平成十二年東京都議会会議録第四号

○議長(渋谷守生君) 三十六番鈴木貫太郎君。
   [三十六番鈴木貫太郎君登壇〕
   [議長退席、副議長着席〕

○三十六番(鈴木貫太郎君) 初めに、今日、再興感染症として恐れられている結核、その対策について伺います。
 世界保健機関は、再び猛威を振るい始めた結核問題の重大性を警告し、その対策強化の必要性を訴えるため、結核の非常事態宣言を行っております。我が国でも、新たに登録された結核患者数は、平成九年以来増加に転じており、平成十年、十一年も着実にふえております。
 我が党は、こうした状況に警鐘を打ち鳴らすべく、昨年の第二回定例会において、結核対策の一層の充実を求めてきたところであります。その後、昨年の七月には、結核患者の増加に対し、国として、複数の薬でも効かない結核が蔓延し、再興感染症として猛威を振るい続けるか否かの分岐点であるとして、結核緊急事態宣言を行ったのであります。
 平成十年には、都においても約四千人もの新たな患者が登録をされ、国に一年おくれで前年を上回る事態にもなり、その深刻の度を増しております。そこで、以下三点について伺います。
 第一に、都における結核の状況をどのように認識し、具体的にどう対応していくのか、まず知事にその基本的な考え方を伺います。
 第二に、結核については、発生時の蔓延防止を図る上から、早期に入院医療を提供できる体制の確保が何よりも大切であります。しかしながら、結核医療は採算がとりにくく、医師や看護婦の確保の困難さに加え、施設の老朽化などから、閉鎖や休止に追い込まれる結核病床が多いと聞いております。このため、患者が発生しても受け入れが困難になるとの指摘もされております。都は、適時適切な結核医療を提供できる結核病床確保を、この際、緊急に図るための具体策を講ずべきと私は考えます。所見を伺います。
 第三に、最近、結核が疑われる緊急患者に対し、十分な対応ができないケースがふえていることや、合併症を持つ結核患者の受け入れが円滑に行われていないのではないかとの指摘が出ております。現に、私の知人にも生じた事例でありますが、結核と疑われた患者を乗せた救急車が、入院先がなかなか決まらず長時間を要した事例がありました。そこで、結核専用病床の整備に加え、こうした救急患者の受け入れと治療が確実に行われる体制の早期整備が必要と考えます。所見を求めます。
 次に、ダイオキシン類対策について伺います。
 これまでの公害・環境法令には見られない、大気、水質、土壌などにかかわる総合的な規制や対策を盛り込んだダイオキシン類対策特別措置法が本年一月から施行されております。この法律では、ダイオキシン類に新たにコプラナーPCBが加わり、環境基準や人の一日の耐容摂取量が定められており、都は今後、これらの基準の達成に向けた一層の取り組みが求められているのであります。
 先日、東京都が発表した平成十一年度の第三回の大気中の調査、河川、内湾のダイオキシン類の調査データによりますと、都内における大気環境基準の値を超えた地点一カ所、水質環境基準の値を超えた地点四カ所となっております。環境基準の達成状況は、年平均値で比較をすることになっておりますので、現時点で評価をし、云々することは差し控えますが、大切なことは、都民の健康の保護、安心できる生活環境を都はどのように確保していくのか、さらには、都が環境基準の達成状況をどのように早期に把握し、今後の対策に結びつけていくかにかかっていると思います。そこで伺います。
 第一に、十二年度における各種モニタリングの充実についてであります。特に、具体的な環境調査をどのように都は実施していくのか伺います。
 第二には、発生源対策についてであります。
 今回の特別措置法では、火床面積〇・五平米以上、または焼却能力が一時間当たり五十キログラム以上の廃棄物焼却炉についても、一年間の猶予を経た後、排出基準が適用されることになりました。
 一方、先月、都の環境科学研究所が発表した、法律の対象外である極めて小さな一般家庭用小型焼却炉からのダイオキシン類の生成についての調査結果によりますと、家庭用焼却炉といえども、塩化ビニールが混在すると、無視できないほどのダイオキシン類が生成されているという調査でありました。都は、これまで法律で規制の対象外であった小型焼却炉に対しては、要綱を定めて、ばいじん及びダイオキシン類の排出抑制指導を行ってきたわけでありますけれども、今後、都はこうした規制対象外の小型焼却炉の規制に対し、どのように取り組むのか、条例の制定を含め具体的に伺います。
 第三に、ダイオキシン類対策の総合的な取り組みについてであります。
 ダイオキシン類の排出抑制を一層進めるためには、法に基づく規制の徹底に加え、塩素含有プラスチック対策や区市町村との連携、さらに、都民への十分な情報提供と周知徹底などといった総合的な取り組みが重要と私は考えます。今後の都の具体的な対応について伺います。
 次に、防災都市づくりに関連して何点か伺っておきます。
 第一に、地域危険度についてであります。
 都は、火災危険度など四つの危険度を町丁目ごとに五段階方式で公表しております。しかしながら、私の地元区である荒川区を例にとってみますと、大きな状況の変化が何もないにもかかわらず、危険度が変わっている地区があります。特に変化の多いのが火災危険度などであります。この地域危険度は、住民にとって非常に関心が高く、そして何よりもわかりやすさが重要であると私は考えます。
 さらに、指摘をしなければならないのは、この四つの危険度を足して総合危険度なるものを都は示しておりますけれども、これがどちらかというと、ひとり歩きをしてマスコミなどに取り上げられる嫌いがあります。要は、地域でどの種類の危険度が高いのか、何に住民が気をつけて暮らすべきかでありましょう。そこで伺います。
 地域危険度は、住民の実感に近い、わかりやすい指標をこの際設定すべきであります。都は現在、第五回の地域危険度調査に向け、改定作業に入っておるといっておりますが、具体的にどのような点を改良し、都民にわかりやすい地域危険度にするのか、伺っておきます。
 第二は、防災都市づくり推進計画についてであります。
 阪神・淡路大震災から五年、昨年八月にはトルコ、九月には台湾で大地震が発生をし、改めて地震の破壊力を実感するとともに、都における防災都市づくりを、今、着実かつ積極的に推進をしていかなければならない時代であります。しかしながら、緊急に整備を図っていくべき都内十一カ所の重点地区でさえ、厳しい現下の財政状況とのかかわりもあり、その進捗は思うように進んでいないというのが私の実感であります。
 昨年末策定の危機突破・戦略プランでも、防災都市づくりを柱の一つとして掲げております。このプランに基づいて事業を着実に実施していくことに何よりも尽きると私は思います。そこで伺います。私が指摘した状況を踏まえ、防災都市づくりについて、基本的な認識について、この際、改めて知事に伺います。
 次に、重点地区の一つでもあります荒川地元区の町屋・尾久地区において、事業が順調に進展をしていないと私は思います。今後、具体的にどのようにこの地区における防災都市づくりを進めていくのか伺います。
 第三には、防災都市づくり事業に関連し、都区財政調整制度についてであります。
 この四月からの都区制度改革を受け、財調制度も見直しをされました。私は、新しい財調制度の基本的方向性については十分に理解をしております。そこで伺います。
 特別区では、地域の実態や特性を踏まえた各種の施策が展開をされております。地元区の荒川区では、とりわけ密集住宅市街地整備促進事業など各種災害に強いまちづくり事業に取り組んでおります。
 ところが、今指摘した事業などについては、これまで全額財調制度で措置をされてきたのでありますけれども、今度の新制度では普通交付金化をされ、事業の促進が図られるのかどうか、地元では大変に懸念をしております。各特別区における実施状況が異なる大規模・臨時特例的事業を普通交付金化した考え方について、まず伺います。
 さらに、もう一つ懸念されることは、普通交付金化されたことで、各特別区の事業執行に支障が生じないかということであります。そのような事態を防ぐために、例えば事業認可地区数に応じて補正するなどの対策を、都はこの際、積極的に講ずべきではないかと私は考えます。所見を伺います。
 第四番目は、白鬚西地区再開発事業についてであります。
 この再開発事業は、江東再開発基本構想に基づく防災拠点整備を目的とした、約五十ヘクタールに及ぶ一大プロジェクトであります。かねてから私は、この事業を促進する立場から、事業の一日も早い完成に向け、努力を傾注してきた一人であると自負をいたしております。この間、地元住民や地元区を初め関係者の理解と協力によって、一定の進捗が図られ、事業も今、最終段階に入っております。
 残る大きな事業は、超高層街区を初めとする未着工街区の整備を残すのみであります。そこで私は、この事業を早期に完成させるための一つの手法として、民間活力を生かした事業展開を積極的に図るべきだと提案をしてまいりました。そこで伺います。
 都施行再開発事業の中での民間活力の活用について、都はどのように考えておられるのか、その基本的な考え方、手法について伺っておきます。
 次に、同じく防災拠点事業を進めている亀戸・大島・小松川地区では、既に一部の街区で民間事業者の導入に着手したと聞いておりますが、白鬚西地区における未着工街区においても、民間事業者の活用について、この際、積極的に導入すべきと申し上げ、そしてその見通しについて具体的に伺い、私の質問といたします。
 以上であります。(拍手)
   [知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 鈴木貫太郎議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、結核対策についてでありますが、ご指摘のとおり、高齢患者を中心として新規登録患者が急増してまいりました。また、都民や保健医療関係者の結核に対する関心の低下などから、集団感染の危惧もあり、結核対策が改めて重要な課題になりつつあると認識しております。
 都は、結核予防法に基づき、健康診断等の予防対策や医療費公費負担等の医療対策を実施するほか、新しい知識の普及啓発などの施策を実施しております。何しろ若いお医者さんは、結核の体験がなくて、レントゲンの写真を判読できないというような状況もあるようでございまして、こういった状況も克服していかなくてはならないと思っております。
 今後は、これまでの対策に加えて、発病の危険が高い集団への重点的な検診や、結核患者の救急医療体制の整備、結核病床の適切な確保など、結核対策の一層の充実を図ってまいりたいと思っております。
 次いで、防災都市づくりについてでございますが、先般、神戸市や台湾の被災地域を視察してまいりました。その際にも地震の恐ろしさを痛感いたしました。東京では直下型地震はいつ起きてもおかしくないとされており、その場合、神戸の、例えば長田区であるとか東灘区などを眺めましても、木造住宅が密集している地域を中心にして大きな被害が生ずるものと予測されております。木造住宅の、耐震性のある建物に比べてのひ弱さというものを痛感いたしました。
 それで、今般の住宅に関する減税も、そういった認識のもとに、建て直すものは建て直していただく、そのためには減税も行おうということで、既にもう耐震構造とかバリアフリーの建物についてのインセンティブも講じられております。あわせて、都も努力しますけれども、また都民の皆さんも、みずからの住宅を自分でしっかりしたものにつくり直すというような意欲も持っていただければと思っております。
 いずれにしろ、都民の生命と財産を守るため、大地震の発生に備えて防災都市づくりを行っていくことは極めて重要であり、厳しい財政状況下においても着実に実行していくことが必要であると考えております。
 その他の質問については、技監並びに関係局長からお答えいたします。
   [東京都技監成戸寿彦君登壇〕

○東京都技監(成戸寿彦君) 防災都市づくりに関します二点のご質問にお答えいたします。
 まず、地域危険度調査の見直しについてでございますが、これまでも、阪神・淡路大震災の被害状況を参考にするなど、調査方法の改良を行ってきたところでございます。現在、第五回の地域危険度調査におきまして、学識経験者による調査委員会の意見を聞きながら、地域の実態をより適正に評価できるものとするため、測定手法の検討を行っております。今後とも、防災都市づくり施策に効果的に役立つとともに、ご指摘にもありました、各地域の危険度の特徴をよく示し、住民にもわかりやすい地域危険度指標となるよう、調査に生かしていきたいと考えております。
 次に、町屋・尾久地区の防災都市づくりについてでございますが、従来からこの地区では、防災都市づくり推進計画に基づき、区とともに、木造住宅密集地域整備促進事業あるいは街路整備事業といった事業を展開してきております。また、新たに防災再開発促進地区の指定を進めるとともに、本地区を含みます川の手、荒川沿川地域に対しまして、道路など都市基盤への重点的な投資を行うための都市再構築総合支援事業でありますとか、良好な住宅市街地形成を促進する大都市居住環境整備推進制度が適用されるよう、国及び地元区と準備を行っているところでございます。
   [衛生局長今村皓一君登壇〕

○衛生局長(今村皓一君) 結核対策について、二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、結核病床の確保についてでございますが、ご指摘のとおり、都内で実際に利用できる結核病床は減少傾向にあり、病床の適切な確保は重要な課題と考えております。このため、診療報酬の改善など結核医療確保のための施策の充実を国に要望するとともに、新たに結核病床の整備も補助対象となりました国の医療施設近代化施設整備事業の活用など、結核病床の確保に積極的に取り組んでまいります。
 次に、結核患者等に対する救急医療体制の整備についてでございます。
 一般の救急病院においても、結核が疑われる救急患者の受け入れと治療ができるよう、院内感染予防のための個別空調設備を持つ病床の整備を平成十二年度より新たに開始することといたしております。あわせて、結核病床を有する病院への転院、治療が円滑に行われるよう、ご提案の趣旨を踏まえまして、病院と関係機関のネットワークを構築し、迅速かつ適切な医療提供体制を整備してまいります。
   [環境保全局長齋藤哲哉君登壇〕

○環境保全局長(齋藤哲哉君) ダイオキシン類対策に関して三つのご質問にお答え申し上げます。
 まず、平成十二年度はダイオキシン類の各種モニタリングをどのように行っていくのかというご質問でございますが、昨年十二月に大気、水質、土壌の環境基準が示されましたことから、十二年度は環境モニタリングを大幅に拡充する考えでございます。具体的に申し上げますと、一般環境大気は、これまでの年四回から毎月の測定といたします。公共用水域の水質については測定地点を約三倍に、測定回数を年二回にふやします。また、土壌、地下水の測定地点は約三倍に拡大する予定でございます。今後、環境基準の達成状況のきめ細かな把握や評価の充実に努めてまいります。
 次に、法規制対象外の小型焼却炉の規制についてでございますが、家庭用等の小規模な焼却炉では、排煙処理や燃焼管理が困難なため、塩化ビニール等の合成樹脂の混入によるダイオキシン類の発生のほか、ばいじんや悪臭等による生活環境への影響が問題となっております。このため、家庭用等の小規模な焼却炉の使用に対し、公害防止条例で規制することが必要と考えております。今後、本年度末に予定されている環境審議会答申を踏まえ、平成十二年中に公害防止条例を改正し、小型焼却炉に対する規制の強化を図ってまいります。
 次に、ダイオキシン類の排出抑制を進めるための今後の都の具体的対応についてでございますが、都は平成九年にダイオキシン類対策取り組み方針を定め、これまで区、市との連携のもとで対策に取り組んでまいりました。今後、新たにダイオキシン類に加わったコプラナーPCBへの適切な対応も含め、さらに幅広く排出削減に取り組むことが重要でございます。
 このため、早期に取り組み方針を改定し、燃焼条件によりダイオキシン類を多く発生する原因となる塩化ビニール等の焼却量の減少、地域でリスクコミュニケーションを推進する情報提供の充実など、総合的な取り組みを進めてまいります。
   [総務局長横山洋吉君登壇〕

○総務局長(横山洋吉君) 都区財調にかかわります二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、都区財政調整制度における大規模・臨時特例的事業についてでございますが、密集住宅市街地整備促進事業などの大規模・臨時特例的事業につきましては、従前は確かにそれぞれの事業を実施する特別区が少数でございましたが、現状を見ますと、ほとんどの特別区で実施されておりまして、恒常化、普遍化している現状でございます。
 そこで、今回の都区財政調整制度の改革の中で、大規模・臨時特例的事業を普通交付金化することによりまして、各特別区がこの財源を自主的かつ計画的に活用しまして、地域の実情や特性等に応じて、まちづくり事業を一層弾力的に推進できますよう改正をいたしたところでございます。
 次に、大規模・臨時特例的事業の普通交付金化に伴う必要な補正措置についてでございますが、大規模・臨時特例的事業の普通交付金化によりまして、毎年度の各特別区への交付金は、これまでとは異なりまして平均的に配分されることになりますが、一方で事業の実施状況等にも十分配慮する必要がありますことから、態容補正などの措置を行うことといたしております。
 今後、普通交付金化される事業につきましては、ご提案のことも含めまして、特別区側からの要望がございますれば、協議してまいりたいと考えております。
   [建設局長古川公毅君登壇〕

○建設局長(古川公毅君) 都施行再開発事業における民間活力の活用についてですが、再開発ビルの建設や保留床の販売などにおいて民間の資金やノウハウを活用していくことは、事業を効率的、効果的に進める上で、また、事業リスクを回避する上でも極めて有効であると考えています。
 この一月、亀戸・大島・小松川地区では、特定建築者制度を活用して、初めて民間による再開発ビルの建設を行うため、一般公募の手続を開始しました。今後とも、こうした制度の積極的な活用により、広く民間事業者の参加を得て事業展開を図ってまいります。
 次に、白鬚西地区での民間事業者の活用についてですが、全体計画戸数約四千五百戸の住宅のうち、現在まで権利者用住宅など約二千二百戸を都が建設してきました。残る約二千三百戸の建設については、すべて保留床から成る分譲マンションである上、超高層住宅が中心であることなどから、民間の創意工夫や事業参加意欲が十分期待できます。
 今後、対象となる街区や周辺の公共施設整備の進捗に合わせて、民間事業者を積極的に活用し、事業の早期完成を目指してまいります。

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