平成十二年東京都議会会議録第九号

   午後三時五十二分開議

○副議長(五十嵐正君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十九番西条庄治君。
   〔二十九番西条庄治君登壇〕

○二十九番(西条庄治君) 質問を始める前に、まず選挙の結果について一言言及をしておきたいと思います。
 選挙期間中、一時期マスコミは、各社そろって与党三百議席に迫ると報道いたしましたが、都民の下した選挙への審判は全く正反対でありました。このたびの選挙結果を、単純に全国の比例区での得票結果で見ると、政権交代が明らかに起きた。東京で見ると、小選挙区、比例区ともに歴然と逆転、政権交代を都民が求めたことになります。このたびの選挙の結果の特徴は、都市と地方の新たな対立軸が示されたことであります。都市部の所得を農村部に過分に配分する国のシステムにノーと、すなわち、地方の公共事業に予算を過重配分している国の姿勢に対する都市住民の反乱のあらわれであります。
 知事、あなたが就任以来叫んできた都市の存在感を示すもろもろの主張、施策に対し、都民の追い風が明白になったのであります。政府・与党は、一票が重い農村部を重視し、一票が軽い私たちの都市部を軽視する政策を実施してきたのであります。知事、あなたが、今後都市の、東京の存在をアピールするためにも、都市の一票の重みの軽さを早急に是正することを世論や国に強く求めるべきであります。財源の地方分権を主張するのと同様に、この問題をもっと明白に、強く位置づけるべきと信じてやみません。このことに対し、知事が強い姿勢を示すことを求めて、質問に入ります。
 まず、都市の景観についてお尋ねします。
 東京都では、生活に快適さと潤いをもたらす景観づくりを行い、次の世代に美しいまち東京を引き継ぐため、平成九年に東京都景観条例を制定し、以来、一般地域の景観づくり基準を初め、隅田川景観基本軸、玉川上水景観基本軸、丘陵地景観基本軸などの基本計画、景観づくり基準などを定め、精力的に事業者の協力を求めてきています。また、この五月には、神田川景観基本軸、臨海景観基本軸が審議会より答申されています。
 私の地元文京区でも、昨年十二月に文京区景観条例を制定し、景観づくりに向けた具体的な取り組みを開始しているところであります。私は、都市住民の良好な生活環境を築くためにも、また国際都市としての東京の魅力を高めていくためにも、生活に快適さと潤いをもたらす景観は最も重要な要素の一つであると考えております。
 都は、東京都の新しい都市づくりビジョンの策定作業を進めておられますが、さきに発表された東京都都市計画審議会、都市づくり調査特別委員会の中間のまとめにおいても、都市景観について触れられております。知事はこの景観づくりについてどのようにお考えか、見解をお伺いします。
 また、都市づくりビジョンの中に、この景観づくりを具体的に位置づけていくためにも、景観基本軸、基本計画、景観づくり基準などの策定作業を今後も引き続き強力に進められるよう求めるものでありますが、その見解をお伺いします。
 さて、この条例のもとでは、特定行為を行う事業者は、景観面での配慮を行い、その配慮状況を東京都に届け出ることになっています。東京都を初めとした公共的団体は、みずから率先して景観への配慮を実践していかなければなりません。
 例えば、私たちの身近な景観を阻害するものとして歩道橋があります。かつての自動車優先の高度成長の時代には、都民の安全確保のため、一定の役割を果たしてきましたが、高齢者や障害者に優しいまちづくりの観点から注目され始めたバリアフリーや都市景観の保全という観点からは、もはや時代に合わなくなりつつあります。もうそろそろ利用者が少なくなり、その目的を果たし終えた歩道橋は、今後、維持補修に多額の経費を投入せざるを得ないことからも、撤去すべきと考えますが、見解をお伺いします。
 ところで、都市景観といえば、この二月の都市計画地方審議会において、美観地区として指定されている丸の内皇居前の明治生命ビルにおいて、重要文化財指定建築物を残して、その後ろに百四十七メートルの高層建築物を建てるという特定街区指定の計画が図られました。我が会派の仲間は、この計画に疑問を感じ、反対を表明したわけですが、結果は賛成多数で決定されてしまいました。昭和四十年代に、やはり皇居のお堀端の東京海上のビル建設に当たって、いわゆる美観論争が巻き起こり、結局、東京海上ビルは高さ百メートル以下に変更して建設されたということがありました。
 景観の規制については自治体が条例で定めるということになっているようですが、現在の東京都景観条例あるいはその他の条例において、この種の建築計画に規制をかけるということは不可能なのでしょうか。東京都景観条例は、その前文にも、これまで東京は自然や歴史を感じさせる町並みの減少を招くなど、景観面への配慮が必ずしも十分ではなかったとあります。その反省に立っての現在の都市計画施策であるはずなのに、美観地区内のビル建設についても何も規制できないというのはどういうことなのか。
 都市の美観保存というものは、住民、事業者、行政のコンセンサスがあって成り立つものであり、一方的に行政側が規制をかけてできるものではないということは十分理解しているつもりであります。しかし、ロンドン、パリを初め欧米の諸都市では、都市を二次元的に規制するだけではなく、立ち上がった目に見える三次元的空間としてとらえ、歴史的な建造物を中心とした風景や建物の高さを調和させるスカイラインの保護を厳しく条例により規制しています。これらの諸都市においても、何も初めから景観についてのコンセンサスがあったわけではなく、ある時期より徐々に問題意識の高まりを見せ、特にスカイラインを実際に制度上、保護するという動きは、八〇年代前後からであったと聞いております。
 我が東京も、いささか遅きに失するとはいえ、都市景観の保護のため、もう一歩踏み出すべきと思います。都市景観の文化性は、住民の文化の程度をあらわすと思いますが、見解をお伺いします。
 次に、大江戸線の全線開業に伴う諸問題についてお尋ねをいたします。
 地下の山手線ともいわれる大江戸線の環状部が本年十二月に開業し、都心部の交通利便性は格段と向上することになります。改めて関係各位のご尽力に敬意を表するものであります。しかしながら、その一方でエアポケットともいうべき不便地域が生まれては、東京都の交通政策が無策であるといわれることになります。
 そこで、バス事業の自由化についてお伺いします。
 バス事業においては、平成十三年度より規制が緩和され、許可、上限という制約があるとはいえ、新規事業者の自由参入、料金設定の自由化が始まることになっています。このことによって黒字路線においては新たな事業者が参入し、料金も安くなるメリットがありますが、上限料金に設定しても不採算となる路線においては、事業者が撤退し、交通過疎地域も生まれかねません。私は自由化そのものについて反対するものではありませんが、その一方には、都民の足の確保という行政の役割も現に存在すると信じてやみません。
 そこで伺いますが、バス事業の自由化に伴う交通過疎対策に東京都としてどのように取り組まれるお考えか、お答えをいただきたいと思います。
 次に、大江戸線全線開業に伴うバス路線の再編成についてお伺いします。
 さきに述べましたバス事業の自由化という条件のもとで、大江戸線全線開業に伴うバス路線の再編成が計画されていると聞いております。沿線地域では、このバス路線の再編成によってかえって不便になるのではないかと危惧する声が上がっており、私は、バス路線の再編に際しては、住民の意見を踏まえ、きめ細かな対応と配慮が必要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、新駅における自転車駐輪場の整備についてお尋ねします。
 新線が開業すると、その新駅に自転車で通う都民が出てくるのは当然想定されることであり、そこには必然的に自転車駐輪場が求められることになります。この自転車駐輪場を整備するに当たって、昨年度までは東京都の補助制度がありましたが、本年度からは、国庫補助制度と日本自転車普及会などの財団法人の設置事業があるだけであります。国制度の補助を受けるためには、一定の整備要件のほかに、あらかじめ都市計画決定が必要となります。
 そこで伺いますが、新駅における自転車駐輪場は何駅に整備される予定になっているのか、お伺いをします。
 また、未整備駅については、今後どのような対策をとられようとしているのか、お伺いをし、質問を終わりますが、質問を終わるに当たり、再び選挙の結果に思いをはせたい。
 昨年の知事選挙において、知事、あなたはどの政党にもよらず今日の立場を得られ、都政に大きなインパクトを与え、現在、都民の人気を大いに博しておられます。一方、このたびの選挙は、都市部でのいわゆる無党派といわれる有権者の意識が劇的なほどに選挙の流れを変えた。この二つの潮流はくしくも一致しているように思われます。
 どこぞの会派に、知事への与党宣言なる動きが見え隠れしているようでありますが、知事、あなたは、今後も一党一派に偏することなく、エバーオンワードで前進されることが、このたびの都民が示した期待にこたえることと信じて、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 西条庄治議員の一般質問にお答えいたします。
 最近また歴然としてまいりました一票の重みの格差は、私は、まさしく政治のゆがみの表示だと思います。日本の政治は、従来、全国の均衡のある発展を目指して、結果として相対的に地方を重視した議席配分を続けて、予算も含めた資源配分を地方に手厚いものとしてきました。
 しかし、現在、文明の進展とともに、当然でありますが、人口は都市に集中して、今では都市の時代といわれており、特に国家のダイナモである東京を初めとする大都市にさまざまなゆがみが生じております。このゆがみを放置すると、私は、国家にとって致命的なものになりかねないと思っておりますが、私はかねてより、こうした大都市の抱える危機の克服が重要な政治課題であると考えておりまして、そのためにも、民主政治の根幹である選挙制度について、一票の格差は早急に是正されるべきものと思っております。
 今回の選挙の特に大都市における結果を眺めますと、そうした現実への国民の直接、間接の不満、不安というものが現出した、そのあらわれではないかという気がいたします。
 次いで都市の景観についてでありますが、私は、昔見たロバート・ミッチャムと高倉健と岸恵子さんの主演した何とかという映画で、アメリカのギャングのロバート・ミッチャムが日本に用事でやってきまして、タクシーの中の述懐で、何度来ても何と醜い町だというせりふでその映画が始まるのが非常に印象的でありましたが、一方、皇居の周辺、あるいは隅田川のたたずまい、三多摩等々美しい景観もございますけれども、総体的に私は東京の町は非常に醜い町といわざるを得ない。
 私自身も芸術家でありますし、その美的感覚からしてもちょっと耐えられないものがありますが、例えばいろんなことができると思います。東京の間近なところにあります日本の代表的な古都であります鎌倉では、タテさんと申されましたかな、早稲田の名誉教授の建築家をオンブズマンに招いて、大小問わず、とにかく新しい建築を全部その事務所が精査して、鎌倉にふさわしくないようなものは許さない、そういうシステムをとっておりますけれども、今さらこの東京にワン・シティー・ワン・アーキテクチャーという形にはならないと思いますが、しかし、やはりできる限り力を尽くして、外国人がやってきて目を背けるような、そういう都市の景観というものをできるだけ修復して、外観的にも魅力のある首都というものをつくっていきたいなと思っております。
 私は、環境庁の長官のときに、新幹線に乗って走りましても、そこらじゅうに野立ての看板がありまして、唯一美しい景観のあの安土城のあったあたり、伊吹山の山ろくを走りますと、やはり福助足袋だとか何だとか、学生服の広告があって、あれは時限立法でとにかく撤廃したらどうだという案を出しましたが、なぜか通産省がいこじに反対して実現しませんでしたけれども、こういったものも、看板その他ちょっと問題のあるものが非常に多いと思いますし、やっぱり東京が先鞭をつけて、日本の首都らしくセンスのある感覚のある、そういうまちづくりをしていきたいなと今でも思っております。
 なお、他の質問については技監並びに関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監成戸寿彦君登壇〕

○東京都技監(成戸寿彦君) 都市計画に関します三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、景観基本軸についてでございますが、景観基本軸は、東京全体から見て骨格となる景観を形成し、特に重点的に景観づくりに取り組む必要がある地域を都が指定するものでございます。このため、平成十一年度に、ご指摘ございましたように、隅田川、玉川上水及び丘陵地の三地域について指定を行いまして、また今年度におきましては、この七月三日でございますけれども、神田川、臨海の両基本軸を指定したところであります。
 美しく潤いのある東京を次の世代に引き継いでいくために、今後、国分寺崖線など景観上重要な地域を景観基本軸として引き続き指定をいたしまして、区市町村と連携して景観づくりに努めてまいります。
 次に、都心部における都市景観の保護についてでございますが、パリやニューヨークなど欧米の都市におきましては、それぞれに特色のある都市的な景観が形成されておりますのを、私の少ない経験でございますが、見聞しております。東京におきましても、丸の内など都心部には歴史と風格のある景観がある一方では、日本経済を牽引する高度に集積した業務機能がございまして、こうした両面の調和を図りつつ、これからの都市づくりを進めていく必要があると考えております。
 このため都は、大手町・丸の内・有楽町地区のまちづくり懇談会に参画をいたしまして、区や民間と協働してまちづくりのガイドラインを策定してまいりました。また、千代田区におきましても、皇居周辺の景観につきましてガイドプランの作成に着手をしております。
 今後とも、こうした国際都市東京の顔づくりを念頭に置きまして、都心部における景観づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
 最後に、バス事業の規制緩和に伴う交通過疎地域の対策に関するご質問がございました。
 平成十三年度から予定されている乗合バスの需給調整規制の廃止によりまして最も影響を受けるのは、唯一の交通手段でありますバスが恒常的な赤字路線となっております西多摩地域及び八王子市の一部であると考えております。そのため、都といたしましては、今年度中に西多摩地域等を対象にいたしまして、国、地元七市町村及び事業者から成ります地域協議会を設置いたしまして、生活交通のあり方やバス交通の維持活性化方策の検討などを行いまして、生活交通の確保に努めてまいりたいと考えております。
   〔建設局長古川公毅君登壇〕

○建設局長(古川公毅君) 横断歩道橋の撤去についてですが、平成十年四月、横断歩道橋の新設、改良及び撤去についての基本方針を定めました。これに基づいて、利用者が少なく、近くに横断歩道があり、警察署や地元の区市及び町会などの合意が得られたものについては撤去してまいります。
 なお、これまで、荒川区内の道灌山下歩道橋など三橋を撤去しております。
   〔交通局長横溝清俊君登壇〕

○交通局長(横溝清俊君) 大江戸線全線開業に関連いたします三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、全線開業に伴うバス路線の再編成についてでございます。
 大江戸線全線開業になりますと、関係する都営バスの路線が影響を受けることから、これらの路線について再編整備が必要と考えております。再編整備に当たりましては、学識経験者等から成る検討委員会からいただきました大江戸線開業後の都営交通ネットワークのあり方等についての提言を踏まえまして、鉄道とバスの役割分担や都営交通ネットワーク構築の視点から取り組んでまいります。また、実施に際しましては、関係区と十分協議し、住民の理解を得られますよう努めてまいります。
 次に、大江戸線の新駅における自転車駐輪場の設置につきましては、二十四駅中、八駅において地元区及び建設省の委託を受け、駅構築部上部の地下空間に自転車駐輪場を併設することとしております。
 第三点目の、自転車駐輪場が未整備である駅における対策についてでありますが、今後とも、地元区からの依頼に応じまして、可能な限り駅周辺の局所有の土地を自転車駐輪場用地として貸し出す等の措置を講ずることにより、設置に協力してまいる所存でございます。

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