平成十二年東京都議会会議録第四号

○副議長(五十嵐正君) 四十一番高島なおき君。
   [四十一番高島なおき君登壇〕
   [副議長退席、議長着席〕

○四十一番(高島なおき君) 私は、東京都議会自由民主党の一員として、都政の課題について質問をいたします。
 なお、何点かの質問については、過去質問させていただいておりますので、前回以上の前向きな、そして的確な答弁を期待いたします。
 私たちは、これまで、大量の資源を採取し、それをもとに大量の製品を生産し、それを大量に消費してきました。その結果として大量の廃棄物が生み出され、現在、最終処分場の受け入れ可能容量も残すところあとわずかになっており、また、新しい最終処分場の確保も大変難しくなってきております。さらに、廃棄物を処理するときに発生する環境へのさまざまな負荷が大きな課題となっております。
 経済企画庁の調査研究によると、現状のまま推移すると仮定すれば、十年後の経済成長率は、廃棄物の処分コストが高騰するなどによりマイナスに転じてしまい、さらに、二十年後を見ると、現在よりも経済が悪化してしまうと危惧されております。しかし、リサイクルのための基盤を整備し、産業構造そのものを改革していき、それと同時にリサイクルのための技術革新を進めていけば、安定的な経済成長を維持していくことが可能になると期待されております。
 国でも、各種リサイクル法の整備を進めてきており、いよいよ平成十三年四月からは家電リサイクル法が本格的に動き出します。さらに、この家電リサイクル法に引き続き、循環型社会構築に関する基本的な枠組みをつくる法律として循環型社会基本法の制定や、廃棄物処理法、再生資源利用促進法の改正、建設廃棄物、食品廃棄物などの個別リサイクル法の制定など、リサイクルの推進のために法制度を整備しようとする動きが急速になってきました。これらの法制度が機能するかどうかは、都民や行政はもとより、実際にリサイクル施設を運営する民間事業者の取り組みにかかっております。
 しかしながら、民間事業者がリサイクルを進めるための施設を都内につくろうとした場合には、廃棄物処理法や建築基準法など法律上の制約が多く、民間事業者も困っているとの話を聞きます。そこで、廃棄物処理法では、リサイクル施設を設置する場合、許可を受けるためにどのような手続が必要になっているのかを伺いたい。
 次に、建築基準法の第五十一条では、一定の規模を超えるごみ焼却場その他の処理施設は、特定行政庁が都市計画地方審議会の議を経て、その敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可を受けなければ、新築もしくは増築できないとされています。他の県の場合ですが、処理施設の建設を計画してから審議会にかかるまで、準備を含め二年以上もかかる例があると聞いております。そこで、建築基準法上どのような手続をし、どの程度の期間が必要になっているのかを伺いたい。
 都民の生活を今後とも安定して発展させていくためには、民間事業者が取り組もうとしている新しいリサイクルシステムの構築に向けた努力を支援していく必要があると考えます。そこで、都としては、民間のリサイクル事業に対する支援についてどのように考えているのか伺いたい。
 リサイクルのための法を円滑に機能させるためには、民間事業者によるリサイクル施設の整備を促進していく必要があります。そこで伺います。
 廃棄物を取り扱う以上、環境への配慮等、適切な規制は必要ですが、手続の簡素化を図ることが必要であり、国に強く要望していくべきと考えますが、知事のご所見を伺いたい。ましてもや、東京から日本を変えると力強く活動なさっていらっしゃる石原知事でございますから、間違いのない行動をしていただくと期待をさせていただきます。
 次に、都市計画法について質問をいたします。
 時のアセスという考え方があります。計画決定から一定の期間を経過した事業については、事業実施に固執することなく、社会経済状況の変化にあわせて、事業の現実性や必要性を再チェックするというものです。限られた資金を有効に投資して、投資効果を最大限に引き出していくことが、都市の活力を維持していくためにも求められております。もはや、古い計画に縛られ、むだな投資をしたり、民間の投資を抑制したりすることは、時代に取り残されることを意味します。
 都市計画もまたしかりです。都市計画が、将来の都市像を指し示すことによって有効な投資を担保している一方で、都市計画決定に伴う建築規制は、見方を変えれば、民間の投資を抑制する一種の規制になってしまいます。そこで、現在、最も大きい問題を抱えた都市計画である土地区画整理を施行すべき区域についてお尋ねをいたします。
 この土地区画整理を施行すべき区域は、戦後のグリーンベルト構想、旧緑地地区を踏襲した都市計画で、昭和四十四年までに都市計画決定されて以来、ほとんどが見直されることなく、現在でも区部周辺部には約九千ヘクタールが指定されたままとなっている、まさに遺物といえる計画です。
 この地区では、都市計画法第五十三条による建築制限がかかるばかりではなく、旧緑地であったことから、建ぺい率や容積率が低く抑えられ、足立区においても、環七に接した地域では、建ぺい率三〇%、容積率六〇%という、考えられない指定が残されております。この地域の中で、多くの組合が土地区画整理に取り組み、約三〇%の区域において住民が主体のまちづくりが行われてきたことは評価するものであります。
 しかし一方で、残った七〇%の中には、住宅が立て込み、どう考えても土地区画整理事業の実施が無理な地域が多く含まれております。さらに、この中には、昔の耕地整理によって、街区面積が大きいとはいえ、十分な生活道路が確保されている地域が多く含まれております。無意味な規制が残されていることによって、民間の投資が抑えられ、貴重な土地の有効利用が図られずにいるのです。
 こういった地域では、例えば地区計画のような、投資を行いながら都市基盤を整備するといった代替手法が有効な場合もあります。都では何回となく調査や地元区からのヒアリングを行っており、このような実態についても十分承知のことと思っております。知っていながら放置をするのは行政の怠慢ではないでしょうか。旧来のしがらみにとらわれることなく、その地域、その地域に最も適合したまちづくりを進めるべく、土地区画整理を施行すべき区域の抜本的な見直しを行うべきであると考えますが、所見をお伺いしたい。
 さて、この土地区画整理を施行すべき区域の見直しが行われない中で、重複して地区計画という都市計画決定を行い、それによってまちづくりを進めようという試みが始まっております。現在、施行すべき区域での地区計画決定状況と、どのようなときに地区計画が定められるかをお伺いしたい。
 さらに、今後ともこの取り組みを続け、健全な市街地の発展を誘導すべきであると考えますが、その決意をお伺いしたい。
 次に、連続立体交差についてお伺いをいたします。
 東京における道路の交通渋滞は、大気汚染や騒音などにより生活環境に影響を及ぼすだけではなく、年間に四兆九千億円もの莫大な経済損失を招くなど、経済全体の高コスト構造をつくり出す大きな原因となっております。また、都内には主要渋滞ポイントが百四十カ所もあり、これらが、東京の活力を取り戻し、東京の魅力を高めていくための障害にもなっております。
 道路や鉄道は、活発な都市活動や都民の都市生活を支える基盤施設として大きな役割を担っています。しかしながら、整備のおくれと、幹線道路の鉄道との平面交差、いわゆる踏切の存在が、都内の慢性的な交通渋滞の大きな要因となっております。
 例えば、東京を東西に縦断するJR中央線は、ピーク時に五十分以上も閉じている踏切が数多くあり、鉄道を挟んだ道路は一キロ以上にわたり渋滞が発生しております。さらに、踏切による遮断や交通渋滞により、緊急車両の通行が阻害されたり、踏切事故が多発するなど、都民生活の安全で快適な暮らしが脅かされております。まさに予断を許さぬ状況であり、早期の改善が待たれるところであります。これは特別の事例ではなく、都内ではほかにも多数見受けられる状況であります。
 このような状況において、道路ネットワークの形成と、これら幹線道路の踏切を除去する連続立体交差事業の推進が非常に重要であると考えられます。連続立体交差事業は、多大な時間と費用を要するものの、交通渋滞のボトルネックの解消はもとより、地域分断の解消による災害に強く安全で快適なまちづくりを促進するなど、絶大な整備効果があり、あわせて道路などの都市基盤の整備が進み、面的にも大きな効果をもたらしております。二十一世紀の東京を活力と魅力ある首都としてよみがえらせるには、交通渋滞の解消は、東京にとって緊急な課題であると認識をしております。
 そこで、まず、直面する危機を突破するために、交通渋滞の解消についてどのような見解をお持ちなのか、お伺いしたい。
 知事も、活力ある首都東京の再生に向けて、連続立体交差事業については積極的に事業を進めると述べていますが、二十一世紀に向けて首都東京が活力を取り戻し、次世代までも便利で快適な魅力ある都市生活を営むためには、都市基盤の整備が不可欠であります。とりわけ厳しい都財政状況にある今こそ、道路交通の円滑化や防災まちづくり等に大きな効果がある連続立体交差事業に予算を重点化して事業の推進を図るべきと考えますが、ご所見を伺いたい。
 さらに、平成十年度第一回定例会において質問をいたしました足立区内における連続立体交差については、北千住地区、竹の塚地区ともに、あかずの踏切といわれ、まちづくり等を含め、大きな障害になっております。こうした状況を解消し、東西一体となったまちづくりを進めていくためには、東武伊勢崎線の連続立体交差化が不可欠でありますが、都の考え方をお伺いしたい。
 最後に、都立看護専門学校の見直しについてお伺いいたします。
 昨年の第一回定例会において、私は、都民に対し民間でサービスを提供できるものについては、行政は撤退するという観点から、看護職員の不足が解消されつつある現在、どのような方向性を持って都立看護専門学校の見直しを行うのかとの質問をいたしました。これに対して衛生局長から、今後、都立看護専門学校のあり方については、民間養成施設の動向なども視野に置きながら、適切に見直しをしていく必要があるとの答弁がありました。
 その後、衛生局では、昨年七月、都における看護職員養成に関する検討会を設置し、十月には中間報告が出されました。今年度中には検討会の最終報告がまとまり、この中で具体的な再編整備の考え方が示されると聞いております。大変関心を持っているところであり、ぜひ昨年の答弁の趣旨を十分に踏まえ、納得できる見直し案を早急に示すとともに、具体化を進めていただきたいと思いますが、そのご所見をお聞きしたい。
 以上で私の質問を終了させていただきます。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 高島なおき議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、リサイクル施設を整備する際の法的手続の簡素化についてであります。この点について関係局長が後で答えますけれども、ちょっと前後すると思いますけれども、リサイクル施設は廃棄物処理施設に該当し、一般的に周辺の生活環境に影響を及ぼすおそれがあるとされております。このため、廃棄物処理法による知事の認可と建築基準法に基づく手続が必要となっております。しかし、取扱品目によっては周辺の生活環境に与える影響が少ないものもありまして、こうした品目のリサイクル施設の建設については、手続の簡素化を具体的に強く国に要望していきたいと思っております。
 次いで、東京の最大の欠陥であります交通渋滞の解消についてでありますが、東京の交通渋滞は、おっしゃるとおり、経済活動の高コスト化や環境悪化をもたらすなど、都市活動や都民生活の大きな支障となっておりまして、早期に解決を図るべき課題であります。
 そのために、危機突破・戦略プランでは、首都圏を視野に入れた三環状道路の整備や環八、山手通りなどの区部環状、調布保谷線を初めとする多摩南北の幹線道路の整備、JR中央線連続立体交差事業などを厳選し、重点的、効率的に推進することといたしております。あわせて、TDM東京行動プランに基づいて、ロードプライシングなどのTDM施策を積極的に進めていきたいと思っております。
 次いで、連続立体交差事業の推進でありますが、この仕事は、多数の踏切を同時に除去することにより渋滞や地域分断を解消する、極めて整備効果の高い事業であると心得ております。しかし、どうもやはり時間と金がかかり過ぎる。これまでも二百カ所以上の踏切を除去し、現在、JR中央線に加え、小田急線や京急蒲田駅付近など八路線で事業を進めております。しかし、今、都内には、道路交通のボトルネックとなっている踏切がまだ多数残っておりまして、財政状況が厳しい中でありますけれども、緊急性、重要性を勘案して、鉄道の立体化を積極的に推進したいと思っております。
 先ほど申しましたが、必ずしも高架化だけではなくて、何か新しいノウハウを駆使して――とにかく地下化することも一つの立体化だと思いますから、こういうことについて、都の専門家たちに、何か妙案がないかということを改めて宿題として出しました。
 なお、他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   [東京都技監成戸寿彦君登壇〕

○東京都技監(成戸寿彦君) 都市計画に関します六点のご質問にお答えいたします。
 まず、廃棄物処理施設に係る建築基準法上の手続及び期間についてでございますが、一定の規模を超える廃棄物処理施設の許可に際しましては、都市計画地方審議会の議を経ることになっておりまして、その手続につきましては、許可申請書の受理後、建築基準法上の審査、区市町村への意見照会、そして、都市計画地方審議会への付議などのさまざまな手続を行うこととなっておりまして、許可まで四、五カ月を要する見込みでございます。
 次に、土地区画整理事業を施行すべき区域の見直しについてでございますが、この区域は、周辺区部にかつて存在いたしました緑地地域の指定を解除するのに伴いまして、無秩序な市街化の防止を目的に都市計画決定されたものでございます。これまで、この区域の約三〇%で土地区画整理事業が実施され、良好な都市基盤が形成されるなど、一定の成果を上げてきております。
 一方、計画決定後約三十年がたっておりまして、ご指摘にもございましたように、市街地の現状と計画が整合しなくなっている地域も見られます。このため、従来の手法に固執することなく、それぞれの地域にふさわしい整備のあり方について、地元区等との調整に積極的に取り組んでいきたいと思っております。
 続きまして、区画整理を施行すべき区域における地区計画の決定状況についてでございますが、現在、施行すべき区域内の事業未着手の区域は約六千三百ヘクタールございまして、そのうち約一三%、面積にしますと八百四十ヘクタールについて、地区計画を決定いたしております。
 また、区画整理を施行すべき区域において地区計画が定められる場合についてでございますが、区画整理事業未着手区域内の地区計画は、道路や公園といった施設が既にある程度整っておりまして、これに加えて地区施設を定めることにより、将来的には区画整理実施地区とほぼ同様の整備状況となるなど、良好なまちづくりが期待できる地区について定めることといたしております。
 さらに、区画整理を施行すべき区域で地区計画を定める取り組みを続けることについてでありますが、地区計画は、良好な市街地整備を進めるために区が決定する都市計画でございます。区画整理を施行すべき区域においてこれを定める場合には、区の都市計画マスタープランなどにより、この地域の整備手法としてふさわしいものと位置づけられていることが重要であります。
 こうした区域におきましても、地区計画を活用することは効果的でございますので、都といたしましても、地元区と連携をとりながら、用途地域等への変更を行うなど、地区整備の状況に応じた土地の有効利用が進み、健全な市街地が形成されるよう、一層努力してまいります。
 最後に、東武伊勢崎線の連続立体交差化についてでございますが、二カ所ございまして、竹ノ塚駅付近につきましては、既に準備組合が設立されております西口の再開発、また、東武駅ビルや公団住宅の更新など、駅周辺のまちづくりの動向を踏まえ、今後、国とも調整しながら、地元足立区とともに検討してまいります。
 また、北千住駅付近につきましては、駅などの大規模改良を要するなど、多くの課題がございます。十分な調査が必要となっております。都といたしましては、今後の地元区の検討状況やまちづくりの動向を見きわめつつ、国との連絡調整など必要な協力を行ってまいります。
   [清掃局長安樂進君登壇〕

○清掃局長(安樂進君) リサイクル施設を設置する場合の法的手続についてのお尋ねでございますが、民間事業者が一日の処理能力が五トン以上の施設を設置する場合は、廃棄物処理法に基づく都道府県知事の許可が必要となります。許可の申請に当たりましては、施設の構造や維持管理に関する計画のほか、施設の設置が周辺の生活環境に及ぼす影響についての調査結果等の書類を添えて申請するよう定められております。
 次に、民間のリサイクル事業に対する支援についてのお尋ねでございますが、緊急の課題となっております廃棄物問題を解決するために、ご指摘のように、国はリサイクルにかかわる法の整備を順次進めてきております。これらの法が円滑に施行され、リサイクルが促進されるためには、意欲のある民間事業者の積極的な事業展開が不可欠であります。都もそれをしっかりと支援していく必要があります。
 そこで、都は、こうした民間事業者を支援するため、施設整備を促進するための環境づくりを進めるとともに、技術面や資金面、あるいは事務手続の面などで、今後とも指導や相談に努めてまいります。
   [衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 都立看護専門学校の見直しについてでございます。
 昨年の第一回定例会で賜りましたご指摘の趣旨を踏まえまして、七月に設置した都における看護職員養成に関する検討会の中間報告に基づき、既に修学資金貸与制度や都立看護専門学校の入学定員などの見直しに着手しております。現在、最終報告に向けて、看護教育の充実強化、養成規模の縮小に伴う再編整備等について、総合的な取りまとめを行っているところでございまして、この最終報告をもって速やかに再編整備計画等の具体化に取り組んでまいります。

ページ先頭に戻る