平成十二年東京都議会会議録第九号

○議長(渋谷守生君) 二十七番大河原雅子さん。
   〔二十七番大河原雅子君登壇〕

○二十七番(大河原雅子君) 私は、生活者ネットワーク都議団を代表して、一般質問を行います。
 東京構想二〇〇〇は、都の二十一世紀を切り開く長期構想です。この閉塞感に満ちた世紀末から抜け出せる都市づくりこそ、大勢の将来世代とともに進められる必要があります。
 東京が持続的に発展していくには、エネルギー大量消費の改善、何より家庭、業務、自動車部門が大きい東京のエネルギー消費構造の特徴を踏まえた省エネルギー対策が必要であり、同時に、新エネルギーや未利用のエネルギーを最大限に活用して、東京を省エネルギー型都市として整備することです。それこそが先駆的なメッセージであると考えます。
 知事は、かねてから、東京の再生のメーンテーマを経済復興として意識されているようですが、こうしたテーマは、東京という大都市が抱える環境負荷の大きさを抑制する課題とどう両立することができるのでしょうか。エネルギー消費の抑制や循環型社会について、知事の基本的なお考えを伺います。
 また、環境負荷の低いエネルギーヘの転換が急がれますが、新エネルギーの導入や活用は、初期コストが高いこともあり、都内での普及はなかなか困難です。しかし、江戸川区では、市民が共同出資して、お寺の屋根に太陽光発電システムを設置するなど、先駆的な取り組みが開始されております。
 都の公共施設でも、太陽光発電システムの設置を、屋根を持たない一般市民の少額出資の協賛で実現可能にすることなども考えられます。都として新エネルギーの導入に積極的な対応が必要と考えますが、どのようにお考えでしょうか。
 また、既に北海道では始まっていますが、電気科金のグリーン電力制度への見解を伺います。
 次に、今日の子ども施策の課題についてです。
 青少年健全育成条例の改正や、心の東京革命行動プランへの取り組み方が今回示されました。しかし、私たち生活者ネットワークは、今日の子どもたちの問題を解決するために、今、東京都が最も力を注ぐべきことは、既に提案されているにもかかわらず、おくれがちになっている、子どもの権利条例制定に向けた取り組みであると考えております。
 そして、中心的課題の一つは、子ども自身が自己決定能力を伸ばすことを支援する具体的なプログラムづくりです。
 子どもたちが引き起こした深刻な事件には、テレビやマンガ、雑誌、テレビゲームなどを通じて子どもたちが意識、無意識を問わず獲得した暴力性や異常性が模倣されています。我が身をもって体得したものでないバーチャルな経験が蓄積し、ある日突然限界線を超えてあふれ出る、あるいは突発的に表出したということもあるのでしょう。
 大人社会の複雑な価値観や利害関係が見え隠れする現代の情報社会に生まれて、子どもたちが獲得しなければならない能力の一つがメディアリテラシーです。子どもたち自身がメディアを選択し、意図されたものを主体的に読み解き、自己発信する能力です。
 子どもが自立した判断力を高めるためには、まず、子どもから大人まで、自分の持つ他者から侵害されてはならない人権を知り、同時に、他者の持つ権利の尊重と自己の責任を、家庭や学校、地域などあらゆる場面から会得することが重要です。
 既に地域で活動しているNPOの協力を得ながら、判断力を養う具体的なプログラムを開発して、子どもたち自身のエンパワーメントを図るべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、内分泌撹乱物質、いわゆる環境ホルモンについて伺います。
 この六月、市販の弁当からフタル酸が検出され、その原因が塩化ビニール製の手袋であることが判明しました。また、先月、都の専門家会議には、塩ビラップからのノニルフェノールの溶出が報告されています。
 現在ノニルフェノールを溶出しない添加剤に切りかえているといわれるものの、どんな物質に切りかわったのかは把握されていないと聞いています。都民の不安を解消するためにも、都として、メーカーに対して情報公開を強く要請すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
 水道水についても、環境ホルモンの影響が指摘されております。
 まず、水道局に伺いますが、水道水そのものや水道資機材からの環境ホルモンの影響をどのように把握しておられるのか、国の対応状況を含めて伺います。
 家庭用の給水管については、国が定める構造材質基準のもと、一部で塩ビ管が使用されています。市民団体が行った、六種類、十製品の給水管の環境ホルモン溶出検査によれば、九十五度の熱湯に三十分浸けておくと、七検体からビスフェノールAが検出されております。
 水道局の説明によると、十製品の一部については、耐熱性の観点から給湯用としては使用禁止、または制限を指導しているとのことです。しかし、家庭内ではさまざまな使われ方がされており、使用実態を踏まえた調査が早急に必要ですし、また、得られた調査情報を都民にわかりやすく提供していくべきと考えます。これらを含めて、今後の対応を伺います。
 さまざまな調査の結果は徐々に報告されていますが、残念ながら、有害な化学物質の回避、予防策にまでは手が回っていない状況です。問題は身の周りにあふれている環境ホルモン物質をいかに減らすかであり、求められるのは、疑わしきは使用せずという未然防止の原則を実現する具体的な行動です。
 平成十年度の決算特別委員会での私の質問に対して、建設局からは、都立公園や霊園、街路樹などで使用する農薬については、環境ホルモンを含む農薬を代替物へ平成十二年度から全面的に切りかえるとの答弁をいただきましたが、その後どのように対応されたのか、伺います。
 市民の不安を解消させるために、小金井市などでは、除草剤や公共施設での合成洗剤の不使用を方針として打ち出し、市の姿勢を鮮明にしています。東京都としても、都庁エコ・アップ計画や都の環境ホルモン取り組み基本方針を見直し、公共施設の先導的な役割を明確に示して、未然防止の観点の姿勢をさらに鮮明にする必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 最後に、景観及び環境保全と宅地開発について伺います。
 各地で発生するマンション建設問題にあらわれるように、宅地開発に際し、自然環境や景観に十分配慮することは、まちづくりの重要な課題です。
 この試金石ともなる開発計画が、世田谷区と狛江市、調布市にまたがった野川沿いの地域で持ち上がっています。ビール会社の子会社が経営するスポーツ施設を閉鎖して、ここを宅地開発しようというものです。
 この地域は、風致地区にも指定されているとともに、国分寺崖線景観基本軸の指定に向けた手続が進められています。景観基本軸の基本計画案で、都は、関係区市や都民、事業者との連携を深め、崖線全線の景観の保全と回復に努めるとしております。
 この開発は、区域内に外環道という広域施設の計画があるほか、守るべき緑が複数の地元自治体にまたがっており、自治体連携の格好のモデルであることからも、都として環境保護、景観保全の立場から、開発をコントロールすべきモデル的なケースだと思います。
 そこで、この地域での開発に対して、東京都としてどのように取り組んでいくのか、最後に伺いまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 大河原雅子議員の一般質問にお答えいたします。
 エネルギー消費の抑制や循環型社会についてでありますが、これは、高度な文明論を含んだ、非常に世紀的な問題だと思います。
 都市生活の利便性、快適性は、実は非常に多量なエネルギーの消費によって支えられているわけであります。
 一方では、限りのある資源を有効に活用することや、環境負荷を低減していくことが強く求められております。
 いずれにしろ、ごく最近になりまして、エントロピーの原理が発見されまして、物質は決して不滅ではないという、大きな意識改革の要因がもたらされました。
 今後の都市づくりにおいては、効果的、効率的なエネルギー使用に対する配慮を重視するとともに、都民、事業者に対しても、資源をむだにしないように、まず、意識の大きな変革を求めていくつもりでございます。
 なお、その他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監成戸寿彦君登壇〕

○東京都技監(成戸寿彦君) 世田谷区などの野川沿いでの開発についてお答えいたします。
 宅地開発に当たりまして、地域の自然環境や景観と調和を図るよう誘導することは重要であると認識いたしております。
 ご質問の区域は、現在ゴルフ練習場やテニスコートなどとして利用されておりまして、その一部には東京外郭環状道路が計画をされております。また、この周辺は、国分寺崖線と野川の自然環境に恵まれた場所でありまして、都におきまして策定中の国分寺崖線景観基本軸にも含まれております。
 今後、この区域の開発が具体的になれば、都といたしましても、広域的な都市施設の計画を考慮しつつ、自治体間の調整などについて取り組んでまいりたいと思います。
   〔環境局長齋藤哲哉君登壇〕

○環境局長(齋藤哲哉君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、新エネルギー導入への積極的な対応についてでございますが、太陽光などの新エネルギーの活用を進めていくことは、環境負荷を低減していくためにも必要であります。
 東京都は、みずから小河内貯水池などで太陽光発電設備を導入するとともに、新たに個人向けの融資制度を設けるなど、新エネルギーの利用拡大に向けた取り組みを行っております。
 今後とも、お話のあった都民の新エネルギー活用事例についても紹介するなど、積極的な普及啓発に努めてまいります。
 次に、グリーン電力制度への見解についてでございますが、グリーン電力制度は、需用者が通常料金に上乗せをして寄附金などを支払って、電力会社がこれを原資として太陽光、風力などによる発電施設を整備する仕組みでございます。
 この仕組みは、電力会社が需用者の理解を得て新エネルギーの普及を図ろうとするものであり、現在、各電力会社において検討が進められているものでございます。
 都は、このような新しい取り組みの紹介も含め、新エネルギーの普及拡大に向けて取り組んでまいります。
 次に、環境ホルモンに関して、都の公共施設での先導的役割についてのお尋ねがございました。
 内分泌攪乱化学物質、いわゆる環境ホルモンが人や生態系に及ぼす影響については、不明な点も多いのが現状でございます。
 このため、現在、国においては、各省庁が共同してその実態の解明を図っており、東京都においても、環境ホルモン取り組み方針に基づいて、調査研究等を行っております。
 今後、これらの結果が明確になった段階で、都みずからが率先して環境への負荷を低減するために定めている都庁エコ・アップ計画や、環境に配慮した物品を調達するためのガイド二〇〇〇に反映させていくつもりでございます。
   〔生活文化局長今沢時雄君登壇〕

○生活文化局長(今沢時雄君) メディア社会に対する子どもたちの判断力の育成についてお答えいたします。
 進展するメディア社会の中にありまして、青少年が主体的に情報を選択判断し、また発信する能力でありますメディアリテラシーを身につけていくことは、お話にありましたように、大変重要であります。
 このため、小中学校等でその教育に取り組んでいるほか、青少年センターでも講座を開催しております。また、本年五月には、東京都青少年問題協議会に対し、メディア社会の進展と青少年施策のあり方について幅広い検討を依頼いたしました。この検討結果も踏まえ、適切に施策を進めてまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) ラップフィルムに含まれる内分泌攪乱化学物質、いわゆる環境ホルモンに関する情報公開についてのご質問であります。
 都の実態調査におけるノニルフェノールの溶出結果、また、主要メーカー各社の自主的な添加剤変更の動きは、ご指摘のとおりでございます。
 都としては、都民が製品を選択する上で、変更された添加剤についての情報は大変重要であるとの認識をいたしており、東京都内分泌かく乱化学物質専門家会議の提言を踏まえまして、製造業者等に対しまして、これらの情報を積極的に公開していくよう働きかけてまいります。
   〔水道局長赤川正和君登壇〕

○水道局長(赤川正和君) 二点お答えいたします。
 まず、いわゆる環境ホルモンの水道水に関する実態把握についてでありますが、水道局では、平成十年度から、主な浄水場や給水栓で採水し、フェノール類を初めとした環境ホルモンの実態を調査しております。平成十一年度には、さらに対象施設や対象物質などを拡大して調査しており、これまで、水道水からは対象物質は検出されておりません。
 また、国においては、水道水などの全国的な実態調査に加え、水道用資機材からの溶出試験を平成十年度に実施しております。その結果、今回の測定値では、直ちに問題となる状況にはありませんが、引き続き、実態把握のための調査研究等を実施するとしております。
 次に、環境ホルモンの実態調査や情報提供を含めた今後の対応についてでありますが、水道局では、これまでの調査結果などを踏まえながら、引き続き実態調査等に取り組んで
いくとともに、厚生省が平成十一年度から三カ計画で実施している、水の使われ方に合わせた調査に積極的に協力してまいります。
 また、国等の関係機関に対しては、人体への影響を明確にすることや、環境ホルモンを考慮した水道用資機材の溶出基準の検討を早急に進めるよう働きかけていくとともに、得られた情報を都民に速やかに提供してまいります。
 今後とも、関係機関との連携を一層図り、原水水質の悪化や環境ホルモンなど新しい水質問題に的確に対応するなど、引き続き安全な水を供給できるよう最大限の努力をしてまいります。
   〔建設局長古川公毅君登壇〕

○建設局長(古川公毅君) 都立公園などで使用する農薬についてですが、今年度から、環境ホルモンとして疑わしい化学物質を含む農薬については、代替農薬に全面的に切りかえるとともに、業務の委託に際しても、この旨、趣旨徹底を図っております。

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