平成十二年東京都議会会議録第四号

○議長(渋谷守生君) 四十九番藤田愛子さん。
   [四十九番藤田愛子君登壇〕
   [議長退席、副議長着席〕

○四十九番(藤田愛子君) 清掃事業の区移管に伴い、環境局が立ち上がります。総合的な環境施策を展開し、東京を持続的発展可能な環境優先型の都市に変えていくことは、これまで私たちが提案してきたことで、まず、この実現に向け一層の努力を求めます。
 さて、先月の尼崎公害訴訟で判決が出されたのを受け、知事は、係争中の東京大気汚染訴訟についても行政側に責任があることを認める発表をされました。
 また、ディーゼルノー作戦として、ディーゼル車が排出する浮遊粒子物質を削減するために、SPMを取り除くフィルター装置の義務づけやガソリン車への転換を提案されましたが、ぜひ進めたいものです。
 しかし、ここで知事にお尋ねしたいのですが、東京の通過交通を削減するためとはいえ、大型の公共工事で巨大幹線道路をつくるというのは、開発を優先したものであり、これまでの都の考え方と何ら変わるものではありません。緑豊かな住宅地や野川の崖線を横切るような道路づくりが、なぜ環境優先型の東京に変えることになるのかが疑問です。
 さらに、排ガス公害の行政責任を認めながら、今回の福祉の見直しでは、大気汚染にかかわる健康障害者に対する医療費の一部負担を求めたりすることに矛盾を感じます。知事の予算編成への基本姿勢を伺います。
 次に、分権及び外形標準課税の導入について伺います。
 都の財政危機の要因として、バブル期に公共事業など莫大な投資的経費を支出してきたことも一因ですが、現行の、赤字決算だと税金がなくて済むというあり方が問題です。
 こうした中で、外形標準課税を導入することは、財政安定化を目指した地方自治体の課税自主権と外形標準課税の本格的確立の一歩という意味で評価できます。しかし、課税は懲罰ではないのですから、都財政の危機について、誠意を尽くして合意を目指すことが必要であり、また、今後一層の分権の推進と行政改革を忘れてはなりません。
 一方、国は、強硬な態度こそ示していませんが、今後、地方税法における課税自主権の縮小だけでなく、関係のない他の国庫事業採択や施設の箇所づけなど、さまざまな妨害が予想されます。これが事実であれば、財源の確立を課題とした分権の時代に全く逆行するものと考えますが、知事の見解を伺います。
 また、今回十二年度予算では、コスモ信用組合の債権回収にかかわる経費の計上が見送られ、信用組合の経営基盤強化施策の検討が表明されました。都は、旧二信組及びコスモ信用組合問題の解決のため、昨年暮れから国との間で協議を重ねてきたと聞いておりますが、信用組合の経営基盤強化施策の検討が、先ほど述べたような外形標準課税をめぐる国からの圧力を受けた結果であれば問題と考えますが、見解を伺います。
 さて、分権一括法の成立により、分権の本格的時代が到来しました。今回、数多くの一括法絡みの条例提案がなされましたが、知事のパワーを制度面においても発揮されることを望むものです。
 主要な改正の柱の一つは、機関委任事務の廃止でありますが、もう一つの柱は、自治体同士が対等の関係となったことです。しかし、多くの都道府県で基礎自治体対応の窓口が市町村課へ移行しつつある中で、都に地方課という名前が残されたり、法的に不必要なところに、区市町村への指導という記述が規定などに残されていることが散見されます。区市町村との対等な関係を確立し、政策法務や自治立法を推進していくためにも、名称や条例、規定、規則を再チェックし、早急に改善すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、行政の工事や物品の発注に関して伺います。
 自治体は、地域社会をあるべき方向に向かって誘導する使命があると考えていますが、まさに知事が環境を重視した東京をつくるためには、この使命が不可欠です。このため、企業に対して経済的誘導策をとることは、地域をあるべき方向に向かわせる有効な手段ではないでしょうか。この点で、環境に配慮したグリーン調達をしている企業に都の契約が拡大すれば、環境を配慮する企業がふえます。都は先日、ISO一四〇〇一の認証を取得しました。その取得に当たっては、環境方針を制定し、方針に基づいた百五十八項目の環境の改善目標を挙げて、その達成に向けた活動を行うことを明らかにしています。
 都は、都内最大規模の事業者であり、その事業活動は社会に大きな影響を持つものであり、環境配慮の行動を広く社会にも波及させる責任があります。そういう意味で、都は強力に具体的な取り組みを進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 国は、昨年八月の緊急雇用対策事業において、委託先として企業及びNPOを考えていました。NPOへ委託があればNPOは元気になれますし、多くの市民もまちづくりに力を発揮するでしょう。しかし、NPO法人が全国的に見ても一番多い東京において、福祉局の子育て支援スタッフの養成研修一件がNPOに委託されただけでした。委託先の決定方法がどのようであったか伺います。
 現在の契約制度は、最小限の金額で最大限の効果を上げるということに重点が置かれているため、競争入札にそぐわない団体は、初めから入札には参加できないことになってしまいます。しかし、都は身体障害者多数雇用企業や中小企業に対しては、これまでも優先指名入札を実施しています。このことは、社会的責任を果たす企業を重視する随意契約で、いわば発注のポジティブアクション、すなわち政策的入札といえるのではないでしょうか。
 昨年、自治法施行令の改正で、一般競争入札に総合評価方式が導入され、価格万能であった従来の方法が改められ、品質や技術力の重視など多様な視点が取り入れられ得る時代となりました。現在の障害者雇用率の高い企業や中小企業への優先指名に加えて、環境等の要素を初めとして、市民活動、男女平等基本参画条例の制定を受け、事業者責任として女性問題に積極的に取り組んでいる企業を優先指名の対象として物品や工事を発注していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、環境問題について伺います。
 今国会に建築廃材のリサイクル法案が出され、成立すれば二〇〇二年中に再資源化が義務づけられることになります。現在、戸建て住宅は、廃材処理に要する敷地の問題などでミンチ解体を行うことが多く、廃材選別が難しい状況にあります。また、建物の解体時に、元請業者がすべての排出に責任をとらなくてもよい状況にあります。今回の建築廃材リサイクル法で、最終処分業者のマニフェストが排出業者へ回るようになると聞いておりますが、リサイクル施設がなければ、これまでと同様に建築廃材が選別されず、不法投棄につながります。廃材処理施設は、迷惑施設として用地取得等の困難性が指摘されています。今回、都は公共関与構想検討委員会から、リサイクルを促進するための先導的、モデル的施設整備構想の提言を受けていますが、事業者処理責任を前提に早急に整備すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
 日本では、住宅に対する品質要求が高く、住宅の耐用年数が欧米と比べ三十年と短いことなどから、住みかえより建てかえが多くなってしまいます。廃材処理を考えれば、リサイクルに向かうような誘導が必要です。
 これまで私たちは、住宅建設に際して環境共生住宅の考え方を提案してきました。指針づくりが進んでいると聞いておりますが、指針の策定時期と、その中で住まいづくりに際してリサイクル推進はどのように盛り込まれているか、伺います。
 次に、ダイオキシンとともに環境ホルモンの一つであるビスフェノールAについて伺います。
 昨年、国にはダイオキシン特措法ができ、都においても公害防止条例の全面改正の中で、小型焼却炉の使用を禁止するとしていますが、野焼きや、建築廃材の不正処理が依然問題になっており、ダイオキシンについての市民の不安は拭えません。私たちは昨年九月、生協の仲間とともに、都内三十一自治体で松葉によるダイオキシン濃度測定を行いました。
 調査結果は、埼玉県南東部の産廃銀座といわれる地点の影響とも考えられる地域以外にも、立川市、杉並区、八王子市、町田市などでも、四・七九から六・八六ピコグラム・パー・TEQという高いダイオキシン濃度が検出されました。これは市民の生活する身近な地域にダイオキシン汚染源があるからと思われます。このことから、ダイオキシン問題は特定地域だけではなく、都内全域で取り組むべき問題であり、経済活動の根本からの見直しが求められています。
 さて、乳幼児の必需品であるポリカーボネート製の哺乳瓶から検出されるビスフェノールAについては、この難問に対処するため、哺乳瓶の業界も連絡会をつくるなどして、消費者に対する疑問に答えてきました。また、都は昨年実施したポリカーボネート製哺乳瓶からのビスフェノールA溶出実態調査において、使用済み哺乳瓶の提供を受けた病院など四施設のうち、一施設の哺乳瓶から特異的に高濃度のビスフェノールA溶出が認められたのを受けて、原因の一つと考えられた洗浄剤とビスフェノールAとの関係を解明するための追加試験をしたと聞いていますが、結果はどのようになったのでしょうか。
 また、この結果を受けて、哺乳瓶メーカーはどのような対応をしたのかを伺います。
 環境ホルモンは、ごく微量でも生殖機能などに影響を与え、特に体の小さい乳幼児への影響は大きいといわれています。環境ホルモンが検出されるポリカーボネート製哺乳瓶よりも、ガラス製の哺乳瓶の使用が望ましいことはいうまでもありませんが、都は、乳幼児を持つお母さん方はもとより、調査結果などを広く都民に情報提供することが必要です。特に哺乳瓶の洗浄方法が問題であればなおのこと、直接母子に対応する保健婦さんが適切な指導をするためにも、区市町村に対する情報提供や、哺乳瓶を販売する薬局等や、哺乳瓶を多量に使用する病産院への情報提供が徹底されなければならないと考えますが、いかがでしょうか。
 以上を伺って、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 藤田愛子議員の一般質問にお答えいたします。
 環境施策に関する予算編成の基本姿勢についてでありますが、先般、尼崎訴訟に関連して行政側の責任について言及しましたのは、行政には住民の健康を守るというその本来の役割があります。大気汚染対策全般についての努力が、やはり鈍感であり怠慢であった、不足していたという認識を否めません。
 大気汚染による健康被害については、健康被害発生後の救済策としての医療助成も重要な施策でありますが、都としては、原因の究明と、その発生源の除去にこそ力を入れるべきと考えております。
 こうした観点から、幹線道路の整備による交通渋滞の解消やディーゼル車対策に取り組んでおり、平成十二年度予算も同様な考え方に基づいて編成をいたしました。環境に重要なかかわりのある社会資本である幹線道路の完成を放置して、都心部だけを犠牲に供するわけにいかないと思います。
 次いで、課税自主権の制限を行おうとしている国の動きでありますが、そこまで詳しく仄聞しておりませんけれども、いずれにしろ、地方分権一括法を制定しながら、その一方において課税自主権の行使を制限するような法律改正等を行おうとするならば、これはまさに自治と分権の流れに逆行する自殺行為にほかならないと思っております。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   [労働経済局長大関東支夫君登壇〕

○労働経済局長(大関東支夫君) 信用組合の経営基盤強化策についてお答えいたします。
 まず、これまで実施してまいりましたコスモ信用組合の債権回収業務に関連する経費の支援につきまして、平成十二年度予算案への計上を見送ったのは、都の強い要望を踏まえた法改正がなされる見通しとなったためでございます。
 一方、地域経済の安定に重要な役割を果たしている信用組合の経営基盤強化は、中小企業振興の観点からも重要な課題と考えておりまして、法改正など国の動きを見きわめた上で、信用組合の経営基盤強化のため効果的と思われる施策の検討を行おうとするものでありまして、お話のような外形課税をめぐる国からの圧力ということは全く関係ございません。
   [総務局長横山洋吉君登壇〕

○総務局長(横山洋吉君) 区市町村との対等な関係確立の観点からの条例等の見直しについてでございますが、東京都は、さきに策定をいたしました第一次東京都地方分権推進計画におきまして、地方分権の趣旨を踏まえて、都のすべての条例、規則を対象にしまして、都と区市町村の対等、協力の関係にそぐわない表現等について見直しを行うこととしております。
 現在、この計画に基づきまして、例えば市町村長を都の下級機関扱いしております進達といった規定がございますが、こういった規定を削除する等の整備を進めているところでございまして、今後とも、組織の名称などを含めまして関係規定の見直しに努めていくといたしております。
   [環境保全局長齋藤哲哉君登壇〕

○環境保全局長(齋藤哲哉君) ISO認証取得による環境配慮行動の具体的な取り組みについてお答え申し上げます。
 今回のISO一四〇〇一の認証取得を通じて、環境目標の着実な達成に向け、全庁的に環境配慮を推進する仕組みが構築されました。
 今後、このシステムの効果的な運用により、都庁の各部門において環境に配慮した物品の調達を積極的に進めるとともに、事業の実施に当たりましても、取引などを通じて事業者に対して環境配慮を求めてまいります。
 こうした都の取り組みにより、多くの事業者の環境負荷の低減に向けた活動を一層促進してまいります。
   [高齢者施策推進室長福祉局長兼務神藤信之君登壇〕

○高齢者施策推進室長福祉局長兼務(神藤信之君) 子育て支援スタッフ養成研修の委託先の決定方法についてのお尋ねでございますが、この事業の委託に当たりましては、「広報東京都」により募集し、応募のあったNPO法人を含む民間団体の中から、企画内容等を比較、審査の上、委託先を決定したものでございます。
 このような方式をとったのは、近年、地域において多様な子育て支援を目的とするすぐれた団体が多く存在することから、こうした民間団体への委託が適していると判断したものでございます。
   [財務局長木内征司君登壇〕

○財務局長(木内征司君) 指名競争入札における優先指名についてのご質問でございます。
 契約を行う上では、公正性の確保、競争性の向上、履行の確保を行うことが何よりも重要であると考えております。
 こうした点を基本としつつ、特に中小企業対策、障害者雇用の重要性にかんがみまし
て、中小企業者と障害者雇用率の高い事業者のみについて優先指名制度を適用しております。
 この制度を拡大することについては、競争性、公正性の確保を図る上から慎重に検討する必要があると考えております。
   [清掃局長安樂進君登壇〕

○清掃局長(安樂進君) 建設廃棄物のリサイクル施設の整備についてのお尋ねでございますが、建設廃棄物はリサイクルが難しい上に、今後都心が改造期を迎えますと、急激に増加すると予測されております。
 しかし、都内に処理施設が少ないため、建設廃棄物は大部分都外で処理されており、多くの県が廃棄物の流入を規制し始めている中で、東京の産業廃棄物処理は危機的状況を迎えようとしております。
 このため、都内に処理施設を建設することが急務となっておりまして、事業者処理責任の原則から、民間事業者による整備を促進するため、都の保有する適地を実験的に民間事業者に貸与するなど効果的な方法を検討してまいります。
 なお、お話のありました建設廃材のリサイクル法が成立いたしますと、現在のようにリサイクルをせずに埋め立てすることは違法行為となりますので、この点からも施設建設が急がれております。
   [住宅局長戸井昌蔵君登壇〕

○住宅局長(戸井昌蔵君) 環境共生住宅の指針についてお答えいたします。
 都はこれまで、都営住宅団地に環境共生住宅の実験を行いましたが、この実験結果を踏まえ、民間市場において環境に配慮した住まいづくりの普及を図ることを目的に、平成十二年度早期の指針策定を目指して現在検討中でございます。
 この指針の中に、住まいづくりにおけるリサイクルを推進するため、コンクリートガラ等の再利用を図るとともに、解体したときに再生しやすい資材を採用することなどの項目を取り入れたいと考えております。
   [衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 哺乳瓶関連の三点のご質問にお答えいたします。
 まず、ポリカーボネート製哺乳瓶の追加試験結果についてでございますが、都が昨年度に実施したポリカーボネート製哺乳瓶のビスフェノールA溶出実態調査の結果、洗浄方法などにより、ビスフェノールAが比較的高い濃度で溶出する場合があることが認められました。
 このため、今年度追加試験により原因の究明を行った結果、業務用として用いられるアルカリ性の洗浄剤を多量に使用した場合などに、ビスフェノールAが多く溶出することを確認いたしました。
 次に、哺乳瓶メーカーの対応についてでございますが、都は、哺乳瓶のビスフェノールA溶出実態調査や追加試験の結果に基づき、哺乳瓶メーカーの団体に対して、使用上の留意事項を哺乳瓶の販売者や使用者に対し具体的に示すことを要請しました。
 その結果、業界団体では本年一月、ポリカーボネート製哺乳瓶の生産ガイドライン等を作成するとともに、使用上の留意事項について周知することとなっております。
 最後に、哺乳瓶の実態調査結果等の情報提供についてでございますが、都では、溶出実態調査の結果や、哺乳瓶の取扱方法について、インターネットや情報誌などにより広く都民にお知らせするとともに、区市町村に対しても情報提供をしてまいります。
 また、薬局等の哺乳瓶の販売者や、哺乳瓶を多量に使用する病産院等に対しては、関係団体を通じるなどして適切な取扱方法の周知を図ってまいります。

ページ先頭に戻る