平成十二年東京都議会会議録第四号

○副議長(五十嵐正君) 十二番福士敬子さん。
   [十二番福士敬子君登壇〕
   [副議長退席、議長着席〕

○十二番(福士敬子君) 自治市民'93といたしまして、知事の政治姿勢に関して、まず外形標準課税制度の全貌について伺います。
 この税制が国政に与えた波紋が、全国的な税制改革の議論に結びついたことは幸いなことです。しかし、現実に条例を制定するか否かについては、波紋の部分ではなく、投じられた一石の価値そのものを見なくてはなりません。私は、この税制が五年間の時限措置であるところに一番無理を感じていますので、その点についてのみお尋ねいたします。
 全国銀行協会への公式説明を報じる二月二十二日の新聞に、五年後に現行税制に戻すという意味ではないという、主税局幹部の発言が載っていますが、議会に対してそのような説明はありませんでした。これは議会軽視の疑いがありますので、まず、新聞が伝えた発言の事実があったのかどうか、この場で明らかにしてください。
 また、この発言が五年後の継続を示唆するのであれば、これは、このたびの条例案とは違う話ですから、どちらかを取り消していただかなくてはなりません。
 さらに、発言が継続を示唆していなくても、時限措置として提案されたものが、期間を過ぎてももとに戻らないというのなら、どうなるのかを提案に含めていただかなければ、判断はできません。一部分だけで判断するのは無理があります。一過性の、猫の目のように変わる税制であるなら、なおのこと論外です。
 このたびの条例案の真価は、その先の税制に対するビジョンがはっきり見通せているかどうかにあるというのは、専門家がひとしく指摘するところです。国の対応を待つのではなく、本来あるべき外形標準課税制度の姿をどのようにお考えなのか、全貌をお示しください。
 次に、財政危機の責任所在について伺いますが、知事は、都財政の危機的な状況については繰り返し訴えていますが、その責任がどこにあったかということについては、いまだに触れておりません。責任をとらないままの都政を、どのように改革していくというのでしょうか。
 知事就任後も、旧都営十二号線、臨海副都心線など、大規模な公共事業への公金投入は続いております。多摩都市モノレールは、沿線の五都市も巻き込んだ追加支援となりました。知事は、このたびの財政危機の最も大きな原因がどこにあるとお考えなのか、その責任の重さと所在をどのように都民に示し、どのように追求されるのかをお尋ねいたします。
 続いて、男女平等参画基本条例に関しては、まず、女性を取り巻く環境について、知事のご認識も含め、伺っておきます。
 このたび、男女平等参画基本条例案がまとまりましたが、一日も早く対策に着手してほしいと願う女性たちの期待とは裏腹に、女性施策への予算は、わずかな調査予算のみにとどまっています。
 一方、女性を取り巻く環境は、男女平等以前に、女性の人権すら危うい状況が続いています。性犯罪の発生件数を、強制わいせつと強姦に注目して都道府県別に集計すると、その絶対数は、東京の九百三十九件が他県に比べて群を抜いて多く、人口比で見ても、東京は全国平均の一・六五倍の発生件数を記録しています。その他、私が警視庁の担当者に伺ったところでは、大都市圏で集中的に発生しているひったくりの被害者は、その九五%が女性だそうです。強姦、強制わいせつ、夫の妻に対する暴力、セクシュアルハラスメントなど、女性の生命、身体、精神に重大な被害をもたらすこれらの問題は、知事が常々いわれる、命を守るべき行政の責任として、本来、東京における女性の危機と位置づけられ、危機突破・戦略プランに盛り込まれてしかるべきでした。緊急に対策を立てるべきであると考えますが、ご所見はいかがでしょうか。
 最後に、東京都が昨年、モデル事業として実施した、女性問題にかかわる訴訟支援制度の予算がすべて失われたことについてお尋ねいたします。
 国の法律扶助事業が、適用範囲の広い一般的な法律扶助を目的としているのに対し、東京都の法律扶助モデル事業は、女性問題にかかわる法律扶助に対象を絞り込み、さらに、国の制度が対象としていないセクシュアルハラスメントを視野に入れた、全国にも例のない先進的な取り組みでした。都が予算を打ち切ることで、女性問題に焦点を当てた法律扶助は宙に浮いた形になっております。このたび予算が措置されなかったことで、都のモデル事業の趣旨は失われてしまうのか。
 国の事業ではセクシュアルハラスメントが取り扱われにくいこと、法律扶助協会が都のモデル事業を契機に設置した、女性問題に詳しい弁護士による特別相談窓口の存続などが危惧されます。
 今後、女性施策を展開していく中で、モデル事業の趣旨がどのような形で受け継がれていくのかお尋ねして、終わります。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 福士敬子議員の一般質問にお答えいたします。
 あるべき外形標準課税についてのお問い合わせですが、ちょっと税制についてご理解が正確さを欠いているか、ちょっと混乱しているような気がするんですけれども、今回やりました新しい税は、あくまでも地方税法の中で東京のできる権限でやったことです。今、世間で議論されているのは、国が責任を持って行うべき、つまり、もっと概括的といいましょうか、広範囲の外形標準課税でありまして、私は、これはこれで行われたらいいし、その成り行きを注目しますけど、それを待ってられないから、東京都プロパーの税制をやったわけでありましてね。ですから、あなたがお問い合わせのあるべき外形標準課税というものは、これは私よりも国に問われた方がいいんじゃないでしょうか。(発言する者あり)
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   [主税局長大塚俊郎君登壇〕

○主税局長(大塚俊郎君) 銀行業に対する外形標準課税についてでございますけれども、五年後の課税のあり方につきましては、何度も繰り返しご答弁申し上げましたように、その時点において都議会の判断をいただくものでございます。
 なお、お話しの発言は、税収の変動が極めて大きい銀行業、そうした銀行業に対する事業税の課税標準としては、外形標準が適しているということを一般的に申し上げたにすぎないものでございます。
   [財務局長木内征司君登壇〕

○財務局長(木内征司君) 財政危機の要因についてでございます。
 東京都は、景気が後退し、都税収入が大幅に減少する中、都民要望にこたえ、公共投資を中心に、喫緊の課題である景気対策を行ってまいりました。同時に、経常経費につきましても、都民サービスの水準を確保するために、基金などの財政の対応力を活用して、その水準の維持に努めてきたところでございます。
 その結果、歳出の見直しがおくれるとともに、将来の財政負担が増大いたしましたが、このことが財政危機の主な要因であると考えております。
 現在、こうした認識のもと、財政再建推進プランに基づき、全庁挙げて財政構造改革に取り組んでいるところでございます。
   [生活文化局長今沢時雄君登壇〕

○生活文化局長(今沢時雄君) 女性への暴力に対する緊急対策についてでございますが、都では現在、関係各局や警視庁などを構成員とします、女性に対する暴力関係機関連絡会を設置し、緊急対策として、女性に対する暴力一一○番、あるいは被害者相談カードの配布などを実施しております。
 今後、本定例会に提案しております東京都男女平等参画基本条例の趣旨を踏まえまして、関係機関との連携をさらに強化し、施策の推進を図ってまいります。
 次に、訴訟支援についてでございますが、都は昨年、お話しのような訴訟支援を試行いたしましたが、民事法律扶助制度につきましては、現在開会中の通常国会に民事法律扶助法案が提出されていること、また、国の来年度予算におきまして、民事法律扶助に係る補助金が大幅に増額される見込みでありますことから、都の試行の趣旨は国の扶助制度に生かされるものと考えております。

○議長(渋谷守生君) 以上をもって質問は終わりました。

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