平成十二年東京都議会会議録第八号

   午後七時二分開議

○議長(渋谷守生君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 十一番馬場裕子さん。
   〔十一番馬場裕子君登壇〕

○十一番(馬場裕子君) 私は、都議会民主党を代表し、当面する都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 まず、幸い噴火に至ることなく終息したとはいえ、今なお続く地震や地殻変動によって不安な日々を余儀なくされている三宅島や神津島を初めとした伊豆諸島の皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。
 同時に、火山活動の開始以来、島民の安全を守るために、不眠不休で、かつ迅速に対策を講じられた石原知事並びに東京都職員の皆様に敬意を表したいと思います。お疲れのところとは思いますが、今後もライフラインを初め一日も早い復旧対策にご尽力いただくようお願いを申し上げます。
 また、先般行われました第四十二回衆議院議員選挙において、私たち民主党は党派を超えてのご支援をいただき、大きな勝利をおさめることができました。この場をおかりして都民の皆様に御礼を申し上げたいと思います。
 今回の選挙について石原知事は、政党は危機意識のないまま、これまでと同様、目先の利益だけを訴えていたとの印象をぬぐい切れず、また、大きな節目となるべき選挙でありながら投票率が伸び悩んだのは、将来を託するに足る選択肢を見つけることのできなかった国民の怒りのあらわれだと述べられました。
 確かに、危機意識のないまま、むだな公共事業へのばらまき、小手先の児童手当改革、さらには、公共事業等予備費五千億円のばらまきを掲げ、目先の利益だけを訴えた自民、公明、保守の与党三党は、東京を初めとした都市部の有権者から厳しいレッドカードを突きつけられました。私たちは、課税最低限の引き下げや環境税の導入など、公約としては辛口のものを含めて国民の皆様のご理解を求めてまいりましたが、残念ながら今回の総選挙を政権交代へつなげることはできませんでした。
 しかしながら、私たちは、石原知事の獲得した百六十六万四千五百五十八票には及びませんでしたが、それでも百六十五万三千四十五名の都民の方々からご支援をいただきました。私たちは、このような多くの都民の期待を背に、将来を託するに足る明確な選択肢を提示し得るよう今後とも全力を挙げていく決意です。引き続きご支援いただけますようお願いを申し上げます。
 さて、日本の総選挙告示日にピョンヤン入りをし、民族分断以来初の首脳会談を行った韓国の金大中キム・デジュン大統領は、翌十四日、北朝鮮の金 正 日キム・ジョンイル総書記とともに会談の成果をうたう南北共同宣言に署名いたしました。民族自主統一、離散家族の相互訪問、経済協力と相互交流、そして、金正日キム・ジョンイル総書記のソウル訪問、どれもが私たちの予想を超える画期的な合意であり、南北の人々とともに心から喜び合いたいと思います。
 そして、この三月に誕生した台湾の陳水扁総統は、二十日、この南北首脳会談を受けて、台湾と中国も必ず和解の時代を迎えることができると主張し、中国の江沢民国家主席に対して、前提を設けないで、ともに歴史的な握手の一瞬をつくることは可能だとして、中国と台湾との首脳会談の実現を呼びかけました。
 私は、安全保障上の厳しい現実を直視しながらも太陽政策を掲げた金大中キム・デジュン大統領、善意と誠意の姿勢を示し続けてきた陳水扁総統、この二人の政治家を高く評価したいと思います。いずれも具体化するためには幾つもの困難を乗り越えなければならず、過大な期待は禁物ではありますが、東アジアは確実に動いていることを実感させるものです。
 知事は、このような昨今の東アジア情勢についてどのように受けとめられておられるでしょうか、ご見解を伺います。
 さて、知事は、さきの所信表明において、就任以来の課題でありますアジア大都市ネットワーク構想について、この八月に、デリー、クアラルンプール、ソウル及び東京が共同提唱都市会議を開催し、ネットワークの理念や取り組むべきテーマについて協議すると述べられました。
 私たちも、東京がアジアの諸都市と連携し、環境問題への対応、文化の発信や文化産業の育成、災害時の総合支援体制の確保、都市づくりに関する技術・人材交流などを進めていくことは基本的に賛成するものですが、それがかつての冷戦構造を引きずるものであったり、中国包囲網を形成するものであってはなりません。都市外交には、国家間の外交とは異なる独自のスタンスが求められますが、世界における日本、アジアにおける日本の位置を見定め、戦略的視点からこのアジア大都市ネットワークを構想すべきです。
 知事は、アジア大都市ネットワークについてどのような理念に基づいて取り組まれようとお考えか、お伺いをいたします。
 また、このネットワークへの参加を呼びかける都市については、共同提唱都市会議の場で検討されると聞いております。ネットワークの理念や取り組むべきテーマによって呼びかける都市は異なってくるとは思いますが、東京都の友好都市である北京や国交のないピョンヤンをも含めたアジア全域を視野に入れ、戦略的な視点から参加を呼びかける都市について検討すべきと考えますが、ご見解を伺います。
 次に、介護保険制度と保健、医療、福祉の連携について伺います。
 介護保険制度が導入されて三カ月がたちました。家事援助に対する介護報酬、低所得者対策など、解決していかなければならない問題も山積しているものの、思っていたほどの大きな混乱もなく、とりあえず無事に制度がスタートしたのではないでしょうか。
 しかしながら、介護の現場では、医師とケアマネジャーとの連携不足が指摘されており、ケアマネジャーからは、在宅医療に関して医師から有効なアドバイスが得られにくいとの声も聞かれます。私は、現場における医療との連携が十分にとられるよう、設置四年目を迎える高齢者施策推進室のイニシアチブを強く期待するものです。
 また、特に痴呆にかかわる要介護認定については、実際に必要な介護サービスの程度と判定された要介護度との間に乖離があると指摘されています。痴呆の方の介護をめぐる状況には大変厳しいものがあり、きちんと要介護度を判定することは不可欠であります。そのためには、三年後の見直しを待つことなく、要介護度の適切な認定に向けて国に対して積極的に働きかけていくべきと考えますが、ご見解を伺います。
 介護保険制度の導入を契機として、福祉の分野においても、措置から契約という基礎構造改革が進んでおり、これからは、医療を初め介護や福祉の分野でも契約制度に基づいたサービスの提供がなされるようになるわけです。
 国においては、年金、医療、介護など、社会保障制度の全体像をどうしていくのかという議論がなされようとしておりますが、東京都においても、医療、介護、福祉が連携してサービスを提供できるよう努めていく必要があります。
 例えば、介護基盤の整備について、医療圈の違いから、各区市町村に必ずしも一般病床が適正に配置されていないこともあり、一般病床の療養型病床群への転換がおくれていることが指摘されています。また、高齢者のみでなく、障害者にとっても、医療と介護、福祉とは一体のものでありながら、個人の実態や生活の状況に即したサービスが必ずしも提供されてはいないという実態もあります。
 私は、将来の社会保障のあり方なども見据えつつ、保健、医療、福祉が連携して都民へのサービスを進めていくことが必要であると考えますが、知事のご見解を伺います。
 次に、医療改革について伺います。
 知事は、さきの所信表明において、日本の医療に対しては、患者への情報提供の不足や相次ぐ医療事故などから、かつてないほど不信感が蔓延しているとして、東京発の医療改革を宣言されました。医療機関においてもさまざまな取り組みが進められているところですが、知事も指摘されたように、今なお患者への情報提供の不足や医療機関についての情報不足が指摘されています。
 東京都保健医療情報センター「ひまわり」では、電話、ファクスによって、保健、医療、福祉の相談、医療機関の案内等を行っているほか、夜間・休日診療機関情報等も、音声応答システムによって提供しています。この四月からは、インターネットによる医療機関案内も開始されていますが、残念ながら都民の認知度は低く、もっとPRをすべきと考えます。
 しかし、その次に都民が望んでいるのは、医療機関に関する評価ではないでしょうか。インターネットの世界では一部既に行われているようですが、私たちの周りでも、いわゆる口コミで、この場合はどこの病院が安心だとか、あそこはやめた方がよいなどという情報が飛び交います。体調を崩したときにまず聞くのは、どこに医療機関があるのか、そして、もっと大事なのは、どこなら安心して診てもらえるかではないでしょうか。このような医療機関に関する評価と情報提供についてはどのようにお考えか、見解を伺います。
 私たちの命を預けることになる医療機関には、安心できる、信頼できることが不可欠であります。例を挙げれば、先日発表された、厚生省の利用者の立場から見て望ましい出産のあり方に関する研究班の調査によりますと、女性がお産をするとき、世界保健機関、WHOのガイドラインでは慣例的な実施はやめるべきだとされているさまざまな処置が、日本の病院では広く行われており、しかも、国民の信頼度が高い大学病院や大病院ほど、この実施率が高いと報じられています。女性に対する人権侵害ともいうべき行為が堂々とまかり通っている現状があります。
 知事は、さきの所信表明で、患者中心の医療を掲げられましたが、患者中心とは大きくかけ離れているのが現状ではないでしょうか。このような医療全体の改善に向けて、東京都として今後具体的にどのような取り組みを行うお考えか、伺います。
 また、日本の医療では、救命救急医療を担当する医師の不足が指摘をされていますが、この現状をどのように認識し、今後どうされようとお考えか、ご見解を伺います。
 ここで、視点を東京全域に広げてみますと、東京の医療は、第一次医療圏、第二次医療圏、第三次医療圏という医療計画の網がかけられ、必要病床数が定められています。これが都民の医療を確保するための指針として機能しているのならばまだしも、新規の参入を阻止するような、医療界における護送船団方式であっては、医療資源の効率的利用を妨げ、都民の選択権を狭めることになります。少なくとも病床規制の弾力的運用を図ることが、さきに述べました医療機関に対する評価制度と相まって、東京の医療を改善していくことにつながると思います。しかし、そのためには国の姿勢を変えさせなければなりません。東京都として国に対してどのような働きかけを行っていくのか、見解を伺います。
 さて、知事は、東京ERについて、記者会見の際の三年以内をさらに前倒しし、二年以内に設置すると述べられました。いつでも、だれでも、あらゆる症状に対応できる緊急診療体制の整備は、都民に大きな安心をもたらすものであり、多くの都民の歓迎するところであります。
 しかしながら、入院を必要としない救急患者、入院、手術を必要とする救急患者、生命危機を伴う重症・重篤救急患者の救急医療を東京ERが引き受けることになっていますが、現状において、都立病院三病院に三百六十五日二十四時間、救急医療を担当するフルスタッフを確保する展望があるのかどうか。また、将来、全都立病院に拡大することが可能なのかどうか、伺います。
 次に、情報公開について伺います。
 本定例会には、情報公開条例の一部を改正する条例案が上程されることになっています。これは、私たち民主党が昨年の第三回定例会において、東京都公安委員会、警視庁を実施機関に加えるべきと主張したのを受けて提案されるもので、基本的に評価したいと思っています。
 しかし、あれから既に十カ月も経過しており、かつ、施行期日が、公布の日から起算して一年三カ月を超えない範囲内となっています。知事が実施機関に加えると答弁してから施行まで二年もかかるというのは、余りにも時間がかかり過ぎるといわなければなりません。この間の相次ぐ警察の不祥事の中で、都民の信頼を回復するためにも、速やかな施行が望まれるところですが、ご見解を伺います。
 また、地方自治法施行令の規定により公安委員会には附属機関を設置できないことを理由に、情報公開審査会などに諮問する実施機関から、東京都公安委員会、警視庁を除外しています。一方、附属機関を設置できるとはされていない都議会の情報公開条例では、東京都議会情報公開推進委員会を設置し、あらかじめ学識経験者を指名し、不服審査の際に意見を聞くことにしています。この都議会の例と比べると、工夫が足りなさ過ぎると思うのですが、いかがお考えでしょうか。
 また、東京都の情報公開条例の趣旨からいえば、審議会等についても原則として公開されるべきものであります。同条例が成立する以前であっても、前知事の生活都市東京懇談会は公開されており、その議事録は東京都のホームページに掲載され、常時、都民の意見を受けつけておりました。
 そこで不可解なのは、東京の問題を考える懇談会と、横田基地の民間利用を考える会であります。これはどちらも非公開であります。論議の段階から都民に公開をし、都民の意見を受け入れながらまとめ上げていくことが、東京構想二○○○を生きたものとし、横田基地の民間利用を促進することにつながるのではないでしょうか。情報公開を重視する知事の姿勢とも相反するものと考えますが、ご見解を伺います。
 さて、知事は、さきの所信表明において、予算議会における論議をも踏まえて、電子都庁の実現に向けた第一ステップとして、本年秋に約三千台のパソコンをインターネットに接続すると述べられました。都庁の電子化については、これまでにもたびたび論議されてきましたが、財政問題に加えて、その意義が所管部局長の理解に至ったところで、部局長が異動となり、もとのもくあみになるということが繰り返されてきました。
 さきの予算議会では、全庁的な推進体制について今後具体的に検討していくと答えられておりますが、この四月に発表された「東京における情報化ビジョン」においても述べられているように、都庁の経営革新にITを戦略的に活用するためには、各担当組織を情報サイドから総合調整するCIO、最高情報統括責任者を副知事級に設けることも検討する必要があると考えます。
 都庁の電子化に係るこの十年の空白を早急に埋めていくためにも、全庁的な推進体制の確立を早急に図る必要があると考えますが、見解を伺います。
 また、平成九年に策定された都庁の情報化推進計画も、本年度でその計画期間を終了することになります。全庁的な推進体制のもとで、十三年度以降の情報化推進計画、都庁電子化プランを策定すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、東京都の財政再建について伺います。
 東京都においては、危機的な財政状況を背景にして、財政再建を主眼に置いた予算編成を行っており、今回の総選挙に当たって与党三党が行ったような、ばらまき予算の編成というような横暴は、それなりに抑えられていることは、評価に値するものです。
 しかし、財政再建に着手したとはいえ、財政の危機的状況は今も続いています。先日、財務局が発表した小冊子にも明らかにされているように、十一年度の一般会計決算が、前年度より赤字幅がわずかながら縮小するとはいえ、なお約九百億円もの赤字が見込まれています。財政の弾力性や健全性をあらわす経常収支比率が一○○%を超えることは必至であり、引き続き極めて厳しい状況にあります。
 知事は、就任一年を迎えるに際してのインタビューで、予算編成について、ことしは泣く子と政党には勝てなかった、来年はやってやろうと思ったと述べられていますが、特に、来年度は私たち都議会議員の選挙が控えております。今後さまざまな歳出圧力がいろいろな方面から吹き出してくることが予想されます。
 私たちもまた、さまざまな都民要望を受けることになるのですが、私たちは極力、都財政の一刻も早い再建に、そのスタンスを置こうと考えております。そのことが、結果として、将来にわたって都民生活を守っていく道であると確信しているところです。
 知事におかれましても、財政構造改革を断じて先送りすることなく、むしろ前倒しするぐらいの気構えで取り組むべきと考えます。今回の総選挙における与党三党のような姿勢はゆめゆめおとりにならないよう、強く求めるものです。
 また、昨年十二月の「広報東京都」紙上を用いた財政問題特集も、財政再建に対する都民の理解を求める意味で大きな役割を果たしました。私たちは、今後も、財政再建に向けた重要な局面においては、都民に積極的に情報を公開することによって都民の理解と協力を求めるべきと考えます。
 二年目の都政運営に臨む知事の、財政再建に向けた決意を伺います。
 先般、中地東京都参与を初めとする外部の専門委員から、「機能するバランスシート」の中間報告が発表されました。私たちはかねてから、官庁会計に企業会計手法を導入すべきとして、公営企業や監理団体すべてを網羅した連結バランスシートの作成や、官庁会計における歳出ではなく、減価償却費などを含めたコストをきちんと把握し、財政負担と対比させる、行政サービス計算書の作成、さらに、都民に対する説明責任を十分に果たせるよう、こうした財務諸表の公表を行うべきであると提言してきました。こうした、まさに機能する財務諸表と、別途試行される行政評価制度を用いることによってこそ、都財政の状況や各種施策の現状を都民に正確に説明し、政策選択や財政再建に対する都民の理解を得ることができると考えたからであります。
 今回の報告書は、こうした私たちの提言と同様の内容が端々に盛り込まれており、率直に評価するものですが、この中間報告を受けて、東京都は今後どのように対応されるのか、伺います。
 さて、東京都の銀行業等への外形標準課税の導入や、四月から施行された地方分権一括法により、地方税法で定められた税目以外でも自治体独自の課税がしやすくなったことから、各自治体に自主財源を模索する動きが広がっています。
 先月、大阪府議会が、東京都同様、銀行業等への外形標準課税を導入する条例案を成立させ、三重県の産業廃棄物埋立税や、横浜市の場外馬券売り場や風俗店などへの課税等々の新税構想が発表されています。
 しかし、銀行業等への外形標準課税は、地方交付税の交付団体にあっては、その増収分の八割に相当する交付税が減額され、法定外税についても、政策誘導的なものであって、自治体の主要な税源になるとは考えられません。
 こうした点を勘案すると、自治体の自主財源を確立するためには、国からの税源移譲が不可欠であります。今回の総選挙に当たって、私たち民主党は、国と地方の税源比率を、現在の二対一から一対一に転換すべきと主張しており、自民党も公約に、地方自治体の課税自主権を尊重しつつ、国から地方への税源の移譲を含め、地方税の充実確保を図りますとしています。これが単なる口約束でないならば、国からの税源移譲もそう遠い将来のことではないはずです。
 東京都においても、既に税制調査会を発足させ、国に対する布陣をしいていますが、今回の総選挙における各党の公約をも踏まえて、知事の、税源移譲を初めとした税財政制度の改善の展望と実現に向けた決意について伺います。
 次に、副知事の選任について伺います。
 今回提案されております副知事の選任につきましては、昨年の臨時都議会以来の懸案事項でありました。石原知事は、今回改めて濱渦氏を副知事に提案されておりますが、知事は濱渦氏にどのような仕事を期待しているのか、また、副知事三人体制により、今後どのような都政運営を図ろうとしているのか、ご見解を伺います。
 最後に、一言述べさせていただきます。
 先週末の各新聞に、知事の記者会見の発言が報じられました。紙面には、こっぱ役人、小役人、ばか役人という言葉が踊り、知事が怒りをあらわにしたとされています。都職員に誤りがあれば、厳しく叱責されるのは当然でありますが、それは内部で行われるべきことであり、都職員のトップである知事が外部に対していうべきことではありません。知事は、政治家であると同時に、都職員を束ねる最高責任者であります。最高責任者であるならば、対外的には、職員の誤りを責任者として謝罪するのが本来の姿勢ではないでしょうか。
 しかも、先ほどの総務局長答弁が事実であるのなら、この発言によって傷つけられた島民の善意や、まさに不眠不休で職務に臨んだ都職員の名誉はどうなるのでしょうか。
 知事は、しかるということがお好きなようですが、教育やモラルを語る者として、また、くれぐれも都知事の職にあるというご自身の立場に留意をされ、今後とも、事実関係を正確に把握した上で発言されるよう求めておきたいと思います。
 以上で、都議会民主党を代表しての質問を終えます。
 知事並びに関係局長の誠意ある答弁をお願いをいたします。(拍手)
    〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 馬場裕子議員の代表質問にお答えいたします。
 最初に、昨今のアジア情勢についてどう考えるかというご質問でありますが、朝鮮半島における南北首脳会談の成立、あるいは、台湾の新しい総統であります陳総統が中国に向かって対話を呼びかける、非常に好ましい動きだとは思いますが、しかし、また同時に、国際政治というものは決して善意とかヒューマニズムだけで動くものではなくて、あくまでも冷厳なパワーポリティックス、パワーゲームであるということもひとつ私たち承知して、アジアの動きを見詰めるべきだと思います。
 いずれにしろ、アジア、特に東アジアは、世界の発展途上地域に比べますと、最も潜在能力の高い、ポテンシャルの高い地域であります。また同時に、地勢学的にも我が国に非常に隣接しておりまして、重要なかかわりを持つ国々であります。
 ひとつご参考に申し上げておきますが、最近、私、入手しました、これはかなりコンフィデンシャルなものでありますけれども、アメリカの国防次官の諮問機関が出しました、アジアの近未来におけるアメリカにとっての重要な存在感を持つ国というものの分析では、もはや日本とロシアはその地位を譲り、中国とインドがかわりに登場してくるという分析をしておりました。
 そして、今度の南北会談がどういう進展を行うかわかりませんが、私はこの意見にかなり同感を覚えておりますけれども、下手をすると朝鮮半島は第二のベトナムになるでしょう。そして、現在、北朝鮮がソビエトから購入して地下化している軍備体制というものは、非常にやっかいなものでありまして、それを踏まえて、北が南側に向かって、いろいろナショナリズムというものを踏まえながら政治工作をする。その結果がどうあらわれてくるかわかりませんが、いずれにしろ、それに中国が介入して、アメリカが韓国から地上軍を撤退するということになりますと、その結果、下手をすると、アジア全体が中国のヘゲモニーに組み込まれる可能性も十分ある。これは明らかに予測でありまして、分析でありますから、一○○%当たるかどうかわかりませんが、しかし、私たちは、そういったものも想定して、私たちの国の指針というものを考える必要があると私は思います。その場合、日本がどういう選択を強いられるかということも、かなり詳しく冷静に、このリポートは分析しておりますが、私にとっては一々うなずけるものでありました。
 いずれにしろ、私たちは平和のうちにーー非常に可能性に満ちた東アジアが、どの国がそこにヘゲモニーを持とうと、平和のうちに共存していくことが望ましいと思いますけれども、単に今回の南北の首脳会談が成就し、陳総統が冷静に北京に呼びかけても、なお、北京はこれにどう答えるかわかりませんし、現に答えが返ってこないわけでありますから、私はそうそう、要するに、楽観した新しい事態がアジアに到来するということは、にわかにはいえないんじゃないかと思います。
 次いで、アジア大都市間のネットワークの理念についてでありますけれども、今申しましたように、東アジアは非常に可能性に満ちた発展途上地域でありまして、西欧の国々が手がけてきたアフリカであるとか、中近東あるいは中南米に比べれば、はるかに可能性に満ちた経済地域でもあります。そういう国々とのかかわりを、国家は国家の外交で遂行していくでしょうが、やはりその中核をなしている大都市、特に首都が、具体的なアイテムを構えて協力するということは、新しいアジアのアイデンティティーを確立するためにも好ましいのではないかと思います。
 例えば、この間、小渕総理の葬儀に来られたマハティールさんと久しぶりに会食しまして、長いこと話しましたが、彼は、それは非常に難しいけれど、非常に興味がある問題であるとおっしゃっていましたけれどもーー既に廃機になって、その次の後続機が見つからない、例えばYS11の後続機であります小中型というんでしょうか、百二、三十人乗るような、非常に短距離で離発着できる、決して大洋を飛んで、ここからアメリカへ行くというような、そういう飛行機じゃなくて、かなりの近接した国の間を飛び回るような、いってみればコミューターに毛が生えたようなジェット機の旅客機のようなニーズというものは、実は稠密に国が隣接しているアジアでは十分あり得るわけでありまして、アメリカは、こういうものをアジアがイニシアチブでつくるということは非常に好みませんでしょうが、しかし、私は、アジアの新しいアイデンティティーのために、日本が中心になってそういうものを、マーケットの開拓と同時に、あわせて東アジアの大都市がイニシアチブをとって協力して行うというようなことは、私は、繰り返して申しますけれども、アジアの新しいアイデンティティーのために必要ではないかと思います。
 そういうことも具体的に呼びかけまして、八月末にまず、デリー、クアラルンプール、ソウル、東京の四都市による共同提唱都市首長会議を開催しまして、さらにそれを輪を広げて、当然、アジアに存在する大都市に声をかけていこうと思っております。
 次いで、これからの福祉のあり方についてでありますが、行政が決定する福祉から、利用者がみずから選択する福祉への本質的な転換を実現していく上で、保健、医療、福祉の連携は極めて重要な課題と心得ております。
 東京都は、社会保障制度改革の動向などを踏まえて、東京における福祉改革の指針であります福祉改革ビジョン及び高齢者保健福祉計画をも発表いたしました。
 今後、年内を目途に策定する福祉改革推進プラン、仮称でございますけど、などによりまして、サービスの内容や提供システムを改革するとともに、保健、医療、福祉の連携も図りつつ、都民に満足していただける便利な福祉体制を確立していきたいと思っております。
 既に今、同じような方法でドイツが発足しておりますが、先人としてのいろいろ失敗例もあるようでありまして、そういう情報を早く得て、その轍を踏まないような手早い対処をしながら、日本独自の方法を東京から確立していければと思っております。
 財政再建に向けた決意についてでありますが、就任以来、財政再建を都政の最重要課題の一つと位置づけて、給与の削減など内部努力も厳しくやってまいりました。同時に、施策についても、聖域なしということで見直しをしてまいりましたが、しかし、おっしゃったようにいろいろバリアもありまして、財政再建はまだまだ緒についたばかりであります。今日の厳しい現況を考えれば、この道のりは非常にまだまだ遠いと思っております。
 ずっと東京都は、地方自治体としては三役を張ってきたわけですが、とうとう幕じりまで落ちまして、先場所は何とか踏みとどまって、十両に陥落せずに済みましたが、ことしはなかなか危ないんじゃないか。そのときに、幕内から十両に陥落したときに、お相撲さんはまだ、要するにお相撲さんで済むわけですけれども、東京の場合には、その瞬間、国が構えているナショナルミニマムというものを課せられたときにーーことし、予算を編成するときの施策の見直しというものによって、例えば、一応聖域とされてきた福祉というものを、ある程度削減いたしましたし、ことしまた手をつけなきゃならないかもしれませんが、それを忌避することで、結局オール・オア・ナッシングで、土俵を割ったら、一体、福祉なら福祉に限っても、ナショナルミニマムというものを私たちが構えなくちゃならない時点で、どれだけ今日の、要するに、施策の内容と格差ができるかということも、やっぱり政治家の皆さんにもそれぞれ冷静に考えていただきまして、予算の編成の過程でぜひともご協力を賜りたいということを、今からお願い申し上げる次第であります。
 いずれにしろ、財政構造改革を進めるに当たりまして、やはり地方への税源の移譲など、税財政制度の改善は必須の問題でありまして、国が当然これを理解し、踏み切らなくちゃいけないのに、肝心な問題が棚上げにされておりますが、今後とも、私自身も先頭に立ちまして、東京都税制調査会などを通じて、国がうんといわざるを得ないような内容の要求というものを、地方自治体を代表した形で、決して東京だけのためじゃなしに、これからの地方主権の時代の日本全体の地方自治体のために、国に向かって働きかけていきたいと思っております。
 次いで、副知事の選任についてでありますけれども、本定例会でご同意がいただければ、濱渦君には、これまでの経験を生かして、国との連絡調整、そして監理団体等の改革ーーこれはまあ、あえて申し上げますと、都庁出身の方にはなかなか心理的なバリアがあるでしょうから、むしろ彼のようなキャリアの人間の方が思い切った策も立てられるんじゃないか。あるいはまた、産業振興を中心に、従来の都庁になかった発想で仕事に取り組んでもらいたいと思っています。
 また、三人の副知事が一体となって私を支えて、東京の危機を打開するための明確な方針と具体的な政策を打ち出すことによって、日本の改革につながるような都政運営を行ってまいりたいと思います。
 加えて申しますと、今度から特別職になります教育長は、これはいわば、教育プロパーの副知事のような、非常に重要なポジションであります。いってみますと、教育を含めれば実質的に四人の副知事が誕生して、私を支えていただくという形で、行政について万全を期していきたいと思っております。
 最後に、私はどうも口が悪いものですから、三宅島の問題について、非常に腹が立ったので申しましたが、しかし、決して責任転嫁するわけじゃありませんけど、私が新聞から受けました情報では、どうもあの責任は東京の支庁のスタッフにあるというようないわれ方をしましたので、いかにも、地方に出向している役人が、東京から来る偉い人のために余計なことをしたなという印象で、物を申しましたが、なお精査しましたならば、そういうことでなくて、地元の政治家が変に気をきかしてああいう措置を講じたようで、これは、支庁の役人たちの名誉のために、私、彼らにも謝罪いたしますし、それからもう一言申し上げれば、新聞にも、正確な情報を私に伝えてもらいたいと、あえて要求したいと思っております。
 いずれにしろ、的確なご指摘、ありがとうございました。
   〔高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤信之君登壇〕

○高齢者施策推進室長福祉局長兼務(神藤信之君) 介護保険における痴呆の方の要介護認定に関する国への働きかけについてのお尋ねでございますが、都内の区市町村におきましては、「かかりつけ医のための痴呆の手引き」の活用などを通じ、要介護認定は、認定基準に基づき、適切に行われているものと考えております。
 しかし、痴呆の方の要介護認定が難しいという各方面からの意見があることは聞いておりまして、過日、国に対しまして、痴呆の状態により要介護度を変更する場合の事例集を示すよう、提案しているところでございます。
 今後とも、認定の実施状況を踏まえ、区市町村と連携して、国に対し必要な働きかけを行ってまいります。
   〔衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 医療改革について、五点のご質問にお答えいたします。
 まず、医療機関に関する評価と情報提供についてでございます。
 都民が、適切で質の高い医療を安心して受けられるようにするためには、医療機関みずからが努力するとともに、第三者による評価をあわせ行うことが必要であります。
 医療機関に対する第三者評価としては、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価が行われており、都は、民間病院がこの審査を積極的に受けられるよう、財政支援を行うこととしております。
 今後、こうした取り組みを通じて得られた情報を都民に提供していくよう、関係機関等と協議してまいります。
 次に、患者中心の医療の取り組みについてでございます。
 医療においては、医療従事者が患者に一方的に医療を提供するのではなく、双方の十分なコミュニケーションのもと、患者が主体的に選択する医療サービスを提供していくことが重要であると認識しております。
 これまでも、都立病院におきましては、カルテなどの診療情報の開示やインフォームド・コンセントの推進を図ってまいりましたが、さらに患者の立場に立った医療を提供する姿勢を明確に宣言する、患者の権利章典を策定してまいります。
 また、衛生局に患者の声相談窓口を新たに設置し、都内の医療機関に対する患者や家族のさまざまな要望等を、今後の病院運営等に反映させてまいります。
 次に、救急医療についてでございます。
 都では、三百六十五日二十四時間対応可能な救急医療体制の整備を進めているところであります。今後さらに救急医療を充実するためには、救急専門医の確保が重要であると考えております。そこで、救急医療医師研修会の充実や、都立病院における救急専門医の育成、臨床研修医制度の拡充を図るとともに、国に対しては医師の養成、研修の充実を提案するなど、引き続き救急医療体制の充実に努めてまいります。
 次に、病床規制に関する国への働きかけについてでございますが、東京都保健医療計画に定める病床数は、医療法に基づき、医療資源の適正配置と効率的な利用を進めるため、二次保健医療圏ごとに算定することとされております。この制度に関しては、必要病床数の算定方法が全国画一的で地域の特性が反映されにくく、機械的な規制になりがちなことなどの問題点が指摘されていることは承知しております。今後、より地域の実情に応じた効率的な医療を実現するために、病床数の算定や医療計画の運用において知事の権限を拡大するなど、国に対して積極的に改善を働きかけてまいりたいと考えております。
 終わりに、東京ERを整備する都立三病院での医療スタッフの確保についてでございます。今後、医師を初めとする救急専門スタッフの育成や臨床研修医制度の拡充など、人材確保のためのさまざまな工夫を行いながら、必要なスタッフについて計画的に配置してまいります。また、他の都立病院への拡大につきましては、今後設置する都立病院改革懇談会において、地域特性や都立病院の担うべき役割を踏まえ、検討していただくこととしております。
   〔政策報道室長柿沼伸二君登壇〕

○政策報道室長(柿沼伸二君) 情報公開に関します三点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、情報公開条例改正の施行時期についてでございますが、警察業務につきましては、全国斉一性を考慮いたしまして、国の情報公開制度との均衡を図る必要があるわけでございますが、情報公開法の関係法令が本年二月に公布をされ、国の制度の詳細が明らかになったことから、直近の時期である今定例会で条例改正を提案させていただいたものでございます。今回の改正で、公安委員会、警視総監は、初めて条例上の実施機関となるわけでございますが、膨大な既存文書の分類整理や、適切に対応するための体制整備、あるいは職員研修などに相当の準備期間が必要となると考えております。これらの要素を勘案いたしまして、遅くとも来年十月までには施行することにしたものでございます。
 次に、情報公開審査会への諮問についてでございますが、これは、ご指摘のとおり、現行法令等では、公安委員会、警視総監が行った非開示決定等に対する不服申し立ては審査会へ諮問することができないわけでございます。審査会ではなく、お話にありましたように、何らかの第三者機関を置いて、その意見を求めることも、公安委員会が附属機関へ諮問することはできないとする現行法令等に抵触するおそれがございます。現行の法制度におきましては、第三者的性格を有する公安委員会が、行政不服審査法に基づきまして、条例の趣旨を踏まえ適正な判断をするものと考えております。
 最後に、東京の問題を考える懇談会と横田基地の民間利用を考える会の非公開についてのお尋ねでございますが、これらの会は、知事みずからが都政運営の参考とするために、適宜会議を開きまして、各界の有識者から、さまざまな情報やアイデア、提案、こういうようなものをいただくものでございまして、先生お話しのような審議会のような答申をいただく性格のものとちょっと違ってございます。また、出席者の自由な意見交換を行うために、個人や企業の情報保護にも配慮する必要がある、こういうものも不可欠である。このような会の性格から、非公開としているものでございます。情報公開の趣旨に反するものではない点をご理解いただきたいと思います。
   〔総務局長横山洋吉君登壇〕

○総務局長(横山洋吉君) 情報化に関します二点のご質問にお答えします。
 まず、都庁の電子化の推進体制についてでございますが、電子都庁を推し進めるためには、あらゆる分野の行政活動を、人手と紙による管理からITを活用した情報の管理へ移行させるため、仕事の進め方の根本的な改革が必要でございます。そのため、電子都庁の目標を明確にしますとともに、全庁的な推進体制を確立したいと考えております。
 次に、情報化推進計画の策定についてでございますが、現在、都庁の情報通信基盤でございますTAIMSを整備しておりまして、これを核とした電子都庁の実現に向けて、新たな情報化の推進計画の策定に着手しているところでございます。本年度内には、電子申請などの具体的なメニューを織り込んだ、電子都庁の実施計画を策定する予定でございます。
   〔財務局長木内征司君登壇〕

○財務局長(木内征司君) バランスシートについてのご質問にお答え申し上げます。
 東京都参与を中心とする専門チームの中間報告において、バランスシートとともに、キャッシュフロー計算書や行政コスト計算書などの財務諸表に関する貴重な提言がございました。今後、今回の提言や最終報告を踏まえまして、新たな財務諸表を作成し、財務情報の開示に努めるとともに、財政分析などに役立てていきたいと考えております。

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