考え方や事務処理についての範囲、第三者的審査機関の設置等、システムの運用などに係わる新条例の整備は不可欠だと考えますが、見解を伺います。
 2 本人確認については、システムによる確認の他に、住民の任意選択の意思を尊重して、従来方式による手続きを担保していくことが必要であると考えますし、システムの高度化によっても、手続きの任意性が担保されるべきと考えますが、見解を伺います。
 3 現在、このシステムについては、どのような主体で協議・検討が進み、どのようなタイムチャートで準備が進んでいるのか、伺います。
 4 現段階では、どのような費用が想定できるのか、伺います。
 5 都内自治体の中でも、個人情報の保護という点で慎重な自治体もあり、今後のシステムについての費用対効果の問題で運用について慎重な自治体が存在することもあり得る。法律上の制約と任意の部分があると考えますが、それはどのような内容か。また、こうした自治体の任意性について、地方自治の立場から担保されるよう国に働きかけるべきと考えますが、見解を伺います。
 6 都の事務において、システムの基本や本人確認情報の取り扱いについては、今後精力的に検討されると考えるが、どのような組織で検討されるのか、またシステムを活用する事務とするか否か、についての判断基準は、どのような内容か、伺います。
 7 本システムを民間部門が利用することについては禁止されている。しかし今、納税者番号制の導入が検討されるなど、住民台帳コードの統一番号化、民間利用への拡大の危険が払拭できない。都として、あくまで民間利用禁止の姿勢を堅持すべきだと考えますが、見解を伺います。
 8 今後、このシステムの運用を検討するにあたり、国の個人情報保護法制整備の動きも踏まえ、個人情報保護条例の改正も考慮することになると考えるが、その際これまでの個人情報保護を最大限配慮するという基本的考え方を貫くべきと考えますが、見解を伺います。
三 不燃ごみ杉並中継所問題について
  一九九九年十一月に設置された杉並中継所周辺環境問題調査委員会は三月三十一日に調査結果を報告しました。そこでは1平成八年春から夏にかけて発生した健康不調の状況は、その後最近に至るまでより広い地域で散発的に新たな健康不調の訴えがある現状とは異なる現象である。2平成八年春から夏にかけて集中して発生した中継所周辺の住民の健康不調の訴えの主な原因は、中継所の未処理の排水に含まれていた硫化水素が住宅内の配管や道路上の雨水桝から放出されたためである。また、同時期に井草の森公園の添え木に含まれていた防腐剤の成分の揮発による影響も否定できない。3中継所は廃水処理をし、公園の添え木の防腐剤も揮発して減少しているのでこれらの要因による健康不調の新たな発生はない。としています。そして、中継所の排気については、排出されている物質は基準以下であるとしています。また、平成八年当時の有訴者は中継所周辺に偏っていたが、平成九年以降は中継所との関連を示していないとしています。
  そこで以下の質問をします。
 1 硫化水素の毒性、クレオソート油の毒性はそれぞれ報告書にありますが、これらの物質に本来、感作性はないとされています。平成九年六月までに北里大学病院眼科で化学物質過敏症と診断された人が十名中九名いて、現在でも症状の抜けない人がいることを考えると、感作性のない硫化水素だけが原因とは結論づけられないのではないかと考えます。見解を伺います。
 2 今年に入り、国立市から杉並区井草四丁目に引っ越しをしてきた方から、いわゆる杉並病と同様の症状の訴えがありました。また、中継所に近い練馬区の方も同様の症状をこれまで訴えておられましたが、症状が重く全身痙攣で救急車で運ばれるなどの状況も起きています。平成八年夏以降にも健康不調者が何人も出ています。これらの症状は平成八年当時に起きた症状と同様で、硫化水素が発生していない現在としては、原因を他に見るのが当然であると考えますが、見解を伺います。
 3 新宿中継所の近くにある海城中学では、先生が声が出ない、父母は学校へ行くと翌日は寝込むなど、の訴えをしていると聞きます。都は新宿中継所周辺においても聞き取り調査をする必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 4 中継所周辺住民の健康被害の原因は硫化水素およびクレオソート油とされ、因果関係がはっきりする健康被害者については、都が補償するとしていますが、補償基準を伺います。
四 東京都の防災訓練について
  九月三日に行われる防災訓練について四月二十一日付けで、総務局災害対策部から、東京都総合防災訓練「ビッグレスキュー東京二〇〇〇首都を救え」として発表されました。
  これまで行われてきた都の防災訓練の際の自衛隊参加の規模はせいぜい五百名というものでしたが、今回の訓練の総指揮は、市ヶ谷に移転したばかりの防衛庁の統合幕僚会議議長が行い、その下で陸・海・空の三自衛隊員四千名が、初の統合訓練を行うとのことです。自衛隊を中心に警察、消防、海上保安庁を組み込んだ今回の防災訓練の内容を見ますと、震災時に動くとは思えない地下鉄の利用、パラシュート降下、偵察活動など防災とは名ばかりの自衛隊による「軍事訓練」であり、防災訓練の主旨から大きく離れているとの意見も地域にあります。五年前の阪神大震災の教訓をしっかり生かし、都民の納得のいく防災訓練にしていただきたいものです。
  以上を踏まえ以下質問します。
 1 これまでの訓練と異なり、自衛隊員四千名が参加した訓練になった理由を説明してください。
 2 訓練の予算の内容を説明ください。
 3 訓練周辺の住民の中には、自衛隊の部隊行動について、「軍事訓練」として危惧を抱く住民が少なからずいます。今後、こうした危倶について、説明を含めてどのような対応をするのか、具体的に伺います。
 4 正式参加の自治体以外でも、訓練周辺の自治体への説明は必要と考えます。これまでどのように対応してきたのか、今後どう対応するのか、伺います。
 以上

平成十二年第二回都議会定例会
藤田愛子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 分離信号について
  1 警視庁管内の分離信号機の設置状況を伺う。

回答(警視総監)
  平成十二年七月末現在、三百四十三箇所設置しております。

質問事項
 一の2 左折車による巻き込み事故の状況を伺う。

回答(警視総監)
  平成十一年中、車両が信号機のある交差点を左折する際に同一方向に進行する歩行者を被害者とする交通人身事故は、発生件数百五十五件、死者数一人、負傷者数百五十五人となっております。

質問事項
 一の3 分離信号が何故増えないのか、伺う。

回答(警視総監)
  歩行者と車両を分離する信号機は、その交差点だけについて言えば、歩行者と車両とが交錯することがなくなり、理論上は安全性が高まると考えられます。
  しかし、その反面、それぞれ待ち時間が長くなることにより、歩行者の信号無視、新たな交通渋滞の誘発、その渋滞を避けようとする車両による生活道路への進入、その沿道や信号機の無い交差点等での新たな危険の発生なども考えられます。
  したがって、分離信号機は、当該交差点の形状、交通流・量等の交通状況を総合的に勘案して必要な箇所について整備に努めてきたところであります。

質問事項
 一の4 分離信号機の設置基準と今後の方策について、伺う。

回答(警視総監)
  分離信号機の設置基準を定めたものは特にありませんが、
 ・左折する運転者が直進していると錯覚するような角度の緩い交差点
 ・横断歩行者が多いために、車両が右左折しにくく、無理に歩行者の隙間を進行するような状況のある危険性の高い交差点等交差点の形状及び見通し、歩行者、車両の交通流・量等現場の道路交通の状況等を総合的に勘案した上で、今後とも、必要な箇所について分離信号機の整備について検討してまいります。

質問事項
 二 住民基本台帳ネットワークシステムについて
  1 住民基本台帳ネットワークシステムの使用には、OECD八原則を盛り込んだ都としての基本的考え方や事務処理の範囲、第三者的審査機関の設置等、システムの運用に係わる新条例の整備は不可欠だが、見解を伺う。

回答
  住民基本台帳ネットワークシステムにおける個人情報の保護措置については、いわゆるOECD理事会勧告八原則を踏まえ、制度面・技術面・運用面ともに国際的基準に適合した対策を講じることとされています。
  改正住民基本台帳法により、都道府県の事務において本システムを利用する場合には、その事務を条例で規定することとされ(法第三十条の八)、また、都道府県は、第三者的な審査機関として本人確認情報の保護に関する審議会を条例により設置することとされています(法第三十条の九)。
  したがって、御指摘のとおり、システムの運用に当たっては、条例の整備を行っていく必要があると考えています。

質問事項
 二の2 本人確認については、システムによる確認のほか、住民の任意選択の意思を尊重し、従来方式による手続きを担保していくことが必要である。システムの高度化によっても、手続きの任意性が担保されるべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  各種申請等における本人確認については、本システムの導入後は、区市町村において発行する住民基本台帳カードにより行うことが可能となります。
  しかし、カードの取得あるいはその利用については、本人の任意によるため、従来の住民票の写し等による確認方法も存続します。

質問事項
 二の3 現在、このシステムは、どのような主体で協議・検討が進み、どのようなタイムチャートで準備が進んでいるのか、伺う。

回答
  本システムは、コンピュータ・ネットワークによる地方公共団体共同のシステムであるため、昨年十月に全都道府県の主管部長で構成する「住民基本台帳ネットワークシステム推進協議会」を設置し、システム構築に係る協議・検討を進めているところです。
  システム構築に係る設計等の事務については、現在、全都道府県から委任を受けた指定情報処理機関として、財団法人地方自治情報センターが基本設計作業を完了し、区市町村に対して説明会を行ったところです。
  その後は、平成十三年度にかけて、ネットワークシステムの基本設計等に基づき、区市町村においては既存の住民基本台帳システムの改修等を、都においては区市町村とのネットワークの構築等をそれぞれ行い、平成十四年八月にはシステムが稼働することになっています。
  また、住民基本台帳カードによる住民票の写しの広域交付などのサービスは、平成十六年度までに開始される予定です。

質問事項
 二の4 現段階では、どのような費用が想定できるのか、伺う。

回答
  自治省から示された概算によると、全国ネットワーク回線の整備費や各都道府県内ネットワーク回線の整備費などの費用負担があり、都にかかわる経費は、九億二千万円が見込まれています。また、システム稼働後は、ランニングコストとして年間三億円余の経費が見込まれています。
  一方、区市町村においては、既存の住民基本台帳システムの改修経費やコミュニケーションサーバの整備等の経費が必要となってきます。

質問事項
 二の5 都内自治体の中でも、個人情報の保護という点で慎重な自治体もあり、システムの費用対効果の問題で、運用について慎重な自治体の存在もあり得る。法律上の制約と任意の部分があるが、それはどんな内容か、伺う。また、自治体の任意性を地方自治の立場から担保するよう国に働きかけるべきだが、併せて見解を伺う。

回答
  本システムは、住民票の広域交付や転出入の手続の簡素化等住民の利便性を増進するとともに、行政における本人確認事務の簡素・効率化をも図るものです。
  しかし、個人情報保護等の観点から、本人確認を行うことができる事務は、住民基本台帳法に定められた事務に限定されています。
  都においても、この法定事務以外の事務に本システムを利用する場合には、条例により定めていくこととしています。

質問事項
 二の6 都の事務において、システムの基本や本人確認情報の取り扱いは、今後検討されると考えるが、どんな組織で検討されるのか、伺う。また、システムを活用する事務とするか否かの判断基準はどんな内容か、併せて伺う。

回答
  本システムの構築に係る事務は、現在のところ、住民基本台帳法上の区市町村指導事務を所管する総務局が行っています。
  現在、法定事務以外で、都において本システムを活用できる事務を把握するため、全庁的な調査を行ったところです。
  今後、この調査結果を踏まえ、事務の効率化、個人情報の保護及び都民サービスの向上など総合的な観点から、活用する事務か否かについて、関係局とともに検討していきます。

質問事項
 二の7 本システムを民間部門が利用することは禁止されているが、納税者番号制導入の検討など、住民台帳コードの統一番号化、民間利用拡大の危険が払拭できない。都として、民間利用禁止の姿勢を堅持すべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  本システムは、地方公共団体共同のシステムであり、保有される情報も本人確認のための氏名・住所等限られた情報のみとされています。
  また、法律・条例で定められた事務に限り情報を利用できることとされており、目的外利用は禁止されています。
  都としても、法の趣旨に従い、本システムの利用を図っていきたいと考えています。

質問事項
 二の8 今後、このシステムの運用を検討するにあたり、国の個人情報保護法制整備の動きも踏まえ、個人情報保護条例の改正も考慮することになると考えるが、その際これまでの個人情報保護を最大限配慮するという基本的考え方を貫くべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  改正住民基本台帳法の施行に向けて、現在、国において民間事業者をも含めた個人情報保護法制の整備が検討されているところであり、この六月にも政府の高度情報通信社会推進本部の下に設置されている個人情報保護法制化専門委員会から「個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整理)」が公表されました。
  この大綱案によれば、個人情報保護基本法は「個人情報の取扱いに関し基本となる事項を定め、その適正な利用に配慮しつつ、個人情報の権利利益を保護すること」を目的としており、個人情報保護に対する基本的考え方は、都の個人情報保護制度と大きく変わるところはないものと考えております。
  都としては、これまでどおり個人情報保護は最大限配慮すべきと考えていますが、国において、来年の通常国会に個人情報保護基本法案を提出する予定と聞いており、今後の国の動向等を見極めながら、適切に対処していきたいと考えております。

質問事項
 三 不燃ごみ杉並中継所問題について
  1 平成九年六月までに化学物質過敏症と診断された人が十名中九名であり、現在でも症状の抜けない人がいることから、感作性のない硫化水素だけが原因とは結論づけられないと考えるが、見解を伺う。

回答
  現在も症状を訴える方に対しては、本年二月に杉並区が健康相談を実施し、専門医による診察を行いました。それによると、健康不調を訴えていた百二十一人のうち二十名が受診し、うち二名が軽快、十八名については心疾患やハウスダストによるアレルギーなどの、概ね一般的な健康異常であるとの結論になっています。

質問事項
 三の2 平成八年夏以降、健康不調を訴える人が何人も出ている。これらの症状は、平成八年当時に起きた症状と同様であり、硫化水素が発生していない現在としては、原因を他に見るのが当然と考えるが、見解を伺う。

回答
  杉並中継所周辺環境問題調査委員会によれば、平成八年の春から夏にかけ井草森公園近傍で集中して発生した健康不調の訴えの主な原因は、杉並中継所の未処理の排水に含まれていた硫化水素であり、公園の添え木に含まれていた防腐剤の影響も否定できないとしています。一方、それ以降の健康不調の訴えについては、これらの原因とは異なるとしています。
  最近の健康不調の訴えは、広い地域で散発的に発生しているという特徴があり、特定の原因を求めることが困難な状況にあります。
  しかしながら、杉並区では、本年二月に実施した健康相談を今後も実施することとしており、この結果、中継所の周辺に地域特有の新たな健康不調が生じている可能性が示唆されれば、都としても原因の解明が必要になると考えます。

質問事項
 三の3 都は、健康被害発生の訴えがある新宿中継所周辺においても、聞き取り調査をする必要があると考えるが、見解を伺う。

回答
  ご指摘の健康被害の訴えにつきましては、現在までのところ、具体的な相談等は寄せられておりません。
  しかし、今後、新宿中継所周辺で健康被害が生じていることが確認されれば、必要な対応について地元区と協議してまいります。

質問事項
 三の4 中継所周辺住民の健康被害の原因は、硫化水素及びクレオソート油とされ、因果関係がはっきりする健康被害者については、都が補償するとしているが、補償基準を伺う。

回答
  杉並中継所の排水中の硫化水素が原因で健康被害を受けた方々に対しては、都の責任においてその損害を賠償します。
  損害賠償に当たっては、硫化水素により症状が発生したと認められる平成八年三月一日から同年八月三十一日までの間に、健康被害を及ぼしたと推定される地域で異臭を感じて、眼や喉の痛みなどの症状を発し、医療機関で診療を受けた方を健康被害者と認定し、その被害者に対して、治療費、休業損害、慰謝料等の損害を賠償することとしました。
  なお、健康被害の認定に当たっては、医師、弁護士等の専門家で構成する認定審査会で審査を行います。
  損害賠償の受付は、九月一日から行っています。

質問事項
 四 東京都の防災訓練について
  1 これまでの訓練と異なり、自衛隊員四千名が参加する訓練となった理由を伺う。

回答
  東京を襲う大地震から首都機能を守り、一人でも多くの都民の生命と財産を救うためには、救出・救護、応急医療等に必要な多くの人員や資器材などを一刻も早く被災地に投入する必要があります。
  そのためには、警察や消防等の活動に加え、自衛隊の持つ総合的な機動力を最大限に生かすことが不可欠です。
  こうした基本認識に立って、今回は、全国から陸・海・空統合運用の自衛隊の大規模な参加を得て、銀座をはじめ白鬚西、葛西、木場、舎人、駒沢、都庁、立川、篠崎、晴海の十ヶ所の会場で、訓練を実施しました。

質問事項
 四の2 訓練の予算の内容を伺う。

回答
  今回の訓練の予算額は、会場設営等に係る委託費、会場整地・復旧費及び訓練用消耗品購入費など、全体で約三億円です。

質問事項
 四の3 周辺住民の、自衛隊の部隊行動が、「軍事訓練」である、との危倶に対し、説明を含め、どのような対応をするのか、具体的に伺う。

回答
  今回の訓練における自衛隊の役割は、大地震発生の際の救出・救護、応急医療及び生活支援といった災害応急対策活動です。
  都としては、こうした訓練の内容を地元自治体の協力を得て、町会、自治会等に説明をしてきたところであり、地元の周辺住民には、十分ご理解いただいていると考えています。
  今後とも本訓練に対する十分な理解と協力が得られるよう、あらゆる機会を通じて、より一層の努力をしてまいる所存です。

質問事項
 四の4 正式参加の自治体以外でも、訓練周辺の自治体への説明は必要である。これまで、どのように対応してきたのか、今後どう対応するのか、伺う。

回答
  防災訓練の実施に際しては、日常の住民生活への影響等を考慮し、訓練に参加する地元自治体はもとより、訓練会場周辺の自治体に対しても、十分な説明やきめ細かな配慮が必要です。
  このため、これまでも、訓練会場となる地元自治体には個別に調整し、十分な説明を行うとともに、それ以外の訓練会場周辺の自治体にも防災関係者会議を通じて訓練内容を説明してきました。
  今後とも、引き続き、様々な機会を活用して、十分な情報提供を行っていきます。

平成十二年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 和田宗春

質問事項
 一 東京都の光害対策について
 二 東十条駅北口のエレベータ化等の実現について
 三 稲城市若葉台駅前交番の新設について
一 東京都の光害対策について
  一九九四年十二月に環境庁が発表した環境基本計画では、光害問題について次のように言及している。
  「生活環境を保全する上では、大気汚染のほか、主に人の感覚に関わる問題である騒音・振動・悪臭が重要課題となっている。騒音・振動・悪臭は、苦情件数は減少しつつあるものの、各種公害苦情件数の中では大きな比重を占めており、発生源も多様化している。また、各種交通機関に係る騒音の環境基準達成状況もはかばかしくない。この他、光害などの新たな問題も生じている。(環境基本計画 第三部 施策の展開 5.地域の生活環境に係る問題への対策)」
  このように、環境庁がはじめて光(照明)の害を公にしたのは六年前である。
  今、光害の影響として考えられるものは、大きく三点に分けられる。即ち、1人間の諸活動への影響、2動植物への影響、3エネルギーの必要以上の消費、である。
  人間の諸活動への影響をみても、現代文明社会の実情を見て取れる。
  例えば、居住者への影響として、商業施設のネオンが眩しい。駐車場の照明が家の中まで入ってくる。運動場等のナイター照明が明るくて眠れない。即ち、道路・街路などの屋外照明が住居内へ強く射し込むと、居住者の安眠、プライバシーなどに悪い影響を及ぼすおそれがある。
  国際照明学会では、居室の窓面における照度の上限を規定している。
  また、交通機関への影響として、運動公園のナイター照明が眩しくて、自動車運転の妨げになる。一部分の道路照明が、逆に周辺の暗い部分の視認性を低下させる。橋梁の道路照明の眩しさが、船舶の航海士の視認性を低下させる。(「海岐部長大橋照明設備に対する検討報告書」はその影響を報告している。)等々。
  環境庁が今年一月に都道府県と政令指定都市を通じてまとめた光害の苦情内容によると、パチンコ店のネオンサイン、ゴルフ練習場、テニスコートの夜間照明、コンビニエンスストアの二十四時間照明などに集中し、稲作などの農作物への影響を訴えた苦情も目立っている。
  以上述べたように、人間の諸活動への影響のみを検討しても多岐にわたっている。これに動植物への影響、エネルギーの消費を加えたら、相当重要な都市問題となることは必定である。
  環境庁は平成八年度に屋外照明の国内実態調査を行っている。それによると、上空光束(照明器具から上空へ漏れる光)を抑制した場合、夜間屋外照明に使用される電力量の一八%、国内の年間電力消費量の約〇・二%が削減され、年間で約二十万トンの二酸化炭素の排出抑制につながるとされている。
  また、平成十年四月に国立天文台の磯部助教授は、夜間宇宙へ飛び去る日本の無駄な光エネルギーは年間二百億円になると試算している。
  東京は現在、不夜城ともいえる二十四時間都市になりつつある。従来からの朝から夕方までの日常の営みという型から、全く逆転した生活が比重を増している。それゆえに光害問題は東京都にかなり広く存在するものと考える。
  そこで、環境局に伺う。
 1 人間の諸活動への影響、動植物への影響、エネルギーの浪費という点から、巨大都市東京の光害をどのように認識しているのか。
 2 今日まで光害を都市問題として、どのような調査及び対策を実施してきたのか。
 3 平成十二年六月に環境庁は「地域照明環境計画策定マニュアル」を発表している。環境局は区市町村とは異なる立場から、光害を防止し、地域における良好な照明環境を実現するために「地域照明環境計画」の策定ならびにそれに基づく施策の展開を図るべきと考えるが、所見を伺う。
二 東十条駅北口のエレベータ化等の実現について
  北区は都心、新宿副都心、埼玉新都心からそれぞれ近距離に位置し、京浜東北線、埼京線などを有機的に結びつける存在として発展してきている。また、主要幹線道路も環状七号線、北本通りが整備され、環状八号線も建設が進んでいる。
  JR東日本についても、念願の赤羽駅付近連続立体交差化が完了し、赤羽駅周辺の東西交通の分断が解消されている。
  このように、北区の主要な交通体系は整備されて今日に至っている。
  このたび、平成十二年三月に、北区が公にした「北区基本計画二〇〇〇」では、公共交通機関の利便性の向上が政策化されている。そこでは、「区は事業者とともに、乗り換え利便性の向上、交通施策のバリアフリー化などに努めることが求められる」としている。
  具体的には、東十条駅北口、上中里駅、田端駅の三駅付近のバリアフリー化と鉄道施設周辺の安全性と快適性を確保するために、区道部分にエスカレータ等を設置するとしている。更に、この基本計画では必要事業費を三駅で十億七千七百万円としており、平成十二年度の当初予算に、四十二万円の調査費を計上している。前期計画として、平成十二年度、東十条駅北口から着手し、後期計画は平成十七年度より二十一年度で三駅での完成を予定している。
  都は平成八年五月に、鉄道駅エレベータ等整備事業実施要綱を定めている。それによると、目的は東京都福祉のまちづくり推進計画の推進であり、実施主体は区市町村、事業内容は既存の鉄道駅(一日の乗降客が一万人以上)に車椅子対応のエレベータを整備するために区市町村が鉄道事業者に補助金を支出して行う事業とされている。
  運輸省の交通施設バリアフリー化設備費補助制度と東京都福祉局の鉄道駅エレベータ等整備事業の双方を組み合わせた活用スキームから一例を見ると、次のようになる。
  一駅一基一億五千万円のエレベータ等の設置工事を実施する場合を想定すると、都負担分千七百五十万円、区市町村負担分千七百五十万円となり、地方自治体負担分が三千五百万円、鉄道事業者負担三千五百万円、運輸施設整備事業団(国)負担三千五百万円となり、負担割合は三分の一ずつとなる。
  また、平成十二年十一月にはバリアフリー法が施行される。そうすると、地方自治体の基本構想を前提にして、面的な整備に補助が可能となると思われる。そこで、関係する福祉局、都市計画局、建設局に伺う。
 1 現在、北区は運輸省、JR東日本と協定締結を目標に、鋭意協議中の段階にあるが、東京都はこれまで本件に関連し、北区と接触してきているのか、また、接触しているならば、その内容はどのようなものか。
 2 都の事業実績を経年調べてみると、平成八年度二件、約四千八百万円、九年度九件、一億六千万円、十年度六件、一億千六百万円、十一年度七件、一億八百万円となっており、決して件数、執行額とも充分とは言えない。北区と連携をとり、更に積極的に実績を増やすべきであると考えるが、所見を伺う。
 3 東十条駅北口から半径五百メートル以内には、病院二ヶ所、保育園一ヶ所、小学校一ヶ所と、福祉・教育施設がまとまっており、これらと駅を面的にバリアフリー化して連絡する必要があると考える。バリアフリー法の施行を前提に、三局は連携をとりつつ、北区をはじめ関係者と協議を進めるべきであると考えるが、所見を伺う。
三 稲城市若葉台駅前交番の新設について
  多摩ニュータウン稲城地区は、昭和六十三年より毎年計画的に入居が進められ、この六月には入居者一万五千人を超えるにいたった。
  現在までに、向陽台、長峰地区には、三千八百五十七世帯、一万二千百四十八人が入居しており、二つの駐在所が置かれている。警察でも、交番や駐在所を地域住民のための「生活安全センター」と位置づけており、住民に身近で心強い存在として定着している。
  しかし、多摩センター、南大沢地区と並ぶ多摩ニュータウンの三つの核の一つであり、昨年四月にまち開きされた若葉台地区には、現在、千三百四世帯、四千三十一人が入居しているにもかかわらず、交番や駐在所がない。同地区では、凶悪犯罪や、車上荒らしなどが発生しており、周辺居住者の不安も大きくなっている。
  このような実状をふまえて、稲城市議会は、平成九年九月に若葉台地区のまち開きにあわせて駅前交番等の開設を求める意見書を採択した。多摩中央警察署も周辺の駐在所と連携してパトロールを強化しているところである。また、都市基盤整備公団は、生活上の安全に配慮したまちづくりを進めており、駅前広場に交番用地を確保し、警視庁との協議を進めている。しかし、未だに実現の目途がたっていない。
  そこで、若葉台地区の立地条件や周辺の犯罪発生状況のもとで、市民が安心して生活できるまちづくりを進めるためには、警察官の常駐が不可欠であり、若葉台駅前交番設置の早期実現を図るべきと考えるが、警視庁の所見を伺う。
 以上

平成十二年第二回都議会定例会
和田宗春議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 東京都の光害対策について
  1 人間の諸活動への影響、動植物への影響、エネルギーの浪費という点から、巨大都市東京の光害をどのように認識しているのか、所見を伺う。

回答
  いわゆる「光害」としては、屋外照明の明るさが睡眠の妨げとなること、動植物の生育に好ましくない影響を与えること、過度の照明の使用によるエネルギーの浪費などの点が指摘されています。都としては、特に省エネルギー型都市づくりを推進する観点から、検討すべき問題であると認識しています。

質問事項
 一の2 今日まで光害を都市問題として、どのような調査及び対策を実施してきたのか、所見を伺う。

回答
  光害に関連する取組としては、東京都屋外広告物条例に基づき、住居専用地域等におけるネオン規制や、夜間照明によるホウレンソウなど農作物への影響の調査などを実施しています。
  また、省エネルギー型都市づくりを推進するため、平成十一年三月「東京エネルギービジョン」を策定し、これに基づいて消費電力の抑制等の施策を進めています。

質問事項
 一の3 環境局は区市町村とは異なる立場から、光害を防止し地域における良好な照明環境を実現するため、「地域照明環境計画」の策定ならびにそれに基づく施策の展開を図るべきだが、所見を伺う。

回答
  都市中心部や、繁華街、住宅地など地域の特性に応じ良好な照明環境を実現するためには、区市町村が地域の実情を反映して「地域照明環境計画」を策定し、施策の展開を図ることが望ましいと考えています。
  都は、東京エネルギービジョンに基づいて、省エネルギー型都市づくりやライフスタイルの転換を進めるなどの施策を引き続き進めていきます。

質問事項
 二 東十条駅北口のエレベータ化等の実現について
  1 鉄道駅舎のエレベータ等の整備に関し、北区は運輸省、JR東日本と協定締結を目標に鋭意協議中であるが、都はこれまで本件に関連し、北区と接触しているのか、また、接触しているならば、その内容を併せて伺う。

回答
  平成十二年六月、北区から東十条駅舎を含む周辺地域及び駅前商店街のバリアフリー化について相談があり、都は、鉄道駅エレベーター等整備事業、福祉のまちづくり地域支援事業について説明いたしました。今後も、北区と協議し、適切に対処してまいります。

質問事項
 二の2 鉄道駅舎のエレベーター等の整備の事業実績を経年で調べると、件数、執行額とも充分とはいえない。北区と連携をとり、更に積極的に実績を増やすべきだが、所見を伺う。

回答
  鉄道駅エレベーター等整備事業については、区市町村の事業計画を踏まえながら取り組んでいるところであり、その結果、平成十二年度は、これまでを大きく上回る十八駅で四億六千四百万円を予算化しております。今後とも、実施主体である区市町村からの要望を踏まえ、積極的に対応してまいります。
  北区につきましても、具体的な要望に応じて適切に連携をとってまいります。

質問事項
 二の3 東十条駅北口から半径五百メートル以内には、福祉・教育施設がまとまっており、これらと駅を面的にバリアフリー化して連絡する必要がある。バリアフリー法の施行を前提に、福祉局・都市計画局・建設局は連携をとりつつ、北区をはじめ関係者と協議を進めるべきだが、所見を伺う。

回答
  交通バリアフリー法では、地元区市町村は、面的にバリアフリー化を進めるために、利用者数が相当数ある特定旅客施設を中心として設定する重点整備地区について、基本的な構想を作成できるとしています。
  今後、北区が基本構想を策定する場合には、都としても、三局連携して協力してまいります。

質問事項
 三 稲城市若葉台駅前交番の新設について
   稲城市若葉台駅前交番設置の早期実現を図るべきだが、所見を伺う。

回答(警視総監)
  多摩ニュータウンの開発に伴い、当庁では昭和六十三年二月に多摩中央警察署を新設したのをはじめ、稲城市内については、平成四年九月に向陽台駐在所、平成九年九月に長峰駐在所を新設するなど、地域の安全確保に努めてまいりました。
  「稲城市若葉台駅前交番」については、平成三年以来、稲城市をはじめ、多くの皆様から新設の御要望を承っております。
  現在、同地区は、多摩中央警察署坂浜駐在所の管轄区内にあり、同所員によるパトロールを行っているほか、夜間は、駅前に移動交番車を配置するなど、警察力の柔軟な運用により警戒活動の強化に努めております。
  今後は、犯罪の発生状況をはじめ、要望地付近の警察事象や居住人口、地域環境など地域の実情を総合的に勘案しながら、引き続き、交番設置の必要性について検討してまいります。

平成十二年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 松村友昭

質問事項
 一 水害をなくし、自然の河川をとり戻すまちづくりについて
  1 練馬の緊急水害対策について
  2 雨水抑制事業のいっそうの拡充強化を
  3 総合治水対策の本格実施を
一 水害をなくし、自然の河川をとり戻すまちづくりについて
 1 練馬の緊急水害対策について
   昨年夏の局地的集中豪雨は都内各地に甚大な被害をもたらしました。練馬区内では、七月二十一日、二十二日、八月二十四日、二十九日と四回にわたって、集中豪雨があり、とくに七月二十一日の被害状況は、床上浸水二百六十五件、床下浸水百二十件におよびました。被害に見舞われた住民の損害と不安は計り知れないものがあり、抜本的再発防止対策を住民・区上げて強く求めてきたところです。
  ア 東京都下水道局は、本年三月に、都内緊急重点雨水対策二十五地区を選定し、「雨水整備クイックプラン」を立て、関係区とともに整備を開始しております。練馬区の場合、区が対応するグレーチング側溝の設置や雨水桝の改良および増設はすでに済ませ、あとは都の対応まちになっているところです。都の主なる対策としては、それぞれの水害地域に流下型貯留管の設置を現在検討中との事ですが、その完成が早くとも二〇〇三年度とされています。そこで伺いますが、今年もすでに区内では局地的集中豪雨があり、台風の到来にも見舞われ、住民の不安は大変なものです。緊急対策であるならばただちに工事に着手し、一日も早く完成させるべきではないでしょうか。また、こうした生活密着型の公共事業こそ最優先して行うよう国に強く働きかけるとともに、都としても予算を前倒しにしてもやるべきではないでしょうか。それぞれ見解を求めます。
  イ また、貯留管の設置が既存の公道下への設置計画となっていますが、もっと貯留施設を、地域全体にわたって、大小含め、あらゆる手立てをとって設置すべきではないでしょうか。
    例えば、それぞれの水害地域には、広大な民間工場、大学の敷地などがあります。住民からの陳情にも、「以前、民間工場内をとおっていた水路がブロック塀でさえぎられてからこの付近は貯水池化した」「大学構内にあった池がなくなってから水害が出るようになった」と指摘されています。すぐにも関係者の協力を求めて、民間工場の敷地、大学構内の空き地、付近の公園などに雨水抑制施設の設置を図るべきではないでしょうか。見解を求めます。
 2 雨水抑制事業のいっそうの拡充強化を
  ア かつて、練馬の水害常襲地域であった白子川水系では、雨水流出抑制型公共下水道の普及と、徹底した雨水浸透施設の設置によって、暫定三〇ミリ対応の河川改修が終わっていないにもかかわらず、河川による水害はその後起きていません。むしろ今練馬で水害が起きているのは、雨水浸透施設の遅れた石神井川水系の練馬部分です。雨水浸透方式の実効性はすでに実証済みであり、こうした立場から、わが党はこれまで都市型水害を防ぐには、ビルでの雨水利用や、一時貯留、公共施設はもとより、民間宅地での雨水浸透桝設置への一層の補助の仕組みづくりや透水舗装の拡大など、雨水流出抑制型都市づくりを早急に都市計画の中に組み込む事を提唱してきました。都もようやく水循環マスタープランを策定し、雨水循環型都市づくりに取り組み始めた矢先ですが、本年度の予算をみますと、総合治水対策事業費は、一億三千百万円から五百万円に、透水性舗装など流域貯留浸透事業費が一億八千四百万円から八千八百万円に、水環境保全計画推進費が二億二千五百万円から一億八千七百万円へと軒並み大幅削減です。石原都政は予算がない事を理由に、都民の強い要望によって、ようやく始まった、自然循環型都市づくりを後退させるのですか。見解を伺います。
  イ とくに、民間住宅の雨水浸透桝設置への補助制度、「各戸貯留浸透施設等助成事業補助」を東京都が唐突に廃止を言い出した事に、東京市長会環境部会及び二十三区主管部長会からこの再考を求める強い意見が上がっています。大都市部特有の雨水水害を解消させるには広域的取り組を行って初めて効果が発揮されるものです。このため都の補助制度は欠かせません。都の助成制度がなくなってしまえばこの事業は立ち消えてしまいます。是非、今年度区市から上がってきている予算要望に応えるとともに来年度以降もこの事業を続けるべきです。答弁を求めます。
 3 総合治水対策の本格的実施を
  ア 都内の中小河川を時間雨量五〇ミリに耐えられる河道拡幅の整備事業を都市計画ではじめて二十数年の月日を要しましたが、その整備率は五六%にとどまり、近年その進捗率もますます落ちています。計画地域の河川沿いには住宅が張り付き、しかも高齢化で移転が極めて困難な状況、またこれまでのような拡幅一辺倒の河川事業からかつてのような自然の川に再生させようという世論の高まりなどがこれまでと同じような河川改修事業の継続を困難にしています。そこで今大事な事は、時間雨量五〇ミリ対応の河道拡幅方式で既定計画を完了させる、その達成の上に雨水流出抑制の総合冶水計画という、従来の国の河川行政の進め方を逆転させ、まず、総合治水対策を先行させること、とくに上流部対策を徹底して急いで、上流部に洪水調節池、雨水調節池などを早急に建設出来る方向への転換を国に働きかけるべきだと思いますが、見解を伺います。
  イ 東京の大地ほど、スポンジのように吸水力に優れた台地はないと専門家は指摘しています。それが急激な都市化によってコンクリートで覆われ、小川が洪水を生む暴れ川になり、湧水が枯渇しました。東京の自然への再生への道は、まさに総合治水対策にどれだけ本腰を入れて取り組むかにあります。自然の恵みの雨を邪魔者扱いにするのではなく、自然の生態系に基づいて、徹底的に土の中、地下水に戻す総合的治水対策こそ、子供たちに身近な小川を取り戻し、自然を回復する決め手だと確信するものですが、総合治水対策の本格実施についての見解を求めます。

平成十二年第二回都議会定例会
松村友昭議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 水害をなくし、自然の河川をとり戻すまちづくりについて
  1 練馬の緊急水害対策について
   ア 「雨水整備クイックプラン」によれば、選定した水害地域に流下型貯留管の設置等を検討中とのことである。緊急対策ならば、ただちに工事着手し、一日も早く完成させるべきだが、如何か。また、生活密着型の公共事業こそ最優先して行うよう国に強く働きかけるとともに、都としても予算を前倒ししても行うべきだが、併せて伺う。

回答
  今回の対策は、地域を重点化し、できる所からできるだけの対策を実施し、速やかに浸水被害の軽減を図るもので、既に、本年三月に策定した計画に基づき対策を進めているところです。
  この中で、練馬区において計画している貯留管については、早期着手・早期完成に向け努力しています。
  また、実施に際しては国の施策との整合を図りつつ、国庫補助金等の財源を確保するとともに、技術的検討のもと様々な工夫を行い、効率的な事業執行に努めています。

質問事項
 一の1のイ 貯留施設は、地域全体にわたりあらゆる手だてをとって設置すべきである。水害地域の関係者の協力を求め、民間工場、大学構内、公園などに雨水抑制施設の設置を図るべきだが、見解を伺う。

回答
  雨水貯留施設については、地元区からの協力を得ながら公園等への設置を検討していきます。
  また、用地提供等について民間企業、大学などから協力が得られれば、貯留施設の設置について検討していきます。

質問事項
 一の2 雨水抑制事業のいっそうの拡充強化を
    ア 本年度の雨水循環型都市づくり関連予算が大幅に削減されているが、石原都政は、予算がないことを理由に、都民の強い要望によってようやく始まった、自然循環型都市づくりを後退させるのか、見解を伺う。

回答
  都においては、昨年度、水循環マスタープランを策定し、治水、利水、環境の各分野の施策を総合的、体系的に推進することとしています。
  今後とも、広域的行政の立場から、民間の大規模施設への貯留浸透施設の設置指導や公共施設における雨水流出抑制対策の推進を図るとともに、財政状況を勘案しつつ、水循環に配慮した総合的な施策に取り組んでいきます。

質問事項
 一の2のイ 「各戸貯留浸透施設等助成事業補助」の制度は、区市からの  予算要望に応え、来年度以降も続けるべきだが、見解を伺う。

回答
  本補助制度については、宅地への貯留浸透施設の設置が総合的治水対策として重要であるとの認識のもとに、区市が行う、個人住宅への助成事業に対し、都が補助してきたものです。
  しかし、制度開始から七年を経過して地域住民へ普及啓発するという都の先導的役割はほぼ達成したと考え、今後は事業主体である区市において実施するよう見直すこととしたものです。

質問事項
 一の3 総合的治水対策の本格実施を
    ア 今、大事なことは、総合治水対策を先行させることである。特に上流部対策を徹底して急ぎ、上流部に洪水調節池、雨水調節池などを早急に建設できる方向への転換を、国に働きかけるべきだが、見解を伺う。

回答
  中小河川の整備については、降雨の頻度や降り方など、その降雨状況の多様性に的確に対応するため、河道の拡幅を基本としております。また、密集市街地においては、用地取得などに時間を要することから、調節池等の整備も併せて進めております。
  さらに、国や区市町村と連携し、雨水の貯留施設や浸透ますを設置するなど流域対策を進め、積極的に総合的な治水対策を実施しています。
  今後とも、水害の軽減に効果の高い河道の拡幅を基本とし、併せて、調節池等の整備を進めるとともに、流域対策についても関係機関と協力しながら、一層推進していきます。

質問事項
 一の3のイ 東京の自然への再生の道は、総合治水対策にどれだけ本腰を入れて取り組むかにある。総合治水対策こそ、子供たちに身近な小川を取り戻し、自然を回復する決め手と確信するが、総合治水対策の本格実施について、見解を伺う。

回答
  都においては、総合治水対策の一環である流域対策として浸透ます及び透水性舗装などの雨水流出抑制施設の設置を進めています。また、水循環再生事業においても浸透施設の設置を進めています。
  こうした対策は、雨水の浸透を促進し、地下水のかん養などの効果も期待できる施策であり、水循環マスタープランにおいても、その必要性が位置づけられています。
  今後とも、流域の区市と協力して、総合治水対策や水循環再生の取組を進めていきます。

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